- 1二次元好きの匿名さん22/07/24(日) 16:51:34
「戦力外通知……ですか」
トレセン学園の小会議室内で、申し訳なさそうにこちらを見るトレーナーと、名簿を見比べながら自嘲の笑みを浮かべた。
「本当に申し訳ない。俺も最後まで面倒を見たかったんだが……」
「……まあ、しょうがないですね」
ペラペラと名簿を捲り、自身のデータが記されている頁を見つける。
「重賞でも掲示板常連内。手前味噌ですが、それなりの実力があると自負しています」
しかし、共に走る仲間はそうではなかった。
最初は自分と同じレベルが集まっていた。共に頂点を目指そう。そんな誓いを交わしたのも覚えている。
だが、ある日ひとりのウマ娘がチームに入ったことで、全てが変わった。そのウマ娘は重賞はおろか、G1でさえ敗北したことのない、まるで綺羅星のような存在だった。
「最初は俺も嬉しかったよ。あんな凄い子がスカウトを受けてくれるなんてさ……」
トレーナーの表情が変わる。それは、不安と恐怖が滲み出ていることが窺えた。
彼女を起点に、チームは変わった。誘蛾灯に虫が纏わりつくように、磁石に砂鉄が集まるように、強者がひとり、またひとりと集まってきた。
頁を捲る。そこには最初に肩を並べたチームメイトの軌跡など、吹いて飛ぶような並々ならぬ猛者が連なっていた。
出走者の枠は限られている。それまで共に走っていた石ころたちは振り落とされ、あるいは自分から席を譲って立ち去った。
「もう着いていけないんです。折れてしまったんですよ」
パタンと名簿を閉じる。通知書にサインし目の前の彼に押し付ける。
「……なあ、本当にそれでいいのか?」
「ええ、私はもう疲れました」
荷物を纏めて退席の準備を始める。ちらりと横目で彼を眺めると、随分と情けない顔をしていた。
(まるで俺を見捨てないでくれって顔してますね…)
このチームは強くなりすぎた。彼や私では手に負えない化物達の巣となった。
このチームは頂点に至るだろう。しかし、分不相応な力を背負ってしまった彼が、その重圧に耐えられるのだろうか。
最も、逃げ出す自分にはもう関係がなくなる話だが
「それでは、お世話になりました。チームの繁栄を願っています」
頭を下げて、ドアノブに手を掛けて退室する。
後ろから自分を呼び止める声が聞こえた気がしたが決して振り返らなかった。
振り返ればきっと踏み止まってしまう。そのくらいには、かつてのチームの愛着があったからだった。 - 2二次元好きの匿名さん22/07/24(日) 16:53:41
なんとなくだけどスカウトレースで入れ替えられたモブウマ娘ってどんなんだろうって考えながら書いてみた
よく考えたら無敗の三冠ウマ娘が入れ替わり立ち替わりやってくるってモブからしたら怖いよねって - 3二次元好きの匿名さん22/07/24(日) 16:57:07
乙乙、良い1レスSSを読ませてもらった。頂点に立ったけど上を目指してた頃が一番楽しかった、みたいな話結構好きだわ。
そっからもう一度立ち上がる的な話も好き。 - 4二次元好きの匿名さん22/07/24(日) 16:58:13
こういう話を想像できるからこそモブ軍団育成モードみたいなのが欲しい。
自分の担当がキャプテンで他全員モブのチームファーストみたいな連中を作ってみたいんじゃ