【SS】ほんっとにありえないんだから!

  • 1二次元好きの匿名さん22/09/03(土) 14:48:46

    蝉時雨が窓を震わせる気怠い昼下がり、空調の効いたトレーナー室から蝉に負けない勢いの大声が響き渡った。
    「もー!いつになったら終わるのよ!」
    ヒステリックな叫び声がトレーナー室に木霊する。いくら可愛い声でも耳元で叫ぶのは勘弁願いたいものだ。
    予定されていたミーティングの直前に書類を押し付けられたのだから仕方がない、と伝えたもののさっきからこんな調子でこれでは進む仕事も進まない。本日の残業を憂いながら書類をまとめてトントンと整え机の端に追いやると不貞腐れた女王様が目の前の玉座にあたかも不機嫌そうに座った。
    「ほら、さっさと始めるわよ」女王直々の勅命によりミーティングが始まる。拒否権を持たぬ者は静かに心の中でため息をついた。

    ミーティングを終え彼女が自主練に行った後も山積みの書類を前にトレーナーは奮闘していた。空が緋色一色に染まる頃、突然睡魔が意識に襲いかかる。残りの書類の量から考えて多少の羽休めは可能だろう、目覚ましをかけると机に突っ伏し、眠ったことを自覚する間も無く意識はまどろみの中へ溶けていった。

    自主練を終え寮へ帰る途中、トレーナー室に明かりが灯っているのを見つけた頃にはもう日が沈んで藍色の空に無数の星が輝いていた。中に入ると見慣れた誰かさんが空調の効きすた部屋で机に突っ伏して幸せそうに夢を見ていた。担当の体調管理には血眼で臨むくせして随分寒そうな格好で寝ているのが気に食わない。が、そういうところに何も感じないといえば嘘になる。
    「ほら、ありがたく受け取りなさい」明日も明後日も練習なのに風邪をひかれては困るので毛布をかける。
    机にはおぞましい量の書類や本などが積み上げられ城のようにすら見える。全て「私」のためと考えると仕事とはいえ少し申し訳ないとすら感じる。口には出さないが。
    「いつもあたしのためにありがと」 素直になれない少女は間抜けな寝顔に話しかけた。
    「どういたしまして」 狸寝入りしていた悪人が微笑んだ。

    涼しい風が吹き始めた晩夏の夜、静寂を切り裂く大声が夜空に響き渡った。

  • 2二次元好きの匿名さん22/09/03(土) 15:01:39

    すき

  • 3二次元好きの匿名さん22/09/03(土) 15:12:12

    >>2

    こういうラブコメ?ものかくのは初めてなんで気に入ってくれたなら嬉しいです。

  • 4二次元好きの匿名さん22/09/03(土) 15:18:08

    こういうの好き

  • 5二次元好きの匿名さん22/09/03(土) 16:27:10

    >>4

    ありがとー☆

  • 6二次元好きの匿名さん22/09/03(土) 16:28:24

    王道ですなぁ良き良きです

  • 7二次元好きの匿名さん22/09/03(土) 16:35:07

    >>6

    最初は凝ったの書こうと思ったんですけどね...

    まぁこれはこれでいっかと。

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