- 1◆eGacHz1Uw622/07/26(火) 13:19:07
- 2二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:22:26
因幡レイ(いなばれい)
- 3◆eGacHz1Uw622/07/26(火) 13:25:12
- 4二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:26:27
異世界
- 5二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:26:34
白黒の学校?
- 6二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:28:18
モノクロの世界って訳か、異界に迷い込んだ感あるな
- 7◆eGacHz1Uw622/07/26(火) 13:30:09
- 8二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:30:51
部活
- 9二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:31:09
自殺
- 10二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:31:11
釣り
- 11二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:31:12
ストーキング
- 12二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:31:31
なら別にいいんじゃないの?
- 13二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:31:55
死後の世界?
- 14二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:35:05
このレスは削除されています
- 15二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:35:48
あにまん
- 16二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:36:05
ズレてるくね?
- 17二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:36:14
ミスってない?
- 18◆eGacHz1Uw622/07/26(火) 13:36:55
- 19二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:37:17
いじめ
- 20二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:37:35
虐待
- 21二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:37:59
直感
- 22二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:38:02
借金
- 23二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:38:04
彼女にふられたこと
- 24二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:38:09
趣味
- 25二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:38:09
証拠隠滅
- 26二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:38:27
地獄
- 27二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:38:28
淫ら
- 28二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:38:36
天元突破
- 29二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:38:42
また安価おかしいですよ
- 30二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:39:07
急に暑苦しくなったな
- 31二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:40:13
- 32二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:41:45
文脈には合わないが何もおかしくないな
- 33二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:42:12
すまん、見間違いだ
- 34◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 13:43:39
- 35二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:44:38
あにまんまん
- 36二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:44:41
眠い
- 37二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:44:57
強あにまん民
- 38二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:45:00
性欲
- 39二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:45:20
崩壊
- 40二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:45:32
硬化
- 41二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:45:55
サバンナのハイエナ
- 42二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:46:21
馬鹿
- 43二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:46:22
アンジェロ岩
- 44二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:47:27
このレスは削除されています
- 45◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 13:51:20
- 46二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:51:20
アンジェロ岩とか死んだ方がマシで草
- 47二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:52:06
仮面ライダーアギト
- 48二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:52:10
矢鷺 陽狼(やさぎ かげろう)
- 49二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:53:15
貴様を殺す
- 50二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:53:25
……(無言
- 51二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:54:12
ナズェミテルンディス!!
- 52二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:56:19
ヤバそう
- 53二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 13:57:35
仮面ライダーアギトVSあにまん民遺伝子か……楽勝だな(白目
- 54◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 14:04:25
異形の全身甲冑の人物であった。
スカラベのような装甲がテラテラと金色に照り映える。
黒のボディースーツは全身を隈なく覆い隠しており、その素顔を窺い知る事は出来ない。
とりわけ目立つのは昆虫の複眼じみた赤色のバイザーである。
因幡レイ「……!」
と、因幡レイはおもむろに背後を振り返った。
何故なら、この全てがモノクロの世界、彼の背面に突然位置取った煌びやかな色彩を、彼の超強あにまん民遺伝子は見逃さなかったからである。
因幡レイ「お前! 何者だ!」
因幡レイが驚愕にひずんだ声で叫ぶ。咄嗟に戦闘ポーズをとる因幡レイ。
しかしその返答はなかった。
仮面ライダーアギト「……(無言」
因幡レイ「なんか言えや!」
……瞬間、白黒の教室を>>56が襲う!
- 55二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 14:06:28
カラーボール
- 56二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 14:06:41
宇宙人
- 57二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 14:07:56
カオスになってきたな
- 58◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 14:16:25
モノクロの校舎。その四階外壁に、3600km/hの円盤型UFOが突っ込んだ。
粉砕されたモルタルの破片が、猛スピードで彼らを襲う。
人体をいとも簡単に殺傷せしめる“石の弾丸”は、いくら強化されたとはいえ超人の域を出ない因幡レイには成すすべもなく……
顔を庇い、身を縮める因幡レイを、仮面ライダーアギトが身をもって守った。
因幡レイ(!?)
混乱に顔を顰める因幡レイ。
顔を上げた彼が見たのは、>>60であった。
- 59二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 14:17:35
プレデター
- 60二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 14:17:38
もう一人の自分
- 61二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 14:17:39
金髪巨乳の女
- 62二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 14:17:40
全裸の幼女と化した自分
- 63二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 14:17:45
ラディッツ
- 64◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 14:31:09
因幡レイ(この甲冑の男……俺を護ってくれたのか? 敵じゃないのか?)
そうして顔をあげた因幡レイ。
そんな彼を、前代未聞の恐慌が襲った。普段鏡で見る光景などでは断じてない。
本当の“もう一人の自分”がそこにいたのである。
もう一人の自分「どうも、因幡レイ。私は因幡レイです」
それは独りでに開いた宇宙船のハッチから降り立ちつつ言った。
因幡レイ「……」
しかし、因幡レイはもう驚愕に動揺する事もなかった。
異常の連続に疲弊してしまったというのもある。
だが、彼は一目見た瞬間から確信してしまっていたのだ。
眼前の人物が赤の他人でも何でもない、真実の姿である事を……
そしてそれはこう言った。
- 65二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 14:32:26
5ch民
- 66二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 14:32:41
並行世界の自分
- 67二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 14:32:44
イケメン(自称)
- 68二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 14:33:07
あなたにプロポーズ
- 69二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 14:33:10
貴方を消去
- 70◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 14:42:24
因幡レイ(え……?)
茫然自失とする因幡レイ。
目まぐるしく変わるてんで共通点のない異常の数々に、彼は翻弄されるばかりだった。
ただ、彼が言うのであればきっとそうなのだろう、という確信のみがあった。
と、平衡世界の因幡レイが光線銃を取り出す。彼はその銃口を因幡レイに向けると、これ見よがしにセーフティを解除し、引き金に指を掛けた。
仮面ライダーアギト「>>73!」
- 71二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 14:43:28
ウソダドンドコドーン
- 72二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 14:45:38
逃げるぞ
- 73二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 14:45:39
……(無言で動く)
- 74二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 14:47:07
アギトさん、無言なのが似合うしカッコいいなぁ
- 75◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 14:53:38
- 76二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 14:59:22
あにまん掲示板でスレを立て
- 77二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 14:59:36
色仕掛け
- 78◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 15:25:24
超強あにまん民遺伝子の成し遂げる奇跡……それは生体ホルモンの過剰分泌である。
人間には会った者の性質を判ずる嗅覚が存在する。
この生体ホルモンが一度鼻腔に飛び込めば、人によっては激しい嫌悪感を覚えるかもしれない。
或いは一目ぼれするかもしれなかった。
因幡レイは脳の器官をコントロールする事で、それを自在に分泌する事ができるのだ。
それが大気を伝い、並行世界の因幡レイの元に届く。
並行世界の因幡レイ(……この感覚は!)
彼女は女であった。
恐らくは無数に存在すう並行世界の一つには因幡レイが女であった場合も含まれているのであろう。
彼女が因幡レイを愛するようになった時には、光線銃はもう放たれた後であった。
一条の光芒が白黒の教室を横切る。
余りにも速すぎるそれは、しかし中空で矢庭に掻き消える事となった。
火器の故障だろうか?
その答えを因幡レイは知っていた。
というと、彼のホルモンは、その分泌をコントロールできるというまででもなく、その性質そのものを彼自身が操れるのだ。
光線銃に光る赤色を捉えた時、因幡レイはそれが熱エネルギーの顕熱を作動原理とする武装だと即断した。
物体の高温発光は、それが798K……578℃加熱された事を示す、固有な現象だったからだ。
そうして、彼はホルモンを熱シールドたるアルミニウム箔で覆ったのであった。
因幡レイ「おかげでちょっとした火傷で済んだぜ……」
そうしたり顔で言う因幡レイの額は黒く焼きつき、煙が上がっていた。
仮面ライダーアギト「……すまない」 - 79◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 15:25:45
- 80二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 15:26:24
はじめまして
- 81二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 15:26:36
やらせろ
- 82◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 15:40:52
因幡レイ(……え?)
因幡レイは目を見開く。心なしか仮面ライダーアギトも絶句したような雰囲気である。
たった今耳に飛び込んで来たのは、それほど信じられない言葉だった。
並行世界の因幡レイ「ヤらせろーーーーッ!!!!!」
そう言いながら因幡レイが跳びかかって来る。
裂帛の猿叫であった。
因幡レイ「い、いや! それはちょっと話が速すぎるって言うか~!」
言いながら因幡レイは思う。彼女は本当に並行世界の俺なのだろうか?
そう言う事で済めばそれだけだが、さしもの並行世界とはいえ、因幡レイがここまでの変貌を遂げるとは思い難かった。
恐らくは、攻撃に対する即応であったし、アルミニウム箔の付加などという離れ業もやっているので、制御が甘くなったのであろう。
本来は攻撃を停止する程度に留めていたのだが……
仮面ライダーアギト「い、いや……少し待て。君も、どうにか彼女が落ち着くようにはできないのか?」
冷静に制止する仮面ライダーアギトの声色が、因幡レイの合理的な思考を呼び戻す。
バルビツール酸系。
中枢神経に作用し、使用者の興奮を宥める、 鎮静剤の一種だった。
因幡レイ「……いや! あるにはあるが、使用は差し控えておくよ」
何故なら、このホルモン分泌……それも化学物質の合成ともなれば、彼の体にかかる負担は尋常なものではないからである。
或いは死ぬ事すらあるかもしれない。
誤って一般の人間に及ぼしたのならともかく、これによって彼女が無力化されたのは事実であるし、元より自分の命を狙って来た刺客をそこまで甲斐甲斐しく助けてやるなど、彼にとっては言語道断の軽率であった。 - 83◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 15:45:29
ひとまず並行世界の因幡レイを落ち着かせた彼らは、白黒の教室を出て、2階の回廊を渡っていた。
仮面ライダーアギト「無人だな」
因幡レイ「ええ」
因幡レイは彼に引っ付いて離れない並行世界の因幡レイを引きはがしながら言った。
因幡レイ「……ところで、あなたは何者なんです? 並行世界の校長か何かですか?」
冗談交じりの因幡レイの戯言を、仮面ライダーアギトは沈黙でもって遇する。
仮面ライダーアギト「……俺は>>85だ」
- 84二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 15:46:26
自身が何者かわからない
- 85二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 15:48:54
アギト
- 86◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 16:03:31
因幡レイ「……アギト? それが本名なんです?」
アギト「ああ」
それは明らかな偽名だった。
この現代日本において、およそ“アギト”の名は一般的なものではない。
彼の背丈は日本人のもので、日本語も流暢だったから、殊更にその疑惑は深まった。
知らず知らずの内に刺々しくなる彼の声色は、しかし彼の行動を思い返す事により穏やかになる。
因幡レイ(でも、彼は俺を助けてくれたんだ)
例え明らかな偽名を名乗られようが、アギト自身の危険を顧みない行動力が、因幡レイを寛大にさせたのである。
だが、それでも見逃せない点が一つあった。
因幡レイ「あなたは、どうしてここにいるんです? そもそもここは何なんだ? 知っていたら教えてくれ」
アギト「……」
因幡レイ「なんで押し黙る……!」
いよいよ剣呑になる彼の唇を、並行世界の因幡レイの口づけが塞いだ。
濡れ羽烏に似た楚々たるロングエアー、香る芳醇な柔軟剤、そして熱く、艶めかしい唇の柔らかさ……
圧倒され、二の句を継げれずにいた因幡レイの耳に、珠の鳴るような美しい女の声が飛び込んでくる。
並行世界の因幡レイの声であった。 - 87◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 16:09:28
並行世界の因幡レイ「駄目」
因幡レイ「え……?」
並行世界の因幡レイ「アギトさんの姿が見えない? 彼、すっごくあなたの事を慮ってるんだから」
釣られるように因幡レイがアギトを見遣る。異形の全身甲冑が纏う沈黙は、心なしか苦悩しているように見えた。
並行世界の因幡レイ「きっと言えない事情があるんだって、どうして気が付かないの? 彼はあなたを護ってくれたじゃない。彼はあなたを思いやっているじゃない。だから、あなたも彼を思いやらなくちゃダメなの。こんな状況だから、尚更」
因幡レイの胸を、並行世界の因幡レイの声が鋭く締め付ける。それは確かに、己自身だからできる的確な精神分析であった。
因幡レイ「……>>89」
- 88二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 16:36:51
…
- 89二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 16:37:04
すみません、無神経でした
- 90◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 16:52:49
因幡レイ。アギトに向き直り言った。
アギト「いや……構わないんだ。レイの疑念は正当なものだからな」
因幡レイ「いえ、そんな事……」
アギト「正当だよ」
アギトはきっぱりとした様子で断言する。
アギト「正当だ」
白黒の静止した世界。数奇な運命で出会った彼らは、これまた数奇な友情を育もうとしていた。 - 91二次元好きの匿名さん22/07/26(火) 16:54:04
このレスは削除されています
- 92◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 17:54:39
因幡レイ(……あれ?)
ふと気が付いた事がある。
この世界には、時間の概念がないのだ。
時間の停止、あるいは遅延。
先程から感じていた違和感の正体は、それだったのか……
だが、何故そのような現象が起こっているのだろう。
その答えもまた、この白黒の世界に隠されているような気がした。
因幡レイは、もう一度周囲を見渡してみる。
灰色の回廊。灰色の床。
そこに敷かれた灰色の絨毯。
灰色の校舎。灰色の階段。
そして、廊下の端で揺れている……灰色のカーテン。
因幡レイ「あの布切れは?」
並行世界の因幡レイ「ああ、あれね」
彼女は指差した。
因幡レイ「あんなの無かったよな? どこにあったんだ?」
並行世界の因幡レイ「ずっとあったわよ」
因幡レイ「え……? じゃあ、あれは一体なんなんだ?」
並行世界の因幡レイ「……わからない」 - 93◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 17:55:20
そう言って、並行世界の因幡レイは首を振った。
因幡レイ「おい! わからないってどういう事だ!」
並行世界の因幡レイ「仕方ないじゃない。私だって知りたいもの……でも、どうしようもないのよ。ただ、わかってる事は」
因幡レイ「……?」
並行世界の因幡レイ「……この世界が、私たちにとって良くないものであるってこと」
因幡レイ「……それは、どういう意味だ?」
並行世界の因幡レイ「……」
彼女の瞳が悲しげに曇る。その変化を見て取った因幡レイは、それ以上問い詰めるのをやめた。
因幡レイ「わかったよ。言いたくないなら言わなくていい」
並行世界の因幡レイ「うん」
因幡レイ(この人は、何かを知っている)
それは間違いなかった。しかし、それが何なのかまでは分からない。
因幡レイ(……まぁ、良いか) - 94◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 17:57:52
因幡レイは考えるのが面倒くさくなった。
因幡レイ(そもそも俺は自殺がしたかったんだ。ようやく思い出した。この世界を探索して、どうも出る方法に見当がつかなくて……こんな絶望的な状況だったら、自殺してもおかしくない。そうだ、死んでしまおう)
因幡レイは己の懐をまさぐった。
因幡レイ(……でも、どうやって死のうかな。飛び降りなんて怖くてできないし、首吊りは苦しいだけだ。やっぱり毒が一番か……でも、手持ちの道具にそんな物はない。……ん?)
そこで、彼の視線が止まった。それは、並行世界の因幡レイの腰にあるホルスターである。
因幡レイ「銃か……」
並行世界の因幡レイ「ええ」
因幡レイ「その光線銃、とんでもない威力だよな」
並行世界の因幡レイ「ええ、凄いわよ。どんな敵も一撃で倒せるんだから。あなたにも見せたでしょう?」
因幡レイ「ああ……あの時、確か……こうやって撃ったんだっけ?」
並行世界の因幡レイ「ちょっと、なにするの!?」
彼女は慌てて止めようとするが、遅かった。
因幡レイの手が、ホルスターから光線銃を抜き取っていた。
並行世界の因幡レイ「返しなさい! それは、あなたが触って良い代物じゃないの!」 - 95◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 18:00:08
因幡レイ「……」
並行世界の因幡レイ「返しなさい!」
因幡レイは構わず、光線銃を咥え込んで引き金を引いた。
並行世界の因幡レイ「ああっ……」
呆然とする彼女の前で、光が弾ける。
眩い光に包まれて、因幡レイは死んだ。………………
―――目が覚めた。
色彩豊かな現実世界である
リノリウムの天井。鼻腔を刺激する消毒液の臭い。
病院の一室だとはすぐに分かった。
そして、傍らには白衣を着た医師と看護師の姿がある。
医者「お目覚めですか?」
因幡レイは起き上がり、周囲を見渡す。すると、ベッド脇には、あの白黒の世界で出会った因幡レイがいた。
因幡レイ(夢じゃなかったのか……)
並行世界の因幡レイは言ったものだ。
『この世界は、私たちにとって良くないものである』と。
彼女は、この世界の異常性に気付いていたのだ。 - 96◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 18:04:21
因幡レイ「……あれから、どうなったんですか?」
医者「あなたの体は酷い有様だったんですよ」
因幡レイ「……俺の体、そんなに酷かったんですか?」
医者「ええ」
因幡レイ「……どのくらい?」
医者「そうですね。頸骨が損傷しているので、もう手足は動きません。それと脳の細胞にもダメージが見られるので、合併症を引き起こすリスクは余人とは比べものにならないでしょう。運よく債権者が首を吊ったすぐに見つけたので、事なきを得ましたが、あと少し処置が遅れていたら手遅れになっていたかもしれません」
医者「もう一生この病院から出る事はできないでしょう」
因幡レイ「そうなんですか」
医者「ええ」
因幡レイ「……それで、俺は助かったんですね」
医者「一生激痛にもだえ苦しむことになるでしょうが」
因幡レイ「そうか……。良かった……」
医者「……」
彼は心の底から安堵した。
もう、二度とあの世界から出られないかもしれないという不安が消えたからだ。 - 97◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 18:07:02
並行世界の因幡レイ「ねえ!」
そこに、もう一人の因幡レイの声が響いた。
並行世界の因幡レイ「私の話を聞いて!」
因幡レイ「あ、ああ……ごめん」
並行世界の因幡レイ「私、謝らないといけない事があるの……」
因幡レイ「え?」
並行世界の因幡レイ「私は、あなたを助ける事ができなかった!」
因幡レイ「……」
並行世界の因幡レイ「私が、もっと早く駆けつけていれば、あなたを苦しまず殺す事だってできたのに!」
並行世界の因幡レイ「私が、もっと早くあなたを愛せば、あなたは自殺なんて考えずともよかったのに!」
ここまで言われれば鈍感な彼にも分かった。彼女は、初めから因幡レイを助けるため、あの世界に降り立ったのだ。
並行世界の因幡レイ「私の世界はね、高度に化学力が発展していて、人類は地球を捨てて宇宙で生活していたし、並行世界にアクセスする機械まで発明されていたの」
並行世界の因幡レイ「私は、富豪の家に産まれたから、その機械を買う事ができた」
並行世界の因幡レイ「そうして、私はあなたをその機械から覗き見たの……」
並行世界の因幡レイ「あなたは数ある並行世界の中でも最悪の境遇の“私”だったわ。それを見る内に、私は悲しんで、胸が痛くなって……そして同時期に、私はネットワークであるニュースを読んだの。並行世界にアクセスする機械が及ぼす、恐ろしい副作用のニュースを」 - 98◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 18:08:41
並行世界の因幡レイ「次元の壁を突き越えて別世界にアクセスするという事は、ある“灰色の空間”を作ってしまう。そして一度それに囚われれば、もう二度と抜け出す事はできない……精神だけがそこに囚われて、永遠に灰色の世界を彷徨う事になる……それを知った時、私は購入したわ。“ワールドシフト”の使用券を」
並行世界の因幡レイ「永遠に彷徨うくらいなら、殺そうと思った。そうして楽になってほしかった。でもそれも失敗したわ。大気の組成環境が違うのか、光線銃はまともに動作しなかったし、あなたは想像以上にいい男だった……」
彼女は、そこで言葉を詰まらせる。涙が零れ落ちた。
並行世界の因幡レイ「本当は、ずっと前から分かってた……あなたが私にとって特別な人だという事を」並行世界の因幡レイは、顔を伏せる。涙で頬を濡らす。
並行世界の因幡レイ「私は、あなたを愛してるんだって……」
並行世界の因幡レイ「だけど……だからこそ、私には許されない罪がある!」
彼女は顔を上げ、そして告げた。
並行世界の因幡レイ「私は、あなたを殺す事もできず、愛する事すら許されなかった」
並行世界の因幡レイ「だから、だから……」並行世界の因幡レイは、泣きながら微笑んで言う。
並行世界の因幡レイ(私はここで死ぬ……!) - 99◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 18:10:09
ホルスターから引き抜いた光線銃を、ほんの一瞬で口にくわえ込んだ彼女は、いつか見たように、一切の躊躇なく光線銃の引き金を引き絞った。
因幡レイ(……え?)
次の瞬間、因幡レイは目を疑った。
一条の熱線が、彼女の頭蓋を貫いて、灰色の脳漿が病室の空を舞ったからだ。 - 100◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 18:12:22
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
- 101◆VpZv76BRZfif22/07/26(火) 18:13:37
完