ここだけモザイク世界線 8

  • 1二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 00:56:10

    ※注意

    1がひたすらSSを書いているスレです。

    前スレ

    ここだけモザイク世界線 7|あにまん掲示板※注意1がひたすらSSを書いているスレです。前スレhttps://bbs.animanch.com/board/819154/以下初期設定。〇ドラルクΔとは違う世界線の吸対所属のクソ雑魚ダンピールおじ…bbs.animanch.com

    以下初期設定。


    〇ドラルク

    Δとは違う世界線の吸対所属のクソ雑魚ダンピールおじさん。

    本編世界よりも新横の治安が多少良いので悠々自適に公務員生活を謳歌している。

    以前は吸対のカナリアとして活躍していたが、最近優秀な新人が入ったのでもっと楽ができるぞーと息巻いていたところに謎の吸血鬼コンビのお世話係に任命されてしまった。

    アルマジロのジョンとはいつも一緒。たまに酷い悪夢を見て寝不足になるのが最近の悩み


    〇ロナルド

    突然ドラルクの前に現れた謎の吸血鬼コンビの片割れ。

    日光やにんにく、そして銀とあらゆる弱点が通用しない恐るべき吸血鬼だが何故かセロリが苦手。

    吸血鬼としての能力は非常に優秀で、大抵の能力は使えるみたいだが、ここ一番の場面ではなぜか銃か拳を重用する癖がある。

    過去に致命的な失敗をしたとのことで表情が険しい。

    ドラルクの後先考えない行動によく口を出しがちで、特に夜の勤務時間時はヒナイチともどもひな鳥のようにドラルクについてまわる。

    ドラルクが就寝中などにヒナイチとふらっと出かけてはボロボロになって帰ってくることがある。しかし何をしているのか絶対に話してくれない。


    〇ヒナイチ

    ドラルクの前に現れた吸血コンビの二人目。

    ロナルド程は弱点に耐性を持っておらず、特に日の光に弱い。

    日光に関しては「素質が無いのに無理やり転化した代償」とのことで、髪の赤色も若干濁ってしまっている。

    代わりに夜の闇において彼女を捕まえられるものはいないほど俊敏であり、また二刀流の達人でもある。

    ロナルドとは兄妹のように仲が良いが別に実の兄妹でもなければ恋人とかでもないらしい。

    たまにロナルドともども泣きだしそうな顔でドラルクを見ている時がある。

  • 2二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 00:56:48

    〇半田
    吸対所属のエース。とにかく仕事ができるのだが、真面目過ぎて余裕がない所がある。
    同じダンピールで先輩にあたるドラルクには懐いているようだ。
    新たに表れた吸血鬼コンビには大いに警戒しているのだが、なぜか軽口をたたきやすく内心ホッとしている。なぜだろう?

    〇ヒヨシ
    レッドバレットの異名を持つ腕利きのハンター。妹が一人いる。
    無類の女好きだが過去に盛大にやらかしたこともあり、ある程度自制している。
    最近現れた吸血鬼が自分に似ているのが妙に気になる。あの半分でも身長があればな……。

    〇ミカエラ
    吸対所属のエースその2であり、人間。半田の先輩筋にあたり、弟が一人いる。
    きっちりと制服を着こなし真面目に職務に当たっているが、最近現れた吸血鬼がその事に茶々を入れてくるので困惑している。
    何が問題なのだ!

    〇ケン
    突然ハンターギルドに現れ、ハンターをやりたいと言い出した謎の吸血鬼。
    催眠と結界の二重使用という極めて高度な技術を持つ。ロナルドとヒナイチは以前からの知り合いのようで、たまに共同で戦ったりもしている。
    何故か吸対所属のミカエラをよく茶化す。

    〇ディック
    「揺らぐ影」の二つ名を持つ古き血の吸血鬼。
    ロナルドとヒナイチがピンチになるとどこからともなく現れ、変身能力で場をかき回して去っていくタ〇シード仮面的存在。
    2人に協力するのは何か目的があるようだ。以前、息子がいたらしい。

    〇カズサ
    神奈川県警吸血鬼対策部本部長。
    人員不足だった新横吸対の為に、渋るイギリス吸対から人材を引っ張ってきた人。
    人員の一人はクソ雑魚ダンピールおじさんだったが十分働いてくれるのでオッケー。
    (ヒナイチを見て)おや、そこの吸血鬼のお嬢さん、オレの顔に見覚えがあるのかい?

  • 3二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 00:57:14

    〇ジョン
    ドラルクと永遠を誓う愛すべき〇。

    最近嫌な夢を見るんだヌ。黒い何かがドラルクさまに襲い掛かるんだヌ。
    そして、まるで存在をすする様にドラルクさまが消えていくんだヌ。

    ヌンは何もできなかったヌ。
    見ることしかできなくて、そしてヌンの体もぼろぼろと塵になっていくんだヌ。
    ……夢はいつもそこで終わりヌ。


    基礎ルール
    ・御真祖とフクマさんが存在していない
    ・そもそも竜の一族が存在していない。ノースディンは存在している。ドラウスたちは人間としてなら存在しているかもしれない
    ・記憶の持ち越しは元から吸血鬼か人→吸血鬼のみ。記憶のない吸血鬼もいる
    ・記憶を持ち越した者は、家族との血縁関係や友人関係がなかった事になる。
    ・吸血鬼が人間かダンピールになっている場合は確定で「何か」があった。
    ・本編で複数能力持ちだった吸血鬼のうち何人かは一部の能力が消えている場合がある(例、イシカナがタピオカの能力しか持っていない)
    ・一部の人間にもうっすらと記憶の残滓が残っている場合があるが夢のようにおぼろげ。
    ・存在が丸々消えている吸血鬼もいる(例、へんな)
    ・ロナルドヒナイチは頻繁に「何か」と戦っている

    ・「それ」は竜の臭いに惹かれている

  • 4二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 01:01:02

    前回のあらすじ
    手段を選べない男たち
    変態VSシリアス
    黄色がきたぞ!!

  • 5二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 01:02:20

    時は少し遡る。
    ロナルドとヒナイチが被弾覚悟で龍と戦っている最中、地上は地上で新たな転換期を迎えていた。

    「隊長!!広間の一般市民が突然Y談を話し始めました、これが隊長の言ってたY談おじさんですか!?」
    「よし、そのまま好きにさせろ!街をまんべんなく回るように気づかれん程度にゆる-く誘導するんだ!!シリアスの空気なんぞ知った事かそこらへんの変態にでも食わせておけ!!全てぶち壊すんだ!!」
    ドラルクは完全にスイッチが入った状態でどんどん指示を出していく。付近には黄色いお香が厳重な様子で置かれていた。

    メッチャヒトクール香のY談バージョン、つまりY談おじさんを効果的に引き寄せるお香である。
    ドラルクはY談おじさんのウワサを師匠からうっすらと聞いたことがあった。
    強制的にY談しか喋れなくさせる非常に不愉快な人物だと。
    あまりにもノースディンがドラルク的に愉快な顔をしていたので非常に印象深かったのだ。できればY談波を浴びた師匠の発言を録音したかったほどである。
    ドラルクが聞く限り、その人物は愉快犯的な印象があった。

    Y談おじさんは噂を聞く限り自分の気が乗らない提案であったら街の危機であろうと乗らず、むしろ状況が面白い方に悪化するのであればそちらに手を貸す困ったおじさんなようだった。そして逃げ足が速い。

    おそらく真正面から誠心誠意を込めてお願いをしても、Y談おじさんは鼻で笑って終わりにするだろう。
    そもそも街の不穏な空気に敏感に反応して街にくるのかすら怪しかった。
    だが、能力は破格だ。この街の状況においては致死量の毒になりえる。
    どれだけ深刻な状況であろうと出てくる言葉がY談になるだけで強制的に笑いに変えることができるのだ。
    もちろん、深刻な状況にならないに越したことはないのだが。

    どうやってかの吸血鬼をこちらの街まで引き込むべきか頭を捻らせていた折、効力不明の香炉を興味本位で一時間ほど使ってみたのだ。しかし最初は何も起こらず拍子抜けした。
    なんだただのガラクタかとはじめはドラルクも思ったが、同時に、何も起こらないわけがないという自分の中で奇妙な確信があった。

  • 6二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 01:03:24

    そんな時である。
    翌日少し離れた町でY談おじさん出現の知らせが届く。

    まさか、と思った。
    数日置いてもう一度香炉を一時間だけ起動してみる。

    やはり、近くの町でY談おじさんが現れた。

    そして3回目。
    Y談おじさんが隣の町に現れた。
    確実に、Y談おじさんが近づいてきている。

    法則性は分かった。
    ならばとドラルクは入念に手を打つ。監督官殿に後でどやされること間違いなしだが、んなもん昼行燈(カズサ)に全て丸投げだ。

    遠くの方からドタバタと走ってくる音が聞こえる。
    指示出しをするドラルクに向かって半田が勢い駆けてきた。
    「先輩どうしたんですか」「半田君?」

    半田は何かを喋ろうとするが非常に躊躇った様子でまごついている。

    「なるほど半田君。事前に教えておいた事は覚えているね?」
    半田はコクリとうなずく。だがそれでも非常に言いづらそうである。
    「じゃあ言ってみようか。恥ずかしがらずに!ハリーハリー!」「ヌヌー!」

    「せ、背中からおしりにかけてのライン……」
    半田はなんとか言葉を絞り出した。

    「うむ、ドームの方からか。新横浜公園のカップルでも強襲してるのかな」
    「こっちのほうにまで来ますかね」「一番賑やかなのは駅前さ。いずれ絶対に来る」

  • 7二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 01:04:41

    知恵熱を出す半田を置いてドラルクとサギョウは冷静に状況整理をする。
    半田の語彙が小学生のような下ネタレベルにまで落ちているが、これも作戦の一環であった。

    Y談おじさんを呼ぶにあたって一番のネックは情報共有である。
    いくら有利状況を作り出すと言っても、Y談によって情報共有の齟齬が起こって負傷者が出ては本末転倒だ。
    口からどれだけエグイ性癖話が出ようとも警察の機能不全だけは避けねばならない。

    ドラルクもその点に関してはどうするべきか頭をひねった。
    筆談をすればよいでのは?と思うかもしれないが、ノースディンの昔話によると筆談すら機能不全に陥るらしい。本当にふざけた能力である。
    意思疎通が全くできないのは困る。何か良いアイデアはないものかと考えあぐねていると、ある日の夢で突然のお告げが頭に流れてきた。

    『……ますか?きこえ、ますか……?今あなたの心に直接語り掛けています……、Y談波は、Y談語彙であれば、言葉を選べます……。Y談を、あえて使うのです……!』

    眼鏡をかけた妙に疲れ切った男性の声だった。
    正直夢の言葉をそのまま鵜呑みにするのはどうかと思うが、声に聞き覚えがあったことと、心臓の忠告の事もあったのである程度信用した。あとで実地調査に行ってきてもらったモエギやにく美曰く、本当にY談であれば言葉を選べるとのお墨付きも出たので問題はない。

    言葉がある程度選べるのであればこちらもやりようはある。
    事前にY談と対応する伝えたい事柄を暗号の様に決めてしまえばいいのだ。
    さっきの半田の言葉であれば「背中からおしりにかけてのライン」はおしりはドームを表していて、「ドームからの道すがら」、みたいな意味になる。
    ポイントはただパーツの単語だけで終わらせるのではなく、きちんとエッチを感じさせる言葉遣いにすることだ。微妙に濁し過ぎた言葉遣いにした結果Y談判定されなかった時が誤爆も含めて一番悲惨だからだ。

    その他にも事前に予測できる受け答えをや質問を書いておき、指さすだけで意思疎通が可能になるようなプレートなども用意してある。
    知らない人が見ればY談が行き交う意味不明な変態空間だが、立派な作戦の一つなのだ。

    (大分グールの群れは収まってきたな。腕の人もなにか宝石見つけた?って言ってたし。となると)

    そろそろ、あの一手を使ってもいい。

  • 8二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 01:05:36

    ドラルクの無線に通信が入る。ドラルクは無線に耳を傾ける。

    『ミニスカポリス!!タイツが伝線した時にしきりに足を気にするお姉さん!』
    はきはきとした警察官の声が聞こえた。
    本来の暗号部分はタイツが破けるとかそういう語彙なのだが、本人の趣味嗜好が無意識に反映されて微妙に描写が盛られるのが恐ろしかった。伝わるから良いのだが。

    『了解した!例の作戦を発動していい!』『エッチ!!』

    通信が途絶えた。
    街のBGMが切り替わる。どこからともなくスモークが焚かれる。
    スモークに隠れて、何者かの集団が混乱する街へ入場していく。
    その入場には、さながら軍隊の行進のようなワクワク感があった。そして、スモークが風に吹かれて突然晴れた。


    スモークの晴れた先にいた集団が着用していたのは、警官帽に、マイクロビキニ。そしてタスキ。
    タスキには、「特殊警察 新横浜警察署」という文字が堂々と書かれている。

    『市民の皆様、ご安心ください!我々警察が事態の収束に努めます!!』

    ミカエラの良い声が高らかに街に響いた。
    男たちのオオー!!という雄たけびとともにマイクロビキニの軍団、正確にはゆめかわメンズとか赤フンとかもいるが、そういった変態下着軍団がY談と混乱に溢れる新横浜の街に降り立つ。

    街は混沌の極み。
    ロナルドが念動力で反撃の一手に出ていたその頃、まさしくシリアス君の息の根が今、止められようとしていた。


    ヌヌヌ(つづく)

  • 9122/08/30(火) 01:09:08

    国家権力に公認されて街を練り歩くマイクロビキニほか変態下着軍団(集団)、書きたかった場面だったので書けてよかったです。

  • 10二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 01:25:17

    一応ヌシュ

  • 11二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 08:21:20

    シリアスさん…冥福を祈る

  • 12二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 10:16:45

    シリアスくん…でも必要な犠牲だった…

  • 13二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 14:41:07

    シリアス…安らかに眠れ…
    そしておはようシンヨコもうこうなったら誰にも止められない
    やっぱりY談の力は凄まじいなぁ

  • 14二次元好きの匿名さん22/08/30(火) 16:56:43

    スレ立て&更新乙です!
    ヘルシング…!直接脳内に…っ!!ありがとう、あなたの「タマシング・エロス」での犠牲は無駄にはしない…。
    いつの間にかサテツさんがマナーくんの心臓見つけてる!ありがとう!
    マイクロビキニその他下着パレード開始…!R.I.P.シリアス…。
    続き楽し(ピカッ)自らの性癖を暴露しながらも職務にうちこむ警察官‼️…⁉️い、いや、恥じらいながらでも堂々と宣言しても白い制服でも紺色の制服でもっ…❕

  • 15二次元好きの匿名さん22/08/31(水) 00:17:50

    保守

  • 16二次元好きの匿名さん22/08/31(水) 00:56:08

    そこのけそこのけ、変態どもが闊歩する。

    街は左を見ればマイクロビキニが、右を見ればY談地獄が、真ん中を見れば変態吸血鬼どもが、まるで一足先に10月31日でも迎えたかのようなバカ騒ぎを起こしている。
    一見すると吸血鬼と警察ばかりが変態なように見えるが、一般市民も負けてはいない。

    「私たちと一緒にニッチな趣味を謳歌しませんかー!!」「私と一緒にバブちゃんしましょう!!」
    後ろを見れば病院にいた変態クラブも元気よく宣伝活動に励んでいた。ついでに吸血鬼魔法美少女スコスコ妖精なども元気に魔法美少女の勧誘にいそしんでいる。
    四方八方が変態に囲まれ、これが俗にいう変態四面楚歌である。

    事後処理の事を考えると頭が痛いどころか昏倒してぶっ倒れそうな光景だが、それでもドラルクはお構いなしにどんどん状況を煽っていった。

    「いけーー!どんどんやれー!!街中の変態をかき集めろー!!あのバカげた龍を変態どもで窒息死させるんだ!!」「ヌヌー!!!」

    変態が飽和さえしてしまえばあの龍は必ず弱体化する。
    もう普通に暮らしているだけで急に巻き起こる精神浸食型ホラーなど飽き飽きなのだ。
    いつまでも不安の種をまき散らす迷惑千万怪奇存在などダイエットアプリのお姉さんにでもどつかれれば良い。

    すると、空の白骨龍の方から異変が起きる。
    空から鈍い音が聞こえたかと思うと、強烈な爆発音が響いたのだ。

    ドラルクは空を見る。

    上空で、白骨龍のパーツが崩れ始めている。
    どうやら上はうまくやったらしい。
    あとは日の出までこの騒ぎを続ければ王手だ。

    (無駄に手こずらせおって無限復活香水ぶちまけ悪臭龍め。もうすぐお前の生ごみじみた気配臭をかがんですむと思えばせいせいするわ!)

    その為にも最後の最後まで気を抜かず、塵となって消滅するまで見届けねば。

  • 17二次元好きの匿名さん22/08/31(水) 00:57:36

    一仕事を終えて、疲れきった様子のロナルドやヒナイチたちが地上へ降りてくる。
    「ヌヌヌヌヌン!ヌヌヌヌヌン!」
    「「ジョン!」」
    ジョンが真っ先に二人に駆け寄り、ドラルクがその後ろから少し離れて歩いていく。

    「やあやあ随分暴れたじゃないかロナルド君にヒナイチ君!みたまえこの地獄絵図!私が念には念を入れてどれだけ変態どものシナジーを生み出せるか熟考した結果生み出されたものだよ。おかげで最後の方は戦いやすかっただろう?とくに若造はこのIQ200オーバー頭脳明晰有能軍師のドラドラちゃんに感謝して屈服しなさいオブェ」

    「確かにこのイキのいい変態が飛び交う変態カーニバルは常人には作れねえし褒めたくねえよ」
    「変態の濃度が濃すぎて悪酔いしそうなんだが……」「それに関しては本当に申し訳ないとは思ってる」
    3人が軽口を叩きあってお互いの無事を確認すると、誰彼となくまだ宙に張り付けられて弱り切った龍を見る。

    「これで、終わるんだろうか」
    「変なフラグ立てたくないから私は朝まで何も言わないよ」
    「フラグって。……でもま、最後まで気を抜かないほうが良いには決まってるよな」

    珍しくロナルドが素直に同意する。
    今までの傾向からして、どんなところから反撃の一手を出されるのか分からない怖さが「アレ」にはあるのだ。
    最後の最後まで、油断するべきではない。

    そう決意を新たにすると、上空から何かが降り落ちてくる。
    黒い粉雪のようだ。

    「なんだ?」
    ロナルドとヒナイチが上空を再び見る。
    炎が沈下し、氷が溶け、血液が無くなってすっかり刃こぼれした白骨龍の残骸が、ほろほろと体を粒子の様に細かく崩していく。
    黒い粉雪の正体はこの粒子だった。

    これは、消滅反応と見て良いのか?あるいは別の罠か?

  • 18二次元好きの匿名さん22/08/31(水) 00:58:34

    気は抜いていなかった。
    警戒も怠っていなかった。
    ドラルク自身の安全も十分に確保していた。

    ただ、街の皆は祭りの喧騒で楽しそうに笑っていて。
    怖がることは何もなく、自分たちのありように沿ったように動いていて。

    いつもの新横浜のやかましさを保ったまま、スッと溶けた。

    いない。
    誰もいない。

    前のような骨もない。何もない。
    痕跡もない。
    残っているのは賑やかな祭りのBGM。

    誰も載っていない空っぽの山車。
    地面に無造作に投げられた乳首充電機器。
    性癖勧誘のチラシの束。
    ダチョウのロデオに使ったらしい手綱の跡。

    ついさっきまで人が確かにいたのに、全部消えてしまったかのような違和感。

    空を見れば、星一つ見えない暗闇が広がっている。

  • 19二次元好きの匿名さん22/08/31(水) 00:59:35

    「……っ」
    残っているのは、3人と一匹だけ。
    誰も、言葉が出せなかった。

    ある気配臭が、ドラルクの鼻をくすぐる。
    それは、防虫剤や線香、あるいは墓前を彷彿とさせるような、香り高い高貴な気配。

    気は抜いてない、警戒も怠ってない。
    全員に落ち度はない。

    それでも、もしこの事態に無理矢理原因を探すとすれば、それはきっと。


    ドラルクがドラルクだったことである


    ヌヌヌ(つづく)

  • 20122/08/31(水) 01:02:36

    不安の種ネタでもうちょっと何かないかなと調べたら、不安の種ってチャンピオン系列の連載だったんですね。
    初めて知りました。だから先週の本誌オチョナンさんネタがあったのか

  • 21二次元好きの匿名さん22/08/31(水) 11:09:03

    もしかして最後に残った能力ドラルクのものか…?そういえばまだ回収されてないもんな…

  • 22二次元好きの匿名さん22/08/31(水) 12:24:17

    エッ嘘でしょワンキルのちの復活?!
    もう何もかも暴力で解決してしまいたいな
    頑張れみっぴき!!!!

  • 23二次元好きの匿名さん22/08/31(水) 21:20:25

    自分で自分の気配臭嗅ぐことないだろうし貴重な経験かもしれない

  • 24二次元好きの匿名さん22/08/31(水) 23:48:26

    更新乙です!
    「すぐ生き返る」って敵が持ってたら最悪の能力だよなぁ……

  • 25二次元好きの匿名さん22/08/31(水) 23:51:25

    嫌な事辛い事などとっとと忘れて楽しい事を探すドラルクにも、忘れることが出来ない嫌な事がある。

    それは、悪夢に近かった。
    自分が何かに殺されるのだ。
    必死に足搔けど逃げきれず、捕まって、右胸を抉られ、絶命する。
    そんな悪夢。

    いったいどこの誰がいて、どうしてそうなったか、そういった細かい事までは分からない。
    脳内で描く情景はうすらぼんやりとしていて、焦点が合わなかった。

    ただこの悪夢が他と違う点は、ドラルクはこの悪夢をいつ見たのかすら分からないことだ。
    何度も夢に見た、であればまだ説明がつくのだが、ドラルクはこの嫌な情景をなんのきっかけで見たのか分からない。ただいつも頭の片隅にあって、時折ふっと浮かび上がる。
    丁度、ロナルドやヒナイチたちと出会った頃からだろうか。
    まるで緊急時のアラートのようだと思う。記憶がなくとも覚えていろと言わんばかりに、その情景に関しては絶対に忘れさせてくれないのだ。

    何かに自分が襲われていた。誰かが自分を助けようとしていた。

    それ以外に分かる事は、その時感じた激痛と湧き出た強烈な感情。


    その時の感情は、怒り、だったはずだ。

    蹂躙された事による腹立たしさ、何もできなかったことによる無力感。
    このままで絶対に終わらせてなどなるものかという手段を選ばぬ決意。

    だからこそ、念には念を入れたのだ。


  • 26二次元好きの匿名さん22/08/31(水) 23:51:48

    なのに、なぜ。

    無人の街を見て、すぐには状況が受け入れ切れなかった。

    「どういう、事なんだ」
    ヒナイチが、ようやく声をあげる。
    あまりにもあっけなくひっくり返された。

    「……俺たちが有利だったはずだよな」
    「そんなもんこっちが聞きたいわ!この私が立てた作戦だぞ?抜けは無かったはずだ。一度相手の手札は全部完封した。なのに一体どういうことだこの状況は!」「ヌヌヌヌヌヌ……」

    「まだ相手に反撃の手立てがあった?あんだけ街が変態であふれかえっていたのに?あの状況は例えるならばやどりぎのたねに猛毒かましてあられとすなあらしを同時発生させてわるだくみ積んだノーリスクはかいこうせんを連打してたようなものだぞ!?」
    「一部の人間にしかわかんねえたとえ止めろ!要するに「アレ」にとってはすっげえ不利な状況だったって事だろ。それは分かる。最後の方の攻撃の通り全然違ったし、手ごたえはあった」
    「じゃあ、なんで街の人が消えたんだ?」

    ヒナイチが震える声で、今の現状を突きつける。
    二人とも黙りこむ。どれだけ事前の準備が万全だったとしても、事は起こってしまったのが現実だった。

    「やっぱりもう、駄目なのか……?」「それは」
    ロナルドが口を挟んだ。

    「それは、違うんじゃねえか。だってさ、前と状況が違う。似てるけど違うだろこの状況。白骨死体もないし、足元のドロ水っぽいのもない。蝶もいないし……、とにかく絶対違う!」

    確かに、前と全く同じなわけでもない。
    街そのものが壊れた訳でもなければ停電になっているわけでもない。なのに人の存在だけがぱったりと消えている。
    ロナルドがほとんどすがるような気持ちで言った差異だが、それでも無視できない要素ではあった。

  • 27二次元好きの匿名さん22/08/31(水) 23:52:47

    「私はその君たちが言っている最悪の状況に出くわしたことないから、君たちの情報を信じる体で言うけど、前に病院で謎空間に取り込まれた時があっただろ?」
    「ああ、一回ヤバかった時の事だよな」
    「あの時と気配が全然違うんだよね。前の臭いが混ざったゲロ見たいな香水の臭いじゃなくて、こう、高貴で落ち着いた白檀や衣替えをしたばかりの衣服の香りというか」
    「美麗文句でわかりづらく修飾してるけどただの仏前の線香と防虫剤の臭いじゃねえか、そしてその匂いはお前のものだ自分の服でも嗅ぎなおせ」
    「ほんとだドラルクの臭いだ!」「ヌヌヌヌイ!」
    「パボーーーー!!情緒というものがさっぱり分からんのかこの5歳児吸血鬼コンビ!!ムシ〇ーダと私の高貴な香りが同じな訳が無いだろうがなあジョン!」
    「ヌヌヌンヌヌヌヌ(青雲の香り)」
    「線香!!」

    「ドラルクの臭いは置いておいて、気配の質が違うのは確かなんだな?」
    「置いてかれるのに異議を唱えたいがそれは間違いないよ。前のは複数の吸血鬼が混ざったような気配だったから、純度が上がったというべきなんだろうか」
    「それは心臓を回収した効果って感じかな……。あれ、じゃあ本当に弱ってるのか?なのになんでこんな大規模な結界作れるんだ?」
    「あるとすれば、変態で畏怖を取った誰かの能力にただ乗りしたとか」
    「ただ乗り?」
    「そう。「アレ」は畏怖が取れてないから弱体化してるけど、変態吸血鬼にとっては超バフかかってるようなものだからね。あそこにいる誰かを利用すれば結界くらいなら張れるかもしれない」
    「一体誰利用したんだよ。大体あの変態どもに線香の臭いがするような吸血鬼なんていないだ、ろ……」

    そこまで言って、ロナルドははたと気が付いた。
    炎と氷と血の刃以外のもので、まだ回収していないと言い切れる心臓が、ひとつだけある。

  • 28二次元好きの匿名さん22/08/31(水) 23:53:17

    ならこの状況にもうっすらと納得がいった。
    あの場で一番の畏怖を獲得したものは、ゼンラ二ウムでも変な動物でもY談おじさんでもマイクロビキニでもなければ、数多の変態吸血鬼でもない。


    ドラルクだ。

    あの状況を全てお膳立てし、開会の言葉を言ったドラルク自身だ。

    「おいドラルク、線香の臭いの元の方までたどれるか?」
    「できるけど、それが?」
    「そこに連れてけ」「ロナルド?」

    他二人と一匹がクエスチョンマークを浮かべているが、ロナルドには確信があった。

    「心臓が残ってるんだよ。……クソ雑魚ですぐ即死して復活はできるけど、それ以上の使い道がとくにない心臓がな」


    ヌヌヌ(つづく)

  • 29二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 08:11:43

    クライマックスで気分的に盛り上がると同時に
    線香!にフフッとしてしまった
    続き楽しみです

  • 30二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 13:42:20

    線香呼ばわりは笑うのよ
    本当にドラルクの能力は強い敵が持ってると厄介だな…ファイナルバトルも近いかな?続き楽しみにしてます

  • 31二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 18:29:40

    乙です!
    嘘だろ元の能力持ってた人間(orダンピール)が畏怖くてもその能力強化されんのかよ…。そういえばトオルが廃病院で悪戦苦闘してたのと同時期に「透明吸血鬼再び」なんて見出しがあったな…。畏怖集めないでいてくれてありがとうヌリヌリヌンとその他元強力な能力持ちたち…。ってこれ変態パレードの中に心臓回収してない元能力持ちいたら大変では?確かマイクロビキニ催眠騒ぎは心臓の存在知る前の出来事だったよね?
    続き楽しみにしてます!

  • 32二次元好きの匿名さん22/09/02(金) 01:16:33

    祭りのBGM以外人の気配のない静かな街を3人と一匹が歩いていく。

    「あっちでいいんだな?」
    「ああ、こっちの方が気配が濃い」

    人の気配のなさが確かに不気味ではあるが、一種非日常感のある空間で逆に面白くはあった。
    祭りの気配そのままに誰もいない町というのは、不謹慎ではあるが、無人の遊園地のようなワクワク感があるのである。
    無論、「アレ」の支配化だという事は念頭に置いている。それでも物珍しさは変わらなかった。

    「いつもはあんなに賑やかな夜だっていうのに、こんなに静かになっちゃうんだから不思議だね」「ヌー」
    「吸血鬼、うるせえ奴ら多いしな」「確かに迷惑も多いが、こういない街を見ると寂しさの方が感じてしまうな」
    「普段は山盛りのパクチーみたいな存在感の癖にいざいなくなると白湯でも飲んでるかのような物足りなさだ」
    「その二択なら俺は白湯で良い」

    三人と一匹がぽつぽつと喋りながら誰もいない街を歩いていく。
    歩いていくうちに、ヒナイチがぽつりと喋る。

    「心臓を回収出来たら、街は元通りになるんだろうか」
    「……信じるしかないだろ」
    「すぐ死んですぐ復活する能力だっけ?便利だか不便だか分からん能力だな」

    お前が言うな、とロナルドは口を出しそうになった

    「だけど私はあんまり悲観してないよ。ここ不思議と心地いいし。前の病院みたいな変な気持ち悪さはないし」
    「そんなに違うのか?」「全然違うとも。廃墟寸前の限界民宿にいるかリゾートホテルの最上級スイートにいるぐらい違う」
    「俺にはさっぱりわからねえ」
    「気配の話さ、若造には分からんだろうよ。油断はすまいとは思っていても、最後くらいは楽に仕事させてほしいものだね」

  • 33二次元好きの匿名さん22/09/02(金) 01:17:39

    ドラルクがそこまで言って、ロナルドとヒナイチがピクリと何かに反応する。
    「ドラ公」「ドラルク」
    「そしてまあ、今のはフラグだろうとは思っていたさ」「ヌヌ!?」

    心地よかった気配臭の中に、また別の香りが滲みだす。
    後方を見る。
    黒いモヤのような人影が三人。
    一人は炎を出し、一人は氷を作り、一人は血の刃を出している。

    「心臓の場所、どこにあるか詳しく分かるか?」
    「この先ずっと奥の工場の方だ」
    「なるほどな、奪われた場所か。……走るぞ!!」

    3人と一匹が一斉に走り出した。
    最後の鬼ごっこの始まりである。

    ヒナイチが前方、ドラルクとジョンが真ん中、ロナルドが殿という形で3人と一匹は走る。
    三つの影は高速で移動しながらそれぞれに攻撃の構えをする。

    一人が炎弾を数発放ち、もう一人は鋭い氷の矢を数発放ってくる。そのどれもがドラルクめがけてだ。
    ロナルドはドラルクに攻撃が当たる前に炎弾を拳と念動力の組み合わせで吹き飛ばし、氷の矢はそれそのものを念動力で射止めて爆散させる。それによって発生させた手短な瓦礫をモヤ目掛けてぶん投げ、当たる直前で爆発させた。
    「うわっ!!ロナルド君熱い熱い熱い!」「ヌヌイ!」
    「我慢しろ!熱くても止めなけりゃあお前が黒焦げになるか氷漬けの串刺しになるかの二択だ!!ジョンはごめんね!!」
    「ポンペイの石膏像も永久凍土のマンモスはご勘弁願いたい!!そして今度は前方になんか来てる!」
    「任せろドラルク!」

    前方からはいつの間に移動したのか高速で襲い掛かる血の刃の影を真正面からヒナイチは受けきる。
    ただの鉄の刀であれば真っ二つに斬られていたかもしれないが、太陽の炎をまとった剣だとかろうじて受けきる事が出来た。
    ガキン!という音とともに一本の刀で血の刃を受けたあと、もう片方の刀で相手の腰をぶった切ろうとヒナイチは刀を横に振ろうとする。しかし、モヤに当たる直前で相手のモヤもまた、ヒナイチの刃をもう片方の腕とそこから突き破ってきた血の刃で受けきった。
    両者とも手をクロスするような形でお互いの攻撃を受けており、じりじりと鍔迫り合いが続く。

  • 34二次元好きの匿名さん22/09/02(金) 01:19:51

    しかしヒナイチは、あらん限りの馬鹿力で人型のモヤを前方に押し込むとさっと身を翻して、ドラルクとジョンを俵担ぎにして走り出した。

    「ヒナイチ君のもってる刀抜き身で怖っ!!」
    「すまないドラルク!絶対当てないからちょっと我慢しててくれ!ロナルド!!」「おうっ!」
    ヒナイチが後ろに向かって叫ぶと、ロナルドは丁度炎弾を全てはじき返したところだった。
    ロナルドはくるっと踵を返すとそのまま少し前方に進んでいたヒナイチたちの方に全速力で駆け寄り、巨大な蝙蝠の羽を生やしてドラルクを抱えるヒナイチごと、変形させた足でわし掴んで高く飛ぶ。
    地上からどんどん飛んでくる炎弾や氷の矢をすべて複雑な軌道で躱し、目的の工場まで向けて少しでも近づこうと飛び続けた。
    しかし、全てはじきかえし、爆散させていたロナルドにわずかな変化が起きる。
    それまで順調だった飛行の姿勢が、ぐらりとわずかに崩れたのだ。

    「……っ」
    「ロナルド?」「若造?」

    二人がロナルドの様子を窺おうとしたその瞬間、ロナルドの蝙蝠の翼に一つとうとう氷の矢が当たってしまった。
    「ヤバイ!ロナルド君一回地上に降りろ!」
    しかしそのドラルクの忠告は届かず、ロナルドは無茶苦茶な軌道を描いてあえなく地上に落下した。


  • 35二次元好きの匿名さん22/09/02(金) 01:20:51

    落下した場所は、ビルとビルの間の、少し入り組んで人目が付きづらい場所だった。
    目的地から少し離れてしまったがこうなっては仕方が無い。

    「いだだ……」「ニュー……」「2人とも大丈夫か」
    ヒナイチが抱えていたドラルクとジョンの様子をうかがう。
    「私は打ち身をした程度だ。ジョンは丸くなっていたから平気」「ヌン」
    「ならよかった」
    ヒナイチは少しホッとして、次にロナルドの方に視線を向ける。

    「大丈夫か、ロナルド」

    そして二人は異変に気が付いた

    「……ロナルド?」「若造」
    「だいじょうぶだ」

    ロナルドの体は一見無傷だ。さっき受けた傷も即座に再生してしまったのだろう。
    だが、問題は別にある。

    ロナルドの顔色が土気色の様に恐ろしく悪い。
    虚勢では隠し切れない程にぐったりとした様子で、ロナルドは地面に座り込んでいた。


    ヌヌヌ(つづく)

  • 36二次元好きの匿名さん22/09/02(金) 11:26:41

    ロナルドはとうとうHPがやばい感じか?それとも吸血鬼としての力になんかあったのか…
    続き楽しみにしてます

  • 37二次元好きの匿名さん22/09/02(金) 21:34:36

    保守

  • 38二次元好きの匿名さん22/09/03(土) 00:41:27

    「ロナルド!おいロナルド!」「ヌヌヌヌヌン!」
    様子がおかしいロナルドに対してヒナイチとジョンが不安そうに体を揺さぶる。
    ロナルドは意識までは失ってはいないが、それでも若干目が泳いでいて意識がどこか頼りない印象があった。
    「大丈夫だ、ちょっと疲れただけ」「そうは言っても顔色悪いぞお前!……やっぱりさっきの戦いが原因か?」

    なにせあらゆる攻撃をほぼ肉盾となって受けきっていたのである。
    疲労が溜まっていてもなんらおかしくはない。
    「……少し休めば本当に大丈夫だから。だから、気にすんな」
    「気にするなってお前」
    「なーにが大丈夫だ気にするなだこのバカ造大丈夫でもなければヒナイチ君が気にしないわけないだろうがこの自分の強さを誇示するドラミングで全部ごまかす系ゴリラウッホホウホホとでも歌いながら一生強がっているがいいわ」
    ヒナイチが言い返そうとしたところでドラルクが心から馬鹿にしたような声と顔でロナルドの顔を見る。
    ロナルドは明らかにカチンと来ていたがそれでも、手までは出せない。
    「クソ砂後で殺す……」
    「ほーらみろ私に関節技かける元気もないじゃないかだいたい私は砂じゃないしそれに殺すとか意味わかんないんだよね残念でしたー!」
    「わードラルクくんに後でどんな関節技かけようか足がらみがいいかなー!!」
    ロナルドが覇気の無いブチ切れセリフを吐きつつもドラルクは鼻で笑う。そして言った。

    「さっきの被弾した攻撃。治ってないだろ」
    「……」
    ドラルクは心底呆れたように息を吐いた。

    「ヒナイチ君、安心していいよ。これはガス欠だ。蝙蝠の細かい分裂体とは言えあんだけバカスカ自分の分身気軽に爆発させて能力フル稼働、おまけにハイコストの即死と復活を繰り返してるとくればそりゃあいつか限界はくる」
    「それってつまり」
    「血が足りてない」

    ドラルクがそっけなく言った。
    「な、なんだ。本気で焦った……。なら血を飲めば回復するんだな?」
    「多少はね。気力は分からないけど」
    「じゃあ血液パウチを飲めば!」「持ってない」
    ロナルドがまだぼんやりと目が伏せた状態で話す。

  • 39二次元好きの匿名さん22/09/03(土) 00:42:07

    「手持ち使い切った」「……じゃあ私のを!」
    しかし、ヒナイチも自分のハンマースペースを見たが、自分の手持ちはすでに使い切ってしまっている。

    「すまない、私ももう」「だから気にするなって」
    「ヒナイチ君も能力的にコスト高いから仕方ないよ。能力の出力が自分の血液量に依存するし」
    ヒナイチの能力は自傷と燃焼も入っている為、万全に炎を出し続けるためにはこまめな補給が不可欠だった。

    「ならどうする?血液自販機探して壊すか?」
    「ここらへんで売ってる所ねえよ。それに下手に動いて目立ったら見つかるだろ。本当に、大丈夫だって」
    「だがその状態であの影のモヤたちと戦うのは危険だ」
    「ゴリ押す」「そんな所で雑になるんじゃない!」
    「俺は強いから何とかなる」「最後のあがきが一番怖いのはお前だって分かってるだろ!」
    「待った二人とも」
    ドラルクが問答している二人を止め、口に一指し指をあてる。

    「奴らが近くにいる。何時までも休んではいられなさそうだよ」
    「そんな」
    「……」

    ロナルドはヒナイチの言葉にあえて返事をせず、黙って立ち上がった。若干ふらついてはいるが、先ほどよりかは動けている。
    「ロナルド」
    「炎と氷は何が何でも俺の方で引き付ける。ヒナイチは辻斬りを頼む。俺が相手するとちょっと相性が悪いみてえだから」
    「この状態で二手に分かれるつもりか?」
    「分かれた方が暴れられるからこっちも気が楽だ。ドラ公とジョンのお守り頼んだぜ」
    「おまえ!」「ヒナイチ」


    「頼むよ」
    「……!」

  • 40二次元好きの匿名さん22/09/03(土) 00:43:43

    「ずるい」
    ヒナイチが一拍置いて、口を開く。

    「ずるいな、ロナルド」

    「そんな顔されたら、何も言えなくなるだろうが」
    「……ありがとう」

    ロナルドがぎこちなく笑った。


    「あのさー、二人とも良い空気なところ悪いんだけどさ」
    そして、清涼な空気感をぶち壊すのはこの貧弱ガリおっさんである。

    「なぁーーに寝言ぬかしとんのかこのクソバカアホ造永遠の五歳児以下!!ヒナイチ君もこんな顔だけ男のなんかいい空気に流されるんじゃない!!!回復なしで二人相手とかノーだノー!!」「ヌーーー!!!!」
    「ジョンまで怒ってるーー!!」「チンーー!!」

    「で、でも回復の手立てはねえし」
    「そして話は最後まで聞かんかこの戦闘脳筋ゴリラ。すぐに手に入る血ならあるだろうが」
    「へ?」「ちん?」

    ドラルクは、首元のジャボ飾りをぷつっと取り外し、シャツのボタンをいくつか開けた。

    「私」


  • 41二次元好きの匿名さん22/09/03(土) 00:44:35

    「えっ、……え?」
    ロナルドは全く考えたこともなかった提案を振られて思わず二度聞きする。
    「だから私の血を飲めって言ってる」
    だが当のドラルクは当然だろうと言わんばかりの顔で、堂々と構えていた。

    「いやでも、ダンピールの血って、大丈夫なのか?」
    「半分は人の血だぞ?大丈夫に決まっとるだろうが」
    「だ、だけど別に首筋じゃなくても!腕でいいだろ腕で」
    「貧弱に加えて血管細い&血液量足りない族を舐めるな!新人ナースに採血5回ミスられてベテランナースを呼ばれ、それでも血液量が規定に達しなかったから手の甲で強行した驚異の細さと量の無さだぞ!ある程度血管が太くて分かりやすい所選ばんと若造ごときが一発で噛めるわけないだろうが!」
    「そんな事誇るんじゃねえ!!いや、でも、えっと」

    逃避のような質問が尽き、ドラルクに振り返る。

    確かに、今の自分は吸血鬼だ。
    吸血鬼とは本来、血液を吸って自分の糧とする怪異存在である。
    現在があまりにも人工血液だ食料だと発展しているので忘れがちだが、元来人から直接吸うのがふつうである。

    しかしロナルドは自分が誰かの腕なり首筋なりに歯を立てて吸うという行為が、あまりにも遠い話の様に感じられた。

    「……なあ、本当にやるのか?」

    つまるところ、ロナルド自身、いっぱいいっぱいだったのだ。


    ヌヌヌ(つづく)

  • 42二次元好きの匿名さん22/09/03(土) 11:40:29

    うーんここにきてガス欠、あれだけ派手に能力使ってれば当たり前か
    ドラルクの血を飲むにしても精神は人間のままなのに直接飲めるのかな……

  • 43二次元好きの匿名さん22/09/03(土) 21:21:34

    乙です!
    ただのガス欠でホッとしたけど、ここにあるガスは貧弱ダンピール一人分しかなく…感覚が人間のままのロナルドは吸えるのか?てかこの様子だと遅かれ早かれヒナイチちゃんもガス欠しそうだけど量足りる?
    続き楽しみにしてます!

  • 44二次元好きの匿名さん22/09/04(日) 00:21:03

    「いややっぱ無理!!!」
    ロナルドは少しの熟考の末耐えきれなくなった。

    「そんなに嫌か?ロナルド」
    「だってさ、なんかこう……、目の前の鶏絞めて捌いて調理してください的な生々しさがあるんだよ!!そしていきなり首は重い!!」
    「まあ分からんでもないが」
    「確かに最近の吸血鬼、人間の血を直に飲む奴の方が珍しくなってきてるしね」
    人工血液としてリットル販売されてる昨今、変に畏怖欲をこじらせていなければ大体販売されたもので済ませるのが普通だ。100年単位で生きている古い血とかであれば昔ながらの方法にこだわりもするが、若い吸血鬼程人間から直接吸血する機会が少なくなっている。

    「皆昔これやって生きてたの……?マジで……?」
    「吸血鬼なんだから吸血しなきゃアイデンティティもクソも無いだろうが」
    「この街における吸血鬼の呼称はほとんど変態を表すのとニアリーイコールじゃねえか」
    「失敬な!まっとうに生活してる吸血鬼は画面に出てこないのとただ単に我々の変態エンカウント率が異様に高いだけだ!」「変態の呪いにでもかけられてるのかお祓いしてえ」

    「とにかく飲まなきゃどうにもならんだろ、諦めてとっとと吸わんか」
    「それは、そうなんだけど……!」
    「なら」
    ヒナイチがそこでおずおずと提案をする。

    「私も、ドラルクの血飲んで見て良いか?」
    「ヒナイチくんんんん!?」

    「いや、ロナルドが拒否感があるのならお手本を見せればいいのではと思ったのと、私も正直血の残量が不安だし一回吸血してみたい」
    「好奇心の方が動機として強くないかいそれ!?」
    「とにかく時間があまりないんだ、首傾けてくれ、ドラルク」
    「そしてこちらは躊躇なさ過ぎて私が困惑するんだが!?」「ヌ、ヌーー!!」
    「待って俺を置いてかないで!俺も一緒にやるから!!」
    ロナルドがほぼ半泣きで、動きに一切の躊躇を見せないヒナイチに置いてかれまいとドラルクの肩を掴む。
    「二人同時に来るなバカ!!飲みすぎんなよ血液量少ないって言っただろあ、アアーーーー!!!」
    「ヌーーーー!!!!」

  • 45二次元好きの匿名さん22/09/04(日) 00:21:41

    完全に勢いで吸血されたドラルクの叫びが響く。
    こうして、事前情報なしで見ると見目のいい男女に首から生気を吸いつくされてガリガリに痩せてムンクの様に叫んでいく男という昔のゴシックホラー映画にありそうな描写が耽美さも欠片もなく展開されたのであった。



    「で、感想は?」
    「なんというか」「うん」

    二人に貧血まで行かずともギリギリの量の血を吸われたドラルクは首を抑えたまま、憮然とした様子で五歳児たちに感想を聞く。

    「滋味な味」「胃に優しいおかゆ」
    「私の血液の味の感想なんだよねそれ?」「ヌー?」
    「ジョン、興味本位で私の血を舐めないで」「ヌェッ」

    「人工血液で血は飲み慣れてきてはいたが、お前の血凄いあっさりというか、身体によさそうな感じなんだ」
    「脂っぽさが一つもなくてマジで薬膳料理っぽい」
    「褒めてるんだか貶してるんだがさっぱり分からないんだが???」
    ドラルクがブツブツ文句を言う中、二人は苦笑いで返した。

    (誤魔化せたかな)(気づかないならそれでいいだろ)

    味の感想で誤魔化してはいるが、実際のところ二人とも少しだけ、危なかった。

    首筋に牙を立てるという行為は、思っている以上にすんなりと行えてしまった。
    危惧していた血管がどこにあるかもほとんど直感でわかり、牙を使った吸血方法もとくに迷いはなかったのだ。

    だがそれ以上に困ったことがある。
    実際に牙を使って吸血して分かったが、本能的に、吸血鬼化の為の血の注入の仕方もなんとなく分かってしまったのだ。

  • 46二次元好きの匿名さん22/09/04(日) 00:22:37

    今飲んでいる血を自分で取り込んでから再び血として送れば、目の前の存在は吸血鬼化する。
    ましてやドラルクはダンピールである。
    人間ほどの吸血鬼化耐性は持っておらず、一発でも食らってしまえば、間違いなくこちら(吸血鬼)側に染まる。

    そういう意味で少しだけ、噛んでいる最中に魔が差しそうになった。

    「……健康的という意味では褒めてるんじゃないんだろうか。よかったなドラルク」
    「風邪ひいたときに飲む味」
    「若造は牛乳のお湯割りでも飲んでろ」
    三人は何事もなかったかのように軽口で応酬しあう。
    相手を吸血鬼化させて血族を増やそうとする本能な欲求部分と、ドラルクを元に戻したいというほんの少し滲む個人的な欲。
    それらを感じつつも、あえて何もせず何も言わず、二人はただいつも通りに会話した。

    「あっ、でもロナルド大分顔色が良くなってきたぞ」「私の顔色は悪いがな」
    言われてロナルドが自分の体の調子を確かめる。
    確かに重かった体がだいぶ楽に動かせている。こうも回復具合が露骨だと笑えてくる。
    「血さえあれば何とかなるんだからこの身体ほんと現金だよな」「今は便利だと思おう」

    ロナルド達が再び周囲の気配に集中すると、もう近くにまで敵が差し迫っていることが分かる。

  • 47二次元好きの匿名さん22/09/04(日) 00:22:52

    「そろそろ来そうだな。ヒナイチ、さっきの作戦でいけるか」
    「ああ。ここから先はスピード勝負だな」

    「じゃあ私とジョンはヒナイチ君と?」
    「ああ。私の命に代えても守るから、頑張って走ってくれると助かる」
    「ヒナイチ君そんな重いことしなくていいから!!若造も無理そうなら逃げろよ!」「ヌー!!」
    「無理じゃねえから気にすんな」

    三人と一匹が体制を立て直し、再び行動しようとしたところ丁度タイミングよく黒いモヤの追手たちが現れる。

    「さあ、鬼ごっこの再開だ」


    ヌヌヌ(つづく)

  • 48122/09/04(日) 00:31:49

    せっかく吸血鬼になったのだから一回くらいは吸血シーンを書いてみたい!と思って書いたんですが、気をつけないと変にエッチな感じになってしまうのでかなり困りました。ギャグにできたかなあ。
    喋り声が!連続でクソデカかったと思いますがギャグマンガノイズキャンセリング機能により敵側には大きな声は自動ミュートされてたと思ってやってください
    食事と繁殖の為の行為がこれだけ近しいと、人間の恋人相手に魔が差してしまう吸血鬼もいそうな感じしますね

  • 49二次元好きの匿名さん22/09/04(日) 11:18:24

    ドラルクの血の味の感想草、すごい飲みやすそう
    魔が差さなかっただけ二人共偉いな……

  • 50二次元好きの匿名さん22/09/04(日) 22:07:07

    血中コレステロールが低すぎて健康診断引っかかるタイプとみた

  • 51二次元好きの匿名さん22/09/04(日) 22:07:16

    2人の感想読んであー…ってなった
    まあ目の前で死なないと思ってた奴がガチ死して、目の前に元に戻せる可能性があったらそら試したいと思っちゃうよね…

  • 52二次元好きの匿名さん22/09/05(月) 00:15:26

    3人と一匹が一斉にまた走り出す。
    今度はお互いに少しずつ距離を離しながら、後方にいる炎と氷を足止めするような形でロナルドがひたすらに攻撃をさばいていく。

    氷と炎を操る黒いモヤは、時には地面を凍らせ、時には上空から炎の雨を降らせ、それぞれの攻撃が呆れるほどの広範囲で湯水のごとく湧いて降ってくる。
    ロナルドが念動力で爆風を抑え込み、余波で砕けた跳弾のような瓦礫たちを蝙蝠の分裂体を使ってうまくヒナイチやドラルク達に当たらないように調整する。
    血を飲んだ効果が如実に表れて、動き自体は全快とは言えなくても大分元のキレを取り戻していた。
    ヒナイチも同様である。

    ただ2人同時に血を吸われて貧血気味のドラルクだけが例外的に青い顔をして走っている。
    (吸血鬼じゃないくせに一番吸血鬼みてえな顔色してんな……)
    気になるか気にならないかで言えば少々気になるが、何かあったとすればヒナイチがまた抱えて走るだけだ。
    ロナルドは2人と一匹に危害が及ばない事だけに集中する。
    他に意識を割かれていてはあの猛攻をさばき切れない。

    (さてと)
    2人と一匹を守り続け、ある程度先に走っていくのを確認した時点でロナルドは走るのを止めた。
    「ロナルド!?」「ヌヌヌヌヌン!」
    「先行ってくれ!あいつらは言ってた通り足止めする!」

    場所的にも高い建物が多すぎず、空間も開けている。
    ここで足止めする。

    「分かった!すぐに心臓を取って帰ってくるから、なんとかこらえてくれ!」
    「ちゃんと良い子に留守番してなさいよ五歳児!……ゴホッゲホッ!」「ドラルク無駄に煽るから」
    「そこの貧血直前のガリガリクソ野郎は後でブレーンクローな!!」

    最後に軽口を叩いて、ロナルドは先行組を見送った。

    そして、改めて空を見る。

  • 53二次元好きの匿名さん22/09/05(月) 00:16:41

    (あと何回再生しても大丈夫かな)

    頭上の光景を見て、ぼんやりと考えた。

    自分に殺意を持って襲い掛かってくると考えなければ、いっそ幻想的な風景だった。

    天上から降ってくるのは猛スピードでこちらに向かって振ってくる、流れ星のような炎の軌跡。
    炎の色は赤色などではなく、そのすべてが青い炎。
    空がまるでオーロラの様に帯状に炎で覆われ、綺麗に波打っている。

    まだ炎から距離があるというのに、気を抜けば顔面がちりちりと燃えてしまいそうな高熱に包まれていた。
    だというのに。

    足元はいつの間にか白い霜で凍り付いており、靴が凍り付いて動かせない。
    もっと言ってしまうと、下半身部分がすでに芯から凍っている状態に近く、下手に動かせば自分の体がボロボロと崩れてしまいそうな確信があった。
    ロナルドが足元の方に視線を向けると、地面一体に氷の結晶が張り付き成長し凍土の様になっている。

    灼熱地獄と氷結地獄。
    二つの異なる地獄が矛盾もせずにロナルドに襲い掛かってきている。
    ここでは物理法則など意味をなさない。
    あるのは、畏るべき夜の怪異たちがロナルドという規格外の怪異を自分たちの畏怖で塗りつぶしてしまおうとする衝動だけ。

    ロナルドは深く息を吐いた。
    人間だったら高熱の空気で喉が焼け付き、肺が使い物にならなかっただろう。
    だが今のロナルドは自分が人間ではないと正しく認識していた。

    意識しすぎると体が元々の人間としての意識に引っ張られてしまうが、そんな事考えなければなんてことない。
    今の自分は、ようするに現象に近いのだから。
    ようやく、それが今の自分の当たり前の事として受け入れられるようになってきていた。

  • 54二次元好きの匿名さん22/09/05(月) 00:17:30

    さっきの魔が差しそうになった事実を思い出す。
    すんなりと血液が飲めてしまった自分にも驚いたが、相手を吸血鬼にしてしまえと、するっと考えが浮かんでしまったことにも驚いた。
    もちろん浮かんだだけでやったりなどしない。ただ段々自分が吸血鬼側の価値観に染まっていると言う事だけが、ひしひしと分かる。

    (そのうち畏怖欲とかもわかるのかな)

    できれば変態はこじらせたくないと心の底から願う。もっとも、そんな心配はすべては生還してからの話だが。

    燃焼と氷結、それぞれの畏怖が自分という怪異を蝕んでくるのが分かる。
    このまま何もしなければ、ヒナイチやドラルク達に危害が及ぶ。
    じゃあどうこれらに対抗するべきか。

    「……畏怖は塗り替えられるんだっけな」

    眼前にまで迫る炎の雨を見上げながら、ロナルドは呟く。

    最近一番間近で見た畏るべき出来事は何だったろうか。たしか。

    ロナルドは一つ強烈に記憶に残っている出来事を思い出す。
    白骨の龍に襲い掛かる、黒い西洋竜。

    (ああいう感じなら、きっと__)

    ロナルドのシルエットが、大きく揺らいだ。





    ヒナイチとドラルクは背後からの巨大な爆発音や轟音に後ろ髪をひかれながらも、それでも振り向かずに前だけを向かって走り続ける。

  • 55二次元好きの匿名さん22/09/05(月) 00:18:06

    「ドラルク!あとどれくらいだ!?」
    「もう少しだ!1キロも無いよ!」
    ドラルクの返事を聞く暇もなく、ヒナイチがほとんど勘でドラルクの後方の空中を斬って捨てる、
    炎の刃によって切り捨てられた血の刃の残骸がゴトリ、と落ちた。

    「ヒィっ!近い!!」「ヌヌイーー!!」
    「ドラルクもうちょっと私のそばに寄れ!攻撃がどこから来るか分からない!」
    ヒナイチが珍しくピリピリとした様子で指示をする。

    ここから先、遅れもミスも許されない。

    ドラルクがヒナイチの指示に従いながらなんとか走り、そして叫んだ。

    「ヒナイチ君!あそこだ!あそこに気配の元がある!」

    ドラルクの指さす方向、まだかろうじて残る工場跡地に、黒い何かのシルエットが遠目ながらに確かに見えた。
    「よし!このまま一気に行けば__」

    しかし、ヒナイチが言葉出そうとした次の瞬間、刀を持ったヒナイチの左手首ごと切り落とされ、大きく遠くへと吹っ飛ばされ、刀の切っ先が地面に突き立てられる。

    「「!?」」

    目に見えぬ早業、ヒナイチも反応しきれなかった。
    先ほどよりも、動きのキレが良くなっている。

  • 56二次元好きの匿名さん22/09/05(月) 00:18:30

    「ヌヌヌヌヌン!」「大丈夫だジョン」
    「どう見ても大丈夫じゃないって!」
    「本当に大丈夫なんだ。ほら、また生えてきた」

    ヒナイチが切り落とされた左手首を見せる。
    回復スピードはロナルドと比べるとやや遅くはあるが、それでも確かに手首が再生され始めている。
    ヒナイチはその様子に複雑な表情を浮かべつつも、すぐに敵のいる気配の方を睨みつけた。

    「どうやらよそ見をしている暇はないらしい。まず、あの辻斬りを倒さないと」

    ヒナイチが再生した左手を使い、一本だけになってしまった刀を両手で握って構える。

    ヒナイチの睨みつけた先、なにもいないように見えた空間から、黒いモヤが出てきて人型を作られていく。
    その人型はやはり、手に赤い血の刃を持っていた。


    ヌヌヌ(つづく)

  • 57122/09/05(月) 00:20:49

    明日は私用のためお休みです。

  • 58二次元好きの匿名さん22/09/05(月) 11:50:15

    ロナルドは竜になるのかな?竜VS竜は熱い
    ヒナイチも刀対決かーどっちのバトルも激熱!続き楽しみにしてます

  • 59二次元好きの匿名さん22/09/05(月) 21:50:26

    保守

  • 60二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 08:26:58

    ロナルドくん竜に変身しようとしている…?
    すごく畏怖い!!

  • 61二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 19:36:01

    保守

  • 62二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 00:02:10

    張り詰めるような緊張感の中で互いに動かず、動けず、ヒナイチは刀一本と己の能力を頼りに目の前の敵に相対する。
    ドラルクとジョンを守りながら、刀一本でどこまでやれるか。

    いや、どこまでやれるかではない。
    今度こそ守るのだ。

    構える。
    姿勢を低く、片足をわずかに後ろにずらし、重心を変え、自由になった片手を刀の腹を撫でるように切っ先まで手を伸ばす。刃は燃えだし、薄暗い広場に新たな光源が広がる。
    息をひそめ、眼前を見据え、瞬き一つ惜しみながら、相手の出方を待つ。

    辻斬りもまた、両の手のひらから刃を出し、隙の無い構えでじりじりとこちらの出方を窺っている。

    下手な出方をすれば切り捨てられる。ゆえに、慎重に。

    けれども大胆に。


    次の瞬間。
    二人の刃が交わっていた。
    辻斬りは炎ゆえにヒナイチの刀を切り捨てられず、ヒナイチもまた、血の刃を燃やし尽くすことはできず、互いに鍔迫り合いの様に押しつ押されつの攻防を繰り広げている。

    「ヒナイチ君!?」「大丈夫だ!!お前は自分の事に集中しろ!」
    そうは言うがドラルクには全く今の攻防を目で追えなかったのだ。
    身のこなしが完全に達人のそれで、襲ってこられたらきっとドラルクでは何もできずに斬られるだろうと確信できた。

    ヒナイチは鍔迫り合いを押し出すと刀を一度斜め下に振り、そのまま横薙ぎ、しかいなされる。反撃として向かってくる血の刃を首を傾けてかわし、辻斬りの手首に足蹴りを鋭く入れて辻斬りの本体を大きくのけぞらせた。

    (取った!!)

  • 63二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 00:02:47

    ヒナイチは体を崩した辻斬りに向かって刀を持った両手を振り上げる。そしてそのまま両断しようとし__。
    (!?)
    直前で攻撃を止めてバックステップで大きく辻斬りから離れた。
    ヒナイチがそのまま攻撃していたらいたであろう場所に辻斬りの血の刃が宙を斬る。

    体制を崩した筈なのになぜ攻撃を?と考えるが、辻斬りの背中から巨大な血の刃が体を支える柱として生えていた。
    全く、器用な事だ。

    (あぶなかった……!)
    殆ど剣士としての直感で避けたが間一髪である。
    この場では、別の畏怖が場を支配しているせいかヒナイチの炎の威力が薄い。だがそれは辻斬りも同様のようであった。
    ならばあとは、純粋な刀の腕が勝敗を分ける。

    ヒナイチは気を締めなおすように息をのんだ。



    「あんなん居合切り大会なんぞ付き合ってられるか!私は逃げるぞ!!」「ヌヌゥ!?」
    一方ドラルクはバチバチ戦いあっている二人?から離れて走り出していた。

    「ヌヌヌヌヌンヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ!!」
    ジョンが抗議の声をあげるようにドラルクの頭をぺしぺしと叩く。もちろんドラルクも本当に逃げているわけではない。
    「ヒナイチ君のそばにいた方がいい事は分かっているとも!だからと言ってあの全くもって手出しできない場所で棒立というわけにもいかんだろ!!」
    「ヌヌヌヌヌヌヌヌヌンヌヌヌ?」
    「まあ見ていてくれたまえ到着すれば分かる!」

    ドラルクは後ろの切りあいを気にしながらも、目的のものを探す。
    「確かここ、あった!」

  • 64二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 00:03:34

    ドラルクの探し物は飛んで行ってしまったヒナイチのもう一つの刀だった。地面に深く突き刺さっている。
    「よし、これを取ってヒナイチ君の元に持っていけば……!」
    ドラルクは刀の柄を掴んで引っ張る。

    「ん、結構硬いな?グ、グッ……!」

    しかし刀は動かない。

    「ンビャッラハァアアアアア!!!」

    動かない。

    「ヴァボオオオオオ!!!!」

    動かない。

    「はぁ、はぁ……!」

    ドラルクが奇声をあげながら全力で引っ張るが全く持って動かない。
    おまけに先ほど吸血されたことと全力疾走したことも影響し軽い立ち眩みを起こし始めていた。

    「だ、駄目……無理……、硬い時のごは〇ですよですら苦戦する私にさらに貧血気味というデバフも足されて湧き出る元気もない……!」
    「ヌヌヌヌヌヌー!」
    「ジョン、この刀なんとかして抜けない?ローリングとかで衝撃与えたらいけそうじゃない?」
    「ヌ、ヌー?」
    「無理そう?そっかあ」

    ドラルクは今の自分にはほぼ何もできない事を悟る。
    索敵はできても実行にはまるで関われないのがなんとももどかしかった。

  • 65二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 00:04:44

    「後はロナルド君の助太刀を願うくらいしかできないが、あの若造今どうしてるんだ?」
    流石に倒されてはいないだろうがそれでも気になりはする。

    何とかこの場から分かることは無いだろうかとあれこれロナルドのいるであろう方向を凝視していると、空から爆音とともに火炎の雨が降り、地上からはクソデカ氷の結晶も生えてきているのが見えた。

    「え?」「ヌ?」

    「だ、大丈夫なのかあれ?黒焦げゴリラか凍結ゴリラになってないよね?」「ヌヌヌヌヌン……」
    気配はばっちりしているので生きているとは思うが、流石にあの攻撃は不味くないか?
    ドラルクの背筋が軽く寒くなっていると、頭上からさらに轟音が鳴り響いてくる。
    ドラルクは頭上を見る。

    「……なんだあれ?」

    それと、目があった。





    ロナルドが自分の体を大きな存在へと変えようとするが、想像以上に苦戦していた。

    (なんだこれ、うまくできねえ)
    蝙蝠やサメの時とは明らかに難易度が違った。
    というよりも、想像している形を取ろうとすると形が霧散してしまう。

  • 66二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 00:05:53

    (やめたほうが良いのか?同じどでかい系ならサメでも飛ばすか?)
    ロナルドがチェーンソーが飛んできそうなB級映画的シチュエーションに挑戦しそうになっていると、突然耳元から声が聞こえた。

    『やりたい?』
    「」

    『竜、やりたい?』

    (誰???いやこんなことできるのドラルクの爺さんだろ落ち着け、声も聞き覚えあるだろパニくんな!でも正直耳元で突然ささやかれてパニくんなは無理があると思う)
    ロナルドは深く息を吸う。

    「やり、たいです」
    『オーケー。レンタルする』
    (やばい俺ハイって言っちゃいけない系の契約しちゃったかもしれないたすけて)

    しかし、ロナルドの内心の後悔とは裏腹に事は進んでいく。

    『目、閉じて』

    ロナルドの瞼が、自分の意思とは関係なくゆっくりと落ちていく。
    (あ、あれ?目が、開けらんねえ)

  • 67二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 00:06:09

    『3、2、1、ハイ』


    次の瞬間、ロナルドの眼前に人気が無く、火の雨が降りそぞぎ氷の柱がそそり立つ美しい地獄の折衷案のような新横浜の街が見える。

    (今、俺どうなって……!?)
    自分の体をきょろきょろと見回すと、明らかに人ではないシルエットを取っていることが分かる。

    あの時、あの暗闇で確かに見た、白骨龍と戦っていた黒い竜だ。

    ロナルドはさらにヒナイチたちが向かったらしい工業地帯の方に目を向ける。

    誰かと、目が合った気がした。


    ヌヌヌ(つづく)

  • 68二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 11:30:19

    保守

  • 69二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 19:07:36

    乙です!
    幼少の頃から剣道やっているヒナイチちゃんVS血の刃(邪眼使われた奴の反応から人格はナギリではなく竜の骨と予想)…確かに決定打に欠ける…!
    ということで隊長も策を弄するが…クソザコカナリアおじさん…!
    龍への変身はD一族しかできないってマジだったんだ…って御真祖様!レンタルOKだったんですか龍への変身って?!
    続き楽しみにしてます!

  • 70二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 23:35:06

    ヒナイチの刃を介した駆け引きは続いている。
    お互いにまだ決定的な負傷はなく、一進一退の攻防が続いている。

    どちらかの集中力が切れた時が負けともいえる勝負で、ただ現象の様に血の刃を出しているモヤには疲労という感覚は無いかもしれないと考えると、ヒナイチの方が不利と言えなくもなかった。
    だからと言って、勝ちを譲るつもりなど毛頭ない。
    刀が一本しかなかろうが体制的に不利であろうが、目指すのは勝利だけだ。


    戦いながら、今日の街の賑やかさを思い出す。

    昔はいつもの変態どもに対し、迷惑だ、なんで私たちがこんなことを、など色々不満も考えたことがある。
    特にドラルクが来た辺りなどが顕著だ。
    ヒナイチの人生設計は、アイツの存在でまるまる狂ってしまった。
    それはきっとロナルドもそう。

    ドラルクの事を偉大な吸血鬼などと微塵も考えたことは無いが、下等吸血鬼が多く出張り危険な吸血鬼も多かったこの街の空気を変えたターニングポイントは?と尋ねられたら、それはきっと多かれ少なかれドラルクの影響があったことは否定できない。

    今となっては海千山千の変態吸血鬼どもが集まり、街はいつも祭りのようなバカ騒ぎだ。


    それが、完膚なきまでに壊れた。
    壊れてしまった。

    予兆は確かにあったのに。
    だが人というのは不思議なもので、おかしいと感じていてもまだ日常に戻ってこられるとどこか願ってしまう。
    まだ大丈夫、まだ大丈夫、まだ、まだ、まだ

    いつものように変態吸血鬼が現れたら安心したあの時期の事は、あまり思い出したくない。
    だんだん静かになっていく街も思い出したくない。

  • 71二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 23:35:52

    自分が、たとえ変態やダチョウなどに迷惑をかけられようと、あの賑やかな街が思っていた以上に好きだったことにようやく気が付いたのもあの頃だ。

    不安に駆られると見張りとは別に意味もなく事務所に顔を出したこともあった。
    事務所に行けばドラルクが何かしらおやつをくれたり、ジョンとクッキーを取りあったり、ロナルドと他愛もない話できる。そうすれば、街がおかしくなっていても、私の日常は保たれるから。

    さっきドラルクを吸血した時。

    すこしだけ、魔が差しそうになった。
    ドラルクが吸血鬼に戻れば、また、私にとっての日常が取り戻せるかもしれないと。
    でも、このドラルクは別人だ。

    吸血鬼じゃない、砂にもならない、すぐ死なない、元々の私たちの事を覚えていない。
    別人だ、別人なのだ。ヒヨシ隊長の時のように、記憶を無理矢理思い出させることも出来るかもしれないが、それは私たちのエゴでやっていい事じゃない。

    取り戻せたら、あの時見殺しにした罪悪感が無かった事にできるかもしれないなどと考えてはいけない!
    見殺しにした原因は、確かに自分にもあるのだから。

    ……あの時ロナルドは、どう思ったのだろう。

    一緒に吸血をした時、一瞬だけロナルドと目が合った。
    それで、少しだけ血迷っていた自分を抑えつけた。


    やめとけ、と言われた気がしたのだ。

    情けない。
    ここまで来て、まだ少しだけ逃げたい。
    そうやって目を逸らした結果が、あの惨状だというのに。

  • 72二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 23:37:00

    今は、あの見殺しにした時とは違う。
    原因が分からず、対処法も分からず、ただ不安を抱えていたあの頃と。
    色んな人の協力のおかげで、もう一度だけチャンスがもらえた。


    ならば、命を懸けてやり抜くまでだ。

    何回目かもわからぬ切りあいが始まる。
    やる事は変わらない。
    ただ自分の最善を尽くして相手を出し抜くだけだ。

    空で轟音が鳴り響き、ヒナイチは空を見る。

    (あれは)

    巨大な黒い竜と、目が合った気がした。





    ロナルドにとって、ヒーローとは兄の事である。

    何でもできて、誠実で、信頼されて、そして人の為なら傷つくことを恐れない、そういう理想を形にした者が兄だと思っている。
    だから昔は兄という理想像を必死に追った。
    追いかけても追いかけても何かが違う気がして、比較して違いに打ちのめされて、そしてまた修正して、それでも違うからまた無茶をして、そういったことの繰り返しだった。

    元から自分にあまり頓着しない方だった。
    それこそ自分の名を残す欲はあまりなく、失われたレッドバレットの代わりを務められればという気持ちでやっていた。
    いまだってなんとか退治人業をやれてはいるが、それでも未熟な所は多い。

  • 73二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 23:38:08

    そういうがむしゃらに理想を追っている時。
    よりにもよって来やがったのが、あのクソ雑魚吸血鬼だった。

    奴は、ドラルクは恐るべき速度で事務所に居座り、生活に浸食し、おちょくり、数々のトラブルを生み出していく。
    ジョンとフクマさんの方針が無ければとうに追い出していた筈だ。

    そして何かしらのトラブルや変態吸血鬼が増えるたび、ロナルドは自分の中の理想像と現実がバキバキに乖離していくのが分かる。
    気が付けばすっかり方向性の軌道修正が不可能となっていた。
    かつてややダーティな雰囲気で売っていた兄貴をお手本にしたカッコイイロナルド様像は実質的に死んだのだ(たまに復活はさせるが)。

    なにせドラルクが四六時中いると取り繕う事が出来ない。
    変なドッキリは仕掛けてくるし容赦なく仕事の邪魔をしてくるしで、カッコイイロナルド様だけでは対処がしきれず、うっかりと素が出る。
    最初の頃はイメージキープを心掛けていたが、うっかり素が出るが頻発し、最終的に事務所内で取り繕う事を諦めた。
    それで何が残ったのかと言えば。


    退治人を始めるか始めないかくらいの頃のロナルドが、理想像とは違う取り繕う事が出来ない部分が、また少しづつ現れるようになっただけ。

    その状態で仕事をしても、案外皆に受け入れられてしまう。
    レッドバレットと俺は、全然違うのに。

  • 74二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 23:38:30

    そういう意味で、ドラルクが自分の人生を大きく狂わせたのは確かだった。
    ヒナイチもきっと、同じような事を言う気がする。
    エリート街道をばく進していた筈なのに、今では立派な事務所のクッキーモンスターである。

    でもロナルドは、今のヒナイチの方が最初に会った時よりもずっと話しやすい。
    何かが違えばもっととっつきづらい関係だったのかもしれない。そしてそれは少し寂しいとも思う。

    だから、その、なんというか

    ……色々と文句を言いたいことは多大にあるし、納得していない、キレたい事だってもちろんあるが、それでも。


    あの事務所の形には、確かに愛着が、あったのだと思う。


    ヌヌヌ(つづく)

  • 75二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 09:46:03

    ぬしゅ〜

  • 76二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 19:22:37

    応援の保守

  • 77二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 00:15:35

    ロナルドの事務所というのは、一人で作られたものじゃない。

    最初は確かに一人だった。
    あの事務所は自分で立ち上げた自分の城で、兄のようになるための一歩だった。

    兄だったらきっと事務所だって持つはず、兄だったら自伝だって書くはず、兄だったら。
    兄だったら。

    それはいまだに心の根底ではどこか思っている。
    なのにその理想にバカでかいノイズをまき散らしてずかずかと入り込んできたのはあの吸血鬼だ。ムカついた。追い出したくても追い出せず、それに慣れ。
    事務所にいるやつらがちょっとずつ増えて、退治以外のへんな依頼も来るようになって、街は変態であふれ、またそれに慣れ。

    理想の形をしていた事務所という箱はだいぶ歪に変形してしまった。
    そしてその清濁併せのんだ状態が、別に嫌じゃなかった。

    あの事務所の空気は、事務所にいる連中ももちろんだが街の雰囲気や依頼人も含めて作られていたものだったんだと思う。
    別の街では絶対に再現できるものじゃない。

    だから。

    だから、こういう形で失うなんて思っていなくて。
    自分を構成するものが皆無くなって、それが突然すぎて何もかもついていけなくて。

    だって、あんな事件起きるなんて誰が想像できるっていうんだ。
    犯人も原因もよくわからない怪死事件で皆いなくなって、怒りをあげようにもやり場が分からない。
    振り上げた拳を振り下ろす場所が無い。

    あの状態で一人だけ生き残ったところでどうなるんだ。

    今の退治人ロナルドを象徴するあの事務所は、どんなものが欠けても成り立たないのに。

  • 78二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 00:16:17

    ……こうしてリベンジが許されて、「アレ」に対して恨みや憎しみに満たされているかというと、そうじゃない。
    何が何でもやり返してやると息巻いてるかというと、そうじゃない。


    自分の感情なんかよりも、皆が無事であればいい。

    街が何事もなく続いてくれるのが、一番いい。

    だからこそ、今度こそもれなく全部取り戻すのだ。





    巨大な黒い竜が空を舞う。
    火の粉が渦巻き竜に対抗するような巨大な形を作り、氷がそれを助ける。

    形作られた東洋竜が、真っ向から黒い竜に襲い掛かり2色のブレスを吐く。

    火炎と冷気の放射によって、身体が燃える、芯まで凍る。そのどれもが酷い痛みを伴う。
    しかし黒い竜は、ロナルドは引かない。
    二つの重なる攻撃で体が壊れては再生し壊れては再生し、それを繰り返しつつも己の巨大な竜の手で敵対する東洋竜の首根っこを掴む。
    炎と氷、あるいは冷気でできた掴みようがないその龍ですらも、今のロナルドなら掴むことが出来る。
    恐れと畏れ、怪奇と怪奇。
    互いに引くことのできない戦いで、ロナルドは、黒い竜は東洋竜ののど元に一気に食らいつき、のどにあった筈の炎を食い破った。

    すると東洋龍が痛みに悶えるかのようにじたばたと暴れる。よほどたまらなかったのか、ロナルドが掴んでいる箇所の炎の威力がさらに増した。
    とても掴んでいられるようなものではない。だが掴み続ける。
    先ほど吸血をしたというのに、自分の寿命が凄まじいスピードで減っているような感覚がした。もはや喉の渇きなど言っているレベルではない。それでも、この手を放すことなどけしてしない。

  • 79二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 00:17:09

    東洋龍はほとんどロナルドに巻き付くような形で縛り上げ、全身が炎に包まれる。
    おまけに羽の部分は冷気によって凍り付き、上手く羽ばたくことが許されない。
    構わない。
    それでもこの身体は飛ぶことができる。今の身体であれば無理がきく。
    それがたとえ削ってはいけないものを削ってようやく得られるものだったとしても、この後自分がどうなろうと構いやしない!

    ロナルドは食らいつく、今度は腕を、腹を、__心臓を!

    胸部に勢いよく食らいついた時、ガリッという確かな歯ごたえを感じた。
    東洋龍の抵抗が最後の足搔きと言わんばかりに強くなり、巻き付きながらじたばたと暴れ、何としてでも黒い竜を焼き殺そうと必死だ。

    全身火だるまにあげられ暴れられ、胸部を食らいつき続けるのが酷く難しい。
    だが離さない。離してなどやるものか。悪夢を終わらせたい。ちょっとでもあの終わりの可能性を残したくない。

    終わらせる、終わらせてやる、終われ!!

    もう意地の問題だった。

    全身火だるまと即時再生を繰り返した弊害でロナルドに意識があるのかも怪しい、だが、執念だけで掴んだ確かな歯ごたえを放さず、あらん限りの力で引っ張った。

  • 80二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 00:17:20

    ブチッ、と何かを食いちぎった感触がした。

    口元に硬い二つの感触がある。

    (心臓が取れた__!?)

    ロナルドの表情がすこし緩みそうになったその瞬間。


    グサリと、ロナルドの胸部に、何かが刺さった感触がした。

    胸元を見る。
    巨大な氷の柱が心臓部分に突き刺さっている。

    東洋龍の、最後の最後の足搔きだった。


    2体の竜が地面へとゆっくりと落下していく。

    心臓を食い破られた龍と心臓を貫かれた竜。
    互いの急所を突いた2体は、まるで力尽きたかの様にピクリとも動かず、街へその巨体を衝突させた。


    ヌヌヌ(つづく)

  • 81二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 11:07:14

    竜同士のバトルはド派手で映えるなとか文字通り命燃やして戦わないと勝てないのかとか思ってたら相打ちー!ロナルドは無事だろうか…続き楽しみにしてます

  • 82二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 11:08:18

    あああロナルドくーーん!!!!!!!
    無事であってくれ………

  • 83二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 21:44:30

    空に現れた竜たちを背景に、ヒナイチたちはヒナイチたちの戦いを続けていた。

    あの竜はきっとロナルドだ。どうして竜の形を取れているのかさっぱりわからないが、それでも確信できた。
    竜と龍がもつれ合い、骨肉を削る戦いを繰り広げている。

    (あんな戦い方して大丈夫なのか!?)

    どう見ても尋常の戦い方ではない。
    削ってはいけないモノまで削っているとヒナイチには分かる。

    どうしよう 助けに行くべきだ 行ってどうする? 自分では足手まといになる

    色々な考えが頭を巡るが、とっさにヒナイチは刀を眼前にまであげた。
    血の刃の一撃が間一髪で刀によって防がれる。
    「ぐっ……!」
    目の前の敵は悠長な思考など許してはくれない。

    刀での斬りあいは一向に終わりを見せない。
    両者ともに紙一重で躱し、刃を交わし、また体制を立て直すの繰り返しだ。

    (早く終わらせないと……!駄目だ、落ち着け。焦ったら負ける!!)
    繊細な集中力を必要とする場面でよりにもよって焦りが湧き出てくる。

    冷静さを欠いてはいけない。だが、決着を長引かせるわけにもいかない。
    今の局面は千日手のような、詰みもしないが先にも勧めない手詰まり感があった。

    どこかで勝負に出なくてはならない。それが明らかな不利だと承知していても。
    どう出る?何が相手にとっての隙となる?

  • 84二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 21:45:06

    目つぶしも体制の崩しも効かないこの相手にどうやって?

    (……)

    ヒナイチは、手元の刀の切っ先を下げた。
    黒いモヤはヒナイチの変化に警戒した様子でこちらを窺う。

    ヒナイチは大きく息を吸い込み、目的を自分に刻み込ませ、仕掛ける。

    一歩、
    真っすぐ敵を見据え

    二歩、
    身をよじり、刀を槍を持つように大きく引き

    三歩!
    ただ一点を目指し、突き刺す!!

    恐るべきスピードで繰り広げられる圧巻の刺突、常人であればとても目に追えるものではない。
    炎に包まれた刃が辻斬りの心臓に肉薄する。

    だがそんなものは無駄、無駄なのだ。

    辻斬りは、心臓に刀が貫通する直前に血の刃を下から振り上げることでヒナイチの手から刀を弾き飛ばす。
    ヒナイチと散々切りあいを重ねてきた辻斬りにとって、ヒナイチ渾身の刺突はギリギリ対処のできる代物だった。
    そうでなければお互いに決め手がないままここまで戦闘が続くこともあるまい。

    警戒した状態であれば、それは辻斬りにとって明確に隙のある一手だった。
    相手の刀は無い。ヒナイチは刀を弾き飛ばされた衝撃で後ろにわずかに後退している。
    今の状態ならば、この刃は躱されることはあるまい!

  • 85二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 21:45:53

    ヒナイチの身体が肩から斜めに大きく袈裟切りされる。
    傷口から噴き出たヒナイチの血液が、辻斬りの身体に振りかぶった。

    すんでのところで僅かに躱されたのか真っ二つとまでいかなかった。
    まだ吸血鬼であれば致命傷とは言えまい。回復もされてしまうだろう。
    だが、辻斬りにとってそれで十分だ。

    この重傷を抱えたその隙に、一気に切り刻む__!


    刃を再び振り下ろそうとした、その瞬間。
    辻斬りだった黒いモヤは、全身を白い炎に包まれた。





    『___ァ__ッ!!!』

    炎に包まれた黒いモヤが、苦しそうにうめき声のようなものをあげている。
    ヒナイチはそれを見て、息を荒くしながらよろよろと立ち上がった。

    「……っ、はあ、はあ」

    危険な賭けだった。
    最初の刺突などこの攻撃を決めるためのカモフラージュに過ぎない。
    全ての本命は、辻斬りがヒナイチの血を大量にかぶる事。
    血を被ってしまえばこちらのものだ。陽の炎は全てヒナイチの血を媒介して燃え盛るのだから。

  • 86二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 21:47:22

    斬られた段階でうまく血がはじけ飛ぶように、念動力まで使っての大博打。
    もちろんこの作戦はそのまま斬って捨てられる可能性だってある非常に危険なものだ。
    それでも確実にダメージを与えられる可能性が高いとみて、ヒナイチは決行した。

    「私も、ロナルドの事を言えないな」
    思ったよりも深く斬られた肩の傷を庇いながら一人つぶやく。
    傷口は回復を開始しているが、激痛なのには変わりない。

    振り払われ、地面に落ちた刀を再び手に取ると、今度こそ止めを刺そうとヒナイチは刀を構える。

    しかし、炎で燃え盛る辻斬りもまた、ヒナイチを何としてでも滅ぼそうとまだ血の刃を出して苦しみながらも戦闘態勢を崩していない。

    「しっつこいなあ、本当に……!」
    いつものヒナイチなら出ないようなイラつきが、思わず口をついて出てしまう。

    どちらも手負い、だが、肩を斬られたヒナイチはまだ手に力が入らない。
    足も正直に言ってろくに力が入らない。
    これで道連れにしてやると言わんばかりに全力で暴れられたら、対処ができないかもしれない。

  • 87二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 21:47:46

    燃え盛る辻斬りが文字通りの命を燃やしてこちらに向かって走ってくる。
    ヒナイチは、頼りない体制で何とか刀の構えを作り、そして辻斬りを、相打ち覚悟で見つめた。


    「ヌヌーーーーーッ!!!!」

    ヒナイチの後ろから、ジョンの声が聞こえた。

    すると。

    すると不思議な事に、辻斬りの走りが、止まった。

    何かを確かめるように、止まった。


    「はぁぁああああああっ!!!!」
    ヒナイチはもうここにしかチャンスはないと見て、無理やり前へ足を動かす。

    痛みで体の感覚がろくに分からない。
    最早足はただの棒のようで、筋肉を動かしているような柔軟性はない。
    ただ機械的に体を運び、ろくに力の入らない腕を無理矢理伸ばし、そして。

    今度こそ辻斬りの心臓に、無理やり刀を突きさした。


    ヌヌヌ(つづく)

  • 88二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 07:45:10

    遂に辻斬りと勝負アリか……!
    支援の保守

  • 89二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 11:02:53

    能力にまで丸のことが刻まれてるのか…?

  • 90二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 19:59:02

    保守

  • 91二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 01:25:08

    心臓を貫かれた辻斬りの身体が、ボロボロと崩れ落ちていく。
    反撃の心配が無いと分かると否や、途端にヒナイチの膝が崩れ落ちる。
    これ以上の連続戦闘はどう頑張っても無理だ。
    刀を地面にさして、杖の様に立ち上がろうとするが、まるで力が入らなかった。

    (終わった、のか?)

    ヒナイチは完全に沈黙してしまった辻斬りだった塵に、恐る恐る手を入れる。
    少しだけ塵をかき分けると、キラッと光る赤い宝石のようなものが塵に紛れ込んでいた。
    塵からそれをつまみ取り、そこでようやく緊張の糸が切れたような息を吐く。

    取り出した宝石には刀によるらしい大きく欠けた傷があり、鈍い調子でぼうぼうと光っている。今までヒナイチが見てきた吸血鬼の心臓の様に明確に脈動しておらず、まるで虫の息のようだ。

    なぜあそこで止まったんだろう。

    ジョンの声をまるで確かめるような素振りをした、辻斬りだった黒いモヤ。
    ヒナイチには何故ジョンの声に反応したのかはさっぱりわからない。
    それとも、能力の元になった辻斬りそのものの記憶が反応でもしたのだろうか。

    でも、ジョンと辻斬りになんの関係が?
    まったく関連性が分からない。ただ結果として、それによってヒナイチはギリギリ勝ちを拾えたこと、そしてただの凶悪な吸血鬼としてのイメージが強かった辻斬りにも、人間的な、何か大切なものがあったのかもしれないと思いをはせるだけだ。
    もう終わってしまったことではあるけれど。

    「ヒナイチ君!!」「ヌヌヌヌヌン!!」
    ドラルクが刀を引きずりながら息を切らして走ってくる。
    貧血の後に急激に激しい運動をしているせいかドラルクの顔色がいつも以上に青かった。

    「ドラルク、ジョン」
    「ハァ、なんとか刀もう一本ハア持ってきたんだけど……っ、ま、まにあわなハア……かった……、というか!怪我!!!!」
    「落ち着いてくれドラルク。私よりお前の方が死にそうだ」

  • 92二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 01:26:20

    「ヒナイチ君こそそんな落ち着いた表情してる場合じゃないでしょ肩!!!!マント!!!」「ヌヌヌヌ!!!」
    ドラルクが鬼気迫る顔でヒナイチに自分のマントを傷口が隠れるように羽織らせる。
    「あ、ああ。すまない」

    ヒナイチは白い制服が血で派手に染まってしまっているからいまいち気が付かなかったが、肩口から豪快に袈裟切りされている為、よく見ると服そのものが斬られて大分酷い恰好になってしまっていた。
    傷そのものはじわじわと回復している為、縛ったりする必要がないのでドラルクのマントを緩く羽織った。
    「とんだスプラッタでびっくりしたよもう!」「ヌイヌヌヌ?」
    「なんとか大丈夫だ。驚かせてすまない。それより、ロナルドの様子が気になる。少し回復したら何とか合流を」
    「待ったヒナイチ君。それ」

    ドラルクがヒナイチの手元を指をさす
    先ほど回収した心臓がにわかに輝き始めている。

    「どうして心臓が?」「あー……」
    ドラルクが非常に面倒な事実に気がついたかのように、手を額において呻いた。

    「何に気が付いたんだ?」
    「このまま放置したら復活するかもしれん」
    「えっ」
    ヒナイチは焦った。もう一度戦って確実に勝てる自信はない。
    あれは初見殺しでなんとか勝ちを拾ったようなもなのだ。

    「あそこまで一度完膚なきまでにダメージを与えた炎と氷の能力もこの場においては復活してるんだ。……探っていた気配の元を絶たないと無限復活する可能性がある」
    「……」

    いまだに空で暴れまわっているロナルドの事は気になる、気になるが。

    「分かった、当初の予定通り気配の元を絶とう。ドラルク、頼む」

  • 93二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 01:27:03

    ヒナイチは回復は多少すれど重症の身体を、ドラルクは貧血と疲労を抱えた体を引きずって、気配の、臭いの大本を辿っていく。

    段々、あの悪夢が起きた場所に近づいていく。
    この次元に来てから、もっと正確に言うとあの事件が起きてから、ほとんどこの周辺には近づいていない。

    こうしてドラルクとジョンがいるからと言って、それでもまだ、振り返るにはあまりにも生々しいからだ。

    ヒナイチの想像に間違いが無ければ、どんな存在がいるのかは予想がつく。
    きっと、良く見知った形をしているのだろうなと、考える。


    心臓を、上手く取れるだろうか。

    あれだけ激しい戦いをして辻斬りの心臓を抜き取ったばかりだというのに、これから出会うであろう存在に対しては、少しだけ躊躇いが生まれる。
    だって、今度は自分があの時の悪夢を再現しなくてはいけないようなものだ。

    刀で傷つける必要があるだろうか。その前に死んで塵になってしまうかもしれない。
    むしろ、そっちの方がかえってやりやすいか。

    ロナルドなら、きっといつものように躊躇いなく暴力に走って目的を達成するだろう。
    そうであってほしい。


    「あそこだよ」
    ドラルクの声を皮切りに、ヒナイチの思考は遮られ、前方を見る。

    いた。

  • 94二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 01:27:24

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  • 95二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 01:35:32

    二本ヅノのシルエット、クラシカルな吸血鬼の服装のような出で立ち。特徴的なマント。

    よく知った雰囲気、良く知ったスタイル。
    それがたとえ黒で塗りつぶされていたとしても、自分たちがよく知っているものだと確信できるそのたたずまい。


    黒いモヤで構築されたそのシルエットは、一人工場地帯の真ん中で、空を眺めている。

    静かだ。
    いつもはあれほど動きも口調もやかましいくせに。
    こんな時に限って、静かだ。
    こんな時に限って、寂しそうに見える。

    「ドラルク」
    「なんだい?」
    ダンピールの方のドラルクが返事をして、少しだけ笑った。
    「すまない、違うんだ。そうか、ややこしいなこれは」
    誤解をさせて申し訳ないが、この言葉は、あの存在にかけるべき言葉だった。

    「……あとで理由、聞かせて」「ああ。ありがとう」

    ヒナイチは泣かないようにこらえながら、ようやく言おうと思っていた言葉を紡ぐ。


    「一人で待たせてすまない」

    空を見上げていた黒いモヤの吸血鬼が、こちらにゆっくり顔を向けた。


    ヌヌヌ(つづく)

  • 96二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 01:52:15

    モヤになって動かず、喋らず、ひとりぼっちで佇むだけのドラルクしんどい度がすごい
    このしんどい存在から心臓を取り上げるんですか…?

  • 97二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 10:50:39

    無限再生能力って本当に厄介だなと改めて

  • 98二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 21:03:15

    他と違って誰も襲ってなさそうなのがなんとも…

  • 99二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 00:18:09

    ヒナイチは重症の身体を引きずりながら、モヤの方のドラルクへとゆっくりと近づく。

    幸い、モヤはこちらに顔を向けたまま何もしてこなかった。
    ただゆっくり移動するヒナイチを見つめ続けているだけだ。

    ゆっくりゆっくり歩みを進めて、ようやくモヤの目の前に立つ。

    何を言おう。
    謝罪か、後悔か、もっと別の言いたかったことか。

    ロナルドの事もある、時間はあまりかけてはいられない。
    だが、これが最後の機会かもしれないと思うと、思いばかりは沢山あるのにどれもろくに出てこない。

    「ドラ、……あの、」
    まるでのどが詰まってしまったかのようだ。
    それでも、必死に言葉を絞り出す。

    「ありがとう」

    「ごめん」

    「なにもできなくて、ごめん」

    目の前の相手は、何も返すことは無い。
    それはそうだ、もうここにあるのはただの残滓なのだから。

    これはただの自己満足。あの時言えなかった言葉のやりなおし。

    「お前の焼いてくれるクッキー、本当に好きだった。それ以外の事も、もっと」

  • 100二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 00:19:31

    ヒナイチは喋りながら持っていた刀を、モヤの、ドラルクの胸部に狙いを定める。
    そして、


    「もっと、一緒にいたかった」

    とうとうヒナイチはこらえきれなくなった。
    泣きたくなどなかったのに。

    手で涙をこすり上げながら、それでも狙いを逸らさずに刀を構え続ける。
    これを刺してしまえば、終わりだ。

    「だから、これでもう、全部終わりにするな」
    ヒナイチは、刀を突きさそうと力を込める。


    刺せない。

    邪魔されたとかではない。
    黒いモヤは、ドラルクは一歩たりとも動いてなどいない。

    ただ単純に、ヒナイチが刺せない。

    嫌だ。
    いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ。

    子どもの様に心が駄々をこねている。
    気が進まないとかのレベルではなく、はっきりと嫌だ。

  • 101二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 00:20:42

    なんで私がもう一度ドラルクを殺しきらなきゃいけないんだ!
    あんなことやりたくない本当にやりたくない!!
    嫌だ嫌だ嫌だ!嫌だっ!!!

    ヒナイチが心の底からの拒絶感に苦心していると、遠くの方、ロナルドと思われる竜と敵の龍がいた方向から轟音が響く。
    スッと視線を音のした方向に向けると、二体の竜がゆっくりと地上へ落ちていくのが見えた。

    ロナルドの変身した竜の胸部に、氷の杭が刺さっている。

    ヒナイチの背筋が急速に冷えた。

    「ぁ__」

    はやく、このきゅうけつきにとどめをさして、たすけにいかなきゃ
    このきゅうけつきに、しみんを、ろなるどをたすけるために、ゆうせんするべきは

    優先するべきは__


    ドスッ、という効果音とともに、黒いモヤの心臓に刀が突き立てられた。
    刺したのはヒナイチではない。


    「なんだ、私でも勝てるじゃないか」

    辻斬り戦の時に落としてしまった、もう一本の刀。

    「随分と躊躇っているから、よほど強敵なのかと思ったよ」

    それを持ったドラルクが、かつてあった別次元の自分自身に向けて、刀を突きさしていた。

  • 102二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 00:21:27




    気配の先には、今のドラルクと丁度似たようなクラシカルな恰好をしているらしい吸血鬼がいた。
    吸血鬼というよりも、正確には黒いモヤだが。

    ドラルクと違う点は、頭に二本ヅノのような妙なくせ毛がある事だろうか。
    その吸血鬼が、一人で何もない空を眺めている。

    そして、ヒナイチの「一人で待たせてすまない」という発言。

    つまり、これは。
    どんなに鈍くとも流石に気が付く。こいつが、この吸血鬼がおそらく二人が秘密にしている、ドラルクの知らない余白。
    二人がかつてマントで動揺した理由が分かる。確かに背格好的にドラルクが羽織れば似ているかもしれない。
    私の方が100億倍カッコいいし可愛いが。

    さらにダメ押しにヒナイチが言ったドラルクという呼び名。
    あの黒い吸血鬼もどうやらドラルクらしい。
    私の方が絶対100億倍似合っている。

    そして極めつけに、何故かジョンがあの黒い吸血鬼を見て固まってしまっている。

    ……正直な感想を言おう。


    つまらない、気に入らない、そっちばかりを見るんじゃない。

    私はここにいるのに。

  • 103二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 00:22:19

    ドラルクにはあの吸血鬼が二人にとってどのような存在だったのかなんて知らない。
    なんでヒナイチ君が謝っているのかなんて知らない。
    クッキーなら私だっていくらでも焼くのに。

    私は、一緒にいるのに入らないのか?

    あんな黒いモヤ、しょせん墓場のようなものだ。
    誰が歌ったか、私はそこにいませんし眠ってなんかいません、だ。

    だから、泣いてなんかほしくない。躊躇う事なんかない。
    ヒナイチ君やゴリラが余計に傷つく必要はもっとない。

    ドラルクは、自分の得物にするには重い刀を引きずりながら、黒いモヤの方へと歩き出した。

    終わりが必要だった。誰の為にも、ドラルク自身の為にも。


    ロナ造にしろヒナイチ君にしろ、こんな辛気臭いものいつまでも引きずらなくていい。
    もっと楽しい事をしよう。

    辛い事など全部忘れてしまえ。笑っていてくれ。
    そっちの方が絶対に楽しい。
    そしてなにより、


    君たちの楽しい事は、私にとっても楽しい事なんだから。



    ヌヌヌ(続く)

  • 104122/09/12(月) 00:23:33

    このタイミングで申し訳ないんですが、明日は私用のためお休みです。

  • 105二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 11:16:54

    ドラドラちゃんが畏怖い!!!!
    戦いも何もない静かなやりとりがドラルクらしい
    いつも応援してます!!!!

  • 106二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 11:19:33

    こっちのドラルクとも友情育めてたんだなって…

  • 107二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 18:59:27

    保守

  • 108二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 00:00:34

    保守

  • 109二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 10:55:30

    保守

  • 110二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 20:28:17

    一旦保守

  • 111二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 01:15:42

    ドラルクが刀を刺したことで、かの吸血鬼はほろほろと形が崩れていく。
    モヤのような煤のような何かを空に散らしながら、ぼんやりとしたシルエットを残して、徐々に存在が薄くなっていく。

    ドラルクは空を見る。
    この摩訶不思議閉鎖空間にひびが入り始めている。

    ひびは徐々に広がっていき、星も月もない暗闇の夜空が割れていく。
    夜空が割れたその隙間に見えるのは、薄いオレンジと紫色が混ざった空の色。
    時刻は午前5時付近。
    夜の怪異の為の世界が終わり、もうすぐ昼の子の時間が始まる時刻。

    ひび割れた空の隙間から、わずかに光が差し込んだ。
    徐々に儚くなっていた黒いモヤのシルエットが、その光に当てられ、瞬く間に塵になって掻き消える。

    そしてその瞬間。
    空のひび割れが天井全体に一気に回り、一斉にはじけて壊れた。
    世界の帳は粉々に砕けていき、空にその残滓がキラキラと舞っていく。

    開放された空はすでに白んでおり、まもなく、陽が昇る。

    「……綺麗だな」
    「うん」「ヌン」

    ヒナイチのぽろっと出た感想に、一人と一匹は示し合わせたかのように返事をした。

    塵の上に残されたのは、綺麗に輝く血色の宝石。

    宝石は、静かに脈動している。

  • 112二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 01:16:33

    ドラルクでも倒せてしまった、街をおかしくしていた最後の吸血鬼の心臓。
    そして、二人の中にいるのであろう思い出の吸血鬼。

    (まあ、回収くらいはしてやるか)

    ドラルクは苦々しい気持ちを眉間のしわに隠さず、それをつまみ上げた

    ゆっくりとそれを手に取ると、改めて吸い込まれるようなその美しさをまじまじと眺m


    「ドラルク?」「ヌヌヌヌヌヌ?」
    「いや、」

    ngあめ、眺め、眺めて、ドラルクは頭を振った。

    「なんでもないよ」

    「?」
    ヒナイチにはドラルクの微妙な笑みの理由が分からなかった。

    「……、そうだ!ロナルド!」
    街が解放されたことで少し呆けていたヒナイチが一気に覚醒する。
    まだ終わっていない。ロナルドは相当な重傷を負っていた筈なのだ。

    「ドラルク、ロナルドの様子を見に行こう!」
    「分かったって言いたいんだけど、ヒナイチ君ジョンと一緒に先に行っててくれない?」
    「なんでだ!?」「ヌンヌ!?」
    「ここの周辺に異常がないか確認してから行くよ。すぐにそちらに向かうから、ヒナイチ君達は早くロナルド君の方へ行ってあげてくれ」

  • 113二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 01:17:14

    「分かった、すまない!行こうジョン!」「ヌーー!!」
    要件を聞いたヒナイチ達がドラルクの返事も待たずに飛び立っていく。

    ドラルクは空へ一目散に翔けていく火の鳥を見送ると、改めて残された吸血鬼の残骸の方を見た。


    「……人払いはしましたよ。そこにいるんでしょう?」
    『気づかれていましたか』
    穏やかで物腰柔らかな男性の声が聞こえた。

    「気配に特徴がありすぎて流石に分かりますよ」
    『一応吸血鬼ではないんですけどね』
    男性が苦笑する。どこまで本当なんだか。

    「それで、なんの用ですか?“フクマ”さん」


    『……』
    フクマにしては珍しく、何かに迷っているようだった。

    『できる事を伝えないのは、フェアではないと思いましたので』

    何もない空間に大穴が空き、手にバトルアックスを持つ長髪の黒髪にスーツを着た男性がそこからゆっくりと出てくる。
    だがいつもと様子が違うのは、もう片方の手には今までドラルク達が集めた沢山の吸血鬼の心臓の山を抱えている事だった。

    『ドラルクさん』

    『もし、何もかもを元に戻せる手段があるとしたら、あなたはどうしますか?』

  • 114二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 01:18:15




    きれいだな。

    ロナルドはぼんやりとした意識で崩れていく空を眺めていた。

    街を閉じ込めていた夜の帳が引き裂かれたことで、朝焼けによって染まっていく空とオレンジ色の見事なグラデーションの空が広がる。

    ロナルドは大の字に倒れてそれを眺めていた。
    重症による連続復活の酷使、吸血鬼の弱点である火炎による燃焼、そして最後に出された氷の杭による貫き。
    並みの吸血鬼であれば100回以上は死んでいるかもしれない物量戦の果てに、ロナルドの身体はもうボロボロだった。

    (指、一本もうごかせない)

    人の形を保てているのが不思議なくらいだった。
    もはや戦闘どころか、起き上がる事も難しい。

    気を抜けば、すぐにでも塵になってしまいそうだった。

    身体を動かせないロナルドの耳に、先ほどは聞こえなかった雑踏の音が届き始める。
    街の市民も徐々に復活し始めているらしい。
    その賑やかさで、確かに街を取り戻せたことを実感できて、ロナルドは嬉しかった。

    「ロナルド!!」「ヌヌヌヌヌン!!」
    そして、上空からも嬉しい賑やかさがやってくるのが分かる。

    良かった。

    最後は一人じゃない。

  • 115二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 01:19:20

    「ロナルド、大丈夫か!ロナルド!」「ヌーーー!!」
    一人と一匹が、必死でロナルドに声をかける。

    「……ああ、まだ生きてる」
    「まだって……!変なこと言うな、お前はちゃんと生きてるだろうが」「ヌン!!」
    泣きそうなヒナイチの言葉にロナルドは答えず、ただ笑ってごまかす。

    「ドラ公は?」
    「ドラルクは、もう少ししたら来るはずだ」
    「そっか」

    あんな奴でも、最後くらいは顔を拝んでおきたかったのに。

    「ロナルド、それより移動しよう。もうすぐ陽が昇るし、どこかで休んだ方が」
    「いや」

    ロナルドはヒナイチの提案を遮った。

    「ここでいいよ」

    空がきれいだ。

    「俺はここでいいよ」
    「……ロナ」
    ヒナイチの言葉が詰まった。

    ロナルドの指先が、形を保てず徐々に崩れていっている。

  • 116二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 01:19:58

    「血、血を今すぐもってくる!」
    「無理だって」
    「無理って言うな!!!」
    「むりだ」
    ロナルドが諭すようにはにかむ。

    「いろいろつかいすぎた。むりだ」

    使い切ったのだ。何にも残ってない。もうなにも。

    「そんなこと言うな」

    「せっかく、終わったのに。お前が一番頑張ったのに」
    「ヒナイチもがんばったろ。おれは、できる事しかしてねえよ」
    「だからそんな事言うなって!」「ヌゥ……」

    次に、足の崩壊が始まった。

    「なんとなく、こうなる気はしてたからさ」

    「いいよ、おれは満足してる」

    「私は満足してない。ちゃんと生きろ、事務所に帰ってこい、メビヤツ達だってきっと待ってる、まだ終わってない、まだ……!」
    「そうだな、メビヤツにはわるいことするな。あやまっておいてやってほしい」
    「分かってるんならもうすこし踏ん張ってくれよ!!」「ヌヌッヌヌ、ヌヌ!!!」

    ああ、とうとう泣かせてしまった。
    ロナルドは何とか撫でられないかと手を挙げようとしたが、無理だ。
    腕が崩れてしまっている。

  • 117二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 01:20:53

    また、空を見る。日差しが徐々にロナルドの身体に迫ってきてる。
    あの日差しに当たったら、最後だろうか。

    「ほら、ヒナイチ、たいようとくいじゃないだろ、もう、はなれたほうが」
    「バカッ!!!」「ヌヌ!!!!」
    ヒナイチとジョンがあらん限りの声で罵倒した。
    一人と一匹は意地でも離れないという顔をしている。

    一緒にいてくれることに申し訳なさを感じるも、嬉しかった。

    とうとう声が上手く出せなくなってくる。
    視界がぼやける。

    でも、空はきれいだ。

  • 118二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 01:22:17

    「……ありがとな」

    顔が崩れていくのが分かる、意識が次第に途切れてく。
    だが、苦痛はなく、安らかで。

    こういう“死”であるのならば、悪くなかった。


    続く




    「なぁーーーーにバカぬかしとるんじゃこの加減を知らない全力爆走脳筋ゴリラ公道で大の字になるんじゃない五歳児は寝る場所も分からないのかね全くもって躾のされてない五歳児は迷惑だなこのスカタンルドくんは!!!」

    意識が途切れるその直前。

    声が、聞こえた気がした。


    ヌヌヌ!(続く)

  • 119二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 10:49:14

    え!?ここから入れる保険があるんですか!?
    ドラルクはフクマさんに何を提案されたんだろう…続き楽しみにしてます

  • 120二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 20:31:21

    保守

  • 121二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 01:12:07



    『もし、何もかもを元に戻せる手段があるとしたら、あなたはどうしますか?』

    「何もかもって」
    ドラルクには、フクマさんの言っている意味が分からなかった。
    いや、なんとなく言わんとしていることは分かるのだが、本当にそれが可能なのかが分からなかった。
    そしてもしそれが100億歩譲って可能ならば、その決断に関してなにか非常に面倒な責任をおっかぶされそうだとドラルクは長年隊長をやってきた経験から察し、しらを切った。

    「元に戻せるって、いったい何のことを言ってるのかさっぱりですよ。敵は倒した。あとは今ある我々の日常が続くだけなのでは?」
    『それも選択肢の一つです。単刀直入に聞いてしまいますが、ドラルクさんどこまで思い出せました?』
    「本当に情緒もへったくれもなく聞いてきますね」
    『大事な事なので』

    ドラルクは深く息をついた。そしておどけた様子で答える。

    「思い出したら色々不味いんじゃなかったんでしたっけ?周りの人間の記憶が消えたりとか。第一私、まだダンピールですしそれが答えなのでは?」
    『「アレ」が消えたことで不安定だった時間の歪みが多少解消されました。このままの日常を続けるのであれば、記憶が戻った所で種族が変わったり周囲の記憶に変化が起こる事もなくなるはずです。もっとも安定化してしまうので以前の記憶を思い出す可能性は限りなく0に近くなりますが』
    「なんかゲームのクリア後特典みたいですね」
    『そうですね。私はゲームにはあまり明るくありませんが、それに近いのかもしれません』

    「ですが、思い出す可能性がほとんどないのであれば私もその記憶だか何だかは関係ありませんよ」
    『私の名前を呼んでくれたのに?』
    「フクマさん」

    ドラルクは流石に渋い顔をする。この人は、ドラルクの状況を分かっていてあえて聞いている。
    『すいません、冗談が過ぎましたね』
    「本当ですよ。私の逃げ場がないのであればさっさと言ってください」
    『ではお言葉に甘えます。……正直にいうと、私もずっとこの判断に迷っていて』

  • 122二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 01:13:33

    「フクマさんが?」
    あの敏腕最強外宇宙的ミーム編集者のフクマさんが?

    『私も迷う事はいくらでもありますよ。なので、どちらの立場からも見てきたドラルクさんにお聞きしたいのです』

    『もし、あなたが吸血鬼だった世界に何もかもを元に戻せるとしたら、あなたは巻き戻しを選択しますか?』


    「……本当にそんなこと可能なんですか?」
    『今のこの不安定な次元の状況と、ドラルクさんの心臓を含むこれらの吸血鬼の心臓があれば、可能です。ですができる期限は限られています。この機会を逃せば、2度と行う事はできません』
    「今あるこの世界は?」
    『文字通り全部無かったことになります』
    「それはまた……」

    なんてひどい相談をしてくるのだこの人は。

    「それを聞くのは私じゃなくて、若造やヒナイチ君に聞くべきだったのでは?」
    『ロナルドさんやヒナイチさんであれば、きっと迷いはしますが、結論は一つだと考えています。それは今ある世界にとってフェアではないと判断しました』
    「ならフクマさんが勝手に決めてしまえばよかったじゃないですか」
    『それもフェアではありません。私も編集者として……、ロナルドさんたちが紡いだこの世界の物語に肩入れしてしまっています』
    フクマさんにしては、珍しい私情の滲み方だった。

    「じゃあどうして私に」
    『ドラルクさんは、こちらの世界の視点であの二人と交流し、あちらの記憶も持っています。どちらに対しても肩入れができる立場の方だと、私は判断しました』
    ドラルクは額に手を置く。


    そんなもん選べるか、というのが、本音である。

    本音ではあるが。

  • 123二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 01:14:11

    遠くの方で、ロナルドの強大な気配がみるみるうちに弱く細くなっていくのを感じる。
    おそらく、能力の酷使のし過ぎで瀕死に近いのだろう。
    離れていても、ドラルクの感知能力であればそこまでの事が分かってしまう。
    こっちの世界を選んでしまったら、このままではおそらくロナルドは……。

    「……」

    ドラルクはかつての自分の心臓だった宝石を握り締めた。

    「フクマさん」
    『はい』

    「私、押しちゃいけないボタンを押したいタイプなんですよね」





    ぼんやりとした思考でロナルドは自分に罵詈雑言を浴びせてきたムカつく痩せぎすの男を睨みつけた。
    こんな時くらい、静かに出てこれないのかこのクソ砂は。

    「困るねえ、こんな公道で眠られると、朝の通勤の邪魔になってしまうだろうが。おいもう朝だぞ!とっとと起きて自分の寝床に戻らんか吸血鬼!」
    「ドラルク」「ヌヌヌヌヌヌ」

    「……おまえ、さいごのさいごがそれかよ……、ころす……」
    「ファーーー!!殺せるものなら殺してみろや自分が死にそうになってるくせにそのさらさら形状では私に関節技の一本も出せんだろうが!!!」
    ドラルクが勝ち誇りながらロナルド史上最高にムカつく顔で煽ってくる。
    ロナルドはもし幽霊になれたらあいつのゲーム機や調理器具をありとあらゆる方法を使って呪いの道具にしようと心に誓った。

  • 124二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 01:15:26

    「マジでしんだらのろってやる……!ぜんりょくでのろう……!」
    「はっ、やれるもんならやってみたまえ。第一、呪いなんてすべてキャンセルだ」
    ドラルクはあざ笑いながら、言う。

    「まだまだ、君には私の雑用を手伝ってもらわねばならんのだからな」

    ドラルクが、大の字で倒れこんでいるロナルドの前に立った。

    「……おまえ、なにいって」

    ドラルクが何を言わんとしているのかわからない。
    だって、もう、ロナルドは終わりなのに。

    しかしドラルクの顔はまるで良い考えを思いついた時のような、いたずらっぽい表情を浮かべている。

    「これは、私の独り言なんだけどさ」


    「世界を選ぶとかそういう話じゃなくて、そもそも無かったことにすべきじゃないんだよ」

    「そりゃあ私もあの職務に追われない悠々自適な生活に未練が無いかと言われればあるし、今の私には面倒ごともたくさんある。この後の始末書と監督官殿の怒髪天など考えただけで憂鬱だ。きっと、前の方が良かった奴はいくらでもいる。だが、」

    「私は君たちのやってきたことを、やってくれたことを、これからも覚えていたい」

  • 125二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 01:16:33

    「ドラルク?」「ヌ……?」
    ドラルクが何を言っているのか、ロナルドにもヒナイチにも、ジョンにもよくわからない。
    ドラルクの目が、酷く優しいように見えて、ロナルドは落ち着かない。

    「だけどロナルド君ってばまあ無理をするんだものな。このまま君がいなくなっちゃったら、本末転倒なうえつまらないじゃないか」


    「だから、君にこれをあげるよ」

    ドラルクは懐から何か光るものを取り出すと、ロナルドの氷の杭で開けられた胸部、心臓のあった場所にそれを埋め込む。
    すると、途端に胸元が強烈に光だし、埋め込まれたものがすとんとロナルドの中に入り込んでいく。


    それは、かつて吸血鬼だったドラルクが「アレ」に取られてしまった、キラキラと輝く血色の脈動する宝石。


    __吸血鬼の心臓、だった。


    ヌヌヌ(つづく)

  • 126二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 08:29:05

    12巻嘘予告にもリンクしてくるとは…

  • 127二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 18:56:11

    保守

  • 128二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 23:13:57

    騒がしい夜が終わって陽が昇る。
    不穏な気配は陽が街にいきわたるにつれてすっかりと消えていき、どこか不安定だったこの街は、根を下ろしたかのような安定感が漂っていた。
    街の様子を少し見れば、吸血鬼たちが陽に当たらぬようにビルや建物に緊急避難をしている様子が見える。
    あとで吸対のメンバーが日傘やタープを使うなどして移動させるだろう。吸対は一般市民の避難保護が第一に重要だが、その一般市民の枠には当然吸血鬼も入ってくるのだから。

    吸血鬼の時であれば、ドラルクも慌てふためいて逃げた事だろうが、今はダンピールなのでその必要もない。
    かつて吸対のメンバーから世界一青空のさわやかさが似合わない、名誉ハロウィンのゾンビ枠(変装無し)など散々な評価を受けたこともあるが、似合う似合わないなどしったこっちゃない。
    硬くなった体をぐっと伸びをする。今は、自分の気分にあったこの晴れやかさを歓迎したかった。

    「……おれ」
    ドラルクの背後から珍しくか細い声が聞こえる。
    ずっと様子を見ていたヒナイチ君とジョンがわっと泣きそうな声をあげた。

    「ロナルド!!良かった……、大丈夫かロナルド!」「ヌヌヌヌヌン!!」
    「あれ、……え?なんで」
    ロナルドは自分の状況をうまく理解できていないようでぼんやりと周りを見つめている。

    どうして自分が生きているのか?死んだんじゃなかったのか?
    そうとでも言いたげなアホ面だ。
    ドラルクはその様子が愉快でたまらなかった。

    「起きたか、ゴリラ」
    「何したんだ、お前」
    ロナルドは何かしたのであればドラルクに違いないと言わんばかりの顔でこっちを見てくる。

  • 129二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 23:14:41

    「何って、」

    「あげたんだよ、私の200年物の心臓。いやー、無事に動いてよかった」
    「は?」
    「君、偉大な真祖の血に感謝して崇めなさい。再生能力だけはピカイチな筈だからまあ問題なかろう」
    「は?」
    「それよりも事後処理だ。休んでる暇ないぞ五歳児、宣言通りキリキリ雑務やってもらうからそのつもりで。大体なんだ竜化って、我が一族の秘奥を簡単に使いおってこのチートめ。おかげで被害の拡大率がやばいから覚悟しろよ」
    「は?」


    「は?」
    ロナルドは理解が追い付かなかった。追いつかなかったというより、理解を放棄した。

    「というか、ドラルクお前記憶……?」
    理解を放棄しているロナルドに変わってヒナイチがこわごわと尋ねる。
    明らかに、ダンピールのドラルクが知りようがない事を喋っている。
    「ああ、それ?どっちでもいいじゃない」
    だがドラルクは何でもない事の様に流す。

    「よくない!よくないぞドラルク!」
    「記憶のあるなしは本質じゃないんだから別にどっちでもいいでしょ」
    ドラルクは言いながらヒナイチの頭にさらに自分の上着をかぶせた。これは日よけ代わりだ。

    「あってもなくても、君は私の友人なんだから」
    その発言に、ヒナイチは目を丸くして言葉が詰まる。

    「そういってもらえるのは……、うれしいが、うれしいけども!」
    「ヌヌヌヌヌヌ!!!」
    ヒナイチが丸め込まれそうになっていると、次の抗議の言葉を唱えたのはジョンだった。

  • 130二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 23:15:08

    「ヌヌヌッヌヌンヌヌヌヌヌヌ?(記憶ってなんのことですか?)」
    「えっ、いやだから別に記憶の有無関係ないからジョンは気にしなくても」
    「ヌンヌヌヌヌイヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌッヌヌヌンヌヌヌ!?(ジョンの知らないドラルクさまの記憶があるっていうんですか!?)」
    「ジョン!?丸状態で高速壁アタックは止めたまえ!!教える、ちゃんと教えるから!!」
    「私も手伝うから体当たりの衝撃で思い出そうとしないでくれジョン!!」
    「ヌヌーーーーーッ!!!!!(ヤダーーーーっ!!!!!)」


    その大騒ぎをはたから眺めて、ようやくロナルドは帰ってきた実感がわいた。
    自分の胸部分をよく目をこらえて見る。

    ドラルクの言っていた通り、赤い宝石が自分の中で脈動しているように感じる。
    かつての吸血鬼のドラルクが取られてしまった心臓。

    本人の目の前でその言葉を口になど絶対にしてやらないが、失われてしまったかつての相棒の形見。


    「……ありがとな」

    気づかれないように、小声でひっそりとつぶやく。

    「お互い様だ」

    返ってくると思わなかった返事が返ってきて、ロナルドは顔をあげる。
    しかしドラルクはヒナイチたちとジョンを止めるので必死で、とても返事などしている暇はない。
    じゃあ、どこから。

    少し考えて、自分の胸を抑えた。
    「これ」か。
    ……独り言であっても余計な事を言うべきじゃなかったか。

  • 131二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 23:15:30

    だが、

    今日ぐらいはいいかと、ロナルドは諦めた。
    空を見た、雲一つの無い晴天が広がっている。

    空を見ていると、あの黒い蝶の群れが飛んでいるのが見えた。
    「アレ」の支配から解き放たれた黒い蝶が、街の至る所に散らばっていく。

    蝶の一羽を目線で追っていると、病院の病室にスッと入っていくのが見えた。
    意識不明になった人々の意識も、じきに戻るだろう。

    本当に、何もかもが終わったのだ。
    吸血鬼が晴天を見て感慨にふけるのもどうかと思うが、この気分にはあっている。


    新横浜の街の新しい一日が、今日も始まっていく、


    ヌヌヌ(つづく)

  • 132122/09/15(木) 23:16:14

    あと1~2話後日談的なものを書いて終わりですね。
    いつも感想ありがとうございます。

  • 133二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 02:08:05

    保守

  • 134二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 08:00:14

    本編完結おめでとうございます
    やった大団円!後日談も楽しみにしています

  • 135二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 19:04:46

    ほしゅ

  • 136二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 22:42:29

    祭りの後の後始末というのはそれはもう悲惨なもので、ドラルクの始末書の量は過去最高を更新した。
    これがゲームだったら称号の一つでも欲しい所だ。
    だが現実にんなものは無いので粛々と処理をしていくしかない。
    クソ ゲーの様に時間を無駄にした充実感もなければ楽しくもないのでただのクソである。
    もっとも、それを選んだのは自分だが。

    ちなみにこの騒動の報告をした後、昼行燈(カズサ)に貸しを作りそうになったがヒナイチ君秘蔵の弱みをちらつかせることで相殺した。持つべきものは身内による密告である。

    「ドラルク隊長そろそろ時間大丈夫なんですか?」
    「えっ?……ああ、もうこんな時間か」
    サギョウの一言でドラルクは時計を見て慌てて立ち上がる。

    「珍しいですね、早退だなんて」
    「本当は有給使っちゃいたいんだけど、この仕事の量じゃちょっと身動きがね」
    「被害自体は八方丸く収まったからいいもののヤバいですもんね……」
    「あと何日続くかなこの量」「ヌヌ……」

    しかし、今日はもうドラルクは仕事からは自由の身だ。
    この後別の面倒が待っているが、つまらん仕事よりかは何倍もマシである。

    いや、やっぱ辛いかもしれない。




    「ドーーーラーーーールーーーークーーーーー!!!!!」
    ドラルクが待ち合わせ場所にたどり着くと、父の歓喜の叫びが耳に響いた。

    「無事戻れたようで何よりですお父様」「ヌヌヌヌン!」
    「マルスケもよく無事で!!お父様は嬉しいよこうしてまた人の姿でドラルクと会えるだなんて!!あのにっくき黒モヤめよくも私を常時狼の姿にしやがって!!!しかもあのバカ野郎はきっちり犬の餌を与えてくるしフリスビー投げてくるしで最悪だったよ本当に!!」

  • 137二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 22:44:00

    「本当に大変でしたね」
    しかしドラルク的には内心、武々夫にしては常識的なお世話の範囲内だったので少しだけ感心した。そこまでバカじゃなくてよかった。父の扱いに関しては事実狼だったのだから仕方ない。

    「ドラルク」「お母さま」
    わーわー騒ぐ父の後ろからひょこっと控えめに母であるミラが姿を見せる。
    「体の方は変わりないだろうか」
    「最近ちょーーっとワークがハードなくらいですかね」
    「本当に大丈夫か?目の隈が酷いぞ」
    「これはいつもの事なので気にしないでください」
    ウソである。ここ最近五割増しで酷い。

    「何!?ドラルク疲れているのか!?やはり人間の身体では辛いのでは……!?」
    「だからといってしばらく転化はするつもりないんで無しの方向で」
    ドラルクはその先に続くであろう言葉をぴしゃりと切り捨てた。
    発言が先回りされて父が悲しみのポーズをしているが、それはそれこれはこれである。

    「そうか……、しばらくはその状態でいるのか」
    落ちこむ父はいつもの事として、母に残念そうな顔をされるのは少し心が痛む。
    だが、これに関してはドラルクは譲るつもりはなかった。

    「いずれなる事もあるかもしれませんが、せっかくなんでしばらくはこの状態でいようと思いますよ。できる事も違いますしね」
    「ほう、お前にできる事とな?」
    ドラルクはその言葉を聞いた途端に、それまで穏やかだった表情に途端に眉間にしわが刻まれる。

    「おや、師匠。いたんですか?」
    「最初からいたとも。優秀を謡うダンピールの探知機能も随分さびれたものだな、ドラルク?」
    「いやーすいませんねえ、お父様とお母様の気配に気を取られて気が付かなかったんですよ。何分この街いくらでも強大な吸血鬼いるからたまに気配にマヒしてしまって……、Y談おじさんとか」
    「あんな黄色の名前を出す必要はないだろうドラルク?」
    「私は今ここに乱入してこないかなってちょっと願ってますよ師匠?」「ヌェー」

  • 138二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 22:44:36

    ドラルクとノースディン(とジョン)がバチバチとお互いにらみ合うが、珍しくノースディンの方が早々に剣を収めた。
    「ところでドラルク、あの二人は?」
    「ヒナイチ君とロナルド君なら別件です。二人とも元気ですよ」
    「げん……、いや、少し気になっただけだ」
    ノースディンが誤魔化すように視線を逸らす。
    全く素直に聞きゃあ良いものをとドラルクは悪態交じりに思うが、ちょっと動揺した顔が面白かったのでそれ以上は言わなかった。
    今度二人をだしに別のからかい方が出来るか試そう。

    「しかし元に戻るまでに随分かかりましたねお父様」
    「まさか事件が解決しても一週間近く戻れないとは思わなかった」「私もずっとそのままなんじゃないかって危惧しましたもん」
    「私の能力でも限界があって……、すまないドラウス」
    「ミラさんは悪くないよ!!」

    あの祭りの後、何故かドラウスはすぐには元に戻らず武々夫の元での居候生活がそのまま続行されてしまったのだった。
    方々に手を尽くしてようやく元に戻ったのが今日である。

    「ドラウスはかなり「アレ」深く浸食されてしまっていたから、回復の遅延はそれが原因だったのではないだろうか」
    「お母さまでも戻せないって相当ですもんね。……あれ?じゃあお祖父様に頼めばよかったのでは」
    しかし、ドラルクが祖父の名前を出すと、父も母も師匠も浮かない顔をしている。

    「どうしたんです?」
    「それが」
    ドラルクの疑問にドラウスが何か言いづらそうな困ったような顔で言葉を濁す。
    明確に疑問に答えたのは師匠だった。


    「……あの一件以来、ご真祖様が行方不明になっている」


  • 139二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 22:45:35

    「お祖父様が行方不明!?あのウルトラチート級ゴジラのお祖父様が!?」
    ドラルクも流石にこの事実に声を荒げてしまう。

    「お母さまと一緒にいたんじゃなかったんですか?」
    「それが、次元の歪みが解放されたと同時に気配が追えなくなってしまって。あの祭り以降会えていないんだ」
    「ええ……」
    「だが、安心してくれドラルク。ご真祖様は生きてはいらっしゃるようなんだ!私のハンマースペースにこんなメモがあって」
    ミラがごそごそと懐から一枚のメモを取り出す。

    『旅行行ってくる。もう帰ってこれないから、後の事よろ』

    「帰ってこれないって」
    ドラルクも困惑を隠せない。一番失踪とかからほど遠い存在だと思っていた祖父がまさかの行方不明。200年以上の記憶を省みても一度もなかった展開である。
    そして祖父がいないと言う事は、つまり

    「じゃあ、お父様が次の当主……?」

    「……どうしよう」
    「ドラウス、どうしようじゃない現実を見ろ」
    「お父様気を確かに」
    「私もちゃんと支えるから」
    「ヌンヌッヌ!!」

    ドラウスは四者四様のはげましを受けるが今後の事を考えると冷や汗がとまらない様子だった。
    だがまあこればっかりはドラウスに頑張ってもらうしかない。
    その後もドラウスの自信が地に落ちてそれぞれで励ましをして何とかやる気を出してもらうなどし、ちょっと落ち着いたところでドラルクは一度帰宅することにした。

  • 140二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 22:46:03

    ドラウスは四者四様のはげましを受けるが今後の事を考えると冷や汗がとまらない様子だった。
    だがまあこればっかりはドラウスに頑張ってもらうしかない。
    その後もドラウスの自信が地に落ちてそれぞれで励ましをして何とかやる気を出してもらうなどし、ちょっと落ち着いたところでドラルクは一度帰宅することにした。

    「じゃあ、そこらへんのややこしい話はまた後日ということで」
    「仕事で疲れているだろうに、新しい問題を増やして済まない」
    「お母様はお気になさらず。お父様もやればできる子です。頑張って、応援してますよ!」
    「うん!パパ頑張るねドラルク!!!」
    「ヒゲヒゲは盛大に魅了空振りしろ」
    「よほど私の魅了を受けたいようだな?」

    ドラルクは余計な能力を受ける前にとんずらしようとし、最後に聞きたいことがあった事を思い出して走るのを止めた。

    「どうしたんだいドラルク?」
    「いや、一つ聞きたいことがあって」

  • 141二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 22:46:17

    「お父様は、どうして「アレ」に捕まったんですか?」

    全ての始まりは、父の失踪から始まっている。
    だが今考えると、父の能力なら本来逃げられたのではないかとドラルクは思うのだ。

    それが何故、捕まってしまったのか。

    「……」

    「懐かしい人がいたのが見えて、あの時つい、足が止まってしまったんだ」
    「懐かしい人?」


    「ああ、……お前のおばあ様の姿だよ」


    ヌヌヌ(続く)

  • 142122/09/16(金) 22:47:30

    あと一話で終わらない気がしてきた

  • 143二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 03:29:35

    ほしゅ

  • 144二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 10:42:24

    御真祖様どうしたんだ…ドラウスの件を踏まえると失踪の理由はそっち関係?

  • 145二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 21:10:12

    保守

  • 146二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 00:39:21

    ドラウス達と別れたドラルクとジョンは、再び街を歩く。

    通りを歩いていると、いつもの変態達が騒ぎを起こしているのが見えたが、吸対や退治人がすでに現場に駆け付けているのが見えたので任せることにした。
    今日はどんな変態が暴れているのやらと遠目で見ていると、何故か少し離れた場所からその騒ぎを眺めている野球拳の姿が見える。

    「おや、今日は騒ぎも起こさず見てるだけなのかい?」「ヌー(グー)」
    「正直タイミングに迷っててよぉ……、ほい(パー)」
    話しかけると野球拳が渋い顔で返事をする。
    かつてであれば誰彼構わず野球拳を仕掛けるのが彼の信条のようなものだが、どうやらこちらでは勝手が違うらしい。

    「確かに野球拳は俺の信念、生きがいよ。だが最初の段階で下手に退治人軍団に協力してたもんだからちょっとなあ」
    「そういうところ気にするんだ。意外~」「ヌァーーー(毛をじょりじょりされた)」
    「いや別に俺は野球拳の為ならいつだって退治人どもにも野球拳をお見舞いする気概よ!ただ、ちょっと妙に懐かれた奴がいて」
    「へ~、マスターの娘さんとか?」「……」
    図星だったらしい。

    「いや、それだけじゃねえよ!それだけで俺の野球拳道がぶれてたまるか!カワイ子ちゃんと野球拳する為なら俺はいつだって命を張るぜ!!」
    「じゃあもう一つの理由はミカエラ君?」「……」
    また図星だったらしい。

    しかも今度は頭を抱えたので相当に悩ましい問題らしい。
    「なんで身内がよりにもよって吸対なんだよめんどくせえ……」
    「しかもミカエラ君割と職務には真面目だしねえ」
    「透とはそれなりに話せるようになったがアイツは……、うん」
    野球拳の様子を見るにあまり芳しくはないらしい。

    「その様子だと記憶は変に刺激したくないんでしょ?」
    「思い出さんで良いわ、こっちで問題なく生きてるんなら別に必要なもんでもないだろ」
    「それ言ったらミカエラ君怒りそう~」

  • 147二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 00:40:11

    だがまあ、それ以上の事はドラルクが口をはさむ事でもあるまい。
    ドラルクはそれとなく話題を変える。
    「じゃあ野球拳解禁はしばらくお預けかな?まあ私としては仕事減るから別にいいけど」
    「いやっ!!俺は絶対に野球拳を手放さない!何が何でもムチムチお姉ちゃんたちに野球拳を仕掛けるまで俺は……!」
    「エッチな話ですかな?」

    ドラルクと野球拳はゆっくりと後ろを振り向く。
    そこにいたのは、目をキラキラと輝かせるちょび髭を生やした強大な象芋虫のような何か。

    「エッチな話ですかな???」

    ディッケーナである。



    「出たな汚いムー〇ンパパ」「おっさん通常営業に戻ったんだな」
    「ええ、今の私は心に曇り一つの無い晴れやかな空のごとくです。これでエッチな事を考えるたびに萎える必要もありません」
    そういうとディックは名状しがたい様々なエッチな形を身体に表出させる。流石ドゥーブツ家の家長というべきか、へんなには出せないようなクオリティの数々だ。
    「いや、いいです。エッチはこれ以上はいいんで」
    「そうですか?遠慮しなくともいいのに」「遠慮じゃなくて見てるだけで胸焼けするんじゃ」

    ディックはすんっと元の象芋虫体型に戻る。
    止めなければ公然わいせつ物が街のど真ん中に建立する所だった。

    「で、エッチな話の続きは?」
    「ねえよ」「あんだけ複雑な解説役やってたとは思えないくらい欲に忠実だな」
    「以前の私はドスケベな思考に集中できなかったので無駄なところで頭脳を使ってしまったのです。これが本来の私、いわばトゥルーフォームというやつですよ」「どれだけ知能指数がドスケベで占領されてるんだ戻って」

    エッチな話がこれ以上広がらないと見て残念そうな象芋虫を横目に、ドラルクはうっすらと気になっていた事を尋ねる。
    「そういえば、二人はどうやって「アレ」に取り込まれた世界で生き残ってたの?普通にしてたら詰みじゃない?」

  • 148二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 00:41:12

    あの電気もまともに使えない暗闇の世界でどうやって生き残れたのか。

    「俺は普通に結界張っての耐久戦よ」
    「思ってたよりもごり押しだな。結界効いた?」「そうじゃなきゃ生き残れてねえだろうが。あのフクマって編集が来るまでの時間稼ぎにはなった。それ以外できる事もなかったしな」
    「じゃあ、ディッケーナ氏は」「私は皆さんも見た筈ですよ」

    「月です。月になってあの空間を漂ってました」
    「……それがちょっといまいち納得できないんだよね。変身した偽物の月でも有効なの?」
    「月というのはそれだけ一度に飲み込むことが出来ないほどの畏怖を多量に含んでいると言う事でしょう。それに、月の光は太陽光からの反射ですからね。天敵の光をずっと見せつけられているようなものです。そして、我が一族の変身はその光の成分まで再現できます」

    「能力だけ聞いてりゃクソヤバいのに普段お出しされるのは象芋虫ってあたりが残念の極みだな。クソ能力学会のメンバーが歯噛みして憤死してしまうぞ」
    「自分の心にもっとあけすけになればさらなる深みのある変態能力が芽生えたりもすることもありますよ。ドラルクさんたちもどうです?」
    「一生いらんわそんな能力」

  • 149二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 00:42:14



    ドラルクは野球拳やディックと適当に別れると、またジョンとともに目的地の方まで歩いていく。
    道を歩けば、ゼンラ二ウムだったり、一般市民の変態コミュニティ活動だったり、イケメン求めて駅前占い師やってるフランチェスカだったり、ダチョウの行進だったりとありとあらゆるトラブルで今日も溢れている。
    今日ばかりは巻き込まれないようにと深入りしないように移動して、ようやく、目的地の場所までたどり着いた。

    駅から徒歩7分、家賃8000円の普通の感覚なら到底借りないような訳あり物件。
    そういえば一度何か壊れた気もするが、すでにギャグマンガ修復能力が活性化しているので元通りに戻っている。
    多分オータムで修復工事でもしたんだろう。

    ビルの中に入って、一階のポスト欄を見る。


    __ロナルド吸血鬼退治事務所(ドラルクキャッスルマークⅡ)
    懐かしい字面が、テナント名に収められていた。


    ヌヌヌ(続く)

  • 150二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 10:56:39

    ほしゅ

  • 151二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 15:42:03

    拳兄もへんなパパもかっこいいな
    そろそろ終わりが近づいていることが寂しいような…
    続きが気になる!

  • 152二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 22:51:44

    保守

  • 153二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 23:45:14

    ドラルクが軽快な足取りでビルの階段を上っていくと、上の方から男の何を言ってるんだか分からない叫び声と高笑いが聞こえてくる。
    やってるなあと思うだけでドラルクは特に驚いたりすることもない。なんなら日常のささやかな1ページくらいの出来事だ。

    目的の階まで上がっていくと、事務所が入ってるテナントのドアが勢いよく開けられ、黒髪の男が高笑いで出てくる。

    「フハハハハハハロナルド!!!次の襲撃を震えて待つがいいわ!!!!フハハハハh……」
    その男、半田とドラルクの目があった。
    ドラルクが以前ロナルドの念動力強化訓練として頼んでいたセロリ襲撃をいまだに忠実に守っているらしい。もはや趣味の域だ。

    「ドラルク隊長!お疲れ様です。今回のロナルド襲撃訓練に関しては後で書類で提出しますので」
    「ああ、うん、君本当変なとこアンバランスだよね。ご飯食べてく?」
    「いえ、これからパトロールがありますので俺はこれで」
    「そっか。じゃあまた明日。気を付けてね~」「ヌイヌーイ」
    一人と一匹が半田を見送ると、改めてドラルクは扉の前に立った。

    扉には、ロナルド吸血鬼退治人事務所と書かれている。
    そしてドアの横には、「どなたでもお気軽にご相談ください」の文字。
    耳をそばだてると、半泣きの男の声と、キリっとした少女の声。
    なんとなく何が起きているのか想像しつつ、ドラルクは遠慮なく扉を開いた。

    「ほらっ、全部取ったぞ芋虫型動く小型セロリ!」
    「ヴァーーーなんであいつ俺への嫌がらせの為ならこんなグロ画像一歩手前みたいな造形量産できるんだよ!!!もはやセロリへの冒涜だろこんなん!!!」
    「あっ、芋虫の一体がサナギになったぞ。もしかして蝶になるのかこいつ」
    「んなもん滅却処分だ曲がり間違っても俺の部屋で羽化させて舞い上がらせるんじゃねえ!!!」

    チュドン、という念動力を制御を失敗した時の小さい爆発音が聞こえた。
    少し煙たくなった事務所の臭いを手ではたはたと飛ばしながら、その騒がしい部屋へと入る。

    中には、黒いゴミ袋に大方のゴミを回収したらしいヒナイチと、先ほどまで泣き叫んでいたがようやく平静を取り戻したらしいロナルドがいる。

  • 154二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 23:45:48

    「あっ、ドラルクとジョン!」「んあ?」
    二人が、それぞれの表情で入ってきた一人と一匹を見た。

    「おかえり、随分遅かったな!」「おかえり~ジョン!……と、」

    「「と?」」

    ロナルドの言葉を、ヒナイチとドラルクが目ざとく聞き返す。
    ロナルドは気まずそうに目を逸らし、凄く迷いに迷い、そして。

    「と、と……、」
    「なんだね改まって私の名前すら言えんのか?忘れたとは言わんよな脳みそゴリラ~~???」
    「やっぱムカつくわ無しだこのクソ貧弱胃弱弱おじさん」
    「ヘッドロックは止めろバカ!!!痛たたたたたたた!!!」「ヌァーーーー!!!」

    「おら、とっとと自分の荷物確認しろや、ドラルク!移動させるのめんどくさかったんだぞ棺桶とか!」
    「棺桶くらいでギャーギャーぬかすな引っ越し作業なんざ脳筋ゴリラの使い道の有効手段の一つだろうが!」
    「ああ!?最近は腕力だけじゃねえことを見せてやろうか!!」「さっきセロリを見事に爆発させてただろうが敷金気にしてるんじゃなかったのかね!?」
    「ほら二人とも、それぐらいにしとけ。それよりもお腹減ったぞ」
    ヒナイチがドラルクの服の裾をぐいぐい引っ張る。
    「私仕事終わった後なんだけど!?……まあいいか、何作ろう」

    「からあげ」「仕事終わった後に揚げ物を要求してくるなこの五歳児!!」
    「私はオムライスで良いぞ」「ヌーヌン(ラーメン)」
    「誰も遠慮しねえ!冷蔵庫の在庫状況からオムライス一択な!!」

  • 155二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 23:46:32

    はぁー、とため息をつきながら仕事の上着を脱いで、エプロンを取りにずかずかと住居スペースの方にドラルクが歩く。
    まったくこの五歳児どもは遠慮というものを「ドラルク」


    「おかえり」

    「……ただいま」

    ドラルクは、あえて後ろを振り返らず。

    ロナルドはそれ以上何も言わず。

    ヒナイチはとジョンはその様子に軽く微笑む。

    それ以上は特別な事はしない。
    特別な事も、悲しい事も、もう終わったのだから。

    あとにあるのは日常だけ。
    以前と少し形が変わった、この事務所の日常がこれからも続いていく。


  • 156二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 23:47:48

    何も見えない暗闇がある。
    暗闇の中を、一人の長身の男が歩いている。

    ハロウィンのランタンの起源をご存じだろうか?
    ハロウィンのランタンとは一説に、悪魔との契約により地獄に落ちることは無くなったが生前の行いがあまりにも悪かったために天国に行くことも叶わなくなった男が、地獄とも天国ともつかぬ場所を歩くために、カブをくりぬいたものに火を灯しランタンの代わりにしたことが起源とされている。

    今のこの男の状況もそれに近いのだろうか。
    神に近しい存在に抵抗し、あまりにも超常の力を使いすぎたこの男は、自分の形を無くしかけ、もう現世に戻る事が叶わなくなっている。
    だがこの男は別に不幸ではなかった。

    彼にとってのランタンがあったからだ。


    「マイフレンドアルミニウス」
    「……なんだ」
    一人で歩いていた男の近くに、少し背の低い眼鏡をかけた男がいつの間にか一緒に歩いていた。

    「つきあわせてごめんね」
    「……」

    眼鏡の男は、非常に何かを言いたげだったが、だが諦めたようにため息をついた。
    「別にお前だけの責任じゃない。私は人間世界に多大な被害を及ぼす恐るべき怪物を倒すために尽力し、その結果がこうなっただけだ」
    「激ヤバだけど楽しかった」
    「んなこと言えるのお前だけだよ私がどれだけ原稿で泣いたか分かってるシングか!?」
    「後スコーンくらいは作りたかった」
    「ここぞとばかりに修羅場用のお茶菓子量産しやがって!!美味かったけど!!!」
    「フフフ」

    長身の男は非常に愉快そうに笑う。
    この男がいる限り、少なくとも長身の男は不幸なんかじゃない。

  • 157二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 23:48:38

    様々な悲劇に偶然に偶然が重なっての再会で、いろんなものが無くなってしまったが、長身の男にとっては大きくプラスだった。

    「さて、ただの闇にも飽きた」
    「飽きたってお前。飽きたからって終わるもんじゃないだろ」
    しかし長身の男は、この神にも等しい畏怖すべき吸血鬼は、大きく翼を広げて風を起こす。

    眼鏡の男が思わず目をつむった。
    そして次に目を開くと、


    「なんだこれ」

    目の前に、数えきれないほどの瞬く星が広がっている。
    いや、星空の中に自分が浮かんでいる。

    宇宙の中に、自分がいる。

    「旅行行こう、マイフレンド」
    「今度はどんな無茶苦茶するつもりだお前!!!」

    「遥か彼方、宇宙人を探しに」
    「それ何百年かかる奴だ!?ウォー〇ーを探せのノリで見つかるやつじゃないんだぞ!?」
    「高難易度歓迎」「私は非歓迎!!ってヴォヴァアアアア!!!!」

    長身の男が自分の姿かたちを竜へと変え、自分の親友を背中に乗せる。

    そして、大きく羽ばたいた。
    また、新しく楽しい事を探しに。

  • 158二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 23:49:35



    「あ、流れ星」

    たまたま空を見上げていたロナルドの視線の先に、巨大な流れる星を捉えた。
    何か願い事をする暇もなく消えたその星が少し勿体ないが、全ては後の祭りだ。
    貴重なものが見れたとだけ喜んでおこう。

    そんなことよりも、目の前の仕事である。

    ロナルドは赤い外套を風で羽ばたかせながら眼下の街を見る。
    今日も今日とて新横浜の街はポンチ騒ぎのお祭り模様。
    下に行けばもれなく変態の被害にあうであろう。

    それはいい。いつもの事だ。
    ロナルドはとんっと街の方、騒ぎの中心へと降り立っていく。

    今日の火元はVRC。ヨモツザカのうっかりにより巨大な元キッスがゴジラ並みに巨大化し、ありとあらゆるイケメンを吸いつくそうとキッスの乱舞を街に降り注いでいる。

    『イィ~~ケェ~~メェ~~~ン~~~』
    元キッスは咆哮代わりにイケメンを叫んでいる。これは骨が折れそうだ。

    「ロナルド!待ってたぜ!」「アイツどうしばく!?撃つか?」
    新横浜のハンターたちがロナルドの方に集まってくる。
    「おう、まずは」

    「まさかシンプルな暴力なんて安易な方法を選択するんじゃないよね?退治人くん」

    背後からの声がロナルドの図星をついてくる。
    振り返ればそこには、吸対服のドラルクがいた。

  • 159二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 23:49:58

    「ああ゛?ただの暴力じゃねえよ頭を使った暴力だ」
    「んな屁理屈いつまでも通用すると思ってるんじゃないこのウスラトンカチが!!あの戦い以降IQ下がってないか君!まあいい、アレを効率よく処理する為の良い策がある。私の指示を聞け」
    「なんか偉そうでムカつく」「事実偉いんですぅ~~!!ほらとっとと指示を聞かんか!!」
    「碌な指示じゃなかったら暴力にすぐ切り替えるからな!」「そんな隙作るものか、ヒナイチ君!準備できた!?」

    ドラルクとロナルドから少し離れた先に、吸対の制服とは違う、どちらかと言えば退治人に近い意匠の服を着たヒナイチが二本の刀を構えて指示を待っている。

    『ああ、こちらはいつでも準備OKだ』

    「よし!それでは元キッスイケメン一本釣り作戦を開始する!!ついて来たまえロナルド君!」「やっぱ暴力に切り替えるわ!!」

    あの事件以来、いろいろな形は変わってしまったが、それでも本質はきっと変わっていない。

    「チクショーやってやる!!」
    「昔みたいになるべく決めろよ若造!イケメンオーラが大事だからイケメンオーラ」「うるせえ今やると割と抵抗あるんだよアレ!!」

    ロナルドが巨大な吸血鬼に向かって叫ぶ。

    「おい俺を見ろ吸血鬼!」


    「この吸血鬼退治人のロナルド様が、お前を退治してやるぜ!!」


    眠らぬ街の人と吸血鬼のバカ騒ぎは、今日も変わらず続いていく。


    ヌン(完)

  • 160122/09/18(日) 23:56:09

    だいたい4月から始まって5か月近くでしょうか。
    最初2スレぐらいで終わらせるつもりが伸びに伸びてこんな大長編になるとは思っていませんでした。
    保守、感想等本当にいつもありがとうございました。

    トータルの文字数だけで言うと40万弱、だいたい文庫本4冊ほどの量となりました。
    これほど長く書けたのは感想とか♡押してくれた方たちのおかげです。本当に本当にありがとうございました。
    とりあえずスレ残りでちょいちょいあとがきというか各キャラを動かしていた時の雑感、各篇の感想とかも書けたらなあと思っています。もしよろしかったらもう少しお付き合いください

  • 161二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 08:42:38

    大団円だ……読了後の満足感すごい
    お疲れ様でした、おまけも楽しみ!

  • 162二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 10:57:56

    完結おめでとうございます&ありがとうございます!
    シリアスとおポンチのギャップもラストバトルから日常奪還までの胸アツ激エモ展開も軽妙な言葉選びも最高でした……!
    シンヨコのバカ騒ぎも御真祖様とヘルシングの新しい冒険も末永く続け! 幸あれ!!
    スレ主さんお疲れ様でした!! あとがきも楽しみにしてます!!

  • 163二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 12:01:35

    完結お疲れ様です!
    最後まで充実していてとても面白かったです!!ありがとうございました!

  • 164二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 14:19:35

    完結お疲れ様です!!
    笑ったりハラハラしたり更新が毎日楽しみでした
    終わっちゃうと思うと少し寂しいですが文句なしの大団円!
    良いものを読ませていただきました ありがとうございました。

  • 165二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 21:51:24

    あとがきめいたもの

    そもそもスレ立てたきっかけになったのが確かにっぴきスレあたりで出たみっぴきが全員吸血鬼だったら?って話題だったかと思います。
    ヒナイチが吸血鬼派生がちょっと見て見たかったのと、前も言った通り血の繋がってない湿っぽい感じの疑似兄妹ネタとかやってみたいという興味本位だったんですけど最終的に湿っぽさ全然出なかったですね!
    訳アリを匂わせながら心の傷深そうな疑似兄妹のしんどいネタとか膨らませられたらとか思ったんですけど結果は御覧の通りです。二人ともそういうキャラじゃなかった!!

    ドラルクもまだΔのホワイトデー情報が出るか出ないか位に考えた設定だったので、初期のダンピールドラルクがちょっとぽやっとした感じになってます。最初期のイメージはそこまで治安が悪くない新横浜で色々あって平和に隊長やってる位のイメージだった。Δが想定よりもハードな世界観だったのでちょっとずれましたね。

    この話、根幹の設定だけ考えて終わりも伏線も何も考えず始めたSSだったので、ほぼ6~7割ぐらいは即興で話を作っています。
    いつも話を作る場合は終わり方まで完全に煮詰めてから作るのですが、ここまで即興だったのは初めてです。
    この話をSSとして連載すると決めた時に、終わり方の指針だけは決めており、

    ・だいたい全五話構成
    ・最後は変態が暴れることで敵が弱体化する。
    ・最後の敵のとどめはドラルクがヒナイチの刀で終わらせる。
    ・一番強大な敵をロナルドが仕留めたことで力を使い果たし、消滅しかける。しかし元のドラルクの心臓を与えられる事によって蘇生する

    ここだけ決めて、後は一話区切りごとに展開を細かく作った形です。1話で退治人ギルドの話、2話で吸対視点の話、3話あたりで3兄弟をメインに置いた話を書こう、みたいに。
    ただ強大な敵に翻弄されるだけで物語の進捗状況が伝わらないのは不味いと思い、嘘予告の心臓を譲る話から逆算して、「敵は吸血鬼の心臓を取り込んでおり、それを集めることが敵の弱体化に繋がる」、という中期目標みたいなものができました。

    畏怖関連の設定は自分が吸死読んでいてなんとなく考えていた自己考察から出しています。
    恐ろしい訳の分からない何かが、変態や笑いによって完膚なきまでに吹き飛ばされる構図にしたかったのです。
    なのでこのあたりの設定開示も物語の進捗状況に合わせて出して言った形ですね。

  • 166二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 21:52:43

    それ以外の展開は大雑把に決めるのみなので、翌日の話の展開は翌日の自分にぶん投げることも珍しくないライブ感でできているような作品でした。

    ライブ感でできていたので設定の矛盾やとくに後半の展開がグダついたりとか色々反省する点も多かったんですが、そのおかげで自分でも予想がつかない事をキャラが起こすことも多くてそういう意味で非常に書いていて楽しかったです。
    具体的に言うと全く予定外の行動をキャラにされたり、予想外に話が増えたりとかしました。

    以下例をあげると
    ・ちゃんとイケメンで書く予定のショットさんが急に脳内で地上の星歌い始めて3枚目ムーブを始めた。
    ・VRC編を書く予定が全く無かったのにまるまる一話生えた。
    ・初期の平和な新横でぽやっとした感じだったドラルクが、ノースディンが登場するやいなやたちまち元のクソ雑魚煽りおじさんに戻った。
    ・ヒナイチが初めてクルースニクの能力を使い始めた時、暴走させる予定全くなかったんですが書いてみたら自分が思っている以上に怒って暴走しはじめてびっくりした。
    ・ロナルド君の吸血鬼化に対する戸惑いと拒否感が想像以上に強くて納得をどうさせるかで迷った。
    とかありました。

    VRC編は本当に書く予定なかったです。
    というかヨモツザカに下手に触ると風呂敷が畳めなくなる恐れがあったのであんまり深堀が出来ませんでした。
    ただサテツは一度収容されないとおかしいし、初期の血気盛んな「アレ」だったら襲撃するだろうと思いあんなことに。
    スコスコ妖精は本当にギリギリまで生かすか心臓化させるかで迷いました。

  • 167二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 21:53:34

    ヨモツザカのように深堀できなかったキャラは他にもいて、エルダーとヴェントルー辺りはその筆頭です。
    マナー違反はともかくとして、エルダーは「アレ」に取り込まれるイメージが無かった(普段から警戒心が強いのでそうぼろを出さない)のとちょっとキャラの動かし方に迷いがあってあんまり触れなかったですね。
    ヴェントルーも取り込まれた経緯を書いてしまうとタビコ周りの話も含めて新たな風呂敷が広がる予感しかなくて書けなかったです。

    あとハンター側だとヴァモネさんでしょうか。
    ホワイトデーも嘘予告もΔも読み切りも欠片も情報が無かったためにモザイクの世界では本編世界以外では存在確認できずという扱いで書くことが出来ませんでした。
    いや本当に何者なんだろうなヴァモネさん。

    あと設定を考えてたけど出せなかった話だとアルコちゃんとタマちゃんとヘルシング周りですね。
    シンヨコトリオもそうだけど子どもの被害はちょっと……。
    ヘルシング自体は剣だけで捨て置かれ、暗闇に取り込まれた辺りでご真祖様に回収されております。

    長くなるのでまた明日!

  • 168二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 06:51:41

    保守

  • 169二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 16:57:12

    ヌシュ

  • 170二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 18:13:47

    完結お疲れ様でした!
    ワンピカテなら見事な神ssだと語り継がれるの画像貼るのに…
    吸死にはそれ系の画像が無いのが惜しい

  • 171二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 18:45:30

    本編&後日談完結、本っ当にお疲れ様でした!すごくいいss(文庫本4冊分のショートストーリー…?)でした!
    あとがきもありがとうございます!第2弾以降も楽しみにしてます!

    (…画像で思い出したけど、2スレ目3スレ目の時に、ファンアート描いたけど、メインのみっぴきどころか吸血鬼でも退治人でも吸対でもラスボスでもないから、スレ主に「ファンアート挙げていいですか」とも聞きづらくて画像フォルダに入ったままの絵があるんだった…。)

  • 172二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 22:41:49

    各話雑感編

    ・最初期SSいくつか
    伏線の回収などまともに考えていなかった時期なのでとりあえず重たい空気だけ匂わせたり、ネタとして美味しい所をつまむ程度の内容が多かったです。
    そもそも完結させる予定もなかったのですが、1800字程度で地の文そんなに書かずにサクサク話進ませて最低限の伏線だけ回収する程度なら一か月くらい集中してやれば終わるんじゃないか?と考えて開き直って長文で書き始めたのがきっかけでした。
    甘かった。地の文はバリバリ増え最低限どころか話は膨れ上がり一日平均2500字更新となり5か月かかった。
    甘かった。

    この時期は「アレ」の設定もフワフワしていたのでちょっと今とバトルの質感が違いますね。
    心臓の回収とかについてはこの時期まだ考えていなかったので核とか変な言い方してます。
    他の吸血鬼の能力を取り込んでいるのは決まっていたので、カードゲームのコンボみたいな感じで複合したらエグイ能力とかを考えてました。

    あとディック使うの珍しいと初期言われたのですが、自分がタキシード仮面構文の下ネタが好きだったのであのノリが出したい一心で出しました。
    そしたら思った以上に解説役として優秀だったので最終的に手放せない人材に。原作でもディックは解説上手いんですよね。へんなの能力が暴走した時とか。

    この時期作者側で発生した問題としては、吸血鬼としてのロナルド君があんまり強く書けなかったことです。
    Δは読んではいたし、死なない吸血鬼で強い!というのは分かっていたんですが、吸死の吸血鬼の本気バトルがどれくらい能力行使していいのか加減が分からなくて非常に困りました。
    具体的にどこまで無法をしていいのか分からなかったんですよね。とりあえず怪力と再生は標準装備とするにしても、超常の力をどこまで使えるのか分からない。
    なので初期は開き直って力をまだあんまり使いこなせていないという設定でゴリ押すことに。ノースディン修業編の構想がでてきたのもこのあたりです。

    ・吸対襲撃篇
    ロナルドとヒナイチ視点が続いたので次はドラルクだろうと言う事でドラルクメイン。
    この回に関しては籠目原パパに威厳とプレッシャーを出せるだけ出させて最後にマイクロビキニで落とすと言う事だけを心に決めて書きました。

  • 173二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 22:42:48

    ちなみにこの次元のミカエラはこの回までマイクロビキニに目覚めていなかったという裏設定があります。マイクロビキニは惹かれあう。警察署の下着チェックの話を決めたあたりで、最後の終わりはマイクロビキニを筆頭に変態に染まってしまった警察官のみなさんの変態下着祭りを書こうと決めました。
    ヘルシング周りの設定を固めたのもこの辺りですね。

    ・サテツ襲撃篇
    退治人回。またの名を輝けるショットさんの回。せっかくシリアスやるんだから皆のカッコイイ所書きたい!の意思でバトルは比較的カッコよさに盛ってるんですが、勝手に動いた話でも書いた通りショットさんはカッコイイで終わってくれませんでした。ショットさんはすごいなあ、ぼくにはとてもできない。この回のY談は本当に悩んだ。
    サテツを強敵として出すの楽しかったです。この時期のロナルド君はあんまり絡め手できないのとサテツがフィジカル重視なのもあってシンプルな殴り合いが派手で良いです

    ・VRC編
    サテツ編終わったらノースディン修業編やろうと決めてたんですがまさかの突然のVRC編開始。
    巨大な子ゼンラ二ウムがバイオハザードの迫りくる壁みたいに尻で迫ってくるの絵として超嫌だろうなあと思って書きました。
    最初はヒナイチを活躍させたいから普通に小ゼンラ二ウムを斬らせるつもりだったんですが、刀は流石にグロくないか?と迷って日和りました。ジョンの「ヌ゛!!」がお気に入りです。
    本編的な事を言うと三人の心理周りが比較的よく書けたのではないかなと気に入ってます。
    あとでキャラ感想でも書きますが、ロナルド君の感情の塩梅が結構難しい。

    ・ジョンのおつかい、その他小編
    さあ次はノースディン、かと思ったらジョンとその他小話です。
    ナギリとカンタロウは絶対に深堀はできないと分かっていたのですが、なんとか存在感は出したいなと考えてひねり出しました。
    ナギリの曇らせは原作が最大手でやる事がないのとこういう二次創作くらいはいい空気吸っても良いんじゃないだろうかと思ってああいう扱いになってます。
    片腕無くなっても元気にタピオカ屋やってるイシカナさんもお気に入りです。

    ・ノースディン&レッドバレット編
    ようやく満を持してのノースディン登場。長かった。

  • 174二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 22:43:33

    原作のノースディンがロナルド君の事を特に呼んだ事が無かったり、ほどほどに人間と距離を置いている感じがあったので、ロナルドとヒナイチを名前呼びにするかどうかで凄く迷いました。
    でも一度弟子としておくとなったらそれなりに身内扱いはしてくれそうな気もする……。難しい。

    あとこの編は何と言ってもヒマリとヒヨシでしょうか。
    ロナルド君を徹底的に追い詰めるのであれば家族関係は外せないと思ったので、かなり気合を入れた思い出があります。
    ロナルドVSレッドバレットを書きたかったのはもちろんですが、ノースディンVSレッドバレットもかなり書きたかった対戦カードなので書けて嬉しかったです。
    個人的にノースディンとヒヨシは主役二人の価値観に大きく関わってくる存在だと思っているので意図的に同じタイミングでスポットを当てました。

    ヒマリちゃん最後の変態祭りでチノミダイダラと一緒に出そうか迷ったんですけどちょっと出せなかったですね。
    これ以降の話であんまり触れられなかったのがちょっと心残りです。

    ・廃病院編
    大長編となりました。この編を書いている時が一番胃が痛かったです。
    主な理由は三兄弟で、とくにミカエラと透を書くのが大変でした。
    初期設定考えてた時点では深く考えていなかったのですが、モザイクミカエラは吸死本編のミカエラを構成する重要な記憶(マイクロビキニと野球拳)が抜け落ちてて、この二つの記憶が抜け落ちている時のミカエラがどういう性格になるのか分からなかったからです。
    色々とコンプレックスとトラウマがありそうだと言う事は分かるのですが、オリジンというか根本的なパーソナルな部分を構成する過去話が伏せられている為、ifのミカエラがいまいち想像しづらく手ごたえもないので本当に困りました。
    同じような例だと半田は本編半田の経緯が分かっているので、ロナルド達と出会わなければこうなるだろうというのはなんとなく想像できるのですが、ミカエラは本当に分からない。
    自分は吸血鬼マイクロビキニの事は分かるけどミカエラの事はよく知らないんだなと言う事を思い知らされました。

    透はミカエラほどではないのですが、ちょっと口調やノリを変えると性格が全然違うように見えるので別の難しさがありました。
    何度も19巻と過去登場回読み返したんですけど本当に自信がなかったです透。

  • 175二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 22:50:49

    あっちゃんは複合霊と言う事で、色々なドラマが積み重なって存在しているんだろうなと言う事を膨らませて書いた形ですね。

    ちょっとしんみりする話も書きたいの一心で書きましたが、透、これやってくれるかな?の連続で凄い不安でした。

    本当に胃が痛かった。


    廃病院編の感想まだまだあるので明日に続きます。



    >>171

    ファンアート描いていただいたという事実だけで本当にありがたいです

    挙げることに関しては特に制限とかしていないので見せていただけたらうれしいです

  • 176二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 08:23:31

    保守

  • 17717122/09/21(水) 14:43:24

    更新乙です!&許可ありがとうございます!
    ということで「この二人が両方人間のモブのまま平和に暮らしてる…!しかも同僚、さらにコンビっぽい!」とブチ上がったテンションのまま描いた絵です。いずれもこのスレが2~3スレ目の時に描きました。
    そういうわけでモブがモブしてるだけの絵です。

  • 178二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 23:13:33

    ・廃病院編続き
    ミカエラ透程ではないですが、野球拳も結構不透明な所が多かったので三兄弟で絡ませる時が地味に悩みどころでした。三兄弟は本当に過去周りが鬼門です。
    野球拳個人だと気が利くのと、本当にヤバい状況の時は助けてくれる人なのでお話を回す時非常にありがたい存在でした。

    サンズちゃんと白パパは出したかったキャラの筆頭でした。ロナルドがらみで頑張ってるサンズちゃんも好きですがヒナイチに辛辣なツッコミをするサンズちゃんが好きです。
    白パパは顔圧さえなければ本当に良い人なのにあの周りのアンジャッシュぶりが好き。
    前話のノースディン編でロナルドのパワーアップが成されたので、ヒナイチ側にも戦力のテコ入れをとなって出てきたのがあのクルースニクモードになります。ヒナイチは最終的にあんまり吸血鬼の能力使わなかったですね。もうちょっと使えばよかったかも。

    あとこの辺りで変態吸血鬼の能力コンボのネタが無くなってきて、何か新しい変態を……!と苦し紛れに出てきたのがあの人間の変態軍団です。流石に新規で変態吸血鬼を出す度胸は無かった。

    カメ谷半田もどこかでロナルドとの話を書きたいと思って出しました。
    この回のカメ谷偽物でしたが、カメ谷本人はロナルドを被写体として気に入っているイメージで書いたので騒動が終わった後も取材にちょくちょく来てると思います。記憶が無くてもまた3人トリオで何かやってるかもしれませんね。

    ・特級Y物と武々夫編
    武々夫、実は初期の設定だと吸血鬼化したうえで店長とセットで出す予定でした。
    悲劇的な結末で死んだけど吸血鬼楽しそうっすね!!というたいした理由もなく親子そろって吸血鬼化し、ロナルドがバカーーー!!と叫ぶネタやりたかったんですが、吸血鬼化したキャラが多くて流石にバランスが悪いと言う事と、ちょっと吸血鬼化の設定が当初とずれてしまったので没りました。

    この回のポイントはやはりドラウス。
    ドラウスは能力の自由度の幅も大きく強大なのが分かりきってるので、絶対に弱いって思われたくない一心で書いてました。
    戦闘のネタ出し自体は大変だったんですけどロナルド君側もド派手な戦闘が出来て満足です。
    ジョンのジェラヌーに関しては、記憶なくてめちゃくちゃ距離の近い犬(狼)がいたら絶対ジェラるよなと考えあんなことに。
    武々夫に振り回されるドラウスはもうちょい詳しく書きたかったですね。

  • 179二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 23:15:09

    ・過去編
    初期は過去編きちんとやらなくてもちょいちょい過去のエピソード挿入すればなんとか説明できるんじゃない?とか考えてました。無理でした。
    大惨事の描写次第でこれまでのロナルドとヒナイチの様子が全て茶番になるので、絶対に心を折るつもりで特に気合を入れて書いてます。ギャグマンガの絶望は、普段しょうもないギャグやってる平和の象徴のようなキャラが悲惨な状況で欠けた時ほど色濃く出ると思ってます。

    ちなみに「アレ」に支配された暗闇の世界は何もせずそのままにしておくと、そのうち暗闇が新横浜外の街までどんどん広がって飛躍的に巨大化していき、最終的に列島どころか星丸ごとを飲み込みます。星一つ沈んだら次の星に飛散して感染を繰り返すという非常に厄介な性質持ちです。
    初期段階で叩けばそんなに強くはないんですが、一度巣を作られると根絶が非常に困難になるので放置してはいけないタイプの敵だったりします。

    ・祭り準備&サンダーボルト編
    サンダーボルトのネタはかなり初期の方から考えてたんですが、変態に目覚めていないサンダーボルトを変態に目覚めさせようとするネタがちょっと直近の本誌と少しネタがかぶってしまってやっちまった感がありました。
    ただヒナイチ君がいるとできない変態ネタ出来たの楽しかったです。雑な変装と女装は吸死の花。
    今考えるとロナルド君とドラルクにもっと汚れやらせてもよかったですね。脱稿ハイとか。ただ脇リンゴジュースは流石に思いつかないです。

    ・最終決戦
    最後にみっぴきが本編の恰好することとドラルクに開始の音頭取らせることは最初の方で決めてました。
    とにかく変態で埋め尽くしてバカらしさで街を救ってしまえというコンセプト。
    出したかったけど出せなかった没案の一つに、Y談おじさん登場後に街がY談とエッチな気分であふれかえり、エッチなことを考えると流れ星を降らせるおじさんの力によって街に特大の元気玉ならぬエッチ玉が流れて白骨龍に変化している「アレ」に直撃して致命傷寸前まで行くというネタがあったのですが展開の兼ね合いの関係で没になりました。残念。

  • 180二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 23:16:00

    なんで没になったのかというと、一番デカかった問題が「ロナルド君どうやったら弱るの」問題です。
    初期にロナルド君を瀕死まで追いつめると言う事は決めてたんですけど、Δの設定聞く限りめちゃくちゃな再生能力でどうやったら弱るの……?と本気で頭を抱えました。
    その為「アレ」に結構なダメージは与えているはずなのにギリギリまで炎と氷と辻斬りの能力が出ずっぱりという異常事態に。
    かといって変に弱らせるのを早めると最強格のキャラクターなのに最強に見えない問題が出てくるので手が抜けません。
    最後の方はここまで派手に炎と氷で攻撃したんだから頼む弱ってくれ!!という気持ちで一杯でした。

    この回で印象的な出来事はあと吸血ですかね。
    一度書きたかったんですけど、普通に生きてる分にはシンヨコの吸血鬼特に人間を噛む理由ないのでよっぽど状況がひっ迫してないと書く理由が無いんですよね。
    あと連載時にも言いましたが変にエッチな感じになるので本当に困りました。流石吸血鬼AVの定番描写。

    やりたかったけど結局できなかった描写の一つに、ダンピールドラルクが血液錠剤もない状況でかなり追いつめられてしまい、現場に残った血を少し舐めることで無理やり自分にブーストを図るという描写もありました。書くタイミング逃しました。

    ・エピローグ
    ご真祖様が強大な力を使いすぎて元に戻れないことは割と初期に決めてました。
    最初は暗闇の中をヘルシングと二人で歩いて、あの世に行ってしまったかもしれない?という描写で締める案もあったんですが、ヘルシングがいてテンション上がったご真祖様はきっともっと楽しい事を探し始めると考えて、旅行エンドになりました。

    ちなみにフクマさんも今回の騒動でかなり人外に片足突っ込んだんですが、まだギリギリ人の世に残れてます。ただ年は普通の人間のようには取れないかもしれません。

    だいたい思いついたのはこの辺りでしょうか。
    あとはキャラごとの感想も書きますのでもう少しお付き合いください。

  • 181二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 23:22:17

    >>177

    見せていただいてありがとうございます!!今川焼食べてる!

    あの二人に関しては書いた通り、原作が攻めてるので逆に平和にしようというコンセプトです。

    多分カンタロウの方はちゃんと漫画家志望続けてると思います。

  • 182二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 08:41:24

    ほしゅ

  • 183二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 18:53:40

    保守

  • 184二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 00:25:07

    キャラ編

    〇ロナルド
    身体がΔスペックで性格が本編ロナルドだったらどうなるかというifとシリアスめのガチバトルが見たくてこういう設定になりました。
    ほぼ作中最強クラス(ご真祖さまフクマさん除く)のバトル書きてえ!と情熱を燃やしましたが戦力としての動かし方が本当に難しかったです。簡単に勝ちすぎるとドラマが無くなるし苦戦しすぎると最強に見えないのでとにかくバランスが難しい。
    その為吸血鬼の能力の扱い方に慣れていないのでフルスペックを使えていないという設定が急遽生えましたが、新しい能力が使えるごとに展開に緩急ができたので大正解でした。巨大な蝙蝠の羽を生やすシーンが気に入ってます。

    ロナルド君本人としては、原作と違って致命的な失敗を経ていると言う事もあって、ドラルクに対してあんまり死 ねとか言わないようにしてました。本当に死んだので。
    一度本当に失われてしまった状況なので、少しドラルクに対するあたりがやや優しめなのと、表立ってどうこうは言いませんが守るべき対象として見ていると言う事は決めてました。
    ただ、ロナルド君自身あんまりそこら辺の事をドラルクに対して素直に言ってくれるタイプではないので、凄い回りくどい感情表現が多くなりましたね。
    サテツとかショットさんとかには素直に褒めまくるので書いてて差にビックリした。

    ヒナイチに対しては妹みたいに思ってるのは当然として、事情を分かって協力してくれる子が一人いるというのが書いててもかなり救いになってると感じました。
    過去編の全員全滅でヒナイチと再会できなかったら相当やばかったと思います。
    恋愛が絡む関係性ではないんだけど、友達とは違う信頼関係があり、またちょっと形の違う相棒感がありましたね。

    あと自分で文章連載してて思いましたが、退治人業と二足のわらじで作家業やれてるの本当に才能あると思います。
    無理だよあの文章量ポンポン出すのは。

    最後の事務所でのドラルクとの会話、塩梅に凄く迷ったんですけど、でもあれだけの事があってまったくいつも通りもちょっと違うと思うし、態度じゃなくて明確に分かる形で言ってほしかったので、じゃあロナルド君に最大限譲歩してもらうとどう喋ってくれるかなあとか色々考えてああなりました。
    なんやかんやであの事務所における日常が大切なんだと思ってます。

  • 185二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 00:28:27

    〇ヒナイチ
    ヒナイチが吸血鬼だったらどういう風になるか、というifが見たい気持ちもあっての設定だったんですが、あまりポンチ出せなかったんで後日談とかではっちゃけさせてもよかったですね。
    吸血鬼の能力というよりもクルースニクとしての全力を出してえという気持ちで後半書いてたのでクルースニク能力に偏りすぎたのはちょっと反省点です。ただ1は灼眼のシャナで育った人間なので炎と日本刀の組み合わせにロマンを感じるのと戦闘描写が凄く手に馴染むのでとにかく書きやすかった。戦闘においてロナルド君みたいな迷いがあまり無かったです。

    人物面においてはバランサーとして凄く優秀でした。
    ドラルクとロナルドだけだと微妙になる場面とかで間を取り持ってくれるのでありがたかったです。
    ロナルドがあまり素直に出せない感情をヒナイチはさらっと出してくれるんですよね。
    ただ優等生な面にちょっと偏りがちだったのでクッキーモンスターの側面とか事務所メンバーに対して無遠慮な所をもう少し出してあげたかったです。
    全部終わった後は悩み事ほぼないんで元気にジョンとクッキーを取り合うクッキーヤクザとして事務所に君臨してると思います。

    過去編のドラルクが失われた後の二人が完全に取り乱して八つ当たりするシーン、書いてて辛かったんですけど同時にとても大事なシーンだと考えていたので個人的には気に入っています。あの状況で取り乱すなは無理だろと思っていたので。
    何度も読み返したい場面ではないけれども物語の棘としては大事にしたいところでした。

    後日談でも匂わせましたが、吸血鬼という立場なので吸対には復帰できておらず退治人見習いをしてます。でもカズサが目をつければ復帰もありうるかもしれません。

    〇ジョン
    文章という特性上、マンガだったらコマの隅にかけるようなジョンのちょこちょことした動きが書けなかったので辛かったですね。文字で全部説明してしまうとテンポが悪くなってしまうので削る事もしばしばあったり。
    ドラルクとは使い魔の関係は結んでないと思うんですが、Δでどうなってるのか分からないのでそこら辺は深く突っ込めませんでした。
    モザイク世界では最悪ドラウスパパに一時的に使い魔契約をしてもらってドラルクが吸血鬼になるタイミングで契約譲渡とかすれば大丈夫かなあとか考えてました。ジョンが他の人の使い魔契約は嫌ヌとかするかもしれませんが。

  • 186二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 00:29:01

    〇野球拳
    気遣いの男。本編感想でも言った通り、本当にやばい時は力を貸してくれるので話を回す側としては非常に助かる存在です。真面目じゃない場面も野球拳で存在感を出してくれるしシリアスはそれなりに戦えるしでかゆいところに手が届いてくれます。

    〇ディック
    最初は下ネタお助け枠のつもりだったのがすっかり解説枠になってしまった方。野球拳もそうですが、シリアスにも変態にも振れることが出来るキャラは本当に強いです。

    〇フランチェスカ(吸血キッス)
    嘘予告も混ぜるならフランチェスカ形態で出せるんじゃない!?でテンションのままに出しましたが、あの美貌に本編キッスの積極性を加えたらマジでヒヨシといい雰囲気になってしまう可能性がでてくると焦り、急遽弱体化要素として本命になればなるほど元のキッスに見える呪いを付与しました。
    吉田のおじさんとのコンビも好きです。

    〇ヘルシング
    フクマさんから常に原稿の取り立てに追われていた元吸血鬼退治人
    やった事考えると功労賞だと思います。

    〇Y談おじさん
    Y談おじさんは「アレ」から逃げ切ったパターンで、しばらく新横浜の街には近づかないようにしていました。
    「アレ」のメタとしては最強クラスのカード。ただ野球拳と違って本人がやりたがらないと絶対に力を貸してくれないのがY談おじさんの難儀なところです。
    祭りのときにY談波やってくれたのは、自分の力で祭りをさらなる混沌に持っていけそうだったから。


    ちょっと長くなったので切ります。ドラルクに関して文章が上手くまとまらないので明日。

  • 187二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 11:07:52

    hosyu

  • 188二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 21:50:05

    〇ノースディン
    連載途中に竜の一族だったことが判明して一番頭を抱えた人。
    吸血鬼の血液摂取量もそうですが、連載途中に新たに設定が開示されてアーー矛盾が!!!と叫ぶことは珍しくありませんでした。※2022年4月段階の設定ですと脳内に注釈を入れることで諦めました。吸死は設定開示により何もかもがひっくり返る事がままあるので油断なりません。
    キャラクターとしては身内以外には少し壁を感じるので、新しく弟子を取る時の距離感難しかったです。
    本編でももう少しロナルド君辺りと喋ってくれないかなあ。

    〇フクマさん
    功労賞その2。
    ロナルドの物語をかき集めて編集し、次の希望につなげるという物語構造が結構気に入ってます。
    事前準備にえらい時間をかけましたが、フクマさん自体はやりがいがあったのでそんなに嫌ではなかったんじゃないかなあと思ってます。終わった後は普通にオータム書店勤務に戻りました。
    騒動の副作用で寿命が大分怪しい事になっていますが、ロナルドも吸血鬼になっていてそのまま編集として長いお付き合いができるので無問題です。

    〇サンズちゃん
    サンズちゃんが出ると話が明るくなります。ヒナイチとのかしましい会話書くの楽しかったです。
    終わった後はヤベー先輩が戻ってきてしまったのでロナルドしゃんから遠ざかってしまったかもしれませんが、懲りずにどんどんアタックしていてほしいです。

    〇半田
    本編はまだ常識と非常識の間でちょっと迷ってる感じがありましたね。
    ですがセロリを手にしてしまったので直に非常識の壁を越えていくと思います。
    ロナルドとカメ谷いないとやっぱり寂しそうなんでトリオで騒いでてほしいです。

  • 189二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 21:50:28

    〇ドラルク
    少し平和ボケしておっとりした感じの貧弱おじさんだった筈がいつの間にかただのクソ雑魚煽りおじさんに戻ってた。
    ノースディンの影響ヤバかったですね。

    ドラルクは誰かに頼らなければ何かができるわけではないんだけども、作戦を立てたり、決起させたり、何とかなるかもしれない空気を出すのが上手くて、最初に自分で思っていたよりも光の存在でした。反撃の起点になる存在というか、悩んでる時とかにズバッと本質に斬り込んで、重たい空気を一掃させる力強さがありましたね。
    クソ雑魚おじさんだけど、ロナルド君とは違った方向性の物語を強く動かす力があって流石の主人公力でした。

    かと思えばロナルドとヒナイチに関しては結構感情面で振り回されてる場面もあったり、ちゃんと冷静に大人やれてる所と一人だけ除け者は嫌だと暴走する所でギャップがあって書いてて楽しかったです。
    目的を秘密にされて二人に対して怒るシーンはちょっと大人げない行動だったかなあとも思うんですが、それだけあの二人に感情こじらせてるって事でもあるのでそのまま通しました。
    ドラルクの自分は可愛い存在だと自信を持って行動できてしまうところとか、仕事を趣味に寄せていく(ドラドラチャンネルとか)ところとか、生活の中で楽しいを探す姿勢が魅力的だと思います。

    前の世界に戻すか今の世界を存続させるかの選択は、すこし蛇足になるかなとも思ったんですが、最後の総括としてどちらの視点でも見てたドラルクに決めてもらうのが大事だと考え、入れました。
    心臓をロナルド君に譲ると言う事で、メタ的に嘘予告と同じ、つまりこの世界も嘘ですよという意味合いも込めています。

    八方丸く収まる選択肢があるのに、個人的な思い入れで少し歪な選択肢(押しちゃいけないボタン)を選ぶというのはドラルクで一度書きたかったことだったので書けて良かったです。
    完全に自分だけの事なら前の状況に戻す選択肢もあるにはあったかもしれませんね。

    終わった後もしばらくは普通にダンピールで吸対のおじさんやってると思います。
    転化するとしても吸血鬼時代だったらできなかった事一通り楽しんで満喫してからでしょうね。
    死なないって便利~って気持ちと死なないから回復しなくて辛い~って気持ちでジレンマになってそう。

  • 190二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 21:50:46

    〇「アレ」
    最初に敵キャラクターを決めた段階で、あまりキャラクター性や人格のない存在にしようと言う事だけは決めてました。
    なので名前も特に付けてないです。敵キャラに描写割くくらいなら原作キャラの活躍書いた方がいいですからね。
    どちらかというと災害に近い存在です。起こる現象がとにかく凶悪という点に力を入れてます。
    分類としてはクトゥルフの神話生物とかケテルクラスのSCPみたいなものかも。個人的にはSIRENの堕辰子に近いイメージで書いてます。
    モザイクの次元を作った力も実は「アレ」由来なので(吸血鬼の属性を持ったことでミラさんが逆利用できた)、こいつがいなければ何もかもが始まりませんでした。
    ご真祖様が異次元的な強さを持つので何とか勝負の場を整えることが出来ましたが、本来は次元が上の存在なので「アレ」の有利環境を作った時点で全部終わりです。

    最初期は存在として非常に小さいので、変態で万全の新横浜だったら街に一歩も入れないと思います。
    それが何故厄介な存在に成長したかというと、新横浜から遠く離れた場所で細々と小物狩りをして力をたくわえ、その途中でドラウスと偶然接触して力が倍増、竜の臭いが色濃い新横浜に赴くというルートを辿っています。
    警戒しているドラウスだったら問題なく倒せる相手ですが、「アレ」の厄介なところは人心を妙に掌握していて相手の隙をついてくるところです。
    本来ならけしている筈のない人物がいた事で完全に不意打ちを食らってしまい、事態が悪化してしまいました。

    吸血鬼の能力を取り込ませたことでロナルド君やヒナイチを疑似的に本来戦う事のないであろう強大な吸血鬼と戦わせることができたのがおいしかったです。イシカナさんとかナギリとか戦う機会ないでしょうし。
    ただその一方で人格がないのでちょっとドラマ性が味方内部の人間関係全振りになってしまうのがちょっと辛かったですね。

    物語全体としてちゃんと強大な敵として見てもらえたようで良かったです。
    あの世界線においては完全に消滅してしまったのでもう暴れることは無いでしょう。

  • 191二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 21:51:26

    書けることとしては以上でしょうか。
    書けてないキャラもいますが、レス数も限界に近いのでそろそろ締めようと思います。

    最後にこの物語を完走まで読んでいただき誠にありがとうございました。
    拙い所も多かったと思いますが、それでも面白いと感じてここまでついてきていただけたことに心より感謝いたします。

    自分としてもここまでの長編は書いた経験がなく、手探りで大変な時もあったのですが、走っていてとても楽しかったです。
    キャラクターをお借りした吸死原作の魅力あってのこの作品でした。
    みっぴきどのキャラも書いていて楽しかったし、終わるのが正直言うと寂しくもありますが、ちゃんとヌン(完)の一文字で締められて本当に良かったです。

    自分個人としてはまだまだ吸死を元気に追っかけてます。アニメ二期も始まりますし、まだまだ楽しみな事も多いです。
    これからも魅力的な二次創作やSS沢山出てくると思いますが、たまにこんなのあったなあと思い出していただけるとそれだけでうれしい限りです。

    本当に、最後までありがとうございました。

  • 192二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 08:59:37

    こちらこそ素晴らしい作品をありがとうございました!

  • 193二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 18:49:03

    うめ

  • 194二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 20:18:19

    毎晩の楽しみでした!
    完走おめでとうございます!

  • 19517122/09/25(日) 01:35:40

    本っっっ当にお疲れ様でした!毎晩楽しみにしていました!
    拙作へのコメントもありがとうございます(*/ω\*)キャー(足バタバタ)

    その日の午後に名前が出たキャラをその晩の更新に出せるぐらい柔軟性があるとともに、煮詰めた設定に誠実な作者さんだとお見受けしていたので、302死後、「このレベルのどんでん返しがスレでの主要キャラに起きなくてよかった」と少しほっとしていました。

  • 196二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 07:37:50

    完走お疲れ様です、この5ヶ月毎日本当に楽しませていただきました……!
    あにまん内とかSSだけとかに限らず今まで読んだ吸死二次創作の中でも5本の指に入るレベルで大好きです。最高のお話をありがとうございました!
    今後またおすすめ吸死スレ紹介系のスレが立つ事があったら絶対このスレ紹介します

  • 197二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 17:15:22

    うめ

  • 198二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 00:35:11

    埋め

  • 199二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 01:32:44

    完走お疲れ様でした!
    吸死のあらゆるifと夢の可能性が詰まった素晴らしい作品をありがとうございました!

  • 200二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 08:10:39

    1さんお疲れ様でした
    200ならこれからも平和なバカ騒ぎは続く!

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