- 1二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 03:45:25
およそ一年。最後に出たのは、ギベオンにしてやられた金鯱賞だったかな。いやそれは国内で出た最後のレースだったような
まあいい。それは今は関係ない話だ
東京レース場のコースへと続く地下バ道を行く私
今日はG1競争の一つヴィクトリアマイルが開催される日であり、そのレースが私の最初の復帰戦となるレースだ
正直一年も間隔が空いてしまえば、並のウマ娘でもかなり堪えるほどのブランクに見舞われてしまうのは当然に思える。とは言え、並とは言っても私だってそうなのだ。今まで通りの走りが出来る訳じゃないから、上の着順すら狙えるか怪しい
だからこそ、一年も空いてしまいながらも有馬記念を制したというあのウマ娘の伝説が、自分の目には非現実的に映ってしまうのは無理もない事だろう
「……!」
自分の担当であり、長い闘病生活に共にいてくれた松山トレーナーと別れてターフへと向かう途中、光が差し込む向こうから人の歓声が聞こえてくる
(そんなに、人がいるのかな)
自分が無敗のトリプルティアラを達成したあの年は、あれのせいで無観客での開催になってしまい、そんな声を受けることは無かった
国内で最後に走った金鯱賞の時でさえ大幅な入場規制をかけていたのだから、人の数も大した事はないし、それが当然
そんな風景に見慣れすぎていたせいもあって、観客がいないか少ない方が走りやすいと思ってしまっていた
(人が多くいたってうるさいだけなのに…)
そんな考えが頭を過っていた。ある意味本音とも言うべきなのだろうか…? - 2二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 03:45:49
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- 3二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 04:05:16
同期の他のウマ娘達もそんなことを考えているのが少なくはない筈だから、本音で間違ってはいない筈
「……」
あまり期待はせずにいようと、そう心に決めた私。他に出走するウマ娘達がぞくぞくと光の向こうへと消えていくと、満を持して私もその向こうへと走っていった。丁度私が最後になるから置いていかれるわけにはいかない
(人がいたって……)
光を抜けたとき
(……!?)
私は信じられない光景を目にした
(人が、こんなに……)
ウィナーズサークルを経由してターフに足を踏み入れると、後ろから人の歓声が更に大きくなって自分の耳に入ってきた
振り向くとそこは、人ばかりで埋め尽くされた観客席が現れた
まるで、かつてのレース場のように
(この人だかりの中で、トリプルティアラの先輩達は……)
アーモンドアイ、ジェンティルドンナ、アパパネ……
かつてトリプルティアラをなし得た偉大な先輩のウマ娘方は、これだけの歓声を受けてターフを駆け抜けたのだろうか
(すごい……これが、これが本当のレース場……)
右往左往しながら観客席を眺める私の事を気にかける事無く、実況の声が聞こえてくる。先程から既にターフに出た他のウマ娘の紹介をしていたから、後は私だけなのだろう - 4二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 04:27:03
しかし、実況の声も本当はうるさいと思っていた。少なくともこの時までは
(実況の声……)
その考えが覆されたのは、すぐだったから
「待ってました、よくぞ帰ってきてくれました!」
「……!」
段々と上がっていく歓声。そして
「一年ぶりの実戦復帰!無敗の三冠女王が、ターフに帰ってきました!一枠一番、デアリングタクト!!」
……これまでレースを走ってきた私が初めて、経験した事のない歓声が、拍手が、沸き起こり、それを一身に受け止める
「あぁ……」
そして聞こえてくるのは
「お帰りー!デアリングタクトー!!」
「デアリングタクトの強い走り!また見せて!!」
「もう大丈夫なのかー!?無事に走ってきてくれよー!!」
歓迎の声、期待の声、励ましの声。色々な声が私の耳に入ってくる
「みんな……」
私の走りを見たくて来ている人がいる。私が帰ってきたことを喜んでくれる人がいる。私がしばらくぶりにターフに帰ってくる事を心配してくれる人がいる - 5二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 04:27:25
もうねんねや
- 6二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 04:27:39
「そっか……これが……」
人の応援が、自分達をより強くしてくれる。そんなことを言っていたのはどこの誰だったか。もう忘れてしまったけど、まさにその通りだった
人々の応援が自分の身体を滾らせ、最高のパフォーマンスを引き出すための糧になる。今それを身体で感じていた
「……!」
ならこちらも期待に応えなければと
「皆さーん!ありがとうございまーす!!」
大きく手を振って、観客に自分の健在をアピール
そして歓声が更に増していく
(本当に、ありがとう……)
大きく一礼する私。ある程度気を済ませたら、向こう正面に向けて走っていった
ヴィクトリアマイルは1600メートルのマイル戦。発走地点となるゲートは向こう正面にある
そこへこれから向かっていくと言うのに、観客の歓声は今もなお自分の身体を奮い立たせるように響き渡る
(慣れないけど……すっごくいい)
慣れていないだけで、この声が自分を強くしているということは自分で理解出来ていた
そして向こう正面につくと、同じくヴィクトリアマイルに出走する自分以外の17人のウマ娘がそこに全員おり、そして
「……!」 - 7二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 04:27:49
センターを陣取るのは、昨年大阪杯を制したレイパパレが、こちらに手を差し出す
「お帰り、デアリングタクト」
「…。うん、ただいま。レイパパレ」
握手を交わし、今度は周囲へと目を向ける
一際目立つ上に解りやすい白毛のウマ娘がよく目についた
みんな待っていたのだろう。自分がここへ戻ってくる事を知って
「行こう」
「うん」
レイパパレと最低限の言葉を交わして、ゲートへと向かう
自分の将来を占う、大事な一戦をこなすために
(コントレイルにも見せてやりたいなぁ…)
あの無敗三冠ウマ娘にもこの光景を見せてやりたいと思いながら
(観客達の存在って、こんなにも必要だってことも、教えてやりたいな)
大勢の観客の存在が、本当は欠かすことが出来ないものであることも思いながら
私の、デアリングタクトの戦いは、ここからまた始まった - 8二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 04:28:58
という感じで、適当につらつら字を並べただけのSSです…
- 9二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 04:29:58
好き
- 10二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 04:32:36
この時間まで起きててよかった
- 11二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 09:26:20
良い…
- 12二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 09:30:08
なんとなく保守
- 13二次元好きの匿名さん22/09/01(木) 09:36:54
好き。好きは好きだが、実際の競走馬には嬉しいのかストレスなのかはそれはそれで気になる