待ち合わせの一番乗り

  • 1二次元好きの匿名さん22/08/15(月) 03:58:00

    「……なんで先に来てるのよ」
    待ち合わせ場所に到着するなり、スカーレットは不機嫌そうな顔でそう言った。

    「大丈夫、俺もいま来たところだよ」

    お決まりのようなセリフを返すと、スカーレットはさらに不機嫌そうに眉を顰める。

    「そういうコトじゃなくて、どうしてアタシより先に来てるわけ? まだ待ち合わせより1時間も早いじゃない」
    「男が女性を待たせるわけにはいかないだろ? それにキミの方こそ早いじゃないか」

    スカーレットが不機嫌な理由を探りつつ、1時間前に待ち合わせ場所にいる理由を説明する。大人と子供という関係とは言え、女性と待ち合わせするのに待たせてしまうなんて論外だ。
    それに先に待ち合わせ場所に来て、相手のことを考えながら待ち望む時間が俺は結構好きだったりするんだけど────

    「女性…………ふ、フン、そんなので有耶無耶にされたりなんかしてあげないんだから! アタシはその……今日はちょっと早く目が覚めただけよ」
    「……そっか」

    腰に手を当ててそっぽを向きながらスカーレットは言うけれども、彼女の完璧に仕上がった姿は俺にその言葉がウソだと告げていた。
    まだ幼い年齢に似合わないはずの大人びたメイクも、夏の日差しに負けないくらい眩しい純白のワンピースも、言葉に形容できないほどによく似合っていて────その全てが朝早くから時間をかけて準備したことを如実に語っている。
    だから彼女は、わざと1時間早くここへ来たのだと俺は確信を持っていた。だけどそれを指摘するともっと不機嫌になってしまいそうだから、あえて口にするようなことはしない。

    先に行きたいお店があったのだろうか? それとも身だしなみをギリギリまでチェックしておきたかったとか……もしかしてはじめてのお出かけで浮かれていたとか?
    今日を楽しみにしてくれていたなら、それは嬉しいことだ。俺もずっと楽しみだったから目覚ましよりも早く起きてしまったし。

    「……ふふ」

    想像しているうちになんだかおかしくなってきて、笑い出しそうになってしまうのを堪えていると、

    「なにニヤニヤしてんのよ。言っとくけど次はアタシより先に来ちゃダメだから」
    「どうして?」
    「アタシは待ち合わせでも一番乗りじゃないよ絶対イヤなの。アンタのプライドなんて知らない、アタシにはアタシのプライドがあるんだから」

  • 2二次元好きの匿名さん22/08/15(月) 04:01:20

    ぴし、と俺の鼻先に指を突き立てて言うスカーレットの頬は少しだけ膨らんでいて。
    とても似合う大人びたメイクの中に、少しだけ普段の子供らしさが垣間見えた。

    「いい? 一番最初に待ち合わせ場所に来てアンタを待つのはアタシで、アンタはアタシより後から待ち合わせ場所に来るコト────……あ、でも待ち合わせ時間に遅れるのは絶対許さないから」

    時間厳守、でもスカーレットよりは遅く……なかなか大変なことを言ってくれる。
    だけど担当ウマ娘の意思を汲んであげるのがトレーナーの仕事だから、これくらいなんてことはない。それに、俺が待つ時間が好きなように、彼女も待つ間に何か想いに耽っていたいのかもしれない。
    ならその時間は彼女にとって大切な時間であるはずだから、それを望むなら俺もその時間を大切にしよう。
    俺はキミのトレーナーだから。

    「うん、分かったよ。楽しみで早く来ちゃったってことにして、許してもらえないかな」
    「そうね、特別に許してあげる。感謝しなさいよ? ……アタシも楽しみだったし」

    俺の言葉に満足そうに頷いてから、くるりと背を向けて小さく付け足すように呟いた言葉を、俺は聞こえなかったフリをした。聞き返すと怒られちゃうからね。

    「じゃ、そろそろ行きましょ?」

    ちらりと振り向いた彼女の表情は、先ほどまでの不機嫌な色は消えていて────もう待っていられないわ! ……と俺を急かす。

    「予定より1時間も早いし、せっかくだからアタシのお気に入りのカフェ教えてあげる。どうせ朝は何も食べてないんでしょ、時間まで涼みながらモーニングにしない?」
    「それは名案だ。スカーレットの好きなものは知っておきたいし」
    「ふふ、そうでしょ? これからきっと何回も来ることになるから、来るたびにおすすめ教えてあげる」

  • 3二次元好きの匿名さん22/08/15(月) 04:03:04

    少し先を行くスカーレットはとても眩しい。

    大胆に肩を出したそれを着こなす彼女は、常に自分を追い込み研鑽し続ける自信の表れか……────最近買ったばかりなのか、はじめて見るその服はとても似合っていて、俺はうまく直視することができなかった。

    俺は眩しさを遮るように目元に手をやりながら、

    「スカーレット」

    「なに?」

    「その服、すごく似合ってる。メイクも大人っぽくて綺麗だね」

    「……────、っ……ばか。そういうのは…………もっと早く言いなさいよ。でも、ありがと」


    照れ臭そうにはにかむスカーレットは、まだ幼さが残る可愛らしい彼女だった。

  • 4二次元好きの匿名さん22/08/15(月) 04:04:11

    初SS、お目汚し失礼しました

  • 5二次元好きの匿名さん22/08/15(月) 05:08:47

    良かった

  • 6二次元好きの匿名さん22/08/15(月) 05:15:23

    朝スカーレットは健康にいい

  • 7二次元好きの匿名さん22/08/15(月) 05:23:40

    読む朝からこれ一本だねぇ

  • 8二次元好きの匿名さん22/08/15(月) 06:19:09

    うーーーーーーーーんやっぱりスカーレットですね

  • 9二次元好きの匿名さん22/08/15(月) 06:21:50

    王道スカーレットは良き

  • 10二次元好きの匿名さん22/08/15(月) 06:34:46

    幼さが残ってるスカーレットは解釈一致ですね

  • 11二次元好きの匿名さん22/08/15(月) 07:22:12

    女性慣れしててしっかりと相手を立てられるトレーナーかっこいいねえ
    スカーレット君を安心して任せられるねえ

  • 12二次元好きの匿名さん22/08/15(月) 07:30:07

    初SSだぁ?寝言言ってんじゃねぇよこちとら朝からさわやかな目覚めを提供されて気分爽快なんだ
    ありがとうございます

  • 13二次元好きの匿名さん22/08/15(月) 08:18:12

    はぁ、これで今日もまた死なずにいられる

  • 14二次元好きの匿名さん22/08/15(月) 08:23:16

    必要不可欠な五大栄養素って感じ

  • 15二次元好きの匿名さん22/08/15(月) 08:56:19

    これから毎朝、俺をトレダスSSで目覚めさせてくれ
    頼んだぞ

  • 16二次元好きの匿名さん22/08/15(月) 08:57:42

    やっぱしなんだかんだスカーレットなんだよな

  • 17二次元好きの匿名さん22/08/15(月) 08:59:19

    良い…

  • 18二次元好きの匿名さん22/08/15(月) 09:27:01

    朝トレダスはガンに効く

  • 19二次元好きの匿名さん22/08/15(月) 10:30:05

    ありがとう…ありがとう…

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