- 1二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 07:40:16
ストモ......ここは科学が発展した星。ぼくの宇宙船にもこの星の技術が使われている。
目的のホテルは入場口から2kmほど離れている。のんびり散歩がてら町を見ながら行くのも悪くないだろうと、交通機関を無視して進むことにした。とは言えこの星は夏のようで、歩いて数分でほんの後悔してきた。
「アイスはいかが~~~!」
どうやら公園で移動販売をしているらしい。こりゃあいい、早速行こう!...と、いうところで違和感を感じたぼくは、足を止めて客を観察した。よく見ると誰も食べ物や保冷剤のようなものを持っている様子がない。手ぶらそのものなのだ。
ぼくは回り込んで様子を見ると、どうもそのアイスは巨峰ほどの大きさの球体一粒のようだ。値段を見てみると...150円!?たった一粒で!?そんなバカな!...ぼくは諦めて先に進むことにした。 - 2二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 07:40:41
それからしばらくして着いた広場は屋台がずらっと並んでおり、ざわざわと賑やかで四方八方から良い香りがする。ちょうどお昼ごろで空腹。これは寄らざるを得ない!
「さて、どれを食べようかな......え...?」
あまりのことでぼくは硬直した。どの店も、メニューが正しければ正当な価格だしその料理の香りもする。けれど客達が口に入れるのはさっきのアイス屋さんと同じサイズの球体。
「......一つ買ってみるか...すみません、その焼きそばを一ついただけますか?」
「あいよ!500円な!」
やはり渡されたのは球体。焼きそばっぽい色で焼きそばの香りがする球体。手が汚れることはなく、中が透けて見えるわけでもない、弾力のある、そんな球体。 - 3二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 07:41:19
ぼくが"それ"を眺めていると屋台のおじさんが声をかけてきた。
「ボウズ旅行者かい?ガハハ!ボッタクリじゃないから安心しな!!」
見た感じ、悪そうな人ではなさそうなおじさん。買ってしまった以上、騙されたと思って食べるしかないのだけれど...
「あの...ええとそれでこれ、このまま食べていいんですか?」
「おう、口に入れて唾液がつくとだな!!...ちょっと待てボウズ、今腹膨れてたりしねェよな?」
「いいえ?なんならオイラ...いや、ぼく腹ペコだけど。」
「それならよかった、まァとにかく口に入れて飲み込んでみな。びっくりするぜ」 - 4二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 07:41:40
言われた通りに口に含むと、先程まですぐには潰れなさそうな弾力のあった球体が割れた。......焼きそばの味がする液体が出てきた。
本気でがっかりしながら飲み込むと......
「うぐッ!?な、なんだよこれ!?」
飲み込んだ途端胃の中で膨れ上がり、一気に満腹感に満たされた。満たされすぎて吐くところだった。
「あァ、わりィ言い忘れたな、しばらく口ん中で転がして味楽しんで、少しずーつ飲んだ方がいいぜ。」
「そ、それよりこれは一体...!?」
「こいつァこの星でに開発されたモンターンってもんよ。............おれ達はな、こういうのしか食えねェんだ。」 - 5二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 07:41:57
「こいつはな!最初は5mmくらいのサイズなんだが、水をかけると3cmくらいに膨らむ。そして唾液と引っ付くと溶けて胃液と引っ付くと何倍にも膨らむ!!詳しい技術は知らねェけどな。...なんでだろうな?」
「そ、そんな技術が...!?流石ストモ...いや、それより!それそういうのしか食べられないっていうのは一体...」
「,,,,,,こういうことだよ」
大きく口を開けて見せたおじさんには―――歯が無かった。
- 6二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 07:42:21
繰り返すけど、ここは科学が発展した星。さっきの球体も目を疑う技術が使われている。...もはや魔法じゃないのかな。
けれど8年前。ある実験の失敗での大事故。この地域の人達は皆歯を失ったそうだ。その後にこの町で生まれた子供達にも歯は生えない。
もちろん入れ歯も試したみたい。けど胃腸も退化してしまっていた。元に戻す研究をしているそうだけれど、よほど失敗した実験がたちが悪いものだったようでなかなか上手くいかない。ということらしい。
「おれ達はよ、こうなっちまったっつってもそれまでは色々食えてたんだよ。ボウズ入院したことあるか?好きなハンバーガーを食えなくてずっと入院食...重湯だな。それを8年だぜ。我慢できるか?おれはよ、今でも頭おかしくなりそうなりそうだ。」
「それで、味気ない食事から少しでも逃れようと開発された...ってことですか...」 - 7二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 07:43:40
「ここでは50年前から屋台が並んでよ、みんなで美味いもん作ってよ、食ってよ、楽しくてよ...それがこの町の名物で......だからおれ達はよ、形だけでもって、ここで......」
「...ごちそうさまでした。とっても美味しかったですよ。」
「そうか、そりゃあよかった。」
それからぼくは観光する気になれず、近くのバス停からホテルへ直行した。
ホテルの夕食はちゃんとした形のある料理だった。安いホテルだけど料理は評判がよかったから楽しみにしていた。けど、箸が進まなかった。
形のあるレタスを口に入れて、そして当たり前のように咀嚼する。飲み込んでも急に満腹になるわけでもない。
少し考えて...それからしっかりと完食した。 - 8二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 07:43:56
おわり
- 9二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 07:57:47
面白かった 乙
SF短々編みたいな雰囲気なのに通貨単位は円なの草生えた - 10二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 08:41:58
星の名前でっち上げるのも結構大変なので単位は許してね!
- 11二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 19:57:52
おとちくちく久しぶりじゃん!
考えさせられる話だなあ
男の乳首の話は??????? - 12二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 20:40:45
ホテルのシェフは味見とかどうするんだろうな
- 13二次元好きの匿名さん22/08/25(木) 21:37:21
- 14二次元好きの匿名さん22/08/26(金) 06:35:04
ふざけた名前からの真面目なssで困惑する