- 1二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 21:52:48
トレーナー室のソファーで寝転びながら、琥珀色の液体が入った小瓶を手のひらで転がす。タキオンのレポートを盗み見て作った薬が気泡を含みながら照明の光に照らされ不気味に光っていた。なんでもこれを飲むと本当のことしか喋れなくなるらしい。
ソファーから飛び起き早速ジュースに入れると使い魔がトレーナー室に戻ってきた。
「ほら、魔女の特製ジュースよ。ありがたく受け取りなさい」
使い魔は「ありがとう」と言うと喉が渇いていたのか一気に飲み干した。するとたちまち顔から表情が消えて力なく立ち尽くす。
成功ね。そう思い、試しに「スマホのパスワードをいいなさい」と言ってみる。
使い魔は「0509」と答えた。
スマホに入力してみるとロックが解除された。心臓の鼓動が速くなる。息を深く吸い込み、勇気を出して一番聞きたかったことを言葉にする。
「使い魔は私のことをどう思ってるのかいいなさい」
これで使い魔の本音が聞ける。そう思っただけでさらに心臓の音が激しくなる。
使い魔の口が少しずつ開き、声を発する。私の顔に不敵な笑みが浮かんだ。
「嫌い」
しかし使い魔が言ったのは私の期待していた言葉とは正反対の言葉だった。
身体中に冷気が満ち、頭の中が白一色になる。瞬きも出来ず、口から「なんでよ」とだけ言葉が溢れる。
「わがままで嫌い、みんなを困らせるから嫌い、感謝してくれないから嫌い……」
使い魔の口から憎悪が棲み家の石をひっくり返された虫のように這い出てくる。
身体が石化されたかのように動かない。振り絞った声が喉につっかえて息ができない。溢れる涙で使い魔の輪郭がぼやけ、意識は暗闇へ消えていった。 - 2二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 21:53:02
「大丈夫?」
目を覚ますと目の前には心配そうに私の顔を覗き込んでいる使い魔がいた。嫌な汗が全身を覆い、涙が顔の横を伝って落ちる。
「すごいうなされてたけど、怖い夢でも見た?」
色々な気持ちが溢れぼろぼろと大粒の涙がこぼれる。言葉にならない泣き声を上げながら使い魔に抱きついた。
いくつもの染みが使い魔の服にできる。
最初は使い魔は困惑していたが、泣き声が止む頃には左手を背中に回し、お気に入りの帽子が脱げた頭を右手でそっと撫でてくれていた。
「もう大丈夫?」
俯きながら頷いて使い魔から離れると、帽子を被って赤くなった目頭と頬を隠す。帽子のつばを少しあげて覗くと、使い魔が優しく笑っていた。
使い魔がジュースを入れてソファーに座っている私に手渡す。
「…ありがとう」小さくつぶやいた。
トレーナー室の小さなテーブルの上には、透明な小瓶だけが照明に白く照らされていた。 - 3二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 21:54:59
読んでくれてありがとうございます。ふたくちSSです。ミスがあったらごめんなさい。
- 4二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 21:56:32
拙者こういう
悪い夢見ちゃって現実にほっとして泣きつくシチュ大好き侍
ありがとう…… - 5二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 22:07:57
こういうシチュ大好物
- 6二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 22:59:08
拙者も大好き侍なので書いた故、楽しんでくれたなら嬉しいでござる。
- 7二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 23:04:19
「透明な小瓶」って言うから中身が空=夢だと思ったら現実だったオチかと思っちゃった
- 8二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 23:13:00
嫌な夢見て甘えるシチュが好きすぎるので失礼する
- 9二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 23:23:00
- 10二次元好きの匿名さん22/09/06(火) 23:41:01
スイープだって強い女の子ではあるけど年齢はまだ少しは甘えたい年頃だもんね
素晴らしいSSありがとうございます - 11二次元好きの匿名さん22/09/07(水) 00:00:15
あ…ふーん