- 1スレ主21/10/03(日) 06:10:54
- 2スレ主21/10/03(日) 07:34:34
私は走るのが好きだった。ウマ娘だから当然ではあるが、とにかく好きだったのだ。運動会は勿論大好きな行事だったし、1番になったらママ達も大喜びだった。そんな私なので、当たり前のように中央のトレセン学園に入学した。
しかしそこで待っていたのは辛い現実だった。
勝てないのだ。
勝てない。勝てない。勝てない。
全敗という訳では無い。その証拠にメイクデビューでは1着を取ったし、そもそもの選抜レースでは何人ものトレーナーに声をかけられる程だったのだ。
でも勝てない。もう何がいけないのか分からない。トレーニング内容に抜かりは無いし、対抗バの研究だって欠かしていない。入着出来るだけ良いじゃないか、と言うのはトレーナーさんとママ達家族の共通の言葉だ。トレーナーさんの場合は、次こそは勝とうな もオマケで付いてくる。
顔の方は全く違う事を思っているみたいだけど。
- 3スレ主21/10/03(日) 07:34:48
1着に慣れなくて残念だ、また勝てなかったな、とでも言いたげな顔で同じ慰めの音を鳴らしてくる。
ウイニングライブだってそうだ。私はまともにセンターに立てた試しが無い。一応練習はするけど、結局は舞台のどちらかに寄った場所でマイクを握っている。
どうせ勝ちでは無いのなら、2着も18着も変わらないんじゃないか。いつも上位に入ってたまに勝つウマ娘ならともかく、いつまでも先頭に立てないヤツに誰が期待する?トレーナーさん達だって立場があるから次は次はと言うだけで、本当はとっくに見限ってるんじゃないか?
唯一勝てたメイクデビューだって、その後に大成したヤツは私を含めて1人もいない。どんぐりの背比べ、井の中の蛙、五十歩百歩、相応しい言葉はどれなのかな。
トレーナーさんには、次のレースで勝てなかった場合はトゥインクルシリーズを引退する事を伝えた。必死な顔で引き止められて考え直しもしたが、勝てないヤツを見る時の顔の事を思い出して我に返った。
ママの反応は思ったよりもアッサリとしていた。特に怒るでも引き止めるでも無く、怪我だけはしない様に念を押された。
引退を賭けた最後のレースは焼けるような陽射しの中での開催になった。もう秋なのにね。
対抗バの中にはあいつが居た。トレセン学園では有名人で、いつも騒ぎの中心にいるあいつだ。研究もいつも以上にやったんだ、あんなふざけた野郎に負けてたまるか。そう強く思いながらゲートに入った。
負けてしまった。9着だった。
あのふざけた野郎のバックダンサーを立派に務めた後、私は寮の自室に戻って荷造りを再開した。半端に望みを持って荷物をほとんど入れていなかったせいで時間がかかる。
私、何やってるんだろうな。
- 4スレ主21/10/03(日) 07:35:01
以上だ
- 5二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 07:41:57
鬱屈した作者の心情が読み取れる
割りと好き - 6二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 08:39:49
2着とか3着になったことはあって、ある程度継続して走ってこれたんだろう?
それならファンも少なからずいたと思うし、そういうファンとの交流とか応援とかを肌身に感じることがあれば違う道もあったんじゃないのかな…
しかし本人の気持ちが沈んでたら、たとえファンがいたとしても、本文で描写のあったトレーナーの目線も親御さんの気遣いも、そうとしか見えないかもね… - 7スレ主21/10/03(日) 08:50:12
感想ありがとう、めっちゃ嬉しい
「2着も18着も勝って無いので同じ」みたいな極端な思想のウマ娘とか居ないのかなーって所がスタートラインでした
勝ちにこだわりすぎるところと、思い込みの激しさが招いた結果なのかなと書き終わってから思いました - 8二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 10:04:21
エタリオウ路線は確かにキツイ……重賞で好走できるだけの力がありそうなのがまた…