拝啓。赤紙海賊団のみんな、ルフィ、ゴードン

  • 1二次元好きの匿名さん22/08/28(日) 16:01:19

    私はいま、ウタワールドの中にいるよ。どうやら私の肉体が死んだことで、私の精神はウタワールドに閉じ込められたみたい。最後に歌いながら死んだからかなぁ?
    まあそもそも私の計画だと死んだ後もウタワールドでみんなを楽しませるつもりだったしね。そういうこともあるんだと思う。

    ………私の計画じゃ、みんな新時代のウタワールドの中にいてたくさん楽しんでるつもりだったんだけどなぁ。でも、うん。別にそのことをぐちぐちと文句を言うつもりはないよ。結局は私の新時代は求められてなかったということだろうし。それに気づけなかった私が悪いもんね。
    だから、私はウタワールドの中に1人っきりです。いつかルフィやシャンクスたち、ゴードンが来てくれるのかなぁ、とか。そのときはルフィがもっと麦わら帽子が似合う海の男になってるのかなぁ、とか。シャンクスやゴードンにはいろんな曲とダンスを披露したいなぁ、とか。そんなことを思いながら過ごしてたんだけど……


    「寂しい……誰も認めてくれない……誰も見つけてくれない……」


    地下遺跡を散歩してた時に見つけた、この体育座りで泣いてる男の子(?)はいったい誰なんだろう……

  • 2二次元好きの匿名さん22/08/28(日) 16:01:42

    あの、それってトットムジカ……

  • 3二次元好きの匿名さん22/08/28(日) 16:02:39

    続けて欲しいんじゃもん

  • 4二次元好きの匿名さん22/08/28(日) 16:03:52

    さらっと死んでてしかもウタワールドにひとりっきりとかいう事実に心にダメージを負いました

  • 5二次元好きの匿名さん22/08/28(日) 16:04:40

    腰を折って申し訳ないのだが徴兵令か何かで?

  • 6二次元好きの匿名さん22/08/28(日) 16:05:51

    ショタ魔王トットムジカ!?

  • 7二次元好きの匿名さん22/08/28(日) 16:13:36

    「あのー……もしもし?」

    「………誰も聞いてくれない……誰も気にしない……誰も……何も……うぅ……」


    呼びかけても何も返事をしてくれないんだよ。近くで手を振っても肩を叩いても何もないの。ただ顔を伏せて、ずっとずっと呟いてるの。

    だからね、とりあえず私は周りに色んなものを出してみることにしたんだ。お菓子とか、ジュースとか、ぬいぐるみとか。安直だけど、泣いてる子どもにはそれが良いのかもって。でもね?


    「………………寂しい……………」


    本当に何も反応しないの。こっちにも気づいてないみたいで。というかおかしいよね。そもそもなんで私以外の人がウタワールドの中にいるんだろうってシャンクスたちも思わなかった?
    私も焦ったよ。もしかして、私のファンの中でひとりだけ解放できなかったのかなとか。だから、諦めずにいろいろ頑張ってなんとかお話ししようとしてたんだ。

  • 8二次元好きの匿名さん22/08/28(日) 16:30:27

    本当に色んなことを試してみたんだよ?実は無理やりお姫様抱っこもしてみたの。怒ったらこっちを見てくれるかなーって。でもダメだった。何も反応がないの。もう本当にすごいぐらい無反応。くすぐったりもしてみたけどどうにもならないの。

    2時間ぐらい?頑張ってみたけど何にも反応がなくて流石に私も疲れちゃったんだ。だからね、息抜きにちょっと歌を歌ってたりしたの。ビンクスの酒とか。

    そしたらさ、男の子が急にこっちの方をすごいなんとも言えない顔で見上げてくるの。なんだろう……なんか奥歯に食べ物が詰まっちゃった?そんな感じで。
    でもさ、私からしてみたらやっと男の子が振り向いてくれたんだよ。私の歌を聞いてくれて何か感想でも言ってくれるのかな!?って思ったらさ……なんて言ったと思う?


    「………声はいいのになぁ………ブレスがなぁ……」

  • 9二次元好きの匿名さん22/08/28(日) 16:32:17

    死んでもウタワールドに入ったままなら海兵に殺された一般市民もいるのでは

  • 10二次元好きの匿名さん22/08/28(日) 16:32:20

    毒舌で草

  • 11二次元好きの匿名さん22/08/28(日) 16:40:25

    いや、その子が言ってることもわかるんだよ。一通り頑張ってすごい疲れてたから、自分で歌ってても「なんか今日ブレスが乱れてるなぁ」とか思ってた。思ってたよ?

    でもさ、いざ喋ってくれたと思ったらそんなこと言うんだよ?私も怒るよ。つい怒っちゃったから「疲れてるからだし!じゃあアンタはどうなの!」って感じで聞いたの。

    そしたらすごい自慢げに「………よく聞いてね」って言った後に歌い始めたんだけど……もうほんとに、びっくりするぐらい上手だった。すごい上手だった。

  • 12二次元好きの匿名さん22/08/28(日) 16:41:08

    歌を愛する人々の感情の集合体だからか……?

  • 13二次元好きの匿名さん22/08/28(日) 16:52:35

    トットムジカくん自慢げに歌ってそう

  • 14二次元好きの匿名さん22/08/28(日) 22:35:54

    終わった後にね、すごいでしょ!みたいな顔で露骨にこっちを見るんだ。自慢してるんだね。思わずわかる〜ってなっちゃった。私もゴードンに歌のレッスンしてもらってるとき同じようなこと思ったし。

    それでね、しばらく呆気に取られてたの。そしたらその子、急に不安げな顔になって「……聞いてた?ねぇ、ちゃんと歌聞いてくれてた?」って聞いてくるんだよ?歌ってる時は楽しそうだったのに急に今までみたいな、むしろ今までよりも暗い顔するの。

    だから私、「聞いてたよ。とっても上手だった」って返したんだ。
    でもその子、「本当?じゃあどこが上手だった?どこが凄かった?もしかして聞いてくれたけど下手くそだった?」ってすごい勢いで聞いてくるから、不安を打ち消してあげるためにもちゃんとどこが上手かったかを全部伝えたの。

  • 15二次元好きの匿名さん22/08/28(日) 22:36:54

    このレスは削除されています

  • 16二次元好きの匿名さん22/08/28(日) 22:38:06

    トットムジカくんなら現実との架け橋になるのでは?

  • 17二次元好きの匿名さん22/08/28(日) 22:48:02

    褒められて嬉しかったのかな。すごい満足そうに笑ってくれたんだ。

    だから私、今なら聞けるのかなって色んなことを聞いてみたの。……でもね、あまり良い答えは聞けなかったかな。

    名前も、どこから来たのかも、何もわかってなかった。わかってるのは歌のことに関する知識と、ただ自分の中に寂しいっていう感情があるだけ。それ以外は何一つ覚えてない記憶喪失の状態だったんだ。

    だから私、言ったの。「ひとりぼっちが嫌なら記憶が戻るまで一緒に過ごしてみない?」って。嬉しいことに、頷いてくれたんだよ。だからその子を連れて自分の家に帰ったの。


    ………本当は、私の方はなんとなくわかってたけど。でもね、確証がなかったから。とりあえず一緒に過ごしてみることにしたんだ。

  • 18二次元好きの匿名さん22/08/29(月) 10:49:36

    トットムジカくんがどうなるか期待

  • 19二次元好きの匿名さん22/08/29(月) 17:32:30

    しばらく二人で、ゴードンと暮らしてたあの家で暮らしてたんだよ。
    二人で暮らすようになった後も、その子は基本ずっと引きこもって寂しい寂しいって言ってたんだけどね、前みたいにずっとこっちに目を向けてくれないわけじゃなくて、時々こっちを向いては「何か食べたい」とか「歌って」とか「歌を聴いてほしい」って言ってくるの。
    もちろん私も頑張ったよ!……ウタワールドに頼らないで自分で料理を作ってみたりもしたんだよ。

    そんなある日、いつもみたくその子の歌を聴いた後に、私の方を見つめてその子がこう喋りかけてきたの。


    ………『探している曲がある』って。

  • 20二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 01:19:09

    このレスは削除されています

  • 21二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 01:22:37

    トットムジカかな?

  • 22二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 01:27:33

    良SSスレだ
    続きが楽しみ

  • 23二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 05:35:24

    おーおー好き勝手良いモノを書きなさる

  • 24二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 12:47:46

    保守

  • 25二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 15:01:39

    保守

  • 26二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 23:38:25

    ゴードンさんがしてくれた事を自分がする側になったウタいいな

  • 27二次元好きの匿名さん22/08/31(水) 00:01:34

    ……私はね。もうその子の……トットムジカのことに気付いてたから。わかってたよ。むしろ「ああ、やっぱりそうなんだ」とも思った。

    でも、どうしてその曲を探しているのか、その曲じゃないとダメなのかはトットムジカもよくわかってないみたいで。ただ「あの曲じゃないとみんなに聞いてもらえない」って泣きそうな顔で私に訴えてた。

    ………トットムジカは寂しいって感情の集合体だからね。あの歌を歌うことで現実世界とウタワールドが繋がる……つまり、「あの歌のおかげで現実世界に現れることができて自分を見つけてもらえる」と思ったんじゃないかな。
    何かのせいで記憶も力も全て失ったあの子も、ただそのことは覚えていたんだろうね。

    ………だから、私は迷ってたんだ。あの子に歌を教えることはできる。だって、私がその楽譜を持っているんだからね。
    それと……教えても、多分問題ない。あくまでトットムジカが現れる要因はウタウタの実の能力者が歌うことだから。それに、私の肉体はもうないしね。

    ただ………楽譜を見ることで全てを思い出したあの子が、どういう行動をするか。もしかしたら何かしらの手段でかつてのように破壊の限りを尽くそうとするのかもしれない。そう思うと怖くて教えられなかったんだ。
    ……私の力が怖くて私を外に出してあげられなかったゴードンと一緒だね。ゴードンの気持ちが今の私にはよくわかるよ。

  • 28二次元好きの匿名さん22/08/31(水) 00:02:49

    >>9

    誰も死んでない

  • 29二次元好きの匿名さん22/08/31(水) 01:30:39

    だから何も言わずにしばらく、ずっとそのまま過ごしてたの。
    いつも通り歌を聞いて、歌を歌って、一緒にご飯を食べて、一緒に眠って。本当に何も変わらないいつも通りの生活。

    「私も探すのは手伝う」って言ったし、実際に手伝ったけど見つかるはずがないんだよ。だって、トットムジカにまつわるものは全部私が隠してるから。唯一隠せなかったのは地下遺跡のあの壁画だけど……まあ、あんなの読めないからね。私も読めないし。


    ………でも、それも長く続かなかった。私はやっぱり嘘をつくのは下手だったみたい。
    いつものように過ごしてるとね、トットムジカが私の腕を痛いほど掴んでくるんだよ。
    どうしたんだろうって思った私が呼びかけようとしたら、急に私のことを睨んでるの。……その時の目は、シャンクスたちに置いて行かれた時の私にそっくりだった。そして、震える声で私に言うんだよ。


    「ウタは何かを隠してる」って。

  • 30二次元好きの匿名さん22/08/31(水) 09:52:32

    保守

  • 31二次元好きの匿名さん22/08/31(水) 13:14:19

    保守

  • 32二次元好きの匿名さん22/08/31(水) 19:33:48

    保守

  • 33二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 01:03:02

    保守

  • 34二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 01:14:42

    やっぱり私じゃ、ゴードンみたいにはいかなかったみたい。演技は下手くそで、その結果トットムジカを傷つけてしまった。


    だから、そんな私にできることはひとつだけ。あの楽譜を渡してあげることしかできなかった。


    ………渡した瞬間、ウタワールドの空気が、天気が、変わっていくのがわかったの。
    暗く、重く、煩く、怖い。まるでエレジアが滅んだあの時のように。世界が地獄になっていくのがわかった。
    トットムジカの表情も、それに合わせるように変わっていった。最初は深い驚き、次に激しい怒り、そして最後に、鋭い悲しみ。
    きっと、記憶を取り戻したんだろうなってわかった。多分、記憶だけじゃなくて力も元通りになったんだと思う。だから私のウタワールドの様子を変えてたんだろうし。


    ………でも、それだけだった。私を訴えるような目で見た後に、自分の部屋に閉じこもっちゃったの。能力を使うわけでもなく、ただ走って逃げて鍵を閉めた。それだけだった。

  • 35二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 09:54:39

    保守

  • 36二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 16:06:57

    ほす

  • 37二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 16:09:04

    .

  • 38二次元好きの匿名さん22/09/02(金) 01:40:44

    保守

  • 39二次元好きの匿名さん22/09/02(金) 02:28:49

    正直、驚いたよ。記憶を取り戻したトットムジカとは、てっきり戦うことになると思っていたから。外の世界に出て破壊をしようとするトットムジカに、私の力を全力で注いで戦うしかないと思ってた。
    でも、そうじゃない。あの子はひとり、暴れまわることもなく、部屋の中に閉じこもった。

    だから私はまだ間に合うと思ったんだ。エレジアのときとは違う、何かが変わったんだって。だから私は、戦うんじゃなくて……無理やり鍵を開けるのでもなくて、対話をしようとしたんだ。

    隠していてごめんなさい、話を聞いてほしい、意地悪で隠していたわけじゃない、そんな風に呼びかけたの。

    そしたら、確かに怖いぐらいに殺意がこもってるけど……でも、こっちを傷つけようとはしてない、そんな声で私に語りかけたんだ。


    「嘘つき」

  • 40二次元好きの匿名さん22/09/02(金) 11:18:14

    「隠していてごめんなさい」

    「嘘つき。罪悪感なんてないくせに」

    「話を聞いてほしい、話をしたい」

    「嘘つき。暴れるのを止めたいだけで話そうとはしてないくせに」

    「そんなことない、私はあなたを危険だなんて思ってない」

    「嘘つき。僕たちを見る目に恐れがある」

    「……それでも、私は!」

    「嘘つき。嘘つき。嘘つき!嘘つき!嘘つきぃ……!」


    扉の先で、トットムジカが泣きじゃくっている。私の嘘を糾弾し、泣きじゃくっている。けれど……けれど、どんなに怒って悲しんでも、あの日見せた破壊の力を使うことはなくて。


    「信じてくれなかった……!怖がられてた……!さ、最初から、見てもくれなかった……ひとりぼっちで……」

  • 41二次元好きの匿名さん22/09/02(金) 23:04:06

  • 42二次元好きの匿名さん22/09/03(土) 00:43:31

    ありがてぇ……切らしてたんだ超上質なこの成分……

  • 43二次元好きの匿名さん22/09/03(土) 06:09:56

    保守

  • 44二次元好きの匿名さん22/09/03(土) 16:47:09

    ウタの独白形式の文章が染み渡るいい良SSだ……

  • 45二次元好きの匿名さん22/09/04(日) 00:08:30

    保守

  • 46二次元好きの匿名さん22/09/04(日) 00:41:22

    うわあ…SS主に感謝…

  • 47二次元好きの匿名さん22/09/04(日) 01:28:23

    ………わかっていたはずなのに。寂しいと、そう訴えたいたのをわかっていたはずなのに。私はそれでもと、トットムジカを信じてあげることができなかった。
    ………トットムジカは、私に裏切られたと思った後も暴れることもなく、力に溺れることもなく、ただ篭って泣き続けている。それこそがトットムジカの無害である証明だというのに。私はそうなってやっと、彼らを信じることができた。なんて我儘、なんて暴虐、なんて非道なんだろう。

    私はまた間違えた。間違えてばかりの人生でまた間違えた。


    だから、今度こそ。もう二度と、間違えないように。


    「ねぇ、ドアから離れてて。破片が飛んだら危ないから」

    「今さら何……え?破片?」


    ここで退いたらまた独りにさせてしまうから。私は退かず、恐れず、真っ直ぐに。全力で扉を蹴り破ったんだ。

  • 48二次元好きの匿名さん22/09/04(日) 10:06:12

    保守

  • 49二次元好きの匿名さん22/09/04(日) 16:09:52

    ウタワールドの中にいるウタ概念は悲しすぎるけどこのSSはもう一つの寂しがり屋を救ってくれそうなので好きだ

  • 50二次元好きの匿名さん22/09/05(月) 01:41:36

    保守

  • 51二次元好きの匿名さん22/09/05(月) 12:17:02

    油を煮続けるか……

  • 52二次元好きの匿名さん22/09/05(月) 21:39:41

    蹴り破った先に居たのは、初めて出会った時のように座り込んで塞ぎ込んだトットムジカがいて。私の行動に驚いたからか思わず顔を上げていた。

    何も考えないで突撃してしまったから……一瞬、ここから先どうするかを悩んだけど。

    その頬に涙が流れているのを見たら、もうそんなことを考える合間すらなかった。


    「わっ……ちょっ……ウタ、離して…!」

    「いいや、離さない。もう私は間違えないよ。絶対に離さないし気持ちを伝え続ける」


    しっかり押し倒して抱き締める。身動きが取れないように、逃げられないように、しっかりと。ジタバタとトットムジカももがくけれど、その体勢から押し退けるほどの力はない。そもそも多分、そこまで本気で抵抗していない。それに何より……


    「離して!近づかないで!ウタなんて嫌い、みんなに愛され続けるお前なんか嫌いだ!」

    「それは嘘。だって、私が邪魔だと思うならもっと色々な方法があるはずだもん。それをせずに抱きしめられてるのが、私を嫌いじゃない理由でしょう?」


    ピクリ、と震えるように拒絶していたトットムジカの体が固まる。だから私は、きつく強く回していた腕を緩めて、改めて優しく抱きしめなおしたんだ。


    「ありがとう、私を拒絶しないでくれて。ありがとう、あんなことがあっても私をまだ好きでいてくれて。うん、今なら私も正直に答えられるよ。私もあなたが好き。あなたを孤独にさせたくない」

  • 53二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 03:08:08

    もう語り継いだ

  • 54二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 11:31:14

    保守

  • 55二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 15:56:26

    怯えて固まっていたトットムジカの体が、柔らかく力が抜けていく感じがした。どうやら、気持ちをわかってくれたみたいだった。それでもやっぱり、涙と嗚咽は止まらないみたいだったけど。


    「僕たちは、ここにいちゃいけない……」

    「そんなことない。ここで生きる権利がある。昔の時ならまだしも、今のトットムジカはとても優しくて綺麗だよ」

    「違う。違うの。きっとこれは異常な状態なんだ。僕たちにとって正常なのはあの暴れ回ってた時の方で、今の僕たちはおかしい。だから、ウタが僕たちと一緒に居るといつか僕たちはあっちに戻っちゃうかも……」

    それはなんとなくわかっていた。あのルフィやシャンクスたちとの戦いで、私の歌で、さまざまな要因が絡み合った結果、本来の魔王としての在り方と彼らは逸れてしまったんだと思う。だからこそ、私の世界で暴れ回ることもなく記憶を失って泣いていたんだろうし。


    「それで?仮に戻ったとして、私と一緒に過ごした楽しい楽しい記憶がなくなることはないでしょ!それにあっちになっても絶対に暴れさせない。必ず捕まえてこっちのトットムジカに戻してあげる!………人や人の感情は変われるの。人の感情から生まれたアンタも変われない道理はないよ」


    それに何より、この変化に一番戸惑っていたのは私よりも、この話を聞いてくれるみんなよりも、トットムジカ本人だったと思うの。古代から大暴れした記憶と、今の自分の記憶が混ざり合って堪え難いはずなんだ。
    でも、それでも、暴れ回らずに耐えてくれた。だからきっと、そんなトットムジカなら、これから先もこのままでいられるはず。そう思った。


    「………独りは嫌だ」

    「絶対に独りにさせない。ずっと一緒だよ」

    「怖い、壊すのが怖い」

    「壊させない。もう誰も殺させない」

    「僕たちは……」

    「誓うよ。私を信じて」

  • 56二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 16:01:39

    それが、私にできる精一杯の言葉。正直に言うと、今もそれが心の奥底に響いてくれたかは分からない。でも、あのとき優しく抱きしめ返してくれたから、きっと受け取ってくれたんだと思ってる。

  • 57二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 16:03:17

    そして今、私たちは変わらずウタワールドで過ごしています。
    シャンクスたちが私のこのメッセージを夢の中で受け取れているのは、トットムジカの力のおかげなんだよ。と言っても、あの魔王のときとはトットムジカの在り方が変質しちゃったから、完全に現実世界とウタワールドを繋げることはできないけれど。
    ただ、私たち側からそっちを見ることはできるんだ。シャンクスも、ルフィも、ゴードンも、頑張ってるね。

    私の方は、私の力……ウタウタの実の能力についてトットムジカと一緒に色々とエレジアで調べています。この実は私も知らない力がたくさんあるから。たまに夢で多くの誰かと繋がることもあって、そういう時は色々歌を聞かせてあげたりしてるの。

    トットムジカも大丈夫だよ。最近は前よりもよく話してくれるようになったね。
    ………あと、ウタワールドのエレジア以外の場所も探索してるんだけど、地下遺跡にいた奴みたいなのが他にもチラホラいるみたい。ウタワールドで私の声が届く範囲だと私は最強だから別に怖くないんだけど、それでもトットムジカが警戒してくれてるみたいで…。
    遺跡探索の時とか前までの小さい男の子の姿じゃなくて、大きい大人の男の人の姿になったりしてくれるんだよね。別に飛べるから関係ないのに私のことお姫様抱っこしたり力を使って闘ったりするんだ。
    「ウタは少し抜けてるから」って……私、別にそこまで抜けてないよね?そりゃあお姫様抱っこされた原因は私がうっかりやりすぎちゃって壊しちゃった遺跡の崩落から逃げるためだけど……あ、壊したまんまにしてないからね!ちゃんと直したから!

    とにかく、私のお話はこれで終わり。次に会うときはいつになるのかな?もし私の夢とあなた達の夢が繋がったときは、精一杯ライブをして楽しませるからね。私も私なりに色々と努力をしているのです!

    それでは、さようなら。ルフィ、赤髪海賊団のみんな、ゴードン。元気に過ごしてくれていることを願っています。

  • 58二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 16:04:21

    追記
    また会おうね!

  • 59二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 16:16:11

    素晴らしいSSをありがとう゛!!感動したっ!!!!

  • 60二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 16:17:52

    ウタちゃんが幸せそうで……よかった!!

  • 61二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 16:18:33

    トトウタ……キテる……

  • 62二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 16:31:10

    健全おねショタからのおに(精神的)ロリ……良い……

  • 63二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 18:28:14

     まさに「私が消え去っても 歌は響き続ける」という感じの作品だった、ウタワールドからルフィ達の旅路を応援するのがまたいい、夢を通じて会いに来たルフィが泣きついたり甘えたり、旅の話をする妄想が捗るな

  • 64二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 23:06:33

    後日談とか……後日談とか!
    もっとこのウタとトットムジカの絡みを!!

  • 65二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 03:41:42

    (※楽譜を渡して力が戻った瞬間、現実世界にも子供の姿をとった魔王が出現していたとしたら)
    ウタの歌が響き続けるあの青空の下、子供たちと一緒に授業を受けてる魔王がいたらいいな。

    音楽を愛する人々の思念の塊ゆえ授業内容自体は生ぬるいけど、独りじゃないからまんざらでもないトットムジカ概念……

  • 66二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 07:45:41

    ショタの方は「僕たち」だけど青年体の方は「俺たち」になってそう

  • 67二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 16:18:50

    こういったタイプの救いに飢えてた
    ありがとう…

  • 68二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 03:33:26

    毒舌ショタムジカと世界を愛していた心優しいウタのおねショタ概念は効く

オススメ

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