[SS]卒業後フラッシュとトレーナーさん

  • 1二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 20:28:20
  • 2二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 20:29:34

    待ってました

  • 3二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 20:30:45

    私は日本在住の日本人ですが 彼の文章は非常におもしろく、そしてそれは迅速です
    気長にお待ちしてます

  • 4二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 20:31:09

    あっ なっ また増えてる〜!(歓喜)

  • 5二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 20:32:48

    こんな最高なss書いちゃってさぁ...誇らしくないのかよ?

  • 6二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 20:41:29

    正直展開もなにもかも想像通りにいかないというか、ここで思いきらせるつもりなかったんだけど、トレーナーさんもフラッシュも決壊してしまったみたいなんだ。すまない。フラッシュにからかわせるだけのはずが、こんな…

    あと1スレ使いきるとはおもわんかった。ぶつ切りとはいえ。本当にありがとうございます。
    皆の妄想の翼をはばたかせることができたなら嬉しい

  • 7二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 20:44:31

    あとペースはめちゃおちるとおもいます。
    休みなの抜きにしてもちょっとペースはやすぎた気がする…。

  • 8二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 21:07:13

    蛇足まいっちんぐなフラッシュ
    ごめん。

    「ん、んん…」
    体内時計が、いやがおうにも私を起こす。流石に体が重い。今日が仕事だということを、二人して失念していた。それどころではなかったことが起きたからだけれども。
    同じシーツにくるまって、気持ちよさそうに寝息をたてる彼が、少しだけ腹立たしくなって、頬をつんつんと指差す。まったく、何もかも予定した通りにはいかなかった。初夜の開けた朝は、二人で微笑みあうことになる、なんてスケジュールには書いておいたのに。
    「トレーナーさんの、ばか…」
    「ん、ふ、フラッシュ…おはよう。って、なんで頬膨らませてるの…」
    寝ぼけ眼でぼうっとしているようだ。それに対して頬を膨らませたままぷいっと横を向く。
    「…知りません。貴方の胸にきいてみてください。」
    ぽりぽりと頭をかいた彼はまだ気だるげである。
    「いや、心あたり全然ないんだけれど…ひょっとして、気持ちよくなかったとか…」
    「……人をあんな風にしておいて、よく言えますね!」
    涙混じりの反論に、びくっとなったトレーナーは、ようやく納得したがばつがわるげだ。
    「いや、ああ、うん、そういうことか……やりすぎた。君が、可愛すぎて夢中だった」
    「うう……お互いに、っていうつもりでしたのに…私ばっかり。本当に台無しですっ…」
    「いや、でも、君がよくなってるとこみるのが一番だからさ。いや、本当に」
    「私だって貴方がそうなってるところ見たかったんです!」
    「う、うん。そういうものなのかな。…いや、確かに公平じゃないっていえばそうだもんな…」
    ほとほと困り果てた顔の彼に、座った目で睨みながら、スケジュールに書き加えていく。
    「明後日!二人の休日は、私に気が済むまでリードさせていただきますから」
    「…え、ちょ、フラッシュ?」
    「全身全霊、全てをかけます…覚悟をしておいてくださいね。
    彼女の本気。それはおそらく当日に発揮されるものではない。彼女の性格上、そのためのスケジュールすら今から組み上げようとするのである。当日について相当の覚悟をかさねるが、その前に。
    「フラッシュ、寝癖…」
    「…あう…」
    それだけでしゅんとなって小さくなるフラッシュ。
    「…なおしてあげよっか」
    無言でこくんと頷くフラッシュ。 昨日までと同じで違う朝がここではじまった。

  • 9二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 21:08:15

    蛇足了。
    まいっちんぐ!

  • 10二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 21:10:03

    あああああああああああああ
    ま゛い゛っ゛ち゛ん゛く゛!!!!!!

  • 11二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 21:22:16

    我慢できなかったんだ。うん。

  • 12二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 21:38:36

    SSかいてるとやっぱフラッシュめちゃ可愛いなが押し寄せてくるので、みんなにも書くのをおすすめしたい。

  • 13二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 22:19:29

    ヤキモチやかせて煽るとかもちょっと小悪魔すぎるかもしれない

  • 14二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 00:06:55

    あまあまフラッシュもかきてぇ

  • 15二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 07:32:13

    軽くフラトレ

    「フラッシュ、いってきます」
    「いってらっしゃい。トレーナーさん」
    爽やかな朝に、見送りを行うフラッシュ。なんだか見送る相手が少し逞しく見えるのは気のせいだろうか。微笑んだ彼がドアに手をかける前に、あ、とフラッシュが声をあげる。
    「ん?フラッシュ、どうかしたのかい?」
    「ええ、ひとつ、失念していました」
    「フラッシュが?珍しいな。なんだい?」
    「ええ、朝のスケジュールに、ひとつ追加を」
    「なんだい?俺に出来ることなら手伝うけど」
    「…それでは」
    無言で瞳を閉じてい上目使いでみつめる。意図するとこは明白だが苦笑しつつ、唇を自ら優しく重ねるトレーナー。
    「…これ、いってきますでもするのかい?」
    「はい。」
    「さっき、おはようでしよう、ということにならなかったっけ」
    「どちらでなければ、だめですか?」
    「そんなことはないけれども」
    袖を優しくつかむフラッシュ。じっと上目使いでパートナーをみつめる。せつなさのあるそれに、トレーナーは息を飲んだ。
    「…私も、朝だけでいいかなと思ったのですけど、いってらっしゃいをすると、寂しく思えたので」
    「そっか…それじゃあしょうがない」
    瞳を向けたままのフラッシュの唇を再び奪う。ん、という甘ったるいフラッシュのくぐもりが艶かしい。
    「…いや、でもほどほどにしよう。これ。…止まらなくなる」
    「そうですね。やり方はルールを決めましょう。今、私、少し危なかったです」
    上気するフラッシュを見ていると、今すぐ抱き締めたくなるが、それをしてしまうと確実に遅刻一直線である。いや、遅刻ですむかも怪しいと判断したトレーナー
    「そ、それじゃあ本当にいってきます!」
    結局そそくさと出かけることになるのであった。

  • 16二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 12:12:27

    あっさり目なのを少し考え中

  • 17二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 12:16:01

    >>15

    …もはや声を出すこともできん、甘さのあまり…

  • 18二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 18:31:35

    フラトレでいきます。
    ベタベタなのが好きなんだ…


    時刻は20時。終業間近までたっぷりと遊園地を楽しんだ二人は、遊園地の門をくぐる。
    「楽しかった。久方ぶりだけど、新たな発見があるものだなぁ。
    「ええ、私も。今回はスケジュールに余裕をもたせたぶん、ゆっくり出来ましたね」
    「前回は全部回ったからね。まあ、だからこそ今回厳選できたともいえるよ。それにしても、遊園地なんて、本当に君とあの時来て以来だなぁ」
    トゥインクルシリーズの合間、フラッシュがぜひいってみたいと言うので伴ってでかけたのはいい思い出である。
    「フリーフォールは、慣れませんでしたね」
    思い出として撮影した写真には、絶叫するトレーナーの情けない顔と、楽しそうなフラッシュの顔がうつっている。トレーナーはすこしばつがわるげだ。
    「いわないでくれよ…。フラッシュもあまり慣れてはいないだろう。あれ以来かい?」
    遊園地めぐりが彼女の趣味というわけではないので、あまり足を運ぶことはなさそうである。
    「え?そうですね。こちらの遊園地は、あれ以来です」
    「こちらの?」
    「ええ。ドイツで去年一度」
    「へぇ、ご家族と?」
    フラッシュと家族は円満そのものの家庭である。一緒にでかけることもあるだろう。
    「え、ええと……」
    なぜか言葉を濁すフラッシュ。
    「フラッシュ?」
    躊躇いがちに語るフラッシュ。
    「えっと、一人で足を運びましたけど…そうですね。事実を伝えるなら、男性と回りました」
    「…え?」
    フラッシュの頬がすこし赤い。それに反して、トレーナーの顔はひきつった。
    「もう、変なこと考えないでくださいね?」
    「か、考えてないって、そ、それに去年だし。その、何も言う資格なんてないし」
    「思いっきり変なこと考えてますね…」
    ぎくしゃくするトレーナーをみてフラッシュは苦笑する。困った人、などという顔を見せつつまんざらでもなさそうなのは、自分に向けてくれている想いゆえと理解しているからだろうか。こういうことです、と、つらつらとフラッシュはトレーナーに言い聞かせる。トレーナーはしゅんとしつつもフラッシュの言葉に耳を傾けた。

  • 19二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 18:56:24

    帰省後の生活は、自分の夢に関するもの、父や母のような職人を目指すという一点においては順調だった。元々の予定より一年の遅れはあったものの、その遅れは取り戻せつつある。父と母は身内だからと甘い判定を下す人ではないのだから、その評価を疑う必要はない。ただ、プライベートの時間に対しては、張りのないものを常に感じていた。欠落感と言うべきなのだろうか。当時は言葉にできるようなものではなく、ただなんとなく、本当になんとなくもやもやとした感覚にさいなまれることがあった。
    休日に誘われることもあり、それを受けたこともあるが、気晴らしにはなっても、その何か得体のしれない感覚がぬぐわれることはなかった。

    遊園地にきたのは、ただなんとなく。でも、スケジュール帳にはアトラクションの周り順やかけれる時間等の詳細をみっちりと書き込んでいた。

    「おい、どこみて歩いてんだ」
    「あ、すみません」
    ぼうっとしてしまったらしい。慌てて謝罪する。が、顔をあげると、ガラの悪そうな男たちが、下卑た目をフラッシュの顔と胸に注いでいる。不快になったフラッシュは踵を返してその場を立ち去ろうとするも、行く手を阻まれる。
    「ぶつかっておいてさよならはないんじゃないか?ちょっと付き合えば許してやるよ」
    にやついた下卑た顔に嫌悪感を覚える。無論、ウマ娘である以上、腕力で振り払うことは可能であるが、相手はウマ娘のトレーナーではない、ただの人間だ。下手をすれば大怪我をさせるおそれもある。そもそもフラッシュには暴力を振るうことへの躊躇いもある。

    「やあ、フラッシュ、待たせたね」
    聞き覚えのない声が、その場に割り込んだ。大人びた黒髪の男が、飄々と声をかけてくる。
    「なんだぁ、お前?」
    「いや、連れが迷惑をかけたのかな?彼女に言いたいことがあるなら僕が聞こうか」
    「おい、横から出てきて…」
    「話は聞く、といっているよ?」
    男が人睨みすると、下卑た男のリーダーの顔にぶわっと汗が流れる。
    「な、なんでもねぇよ。お、おい、いくぞ。」
    「は?なんでだよ」
    「いいから、かかわんな」
    すごすごと去っていく不良たち。ふぅ、と一息ついた男は、頭をひとつ下げる。
    「いや、失礼したよね。突然連れなんて呼んで。咄嗟のことなんで許してくれるかな。エイシンフラッシュ」

  • 20二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 19:05:13

    「あの、貴方は…」
    「なぜ君の名をしってるのかって?僕は日本人だからね。君の活躍をそりゃ知ってるよ。最後のシービーとの激戦も現場で見ていた。まあちょっとしたファンと思ってくれよ」
    なるほど、確かにフラッシュの日本での知名度はそれなりのものはある。まして現場に足を運ぶほどなら知らないわけがないのは確かである。
    「そういえば君、本当の連れはどこだい?」
    「いえ、一人できています」
    「一人で?珍しいね。ま、そういうのが好きな人もいるか。でも、ううん」
    「あ、あの、ありがとうございます。助けていただいて」
    「ああ、気にしなくていい。困ってるウマ娘みたら、ファンなら助けたくなるってもんだろう?」
    「いえ、お礼はいわせてください」
    頭を下げるフラッシュに参ったな、と男は頭をかく。少し思案をしたあと、そうだ、と男はフラッシュに提案をひとつする。
    「どうかな、エイシンフラッシュ。お礼というのなら、僕とこのあと回るっていうのは。さっきの連中みたいなやつに絡まれるのは君も御免だろう?」
    「え、ですが……」
    「君は余計なやつらに絡まれることはなくなる。俺はウマ娘が遊園地を楽しんでるところを堪能できる。なんなら勝手にデートしてる気分にもなれるかもしれない。ま、君は動物でも相手をしている気分になったらいいさ」
    軽く言いくるめられて、結局フラッシュはこの男を連れて、当初の予定どおりのアトラクション巡りを遂行することになったのである。

  • 21二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 19:11:19

    プラン通り遊園地を回りきって、男はにっこり笑った。
    「いや、満足満足。君、これだけせわしないプランで動くなんてすごいな。まぁ、アトラクションは物足りなかったかな。これだったら普段のアレの方がスリリングっていうもんだよ」
    「は、はぁ…。その、1日、ありがとうございます」
    「いや、いいっていいって。こっちも楽しかったよ。どっちかっていうと、君が楽しめたかの方が不安だな」
    「いえ、本当に楽しかったです」
    これは確かである。男は一緒にまわるとき、フラッシュに一切の不快さをあたえなかった。レースにかかわる話をできたこともあり、話題もはずんだ。男はにこっと笑った。
    「本当に?…それじゃ、この後、食事なんてどう?」
    「え?…」
    「いや、勿論君が良ければだけど。もちろん奢らせてもらうよ。楽しませてもらった分を返す意味でもね」

  • 22二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 19:13:12

    >>21

    これ聞かされたら絶望感で吐く自信がある

    いやーフラッシュかわいいし綺麗だしそりゃそうだよねーとはなるけど…やっぱつれぇわ

  • 23二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 19:15:49

    「ということだったんです」
    「え?え?ええ?」
    トレーナーの動転はさらに激しくなる。フラッシュのデート、更に夕食の誘いときたものだ。焦りが大きくなる。
    「そ、それで……」
    「もう、慌てないでください。…そんなに、妬けます?」
    「妬けるよそりゃ。妬けないわけないじゃないか」
    大人の余裕ゼロの態度。情けない態度だが、フラッシュにとっては可愛らしくてしょうがない。
    「落ち着いてください。心配してることはありませんから」
    そうしてフラッシュはいつかの日の続きを語る。

  • 24二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 19:30:13

    フラッシュは戸惑いを見せる。確かに久方ぶりに楽しい、と思えた時間だった。でも、心の奥がきしむ。この軋みを無視して、差し出された手をとれば楽になるだろうか。
    「……はい」
    返答を聞いた男は、逆にふぅ、と小さくため息をついた。
    「そういうの、よくないよ。まぁ、試すようなことをいった僕も悪かったけどさ。なんか、君、少しやけっぱっちになってない?」
    「そ、そんなこと……」
    ない、と断言はできなかった。
    「君さ、トレーナーとはどうだったの?」
    「え?と、トレーナーさん、とは……」
    その名前を出されて怯む。
    「ただの、トレーナーと、ウマ娘、です」
    「なんだいそれ?マスコミ用の言葉かな」
    「いえ、ですが、そういうほかはなく……」
    「そんなことないでしょ。トゥインクルシリーズを超えて、あれだけの成績を得てなお、更に一年を走り抜けたわけだ。ただの、なんて言えるはずがない」
    男の目の真剣そのものさに、フラッシュは怯んだ。
    「でも、成績をあげたウマ娘とトレーナーが、恋人関係になるわけでは…」
    「そりゃそうさ。盟友のような関係、悪友のような関係、まぁ色々あるよね。でも君がそういう言い方をするってこと自体が、少なくとも君はトレーナーに大して、思慕の情をもってたってことじゃないか?」
    「あ……」
    「君、この遊園地で常に誰かを懐かしむ顔をしてたからね。その顔は、誰か想いを寄せる人がいる人の顔だよ」
    「わ、私……」
    体が震える。泣き崩れそうになる自分を押さえるのに、精一杯になるフラッシュ。

  • 25二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 19:44:06

    「ま、あれだ。僕は君を慰めるようなことは出来ないな。その想いのぶつけ先はわかるね」
    「で、でも私……」
    「まあわかるさ。君がトレーナーをおもっているのに、伴ってはいないということは、そういうことなんだろう。そのふっきれなさからすると、伝え損ねてしまったのかな」
    「……はい」
    「だろうね。まあ、すぐにじゃなくてもいい。気楽にいける距離じゃないからね。でも、もう一度だけでも顔をあわせなきゃダメだ」
    「……」
    「まあ、君のトレーナーが、君を受け入れるか、それとも断るかはわからない。が、きちんとしたトレーナーはさ、心を踏みにじることはしないと思う。受け入れられないなりに誠意は示すはずさ」
    「……」
    「専属のトレーナーを得るっていうのは、ウマ娘側にしても一大事だけど、トレーナー側からしても一大事なのさ。これが、初めての、ともなると、成績の如何にかかわらず、ともかく重い」
    「……はい」
    「その最初が、君のトレーナーにしては君との四年だったわけだ。どれだけの想いが込められていたかは、君が一番わかってるのだろう。で、君から見て、トレーナーは、一緒に走れないならポイ、なんてするような薄情な男だったのか?」
    「ありえません!あの人は、そんな人じゃない!いつだって、優しくて、いつだって、同じものをみてくれて、いつだって…」
    あとは言葉にならなかった。

  • 26二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 19:56:38

    「ん、だろうね。僕は直接はあったことはないけど、真摯な人柄なのは伝わっている。それこそ君の走りからも伝わるくらいには、ね。だからさ、恋の如何にはかかわらず、胸を預けてみるのは悪くないんじゃないかな。君の結論が出るまでは付き合ってくれるだろう」
    「……はい」
    前を向けば男は満足したような顔で頷く。
    「いい顔だ。君、結構魔性だね。惚れそうになった。少し」
    「……え?」
    冗談目かした言葉に顔をこわばらせる。
    「いや、自分の魅力を認識したほうがいいということだ。隙がないと自分では多いと思ってるけど、滅茶苦茶あるタイプだな。僕がちょっと悪いやつだったら少し強引にいっていたよ」
    そういわれると反射的にフラッシュは男から距離を取る。
    「そう、それくらいでいい。と、こんな時間だし、せっかくだし送っていこうか?」
    「け、結構です!お断りします」
    「いやなに、これに関しては下心ではないよ。運転するのも僕ではないし。まぁ、かわりにジェットコースターよりも刺激的な帰路を約束しよう。彼女の僕への説教もたっぷりと聞かされることにはなるだろうが…」
    彼が手を振る先には、深紅のきらびやかなスポーツカーが輝いていた。

  • 27二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 19:59:30

    ト、トレンディ...

  • 28二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 20:13:48

    「…ですから、心配するようなことは何も…」
    そう説明するフラッシュに対して、トレーナーは珍しく膨れっ面となる。
    「トレーナーさん?」
    「くそ、その日本人……フラッシュと、フラッシュとデート…ちくしょう…」
    「トレーナーさん、ですから…」
    「許せないよ気障な男…フラッシュをたぶらかして」
    「誑かされてません!!もう……。そんなに思うなら、引退の時ひきとめてくれればいいのに……」
    今度はフラッシュが膨れっ面だ。思わずの一言に、トレーナーはのけ反る。
    「ぐふっ…う、うう、それは…フラッシュ」
    トレーナーにとっては致命傷になりうる一言。まあ確かに、もしトレーナーがこういう想いを抱えることをあの時点で自覚していれば、そもそもこういうことは起きるはずもない。彼女のくるしみになんら気がついてやれなかったのは、今でも後悔の一つである。
    「と、トレーナーさん?しっかり、しっかりしてください」
    「ふ、フラッシュ…そ、その一言だけは控えてくれると助かる。言いたくなるのはそりゃそうだろうけど…」
    「もう言いませんから。ほら……それに、元気になってくれないと困ります」
    「え?」
    「え?じゃないです、もう。…前来た時と今回は違うんですから。……本音をいえば、これから、ですよ?」
    「これから?」
    はぁ、とフラッシュは溜め息をつくが、少し小声である。
    「前回と違って、遊園地の終わったあとの予定、大きくとってますよね」
    「あ、ああ…」
    「意味、わかってくれていますよね?」
    腕を絡めれば自然とフラッシュの胸が腕にあたる。日付をまたぐ大きな予定。意味するところを察しないわけがない。うつむくトレーナーに、フラッシュは耳元で艶かしくささやく。
    「トレーナーとウマ娘ではできなかったこと……いっぱいしましょうね…」
    二人して真っ赤になったあと、寄り添う二人は街のきらびやかな光に溶けていった。

  • 29二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 20:15:47

    了!

    フラトレではあるんだけどなんだかよくわからん話になっちゃった。
    お相手がああなったのは、なんというかフラッシュの魔性に抗うにはお相手いる人じゃないと無理かなって…

  • 30二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 20:16:18

    >>22

    ご、ごめん。注意書き必要だったかこれ…

  • 31二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 20:17:12

    先に激甘フラトレを摂取していなければ危なかった…!

  • 32二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 20:18:04

    >>30

    いや、ちゃんとハッピーエンドだったしこれはいいスパイスだった!描写して正解だった


    でも吐きそうなくらい苦しかったのは本当です

    いつも素敵なSSありがとう!

  • 33二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 20:20:49

    >>32

    トレーナーさんもめちゃめちゃハッスルしちゃうんだ…嫉妬心メラメラモードなんだ

  • 34二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 20:21:36

    >>32

    いや、あれだよ。この展開でハッピーじゃないのはやばすぎるよ!

    書いてる俺が破壊されるよ!!

  • 35二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 20:32:30

    >>31

    ありがとう。言われてみれば緩衝材になっていたのか…

  • 36二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 20:39:06

    >>27

    ナンノコトカナ

  • 37二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 21:03:16

    感想とか反応ありがとう。めちゃ嬉しいです。
    新旧とわずかいてくれていいでよ。これ好きとか

  • 38二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 23:32:54

    自分で読み直したらいくらなんでもトレーナーさんもフラッシュも煩悩つよすぎる気がしてきたな…でもこんなもんかな

  • 39二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 00:05:38

    4~5年以上我慢してたからね
    仕方ないね
    もっとイチャつけ

  • 40二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 00:07:06

    好きO(:3 )~

  • 41121/10/05(火) 00:18:18

    >>39

    まあ…若いしね!この環境じゃ抑圧されたぶん取り返し発生しちゃうか!



    >>40

    ありがとう。

  • 42121/10/05(火) 08:19:05

    朝からちょっと艶あり
    フラトレ

    「もう、本当にヤキモチやきさんなんですから」
    「返す言葉もないよ……」
    「だいたい、おわかりですよね?少なくとも、身を任せてないとか、そういうことは。トレーナーさんが、しっかり身を持って確認してるくせに…」
    生々しい物言いに、赤面するトレーナー。
    「そ。そういうんじゃないよ」
    「と、すると?」
    「そこまで到達するとかじゃなくて、そもそも、悔しいし。羨ましいかったんだ。フラッシュとデートするなんて」
    「ふふ、私とのデート、いちばんいっぱいしてるのにですか?スケジュールを読み返せば一目瞭然です」
    「いや、確かにおでかけはかなりしたけどさ、デートはこうして君と付き合いはじめてからだろう?だから…」
    「…私は、今振り替えれば、少なくともシニアの頃にはデートだって意識してましたけれど、トレーナーさんにとっては単なるお出かけだったんですか?確かにスケジュールのお題目としてはそうでしたけれども。そうですか。お仕事だったんですね」
    「そ、そんな目で見ないでくれ。お出かけでも、君との時間は楽しかったのは間違いないんだから」
    「……冗談です。それに、いつも言いますけどヤキモチやいてくださってることも、不満に思っているわけじゃないんですよ。むしろ嬉しいです。良かったね、なんて言われたら立ち直れません」
    「フラッシュ、少し刺がないかい?」
    「ありませんとも。去年の今頃ならいいかねない、なんて思っていませんから」
    「ふ、フラッシュ……」
    「もう、そんな頼りない顔をして……可愛らしいんですから」

  • 43121/10/05(火) 08:36:49

    「でも、そうですね。私の場合、貴方よりずっとヤキモチを妬いてしまうと思います」
    「そ、そっか。それは見たかったな」
    「……そういうことがないっていう状況だったのには、少しほっとしてしまいましたけどね。…悪女ですね。私。貴方にお相手がいないというのにほっとしてしまったなんて」
    少し困った顔をするフラッシュに、なんとも返す言葉がない。
    「本音を言うと、帰ってくるまで不安でした。現役時代も、モテてましたし。トレーナーさん」
    「は、俺が?」
    「…自覚はありませんよね。やはり。記者は変人のあの方でしたから心配ありませんでしたが、G1の大舞台では、スタッフとか女性アナウンサーとか、プライベートのお誘い、されてましたよね?」
    「いや、それは…。まあ、社交辞令みたいなものかなって。君のことがあるからそれどころではないのもあるし、そういうお誘いは受けたことがないけれども」
    「存じています。…でも、私が引退した後、接触、ありませんでしたか?」
    「そ。そういえば……」
    フラッシュにつれられてカフェ巡りが趣味とかいたせいか、フラッシュ引退後にやたらめったらおすすめにつれていってくださいとか言われたこともある。
    「やっぱり…」
    「まあ、それもオススメのお店教えておしまい、くらいだったよ。気がすすまなかったから」

  • 44121/10/05(火) 08:55:24

    「今思えば、あれも君に縛られていたことにはなるのかな…ごめん。そういう意味じゃない」
    悔恨の滲んだ述懐は、トレーナーが栄光の四年の思い出に引きずられた一年半を過ごしたが故である。
    「いえ、でも……トレーナーさんには申し訳ないですけれど、縛られててくださってよかったです。表舞台に多くたつことになっていたら…狙われていましたよ?」
    細指がトレーナーの顎に添えられる。フラッシュの細められた目がトレーナーを刺す。
    「トレーナーさん、可愛らしいとこありますから。色々引き寄せてしまいます」
    押し付けられたドレスの胸元は刺繍で谷間が透けて見える。それを意識の他にやるのはトレーナーには無理だった。

  • 45121/10/05(火) 08:55:53

    ちょい時間なのでまたのちほど。昼か夜か。

  • 46二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 09:47:21

    最高です!

  • 47二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 09:50:26

    更新ありがとう

  • 48121/10/05(火) 12:13:11

    「私みたいな悪い女に、落とされてしまったかもしれませんね?」
    しなだれかかる彼女に対して、体が硬直し高揚する。シャツをくいっと捕まれ、潤んだ瞳は彼の目を離さない。ほんのりと甘い香りも鼻腔をくすぐる。喉の奥をからからにしながら、崩れそうになる理性をおさえる。世の男にこれに耐えうるものなどいないだろう。史上に謳われる傾国も、フラッシュには遠く及ばない。
    「…君に落ちない男はいないよ」
    かつてフラッシュの走りを、その魅力をターフを通じて世にしらしめた、しらしめようとした男が、今はこの魅力を誰にも知られたくないなどとおもっている。トレーナーは自らの中にある独占欲を彼女に丸裸にされてしまう。
    「ええ、そうですね。私も自身がどう見られているか、自覚がないわけではありませんから。でも、貴方ときたらあんなに手間をかけさせてくださって。…貴方でなければ、スケジュールにならないスケジュールを立てる必要すらなかったのなも?なんて考えてしまいます」
    振り替えれば、怒涛などという言葉ですまない攻勢を受けている。よくよく自分でもなんで耐えられたんだという疑問が浮かぶほどに。
    「お伝えしておきますが、私に余裕はありませんでしたから。策を練って、距離を測って…全力でした。常に」

  • 49121/10/05(火) 12:27:32

    「いっぱい妬いてください。私もいっぱい妬きますから。妬いた気持ちの大きさの分、刻み付けあえばいいんです……」
    唇が瞬間触れる。お互いに握る手のひらの指を絡める。そう。邪な想いすら刻み付けあう。お互いが、誰のものかということを。



    つ、つぎはおさえる…

  • 50二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 12:28:34

    やっぱり純愛が最高なんだよな

  • 51二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 12:31:15

    …も、もう無理ぃ〜…ねっとり甘々すぎるぅ…
    でも好き…

  • 52二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 12:32:09

    ゲロ甘フラッシュを接種しないと死ぬマンになった

  • 53二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 12:35:51

    無限に続くやつじゃん
    最高かよ

  • 54121/10/05(火) 19:11:02

    このままだとトレーナーさんがおさるさんに…

  • 55二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 19:14:57

    抑圧されてぶん多少はね

  • 56121/10/05(火) 19:24:03

    フラッシュみておさるさんにならないほうが無理やな!ヨシ!!

  • 57121/10/05(火) 22:04:56

    まさかの見習いクン第二弾。
    感覚的にはなんか単行本のおまけに入ってそうな感じのお話。


     幸せが逃げていきそうなため息、それを吐く姿すらも美しい。いや、愁眉という言葉もある。愁いの濃さがは美女の美しさを陰らすどころか、艶を与える。ある洋菓子店、黒髪の淑やかなパティシエのその吐息に、店の者たちは目を奪われる。とはいえ、仕事が疎かになることはない。いつも通り寸分の乱れもない動き。その合間に吐息の重さはあれど、他の所作には乱れがない。凛としたたたずまいから放たれるからこそ、気だるげな吐息すらも鮮やかに見えるのである。

     彼女の深いため息の原因は一つ。それが何であるかということは、洋菓子店の皆は知っている。彼女を過去栄光に導き、そして今、彼女の最愛の人となっているかのトレーナー氏。彼が一週間程、彼女と彼の愛の巣を離れて出張に出たからである。
     凛とした佇まいからは想像できないくらい、彼女は最愛の人と甘い生活を送っている。そのことは傍から見ていてもわかる。ルームメイトなどと当初は周囲にいっていたが、終業後に彼に出迎えに来てもらっている時の様子を見せつけられて以来、菓子店で彼女と彼がただのルームメイトと思うものはいなかった。店舗に並べられている菓子より甘いそれを見せつけられて思いっきりあてられた彼らは被害者というべきかどうなのか。エイシンフラッシュという才気煥発で新進気鋭、気立てもよくグッドルッキングなウマ娘と同じ職場というだけで十分うらやましすぎるので、これくらいの罰は受けてもらわないといけないかもしれない。見習い君はワンチャンなどありえるわけもないことを突き付けられて血反吐を吐くのであった。

  • 58121/10/05(火) 22:31:41

     ともあれ、一週間である。一週間くらいなら平気、一年半離れていたこともあったのだから、と彼の前で張る必要のない見栄をはりまくってしまった彼女は、仕事を完璧にこなしながらも時折ため息をこぼしていた。なお、彼が出張に出かけたのは本日の朝というわけである。大丈夫か、エイシンフラッシュ。周囲は気を使うが、面と向かって聞くと大丈夫の一点張りであるのが彼女らしい。そんな彼女をじっと見つめて見とれるのは見習い君である。
     見習い君にとって、エイシンフラッシュはこの店でいえば後輩にあたるが、もとよりマイスターの家で基礎を仕込まれている彼女は待遇としては別格であり、この店の主力陣に切り込めるクラスであるので、菓子職人としては後塵を拝しているというか、むしろ教わる立場である。フラッシュはやや言葉が多いところはあるが、理論的であるので、見習い君としては彼女によって理解が進んだところが多い。職人としても尊敬すべきこの絶世の美人と一緒の職場にいれるだけで、今の見習い君としては十二分に幸せといってもいいはずである。
     
     しかし、ため息をつくエイシンフラッシュの姿は、見習い君の心に再び大きな炎をともした。邪な心ではない。純粋に彼女の寂しさを和らげてあげたい。普段、フラッシュは業務を終えると挨拶もそこそこに家路につく。もちろん、愛しの彼氏…。フラッシュに今、ため息をつかせているトレーナーの為にである。ため息を深くついているフラッシュが家に帰る。でもそこには愛しの彼氏がいないわけである。彼女は現実の寂しさに泣き崩れてしまうであろう。そんなの悲しすぎる!そうだ、美味しいお酒でも飲んで、気でも紛らわせることができれば。代わりにはなれなくても、緩衝材くらいになれれば…!見習い君の空回りの思いは、ここに極まった。そうすれば…!

  • 59121/10/05(火) 22:37:39

    ほわほわほわわーん

     薄紫の、ある感情を増幅させるような照明の一室。見習い君は、フラッシュに腕をひっぱられて、こんなところに連れてこられてしまった。
    「ふふふふ、フラッシュちゃん?ここは…!」
     いかにもベタベタな回転しそうなベッドに二人で腰掛ける。フラッシュは頬を赤らめて上目遣いでみつめる。
    テンパッて心臓がとまりそうになる中、フラッシュの唇から言葉が紡がれる。
    「見習い君、心配してくれてありがとうございます。おかげで、楽しめました」
    「い、いやいや、俺、フラッシュちゃんの寂しそうな顔がみてられなくて……」
     精一杯きりっとするが、まったく締まらない。ちょっと、目を閉じていて。そういわれて目をばっちり閉じる見習い君。しゅる、しゅる、と衣擦れの音がいやでも興奮をあおる。かなり情けない顔をしている。
    「お待たせしました」
     目を開けると、シーツを体にまとったフラッシュが、ベッドに横たわっている。これだけで見習い君にとっては鼻血ものだ。
    「……見習い君、私の寂しさを、うめてください」
    「ふ、フラッシュちゃーん!!」
     見習い君はアニメーション鑑賞で培った某怪盗3世ばりのダイブをかましてしまうのであった。

    ほわほわほわわーん

  • 60121/10/05(火) 22:48:41

    「な、なにやってんの、お前……」
     ドン引きの目で先輩職人に見られた見習い君は、さすがに目が覚めた。邪な心しかない。フラッシュに知られたら一生近づいて貰えないだろう。
    「お、俺、何かいってましたか?」
    「いや、なんもいってないけど…目がヤバかった」
     真面目にひいてる先輩の目がいたたまれないが、今は俺がフラッシュちゃんをケアしてあげるべきだ!と謎の息巻きをする。
    「そ、そうっすか。あ、その、フラッシュちゃんは?」
     先輩からかえってきたのは、あっけない無情の返答。
    「彼氏が寂しいから電話したいってメッセがきたんで、速攻帰ったけど。じっくり語り合うなら家だって」
    「え?」
    「めっちゃ嬉しそうだったよ。っていうか、フラッシュちゃんもだけど彼氏も大概重いな……いや、フラッシュちゃんケアしてんのかな。フラッシュちゃん、美人だし職人としては文句なしだけど、付き合うには相当のタマじゃないと無理なんだろうな…」
     空回りを自覚してひゅう、と心の中に枯葉が舞う見習い君。畜生!と、トレーナーに対しての羨望の涙を流し続けるのであった。



    というわけで出張編もいずれ書きたいよね

  • 61二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 22:52:00

    おつおつ!
    本当、よくぞトレーナーに再会するまで食べられませんでしたね…

  • 62二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 23:14:31

    >>61

    なんかデートくらいなら受けてくれるかもみたいな空気感はある。

    それはそれとして結局トレーナーさんが比較になるので持たない

  • 63121/10/06(水) 00:40:59

    というわけで上の補完。
    おやすみ前のトレフラ小話

    「ごめんな、フラッシュ。急に連絡して」
    「いえ、確かに驚きはしました。仕事が終わって急にでしたから。てっきり、トレーナーさんに何かあったのかと」
    1.5倍速で家事をすませ、ベッドに飛び込んで電話を取るフラッシュ。
    「心配させちゃったか、いや、俺もこんな連絡するつもりじゃなかったんだけど」
    「寂しくなってしまったのですものね」
    寂しい、そう思った瞬間に電話がなって、コールの間もなくとってしまった。まさか、彼の一声がそれだとは思わなかったけど。
    「……ああ、呆れただろう?世話の焼けるトレーナーだって」
    「ええ、呆れました♪」
    貴方も、こんなにも同じ気持ちだったなんて。
    「…フラッシュ、なんか嬉しそうじゃない?」
    「そんなことはありませんとも。ともかく、手のかかるトレーナーさんはには、罰です」
    「罰?」
    「はい、罰です。これから、寂しくならないように、帰宅までの一週間、毎日連絡してくるように。21時からの2時間をそれにあてます。」
    「ま、まあ、君と話せるのは嬉しいけど……」
    長すぎるかもしれない。でも、スケジュールに余裕はあったほうがいい。
    「それと、もう1つスケジュール追加です」
    「追加?」

  • 64121/10/06(水) 00:41:15

    「ええ。明後日、折り返しの日……たっぷりお話したいです。」
    補給は大がかりに行った方がいい。
    「わかったよ。明後日だね?明後日…。でもこの日は手前に時間を取ることができないな。しまった。…大丈夫かい?遅い時間でも」
    「はい……その方が都合がいいですし」
    「都合?」
    「ええ、食事して、片付けを済ませて、お風呂にはいってじっくり取り組みたいので」
    「ん?フラッシュ?」
    ちょっとばつがわるくて、彼に謝罪をする。言ったことを覆したのは私なのだから。
    「……トレーナーさん、ごめんなさい。一年半待ったのですから、一週間くらい、なんて軽くいいましたけど、無理です」
    「う、うん、俺も……フラッシュ不足になった。半日で」
    半日、か。私はあなたを見送ったときからだけれども。
    「大型の補給、約束させてください。あと、翌日の寝不足の罪は、二人でわけあいましょう…」
    彼には迷惑をかけるけれども、それをおそれる必要はどこにもない。
    「ん……」
    寂しさとは別のものも、貴方には受け止めてもらわねばならないのですから。
    「ありがとうございます。…今日も、時間まではおしゃべりしましょう。欠乏症にならないように。それと……明後日の予行演習もしておきたいです。」
    「う、うん?」
    意味ありげな台詞を湿った声でつぶやくフラッシュに戸惑うトレーナー。その日は、トレーナーの今日の出張の様子を事細かに聞いて、ご満悦となるフラッシュであった。快眠を得られたことは言うまでもない。

  • 65二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 01:26:22

    甘々の過剰供給で頭がダメになる
    本当にいつもありがとうございます…

  • 66二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 06:04:12

    >>65

    ありがとう。

    なんか気がついたらだだ甘になってしまう不思議

  • 67二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 10:06:29

    ちょっとしたお話でフラッシュのお掃除の時の話を予定

  • 68121/10/06(水) 12:08:49

    お昼なので途中まで

    フラッシュのトレーナーさんのお部屋掃除

    「きっちり1時間、予定通り」
    満足げに額の汗を拭うフラッシュ。掃除を終えたのは、出張で不在のトレーナーの寝室である。もっとも最近は彼はフラッシュの部屋で眠ることもある。当初はフラッシュも毎日一緒が良い、なんて考えてはいたものの、同じベッドで眠ろうとすると、抑えがきかなくなるということがすぐに判明した(トレーナーが我慢している顔があまりにフラッシュ特効のためとも言われる)ため、週に2日という厳しい掟が課せられることになった。例外について記載があついのはこの際無視していこう。というわけで、今もまだこの寝室は使われ続けている。
    使わないとはいえ、一週間放置はフラッシュとしては気にかかる。部屋の主の許可を予めへて、スケジュールに登録しておいたのである。

  • 69二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 12:13:02

    >>68

    我慢している顔があまりにフラッシュ特効のため


    …甘い…甘すぎる…

  • 70二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 12:16:47

    結婚したら本当に搾り取られてしまうのでは

  • 71二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:32:58

    お昼のつづき

    ついつい部屋を見回してしまうフラッシュ。引っ越しの時も付き添ったのでどういうものがあるかというのはおおよそ把握している。空きの多いCDラック、新書、文庫の敷き詰められた本棚。ラックや本棚の上には、エイシンフラッシュとの四年間で勝ち取った数多の勝利の証。勝利直後の様子や、インタビュー、そしてウイニングライブの写真が添えられている。年譜のようなそれを懐かしげに眺める。ダービー、秋天、有馬、URA、DWTといった特等席のレースたち。どれも輝かしい思い出だけれども、フラッシュの目を引いたのは有馬とURAの間に挟まれた一枚の写真。
    「これ…」
    この写真に写っているのは、自分だけではない。栄誉を貴方と勝ち取りました。そんな思いを込めて、式典の後に二人で撮影した。フレームごと手にとって懐かしげに見つめる。まだ二人で走れる。そんな幸せに満ちた写真。スケジュールに縛られなくても、終わりがなくなったのではなく、伸ばしただけに過ぎない。そんな自覚のなかった時の二人。たかだか二年前なのに、いやに自分が幼く思えて、こうして見ると無邪気なところはあっても大人びた彼にはまだ不釣り合いにみえる。

  • 72121/10/06(水) 18:58:42

    「この頃の私が今の私を見たら、どう思うでしょうね」
    羨むのだろうか。蔑むのだろうか。どちらにせよ、なんだかひどく愛おしいそれをそっと棚の上に戻す。
    彼の仕事机にはディスプレイ二つと大きめのヘッドホン。付箋にまみれた専門書の数々とノート。あのトレーナー室で見かけたものも多くある。目線の高さには、ポストカードのスタンドが見えた。ぴかぴかに磨き上げられたものとは違うけれど、丁重にあつかわれた二枚の絵葉書。まだそんなにたってないはずなのに、懐かしい。
    「これ、私の……」
    彼の送ってくれた葉書への、私が送った故郷の絵葉書。そこに記された文面は二つともシンプルだった。それこそ、彼の送ってくれたものと同じように。

  • 73121/10/06(水) 19:15:43

    元気でやっています。ただそれだけを伝える葉書。私は彼にそれだけを返している。彼からの事項の挨拶のかかれたそれを受け取った時は、やはり嬉しかった。でも、そこにかかれたシンプルすぎる文面をみた時、嬉しさを上回る別の感情が陰をさしたのも覚えている。自分から何も言わなかった癖に、いっぱしに彼には求めていることに自嘲した。期待していたのだと思う。そこに、私への愛が綴られていることを。でも、距離が離れていることに言い訳して、メッセージのやりとりも、電話もしなかった。意図的にレースに関する情報をいれないようにもした。滑稽そのものだ。
    今この手にあるのは彼への短い短い返信。もし、思いをぶつけて、返ってこなかったら。そんな臆病さだけがのせられた、やりとりを拒むような、あたりさわりのない挨拶。

  • 74121/10/06(水) 19:30:18

    でも、そんなそっけなさの込められた絵葉書を、彼は大事にしてくれたのだ。私との、薄い繋がりを。でも、私も彼からのその時候の挨拶をしまって、寝る前になんとはなしに眺めることが多かったのだから、ひょっとして私たちは似た者同士のところもかるかもしれない。元気でやっています。その言葉が嘘であるのは、彼と再会した時にわかってしまった。あんな顔を私の前で見せたのははじめてだったのだから。

    ──元気、とは言わないな。あの時の彼はどちらかといえばなんとかやっていけてる、の方が相応しい。日本に来てからトレセンに探りをいれた時に、ルドルフ会長が述懐していた。わかっている。心配させたくないなんていうことは。それでも、少し寂しい。優しい嘘のこめられたそれを、遠い故国で私は大事にしていました、なんて言ったら、彼はなんていう顔をするのだろう。自分の部屋から、ポストカードスタンドに彼から貰ったぶんを並べる。日本の空と、ドイツの空が描かれた絵葉書にちょっとした自戒。お互い、もう心を隠さずす済むように。そう祈りをこめて。


  • 75121/10/06(水) 19:32:41

    甘さ控えめちょっとせつなくなっちゃった。たまにはこういうのもいいよね。

  • 76二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 19:38:33

    切ないのも好きですよ!

  • 77二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 19:39:48

    出張から帰ったらまたゲロ甘になる奴じゃないですかー!

  • 78二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 19:45:54

    >>76

    感想ありがとう。

    とりとめもない内容になりがちだけど楽しんでくれたらうれしい。



    >>77

    感想ありがとう。

    まあ、かえってきたらそりゃえらいことになるよね…

  • 79二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 19:47:31

    このひとときの切なさが甘さをより引き立ててくれる…いい…

  • 80二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 20:10:01

    >>79

    感想ありがとう。ちょっと毛色違うのもいいよね

  • 81二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 22:20:26

    >>74

    だいぶ台無しなおまけ。

    でもベタ展開が好きなんだ、ごめん…


    しんみりと絵葉書をみつめるフラッシュ。が、デスクの上の棚の、背表紙が表になっていない本が一冊目に入る。割りと几帳面なフラッシュは、一度それが目に入ると気になってしょうがない。トレーナーは雑なタイプではないことはフラッシュの実感にあったので首を傾げるが、うっかりだろうか。ただ放っておこうにも気になってしまう。大判の参考書に挟まれたそれを、本が痛まないように丁寧に手をとる。重さはウマ娘にとっては大した問題ではないが、丁寧に扱うのにはかえって力をつかう。ふぅ、と一息つくフラッシュだが、その表紙をみた瞬間、フラッシュの表情はぴしっと割れる。

    「と、と、と、と……トレーナーさん!?」

    裏返った声で、この場にいない人物を非難するフラッシュ。そこに写っていたのは、フラッシュにとってはトレセン学園では縁がなかったが、奇縁がまさかの故国でできた、あるウマ娘の写真である。深紅のイメージカラーの伝説のウマ娘が、シックだが大胆な水着をきてウィンクしている。女性の自分からみても惚れ惚れするスタイルを水着で存分にアピールしている。


    「まいっちんぐ!マルゼンスキーだっちゅーの♥」

    タイトル通りのポーズが男にとっては大変にまぶしい、ウマ娘関連の商品の中でもスマッシュヒットとなったファンアイテムだ。表紙の質感や箔押しの豪華さに、興味を煽る袋綴じまでついた豪華商品。ちなみに再販商品で、発行年月日は一昨年の初夏となっている。

    「わ、私がいたのに、こんな……もう!許せません!!」

    購入日は恐らくフラッシュとの四年目にあたるだろう。四年目の夏といえば、フラッシュはトレーナーとウマ娘という関係は絶対の関係であったものの、先を確認する勇気を持ちきれなかった時期だ。写真集の水着の過激さは、スマートファルコンにトレーナーの前で着ることをすすめられた、今は押し入れで眠るあの水着並である。悔しい。むしょうに悔しい。レジェンドクラスのウマ娘が相手とはいえ、写真集に負けた。いや、自分は彼の前であの水着に着替えてないので、写真集に不戦敗である。ひとしきりの悔し涙を流し終えたフラッシュ。

    「トレーナーさん……あとで覚えていてくださいね」

    目尻に涙をためて、時計を見つめて、通話の時間までを数えるのであった。そう、勝負心を秘めて。


    おまけ 了

  • 82二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 22:29:10

    ヒエッ

  • 83二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 22:35:48

    ふむ…つまりフラッシュも水着を着ればいいのでは?

  • 84二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 22:38:47

    >>83

    押し入れからひっぱり出してきて、出張中のトレーナーさんとの通話中に自撮りを送りつけろって…コト!?

  • 85二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 22:39:38

    >>84

    やめて!仕事できなくなる!

  • 86二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 23:26:11

    フラッシュのビキニだっちゅーのか…

  • 87二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 08:13:37

    朝小ネタ

    「まずは敵を知らねば…」
    敵、マルゼンスキーに罪はない。この写真集自体は敵であるが。中身をぱらぱらとめくれば、表紙から受ける印象とはだいぶ違いがある。グラビアではあるが水着ばかりではなく、ばっちり決めたポーズの勝負服の方も印象的である。ひょっとしてトレーナーさんにあらぬ勘違いをしてしまったのかと本を閉じようとする。が、折り目の癖がついたページを開くと、そこには、前屈みでフラッシュを上回るバストを見せつけるマルゼンスキーの姿があって、またスン…とした表情を見せるフラッシュ。「君のハートを狙い打ち♥」という煽りまでついていた。
    「狙い打ちさせませんが!?」
    無闇な敵対心が涌き出てくるフラッシュ。ちょっと胸が大きいからって、なんて、同室のファルコンに聞かれたら真っ先に突っ込まれそうな愚痴を口にしてしまう。
    ここを、こう、と熱心に折れ目の癖がついているページのマルゼンスキーの表情とポーズを真似てみるフラッシュ。この場にトレーナーがいたら悶絶していたことだろう。いや、トレーナーでなくても悶絶する。
    時間の枠内一杯、予習に勤しむフラッシュであった。

  • 88二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 10:12:43

    復活していたとは!人の夢は終わらねぇ!

  • 89二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 10:26:04

    眠気覚ましに効く

  • 90121/10/07(木) 11:50:45

    手にとったのがチャンネーグラビアじゃなくて詩集とかだったらロマンチックになったな…

  • 91二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 11:56:01

    水マルならしゃーないよ…天井まで回したもん(遠い目)

  • 92二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 11:58:06

    >>87

    同室のファルコンに聞かれたら真っ先に突っ込まれそうな愚痴を口にしてしまう。


    しゃいしゃいしゃーい☆

  • 93121/10/07(木) 12:46:33

    >>88

    ありがとう。ひょっとして前のスレみてくれた人かな。


    >>89

    ありがとう。栄養素になってくれるなら嬉しいぜよ


    >>91

    ありがとう。チャンネーの水着ばしっと決めててかつセクシーですごくいい…


    >>92

    ありがとう。ファルコンと一緒に水着選びとかもいいよね

  • 94121/10/07(木) 19:33:59

    プチフラトレ。
    出張中でないときの一幕。

    「ほ、っほ」
     規則正しく息を吐きながら、窓から見える夜空と、隣のパートナーを眺めつつランニングマシンの上を走るトレーナー。
    「いい調子、いい調子です。」
     歩調は同じながら、ランニングマシンからの負荷の高さの違いは見て取れる。エイシンフラッシュは、同じようにふ、っふ、と息を吐いて、徐々に回転を速くする。購入のきっかけは、フラッシュのトレセン時代から行っていた、スイーツの研究。食べ歩きデートじゃないの?とからかうでもなく真剣にファルコンに問い直されたことのあるそれを、ルームシェア…などと取り繕う必要がもはやない同棲後に再開し、再び習慣となった後のある一言。
    「うーん、太ったかな……」
     軽い一言であるが、彼女にとっては一大事である。エイシンフラッシュはトレーナーとの関係を今の関係で終わらすつもりは毛頭ない。まだスケジュールに明記するほど、そこに至る道が見えていきているわけではないが、ただ、この同棲の延長上に待っているのは彼と家族になることだ、ということを譲ることは絶対にない。一度手放した経験が、彼女を強くしているのかもしれない。ともあれ、健康を損ねることはよろこばしくないことは明白である。自分のために連れまわしたことが原因でトレーナーが健康を損ねて、それが先立たれることに繋がるのは耐えられない。最悪の未来を回避する為に、フラッシュは立ち上がった。スイーツの研究に関してはライフワークに近いので、やめることは出来ない。彼を伴わないというのは選択肢にはない。トレーナーにスイーツの知識を述べたり、感想を言いあう時間は彼女の幸せな時間の一つである。と、すると、とる手段は必然的にこちらになるであろう。
    「トレーナーさん、これからは毎日体重と体脂肪の計測を。それと、運動の習慣づけも行いましょう」
    「……それしかないよね。とはいえ、習慣づけといってもなぁ」
     運動といっても一口には言えない。ウマ娘用のトレーニングは人間に適用できないし、そもそもレース用の体つくりがしたいわけではない。うーん、と唸っていると、フラッシュは体育館改修が完了したお知らせを思い出した。
    「そうです。思い浮かばないのでしたら、まずは、ジムにいってみませんか?」
     そんなわけで、二人は家でトレーニングウェアになりそうなものを見繕うと、近場の体育館に足を運ぶのであった。

  • 95121/10/07(木) 19:55:45

     とはいえ、そんなに洒落たものがしまってあったわけではなく、ランニングウェアとジャージくらいしかない。今回は試し、ということで、ジャージとシューズを手にとって、体育館のトレーニングルームに向かう。トレーナーが着替えを終えて待ち合わせ場所に向かうと、ちょっと懐かしい赤のジャージに身を包んだフラッシュがはにかんでいた。
    「まだこのジャージ、似合うでしょうか」
    「ああ、とても。…懐かしいよな」
     学園では制服より見慣れた姿。さすがに再会してからは見ることがなかったので、少しどきっとしてしまう。じゃあ、行ってみましょうか、と手をとられたトレーナーは、トレーニングルームに足を踏み入れるのであった。トレーニングルームは満員とまではいかないが、器具が埋まるくらいは人がいる。ストレッチする人、ウェイトトレーニングする人、ランニングマシン等で汗を流す人、休憩する人、様々である。自分たちと同じ年代の人たちから、ちょっと上の健康が気になり始める年代の人たち、お年寄りとそういう意味でも様々だ。まずはストレッチから。入念に二人で体をほぐすが、多少フラッシュへの視線が気になる。まぁそれは珍しいことではない。フラッシュは数々の栄冠を勝ち取ったウマ娘である。不躾でなければ、視線を向けられるのはやむからぬことである。時折こちらも見られるのは気になるといえば気になるが、彼女のパートナーということで好奇の目にさらされているのだろうか。

  • 96121/10/07(木) 20:24:06

     十二分に体をほぐし終えた。運動不足の極みのような生活を送っているわけではないので、ストレッチはさほど苦ではない。柔軟に関しては固くなってると感じるところが多々あったので、これから取り戻していこうと思う。インストラクターの案内では、次は有酸素運動でウォーミングアップである。丁度ランニングマシンが二台あいていたので、そちらを利用することになった。
    「トレーナーさん、あんまり無理はしないでくださいね。」
    「ああ、わかってる。…でも、なんだか不思議な気分だな。俺がトレーニングされているみたい」
    「いいですね、それ。私があなたのトレーナーさん?」
    「……なんだかこそばゆいな。それ。それじゃあ、負荷は、と」
     当然人間用の、かつちょっと弱めの負荷を選択した。フラッシュはウマ娘用のものである。とはいえ、当然現役当時ほどの負荷は選択しない。顔を見合わせてから、歩くような速度で、次第にかけるようにして、スピードをあげていく。それにともなって、息がだんだんと荒くなってくる。
    「大丈夫、ですか?トレーナさん」
    「ああ、まだまだ……」
     思ったより負荷が高いが、予定通りこなせるだろう。ペースをはやめていくフラッシュはさすがである。次第に再び周囲の視線を集めている。
    「ふ、ふ……と、トレーナーさん、あと少しですよ」
    「あ、ああ……」
     疲労度が高まる中、少し奇異なかんじをトレーナーは受けていた。おかしい。先ほどまでは周囲はチラリと目線を向けていたが、今は露骨に目を見開いてフラッシュを見つめている。ガラス窓越しの外の人々まで、である。前を向いて、少しガラスに反射するフラッシュの姿を見て、息をのんだ。
    「ふ、フラッシュ!!」
    「は、はい?」
     いきなりのトレーナーの声に驚くフラッシュ。トレーナーが声をあげたのも無理はない。リズミカルにランニングマシンの上を走るたびに、大きくジャージを盛り上げる二つのお山が、小さく、かつ重さを感じさせる形で揺れている。その奥を見なれているハズのトレーナーですら目を奪われるのである。周囲を憎むが、しかし見てしまうことを非難するのも難しかった。
    「く、クールダウン、クールダウンしよう」
    「は、はい。わかりました」

  • 97121/10/07(木) 20:39:59

     歩幅を小さくして、テンポを変えずにお互い一分ほど走る。トレーナーのほうは思わぬ不意打ちと元からの疲労でペースは一定ではなかったが。ようやくにして、人々はフラッシュから目を離した。ちょっとばつが悪そうに。
     まだウォーミングアップだというのに顔からはじまってたっぷり汗をかく。タオルで顔を軽くぬぐうフラッシュ。
    「ちょっと負荷をかけすぎたかも……。クールダウンによい頃合いだったかもしれません。流石トレーナーさんです」
    「い、いや、そういうことじゃないんだけど…」
    「ふぅ…暑い…」
     そうつぶやくと、フラッシュは無意識にジャージの胸元のファスナーを下す。瞬間的にトレーナーはフラッシュの前に立ち、他にそれが見られないようにする。ジャージの下のスタイルにあった体操着が濡れてみえるのは、さすがに他にみせるわけにはいかない。
    「ふ、フラッシュ……」
    「あ…ご、ごめんなさい」
     トレーナーの視線と顔の赤さで意図を察する。トレセンではやや無防備な子がいるが、そういう点はトレーナー(特に男性トレーナー)にとって、特に困った点ではあった。意図に気が付いて胸元を隠してくれたことにほっとしたトレーナー。
    「ちょっと気を付けてね」
    「は、はい…」
     ぺこりとトレーナーと周りにフラッシュは頭をさげる。ふぅ、落ち着いて息を吐いたトレーナー。ちょっと休憩、といって、休憩場でペットボトルに口をつけてゆっくり飲む。爽やかな風体に、それがよく似合っている。が、こちらも暑さ故に軽くジャージをはだける。男性故に気にすることはない。ランニングウェアの男性もこの場には多いが、フラッシュにとって気に食わないのは、確実に年頃の女性の視線が彼に向っていることである。ちょっと誇らしく思えてしまうところもあるにはあるが、フラッシュにとってとるのは一択である。予約済みであることを見せつけるようにふらっとトレーナーを抱きしめるフラッシュ。別のプランを練りましょう。そうささやかれると、トレーナーは従うしかないのであった。

  • 98121/10/07(木) 20:56:14

     というわけで、結局人目を気にしないですむように、購入することにしたのがランニングマシンである。いつでも出来るという手軽さはありがたいし、トレセンでの旧型を手配できるなんていう話もあったので、そちらのルートを利用することにした。ペースをあげて、ジャージを脱ぐと、トレーナーは赤面する。そういえば、トレーニング中に目をそらしていることがあったかも、なんていうのを思い返しつつ、トレーナーを励ましつつランニングマシンの上でかける。

    「…っ、はぁ、はぁ……」
     くたくたになったトレーナーは、水分をとるとくた、と床に倒れこんでしまう。
    「トレーナーさん、ちょっと無茶でしたね。もう少し次は軽くしましょう」
    「う、うん……」
     ランニングウェアに、はりつくほどびっしょり汗をかいたトレーナー。疲労による苦悶の顔に汗がつたうのをフラッシュはまじまじと見つめ、呼吸音に耳をぴくっとさせる。
    「…トレーナーさん、寝転ぶなら、ベッドで、ですよ」
     ひょいっと膝の裏と背中に腕をいれて、抱きかかえてしまうフラッシュ。ウマ娘ならこの程度は造作もない。どきりとしたトレーナー。
    「い、いや、自分で立てるから」
    「大丈夫ですよ。私が連れていってあげます」
     さすがに大の男が愛する人にこういう形で支えられるのは恥ずかしい。逆ならしてみたいのだが…。フラッシュの凛とした表情は、男女問わずを引き付ける。騎士の佇まいといおうか…。だが、それに見とれていると何か違和感に気が付く。
    「ってあれ、フラッシュ、なんでそっち…」
    「……」
     無言であるが、フラッシュも疲労とは別の意味でちょっと息が荒い。かかり気味、というやつである。
    「あの、フラッシュ?ルールだと今日は自室……」
    「トレーナーさん」
     有無を言わせぬきりっとした顔。その顔に言葉がなくなる。フラッシュはぐっと抱えたトレーナーを抱きよせて、耳元でささやく。
    「例外十二条、ご存じですよね」
     否定の一つもしないフラッシュに、トレーナーには選択肢というものが存在しないことを思い知らされるのであった。フラッシュの寝室の扉はぱたん、と閉じられた。
     

  • 99二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 20:59:08

    最低でも12は例外があるのかよォ!!!

  • 100二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 20:59:46

    汗だくでうまぴょい!?

  • 101二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 21:06:27

    忘れていた、ここのフラッシュはメチャクチャ強いんだったわ…

  • 102二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 21:07:45

    強すぎる...!

  • 103二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 21:13:36

    トレーナー♂️「や、優しくしてください///」

  • 104121/10/07(木) 21:18:04

    >>99

    感想ありがと。抜け道を万全にしておいたんだ。でも順守するつもりはあるんだ。……お母さんに電話したときにほどほどにねって言われて思わず無言になったりしてしまってはいるけど。


    >>100

    感想ありがと。トレーナーさんもフェロモン強めだと思うんだ。


    >>101

    感想ありがと。ゲームだとトレーナーさん強いからいいとこみせたいんだけど、弱体化トレーナーさんからはじまったからフラッシュが相対的につよいんだ。トレーナーさん優位もかきたい。


    >>102

    感想ありがと。でも強いのもそうだけど、なんのかんのでジャージ+体操服にはトレーナーさんも大ダメージ受けてたんだ。


    >>103

    感想ありがと。たぶんこうなると思う。

    フラッシュ「……善処します。期待はされないでくださいね?」

  • 105121/10/07(木) 21:19:57

    ひとつひとつの分量たいしたことないけど、このスレと前スレ含めると、目を通すのが結構大変なくらいな量になってしまった気がする。

  • 106二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 21:24:57

    このスレももう半分消費してるのね

  • 107二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 21:28:09

    ブレーキが壊れたフラッシュ
    既に体力が限界なため気絶する元トレーナー

  • 108121/10/07(木) 22:04:54

    >>106

    さすがに今回完走は難しいだろうけど、ネタちょくちょく吐き出したい。というかこんなにssかいたのはじめてかもしれん…SSかく意欲ださせてくれるキャラって貴重なんだよね



    >>107

    終わったあとのトークできっとフラッシュを満足させるんだ

  • 109二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 22:39:31

    このスレに出会ってからフラッシュのことをめちゃくちゃ好きになった。この甘々を味わうのが最近の楽しみになってる。作者様ありがとう

  • 110121/10/07(木) 22:57:03

    >>109

    ありがとう。感想うれしい。本編のフラッシュめちゃめちゃかわいくて綺麗でかっこよいからたっぷりかみしめてくれ…!

  • 111二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 23:05:38

    もっと見たい…あと100スレ分書いて❤️

  • 112二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 07:38:26

    保守

  • 113121/10/08(金) 07:54:48

    今日の投下は夜になるかも
    フラトレ以外になるかもしれないのですみません(まだ固まってない)

  • 114二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 07:56:40

    マルゼンさんとか書いてもいいのよ...?(強欲)

  • 115二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 12:22:29

    (マルゼンは)お前が始めた物語だろ!

  • 116121/10/08(金) 19:53:40

    >>114

    >>115

    この時空のマルゼンさんも一回かきたいとは思ってるので気長にまっていてね。

    今日は違うのいきますが。

  • 117121/10/08(金) 20:34:42

    トレフラですが外からみたトレフラというパターン。
    いったん途中で区切る形になるかもしれません。


    「訂正します──予定ではなく、彼女のトレーナーです」
    穏やかではあるが、明瞭な言葉で私たちにそう告げた彼を見て、あの時安堵を覚えた。この人なら、きっと娘を導いてくれるのだろうと。

    「めでたいものだね。トレーナーさんが決まったというのは」
     穏やかな風貌の異国の紳士。日本から飛び立つ飛行機の中で、彼はパートナーに語り掛ける。
    「はい、誰もが専属のトレーナーを得られるというわけではありませんから。チームという形もありますが、専属の方ですと、決め細やかなサポートが期待できます」
     彼女はかつてターフを駆け抜けただけあって、トレーナーの重要さを承知している。娘の性質から考えて、できれば専属トレーナーを得られれば、とは願っていた。
    「こうしてフラッシュの顔を見に来たタイミングで、フラッシュの担当となるトレーナーさんの顔を見ることができた。感謝しないといけないね」
    「はい。それにしても、若いトレーナーさんでした。春からのトレーナーさんでしょうか」
     まだ青臭さが抜けていないようにも見えた、その青年の顔を思い出す。
    「心配かい?」
     ふっと紳士は微笑んだ。その態度にレディは苦笑する。
    「貴方こそ、担当してもらえるなら経験豊富なトレーナーの方がありがたい、などとおっしゃっていましたよ」
    「うん。フラッシュは少々頑ななところがあるからね。そういう点を解きほぐしてもらえるとしたら、経験豊かな年配のトレーナーさんの方が期待できるかなと考えていたんだ。でも、そうだね。ターフを走破した先達として、君の目から見た彼はどうかな?」
    「私見で言えば、貴方がおっしゃるように、フラッシュには新人の方は向いていないとは考えていました。けれど、不思議と任せられる気がしました。あの声を聴いたときに」
    「ああ、わかるよ。私も直感だけれど、こういう時の直感は侮れない。それに、元々、フラッシュの選択に口をはさむつもりはなかったからね。フラッシュが彼を信じるのなら、我々も信じるのみ、だろう?」
    「はい。あの子の成長を近くで見守り、導けないのは残念ですが、その役目は彼にお任せしましょう」
    「ああ──フラッシュ、君のことは、故郷で見守っていくよ」
     空の上で、彼らは愛娘の前途に幸あらんと願いを込めていた。

  • 118121/10/08(金) 20:52:11

     周囲の祝福を受ける中、満面の笑みで愛娘にメッセージを送るマイスター。
    「本当におめでとう、フラッシュ……」
    「声を聴きたいところですが、まだフラッシュにはやることが残っていますから。落ち着いたら、連絡をくれるでしょう」
    「ああ、それにしても、見事なものだよ。この大舞台で、完璧な仕事をやってみせた」
    「はい、本当に……。私たちの誇りの娘です」
     東京優駿、その重みを十二分にわかっているからこそ、フラッシュの母は万感の思いを込めた。
    「彼にも感謝しないとね」
    「ええ、あれはフラッシュ一人でなしえた走りではないでしょうから」
     この走りは、あの時みた選抜レースの延長上にある。あの時はまだ結果が伴わなかったが、こうして万人が異を唱えようがない結果がここにはある。
    「フラッシュが選んだ彼には、見えていたのかもしれないね」
    「はい、きっと。それが良いトレーナーの条件でしょう」
     あの時、彼に任せてもよいという直感は間違っていなかった。栄光の舞台に上がる愛娘を遠い空から見て、両親は日本に届けるような思いで歓声を送った。

  • 119121/10/08(金) 21:17:34

    「結局、こうして娘の姿を見に来ることになったね」
    「はい、しかもこうした大舞台でなんて……。前回日本に来た時には、考えられませんでした」
     フラッシュの選抜レースから3年に近くなるころ、秋の東京を夫妻は訪れた。フラッシュからは一言伝えられている。トレーナーさんと三人で、見届けてください、と。
     三年ぶりに、娘を託したトレーナーの姿を見る。随分と風格が備わっているようにも見えたが、そわそわとした様子でもある。きっと自分たちが緊張させてしまっているのであろう。
    「トレーナーさん、お久しぶりです」
    「……あ、お久しぶりです。フラッシュさんのお父さん、お母さん。彼女の雄姿を見届けにきてくれたこと、心から感謝いたします」
     深々と頭をさげるトレーナー。少し硬いが、真摯な人柄という印象はあの時のままだ。
    「顔を上げてください。トレーナーさん、感謝するのは私たちの方なのだから。ね?」
     フラッシュの母も優雅に微笑んで、それを肯定する。
    「本当に、フラッシュの歩んだ道は誰にも誇れるものとなりました。お礼を申し上げます」
     こちらも深々と頭をさげられると、トレーナーは困惑する。
    「いえ、これがフラッシュさんの持っていた力というものです。俺はちょっとそれを引き出す手伝いができただけだと……いえ、そういう言い方はよくないですね。二人で勝ち得たものです。ここまでの道は。フラッシュさんを任せていただけて、ありがとうございました」
     確信を持った表情がまぶしい。このままだとお互い感謝のしあいが続いてしますね、とほほ笑んだ婦人。あわてて、トレーナーは着席を促した。

  • 120121/10/08(金) 21:26:20

    「万全を、期しました。夏から、いえ、今までのすべてをここにかけるつもりできました。フラッシュさんが、尊敬するご両親に最高の姿を見せたいと願っていたから……」
    「トレーナーさん……」
    「トレーナーの立場なら、ご両親に勝つ、と宣誓すべきでしょう。ですが、すべてをかけるつもりで来たウマ娘は、フラッシュさんだけではありません。だから、勝つ、とはお約束できません。でも、それでも、すべてを目に焼き付けてください。お願いします」
    「……ふふ、いわれるまでもありませんよ」
    「ええ。われらが愛娘の晴れ舞台。愛娘が信を置く貴方との努力の結晶を見逃すことなんてできません」
    「……ありがとうございます」
     ゲートに入るフラッシュに祈りを込める両親とトレーナー。ファンファーレとともに、エイシンフラッシュの最高の晴れ舞台の幕がきっておとされた。

  • 121121/10/08(金) 21:45:46

     轟音のような歓声が東京レース場に響き渡る。興奮冷めやらぬように抱き合う夫妻。トレーナーは対照的にふぅ、と息を吐いて、拳を握りしめた。ターフをかけて勝利を誇るエイシンフラッシュと、夫妻の目があう。ターフにおいて特別な礼をささげれば、観客の視線はフラッシュの両親に注がれる。うれしいやらはずかしいやらで少し舞い上がっている二人を、トレーナーはいきましょう、と二人の愛娘の元へと導いた。
    「……トレーナーさん、お礼ではなく、一言言わせていただきたい。……素晴らしかった。今日のフラッシュは特別に」
    「その言葉は、フラッシュさんにかけてあげてください」
    「いや、貴方にも伝えたかった。伝えさせていただきたかったのです」
     トレーナーも夫妻の暖かさにじんと来るものがある。この二人がフラッシュを育てたのだ、という実感をあらためて得る。
    「……ありがとうございます。トレーナー冥利に尽きます。あと一回、最後の有馬も、この走りに負けないくらい、彼女が誇れる走りにしてみせます」
     溢れる決意を感じる。そうか、あと一回か、と夫妻は顔を見合わせる。
    「そうでしたね。フラッシュのスケジュールではそうなっています」
    「はい。彼女の将来の志望については伺っています。彼女がケーキや菓子のことを話すときの目は本当に輝いていて…。ですが、もう少しだけフラッシュさんを私にお預けください。俺も彼女同様、最後までやり遂げて見せます」
    「トレーナーさん……」
     決意を口にしつつ、少し震えているのがわかる。フラッシュの父は、なんと声をかけたらよいか悩むが、愛娘の声がその空気を吹き飛ばした。トレーナーは二言三言フラッシュに告げると、家族水入らずになるようその場を後にするのだった。

  • 122121/10/08(金) 21:46:52

    というわけで中断。

    また続きは書きますが、違う話を書くかもしれないので、直近になるかはわかりませぬ。
    あまりお待たせしないようにします。

  • 123二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 05:30:29

    おつおつ
    期待してます

  • 124二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 05:57:36

    >>123

    ありがとう。やっぱりあまさひかえめだとだしにくい

  • 125二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 06:07:07

    昨日の夜見逃してた
    供給ありがてぇ〜

  • 126二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 06:13:30

    >>125

    ありあり。ちょっとこの両親のは甘さ控えめなのは許してくだしあ。


    この後はフラッシュとの会話→帰省の一幕→フラッシュの帰郷→日本への再度の見送りみたいなかんじになるかと。

  • 127二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 09:16:04

    このレスは削除されています

  • 128121/10/09(土) 10:41:15

    >>121


    ちょっとだけ続き。中断ちょくちょくしつつの予定



    ホテルのレストランで談笑にふけるエイシンフラッシュとその両親。直接顔をあわせて食卓を囲むことなんて、本当に久しぶりとなる。屈託のない笑顔のフラッシュ。父と母はそこに成長したが故の変化と、ドイツから飛び立つ前からかわらないもの双方を見た。両親からの心からの褒詞に涙ぐむフラッシュは、それをぬぐって、一転緊張気味に二人に向き直った。察した両親は微笑みをたやさないままにフラッシュに向き直る。

    「私たちに告げたいことがあるのだね」

    「……はい」

    娘の言葉に耳を傾ける二人。フラッシュは意を決して、ゆっくりと唇を開く。

    「私は、この日本で、トゥインクルシリーズを駆けるにあたって、スケジュールを立てました」

    「ああ、知っているよ。私たちに見せてくれたね」

    「貴方が決意の目で私たちの前にスケジュール帳を開いて、計画を説明してくれたことを、今でも覚えています」

    懐かしい、リビングでの愛娘の様子が今でも思い出される。

    「はい。私は覚悟を持ってあのスケジュールをたてました。紆余曲折あり、全てがスケジュール通りにはなりませんでしたが…あの人が未来を見据えて、私が何のために走るかを見失わないように導いてくれたことで、本当に多くのものを獲ることができました。このスケジュールの終わりは、今年の末まで。私はそこで引退して、ドイツに帰り、マイスターへの道を歩み始めることになります」

    「……うん。愛しい娘が、私たちと同じ道を選んでくれることは嬉しい」

    「私も、パパ、ママと同じ道を歩むことが楽しみで仕方ありません。でも」

    そこまで言えば、概ね両親も察する。寂しい反面、そういう思いを持てるものを娘が得られたというのとは、親としての喜びでもある。

    「……少しだけ、この選択の結論を、先延ばしにさせてください」

    娘の言葉は、両親にとっては想定したものよりトーンダウンしたものであった。

    「……そういう言葉が出るということは、走りたい、ということではないのですか?」

    「……気持ちとしては、あります。でも」

    苦悶の滲む声。何が正しいかという答えのない選択。

    「トレーナーさんは、どうおっしゃっていましたか?」

    一泊、フラッシュの言葉が詰まる。

  • 129121/10/09(土) 10:59:54

    「トレーナーさんには、私のスケジュールを見せています。…彼は、少なくとも夏からずっと、今年が最後だと、そのつもりで私を導いてくださっています」
    「…そうだろうね。次が最後だと、私たちにもおっしゃっていたよ。フラッシュが悔いのない走りが出来るように、と」
    新人トレーナーは総じて熱量が多く、トレーナーとしての原理に忠実である。ウマ娘の善き未来のために。とりわけその性質を強く持っているように見える彼が我欲の為にフラッシュにレースへの道を続けることを強いるということはないだろう。それを破らせるほどの情動が、彼の中に芽生えでもしない限りは。
    「考え続けます。有馬を最後とするか、もっと走り続けるのか。どちらを選ぶのか、まだわからないでいます。ですが、もし、当初のスケジュールと違う道を選ぶことになったら、その道を選ぶことを許してください」
    軽挙妄動ではない、考え続けると、いや、ずっと考え続けているといったことなのだろう。フラッシュの父は成長したフラッシュに微笑む。
    「私は、君の選択がどのようなものであれ、君を尊重するよ。勿論、バックアップも惜しまない」
    「お父さん……」
    「私もフラッシュの今日の走りをみて、もっと走っているフラッシュを見てみたい、とも少し思いました。もちろん、パティシエとして我が家で辣腕をふるう貴方も見てみたいです。どちらにせよ、選択は貴方次第です。どちらの貴方も、楽しみにしていますから」
    「お母さん……」
    両親の優しさに包まれて、目尻に少しまた涙がこぼれた。

  • 130121/10/09(土) 11:13:22

    ホテルで別れの挨拶をすませて、踵を返すフラッシュ。
    「……フラッシュ」
    「お母さん?」
    迷ったような顔で、愛娘を呼び止めた母は、その近くによる。
    「一つ、いいそびれました」
    「は。はい」
    「先程のことは、もう一人、お話すべき方がいるはずではないですか?」
    「……」
    はっと言葉につまるフラッシュ。フラッシュの肩を抱き、滔々と語る。
    「私も専属トレーナーさんと二人でターフを駆けた過去があります。専属トレーナーは、担当バに全てを注ぎます。でも、担当バが引退すれば、それで全てが終わりではありませんね?」
    「…はい」
    「貴方が続けるか、続けないかで、トレーナーさんを巻き込んでしまうことは自覚していますか?」
    「…トレーナーさんを」
    「別に、だからといって、全てを今決めなければならない、ということではありません。ちゃんと、お話をしましたか?」
    珍しくフラッシュは、母から少しだけ眼を背けた。
    「…いえ、ですが、あの人も迷っています。そのことは、私と同じですから。だから、二人で悩むのです」
    何か、言い聞かせるような言葉。
    「フラッシュ……」
    「大丈夫です。トレーナーさんのことなら、大丈夫ですから」
    「お話、するのですよ?」
    「…然るべきときに、必ず」
    フラッシュの母はふぅ、と息をついて、学園に帰る彼女を見送った。一抹の不安が現実にならぬことを祈って。

  • 131121/10/09(土) 11:14:17

    中断。

    次が続きになるか別の話になるかは未定です。

  • 132二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 11:22:48

    一蓮托生、運命共同体ともいうべきウマ娘とトレーナーという関係だからこそ、進路選択もお互いにとってより重いものとなる…甘さだけじゃないところ、すごくいいと思います

  • 133121/10/09(土) 19:19:36

    >>130

    続き、同上。


     暮れの中山レース場のゲートにおける、フラッシュの相貌には、秋とはまた違う満ち足りたものが見えた。エイシンフラッシュの父と母はようやくの安堵をえた。ゲートが開いて、ゴールまで飛び込んで。快勝の一言で表せるほどの見事なレースを見せつけたエイシンフラッシュ。秋の時の回答はおおよそ想定できる。フラッシュの父は中継のフラッシュを遠い目で見る。愛娘の成長というのははやいものである。

     来年も、走り続けます。明瞭な言葉がメッセージとして、両親に告げられていた。二人は顔を見合わせてほほ笑む。

    「土壇場にはなるけれど、フラッシュが答えを得られてよかった。だからこその勝利だろうからね」

     あのフラッシュが予定を変えてまで貫きたいと思える、走りたいという思い。

    「はい、そういう思いを人生において得られるというのは、素敵なことですから」

     ただし、愛娘の勝利の高揚感から、少し離れてみたとき、一点だけ気になる点はあった。終着点を最初この有馬と定めていたのに、続けることを決めたのがこの有馬の直前となったことだ。あの秋の時点で、愛娘は自身の迷いをトレーナーに打ち上けてはいなかった筈である。短い時間の邂逅ではあったが、トレーナーの実直さは見て取れる。フラッシュが迷いがあることを打ち明けていたならば、フラッシュを尊重しつつ、その迷いの解消に力を入れていたことだろう。その場合、もっと早くフラッシュはこちらに決意を伝えた筈である。ただ、早期の解決を狙うのではなく、フラッシュがいつでもどちらも選べるように、そういう心の砕き方をしていた可能性もある。変にとりこし苦労をしているのかもしれない。今は、勝利を祝福するだけでよいのかもしれない。


     年が明けて翌月、フラッシュから珍しく写真が送られてきた。不格好な形だが、自身の記念碑を挟んで、トレーナーと二人で映っている。

    「仲睦まじく、いい写真だね」

    「はい、本当に。でも、こうして見ると……まだ子供なところはありますね」

    「いや、私にだってまだ子供なところはあるからね。はしゃぐのはわかるよ」

    「さすがにフラッシュの前では見せれませんけれどね」

     高揚し、胸を抑えるようにするフラッシュに、穏やかな瞳で、一歩引いたところに立とうとするトレーナー。その瞳は、彼女を見守るものとしてのそれに見えた。

  • 134121/10/09(土) 20:03:07

    予定の帰郷ではなく、フラッシュの一時の帰郷。写真が送られてきたときには同行者があることを娘から伝えられていた。急であることを謝ったのちに、あの人に、故郷を見せたい。熱の籠った声色でそうつぶやいたフラッシュ。誰とは言わずとも、両親は承知している。愛娘の3年間をともに歩んだ、おそらく家族をのぞけば一番フラッシュが信頼を置く人物。娘の立場からどうみえるかはわからないが、顔を合わせた機会が少なくとも、両親にとっても大恩人にあたる人物である。準備について伝えたら大袈裟といわれたが、恩人に対する礼をかくことは許されない。精一杯を尽くして、フラッシュに対する3年のお祝いと、大恩人に対するもてなしの準備をするのだった。

     空港で愛娘とトレーナーが並ぶ姿が目に入る。故郷ということで少し張り切って、トレーナーをリードしようとする様子が見受けられる。眺めていてもよかったのだが、父と母は顔を見合わせてから、大切な人々に声をかける。
    「フラッシュ、トレーナーさん!」
     二人がこちらを見つけると、愛娘はトレーナーの腕をぐっとつかんで引き寄せる。

     お祝いの食事は、デザートも含めて盛大なものになった。ホテルでの食事だけでは語り切れなかった三年を、たっぷりフラッシュの口から語ってもらった。トレーナーは穏やかな顔で聞き耳をたてていた。最初はトレーナーさんの口からもきいてみたい、という思いはあったが、少し話して、保護者に対する報告じみたものになるから、ということで、フラッシュにその役を任せた。レースの話、各種のイベントの話、学業についての話、パティシエの道への研鑽の話。トレーナーも合いの手をいれて、フラッシュの見せた美点について補足をしてくれる。数々の学友たちに関しては、フラッシュ本人だけでなく、彼女を支えたことに対する感謝をトレーナー自身の思いとして述べていた。特にスマートファルコンというフラッシュと同室の親友に関しては助けられた、見習いたいところがたくさんある、と二人していっており、いつかお礼を述べねば、せめて精魂込めたお土産を、という思いを強くするのであった。

  • 135121/10/09(土) 20:43:37

    途中、美味しいと目をきらきらさせて言うトレーナーに両親が心の底からほっとしたりして、ともかく菓子の仕込みにいろいろ反応してくれるのもうれしくて、両親からしても時間は瞬く間にすぎていった。夜も更けて、ドイツの名物や、夏の湖水浴などという目玉について話しつつも、フラッシュは多少から回っていたせいで疲労がたまったのか、話している間にうとうととし始めた。まだお話する、と強弁しかけるフラッシュを、トレーナさんの前で醜態をさらしていいのかい、と説得すると、ようやく自室に向かった。見送ったフラッシュの母が戻ると、トレーナーは再度向き直り、謝罪を口にする。
    「フラッシュさんのお父さん、お母さん、もう一年、フラッシュさんをお預かりします。フラッシュさんのマイスターへの道、一年の遅れがでることをお許しください」
    「……トレーナーさん、何故謝るのですか?フラッシュの望みですのに。先ほどのお話を聞くまでもなく、トレーナーさんからは、フラッシュは勿論、私たちも大きな幸せを受け取っています。貴方の下で成長することがなかったら、このドイツでフラッシュが大舞台で活躍する様を楽しみにすごすことができたかどうか」
    「ありがとうございます。ですが、彼女が望んだ以上に、きっと俺が望んだせいでもありますから」
    「貴方が?」
    「はい。暮れの有馬で、フラッシュさんがゲートに向かう前に、俺は伝えました。彼女の走る姿がみたいと。彼女は、まだスケジュールは決まっていないとして、10年を描いたスケジュールを破り、俺に応えてくれた」
    「……」
    「彼女が望んでくれたということに、偽りはないと感じてします。本当に走る気がないのでしたら、そこは俺の願いの通るところでないし、俺がみたいのはあくまでフラッシュさんが望んでターフを駆ける姿です。ですが、それでもきっかけは彼女でなく自分です」

  • 136121/10/09(土) 20:47:52

    「……あの子から、貴方に伝えたのではないのですね」
    「え?」
    「……いえ。ともかく、顔を上げてください。一年であろうが、二年であろうが、私たちはフラッシュと貴方の選択を重んじるつもりです。そのことが、我々の幸せなのですから」
     感極まって、トレーナーは改めて頭をさげる。
    「ありがとうございます。ですが、おそらく、俺とフラッシュさんの道は、あと一年となるでしょう。フラッシュさんの緻密さに比べれば雑なプランではありますが、俺はフラッシュさんが本当に心から走り切ったといえる道を、この一年で作り上げるつもりです」
    「トレーナーさん……」
    「ただ徒に走ればいいわけではないんです。彼女が最高に輝ける走りを見せれる道、その為にすべてを惜しみません」
    「長く共にあればいい、というわけではないのですね」
    「はい。それに俺も、フラッシュさんがマイスターというもう一つの夢に向かって走る姿を見てみたいというのもあります…たくさん、ケーキや菓子の名店を巡らせてもらいましたから」
    「そうですか。貴方は、フラッシュの幸せを願ってくれているのですね」
    「もちろん。それが、トレーナーというものですから」
     屈託のない表情を見せるトレーナーが眩しい。だけれども、幸せを願うというあり方は、少しの不安を内包した。ともに歩まない道というのは、本来脆いのだから。フラッシュの母親は、トレーナーに語り掛ける。
    「トレーナーさん、フラッシュのマイスターの道を祝福してくださるというのでしたら、これはだいぶ先の話にはなってしまいますが、一つ、お約束させていただいてもいいですか?」
    「……俺にできることであれば」
     フラッシュの母親はトレーナーの掌を取る。
    「それでは、約束してください。フラッシュが、職人として、一人前とはいわずとも巣立った時、フラッシュにあってやってくれませんか?」
    「……それは、どういう意味でしょう?」
    「いえ、きっとフラッシュは、成長した姿を、一番お世話になった貴方に見せたいはずですから」
    「そうですか。もしそう思ってくれるなら、俺は果報者です。…お約束させていただきます。その時は、もちろんこのドイツにも駆けつけます」
     真摯な瞳に、嘘偽りはなかった。手から伝わるぬくもりも、きっとこれがフラッシュがすべてを預けたくなった相手なのだろうと思うに十分であった。

  • 137121/10/09(土) 20:49:01

    中断。

    中途半端ですが、ちょっと思ったよりボリュームおおくなってしまい…。
    あとここからかくのがきついけど、近いうちには届けるようにします。

  • 138二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 20:51:54

    書くのってエネルギー要るもんね…無理せず続けてもらえれば

  • 139二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 20:53:41

    お疲れ様です

  • 140121/10/09(土) 20:55:24

    >>138

    感想ありがとう。

    ちょっと甘々成分が展開上だしづらいのがあるんですよね。

    自分のペースでかくのでそこはご心配なく。


    >>139

    感想ありがとう。

    ちょっと平坦で読みづらいかなとも思いますが、フラトレがああなっちゃうまでの道と考えていただければ。

  • 141121/10/09(土) 22:53:45

    すみませんちょっとキリが悪かったので短いですが。


    >>136

    の続き。


     ドイツの二人の滞在期間、フラッシュ達家族は、トレーナーを最上の客として迎え入れた。厚情に困惑と染み入るものを感じつつ、フラッシュ達家族とともにドイツの家庭の味と、様々な風景を楽しんだ。観光とはちょっと違う異国の味をかみしめる。

     温厚な夫婦は愛娘と、そのパートナーともいえる恩人を見送る。思い出を振り返りながら、謝辞を述べるトレーナーに、フラッシュの父は良いところでしょう。またいらしてください、と述べる。それが形通りの挨拶のみでなく、本心が述べられていることはわかる。

    「ドイツに足を運ぶことがありましたら、必ずこちらにご挨拶させていただきます」

    「ぜひ、トレーナーさん、娘をよろしくお願いします」

    「……はい!」

     その明瞭な一言に違わず、エイシンフラッシュの四年目の足跡は日本のターフの中にきらめき、夫妻に喜びをあたえた。厳しい戦いを強いられたのは間違いない。だがそれでも、その足跡はより輝きを増して見えたのである。そして、エイシンフラッシュの最後の激闘となったレジェンドたるミスターシービーへの挑戦。語り継がれるであろうその戦いを経て、その名を不動のものとして、彼女はターフを去ったのである。


     フラッシュの走りたいという願い。それを最高の形として、トレーナーはかなえることに成功した。

    やはり彼に任せてよかった。あの時の直感は間違いではなかった。それをしみじみと思う。ただ、夫妻がフラッシュと彼に託したかった、親としての淡い願いは大きく外れることとなった。ドイツへの帰省から一年、エイシンフラッシュ帰郷の時。


    「ただいま、お父さん、お母さん」

     笑顔でそう両親に帰郷を告げる彼女の隣に、彼女が最も信頼した人物はいなかったのである。栄光を背負って再び故郷の土地を踏んだというのに、一年前と違って、その笑顔は陰を隠そうとするそれであった。ただ、どうあろうと自分たちのできることはきまっている。

    「おかえり、愛しいフラッシュ」

     精一杯の笑顔で、愛娘を故郷に迎え入れてあげることだけであった。


    続!!

  • 142二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 05:59:33

    続きが気になる締め方だ..

  • 143121/10/10(日) 09:03:27

    >>141


    続き。帰郷編です。


     帰郷してからのエイシンフラッシュは、パティシエの修行に明け暮れた。ご近所や常連の人々からは度々日本でのレースについての話題が持ち上がることがある。フラッシュは決まって、懐かしそうな顔をして思い出をつらつらと語るのである。が、話題がトレーナーのことに及びそうになると、とたんに顔をこわばらせ、胡麻化そうとする。自然と、トレーナーについての話題は禁句として扱われるようになった。

     両親が当初憂慮していたような、例えば何も手につかなくなってしまうとか、そういう類の大きな心の傷を負ったわけではない。日本滞在中も研究は怠らなかっただけあって、菓子に対する感覚の鋭さは健在で、見習いの域は既に超えている。いずれは自分たちのあとを継ぐような職人になる道に曇りはみられない。一方でプライベートのフラッシュには日本に飛び立つ前にはなかった陰をまとうようになった。終始暗い顔をしているわけではない。ただ、例えば、現在の日本のレースの中継を目から遠ざけたり、例えばカフェ巡りをしている時に、ふとした瞬間に喪失感を称えた瞳をするくらいではある。親心として、それを癒してあげたいとは思うものの、どうすれば良いかということはわからない。エイシンフラッシュの母も競技者人生を送ったことがあり、トレーナーという存在の重さはわかる。そういった類の思いを抱いたこともあった。が、娘のそれは、その時の自分よりも遥かに重いものであろうというのは、おおよそ去年の帰省時にも見て取れた。競技者としては、そこからの一年が充実していたことは結果からも見て取れる。引退式も画面越しではあるが、そこに悲哀はみられなかった。が、そこから見えないところで、フラッシュは小さな問題を抱えてしまったのであろう。一度、意を決してトレーナーさんに抱えているものを打ち明けてみたらどうか、と伝えたことがある。娘はびくっとして、首を横に振って告げた。お願いだから、トレーナーさんには何も言わないで、と。手を離れても、迷惑をかけるウマ娘なんて、思われたくないと。トレーナーとウマ娘として、最高の関係を築くことができたのだから、泥を塗る真似はしたくない、と。

     最高の関係。それが生み出したのが時折滲む娘の苦悩なのだろうか?ひょっとして、と一つだけ問いを重ねる。

    「貴方の思いは、彼に伝えましたか?」

    「……」

     

  • 144121/10/10(日) 09:13:35

    再びの無言。そこからフラッシュは精一杯を繕うような顔で答えを述べた。
    「……はい。貴方をトレーナーに持てて、幸せでした、と。最高のトレーナーとウマ娘になれました、と」
    「……それが、貴方の思いですか?」
    「ええ。それ以上に、トレーナーさんに、彼に伝えるべき思いはありませんでしたから」
     そう言い切るフラッシュの唇は震えている。それだけではない筈、とここで自分が娘を問い詰めても、もう何にもならない。きっと娘は、そう終わることこそが最高の関係だ、なんて、結論付けてしまったのだろう。邪念と思われてもすべてをぶつけるべき、なんていっても、今の娘には通じない。フラッシュの母は、いましばらくは時の力に頼ってみることにした。

     時候の挨拶のポストカードが、日本から届いた。今時珍しい手書きの文字ではあるが、書かれている内容はいたって簡素である。差出人を見たフラッシュの母は、ため息をついた。これを娘に見せるべきだろうか。しかし、迷っている間もなく、フラッシュが、母の手にとっているポストカードの差出人を見て、奪うように手にとってしまう。書かれている文字をいとおしげに見る娘には、彼に伝え損ねた思いそのものがあった。が、悲しみの色彩を帯びてしまう。一度はそのポストカードを母の手に返そうとするも、フラッシュはその手を一度戻して、私が貰っていいですか?と母に問いかける。母の返答は、返事は必ず、という一言だけであった。

  • 145121/10/10(日) 10:13:38

     ある日、店に珍客が訪れた。日本からの来訪者。
    「エイシンフラッシュさんのご両親のお店は名店だと伺って。この機会に足を運ばせていただきました」
     直接顔を合わせたことはないが、フラッシュの両親も知っている。日本の至宝、皇帝と称えられしウマ娘、シンボリルドルフ。フラッシュも彼女と親しいわけではない。トレーナーは併走の依頼をしたが、皇帝とそのパートナーの鑑識眼から、シービーに白羽の矢がたったから、四年目に一度だけその圧倒的な力を見せつけられた時以外となると、生徒会長としての彼女しか知らない。
    「エイシンフラッシュ、久しぶりだね。うむ、その姿、板についているというべきか」
    「あ、ありがとうございます」
    「自慢の娘ですから。ルドルフさんは、どのケーキをご所望です?」
    「そうですね。お土産用も見繕う必要があるのですが……。まずは、甘さを控えたシンプルなケーキを。こちらのケーキなら、トレーナー君とのティータイムの充実は約束されたようなものでしょう」
     トレーナー、という言葉に反応して、フラッシュは静かにルドルフから離れるようにする。ルドルフは珍しく狼狽えるが、理由を推察して自らのうかつさを呪う。
    「申し訳ありません、ルドルフさん。娘は、その……」
    「いえ、こちらが迂闊でした。やはり、彼女も、傷を残さないわけがないか」
    「も?」
    「…二重に迂闊でしたね。いえ、彼女の元トレーナー君のことです。」
    「……彼に、何か?」
    「いえ、よくある話といえばよくある話です。少々、抜け殻のようになっているといったところでしょうか。不甲斐ないといえば不甲斐ないですが、最初に担当したウマ娘とあれだけの鮮烈な成績を残して、四年を駆ける……。ベテランならいざしらず、切り替えがうまくいかないでしまうのはやむを得ないことではあるのです。ただ、もう一年近くとうにたっている。いささか引きずりすぎという誹りもあることはある。今はトレーナー君の下でサブトレーナーについてもらっていますが」

  • 146121/10/10(日) 10:15:06

    「そうですか、それで……」
     フラッシュが見ていないところでは時折中継の情報などを見るが、彼の名前が登場するのを見たことはなかった。
    「彼のことも、心配してくださるのですか」
    「はい、それは勿論。娘を一流の競技者として活躍させてくれた方として恩もありますし、こちらに顔を出していただいたこともあります」
    「ああ、そういえば一時帰省に同道したことがあるという話を聞いたことが。そうでしたか」
    「ええ。娘を任せてよかった、と思うに足る人物でした。娘がもし誰かと添い遂げるなら、こういう方がよい、とも」
     ただ、そういう思いはあっても、現実はそうはならなかったというだけのことである。
    「……そこまで認めてもらえるとは、彼も果報者ですね。しかし、そうだな……。こうなると、縁は切れたとは到底言い難いか」
     こちらの言葉から耳をふさぐように離れたフラッシュの方に視線を向ける。
    「今はまだ、か……」
    意を決して、フラッシュの母はルドルフに提言する。
    「ルドルフさん、こんなお願いは本来すべきではないのですが、娘が落ち着いて、彼への思いに向き合うことができるようになった時、お力添えをいただけませんか?」
    「……必ず。当人同士の話なので、我々が口出しをすべきではないのですが、決着はつけるに越したことはない。思いを引きずるのは必ずしも悪いことではありませんが、限度というものはある。フラッシュさんと彼がどういう結論を出すにしろ、最後に笑っていられる形になるよう、微力を尽くします」
     こうして話すだけで、頼もしさが伝わる。皇帝として君臨するウマ娘ならではの信頼感というものだろうか。
    「フラッシュさんには、こんなに素晴らしいご家族がいらっしゃる。今の苦しみを、笑っていられるようになるまでの道はそう遠くないものと推察します」
    「…まぁ」
    「あ、申し訳ない。ケーキですが、一つ、変わり種も包んでいただきたい」
    「ふむ、変わり種ですか?」
     皇帝といえば質実剛健の印象があるが、一方で小粋なジョークの研鑽にも勤しんでいるという評判があり、茶目っ気もある人物なのかもしれない。
    「いえ、なに。我がトレーナー君の驚いた顔が見たくて。彼は動じない性格でね。付き合いを深めていくとどうしてもそういう思いが湧いてくる。彼を崩すのにうってつけのものがあるならば、是非に、ね」
     その瞬間の皇帝の顔は、まるで童女のようだった。

  • 147121/10/10(日) 10:16:02

    続!

    今回分投下です。そろそろ終わりがみえてきた…

  • 148121/10/10(日) 12:54:32

     日本からの珍客は一度ではなかった。遊園地に出かけたフラッシュが偶々世話になったという二人。真紅のスポーツカーを駆るこちらも伝説のウマ娘、マルゼンスキーとそのトレーナーである。引退式の華々しさと、トレーナーの大告白劇はわすれようもない。二人を連れて帰ったフラッシュは、少しだけ前を向けているようだった。トレーナーという言葉にすら過敏に反応していた時のそれはない。気前よくサインをくれたあと、これまた気前よくクリームたっぷりの甘いケーキを大量に買い込んだマルゼンスキーは、フラッシュをまぶし気に見る。
    「きっと、大丈夫。恋する乙女って強いんだから」
     眩しくて仕方がないわ。などという快活な淑女を見て、トレーナーは笑いをこらえていた。
    「んもう、君ったら、今、茶化そうとしたでしょう?」
    「していないよ」
    「いーえ、しました。もう、さっきのこと、許してないんだからね?」
    「あ、ダメだって、そう強く引っぱら……。お、お邪魔しました」
     バイビー、と軽快に去っていくマルゼンスキーと、引っ張られていくトレーナー。あり方というのは本当に様々である。嵐のような客が去った後、二人を見送ったフラッシュ。陰がきえたわけではないが、灯りがともっているようにも見えた。

     月日が過ぎ、フラッシュの父は娘にある話を持ち掛けた。自身の友人の東京での店舗についての話である。きっかけは旧友からの連絡であった。フラッシュ自身もその店には足を運んでいることもあり、父親とは別にある意味顔見知りでもあった。彼女がパティシエ志望ということは旧友も知っていたので、修行の間、少しこちらに預けてみないか、という提案をされたのである。娘の回答次第だが、彼女はトレセン学園を目指すときと同じ、力強い返答で父の問いに答えた。長らく娘を覆っていた陰りは、ようやくに晴れたようであった。

  • 149121/10/10(日) 12:54:52

    「お父さん、お母さん、行ってきます」
    「ああ、いってらっしゃい。フラッシュ」
     父と、母と再び抱擁をしあってから、改めて決意を見せる。
    「今度は、菓子職人として大きくなって、二人の前に帰ってくるつもりです」
     こくりと頷いて激励する父。その温かさを感じながら、ためらいを消してもう一つを口にする。
    「お父さん、お母さん。あちらには、私の好きだった人、いえ、好きな人がいらっしゃいます」
     誰のことか、などと聞くまでもない。
    「彼の今を、私は知りません。でも、彼に今の私を、職人としての私を見せて、その上で、私は彼にすべての思いを伝えようと思います」
    「ええ。……よく決意できましたね」
    「はい。あれから一年以上の月日が経って……。でも、そういう風には思われなくても、きっと彼は私を忘れたりはしていないのだと、そう思えるようになりました。だから、どうあれ思いは伝えます。……ちょっと泣くかもしれないけれど、その先、笑えるように。でも、もし、もしですけれど……」
     言葉を一度途切れさせて、二人の目を見る。
    「思いを通わせあうなんていうことが、叶ってしまったのならば、帰ってきたときに、彼を伴うことを許してください」
     その願いを否定する理由など、二人にはどこにもなかった。願わくば、思い通じることを願って。愛娘を乗せた飛行機は、彼女を乗せて飛び立った。

  • 150121/10/10(日) 12:56:32

    了!


    結局かなり駆け足になってしまったけど完了です!
    やっぱり波って大事!!!
    あまあま成分が足りなくなっているので、たぶん次はあまあまカップル小話です。

  • 151二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 13:00:49

    1年ずっと想い続けるのはめちゃくちゃしんどいわな…ほろ苦い…次の甘味投入が待ち遠しいぜ

  • 152121/10/10(日) 13:02:42

    ちなフラッシュさんめちゃ格好よく告白するっていってますけど顛末は前スレの通りなのでママに報告した時にあきれられたりしてる。

  • 153121/10/10(日) 13:28:37

    >>151

    感想ありがとう。ちょっと駆け足になっちゃったけど楽しんでくれたなら嬉しいです。

  • 154二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 16:30:19

    前スレ読見直してから更新分読むのも良いゾ
    苦い分甘味がスウ-ッと染みる…

  • 155二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 16:40:27

    >>154

    ありがとう。結構フラッシュもクソボケになっちゃったよ…

  • 156121/10/10(日) 19:42:00

    >>149

    おまけ。前スレの初SSも参照。


     フラッシュの母のモバイルに、メッセージが入る。電話してもいいですか、という問いとともに。東京はもう大分遅い時間であるが、今日は確かフラッシュが勝負を決めるといっていた日。一つの決着がついたということであろう。結果がどうあれ、娘の話を聞いてやらなければならない。肯定の答えを返した母は、電話を取る。

    「フラッシュ、元気にしていましたか?」

    「はい、お母さん。その……」

    「わかっています。トレーナーさんのことですね」

    「……はい」

    「そうですか。では、伝えられたのですね。トレーナーさんに、想いを」

     一年半、いや、それ以上前からためこんでいたいた思いを、ようやく彼に伝えることが出来た。それだけでもほめたたえられるべきである。が、愛娘からは答えはない。

    「……フラッシュ?」

     明瞭な回答が帰ってこないのは、ひょっとして彼に思いを受け取れない、と言われたからなのだろうか。そうであれば、腰を据えて、娘の思いをきいてやらねばならない。

    「その……お母さん、告白については、ちょっと……」

    「貴方、まさか…再会できたのですよね?トレーナーさんと」

    「はい、出来ました。コックコート、似合っているって褒めていただきました」

     声が上向いているあたり、どうも悪い回答が帰ってきたわけではなさそうである。

    「それは良かった。それで、ちょっと、どうしたのですか?」

     若干だが責めるような声色になってしまう。

    「い、いえ、告白については、する間がなかったので、また今度にしようかと」

    「……フラッシュ、電話を切りますが良いですね?」

    「お、お母さん、待ってください」

    「ドイツを出るとき、告白すると宣言しましたよね?フラッシュ。あの時の貴方の顔に偽りはなかったですが」

    「そうなのですけど、その、トレーナーさんの顔を見るまではそのつもりだったのですが、それどころではなくって…」

     ふぅ、と言い訳じみたことを口にする娘に対して頭を抱える。

  • 157121/10/10(日) 19:42:11

    「こういうのは、ずるずる行くものなのです。初動の誤りというのは、多くの場合取り返しがつかないものなのですから……せめて、再会の約束は取り付けましたか?」
     まだリカバリーできるチャンスを残しているか、フラッシュに問いかける。フラッシュは上ずった声で、それは問題ありません、と胸を張る。胸を張るなら告白してからにしてほしかったが、少し安堵する。が、まさかの一言に動揺した。
    「暫く、トレーナーさんにこちらに住んでいただくことになりましたから」
    明るく朗らかに、かつ照れ交じりの声色で話すフラッシュ。耳を疑ったフラッシュの母は問いかける。
    「……なんて?」
    「いえ、暫く一緒に住んでいただけることになったんです」
    「……ちょっと待ってください。フラッシュ、話についていけません」
    「私の予定にもありませんが、ですが、そういうことになってしまったので……」
    「なってしまったというか、貴方がしたのでしょう?トレーナーさんが押し掛けるわけはありませんから」
    「……トレーナーさんが貴方と一緒にいてくださる、というのはありがたいことですが、しかしいくらなんでも急にも程があります」
    「はい、自分でもびっくりしてしまいますが…。でも、トレーナーさんが放っておけない顔をしていましたから、自然とこうなってしまったのです」
     放っておけない。その言葉に、ふと自分がパティシエに転向する前の夫の横顔を思い出した。血は争えないものなのか、と苦笑した母。
    「放っておけなかったのですか……。それならば、仕方のないことですね」
    「……はい」
    「いいでしょう。ですが、ドイツを飛び立つ前に約束した告白は、必ずするように」
    「……善処します」
    「何故ドイツを出立したときから意気込みが後退するのです?この期に及んで」
     呆れる母であるが、とりあえず一応前進したらしい娘の恋路に、祝福を送った。
    娘とその想い人が結ばれるまでの道の到達点までは、まだいささかの距離が必要だった。

  • 158二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 20:11:09

    なんつーか、やけにリアリティありますよね
    フラッシュの人間臭さというか、不器用さが感じられて好き

  • 159二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 20:18:10

    …だ…フラトレスレが終わる何て嫌だ!10年くらい続いてほしいいいいああぁああ!

  • 160121/10/10(日) 21:45:58

    >>158

    感想ありがとう。よわよわトレーナーさんばかりかいてたけど、フラッシュも臆病なとこいっぱいあったんだっていうかんじでかいてます。


    >>159

    感想ありがとう。このスレ完走くらいまでは到達できるのかな。

  • 161二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 22:32:28

    ルームシェアへの反応で毎回笑っちゃうw
    誰だってそーなる 俺だってそーなる

  • 162二次元好きの匿名さん21/10/11(月) 07:42:36

    保守

  • 163121/10/11(月) 08:36:34

    >>161

    感想ありがとう。最初に書いた話なんだけどどうしてこうなった感は強いけど、フラッシュが強引になっちゃったんですよね。まぁ彼女の愛らしさということでひとつ


    >>162

    保守あり!

  • 164121/10/11(月) 09:37:37

    プチルドトレ

     休憩中少しまどろんでいると、視線を感じてそちらを振り返る。当然のことながら、そこに居るのは最高のパートナーである。文庫本を手に取っていた彼は、ルドルフと目を合わせるとゆっくり文庫本に視線を落とす。
    「トレーナー君、何か私に言いたいことがあったのでは?」
    「いや、そういうわけじゃないさ」
    「だが、君の視線を感じたのだが」
    「私がルドルフを見るのが変なことかな?」
    「ふむ、そう言われると私としては言葉に詰まるな」
     席から立ちあがるとトレーナーの横に席を移る。
    「朱墨爛然。読書に精を出すのは望ましいが、何を読んでいるのかな?」
    「借り物だよ。ちょっと興味があったから、お勧めのものを一冊貸して貰ったのさ」
    「へぇ……詩か。嗜むわけではないけれど、多少なら持ち合わせているから、私に言えば良かったのに」
    「いや、本当にたまたま、彼が読んでるのが目に入ってね。同僚とのコミュニケーションというわけではないけれども」
     彼が見せた中表紙には晩唐の大詩人の名が刻まれていた。詩仙、詩聖の詩、あるいは時代を網羅するような選集を避けた選択をするのは、私のトレーナーならそれくらいは目を通しているだろうと判断してか、それとも彼の同僚の趣味が多分に含まれたものなのか。トレーナーが戻した文庫への目線の先にあるのは、亡国をうたった詩である。
    「ふむ……。これかね?」
     指を伸ばし、頁に触れないようにして文をなぞる。

     傾城は最も戎衣を着するに在り――

     伺うようにルドルフはトレーナーの顔を覗き込む。
    「そうだね。君の姿が思い浮かんだのは確かだよ。勝負服を纏う君が、ね」
     顎に指を置いて腕を組むルドルフ。
    「なるほど、勝負服はまさしく戎衣、戦装束の側面を持つ。もっとも各々の個性を反映したもののため、華美なものも多いが」
    「君のは戦装束そのものと言って差し支えないと思っているよ。美しさを表現するためではなく、他者を魅了する為でもない。示威の為の装束」

  • 165121/10/11(月) 09:38:53

    「ふむ?それで、君の目には私のそれが傾城に値するとみると」
     本を開いたままに頷くトレーナー。
    「ああ。だからこそ、君の持つ天性の、そして積み上げた美しさを引き出す。皇帝はターフの上だけでなく、ステージでも最高の光輝を放っていなければならない」
     高らかに七つの冠を得たものとしてステージの上で一人歌う皇帝。ともすれば、周囲を屈服させかねない圧力をも生み出す、それでいて、頂点に立つ自分へこれから挑む者たちへの最大限のエールと、勝利を譲るつもりはないという布告。圧倒的な威圧感を和らげるのが、その生来の美貌。オリーブの勝負服で引き締められたそれを持って、皇帝はステージの上でも完璧となる。
    「もっとも、君の場合は愛らしいものでも着こなせてしまうけどね。それでも傾城といわれると、確かに勝負服を着た君のほうがふさわしいのは確かだと、少し思いふけってしまっただけだよ」
    「傾城といわれるのは複雑な気がするが、傾けるのが君だったら悪くはないな……しかし、いけない。回りくどいな」
    「な、なんだい?」
     童女のようなほほ笑みをみせたあと、目を細めて耳元で小さな声でつぶやく。
    「着てほしいなら、素直に口にしたら良いだろう?君と私の仲なんだ。回りくどい」
    「……そういうことじゃない。ただ、ふと浮かんだだけだよ」
    「そうか。ならば着て見せるのは止めておこう」
    「前言、撤回していいかな?」
    「さて、どうしようか。綸言如汗とも言うのだし」
    「……意地悪だな。君は」
    「トレーナー君が素直になれば、私も素直になる。それだけのことだと思うが。君が意地悪を続けるものだからこうなってしまったのだ。責任はとってもらうぞ」
     余人には見せない、自身だけに見せる悪戯っぽい顔に、トレーナーは愛バには勝てない、ということをまざまざと知らしめられるトレーナーなのであった。

    了!

    あまあまじゃなくてすまぬ!
    あまあまはちょっと待ってね!

  • 166二次元好きの匿名さん21/10/11(月) 10:08:49

    四字熟語わっかんねぇ!(バ鹿)

  • 167二次元好きの匿名さん21/10/11(月) 12:07:53

    フラトレ以外は別スレにすべきかなぁとも思いつつ、別枠にするほどは書かないとはおもうので一緒にしてます。



    >>166

    感想ありがとう!あ、あくまで雰囲気的なものなので使い方間違ってたらすみません

  • 168二次元好きの匿名さん21/10/11(月) 12:35:53

    >>167

    Google先生見る限りたぶんあってるから問題ナッシング!

    バ鹿のお墨付きだぜ!

  • 169121/10/11(月) 19:16:20

    ちょっとだけ投下。フラトレです。
    甘いので注意。

    「ただいま、フラッシュ」
     玄関で愛する彼を出迎えるエイシンフラッシュ。抱きつきたくなるけれども少し抑える。
    「おかえりなさい。トレーナーさん」
     エプロン姿で出迎える愛しい人が笑顔を向けてくれるのを見て、トレーナーの方は我慢できなくなったのか軽く抱きしめる。
    「きゃっ、もう、トレーナーさんったら」
    「いや、フラッシュが可愛かったから、つい」
    「そういって、いつものことなんですから」
    「だってフラッシュはいつも可愛いしさ」
     もう、なんていうフラッシュも照れ照れである。ここ最近飽きずに繰り返されているやりとりをまた繰り返した二人。名残惜し気に腕を離したトレーナーの手には、小さい黄色のビニール袋が握られていた。
    「トレーナーさん、それは?」
    「ん?これ?CDだけれど」
     袋を小さく持ち上げるトレーナー。そういえばトレーナーの部屋にはCDラックがあった。トレセン学園で一緒にいたときにはカラオケ等におでかけもしたが、基本的にトレーナーは自分で歌うことはなく、フラッシュが歌う姿を見て盛り上げてくれたり、飲み物をとってきてくれたりしている姿の方が記憶には残っている。よくよく考えれば、習慣のお菓子巡りとか、サッカーだとか、遊園地へのお出かけとか、基本的には自分に付き合ってもらっているケースばかりが思い浮かぶ。トレーナーとウマ娘という関係性から考えれば、確かにトレーナー側から担当ウマ娘に自分の趣味に付き合ってもらうなんていうことはあり得ないことかもしれない。そんな不対象な関係だということに、こうして振り返るようになってようやくに思い至る。
    「トレーナーさん、折角ですし、私にも一緒に聞かせていただけませんか?」
    「え?これを?…う、うーん…」
     トレーナーが何故か難しい顔をする。その様子にフラッシュはきょとんとして首を傾げた。

  • 170121/10/11(月) 19:16:39

     別にいかがわしいものが入っているわけでもないだろうし、何か不都合があるのだろうか。ただ、トレーナーが嫌だと思うことを無理強いするつもりもない。とはいえ、一緒に何かをするのがいやだと言われた気持ちにはなる。
    「一緒には、お嫌でしたか?」
     しゅんとした様子のフラッシュに対して、シューズラックに靴をしまいながらトレーナーは否定する。
    「そういうことじゃないんだよ。たださ、うーん」
    「ただ?」
     頭を軽くかいてから、トレーナーは理由を口にする。
    「今日買ってきたのは、そういうのには向かないっていうか。好き嫌いわかれるやつでさ。ほら、お菓子でもあるんじゃないか?ある程度似た種類のを味わったことある人に食べてほしいっていうやつ」
    「なるほど、そういうことでしたらわかる気がします」
     ある程度の理解を経てからでないと、味わい方がわかりづらい、ということだろうか。
    「そう、そういうわけだから、ね」
    「わかりました。けど、ちょっと残念です」
    「そ、そうかい?」
    「はい、せっかく、トレーナーさんのご趣味にお付き合いできるかなって、さっき一瞬うきうきしてたんです。私、貴方にはたっぷり付き合っていただきましたけど、逆はほとんどなかったですから。レースに関してはお互いの意見を聞いて、でしたけど、プライベート部分では、どうしても」
     しょんぼりしはじめるフラッシュにトレーナーは慌てる。
    「そんな言い方はよくないって。俺もフラッシュに付き合うのが楽しかったからできたんだ。「仕事」という意識が全くなかったとは言わないよ。けど、本当に楽しいって思ってなかったら、こうして再会してからそういうことに付き合うこともありえないよな」
    「それはわかっています。わかっていますけど……。こういうのって、お互いを良く知る機会になるのかなって。もちろん、趣味を同じくする必要なんてないかもしれませんけど、大切な人がどんなご趣味なのかな、なんて興味を抱くのって、おかしなことですか?」
    「おかしくない、おかしくないけどさ」
     少々いわゆる好事家好みな趣味なのもあって一歩気おくれするトレーナー。好事家の仲間以外には進めづらい音楽を聞かせて引かれたくないという変な気持ちがある。

  • 171121/10/11(月) 19:40:25

     が、そもそもの要点を考えると、フラッシュは今自分が手に持っているものが聞きたいというわけではない。たぶん、トレーナーが好きな曲を一緒に聞いてみたいと言っているだけである。
    「あ、でも……。フラッシュ、これじゃなかったら一緒に聞けるようなやつもあるよ。あると思う」
     前のめりに食いつくフラッシュはどこか子供のよう。
    「本当ですか?」
     ぱぁ、と顔を明るくするフラッシュにぐらっと来るのを抑える。
    「あ、ああ。顔近いってフラッシュ。そうだね。ちょっと…ちょっと考えさせてくれ。こういうのってさ、結構考えちゃうもんなんだよな」
    「そうなんですか?そんなにトレーナーさんの好きな曲って、難しいのばかりとか?」
    「いや、そうじゃないとは思うんだけど…そうだ。例えばね、フラッシュ。君が洋菓子店巡りに連れて行ってくれた時に、すごい種類が豊富な店があったろう?あの時も、俺にお勧めのケーキで凄い迷ってくれたじゃないか。あんなかんじだよ」
    「…ああ、なるほど。確かに。手元にいっぱいあるならばどれにするか悩んでしまいますね」
     あっさりした口当たりのいいものを選んでもらおうか、それとも甘味たっぷりのものを選んでもらおうか、それくらいでも悩む。こういうものは気分によっても異なってしまうものである。
    「うん、だからさ。ちょっと待っててくれ。寝る前の時間までには決めておくよ」
    「わかりました。でも、考えすぎて私のこと忘れてはいけませんよ?」
    「もちろん。その…うん、愛する人との時間は大切にするからさ」
     直球の言葉に、言った本人も言われた方も照れ照れになるのが初々しい。トレーナーなんて呼びながらも、トレーナーと担当バという関係では基本的にあり得ないほどに甘い雰囲気を醸し出す二人。食事と洗い物、お風呂を早々に済ませて、迎えるは二人の時間である。いや、帰ってから常に二人ではいるのだが。お互いパジャマに着替えてからの時間というのはまた別のものである。かわかすのちょっと手伝ってください、なんて甘えるフラッシュにドライヤーを優しくかける時間は、トレーナーにとっての宝物である。気持ちよさそうにするフラッシュの黒絹の髪にゆっくり指をいれながら、頭皮をやわらかく刺激すると耳がぴくっぴくっとしてかわいらしい。こみ上げるものを耐えながら、完全に乾かし終えるたときにはフラッシュは恍惚に浸っていた。

  • 172二次元好きの匿名さん21/10/11(月) 19:43:19

    もうこの段階でちょっとでも口を開けるとハチミーよりも甘いモノがダダ漏れになるくらいなんですが…

  • 173121/10/11(月) 20:36:34

     DAPに作成したプレイリスト。手持ちならばヘッドホンが一番音が良いのだけれど、それではフラッシュとの約束は達成できない。その為、スピーカー付きのドックに設置し、鳴らすことにした。音が良いともいえないが、静かな夜に部屋から夜空を見ながら眺める分には、音量は十分なはずである。選んだ曲も、音量や音圧の高さが必要な曲は選んでいない。セットしてから腰かけると、少し緊張する。これが例えば自分の創作物というのならわからないでもないが、自分が好きな曲を聞かせるだけである。言われてみると確かにフラッシュとこういうことはしたことがなかったかもしれない。お出かけで彼女に付き合うのは苦ではなかった、というより、正直彼女が楽しそうにしていたり、得意げに語ったり、時に手作りのお菓子をふるまってくれたりなど、どれも楽しかったものだから。グレーのパジャマで肩をよせてくる彼女と目を合わせる。
    「最初は、どんな曲でしょう?」
    「そうだね、こんな時間だし、アコースティックのしっとりした曲を。女性のヴォーカル…コーラスも味わい深い曲だよ」
    「貴方の好きな曲?」
    「うん。っていうか、君に聞かせるのだし、それはね。耳を傾けるだけで味わえる曲だと思う。あ、でも、好きな音に注目して聞くと、楽しいかなっていうのはあるのかな」
    「好きな音?」
    「そう、もちろんトータルを味わうのが一番いいんだけど、例えばお菓子だったら、好きな果物に意識を集中する、みたいな」
    「なるほど、確かに。そういう楽しみ方もありますね」
    「まぁ、最初は肩ひじ張らずに。この曲でいいかな」
     柔らかな弦をはじく音から、甘い女性の声が、抑揚を抑えた調子で響く。そえられるギターの音も、かき鳴らされても甘いヴォイスを邪魔しないように添えられている。
    「…英語の詞?」
    「うん」
     もの悲しい情景を描いた歌詞が淡々と歌われる。しんみりとしてそれに耳を傾けるトレーナーの姿が、フラッシュには新鮮に思えた。彼の担当バだった頃ならもっと驚いたかもしれないが、でも、彼の繊細なところを今は知っているから、新鮮ではあっても意外には感じなかった。透明な女性の声が、愛らしい女性の声に絡むようにして消える。リコーダーの音もどこかもの悲しくて淡々と起きていることを語っているようにも聞こえる。フラッシュは海辺にたたずむ女性を思い浮かべながら、音が描く情景に身をゆだねた。

  • 174121/10/11(月) 20:38:00

    The moon isn't here tonight I hold out my hand…

     最後の一節をかみしめると、音が終わる。
    「……素敵な曲ですね」
    「そっか、そう思ってもらえるならよかったな」
    「もう一回、聞いてもいいですか?」
    「え?」
    「なんだか、まだ味わいたりなくて。せっかく、私の為に選んでくれた最初の曲なのですし」
     ぎゅっと袖をつかみながらそんな風に甘えるフラッシュ。そういえば、とふと思い出す。
    「君の為の曲、作ってもらう機会は逸しっちゃったな、現役時代」
     エイシンフラッシュもウマ娘としてターフを駆ける以上、ウイニングライヴにはもちろん参加しているが、フラッシュの為に書き下ろしてもらう機会はなかった。もちろん、フラッシュの重点が他の多数のウマ娘と同じくレースにあったからではあるが、名のあるウマ娘は自分の持ち曲を持っていたりする。マルゼンスキーの禁断Burning Heartあたりは、普段自分の聞く類の音楽ではないものの、トレーナーのお気に入りだったりする。マルゼンスキーの隠れファンだったからというのを差し引いても。かの皇帝シンボリルドルフも、有馬で七冠目を達成したときに「セブン」を歌いあげたものである。他にも多士済々なウマ娘が自分の曲を持っている。フラッシュの同室であったスマートファルコンも当然のことながらウマドルパワーというキラーチューンがある。エイシンフラッシュがこれだけの成績をあげた以上、一曲くらい作ってもらえばよかったかな、なんていうのが少しよぎった。
    「私は、既存の曲だけでも精一杯でしたので。トレーナーさんが欲目をださなかったことは間違っていないと思います」

  • 175121/10/11(月) 20:38:21

    でも、一度そういう風に考えると勿体なかったかなという気持ちは浮かぶ。フラッシュはそんなトレーナーを優しく見ながら、トレーナーに再生ボタンを押させて、もう一度同じ曲の情景に沈む。
    その心地よさそうな顔を目にすると、トレーナーから余計な考えはふっとんだ。フラッシュの手の甲に掌を添えながら耳を澄ましていると、スピーカーから再生される声に、もう一声、ささやくような音がのる。フラッシュの艶やかな唇が小さく動く。
    再び最後の一節が終えると、フラッシュの唇からアカペラのリフレインが紡がれる。
    「…簡単には歌えませんね?」
    「い、いや、すごいドキッとした」
     リフレインに聞きほれてたトレーナーは、ドギマギしてフラッシュを見る。自分が好きな曲を愛した人に歌われるだけでも、結構どきっとするものだという発見があった。
    「それじゃあ、もう一回お願いします」
    「……フラッシュ?」
    「持ち曲はありませんが、貴方の耳を楽しませることができるみたいですから。覚えるまで、お願いします」
     目的が変わってしまった感があるが、そうねだるフラッシュを無碍にすることはできない。うとうととしはじめながらも、ウィスパーボイスで歌われる別離にたたずむ歌。スピーカーから流れるのと同じように、淡々と歌う。そう歌えるのは、ここに描かれている光景は、きっと彼との別離の1年と半年に近いから。悲しみを振り返りつつ、彼に届ける歌に想いを乗せた。

  • 176121/10/11(月) 20:41:26

    了!

    いや、久々にこのスレらしいの書けた気がします。ありがとうございます。
    一緒に聞く曲を最初ラブソングにしようと思ったんですが、好きなラブソングあさってたら、あ、こりゃフラッシュと一緒にトレーナーさんが聞いたらトレーナーさん悶絶しちゃうわ…ってなったので、違う毛色の曲にしました。

    それでも結構書いてて恥ずかしかったですわ…。

  • 177二次元好きの匿名さん21/10/11(月) 20:46:39

    フラッシュの歌声を独占できるなんて…なんて贅沢なんだ…うらやましい…

  • 178二次元好きの匿名さん21/10/11(月) 21:14:02

    >>172

    感想ありがとう!今回は意図的に甘めに味付けしてます。ちょっと甘み少なめがつづいたので



    >>177

    感想ありがとう!独占は無理でも正直キャラソンほしいよね。かっこいいのでもラブソングでもウェルカム

  • 179121/10/11(月) 22:50:32

    今回は読み返すと恥ずかしい度が高め…
    ここらへんのフラトレの温度感難しい

  • 180二次元好きの匿名さん21/10/11(月) 23:39:56

    明日は投稿するにしても少し遅くなるかもしれません。

    チャンネーグラビアのつづきとかまだ少しネタはあるので今週中に完走できるのを祈って

  • 181二次元好きの匿名さん21/10/11(月) 23:55:01

    全編を通して「あぁ素敵だなぁ‥」って感じさせてくれる文章が素晴らしいです

  • 182二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 00:04:26

    >>181

    ありがとう…めちゃ嬉しい。

    シチュはかわってるかもしれんけどフラッシュいいなって思えてもらえたらありがてぇよ

  • 183二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 01:21:56

    追いついた 病める時も健やかなる時もトレフラは美しいな
    まいっちんぐだぜ…

  • 184二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 07:09:54

    >>183

    感想ありがとう!ひょっとして追っかけて読んでくださったんですかね。ありがとうございます。

    ちょっとお互い甘えすぎなくらいですが二人が落ち着くのはもう少し先にはなりそう

  • 185二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 15:39:17

    念のため保

  • 186121/10/12(火) 20:22:30

    お待たせプチフラトレです。

    >>81

    >>87

    の続編。トレーナーさん出張中のお話になります。


    「ただいま」

     返事の返りがないことを寂しく思いながら、出張の仕事の疲れを残したまま、くたくたの様子でエイシンフラッシュの元トレーナーは、ホテルの一室についた。個室を用意してくれるあたり、待遇は良いほうだと思っている。シャワーをさっと浴びて、明日の予定と資料の修正を行えば、あっという間に約束の時間である。いや、あっという間というのには少し嘘が混じっている。というのも、本心を言えばこの時間をずっと待ちわびていたからだ。モバイルのスピーカーをONにして、連絡が来るのを待ちわびる。時計の針が回るちょうど、愛しい彼女からのコールが鳴る。

    「お疲れ様、フラッシュ」

    「トレーナーさんこそお疲れ様です。出張先にはもう慣れましたか?」

    「いや、中々慣れないな…。それに、最初の日にも話した通り、やっぱり寂しいよ。君にあえないのは」

    「私もです……。あと3日、お互いがんばりましょうね」

     二人の間で交わされる他愛のないやりとり。これが何よりもお互いの心を満たしてくれる。直接顔を合わせるのには到底かなうはずもないが、それでも明日へのエネルギーチャージの為には、今の状況ではこれが不可欠である。愛する人の声が与える安心感に、二人は身をしずめた。

  • 187121/10/12(火) 20:34:39

    「トレーナーさん、その……」
     フラッシュの声がもごもごして何かいいづらそうに変わる。
    「ん?どうしたんだい?」
    「その、先に謝っておきます。あの、お部屋のお掃除なのですけれど」
    「あ、ああ。そんな無理にやらなくていいよ」
    「いえ、掃除自体はすぐに終わったのですけど、別途謝らなければならないことが…」
    「え?な、何?」
     深刻な様子に不安になる。何かものを壊したとかそういうことだろうか?が、フラッシュがそのようなミスをするとも思えないし、もしそういうことがあるなら、自分が適当に置いたものくらいであろう。すぅ、と息をのむフラッシュ。
    「その…見てしまいまして」
    「え?な、何を?」
     見られてまずいものなんて置いてあったか、と思いつつ、フラッシュとの思い出に浸るものを配置していたことを思い浮かべると急に恥ずかしくなる。顔を赤くするトレーナーであったが、次の一言で顔色が正反対となる。
    「『まいっちんぐ!マルゼンスキーだっちゅーの♥』を…」
    「……は、い?」
    「で、ですから、まいっちん…」
    「ああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
     絶叫するトレーナー。決して、決していかがわしい書物ではない。書物ではないのだが、あれを自分が持っていることをエイシンフラッシュに知られた、この事実はトレーナーが悶絶するにたるものだった。
    「と、トレーナーさん?」
    「ち、ちちち違うんだフラッシュ!フラッシュの所に越してくるときに、捨てる勇気がわかなかったわけじゃないんだ!」
    「と、トレーナーさん、落ち着いて、も、もう……。その、謝るのは私のほうです。事故とはいえ、隠していたものを見てしまったのですから……」
    「ご、ごめん……つい、いや、でも、いやぁ…」
     穴があったら入りたいとはこのことか、とトレーナーは痛感するのであった。

  • 188121/10/12(火) 20:43:52

    「落ち着きましたか?トレーナーさん」
    「う、うん。おかげさまで……」
     逃げ出したい気持ちを抑えながらトレーナーは返答する。
    「……その、質問なんですけど。トレーナーさんの好みって、ああいう方なんですか?」
    「え!?」
    「だって、だからですよね?買ったのって……」
     ちょっと拗ねたような声色が混じる。マルゼンスキーとドイツで初対面したフラッシュは、その眩しさと明るさに気圧された。自分とは正反対にも見える気性。母性すら感じさせる大きさと、パートナーをぐいっと引っ張れるような強さ。自分にはないものをたくさん持っているように、フラッシュからは見えた。
    「う、うん、それは否定できないけれど、俺が好きなのは君だからね。フラッシュ」
    「……わかっています」
     拗ねたような声色だが、語尾が少しはねるあたり、エイシンフラッシュも好きな人の前ではわかりやすくなってしまうタイプの女性である。
    「わかっていますけど、嫉妬してはしまいます」
    「う、うん……」
    「ごめんなさい。私って子供ですよね。こんなことで嫉妬して…」
    「そ、それはお互い様だよ、うん。俺だって情けないヤキモチやいたんだし」
    「でも、大好きなんですよね…?『君のハートを狙い撃ち♡』」
    「……」
     反論ができない。冷汗がだらだら流れる。なにせそういうのが大好きなのは事実だからだ。でもフラッシュのほうがもっと好き、なんていう事実を重ねても、フラッシュの声からも伝わる冷たい目から逃げることは無理だろう。

  • 189121/10/12(火) 20:58:08

    すぅ、っとフラッシュが小さく息を吸うのが聞こえると、無言になる。その無言の間が怖い。
    静寂を破ったのはぴこーん、というメッセージアプリからの音。フラッシュからのメッセージのようだ。
    「……あけてください」
    「う、うん」
     何故かフラッシュが緊張しているのを感じながら、アプリを開いたトレーナーは目を見開く。
    「え、あ、ああ……ええ?」
     サムネイルから一枚の画像を思わず開いてしまう。そこに映っていたのは、愛おしい彼女の姿である。が、トレーナーが目を見開いたのは、彼女の姿が純白のビキニに身をつつんだものだからである。少し前かがみになり、腕できゅっとそのたわわな胸を強調して、真っ赤に頬を紅潮させながら上目遣いで見つめてくるそれ……。それを見ただけで、心臓がバクバクして、喉がカラカラになったことを誰がせめられようか。
    「トレーナーさん……こういうの、好き、ですよね」
     フラッシュの声の緊張が先ほどより強くなっているのを感じる。
    「い、いや、その、これ、やばいって……」
     フラッシュはある程度自身の美貌には自信を持っている、とはトレーナーは考えている。しかし、この純白ビキニの強烈さ……即死級の兵器を持ち出していることに気が付いているとは到底思えない。トレーナーの語彙もひたすらに低下する。これ以上やばい、と思って、閉じようとすると、フラッシュから追い打ちが来る。
    「だめですよ、目をそらしては。…マルゼンスキーさんのは見れて、私のは見れないんですか?」
     嫉妬心が表立っているためか少し緊張の中に語調の強さが混じる。
    「それとも……私くらいじゃ、トレーナーさんは満足できない?…マルゼンスキーさんには確かに私は及びませんけど、大きさ」
     寂しさ交じりの言葉が余計トレーナーを追い詰める。
    「そそそそ、そういうことじゃなくって……」
    「では、目をそらさないでください。貴方の目に焼き付けて……」
     フラッシュの美声と、写真に写るフラッシュの純白の水着が彩るしなやかな美体に、声もだせなくなる。

  • 190121/10/12(火) 21:13:48

    「ごめんなさい。トレーナーさん、意地悪してしまって」
    「……本当だよ。こ、こういうの、やめよう。うん」
    「はい、今後はしません。トレーナーさんが、可哀そうになってしまいますから」
     反論できずにうずくまりたくなるトレーナー。くすっとフラッシュがほほ笑むのが聞こえる。
    「それで、その、似合っていますか?その水着」
     似合っているも似合っていないもない。ヤバい、と伝えたかったが、あまりにもあんまりな感想を伝えるのは憚られるので、似合ってる、とだけ伝えた。
    「よかった。その、本当はドイツで貴方と一緒に夏に湖水浴いけたときにお披露目しようと思ったんですけど、ちょっとはやめに着てみました。…着てるとこ、みたいって思ってくれますか?」
     流石にその思いは否定できるわけはない。
    「そうですか。こちらに帰ってきたときにトレーナーさんが真っすぐ帰ってきてくれたら、お見せしますね」
     こくこくと思わずうなずく。もとより帰ったらフラッシュに会うために寄り道などせずにというつもりだったが、雑念のこもった思いがそこに乗る。
    「お待ちしています。トレーナーさん……」
     その言葉の数秒後に、またもアラームが鳴る。同じように、フラッシュからのメッセージが再度届く。おそるおそる開くと、純白の水着に映える白い肌が、またもうつっていた。現役時代より太ももがむちっとしてみえて、トレーナーはクラクラする。上に少しスクロールすると、谷間を寄せながらフラッシュのたわわを包む水着を結ぶ紐を指でひっかけているせいで、重力に従うやわらかさと水着のきわどさが増して、トレーナーが狂いそうになる。
    「トレーナーさん?」
    「は、はい……」
     唇を少し濡らしたフラッシュは、ウィスパーボイスでささやく。
    「今、着てるんです、コレ……」
    「…………」
     絶句するトレーナー。否が応でも、水着姿のフラッシュの今の姿を幻視してしまう。通話越しにその姿がまるで見えるかのようにフラッシュは続ける。
    「もう少しお話、付き合っていただけませんか?」
     問いかけではあるが、有無を言わさぬその言葉。確かに今日はお話のスケジュールを多くとってあった筈である。どこまでが策略か、どこまでがハプニングだったのか。ともあれトレーナーは今宵も長くなることを確信したのであった。

  • 191121/10/12(火) 21:14:26

    了!!

    ビキニって…いいよね!!!!

  • 192二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 21:17:59

    あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

    こんな破廉恥な水着姿っ!湖水浴で他人の目に触れさせるなんてっ…!許されないっ…!男性連中が水から出られなくなってしまうっ…!

  • 193二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 21:20:05

    大丈夫?このトレーナーお兄ちゃんくらいの剛性がないと耐えられなくない?

  • 194121/10/12(火) 23:02:26

    >>192

    感想ありがとう。

    ちょっと想像したらえっちすぎる気がしてきた。

    トレーナーさんじゃなくても狂うよね



    >>193

    感想ありがとう。まあそもそもフラッシュの攻勢に負けてるけどね!

  • 195二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 23:11:15

    鯖落ちでロクに感想が書けねぇ!
    フラッシュの嫉妬!(寿命が伸びる音)
    フラッシュのビキニは死人が出るよ

  • 196二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 23:17:52

    フラッシュと湖水浴行きてェ~!
    でも他の野郎共にビキニ見せたくないんだよなぁ

  • 197二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 23:24:57

    >>195

    感想ありがとう。

    僕もかいててやばいなって思いました。白ビキニはあかんですよ



    >>196

    感想ありがとう。

    でも自分のことを自慢してほしいなんていうちょっと卑しい?フラッシュもいいんじゃないかい?

    もちろん貸し切り状態の湖水浴もありなんだけど。

  • 198二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 00:21:39

    でも自分のことを自慢してほしいなんていうちょっと卑しい?フラッシュもいいんじゃないかい?

    フラッシュ…強くなったな…!

  • 199二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 00:34:18

    こんなんもうそろぴょい不可避じゃん…
    フラトレ帰るまで我慢できる?

  • 200二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 00:35:01

    ……本当に………

    「ありがとう」…
    それしか言う言葉がみつからない…

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