にがいコーヒーの飲み方

  • 1二次元好きの匿名さん22/08/09(火) 07:53:42

    夏の暑さが厳しさを増す中、午前授業で終わったはいいが外では高温注意報が発令しており、トレーニングが出来る状態ではなかった為、禁止の通達が各所に回ってきた。クラスの友達は、下校したり、図書室で宿題をしたりと思い思いの対処をする中、アタシはトレーナー室で涼んでいた。

    教室にもエアコンはあるが、電力供給の兼ね合いで28℃固定で暑さを凌げたものじゃなかったが、生意気にもトレーナー室はその制約が少し緩くて25℃までなら良いから避難してきたと言うわけ。

    このトレーナー室の主人、使い魔は汗だくでやって来たアタシを一目見て、来ると思ってたと苦笑いしながら予め冷蔵庫で冷やした濡れタオルと牛乳を渡してきた。帽子をとり、タオルを首にかけて牛乳を一気飲みして思わずプハッと声が出る。

    「ふーっ!やっぱり暑い時期に飲む濃い牛乳は格別ね!使い魔にしては用意周到じゃない、褒めてあげる♪」
    「はは、どういたしまして。にしても、学生は28℃ってなかなかキツいよなあ…人がいる分密度濃くなるのに」
    「まったくだわ、普通逆じゃないのかしら…うん?アンタ、何飲んでんのよ?」
    「え?アイスコーヒー、ブラックの」

    コーヒー。その単語を聞いただけで眉を顰める。別にコーヒーそのものを忌避してるわけではないが、アタシはこれを良く思えない。理由は、何となく大人が飲む物で、大人を象徴してるこの飲み物は敵意が生まれてしまう。そもそも苦いし、紅茶の方が美味しいし…。

    アタシから見た大人とは、グランマや使い魔等を除いてありがた迷惑そのものだった。自分の方がちょっと長く生きてるからって、アタシの考えを聞こうともせず、心配という言葉でアタシを雁字搦めにして、自分の思い通りの操り人形にしようとしてくるのが気に食わない。

    多分、中には本当に心配してるのも居たのだろうけど、結局ソイツもこっちの考えを聞こうとはしない。だって、アタシを子供として扱うから。だから、コーヒーはそんな大人が飲むイメージが強い分好きになれない。

  • 2二次元好きの匿名さん22/08/09(火) 07:54:55

    「ふん、アンタもそんなの飲むのね」
    「まあ、頭もスッキリするしな…飲んでみr」
    「イヤ。そんな苦いの願い下げよ」
    「即答っすか…、そうだ!これならどうだ?」
    「イヤったらイ…何これ?」
    「コーヒーを牛乳で割ってガムシロップと美味しくなる魔法を少し入れてみた。苦いのが嫌なら中和すれば良い訳だし…騙されたと思って飲んでごらん?」
    「魔法!?…コホン、ちょっとだけよ」

    魔法と言われると黙って聞いてはいられない。少し緊張しながらその薄茶色の飲み物を口に含む。

    「…美味しいし苦くない!ちょっと、アンタどんな魔法掛けたのよ!?」
    「美味しくなりますようにっておまじないとしか。それに牛乳が濃い分マイルドになるからな、口当たりも悪くないだろ?」
    「…!ま、まあ?これなら飲んであげない事もないけど?」

    大人の飲み物だと思っていたコーヒーが子供のアタシでもゴクゴク飲めるのがとても新鮮だった。苦くないし、むしろこれに関して言えばアタシ好みの味とすら言える。夢中でストローを吸ってると、使い魔は微笑みながら話し始める。

    「なあ、スイープ。俺さ、思うんだ。子供には子供の考えがあるように、大人には大人の考えもある。君が子供だから故に辛い思いをしてきたのも理解してる。だから、こうやってお互いが歩み寄る事が俺達に必要なんじゃないかってさ」
    「歩み寄る…?」
    「うん。今、こうやって作ったカフェオレも俺が好きなコーヒーと君の好きな牛乳を少しの魔法と併せて生まれたもの。どうすれば、お互いが納得出来る答えになるかを折衷させた結果と言えないか?」

    言われてみると、別に頼んだわけでもなかったが、嫌いなコーヒーをアタシでも美味しく飲めたのは、使い魔が苦いという問題点を解決させる案を実践したから。結果、お互いが納得する着地となった。

    「だからさ、俺たちはお互い信頼し合って、意地を張り合って、歩み寄っていこう。あの雪が降った日、君が言ったようにスイープが譲れない思いがあるならそれを聞くし、逆に俺が情けなく頑なになってる時は、ちゃんと聞いてやってほしい。…頼めるか?」
    「…ふん、手のかかる使い魔ね」

    口ではこうは言うが、自分と対等な立場に身を置いて接しようとする姿勢を貫き通す使い魔を見て、思わずニヤけそうになる頬を必死に引き締めながらストローを啜るのだった。その味は、とっても、優しかった。

  • 3二次元好きの匿名さん22/08/09(火) 07:56:37

    出勤解除されたので働いてきます
    朝から長文で許し亭

  • 4二次元好きの匿名さん22/08/09(火) 07:57:32

    うぉ…カロリーたけぇ…助かる…

  • 5二次元好きの匿名さん22/08/09(火) 07:57:42

    >>3

    いいもの読ませてもらったZE

  • 6二次元好きの匿名さん22/08/09(火) 07:58:11

    朝から糖分の高いものをお出しするないいぞもっとやれ

  • 7二次元好きの匿名さん22/08/09(火) 08:04:12

    朝からなんて素晴らしいものを!
    ありがたや〜!

  • 8二次元好きの匿名さん22/08/09(火) 08:55:12

    ええやん…

  • 9二次元好きの匿名さん22/08/09(火) 08:59:47

    (*^◯^*)いいね

  • 10二次元好きの匿名さん22/08/09(火) 09:41:20

    信頼し合って、意地を張り合って、歩み寄る

    矛盾してるけどお互いが妥協しないで意図がある事を考えながら向き合うって感じが使い魔とスイープの関係性を表してる感じがして良い…優しいSSを朝から拝ませてくれてありがとう…

  • 11二次元好きの匿名さん22/08/09(火) 11:09:32

    出会うべくして出会った感じが毎度たまらんですなぁ

  • 12二次元好きの匿名さん22/08/09(火) 19:21:05

    いいねえ、絶妙な距離感

  • 13二次元好きの匿名さん22/08/09(火) 19:23:42

    カフェオレみたいな程よい甘さの素晴らしいSSだぁ…

  • 14二次元好きの匿名さん22/08/09(火) 19:27:47

    食後のコーヒーを飲んだばかりの俺にはベストタイミングだ…


    ところで勘違いならすまぬが最初の一口はグラスから直接飲んだならこれ間接キスでは…

  • 15122/08/09(火) 19:35:33

    >>14

    評価ありがとうございます。


    一応想定としましては、コーヒーはピッチャーに移してストックしてて、スイープが飲んだ牛乳のグラスにコーヒーと牛乳を入れたという解釈で作りましたが、なるほど、深く明記しなかったからそういう風にも取ることが出来ますね…。今後の参考に出来そうな貴重なご意見、感謝致します!


    他にも感想を寄せて下さった方々、誠にありがとうございます!

  • 16二次元好きの匿名さん22/08/09(火) 20:39:22

    つかず離れずって感じの絶妙な距離感がいいねえ

  • 17二次元好きの匿名さん22/08/09(火) 21:33:03

    コーヒーをただ嫌うんじゃなくて大人にいい思い出がなくて、そんな大人がよく飲むものだから何となく好きになれないってのが今まで経験した理不尽な思いを表してて良い

  • 18二次元好きの匿名さん22/08/09(火) 22:59:21

    ブラックはアイスだとホットよりも飲みやすい分一気に口の中入ってきちゃうから苦味がよりわかるもんね
    良いSSでした

  • 19二次元好きの匿名さん22/08/10(水) 06:11:34

    使い魔がスイープの事わかってていいね、冷やした濡れタオル用意したりとか

オススメ

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