デルトラ歴史案内ツアー うごめく砂方面

  • 1ツアーガイド22/07/29(金) 20:11:03

    皆さま、このたびはデルトラ国土歴史案内ツアーに参加ありがとうございます。
    このツアーは今なおデルトラ王国中興の祖と呼ばれる国王リーフ、彼の没後500年の節目である今こそ企画された、歴史を追体験するツアーです。
    今回の内容は国王リーフの旅の内、ネズミの街に巣食う大蛇リアを討伐した一行が、うごめく砂でラピスラズリを手に入れるまでを追体験する予定です。
    出発は20時半程度を予定しておりますので、皆様ふるってご参加ください。

  • 2ツアーガイド22/07/29(金) 20:11:46
  • 3ツアーガイド22/07/29(金) 20:29:11

    ヒラの町に予定よりも長く滞在することになってしまい、申し訳ありません。さて皆さま、デルトラ歴史資料館はお楽しみいただけましたでしょうか。
    すべて写しとはいえ建国の王アディンの日記や、各時代の王族に仕えた文官たちの一級資料。デルトラ年鑑に加えて、今回のツアーで追いかけているリーフ国王時代の資料などが非常に見やすい分類法で収められています。
    私のお気に入りは、デルトラのベルトのレプリカですね。普段国王の腰につけられているベルトの細部を、レプリカとはいえじっくりと鑑賞できるのは貴重な機会です。宝石も、できるだけ同じ大きさの物を選び抜いたといわれています
    それでは出発の時間となりましたので、馬車へお乗りください。

  • 4ツアーガイド22/07/29(金) 20:36:24

    ネズミの街から無事脱出を果たした一行は、次なる魔境であるうごめく砂を目指し、北へと歩を進めました。彼らは大蛇リアとの死闘を終えたにもかかわらず、休憩をしなかったと記録されています。
    このような行動をとった理由として、いくつかの説が挙げられています。最も有力な説が、周囲をネズミが蔓延っていたから休憩できなかったというものですね。
    考えてみれば当然な話なのですが、大蛇リアを打ち倒し拠点であった街を焼いたとはいえ、そこに巣食っていたネズミたちが瞬時に消え去るわけではありません。ただでさえ炎に追われ暴走状態と言えるネズミの群れのそばで呑気に腰を下ろせば、そのまま食い殺されてもおかしくないのですから。

  • 5ツアーガイド22/07/29(金) 20:41:10

    一行のこの行動は、夜が明けてしばらくしてから思わぬ形で正解であったと判明しました。ネズミの街から上がる煙を目にして、怪鳥アクババの一匹が偵察に来たのです。ヒラのすぐそばで呑気に休んでいれば、隠れる場所などない大平原でアクババの目に留まり、一行の旅はあっけない最期を遂げたでしょう。
    しかし、一行の目の前にはネズミ除けの用水路があったのです。丁度我々からも見える位置まで来ましたね。
    ネズミが渡るには深く、しかし立っていれば子供でも溺れない程度の深さがあるこの水路へ、一行はためらうことなく飛び込みました。そしてリーフのマントを水面へと浮かべ、その下へと隠れたのです。

  • 6ツアーガイド22/07/29(金) 20:49:03

    マントは水に溶けるようにその姿を隠しましたが、アクババの鋭い目がそれを見逃すと安易に考えるのは影の大王の兵器に対する認識が甘いと言えます。現にリーフも後の手記に、隠れられるかは賭けだったと記述しているほどですからね。
    そんな彼らの策を助けたのは、ジャスミンの能力でした。彼女はこの水路に住む古い魚へと語りかけ、魚群をマントの上で泳がせたのです。
    魚群とマントで二重に隠された一行を、さすがのアクババも見つけることはできませんでした。影の移動でアクババが去ったタイミングを計った一行は、今もなお名品として知られる女王バチのアップルドリンクの産地である果樹園へと逃げ込んだのです。

  • 7ツアーガイド22/07/29(金) 20:54:43

    余談となりますが、一行を助けた魚たちは高い知能を持っていることが今ではわかっています。竜好きのドランが書いた旅行記に載っている、リコウウオかその近種と言われているこの魚たちは、大きなものは小人族の平均的な身長までに成長します。
    現在ではリーフ国王がこの一帯の調査をした際、ジャスミン女王が魚たちと言葉を交わし、その記録を元にしてある程度の交流が持たれています。
    もう少しで水路を渡る橋に着きますが、そこにある交流館に詳しい資料があります。興味のある方は、休憩時間に覗いてみることをお勧めしますよ。

  • 8ツアーガイド22/07/29(金) 20:58:25

    皆さま、左手に見えるのが、女王バチのアップルドリンクの産地として名高い果樹園です。
    飲めばそれだけで力がみなぎる体力仕事を生業とする者たち御用達の逸品ですが、最近では気力回復の効果から事務仕事のお供として備えることがあるらしいですね。
    安いのもではないため気軽に手が出せるわけではないですが、ほとんどの兵士の詰め所や工事現場で使われています。
    かつては水路脇の一角を占めるだけであった果樹園も、事業の拡大が続いた今では水路のそばを埋め尽くさんほどになっています。予定の時間まで、ゆっくりと果樹園を見学してみてください。
    そこの小屋では果樹園に住む賢いハチに関する資料の閲覧や、アップルドリンクやローヤルゼリーを購入ができますよ。

  • 9ツアーガイド22/07/29(金) 21:07:13

    集合時間となりましたが、皆様集合いただけたようですね。
    果樹園へと逃げ込んだ一行は、周囲の安全を確認するとその場に倒れ込み眠ってしまったとリーフやバルダの手記にあります。目を覚ますと、果樹園の主である老婆が彼らの前に現れました。
    影ながらレジスタンスを支援する老婆は、一行がネズミの街からこの果樹園にたどり着いたことを見抜きます。そして当時流れはじめていた、黒い鳥をつれた3人組が影の大王の悪事を制裁するという噂に関係すると気づいたとされています。
    直接的な支援はかえって彼らの行動目的に反すると悟った老婆は、疲れ果てた一行にリンゴとアップルドリンクを売り、リスメアへ続く道を教えました。
    そして金策という建前を置いてから、悪名高い宿屋チャンピオンの催しを伝えたのです。

  • 10ツアーガイド22/07/29(金) 21:14:26

    今では影の大王が鍛えられた奴隷を集めるための催しであったと知られている宿屋チャンピオンのリスメア競技大会ですが、当時は腕に自信がある者が腕試しと同時に金を得る手段として知られていました。目もくらむ大金を掴んだ人々が姿をくらましても、金を元手に人生をやり直そうとしていると誰も疑問には思いませんでした。
    しかしデルトラ全土に優れた諜報網を持つレジスタンスは、賞金を得たほとんどの人々が一切の痕跡を残さずに失踪することに疑問を持ちました。いよいよ本格的な調査を開始しようとしたまさにそのタイミングに、リーフ一行は居合わせたのです。
    老婆からの提案を、一行は怪しい部分があると悟りつつも受け入れました。路銀はあって困ることはなく、また悪を見逃すという選択を選べなかったのです。
    一日果樹園で休息をとった一行は老婆に迷惑が掛からぬよう、誰にも見られない深夜に出発しました。

  • 11ツアーガイド22/07/29(金) 21:20:49

    果樹園からリスメアへ着くまで、リーフたちの足で一日かからなかったといわれています。それよりも早い馬車に乗っている我々は、より短い時間でその道を踏破できるというわけです。短い道中になりますが、ここで一つ小話を。
    一行はリスメアの街に着くと、そこで一人の詐欺師と出会いました。鳥に文様の入った円盤を回させ、矢印がどこで止まるかという偶然に賭けさせる。と見せかけて、実際はブレーキを使って自在に円盤をコントロールしていた卑劣な男です。
    この男を裁いたのは、賢鳥クリーでした。クリーは男に雇われるふりをして止まり木に泊まり、隙を見てテーブルクロスを引きはがしたのです。騙されたことを知った民衆に男は追われ、ジャスミンは偶然落ちていた木彫りの小鳥を懐に入れました。
    この小物が、後に重要な役割を果たすことになります。

  • 12ツアーガイド22/07/29(金) 21:25:48

    リスメアの門が見えてきましたね。この町は古くからこの地方最大の都市であり、その賑わいは時間に関係なく続いています。たとえ夜中であっても人の営みが止まらないことから、不夜城と呼ばれることもあります。
    賭け事に強く惹かれるメア族が多く住む町であり、当然賭け事に関する多くの施設が軒を連ねれいます。それを生業としている賭け師も多いため、嗜む以上に入れ込むことは身の破滅を招くでしょう。
    リーフたち一行は街に入り詐欺師を成敗すると、その足で宿屋チャンピオンに向かいました。バルダの案により偽名で選手登録を済ませ食事をしていると、一行にある男が接触してきます。
    その男こそ英雄ジョーカーです。老婆から情報を聞いた彼は、危険を冒して競技大会に参加した一行に感謝の気持ちと作戦を伝えます。

  • 13二次元好きの匿名さん22/07/29(金) 21:26:20

    ま、まさか帰って来ていたのか!

  • 14二次元好きの匿名さん22/07/29(金) 21:29:30

    おう、ジョーカー嘘つけや

  • 15ツアーガイド22/07/29(金) 21:34:57

    >>13

    待ってくれていた方がいてうれしい限りです


    >>14

    ここで一行を守るためにだまし討ちしたという説もありますが、流石にそのような乱暴な手段をとるとは考えにくいため協力関係を打診した説が有力視されています


    戦士の誇りを持つバルダは八百長ともとれる戦いの打ち合わせに難色を示しましたが、最終的に合意しました。そして一行は打ち合わせ通り戦いへ赴くことになります。

    当時街の大通り沿いにあった宿屋チャンピオンは残念ながら現存していませんが、その遺志を受け継いだ複数の宿屋によってリスメア競技大会は継続されています。

    予定表によれば、今晩行われるのはクイズ大会のようですね。大会は一晩で終了しますし、飛び込み参加も歓迎されます。知識に自信のある方は、参加を検討してはいかがでしょうか。

    この後ホテルにチェックインしましたら、明日の朝宿の入り口に集合となります。リスメア滞在を心行くまでお楽しみくださいね。

  • 16ツアーガイド22/07/29(金) 21:41:09

    おはようございます。リスメアでの滞在はお楽しみいただけましたでしょうか?
    何名か顔色が悪い方がいらっしゃいますね。だから賭けには気を付けてといったのですが。
    さて、我々と同じく一晩の休息をとった一行は、いよいよリスメア競技大会に参加することとなります。
    競技大会とは名ばかりの、急所攻撃や殺しをしないだけの野蛮な戦い。本来であれば参加するだけで旅に影響が出かねない危険な催しでしたが、鍛え抜かれた一行は危なげなく予選を突破しました。当時デルトラに蔓延っていた怪物と比べれば、ちょっとした腕自慢は比較にもなりませんから当然と言えますね。
    そしてジョーカーの策の通り、全力で戦うように見せかけて最小限の被害で試合を終了。観客の機嫌を損ねないよう意外性で選ばれた、ジャスミンが優勝することになりました。

  • 17二次元好きの匿名さん22/07/29(金) 21:43:16

    久しぶりの更新うれしい……うれしい……

  • 18ツアーガイド22/07/29(金) 21:46:08

    ここで一行とジョーカーの警戒は最高潮に達します。閉会式は民衆の目もあるため危険は低いですが、宿の疑惑が真実ならばいつ何が起こってもおかしくないのですから。
    警戒の甲斐あって、一行とジョーカーは食事に仕込まれた眠り薬に気がつき難を逃れました。即座に宿から逃げ出し身を隠した一行に、ジョーカーは誘いをかけます。レジスタンスに参加し、共に戦わないかと。
    一行は旅の理由を明かせずに断ります。その返答を予想していたジョーカーは、最近一行の外見的特徴と影の大王に抗っているという情報が噂となっていると教え、デルトラのために動くならばまた会うだろうとその場を去りました。
    我々も出発しましょう。うごめく砂はそう遠くありません。

  • 19ツアーガイド22/07/29(金) 21:51:11

    夜のうちに街から脱出した一行でしたが、夜が明けるとジャスミンが追跡者に気がつきました。影の憲兵団が、一行の進路を辿ってきているとクリーがジャスミンに伝えたのです。
    かつてデルトラに蔓延っていた影の憲兵団は、人ではなく影の大王が作り出したある種の怪物でした。一流の戦士と渡り合う力を持っており、五感も動物並みに鋭かったといわれています。支配される民衆から最も恐れられたのは火ぶくれ弾と呼ばれる炸裂団であり、僅か数滴かかっただけでも人1人が苦しみ抜いて死ぬ猛毒が入っていたのです。
    匂いと痕跡を辿る憲兵団に対し、一行は逃げるしかありませんでした。

  • 20ツアーガイド22/07/29(金) 21:56:41

    逃げながらも、一行はうごめく砂へと歩を進めます。匂いをごまかすために川を渡り、足跡を消すために岩場を通るといった行為が功を奏し、憲兵団との距離はなかなか縮まりません。しかしそれは、引き離すこともできないということです。
    ほとんど休まずに追跡を続ける憲兵団も、魔境に足を踏み入れれば追跡を諦めるだろうという見通しで一行もほぼ休まずに逃げ続け、ついにうごめく砂と外界を隔てる岩壁へとたどり着いたのです。
    丁度我々にも見えてきましたね。あれこそがアディン王のデルトラ統一以前にメア族によって築かれ、今なおうごめく砂の拡大を防ぎ続けている、通称石壁です。

  • 21ツアーガイド22/07/29(金) 22:01:11

    この魔境はその名の通り、広大な砂漠となっています。石壁が築かれる前は徐々に拡大を続けていたとされ、それを危険視したメア族が総力を挙げで石壁を建造し、その拡大を防いだとされています。
    現在では国が石壁の保全をしており、あちらの監視所で近づく人間は厳しく制限されています。
    我々は事前に許可を取っているので石壁の上まで登りうごめく砂を実際に見ることができますが、それも年に限られた人数のみが許されるのです。
    それ以外の方法でうごめく砂を見る方法は存在せず、リスメアかヒラの資料館の記録でしかその姿を知ることはできません。それほどまでに危険な領域なのです。
    ここまで警戒されていてもなお、年に数人は警備の目を潜り抜けて侵入し、砂漠に消えていく愚か者が出現します。

  • 22ツアーガイド22/07/29(金) 22:06:27

    さて、眼前に広がる赤い大地こそ、悪名高いうごめく砂です。我々は監視用の昇降機で登ることができましたが、リーフたち一行の時代には当然そのようなものは備わっていません。この石壁を超えるには、かなりの時間がかかったことでしょう。
    話は戻りますが、先ほど監視所の傍にあった石碑に皆さんお気づきでしょうか。あれはリーフ国王の時代よりも以前に、ある女冒険家が記したとされる文章が刻まれたものです。このうごめく砂を端的に表した文として、多くの研究者から高い評価を受けています。
    現在の石碑は劣化のため修繕された者ですが、内容は変わっていないので興味のある方は降りた際に見てみるといいでしょう。

  • 23ツアーガイド22/07/29(金) 22:13:17

    皆さん、くれぐれもこの石壁の頂上から砂漠へ降りようなどとは考えないでください。すでに魔境自体が消滅している嘆きの湖やネズミの街とは違い、沈黙の森と同じく未だ魔境と呼ばれ続ける地なのです。
    その道のプロが完全装備で踏み入れても、生きて帰る保証が無い。そんな恐ろしい地であることを心に留めてくださいね。
    小話として、この赤い砂はこの地で命を落とした犠牲者が、長い年月をかけて変化したものだといわれています。それを知ってからだと、この光景に対する感想もまた変わったものになりますね。
    話を戻しましょう。この魔境に踏み込んだとたん、リーフは何者かに見られている感覚に襲われました。それは明確な意思でリーフたちを補足し、観察していたのです。
    警戒心を強めながらも、影の憲兵団の追跡を完全に振り切ったわけではないことを思い出したリーフはバルダとジャスミンにも警告を発し、砂漠の奥へ向かって歩を進めました。

  • 24ツアーガイド22/07/29(金) 22:18:10

    砂漠といえば見晴らしのいい空間を思い浮かべる人が多いですが、実際は見てのとおり砂丘などが多く意外と見通しはききません。
    どこで何が襲ってくるかわからないため、慎重に歩を進める一行の耳に派手な行動音が聞こえました。そう、影の憲兵団がついに追いついてきたのです。
    幸い砂丘一つを隔てていたため一行が先に接近に気がつきましたが、足跡がはっきりと残る砂漠ではそう簡単に逃げられません。
    しかしこの絶体絶命の窮地に、リーフは名案を閃いたのです。

  • 25ツアーガイド22/07/29(金) 22:25:22

    それは獣が猟師をひっかけることもある、止め足と呼ばれる方法でした。正確に自分の足跡を踏んで戻り、少し離れた位置にあったくぼみへと飛び込みます。
    そしてリーフが三人をマントで覆うと姿隠しの魔法が発動し、彼らの姿は砂漠と同化したのです。
    追跡者である憲兵団はまんまと騙され、一行が足跡が消えた先の砂の中に隠れていると思い込み周囲を掘り始めました。その振動が、なにを呼び寄せるのかを考えもせず。
    影の憲兵団といえば、当時のデルトラ全土で恐れられていた存在です。人々は逆らわず、稀に逆らう者も優れた身体能力と武器であっという間に制圧できる。
    だからこそ、自分たちを害する存在というものに無警戒だったのでしょう。

  • 26二次元好きの匿名さん22/07/29(金) 22:25:39

    ジョーカーがめっちゃいい奴みたいになってるけど、最初から最後まで性格悪かったはずなのにな………

  • 27ツアーガイド22/07/29(金) 22:31:44

    >>26

    あくまでも歴史にそう記されているだけですので、実際とは違った人物像になるのでしょうね。

    竜を始めとした長命種も流石に500年ともなると生きていられるものが少なく、伝聞や記録でしか当時を知ることができないので。


    その時は突然訪れました。突如砂の中から巨大な怪物が出現し、影の憲兵団へと襲い掛かったのです。

    現れた怪物こそ、砂丘の怪物の名で知られるテレオクティ。見上げるほどの巨体と、それに見合わぬ素早さであっというまに影の憲兵団を皆殺しにし、その肉を喰らったのです。

    一部始終を見ていたリーフは、怪物が振動で得物を探知することを看破。その場に潜み続けることで、怪物をやり過ごすことに成功しました。

    運が良ければテレオクティの実物が見えることもあるのですが、流石にそう上手い話はないですね。

  • 28ツアーガイド22/07/29(金) 22:38:41

    食事を済ませたテレオクティが砂丘の先へと去ったことを見届けて、一行は憲兵団の遺品へと近づきました。そこで使えるものを集めたのですが、貴金属がすべて消えていることに気がつきます。
    そのことに疑問を持った瞬間、一行が立っていた砂漠が一切の前触れなく荒れ狂いました。
    その中心にいたリーフは、後の手記で世界が爆発したかのようだったと述べております。やや離れていたバルダも、晩年に偶然見た噴火の感想にこの件を挙げるほどでした。
    うごめく砂はその名の通り、群発する地震と砂嵐により短期間でその地形が変わることで有名です。しかし一行を襲ったこれらは、自然発生したものではありませんでした。
    うごめく砂の全てを支配するという謎めいた大いなる力。その力がデルトラのベルトの存在を感じ取り、リーフからベルトを奪い取るためにバルダとジャスミンからリーフを引き離しにかかったのです。

  • 29ツアーガイド22/07/29(金) 22:42:45

    不完全ながらも復活しつつあるベルトの魔力と持ち前の幸運に守られ、リーフは大きな怪我を負うことなく砂嵐と地震を耐えました。
    砂嵐と地震では人間を大きく引き離すことはできず、リーフが一緒に吹き飛ばされた物資を集めているうちに、クリーの活躍でバルダとジャスミンは合流に成功しました。
    リーフはうごめく砂に踏み入れた際に感じた見られている感覚が強くなったことを警戒し、自分を中心として三人をロープで固定することを提案しました。そしてベルトを直に掴み、その加護で視線の主に対抗したのです。

  • 30ツアーガイド22/07/29(金) 22:47:44

    今なおこの地を支配する大いなる力は、この時点で無理に一行に干渉することをやめました。放っておいても、一行が自らの拠点へ来ると察したのです。
    それを悟ったのは一行も同じでした。謎の力が自分たちを引き寄せるならば、それを利用し力が持つ宝石へと接近しようと考えたのです。
    ただの人間ならば自殺でしかないこの策は、ベルトの加護を最大限に利用したためか成功することになります。一行の視界に、砂でできた円錐状の物体が姿を現したのです。
    円錐を登った一行は、その頂上に空いた穴から唸るような音が漏れ出していることに気がつきました。

  • 31二次元好きの匿名さん22/07/29(金) 22:49:51

    デルトラ歴史ツアー続いてた……!!

  • 32ツアーガイド22/07/29(金) 22:53:19

    >>31

    何とか復帰した次第です


    穴から差し込む陽光に照らされた内部を見た一行は、言葉を失いました。無数の、数えることすら難しいほどのハチが、内部の空間を飛び回っていたのです。

    これこそが、砂漠を支配する謎めいた力が操るハチの群れ。後にリーフ国王が手記にて、この世ならざる集団と呼んだ存在です。

    その群れが住む穴の中へ、リーフは侵入する必要がありました。一行は知恵を出し合い、リーフが果樹園の老婆が戯れに話していた方法を思い出したのです。ハチには火ではなく煙が効果的であると。

  • 33ツアーガイド22/07/29(金) 22:57:35

    鎧代わりにマントを隙間なく体に巻き付けたリーフが煙を上げる松明を握り、ロープ1本に命を預けてハチの群れが住む穴へゆっくりと降下します。
    当然ハチは得物を喰らわんと襲いかかりましたが、いくら大いなる力に操られていてもハチの習性には逆らえなかったのです。煙に巻かれたハチは次々と壁へと後退し、宙を漂うのは煙だけとなりました。
    ようやく視界が開けたリーフの目に、信じられない光景が飛び込んできました
    リーフの眼前に、ハチの群れによって隠されていた巨大な塔が出現していたのです。

  • 34ツアーガイド22/07/29(金) 23:03:37

    大いなる力の元ハチが組み上げたこの生きる巣を、リーフ国王は死の塔と名付けました。数世紀をかけて成長を続ける塔は、今なおこのうごめく砂の中心部に聳えているのでしょう。
    この話を聞くと、国王が竜と共に攻めればこの忌まわしい地を滅ぼすことが可能ではないかと考える人がいるかもしれません。
    たしかに竜の力をもってすれば、この程度の砂漠を踏破することなど何の問題でもありません。襲い来る無数のハチなど意に介さず、大いなる力の手足たるハチの巣の塔を焼き尽くすことができるでしょう。
    しかし、それをしても砂漠は残り続けます。竜は意味のない殺生に付き合うことはないでしょうし、大いなる力も滅びはしないでしょう。
    ただ感情に流されるまま他者を攻撃していては、我々はいずれ影の大王と変わらない化け物となり果ててしまうでしょう。自制と許容は、我々が持つ美徳の1つと考えるべきです。

  • 35ツアーガイド22/07/29(金) 23:08:46

    話を戻しましょう。
    死の塔を見たリーフは、その存在と原材料に圧倒されました。腐らないもの、形を無くすのに長い時間を要するもので構成されたこの塔には、当然のように数多の宝石や貴金属が使用されていたのです。
    松明から上がる煙が立ち込める中で、無数の宝石からベルトの宝石を探し出す。手掛かり無しでそのようなことができるはずがないと絶望しかけたリーフの脳裏に、デルトラの書に記された一説がよぎります。
    リーフは急いでベルトへと目をやると、煙に遮られてなお輝く一つの宝石、オパールが目に入りました。オパールに触れるとその輝きが導くように細くなり、光が指し示した先には同じように輝く宝石、ラピスラズリがはめ込まれていたのです。

  • 36ツアーガイド22/07/29(金) 23:13:09

    誘われるように手を伸ばしたリーフでしたが、すぐにその動きを止めました。塔の一部と化しているラピスラズリを引き抜けばバランスを崩した塔は崩壊し、怒りに燃えるハチによってなすすべなく殺されることが容易に想像できたからです。
    リーフは大いなる力の妨害で吹き飛ばされた際に集めた物資の中から代わりにはめ込むものを探し、ジャスミンが拾った木彫りの小鳥に気がつきました。
    リーフが触れるとラピスラズリは望んでいたかのように塔から外れ、隙間に素早く押し込まれた木彫りの人形はしっかりと塔を支えました。
    そしてロープに合図を送ったリーフは、悠々とこの世ならざるハチの領域から脱出したのです。

  • 37ツアーガイド22/07/29(金) 23:18:20

    穴から脱出しリーフがラピスラズリをベルトにはめると、それを祝福するように空の雲は晴れ月光が降り注いだといわれています。流石にこれは後世の誇張でしょうが、ベルトに戻ったことでラピスラズリの魔除けの力が一行を強力に守護したことは間違いありません。
    邪悪をかわすルビーと魔除けのラピスラズリに守られているとはいえ、魔境に長くいるものではありません。晴れたことで目印の星が空に浮かび、それを辿って一行は迷うことなくうごめく砂を脱出することに成功しました。
    そして石壁を乗り越えてやっと、リーフは魔境の中心についてバルダとジャスミンに話すことができたといいます。

  • 38ツアーガイド22/07/29(金) 23:22:44

    それでは、馬車まで戻りましょう。
    この後は再びリスメアに戻り、休息をとってから出発の予定となっています。
    うごめく砂の資料館を見学する時間はありますので、今回の話で興味が出た部分を調べるのもおすすめです。
    今晩は、砂丘北にあるキャンプ場で一泊する予定です。意外な珍味として知られる、砂トカゲも食材として出てくるので楽しみにしてください。
    テレオクティは食べられないのかという質問が稀にありますが、竜の口にはあっても我々の可食には堪えないという残念な記録が残っています。諦めてください。

  • 39ツアーガイド22/07/29(金) 23:27:24

    本日のツアーはここまでとなります。
    モチベーションの低下とイメージ切れによりお待たせして申し訳ございません。
    次回も未定となっていますが、一月以内くらいには書けると思うのでお楽しみの方はお待ちいただければ幸いです。
    それではまた次回お会いしましょう。

  • 40二次元好きの匿名さん22/07/29(金) 23:30:32

    >>38

    テレオクティ不味いんですか。そもそもテレオクティって人間の手で狩ること出来るんですかね…。

  • 41二次元好きの匿名さん22/07/29(金) 23:39:25

    このレスは削除されています

  • 42ツアーガイド22/07/29(金) 23:40:15

    >>40

    記録によると、不味いうえに毒があるらしいです。

    竜の数がある程度にまで回復した300年前のオアリズ国王の時代。ラピスラズリの竜と交渉し、自分が囮となってテレオクティをおびき出す代わりに肉を分けてもらった狂人マリンダの挑戦には、どう調理してもえぐみが消えず、食後二日ほど腹痛と吐き気が消えずのたうち回ったと残されています。

  • 43二次元好きの匿名さん22/07/30(土) 00:07:36

    >>42

    勇者とか冒険者とかではなく狂人呼ばわりとか何したんですかこの人…

  • 44ツアーガイド22/07/30(土) 00:25:52

    >>43

    記録が残っているだけでも、先に挙げたテレオクティ可食実験、ブーロンの木の実を使ったパンの作成実験、血の百合島の花粉を使った蜂蜜作成実験、恐怖の山麓におけるブラール繁殖及び可食実験を行っています。

    以上の食欲に取り付かれたような行動が、狂人と呼ばれる所以ですね。王家直々に実験禁止令が出たのも一度や二度ではないようです。

    驚愕すべきはこれだけ無茶な行動をしながらも、死ぬまで五体満足だったという記録です。死因も老衰とされており、デルトラの歴史の中でも指折りの豪運を持っていたと評されています。

  • 45二次元好きの匿名さん22/07/30(土) 05:06:36

    >>44

    他の3つはともかくブラールの繁殖実験はやべーって!

    小人族に知れたら矢の的待ったなし

  • 46パンツァー隊22/07/30(土) 07:16:05

    >>44

    あんなやつ増やしちゃダメだぜ‼︎

  • 47ツアーガイド22/07/30(土) 09:01:59

    >>45

    >>46

    ブラール繁殖可食実験は当時の国境警備隊が総力を挙げた鎮圧作戦を発動する大騒動となり、驚くべきことにマリンダが施していた安全策の効果で死者無しでの全ブラール抹殺という結末を迎えています。

    当のマリンダは王宮審判でデルトラのベルトの宝石から邪悪認定されず、当時すでに禁忌とされていた夢の泉の水裁判で水を飲んでも木にならなかったことから、一切の悪意が無かったという驚くべき結論が出ています。

    数百年ぶりの影の大王の侵攻かと大騒ぎになったこの事件ですが、結果として全くの別口で進行中だった影の大王の策略が3つほど露呈し阻止されたという結果だけが残り、偶然とはいえ策略を暴いたために功罪相殺の結果マリンダは王族直々に厳重注意を受けるに留まりました。

  • 48二次元好きの匿名さん22/07/30(土) 09:03:40

    マリンダはなんなの?
    宮廷魔術師?研究者?

  • 49ツアーガイド22/07/30(土) 10:36:18

    >>48

    驚くべきことに在野の研究者ですらない、リスメアに住んでいた料理人だったとされています。

    公的機関の後ろ盾を一切持たない身で上記の実験を行っていたために、狂人の名がつけられました。

  • 50二次元好きの匿名さん22/07/30(土) 13:39:57

    後世の歴史だとグロックとネリダの扱いはどうなっているんだろう

  • 51ツアーガイド22/07/30(土) 19:42:09

    >>50

    どちらもレジスタンスの一員として名が残っていますね

    どのように残っているかは、後のツアーで説明できると思います

  • 52二次元好きの匿名さん22/07/30(土) 20:16:28

    >>47

    そんな理由で計画が暴かれるなんて、影の大王の眼をもってしても見抜けまいよ。

  • 53二次元好きの匿名さん22/07/30(土) 21:18:36

    狂人マリンダ面白すぎますね、あと影の大王が流石に可哀想に思えてきました。

  • 54二次元好きの匿名さん22/07/31(日) 08:31:48

    (マリンダに話題を乗っ取られてる…)

  • 55二次元好きの匿名さん22/07/31(日) 19:58:09

    マリンダヤベー奴じゃん

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