- 1二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 20:04:52
休日。トレーナー室。
「お口を開けて~? はい、あーん」
「あ、あ――」
わけも分からぬまま、お弁当箱の中身を口に突っ込まれる。
もう抗弁しても仕方ないので受け入れる。
「お味はいかがかしら?」
弁当を携え、あわよくば餌付けまでしてくるウマ娘――ファインモーションは、味の感想を求めてくる。
咀嚼して一言。
「うん、白米の味だね」
「――む」
そういうことが聞きたいわけではないだろうが、その通りなので仕方がない。
「それじゃあ、次はこれだね」
弁当箱の隅に添えられた一口ハンバーグを箸で器用に半分に切り分け、摘んでこちらによこしてくる。
「ほら、あーん」
「あ――」
口に含んだ瞬間、比喩する表現が思い当たらない程の多幸感に満たされる。
冷めているのにも関わらず肉の脂がとろけだし、むしろ旨味として凝縮されているとさえ感じる。
噛んで見てもただただ柔らかく、ミンチ特有の小さな肉の粒になるようなこともない。
添えられたトマトベースのソースによる酸味が程よいアクセントを生み出して、
「美味しい」
「でしょう?」
喜色満面といった表情で、ファインモーションは得意げに胸を張った。 - 2122/07/23(土) 20:05:39
名残惜しくも空になってしまった弁当箱を前に、合掌をもって応える。
「ごちそうさまでした」
「ふふっ♪ お粗末様でした」
「――で、どういう風の吹き回しだったんだ?」
元々彼女の思いつきに付き合わされては振り回される一方だが、今日は極めつけだ。
言われたファインは顎に手を当てて天を仰ぐ。
「うーん、この前寮で闇鍋パーティーをやった時にね」
俺の理解が及ぶ内容なのか不安になる出だしだ。
「闇鍋パーティーって、思い思いに自分が一番美味しいと思うものを持ち寄るものでしょう?」
「それはそうかも知れないが……」
自分達が良い方向に良い方向にと持ち寄った食材が醸し出すカオスこそが醍醐味なのだ、と以前豪語された記憶がある。
「お弁当にも同じことが言えるような気がしたんだ。
一口一口は小さいけどいろんな料理を並べて、美味しく召し上がるものでしょう?
だから作るだけ作ってみたんだけど」
向き合って、一言。
「キミの喜ぶ顔が見たくなっちゃった」
ひどい殺し文句だ。
「お休みだけど今日は居るって言ってたから、せっかくだし持ってきたんだ。
――それで、いかがでしたでしょうか。 この私謹製のお弁当のお味は」
精一杯の笑顔を顔に作って、
「とても美味しかったよ」
と礼を言うと、ファインは太陽のように輝く顔で笑った。 - 3122/07/23(土) 20:06:25
「そうだトレーナー、苦手なものとかなかった? 次作る時には参考にするから」
次があるのか、と思いながら少し考える。
味については全くもって不満は無い。強いて言うなら――
「強いて言えば、自分のペースで食べさせてほしいくらいかな」
さて、本当に分かってくれたのか。あるいは聞き流されたのか。
それを聞いたファインは、
「ふふっ♪」
と笑うだけだった。 - 4122/07/23(土) 20:09:55
というわけでワンライ企画のお題「お弁当」SSになります
SS書き集まれー!ワンライやろうぜ!|あにまん掲示板ウマ娘でワンライ企画スレになります。ワンライはお題に合わせたSSを1時間以内に書き上げ完成させるという物です。人を集めるために始まりは21時からにさせていただきます。公平性を保つ為お題の発表は20時5…bbs.animanch.com当初あちらに投稿しようとしたんだけどめちゃくちゃ長くなってしまって「これアカンヤツや」という危機センサーが働き別でスレ立てした次第です
もうちょっと短く伝える努力をしよう…
- 5二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 21:02:24
好きな物を詰め込むって文脈で闇鍋とお弁当が繋がるのは盲点
実に良きです - 6二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 21:03:19
素晴らしい SPポイントプラス10です
- 7二次元好きの匿名さん22/07/23(土) 22:10:22
こういうイベントもやってんだねぇ
玉石混交だろうけど、1みたいな書き手が沢山いるなら覗いてみようかな