【三次創作SS】オーボエリズムとオトテール

  • 1名も無き音0/1122/07/18(月) 23:25:44

    このSSは

    モブウマ娘だけど質問ある?|あにまん掲示板そもそも私のこと知ってる?bbs.animanch.com

    このスレを元にした所謂三次創作です。

    そのためかなり人を選ぶので閲覧時は注意して下さい。そしてかなり長いです。

    また、このSSは>>179さん>>182さんより着想を得ましたので先に元スレを読む事をオススメします。

    イラストは元スレの>>186さんよりお借りしました。

    それでは>>2より始まります。

  • 2名も無き音1/1122/07/18(月) 23:26:20

    「はぁ……」
    寝転びながらため息を付くとそれは雲一つない空へ吸い込まれていく。空とは対照的に私の心は酷く曇っていた。
    私の名前はオーボエリズム、新人トレーナーだ。これでも現役の頃は重賞を勝ったことだってある。……1度だけ。
    現役を引退して私はトレーナーになった。私のトレーナーに憧れていたのもあるが、それ以上にレースに関わる仕事に付きたかったからだ。
    けれど実際にトレーナーになってみると想像以上に大変だった。今だって“新人だから”という理由で担当を断られたばかりだ。……少なくとも誰かを担当にしなければ“新人”の看板が外れる訳無いのに……。
    ……くよくよしても仕方がない。今回がダメだっただけ、大事なのは切り替えだ。
    「……ヨシッ!」
    グッと気合いを入れて起き上がる。落ち込んでる時間が勿体ない、早速次の娘を探しに行かなくては。
    「あ、あのっ!」
    背後から誰かの声が聞こえて私は反射的に振り返った。
    そこに居たのは1人のウマ娘だった。
    身体は私よりも少し大きく、発達している。見た目からして高等部だろうか。それにしては制服がキレイすぎるから、おそらく編入学してきたのだろうか。
    「私になにかよう?」
    「あ、えーっとですね…」
    「うん?」
    誰かへの伝言だろうか?それならしっかりと聞かなくちゃ。
    「あの…オーボエリズムさん…ですよね?」

  • 3名も無き音2/1122/07/18(月) 23:26:40

    「……え?」
    この娘なんで私の名前を……?
    「あの……」
    「あ、ごめんなさい。確かに私はオーボエリズムだけど……」
    「やっぱり!そうですよね!」
    途端に彼女の瞳がキラキラと輝く。……なんだか罪悪感が……
    「あの……どこかであったことが……?」
    「あ!す、すみません!私オトテールって言います」
    「オトテール?」
    オトテール……。どこかで聞いたことが……まずい、早く思い出さなきゃ……あ。
    「もしかして、昔ファンレターをくれた?」
    「そうです!覚えててくれたんですか!?」
    「もちろん!今でも大切に取ってるよ!」
    ファンの存在はいつだってありがたい。現役時代はもちろん、今でも辛い時はファンレターから元気を貰っている。
    「私、オーボエリズムさんに憧れてトレセン学園に入学したんです!」
    「またまた~、冗談でも嬉しいよ」
    「……あの、オーボエリズムさん。実はお願いがあるんです」
    「ん?なになに?」
    お願い……トレーナーの紹介かな?
    そんなに人脈は広くないけどせっかく頼ってくれるなら頑張らなくちゃ。
    「私を、担当ウマ娘にして下さい!」

  • 4名も無き音3/1122/07/18(月) 23:27:00

    「……え?」
    「……」
    ……担当ウマ娘にして下さい?
    「あ、もしかして誰かトレーナーになって欲しい人が居るとか?」
    「はい、それがオーボエリズムさんです」
    やっぱり、私の事だった……。
    「えっと、その……どうして?私はまだまだ新人だよ?」
    「そんなの関係ありません、私は貴女と歩んで行きたいんです!」
    「え、えっと……」
    「お願いします!私のトレーナーになって下さい!」
    ま、まさかファンから逆スカウトされるとは……。こ、ここは……!







    「……ご、ごめんっ!」
    戦 略 的 撤 退 だ!!!!!
    「ちょ、オーボエリズムさん!?まっ、待って下さいって足速っ!?」

  • 5名も無き音4/1122/07/18(月) 23:27:25

    「はぁ~~~~~……」
    私はカフェテリアへ避難していた……。
    やっちゃった……逃げ出しちゃうなんて絶対にダメじゃん……本当にやらかしちゃった……。
    「はぁ~~~~~……」
    「大きなため息ね」
    「あ、トレ……先輩……」
    「好きな様に呼びなさい、それで?何か悩みごと?」
    この人は私の現役時代のトレーナーで、今では頼れる先輩だ。この人もウマ娘で重賞勝利の経験がある。私の次の担当で初のGI勝利をして現在ではチームを持っていて、私も少し前までこのチームでサブトレーナーとして勉強させて貰っていた。
    「トレーナー……実は私、逃げちゃって……」
    「あら、貴女いつの間に逃げも出来る様になったの?」
    「違います、そういう意味じゃないです」
    「フフ、冗談よ」
    まったくこの人は、人が真剣に話してるのに!
    でも、おかげで肩の力が抜けた。やっぱりトレーナーはすごいなぁ……。

  • 6名も無き音5/1122/07/18(月) 23:27:51

    「あの、オトテールって娘知ってます?」
    「ええ、昔ファンレター書いてくれた娘でしょ?」
    「え、覚えてるんですか!?」
    「当然よ、だってあんなに嬉しそうに見せてくれたんだもの。忘れろって言う方が難しいわ」
    そ、そんなにだったっけ……?
    「……そのオトテールって娘がトレセンに入学したんです」
    「へぇ、すごいじゃない」
    「それで……逆スカウトを受けて……」
    「逃げちゃった、と?」
    「……はい、仰る通りです」
    「不思議ね、貴女あんなに担当が欲しいって言ってたのに。願ったり叶ったりじゃないの」
    「そ……そうなんですけど。でも、だからこそって言うか……」
    「うん?」
    「その……私に憧れてくれているからこそ、なんです。私に憧れてくれているからこそ、怖いんです……」
    「怖い?」
    「はい……そんな理由で私がトレーナーをして、あの娘のレース人生をキズ付けたくないというか……。新人の私が手を出して、あの娘の、大切な人生を台無しにしたくないんです……!」

  • 7名も無き音6/1122/07/18(月) 23:28:20

    「……ねぇ、覚えてる?貴女と私が担当契約した日のこと」
    「え?も、もちろんですよ!トレーナーにアドバイスを貰って選抜レースに出て、結果は4着だったけど今までで1番良くて、嬉しくて、そのまま担当になりました……」
    「ええ、その通りよ。そして、当時の私はまだまだ新人だった」
    「でも今はチームを持つまでになったじゃないですか」
    「違うの、良く聞いてオーボエ。貴女は当時新人だった私の担当で後悔したことはある?」
    「そんなのあるわけないじゃないですか!確かにGIは勝てなかったけど沢山走ることが出来た、重賞だって勝てた。トレーナーが居なかったら今の私は居ませんよ!」
    「同じよ」
    「……え?」
    「私も貴女と同じだった。GIを勝たせてあげられなくてずっと不安だった」
    「トレーナー……」
    「でも今貴女の口からそんな言葉が聞けてすごく嬉しかった」
    「良い?オーボエ。新人だろうとベテランだろうと、誰が勝つか負けるかなんて分からない。確かに中々勝てなくて苦労したり、苦い思いをするかもしてない。でもね、ウマ娘の進む道を貴女だけの理由で否定してはダメ。私達トレーナーの仕事は担当を精一杯サポートする事。最後に良いか悪いかを決めるのは担当ウマ娘に他ならないのよ」
    「……」
    「貴女の気持ちを聞かせて?貴女の今の気持ちを」
    私……私の気持ち……理由は分からないけれど、でも、なんだかとっても

  • 8名も無き音7/1122/07/18(月) 23:28:48

    「私……もう一度オトテールに会いたいです!」
    「ならいってらっしゃい!きっとまだどこかでトレーニングしてるはずよ。トレーナーの居ない娘達は良く無茶なトレーニングしてるから」
    「はい!ありがとうございました、トレーナー!」
    私はカフェテリアを急いで飛び出した

  • 9名も無き音8/1122/07/18(月) 23:29:08

    「居た……!」
    探している内に日が沈みもうすっかり夜になってしまった。
    オトテールは1人グラウンドを走っていた、はっはっはっとリズム良く呼吸をしながら。
    すぅーっと私は大きく全身で息を吸ってお腹に空気を集める。
    「オトテーーーーールっ!!!!!」
    「あえっ!?あ、オーボエリズムさん!?」
    「ハァ……ハァ……」
    オトテールが私に気づいて走るのを止めた。渾身の叫びはどうやらしっかりと届いたようだ。
    「どうしたんですか?急に居なくなるからびっくりしましたよって大丈夫ですか?」
    正直空気が足りなくて大丈夫ではない、けれど私はゆっくりと息を整えて聞く。
    「……ねぇ、2つ聞きたい事があるの」
    「え?は、はい、なんですか?」

  • 10名も無き音9/1122/07/18(月) 23:29:30

    「まず1つ目、なんで私の担当になりたいの?」
    「それはオーボエリズムさんが憧れの人だからです」
    「……それだけ?」
    「は、はい。やっぱりダメですかね?」
    「いや、そうじゃないけど……。そして2つ目、なんで私が憧れなの?」
    この2つ目の疑問は特に聞きたかった。なんでわざわざ私なんかを憧れるのか、私以上に強くてカッコいいウマ娘なんて沢山居るのに。
    「……カッコ良かったからです」
    「私が?」
    「はい。初めて見たレースで泥だらけになりながらも必死に走って、前を向いて、諦めないあなたに私は釘付けでした。私にとってあなたは1番かっこ良くて、1番大好きで、1番の目標なんです!」
    私の目を見てオトテールは言う。嘘じゃないことは目を見ればすぐに分かった。
    「私はまだまだ新人で経験も浅いよ、いつか後悔しちゃうかも」
    「大丈夫です、不安にさせないくらい勝ちまくるので」
    オトテールはさも当然の様に言い放つ。“不安にさせないくらい勝ちまくるの”か、その自信は一体どこから出てくるんだろう。
    「ふふ……ふふふ……」
    「あれっ?私何かおかしな事言いましたか?」
    「ふふ……いやいや、大丈夫だよ。もうすぐ選抜レースでしょ?何か作戦はあるの?」
    「あ、えっと、前目に付ける先行策で行こうかと」
    「先行か、私と脚質同じなんだね。なら教えられることもあるかも」
    「本当ですか!?お願いします!」
    「もちろん!まず、走り方のコツだけど……」

  • 11名も無き音10/1122/07/18(月) 23:29:48

    それから私とオトテールは毎日の様にトレーニングに励んだ。オトテールは物覚えが良くて教えたことをすぐに自分の物にしていった。そんな日々があっという間に過ぎていき……






    「いよいよですね、オーボエさん」
    「うん、教えることは全部教えたよ。あとは自分を信じて頑張っておいで」
    「はい!あの、今まで本当にありがとうございました!」
    「こちらこそ、物覚え良いから教えるのが楽しかったよ。……あ、そろそろ時間だ、いってらっしゃい」
    「ほんとだ、行ってきます!あ、もう1つだけ良いですか?」
    「うん?」
    「しっかりと見てて下さいね!これがあなたの初めての教え子の走りです!」
    そういうとオトテールは元気良くゲートへ向かっていった。
    「まったく……そんなこと言わなくてもちゃんと見てるよ、がんばれオトテール!」
    枠入りは順調、全員しっかりとゲートに入って……



    ガコン!という音と同時に飛び出した!

  • 12名も無き音11/1122/07/18(月) 23:30:08

    結果を言えばオトテールは3着だった。教えたことは出来ていたし、大きなミスも無かった。強いて言えば先着した2人が強かっただけだ。
    「すみません……1着になれませんでした……」
    オトテールは申し訳なさそうに近づいてきた。耳もペタンと垂れている。
    「私ね、選抜レースは4着だったんだよ?」
    「え!?で、でもやっぱり1着になりたかったです」
    「掲示板だけでもすごいことだけどね、でも確かに小さなミスもあったし今日は反省会かな」
    「はい、そうですね……ってえ?今日は?」
    「そう、しっかりとしたトレーニングは明日から、今日は自分の悪かったところを理解すること」
    「いえ、そうじゃなくて……あの、もしかして……」
    「うん、私の担当ウマ娘になって欲しい。言っておくけど今さら断るなんて言わないでね?」
    「……やっっったあああああぁぁぁぁぁ!!!!!これからよろしくお願いしますオーボ……トレーナー!」
    「大丈夫、好きな様に呼んで良いよ」
    「じゃあ、オーボエトレーナー!」
    「両方って欲張りさんだな~。そういえば何か出たいレースとかってあるの?」
    「それはやっぱり、GIレースにたくさん出走して勝ちたいです!」
    「また欲張りさんだな~、ふふふ」
    「何でですか、良いじゃないですか!アハハハハ!」
    こうして私たちは出会った。今はまだまだ無名、有名になれるかも分からない。けれど私は何があってもこの娘を信じてる。
    「良~し、ちょっと学園まで競争しよっか!」
    「良いですね!でも負けませんよ~!」
    「「位置に付いて!よ~い、ドン!」」

    ~終~

  • 13二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 10:41:19

    素晴らしい...

  • 14二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 11:10:46

    おつ!良かった!

  • 15二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 15:10:06

    すてき……

  • 16二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 15:30:21

    モブウマ娘一人ひとりにこんなドラマがあると思うといいよね

  • 17二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 15:32:49

    オーボエリズムの登場レースはジャパンカップと菊花賞みたいだから
    主人公がGI総なめにしてて感覚狂ってるけどこれでもかなりの上澄みで実績もあるウマ娘なんだろうな

  • 18二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 15:46:43

    >「「位置に付いて!よ~い、ドン!」」

    暗転して流れ出すうまぴょい伝説

  • 19二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 17:54:32

    元スレ読んでたから泣いちゃった……すてきな作品ありがとう

  • 20二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 18:13:45

    ありがとう

  • 21二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 20:03:59

    いいものをみた

  • 22二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 20:06:48

    めっちゃよかった…
    ♡は1回しか押せないけど連打したい気分だ

  • 23二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 21:32:51

    >>21

    うわー!また描いたの!?

  • 24二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 21:38:31

    >>21

    ウワーッ!!

    また描かれてる!!

  • 25二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 21:39:26

    オトテールちゃんのファンレターを書いた者です。
    なんとなくの書き込みがこんな素敵なSSに昇華されて嬉しい……

  • 26二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 22:13:50

    素晴らしい……こりゃ近いうちにモブウマ娘の人気上位も夢じゃ無いね……

  • 27二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 22:14:45

    このレスは削除されています

  • 28二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 22:35:41

    >>21

    良く見たら耳飾りがそっくり…細かいところまですごい…

  • 29二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 22:42:43

    >>21

    日付見たら1日未満で描いてるし…マジですごすぎ

  • 30二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 23:31:42

    良かった!オーボエリズムもだけどトレーナーがかっこ良かった

  • 31二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 23:40:11

    モブウマ娘SSを読んでこんなに「育成したい」と思ったのは久しぶりだ・・・。

  • 32二次元好きの匿名さん22/07/20(水) 10:09:21

    良かった…感動した

  • 33二次元好きの匿名さん22/07/20(水) 18:16:29

    この2人に幸あれ

オススメ

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています