【SS】未来のスズカ

  • 1二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 14:54:39

    突拍子もない話だが、納得するしかなかった。
    だって目の前にいる彼女は…自分と瓜二つなのだから。
    「ええ…伝えたいことがあって、ここまできたの」
    「伝えたい、こと…」
    …なんとなく、内容は察せられた。彼女の足に巻かれた包帯を見れば…

    「…あなたはこれから、沢山のレースを先頭で駆け抜けるわ」
    未来のスズカは語り出す。
    「とても輝かしい思い出を…沢山紡いでいく。とても幸せな記憶…」
    遠くを見るような目で語る彼女。
    「…けれど、それは突然に…あまりにも残酷な形で終わりを告げてしまう」
    「…それが、その足?」
    「ええ」

    「先頭で走っていいって言ってくれた、あのトレーナーさんとの別れも辛かったわ」
    怪我をした以上、現役を続行できない。
    契約解除も仕方のないことなのだが…それでも辛いものは辛かった。
    「今のトレーナーさん、大事にするのよ」
    「…わかったわ」

    しばらくの沈黙の後、未来のスズカは語り出す。
    「ねえ。このまま走り続けると…いつか、走れなくなってしまう。それでもあなたは…走り続ける?」
    走ることが好きな過去の自分…いや、走れなくなってもなお自分も走りたいくらいだ。そんな彼女に問いかけたって…答えは決まっていた。
    「走るわ」
    「…そう。そうよね」
    伝えられただけ、よかった。
    そう思い、引き返す。
    「私は…絶対に走り続けたい」
    「…」
    その声を背に、自らのあるべき場所へと帰っていく。

  • 2二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 14:54:50

    『スズカ!』
    「あ…」
    どうやら帰ってきていたらしい。トレーナーに起こされた。
    「ごめんなさい、帰ってきたばっかりで少し眠くて…」
    『どこか行ってたのか?…それはそうとして、朗報だ!』
    トレーナーは顔を輝かせて言う。
    『去年”出られなかった”あのレース…”天皇賞・秋”への出走が決まったぞ!』
    「本当…!?」
    そう。去年は”回避”したレース。
    『でも去年、まさかスズカが回避したいって言い出すとは思わなかったよ…何があったんだ?』
    「…親切な人に教えてもらったの。怪我は怖いって。だから、ちょっと嫌な予感がしたから…それだけで回避しちゃってごめんなさい」
    『いやいや、怪我をしないことは大事だからそれでいいんだ!それにしても、親切な人か…誰だったんだ?』
    「…ちょうどさっきまでここに…」
    『えっ!?会いたかったなぁ…』

    サイレンススズカはこれからも様々なレースを走る。
    その結果は、誰にも分からない…

  • 3二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 14:55:29

オススメ

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