【SS】別れが来ても

  • 1二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 00:13:33

     新年度か、とため息が漏れた。二月も末、三月がまだあるとはいえ、四月になれば新しいウマ娘が入ってくる。トレーナーももちろん新人が入る時期ではあるが、ウマ娘に比べればずっと少ない。

     トレーナーの取り合い、なんてのは笑い事でもなんでもない。優秀なトレーナーには少しでも多くの担当をというのがトレセン学園のスタンスでもあり、ダービーウマ娘であるシリウスのトレーナーだった俺も、新しい担当を見つけろとせっつかれている。

    「どうした、学生でもないのに黄昏れて」
    「いや、後一月と少しでお前ともオサラバかと思ってな」

     シリウスは今年でトレセン学園を卒業する。引退したウマ娘である以上、それは避けられないことだ。そして、シリウスしか担当していなかった俺は、このままだとトレーナーではいられなくなる。

    「ウマ娘の中には、自分の担当が他のウマ娘のトレーナーになるのを嫌がるのも居るらしいな」
    「なんだ、私のものだから何処にも行くな、って言ってほしいのか?」

     冗談でも女々し過ぎると肩をすくめる。別れは悲しいものだが、いずれ慣れて忘れてしまうものだ。思い出としては残っても、いつまでも引きずることはない。

    「気を張り過ぎると肩透かしに遭う。お前より厄介なウマ娘なんてそう居ないだろう」
    「厄介ね……自分の担当に向かって随分な言い草だ」
    「実際振り回された日々だったからな」
    「私は普通にしていただけさ。アンタが勝手に振り回されたんだ」
    「かもな」
    「だけど、私も心配だな」

     ぐっ、とシリウスの顔が近くなる。吸い込まれるようなきれいな瞳に、息をするのも忘れた。

    「良い子ちゃんを相手にして、アンタが物足りなさを感じて擦れちまうかも」
    「……はっ。そりゃたちの悪い冗談だ。物足りなさを感じるには、余韻が大き過ぎる。まったく……厄介なのに捕まったもんだ」
    「お互い様だろ」

     そう言うと、顔を見合わせて笑った。

  • 2二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 00:16:41

    いい…

  • 3二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 00:17:02
  • 4二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 00:17:22

    相棒感いい…

  • 5二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 00:17:57

    やはりあなただったか

  • 6二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 00:17:57

    ありがてぇ…

  • 7二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 00:18:01

    軽口叩ける関係好き

  • 8二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 00:24:37

    なんか上手く言葉で表現できないけど好きだこういうの
    ありがとうスレ主…

  • 9二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 02:47:38
  • 10二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 04:36:59

    早朝

  • 11二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 04:42:39

    「それよりお前、また俺の部屋に物忘れていったろ」
    「忘れたんじゃなくて面倒だから置いていっただけだ」
    「俺に持ってこさせようってか」

     反省する気なしのシリウスに、忘れていった教科書なりを押し付ける。どうせ持ち運ぶのは面倒だとかそんな理由だろうが、俺が気付かなかったり、嫌がらせで放置したらどうするつもりなのだろうか。わざわざ始業前に送り届ける俺にもう少し感謝してほしい。

    「仮にも年頃の娘がちょっとの手間を惜しんで、嘆かわしい」
    「その年頃の娘を部屋に入り浸らせてんのはどいつだ?」

     お前が勝手に入ってきてんだろ、とは言えない。最初こそ押し掛けてきたようなもんだが、ある日俺が帰るまで何時間だか待ってたことがあってから合鍵すら渡している。幸いなことに物は増えはしても減ってはいないが、よろしいことではない。

    「そんなんで卒業したらどうするつもりだ」
    「そうだな、アンタの家にそのまま転がり込むか」

     友人同士のルームシェアよりも気軽い感じで話すシリウスに頭を抱える。歳こそ離れてるが、曲がりなりにも異性と一つ屋根の下ってのがどういう意味なのかは分かっているのだろうか。結構見た目に反して馬鹿をやるが、そこまで馬鹿ではないと思いたい。

    「冷や飯食いを養うつもりはねえぞ」
    「ハハハッ、トゥインクルシリーズの賞金がどれだけあると思ってんだ? 暮らしには不自由しねえさ。アンタよりずっとな」
    「そうかい。それならその金でせいぜい良い暮らしをしてくれ」

     からかいに付き合ってる暇はない。目的は果たしたし、トレーナー室に戻るかカフェテリアで軽食でも取ろうと踵を返す。
     去り際に、シリウスは追い打ちをかけるように呟いた。

    「だから、ま、考えときな」

     何を考えろと言うのか。俺は分からないふりをした。

  • 12二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 04:48:41

    うおうおうおう

  • 13二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 09:52:43

    朝age

  • 14二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 15:02:36

    支援

  • 15二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 23:02:15

    続きをください……

  • 16二次元好きの匿名さん22/02/24(木) 23:03:54

    こまった...ちょっと勝てない...

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