【閲覧注意】スバル魔女ハーレムSS書く

  • 1◆EZyB3q1DF222/07/16(土) 21:29:47

    カテゴリ選択を忘れたクソボケです

    スバルとダフネのSS書いたはいいがだいぶ閲覧注意だったので別スレ立てました

    リョナ、カニバ、四肢欠損等が含まれますが原作ほどグロくはないと思います、多分

    カサネル√をベースにお茶会に他の魔女も来る感じです

    元スレ

    スバルが魔女全員に「愛してる」されてる二次創作が見当たらない|あにまん掲示板なぜだ?ハーレムだぞ?そんなに需要がないのか?bbs.animanch.com
  • 2二次元好きの匿名さん22/07/16(土) 21:37:38

     何かを求めるのなら何らかの対価を。そんなこと、スバルにはとっくに理解できているはずだった。

    「……にしても、これはなぁ」

     スバルは黒蛇を討伐するに至った。もちろん数え切れないほどの試行回数を経てのことだが、それはいい。問題は、スバルは対価を払い終えていないということにある。

    「今更、君が死ぬことに怖気づくなんてね」

    「馬鹿言え、んなわけあるか」

    「まあ、こっちじゃやり直せない可能性が高いし仕方ないのかな? ボクとしても君が死なないように手を尽くさせてもらうつもりだけどね」

     声色に興奮を隠せないなエキドナが憎たらしい。確かにスバルが今から行うことは『強欲の魔女』にとってそれはそれは興味深いに違いないのだが。

    「じゃあ、さっさとダフネを呼んでくれ」
     
     討伐の際、ダフネに黒蛇の情報を求めた。その時に提示された条件。それが「ダフネに喰われる」ことだった。

    「すばるん、いい匂いですねぇ。ダフネ、ずぅっと楽しみにしてたんですよぉ」

    「そりゃ喜んでくれて何よりだよ。いいか? 絶対ミネルヴァが治せる範囲で止めとけよ……っ!」

     一瞬で距離を詰められ、腰を抜かす。棺の脚に捉えられ、多分もう動けない。
     上でスバルを見下ろすダフネは明らかに食欲に支配されていて、荒い息をしながら舌舐めずりをしている。
     ――――あ、これまずいやつだ。
     そう思ったスバルはこちらも明確な脅威に息を荒くしながら、目は淀んだまま、慣れた作り笑顔を浮かべ、

    「い、痛くしないでね? 」

    と、精一杯の軽口を叩いた。続けて、絶叫が上がった。

  • 3◆EZyB3q1DF222/07/16(土) 21:38:59

    >>2

    早速トリップ忘れてる……


     左腕は二口。ダフネの鋭い歯が真っ赤に染まり、続けて浴びた返り血もベロリと舐める。食欲に侵された目は見えず、上気した頬も血でわからないが、興奮していることは明らかだった。

     その間にも脚に抑えつけられ痛みにのたうち回るスバルの悲鳴は止まない。手足を振り回し、苦痛から逃れようとするスバルの「食べかけ」の部分をダフネは愛おしそうに舐める。ヤスリがけされるような痛みにスバルの悲鳴が大きくなった。

     気がつけばダフネは四肢全てを食べ終えていて、達磨状態のスバルはのたうち回ることもできず、枯れた声で呻いていた。半分閉じかけた目からは枯れることなく大粒の涙が溢れ出している。

     涙と血と唾液。それらを顔を舐めていっぺんに味わう。獣のように顔を舐められてももうスバルはされるがままになっていた。最も、抵抗しようがしまいが、きっと何も変わらなかったに違いない。


     『暴食の魔女』の食欲がここで終わるはずがないのだから。

  • 4◆EZyB3q1DF222/07/16(土) 21:40:02

     ダフネが腹に喰らいついても、もはや対した悲鳴も上がらなかった。痛みで痙攣する身体を脚で無理矢理抑えつけ、スバルの吐いた血を舐め取る。
     対するスバルはチカチカと点滅する視界の中、ダフネの食欲が止まらなかったことを悟った。つまりは死を悟った。何故か口角が上がった。ダフネの大きな口が開いた。

    「このバカ――――――っ!! 」

     瞬間、ミネルヴァがダフネを殴り飛ばしてスバルは拘束から解放される。緊張からも解放されて、血と一瞬におかしな笑みが溢れた。流石にこれは『憤怒』しても仕方のない状況だろう。それを承知の上で実行したことなのでその怒りは甘んじて受け入れるしかない。
     
    「本当に! 信じらんない! 馬鹿! 頭がおかしい! もっと自分を大切にしなさいよ――――っ!」

     残念だけどそりゃ無理だ、とは口に出さないが、顔で伝わったようで、もう一発余計に殴られた。

    「助かったよ、ありがとな」

    「お礼を言うくらいなら私の前で傷付かないで頂戴!! 」

    「いやあ、でも総合的に見たら俺の負担は減ってるハズなんだよ」

    「言い訳なんていらないわ! もう気分が悪い!私は戻るんだからね!! 」

     そうやって泣きながら言われると罪悪感がないわけではないが、残念ながら当のスバルは割り切っている。

  • 5◆EZyB3q1DF222/07/16(土) 21:41:54

     じゃあな、とミネルヴァに軽く手を降って、ダフネの方に向き直る。殴られた衝撃か、はたまた謎の治癒のおかげか、彼女も正気に戻ったらしい。
     
    「危なかったですねぇ。もう少しで全部食べちゃうところでしたぁ」

    と、全く危なかったと思っていない様子で話しかけてくる。

    「まあ、結果オーライ。……怖いしもう二度とやらないけど」

    「えぇ、もう食べさせてくれないんですかぁ? 」

     それは珍しくちゃんと残念そうな声色だった。

    「当たり前だろ。うっかり食い殺されかねないってのが今回ので分かったからな」

    「ダフネの食欲が止められないのは仕方ないですよぉ。すばるんにも分かるでしょう? 『愛』ってのは止められないんですよぉ? 」

    「愛ぃ? 」

    「すばるんを食べたら、ダフネはすばるんと1つになるんですよぉ? 1つになるってぇ、それはもう『愛』じゃないですかぁ? 」

     『暴食の魔女』はそう白々しく言い放つ一方、頬は恋する乙女のように色付いていた。

    「だからすばるん、また食べさせてくださいねぇ? 」

    「いや無理だよ……『当分』はねぇって」

    「えへへへぇ……あ」

  • 6◆EZyB3q1DF222/07/16(土) 21:42:18

     ダフネが急に距離をとった。スバルは何事かと目を潜める。ダフネは大きな口を開け、鋭くて白い歯が剥き出しになり――――

    「ゲロゲロぉ……」

     盛大に吐かれた。

     スバルは、げんなりとした表情を浮かべながら、今まで吐いて無駄にしてきた食べ物側の身になって急激に罪悪感が湧いてくるのだった。

  • 7二次元好きの匿名さん22/07/16(土) 22:01:43

    わースバルくんがモテモテだー(白目)

  • 8二次元好きの匿名さん22/07/16(土) 22:03:42

    ダフネは拒食症なんだっけか

  • 9二次元好きの匿名さん22/07/16(土) 22:07:04

    面白い

  • 10二次元好きの匿名さん22/07/16(土) 22:13:32

    このレスは削除されています

  • 11◆EZyB3q1DF222/07/16(土) 22:14:24

    書き終わるまでにスレが生きてたら次はミネルヴァになります

  • 12二次元好きの匿名さん22/07/17(日) 00:02:53

    まさか本当に書く猛者が現れるとはな

  • 13二次元好きの匿名さん22/07/17(日) 03:06:01

    ハーレム全員集合とかになったら地獄だろうな…

  • 14二次元好きの匿名さん22/07/17(日) 03:20:06

    カサネルでも思うけど
    よく再起不能の廃人にならずに済んでるよなスバル

  • 15二次元好きの匿名さん22/07/17(日) 14:59:55

    このレスは削除されています

  • 16二次元好きの匿名さん22/07/17(日) 15:49:32

    保守

  • 17二次元好きの匿名さん22/07/17(日) 15:53:30

    ハートつけてやりたいがあんまりつけると読みづらくなりそうなので自重

  • 18二次元好きの匿名さん22/07/17(日) 20:15:12

    面白い!!!
    ミネルヴァたんのも待機してます

  • 19二次元好きの匿名さん22/07/17(日) 20:42:14

    まさか本当にやるとは

  • 20◆EZyB3q1DF222/07/17(日) 21:29:03

    「やっぱミネルヴァ怒ってるよな……」

    「まあ彼女はずっと怒ってる気がするけどね」

     エキドナはいつものように自分の体液を飲みながらスバルの言葉をのらりくらりとかわしている。

    「う〜ん……謝っとくか」

    「謝るのに背中を押してほしかったのかな? 君もまだまだ子どもだね」

     反応するとさらにうるさいので言わせたままにしておく。

    「正直、君とミネルヴァの仲が険悪になったところで何の支障もないんじゃないかとボクは思うね。その結果君がミネルヴァの治癒を受けられなくなることを危惧しているならそれは杞憂だ」

    「そんなことは分かってるよ。ただ、人が嫌がることを積極的にした自覚はあるからな。普通に俺が悪いし謝るべきだろ」

    「君がそんな殊勝な態度をとるなんてね。ボクに対してはあんなに風当たりが強いのに。それに、その理論でいくなら君には謝らなければいけない人間が他にいるんじゃないかな? 」

     そういうところだよ、と言ってやりたかったが後が面倒なのでギリギリで飲み込んだ。

  • 21◆EZyB3q1DF222/07/17(日) 21:33:23

    「いいから呼んでくれ。あとお前は出ていけ。俺は死ぬ可能性ないしお前がいる意味ないだろ」

    「分かった分かった。じゃあ君たちの会話はこっそり聞くことにするよ」

     ふと目を離すと、エキドナとミネルヴァは一瞬で入れ替わっていて、依り代なんていう大昔の嘘を思い出した。

    「で、話って何よ。言っとくけど私があんたと話すことなんてなにもないんだからね!! 」

    「ダフネのときのこと、謝りたくてだな。……うん、ごめんなさい。」

    「謝るくらいならもう二度とやらないって約束しなさい! 」

    「……俺もやりたくねえよ。でも時と場合によるというか……」

    「本当にバッカみたい! あんたは本当に謝りにきたわけ?! 私を怒らせに来たんでしょ! あの子の差し金で!! 」

     やはり根本的に相性が悪いのかいつも怒らせてしまう。スバルとしてはうっかり殺される危険も、変に気を使う必要もない話し相手がもう1人ぐらいいてもいいと思うのだが。スバルはただ―――

    「多分俺はお前と仲良くしたいだけなんだ」

    「はあ?! 」

    「ほら、俺になんの対価も要求しないで優しくしてくれるやつってお前ぐらいなもんだし。当然だろ? 」

    「べ、別にあんたのためにやったんじゃないんだからね! それに、要求ならしてるわよ! もう怪我しないで!! 」

    「それ強制力ないし対価とは呼べなくない? 」

    「もう何なのよ―――――っ!」

  • 22◆EZyB3q1DF222/07/17(日) 21:34:40

     本当に怒らせるつもりはないのだが、いや、むしろ狙っている節がある。見てて気持ちいいくらいの感情表現を引き出せるのはそれなりに楽しいのだ。
     つまるところ、スバルのミネルヴァに対しての甘えなのだろう。

    「……あんたを見てるとイライラするのよ」

     珍しくボソリと呟くような声色だった。

    「あんたを見てると、昔の私を、嫌なことを思い出すみたいで……」

    「同族嫌悪ってやつか? 」

    「同族嫌悪?!、そう、同族嫌悪よ!! いや、やっぱり違うわ!! 」

     どうやら言葉が見つからなくて怒っているようだ。地面を踏みつけて八つ当たりをしている。

    「まあ、そうだよな。同族ではないか。―――俺はお前らみたいに鋼の意志を貫けないから」

     そこがスバルのような凡人と魔女たちの決定的な違いなのだと思う。

    「つまり、あんたは私たち魔女みたいになりたいっていうの? それなら良かったわね。あんたの歪み具合は魔女以上よ」

    「そりゃドウモ」

     言葉に含まれた毒は思いの外スバルに効いた。精神性が魔女側の仲間入りを果たすなんて考えたくもないことだ。最も、判定するのも魔女なので信憑性には疑問符が付くはずだが。とはいえ――――

    「自分の意志を貫けるのは素直に羨ましいよ」

  • 23◆EZyB3q1DF222/07/17(日) 21:35:23

     スバルはたった一つのために歩き続けなければならない。それ以外は捨てねばならない。
     本来ならばこうしていることも甘えのはずだった。もはや自分の意志を頼るしか指針がないにも関わらず、スバル自身、自分の意志を信じきれていない。運良くエキドナと出会えたおかげで指針を無くして彷徨うなんてことはなくて済んだのだが――――不味い。思考が泥沼にはまりそうだ。

    「いいのよ。そんな破滅的な生き方しなくても。できないんならそれでいいわ。精々、魔女じゃなくて人間らしく生きなさい」

    「――――――」

    「言っとくけど、別にあんたのために言ったわけじゃないんだからね! そうよ!あんたなんか本当に見てらんないんだから――――! 」
     
    「もう仲直りは済んだのかな? 」

    「ぬるっと出てくるなお前」

     スバルもミネルヴァもうんざりした顔でエキドナを見るあたり日頃の行いが知れるというやつだ。
     
    「なんの用だ」
    「なんの用? 」

    「すっかり仲良しじゃないか。だからボクもヤキモチ焼いて出てきたんだけどね」

    「こんなのと仲良しなんてふざけないでよね! この子傷付いても何とも思ってないようなそぶりなのよ! おかしいでしょう! なのに中途半端に私に似てるから気持ち悪いのよ! べ、別に放っておけないな、とか、この子は誰かが側にいてやらなきゃダメだな、とか思ってないんだからね! 本当よ! 何よその目は! 本当だって言ってるでしょうが――――!! 」

    「あっ、待っ」

     ミネルヴァの身体が淡く光ったと思ったら声をかける間もなく消えてしまった。

  • 24◆EZyB3q1DF222/07/17(日) 21:36:28

    「あんなお手本みたいなツンデレあるんだな……てか、本当に話の邪魔しかしなかったなお前」

     そう言ってエキドナを睨みつけてやるが、当の本人はどこ吹く風と言ったふうに微笑んでいる。
     そして突然にスバルの耳元に顔を寄せると、

    「『傷付いても何とも思ってないそぶり』だってね。良かったじゃないか。彼女からすれば君はそう見えるらしい」

    「いいから離れろ」

    「君が他の魔女に心移りするのを止める術はボクには無いからね。代わりに言わせてほしい。―――君の1番の理解者はボクだ。ボク以外有り得ない。」

     こうなると面倒だとエキドナを押し退けて黙って椅子に腰掛ける。
     
    『精々、魔女じゃなくて人間らしく生きなさい』

     それは、魔女としての使命感とは全く別のところからくる純粋な親切心からの言葉だったように思う。
     だから――――

    「残念だけどそりゃ無理だ」

    もう、とっくの昔に手遅れです、なんて言ってやりたくはなかったのだ。

  • 25◆EZyB3q1DF222/07/17(日) 21:38:52

    次まで生きてたらセクメト&テュフォンの異世界ホームビデオみたいなほのぼの小話になりそう
    カーミラが難関だな……

  • 26二次元好きの匿名さん22/07/17(日) 21:57:36

    ミネルヴァツンデレかわいい…
    けどこの空間狂人しかいないんだよな…

  • 27二次元好きの匿名さん22/07/17(日) 22:00:58

    ミネルヴァが一番マシだけど本当にマシなだけなんだよな

  • 28二次元好きの匿名さん22/07/17(日) 22:08:17

    >>27

    ミネルヴァは魔女の中で最も多くの人を救い、最も多くの人を殺した女だからな

    ミネルヴァたんがオドラグナから引き出すせいで、大災害が起きて多くの人が犠牲になっている

  • 29二次元好きの匿名さん22/07/17(日) 23:07:19

    ミネルヴァの近くにいればいくら怪我しても大丈夫だな!
    ただ真実を知ったあとに良心の呵責に耐えきれなくなりそう

  • 30二次元好きの匿名さん22/07/18(月) 01:17:18

    カーミラは普通に話しているだけでヤバい権能持ちだからな…
    そこをどう乗り越えるか

  • 31二次元好きの匿名さん22/07/18(月) 12:36:48

    ほしゅしえん

  • 32二次元好きの匿名さん22/07/18(月) 18:11:08

    話してるだけで死ぬ女をどうやって攻略するんですか?

  • 33二次元好きの匿名さん22/07/18(月) 18:12:54

    >>32

    ミネルヴァにフルボッコにされながら喋ればワンチャン…?

  • 34二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 00:17:59

    個人的にはカーミラ楽しみにしてる
    期待保守

  • 35二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 00:21:29

    カーミラが望んでいるであろう相互不干渉の関係になるか、それともベアトリスみたいに本人の望んだ物とは別な関係を築こうとするのか
    どちらにせよ楽しみ

  • 36二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 12:09:25

    保守

  • 37二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 18:14:27

    保守

  • 38二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 23:39:49

    ほしゅ

  • 39二次元好きの匿名さん22/07/20(水) 00:25:58

    スバルの唇を奪う魔女は誰だ

  • 40二次元好きの匿名さん22/07/20(水) 11:44:10

    保守

  • 41二次元好きの匿名さん22/07/20(水) 21:55:15

  • 42二次元好きの匿名さん22/07/21(木) 08:17:29

    保守

  • 43二次元好きの匿名さん22/07/21(木) 18:38:00

    保守

  • 44二次元好きの匿名さん22/07/21(木) 23:59:46

    保守

  • 45二次元好きの匿名さん22/07/22(金) 08:36:46

    保守

  • 46二次元好きの匿名さん22/07/22(金) 12:31:05

    最高のスレだ!ss読んだけどすごい好きなので保守あげ

  • 47◆EZyB3q1DF222/07/22(金) 20:09:16

    ネタはできてるので土日中には上げると思います
    保守してくれる人ありがとう

  • 48二次元好きの匿名さん22/07/22(金) 21:48:12

    >>47

    おー!めっちゃうれしい

  • 49二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 00:53:24

    ほしゅ

  • 50二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 11:50:45

    保守

  • 51二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 20:05:16

    後出そうなのは怠惰のセクメトと色欲のカーミラと傲慢のテュフォンかな

  • 52◆EZyB3q1DF222/07/23(土) 20:20:42

    当てつけみたいに青い空と目が痛くなるくらいに鮮やかな緑の草原。そして、その下でスバルを出迎える白黒の少女。
     それが茶会のいつもの光景だったのだが――――

    「エキドナはどうした」

    「ドナはなー、テュフォンにバルの面倒見てやれーって頼んだんだー。ドナが何考えてるのかはわからないけどなー、楽しそうだから会いに来たんだぞー」

     『強欲の魔女』テュフォン。褐色の童女は足をバタつかせながらスバルに会えたことを無邪気に喜んでいるようだった。

    「……あいつ絶対ロクでもないこと考えてるだろ」

     対するスバルは口もとに手を当て、苦虫を噛み潰したような顔でそう呟く。一歩間違えればスバルが死ぬ危険がある相手を送り込むなど、エキドナは何を考えているのだろうか。

    「十中八九そうだろうさね、はぁ」

    「セクメトまで……」

    「ただのお目付け役さね、ふぅ」

     草原に無造作に横たわる『怠惰の魔女』は気怠げにそう言う。もし本当にお目付け役なら以前テュフォンに砕かれる前になんとかして欲しかったところだ。

    「てか、エキドナ出てこないならこっから帰れないじゃねえか。ますます何が狙いなんだよ」

    「バル、暇なのかー? テュフォンと何か話すかー? 」

    「おう、話そうぜ」

     エキドナを除けばテュフォンが魔女の中で1番接しやすいと思う。いつもペトラとは喋っているし、年下の子どもとの会話に慣れているからかもしれない。

  • 53◆EZyB3q1DF222/07/23(土) 20:21:15

    「テュフォンが前にバルがアクニンかどうか確かめてあげただろー? そのときバルはアクニンじゃないけどトガビトだと思ってるってことが分かったんだー」

    「あーそんなこと言ってたような」

    「じゃあ、アクニンじゃないのにどうして自分のことをトガビトだと思う人間がいるのかバルには分かるのかー? テュフォンはあんまり考えたことがないんだなー」

    「いきなり難しい話題だな」

     自分でもあまり考えたことがない問いを人にするなと言いたい。それを言っちゃ話が終わるので言わなかったが。それに、そもそも相手は十歳前後の童女だ。ムキになるのも格好悪いだろう。

    「セクメト、そもそもアクニンとかトガビトの判定の基準ってなんなんだ」

    「言葉の通りさね、ふぅ。ただしテュフォン基準でって枕詞がつく、はぁ」

    「それ、たまったもんじゃねえな……」

     そう思えばプリステラの過剰とも思えるほどの備えにも納得がいく。やはり子どもとはいえ魔女だ。

    「トガビトの判定は多分罪悪感とかが基準になるんだろうけど、俺は罪悪感を全く持ってない人間のほうが怖えよ」

    「みんなトカビトなのかー? 」

    「俺の故郷では『人は生まれながらにして罪を負ってる』っていう考えも珍しくなかったよ」

     原罪、だとか言ったか。アダムだのイブだのを抜きにしても、人間は生きる以上、何かを殺めてしまっている。人間は誰かと関わる以上、きっと誰かを傷付けてしまっている。生まれながらにして罪を負っているという考えはそれなりにしっくりくる。

  • 54◆EZyB3q1DF222/07/23(土) 20:21:47

    「それに、大罪司教とかに限って絶対自分のことをトガビトだなんて思ってないからな」

    「うーん、テュフォンにはよくわからないなー。セイギもアクもツミも変わるだろー? でも自分のことアクだなーって思う気持ちは変わらないだろー? 」

    「……なんだかんだ、的を得た基準かもな。―――多分、俺はもうアクニンだしトガビトだ」

     ここは精神世界。汚れも何もないはずなのに、スバルは無意識に着ている礼服で手を拭っていた。
     スバルの手はきっと真っ黒に汚れている。そのことを誰にも見つけてもらえないのだと思っていた。誰にも裁いてもらえないのだと思っていた。
     ―――だから、これは天啓に見えた。

    「やめとくさね、はぁ」

     本当に、あと少しで手を伸ばしかねなかった。

    「最初に言ったはずさね、ふぅ。お目付け役だって、はぁ」

    「…………エキドナに言われてか? 」

    「これ以上ミネルヴァに治療させるとマナが足りなくなるさね、はぁ。最も、エキドナの言うことさね、ふぅ」
      
     手を出そうと出すまいと、きっと何も変わらなかった。そう、何も変わらない。今まで通り、罪を罪として裁かれないまま、さらに罪を重ねるだけだ。それなのに、この喪失感は何なのだ。

    「バルは、バツが欲しーのかー? 」

    「――――――」

  • 55◆EZyB3q1DF222/07/23(土) 20:25:09

    「いやあ良いものが見れたね、君も二人と仲良くなれたようだしボクも嬉しいよ」

     それからすぐに現れたエキドナはニヤニヤと微笑をたたえながら白々しく話しかけてくる。

    「お前の言う『良いもの』ってのは俺の顔にされたこの落書きか? 」

     スバルが『バツ』を欲しがっていると理解したテュフォンはどこからともなく筆を取り出し、スバルの頬にばつ印を刻んだのだった。
     きっと悪い魔女に悪いことを吹き込まれたに違いない。テュフォンは悪くない。

    「いや? 原罪の話が存外興味深くてね」

     そうやって怪しく笑うエキドナの返事はやはり白々しい。

    「お前らみたいな魔女とは相性悪そうだけどな、その考え方」

     大罪司教ほどではないにしろ、自分の意志を貫ける人間が、生まれながらにして罪を負ってるなんて考えられるようには思えなかった。

    「考えを知るのと取り入れるのは全然違うだろう? そこの区別はつけるべきだとボクは思うよ」

    「へいへい」

    「まあ、君がその考えを取り入れて、罪悪感は特別なことじゃないと感じることができれば楽になる気もするけどね」

    「……そんな軽いもんじゃねぇだろ、エキドナ。よくそんなんで理解者面できるよな」

     スバルは理解してもらえない。でも、それこそありふれたことでスバルだけが特別じゃない。
     自分を理解できるのは自分だけ。
     自分の罪の重さを知っているのも自分だけ。
     あの童女の手を取れば、罪悪感を精算して見合った罰に押し潰されて死ぬことができるのだろう。
     いつか、全てが終わったなら。今のスバルには魔女の無邪気な救いは眩しすぎるものだった。

  • 56◆EZyB3q1DF222/07/23(土) 20:25:48

    ハーレムでもほのぼのでもない……

  • 57二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 20:28:07

    >>56

    血も死体も派手に出る作品にほのぼのタグつけてる人もいるしセーフ

  • 58二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 20:44:47

    人格破綻者達がまともに人を愛せるわけないし普通にしっくりくるよ

  • 59二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 20:50:22

    このレスは削除されています

  • 60二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 20:50:44

    全員全く違う方向性に頭のネジずれているからな

  • 61◆EZyB3q1DF222/07/23(土) 20:51:57

    企画段階で難易度ルナティックな上にラブコメ書いたことがないので全てを疑いながら書いてる

  • 62二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 22:10:37

    なんだかリゼロらしくてイイネ……
    魔女たちのエミュがすごい上手いな いい…… 好き

  • 63二次元好きの匿名さん22/07/24(日) 03:49:42

    テュフォンかわいいけど内容が重い…

  • 64二次元好きの匿名さん22/07/24(日) 12:12:30

    『バツ』と言ってらくがきされてるしほのぼのだな! ヨシ!

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