【SS】そよ風では足りない

  • 1二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 08:36:24

    …幼い頃にみた”風”。
    彼女は、マイル戦で他を圧倒していた。
    いずれ自分も…そう思った、きっかけだった。

    「トレーナーさん、おはようございます。今日もいい風が吹いてますね」
    『おはよう、ゼファー』
    あれから憧れの”風”をずっと追いかけてきた…
    トレセン学園に来て、トレーナーもついた。
    (あとは…実際に勝つだけ、ですね)
    …そう簡単ではないのは、わかっていた。
    だからこそ…不安だった。

  • 2二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 08:36:39

    「…冷たい風ですね…」
    その日は夏の真っ只中。冷たい風など吹くはずがない。
    けれど、彼女にはそう感じられた。
    (…実際に勝つだけ…それが難しい…)
    …前回の模擬レースで、彼女は惨敗してしまっていた。
    「もし…あなたのような”風”になれなかったら…私は…」

    『こんなところにいたのか、ゼファー』
    「あ、トレーナーさん。はい、風を全身に浴びていました」
    『…それだけか?』
    …さすが担当トレーナーと言ったところだろうか。見透かされたように言われた。
    「…怖いんです」
    『怖い?』
    「私は…”風”を追う…追い越せる”風”になりたいです…そよ風じゃ、足りません」
    ゼファー。そよ風を意味する名。
    だがそれでは…足りない。
    「けれど…今のままでは、そよ風そのものです」
    『ゼファー…』

  • 3二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 08:36:51

    『俺が君を”烈風”にしてみせる!』
    「え…?」
    『もっと早く言ってくれればよかったのに…トレーナーは、そういう悩みを相談する相手でもあるんだ』
    …頼り甲斐のあるその言葉。
    不意に心が軽くなった気がした。
    「…”烈風”、ですか?それは…とても強そうですね」
    『だろ?』
    「_ふふっ」

    祝福するように、突風が吹いた。

  • 4二次元好きの匿名さん22/07/19(火) 08:37:44

オススメ

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