- 1二次元好きの匿名さん22/08/18(木) 21:42:03
※オリウマ娘注意
どんよりとした曇り空の下。苔むした廃墟をまるで他人事のように、瓦礫の道を駆け抜けていく。
度重なる戦争が終結を迎えてから数年。その頃に生まれた私はまもなく親に見捨てられ、朽ち果てた文明の、荒んだ人間の中へと放り出された。運良く拾われた孤児院では、大人たちは無機質な目で事務的に私たちを育てていたし、子供達からは耳と尻尾がある'珍しい人種'である事を理由に、周りから煙たがられていた。
けれど、孤独は気にならなかった。自分の名前すらも知らない私に、何の価値も無いと思っていたから。
うっそうとした木々の中へと突き進んでゆく。ぽつりぽつりと、雨が降り出してきたようだ。緑を反射しむせかえる空気は、私の体をすり抜けて。
自立した私は、極めて無気力に生きていた。
他人とは関わらず、亡霊のように彷徨う毎日。
死ぬ事も考えていないが、生きる事も考えていない。ただその日の飢えを凌ぐだけの生活。
そこに満足は無かったが、同時に不満も無かった。何も無い、意味のない人生。そこに自分の存在も無かったように思える。 - 2二次元好きの匿名さん22/08/18(木) 21:42:13
いつのまにか森を抜け、あっけらかんとした寂しい景色が広がる。草も生えないような荒廃した大地。ぬかるみに足を取られながらも、泥と雨粒を纏いながら駆け抜けていく。
無意味な生活が始まってから、幾許か経った頃。いつも通り、何も考えずに右へ左へと放浪していた時だった。
ふと、目の前に現れた廃墟が目につき、立ち止まる。恐らくは、奇跡的に残っていた旧時代の『学校』というものだろう。
運命のいたずらだろうか、もしくは単なる偶然だろうか。普段であれば、気にも留めずに通り過ぎるであろう、植物まみれの過去の産物。しかし、目の前にそびえ立つそれを見た私の中には、今までに感じたことのない胸のざわめきが生まれていた。
胸のざわめきに呼応するように、恐る恐る建物に近づいていく。理性がそう判断したのか、もしくは本能的な行動だったのだろうか。今でも理由はわからない。ただひとつ確かな事は、自分から行動を起こすのは、これが初めてだったという事だ。
少しづつ、雨が上がっていく。 - 3二次元好きの匿名さん22/08/18(木) 21:42:41
ゆっくりと手を伸ばし、建物の外壁に触れる。ぱらぱらと破片が崩れ落ちる、ごく小さな音。
同時に、私の全身を、記憶が駆け抜けた。
轟く歓声と応援。それらを糧に必死に加速していく光の線。悔しさ、悲しみ、喜び。生まれてゆくさまざまなな感情を取り込み、乗り越え、さらなる高みへと進み、昇っていく彼女たち。
まるで雷に打たれた様な衝撃だった。頭がぐらつき、倒れそうになる。しかし、それに反比例するように私の中の鼓動はさらに音を立て、反響し、過熱し、ついには抑えきれず、気づいた時には私の脚は動き出していた。
瓦礫の中を道を駆け抜ける。息が苦しい。脚が痛い。けれど、それすらも今は心地よい。そうだ。私は今、走っている。過去も未来も一緒くたんに。過去の自分を振り払うように、新しい自分へと向かっていくように。空には晴れ間が見えてきた。空を見上げる。私に向かって光が差し込む。とても心地がいい。笑っている。生まれて初めて、私は笑っている。ああ、これが楽しいって事なんだ!ああ、私は今、走っているんだ!
私に意味は無い、そんな自分の人生にも意味は無い。でもそれは間違いだった。彼女らの意志を受け継ぐために。彼女らの遺したものを絶やさないために。私はこの世に生まれてきた。誰かから望まれているかどうかなんて関係ない。今なら分かる!私は、私は走るためにこの世に生まれてきたんだ! - 4二次元好きの匿名さん22/08/18(木) 21:43:04
おわりです
- 5二次元好きの匿名さん22/08/18(木) 21:56:40
ウマソウルが覚醒したんかな
時系列的には世界大戦後なのか未来の話なのか… - 6二次元好きの匿名さん22/08/18(木) 23:34:45
雰囲気好き