- 1二次元好きの匿名さん22/08/16(火) 18:45:51
※独自設定
※オグタマ要素あり
※ちょっとキャラ違うかも
トレセン学園には部屋替えが行われる時期があり、基本的に冬休みの期間内に行われる。
今回の部屋替えには私も関係している。
とは言っても私は移動しない、私の部屋に新たな住人がくるのだ。
本来二人部屋なのを私が一人で使っていたから広くて贅沢な感じもして、最近ようやく慣れてきたが決まったことなら仕方ない。
学園に来た頃より増えた荷物がもう一人の分のスペースに入り込んでいたから、それを片付けるくらいで済んだ。
もう移動の準備は始まっていて、新たな同居人の荷物はある程度運び込まれていたが、私はカサマツに戻ったりお母さんに会いに行っていたりしたからまだ相手とは会っていないし誰かも知らない。
…実はあまり会わないようにしていて、学園に戻ったあとも食堂にずっと入り浸って1日を過ごしたりしていた。 - 2二次元好きの匿名さん22/08/16(火) 18:48:37
自分でも手伝ってあげればいいと思うが、そういう気分になれなかったのだ。
…私がトレセン学園に来た当初は二人部屋だった。
カサマツの友達もいなくて知ってる人も誰もいないから最初は不安だったけど、相部屋になった先輩が優しくて安心した記憶がある。
彼女も地方から来ていて、中央での活躍を期待されて編入したのだという。
おそろいだね、と笑い合ったのを覚えている。
けれど、最後に見た先輩は泣きそうな顔でトレセン学園を去っていった。
結果を出せなかったことと、怪我をしてしまったことが原因だった。
いつも一生懸命練習していて、故郷のみんなに胸を張れるだけの成果をだそうという想いが分かっていたから、私もとても悲しかった。
さよならの挨拶をした時、先輩は私に何らかの感情を持っていたのを感じた。
なんとなく仄暗い雰囲気だった、優しい先輩からそんな雰囲気を感じたのが嫌だったから気にしないことにした。 - 3二次元好きの匿名さん22/08/16(火) 18:52:02
先輩がいなくなって、私は部屋を移動した。
移動先は同級生のいる部屋で、彼女はダート路線で走るウマ娘だった。
少し気弱な娘で、王道路線で活躍したいからトレセン学園に来たと言っていた。
でも適性がなくて目標を修正、ダート路線で走ることにしたそうだ。
そんな彼女が学園を辞めたのは、私が秋天でタマに負けた直後だった。
もう自分の才能が信じられなくなったと言った。
私にも劣等感を感じていたのを彼女が友達に話していたところで聞いてしまった。
自身はオープンで苦戦しているのに、同部屋の私と比べられて段々と走るのが苦痛に感じてきたらしい。
それからなんとなく彼女と話さなくなって、まるで最初からいなかったかのようにひっそりと彼女は学園を去った。
その時言われたことは忘れられない。
──オグリちゃんは凄いね、私じゃ絶対に手の届かないところにいる
──オグリちゃんは悪くないよ、隣にいることに耐えられなかった私が弱いの、ごめんね - 4二次元好きの匿名さん22/08/16(火) 18:55:29
感情が溢れ落ちるような、笑顔を作ろうとしてどうしても堪えられないような顔をしていた。
彼女はいなくなった。
それから私はしばらく一人部屋だった。
凄いと言われてこんなに辛かったのは初めてで、どうしていいか分からず、とにかくジャパンカップに向けたトレーニングに集中した。
…多分、先輩も似たようなことを思っていたと思う。
よく天然だと言われる私でもようやく分かった、レースを走ることの厳しさと、華やかさの裏で夢破れる者の多さを。
私が先輩や彼女のことを覚えていても、ファンの人たちは思い出すどころかその存在を認識すらしていなかったかもしれない。
そして、それは二人だけではない。
私だって同じ学園にいるのに知らずにいなくなるウマ娘がたくさんいるのだ。
少しだけ怖くなってぞっとした。
一人部屋に慣れるのはちょっとだけ時間がかかりそうだと思ったし、実際そうだった。
…彼女たちは好きだが、二人部屋であることにいい思い出はない。
だから、中々会う気分になれなかった。
仲良くしたいけど、それでまた辛い想いはしたくない。 - 5二次元好きの匿名さん22/08/16(火) 18:56:42
そうして部屋替えが終わった日に、気は進まないながらもようやく会いに行った。
これから生活を共にするのだから必要なことだ、挨拶もしないなんてことはいけない。
ちょっとだけ緊張していたが、私は新しい同居人の顔を見て驚いた。
「ちょいちょいオグリ、最近暗い顔してたって聞いたで〜?このタマモクロス様に勝ったウマ娘なんやから、もっと胸張って歩きいな」
同居人は、タマだった。
「って、返事してくれや。
これじゃウチが滑ってるみたいやろ?
これからよろしゅうな!」
「…ああ、よろしく頼む、タマ」
驚きすぎて返事が遅れた。
けど、本当に嬉しかった。
もう引退してしまったけどタマはライバルで友達で、これまでの不安が一気になくなった。
「タマはすごいな」
「なんや急に?」
だって、あんなにもやもやしていた気分が一気に晴れた。
はじめて部屋替えも悪くないと思わせてくれたから。
タマは私よりもちっちゃくて可愛いのにしっかりしていて、ほんの少しだけ寝坊しがちな私を助けてくれたり、大阪の食べ物を振る舞ったりしてくれて、まるでお姉ちゃんのようだった。
私も妹がいるが、お姉ちゃんらしさではタマには及ばないかなと思う。 - 6二次元好きの匿名さん22/08/16(火) 18:59:14
それからもレースをたくさん走って、クリークやイナリをはじめたくさんのライバルたちと競い合った。
勝った日も負けた日もあったけど、トレーナーやタマ、ファンのみんなが支えてくれた。
終わっただなんて言われて、前に感じた忘れられる恐ろしさも思い出したけどタマが近くにいてくれて心強かった。
ラストランを終えてからもたくさん遊んだ。
レースで競うのも良かったけど、競ったみんなと遊ぶのも凄く楽しかった。
…でも、学園での生活はいつか終わりが来るものだ。
あっという間に時間は過ぎて、タマは卒業式を迎えていた。
私も一年後は同じように学園から去ることになる。
「卒業おめでとう、タマ」
「おう、ありがとなオグリ
まあもうボタンはやれんけどな、いやあ、人気者は辛いわ〜!」
ナッハッハ〜!と笑うタマ。
私はタマの明るい笑い方が好きだ、ボタンは残念だけど、それは人気の証なのだ。
タマが人気なのは私も嬉しい。
私はもう最上級生の先輩だし同じ部屋だから、後輩に少しは配慮してあげなければならない。
なにせ先輩だからな。 - 7二次元好きの匿名さん22/08/16(火) 19:03:43
タマと一緒の部屋になれてよかったと思う。
もういなくなってしまうのは寂しいが、会えなくなるわけではないしこれからも友達には変わりない。
…タマは大したことないって言うだろうけど、私は一緒にいられてとても嬉しかった。
でも、ずっと学生ではいられないんだ。
別れや出会いもある、タマがいなくなって、私の部屋にも新入生が来ることになった。
卒業までの一年、私が新入生にとってのタマになれるように頑張るのが今の私の目標だ。
今はまだ一人部屋だけど、入学式が楽しみだ。
今度は一体どんなウマ娘と一緒に生活するのだろう。
…別に厳しい現実は変わらないし、打ちのめされるウマ娘が生まれることも変えようがない。
でも、それを支えていくことはできるはずだ。
私も引退して、もうレースを走ることはない。
だから、走ること以外で誰かに希望を与えていけたらいいなと思ってる。
…今のうちにたくさん食べられておいしいお店とかも紹介できるようにまとめておこう。
たくさんご飯を食べれば、きっと元気になれる筈だ。
終わり - 8二次元好きの匿名さん22/08/16(火) 19:38:27
乙
よかった