【SS】アストンマーチャンです〜

  • 1二次元好きの匿名さん22/08/21(日) 23:42:48

    『…え?』
    不意に横から声をかけられる。
    「はい〜、私はアストンマーチャンです。さっき私の名前を気にしてたみたいなので〜」
    …確かに先ほど、いい走りをする彼女をみて『あの子の名前は…』と呟いた。
    それをしっかり聞かれていたらしい…
    『そ、そうか。よろしくな、マーチャン』
    「…ふふっ、ありがとうございます」
    なぜかお礼を言われた。

    別の日。
    また走る彼女を見かけた。
    「ふぅ…こんなものかな〜…あ、この間のトレーナーさん」
    目があって、声をかけられる。
    『こんにちは、えっと…』
    「アストンマーチャンです〜。アストンマーチャン」
    『マーチャン』
    「は〜い」
    …彼女ののんびりとした中に感じる、何か強い意志のようなもの。
    これはなんなのだろうかと考えつつ、その日はなんてことない会話をしてその場を離れた。

  • 2二次元好きの匿名さん22/08/21(日) 23:42:58

    「…あ、トレーナーさん」
    『お、マーチャン。こんにちは』
    「!…はい、マーチャンです〜。ありがとうございます」
    またお礼を言われた。
    『…どうしてお礼を言うんだ?特別なことはしてないと思うが』
    「だって、名前を覚えてくれたじゃないですか」
    名前。
    そういえば彼女はしきりに自己紹介をしていた。
    そしてこちらが名前を呼ぶたびにお礼を言ってくる…
    『名前で呼ばれるの、好きなの?』
    「好きとか、嫌いとかって言うより…名前で呼ばれなきゃいけないんです」
    不意に強く言い切る彼女にびっくりする。
    「私の名前を、いろんな人に覚えて欲しいから。…大きな光の影で、埋もれたくないから」
    彼女の瞳には、強い意志が宿って見えた。
    「…だから、私は…この時代に自分の名前を、しっかり刻み付けたいんです〜」

  • 3二次元好きの匿名さん22/08/21(日) 23:43:11

    …時代に名を刻むと言うのは、生半可な覚悟ではできないことだ。
    どんなに素晴らしい成績を残しても、強すぎる光に埋もれてしまうことは多々あることだ。
    …特に、途中で引退したりした娘なんかは、名前はどんどん忘れ去られてゆく。
    彼女は…
    『…色々辛いことが予想される上で、名前を刻みたいのか?』
    「もちろんです」
    そう言い切った。
    『…そうか』
    そのくらい強い、彼女の覚悟。
    それなら、それに応えるのがトレーナーというものだ。

    『…アストンマーチャン』
    「なんですか〜?」
    『君をスカウトさせてほしい。…一緒に、”アストンマーチャン”の名前を…永遠に忘れられないものにしよう』
    「…!…ふふっ。ありがとうございます。ぜひ!」
    こうして、彼女の名前を…この時代に刻む日々が始まる。

    「あ、そうだトレーナーさん」
    不意に彼女がそういうと、彼女は人形を懐から出して見せてきた。
    『…これは?』
    「マーちゃん人形です。可愛いですよ〜?」
    …まずは、彼女をよく知るところから始めなければ。

  • 4二次元好きの匿名さん22/08/21(日) 23:43:41

オススメ

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