【閲覧注意・SS】ウタの唄 2スレ目

  • 1黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/08(木) 23:20:22
    【閲覧注意・SS】ウタの唄|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/img/974218/1命は助かったものの毒が脳に回った後遺症でルフィ以外すべてのものが↑みたいな異形に見え、代わりにグロテスクなものが美しく見える世…bbs.animanch.com

    命は助かったものの毒が脳に回った後遺症でルフィ以外すべてのものが異形に見え、代わりにグロテスクなものが美しく見える世界


    ただし曇らせだけではアレなので払いのけたり悲鳴をあげたりと散々な扱いをした肉塊(チョッパー)の治療ですべての感覚を取り戻すものとする


    単発のつもりだったけど皆様のご厚意やその場のノリで二スレ目に突入します

  • 2二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 23:21:08

    ⚠️鍋特別警報発令中

  • 3黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/08(木) 23:22:12

    ──『五番目の皇帝』麦わらのルフィによるホールケーキアイランド侵攻は、ビッグマムの水没をもって麦わらの一味の勝利に終わった。シャーロット家はその主要な面々が分散したタイミングを狙い撃ちにされ、大幹部・大船団の面々にその連携を阻害され続けたのである。その結果、海軍や他勢力の介入すら許さないまま四皇は墜ちた。

    もはやモンキー・D・ルフィを“四皇”の枠組みに置くことへの異存は存在しない。同時期に起こった“クロスギルド”の成立も合わせ、旧時代が終焉を迎えつつあることは万人にとって明白だった。



    ──だが、時代の終わりは輝かしい新時代の到来を必ずしも意味しない。

  • 4黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/08(木) 23:25:27

    今や敗軍の将となったカタクリとしては、兄弟姉妹や万国民のために一定の所領安堵を“麦わら”と交渉する必要があった。

    (……“麦わら”達がママを打ち破り得る相手だとは想定していた。だが……)

    カタクリに見聞色の使用を許さなかったゾロの武力。陸海を跨いだ戦線の間隙を把握しきったナミの航海術。ローによるビッグマムへの内部破壊、シーザーの脱走と大爆発の置土産、キャベンディッシュ・バルトロメオ・サイといった傘下の船長達の類稀な有能さ。数多くの新たなる脅威があり、何より──

  • 5黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/08(木) 23:29:30

    (将として個人としても……強かった!あの時とは何が違う……?)

    ルフィ個人の猛烈な士気と、ギア5への覚醒。マムやカタクリをして驚愕を禁じ得ないほどの耐久力でもって心肺停止から復帰し、凄まじい膂力でマムを海溝に投げ込んでしまったのだ。あのシャーロット・リンリンがその程度で死ぬとは誰も思っていないが、なんにせよこの海賊団が往年の勢いを取り戻すことはあるまい。

    (疑問は多々あるが……)

    ひとつひとつ、眼前にいる本人に聞く必要があるだろう。

  • 6黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/08(木) 23:32:23

    「……聞くが、麦わら。なぜおれがお前達の副船長に道案内をする羽目になった。港もこのライオン顔もはっきりと見えていたハズだが」
    「ゾロはそういう生き物だからなァ」
    「……?まぁ、カタクリのモチでも食えよルフィ」

    なぜ自分が敵将の道案内をさせられているのか、と。

  • 7黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/08(木) 23:41:06

    「うめェなぁ」
    「うめェ」
    「……」
    「緑茶でも飲むか?」
    「……いただこう」

    「「「お茶がうめェ……」」」

    その時、和みきった感覚がサニー号の看板にあった。交渉を目前にした気迫がカタクリから消えたわけではないが、それはそれとしてなぜかこの茶は精神を蕩かしてくるのだった。


    ……きぃ、とサニー号の扉が開く。

  • 8二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 23:42:34

    見ている!

  • 9黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/08(木) 23:44:05

    「──む」

    誰より早く異変に気付いたのはカタクリ。
    ペタ、ペタ、と弱々しい足音、気配。船内から這い出るように現れる人影。

    「え!?」
    「うお、なんだって出てきた!おれは隠れ──」
    「待って!行かないで!」

    そこにいたのは、変わり果てた歌姫の姿。身体は多少痩せ、若干枝毛が増え、ぴょこぴょこ跳ねたり沈んだりするあの部分はややボリュームを減らしている。だんだん上手くなってきたとはいえ、彼女の髪に櫛を通せるのは彼女自身とルフィだけなのだから。

  • 10黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/08(木) 23:46:50

    目つきだって少し鬱屈としているし、服装に至ってはよれたTシャツと青のジーンズの上にルフィから借りたマント。常に嗅いだり羽織ったりしている。つまるところ、平時の彼女、というより年頃の乙女ならば確実に外に出るのを躊躇うような格好だった。

    しかしてその瞳はきらめいている。

  • 11黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/08(木) 23:49:19

    「──こ、こ、こ。こんにちは!私……ウタ、です!!」

    この世のありったけの喜びをかき集めたかのような輝かしい笑顔を湛えて、ウタは現れた。

    「まさかウタ……治ったのか!」
    「まだ……まだ、建物も他の人も真っ赤に見えるけど」
    「ルフィと!その二人は、



    ────人間に見えるの!」

  • 12二次元好きの匿名さん22/09/08(木) 23:52:39

    来たァァァ!

  • 13黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/08(木) 23:54:59

    「ぃいやったァ〜!!!!」
    「やったよ〜!!!」



    ルフィとウタの歓声が、サニー号の隅々にまで響いた。

  • 14黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/08(木) 23:56:07

    「……ハハ、良かったじゃねぇか」

    ルフィは無論のこと、ゾロも目を細めてニコニコ笑っている。

    「あと、その人……ゾロくんの持ってるモチも!そ、それは本物のお餅なの!?美味しそうな匂いが……この血の風の中でもしたんだよ!」

    血の風、というたった一人で感じ続けた悍ましい感触にも彼女はぼんやり慣れつつある。もともと孤独には慣れさせられている。五感の孤独もそれに準ずるのだろう。

  • 15黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/08(木) 23:59:35

    だが、嗅覚と食欲がまだ生きていたのが幸いした。サンジが行ってきた可能な限り“食”に対して嫌悪感を持たないようにする工夫が、ここに来てついに報われたと言える。

    「おれの──シャーロット・カタクリの生成した“モチ”だ。おれの兄弟ほどの技巧はないが味付けもできる。──どんなモチが、好みだ?」
    「きなこモチ!思いっきり甘めの柔らかめで!」

  • 16黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/09(金) 00:01:54

    (……昔、妹たちに食わせたのを思い出す)

    普段は戦闘に使われることが主の能力ではあるが、当然に味も磨いている。瑞々しくつるりとやわらかなきなこモチが、一口よりも小さなサイズで多数積み上げられた。

    「うう……ありがとう!ありがとうございます!死ぬかと思った……もう……一生、笑ってご飯を食べられないと思ってた!!!」

    涙やらよだれやらをボロボロとこぼして、粉まみれでかきこんで笑う歌姫。ルフィとゾロもそれに乗じ、すさまじい勢いで山を崩す。

  • 17黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/09(金) 00:05:49

    「喉に詰まるぞウタ!」
    「うぇッ!お茶は無理!!!」
    「そっか!!すまねェ!!!」
    (過剰なまでの偏食……何事かあって救出後に精神を摩耗したか)

    エレジア以来、ウタが食べたもののなかで真っ当な味と栄養を兼ね備えていたのはせいぜいが新鮮な魚肉の刺身くらいである。罪悪感や不安や吐き気を感じずにできる食事のなんと美味なことか。



    「……おれの仮説はどうも正鵠を射ていたらしいな……シュロロロ!」

  • 18黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/09(金) 00:09:14

    なごみの場に可視不可視と発声を容易に切り替える全身気体人間、シーザー・クラウンが現れた。悪党である。

    「イヤなやつが来たよ!」
    「イヤなやつだな」
    「本当にイヤなやつが来やがった」
    「……誰にとってもこの言われようか、シーザー・クラウン」
    「この野郎共……おれ一人に対してなんてひでェことを……!」

    悔し気に顔を歪めるのがまた腹立たしい。

    「……まァいい。超人系(パラミシア)の生成した食品は食えることが判明したな。もちろん、使用者次第だろうが」

  • 19二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 00:11:07

    カタクリからもこれかぁ…

  • 20二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 00:13:22

    >>19

    そらカタクリも万国の利益やビッグマム海賊団三将星の立場等々を除いた個人の感性に関してはこいつのことを好きになるようなタイプしではなさそうだしな

  • 21黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/09(金) 00:18:47

    その後はシーザーの自説の開陳が続いた。曰く、

    「いいか“麦わら”。その女を日常生活に戻すだけなら五感の正常化に拘泥する必要はねェ。今のお前の権力なら女一人くらいどうにでもなるだろうしな」

    と。が、ルフィとしてはこれは受け入れがたい。

    「でもなァ……ウタは歌姫だぞ。色んなやつに歌を聞かせるのが生き甲斐だ。新曲を作ったり。ライブしたり、は今のままじゃキツいだろ」

    ウタ自身もコクコクと頷いた。自分の行為への反省とは全く別に、やはり音楽を聞かせずにはいられない性分なのである。

  • 22黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/09(金) 00:20:16

    「それには脳を治さないといけねェ。一度破壊された脳組織を再生する“手段”はおれとベガパンクしか持っていないんだぜ……?しくじったらおれが死ぬだろうが!」
    「……」

    お前は仕方ないがウタが死ぬのは絶対に困る、と言われた気がする。内心憤りつつ、シーザーはきなこモチを頬張る歌姫に視線を向けた。

  • 23黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/09(金) 00:24:28

    「”日記”の記述を見たが……その女にはビッグ・マムのババアも『おばあさん』に見えたんだろ?ほかに人間として見えたのは麦わらとロロノアとカタクリ。全員に共通するものは唯一つ」

  • 24黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/09(金) 00:26:19

    「覇王色の覇気、だ」

    「……お前には一番無縁なのによく知ってんなァ」

    ルフィの辛辣な言葉を気にせず、シーザーは自慢げに笑う。

    「シュロロロ……当たり前だ!おれは四皇の三人を手玉に取る男だぞ!『理屈の上では』その性質なんざ熟知している──覇王色だけが、この女の知覚障害を突破できる!!」

  • 25二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 00:31:49

    覇王色かァ、意外な突破口だったなぁ

  • 26黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/09(金) 00:32:19

    「相手の五感ではなく“魂”に己の存在を知らしめるのが“覇王色”、だから脳機能の障害を迂回してそのままの姿を視界に映し出せる……。これがゴム野郎やそこの二人をまともに認識する原理だ。……”赤髪”ともなれば中将の一部さえ昏倒させるんだろ?」
    「っ」

    一瞬、ウタの顔が引きつる。

  • 27二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 00:35:29

    なるほど覇王色からシャンクスに繋げるのか

  • 28黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/09(金) 00:43:07

    「“覇気だけがすべてを凌駕する”のかは知らねェ。だが、“覇気”と“科学技術”と“悪魔の実”の総動員をかければ、結果は明白だ」

    生命の生まれ持つ力量、途絶えることなく時代を進める文明の灯火、そして超常たる悪魔の力。人の想像し得るすべての総動員。これをもって抗えないものがあるとすれば“死”くらいのものだろう。

    「たとえばシャーロット家のプリンにでも歌姫の記憶を引っ張り出させりゃ色々と分かるじゃねぇか。実験による知覚障害の把握には限度があるし……何より麦わら、お前も歌姫にこれ以上泥を舐めさせたくはねェだろ?」

    「……まァ、な」

    「じゃあ、借りられる力は全部借りるか」

    ──かくして、ルフィは決意を新たにした。ひたすらにモチを頬張り続けるウタとゾロの横で。

  • 29二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 00:44:08

    覇王色について新たな解釈を得られた
    ありがとうスレ主

  • 30二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 00:52:43

    面白いわ

  • 31黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/09(金) 00:53:10

    今回はここまでです。クラッカーはジャムを出せるっぽいしカタクリ兄さんならきなこどころか海苔や納豆も出せますよね?

  • 32二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 00:54:39

    おつ
    ククククの実で食べ物に変えた物なら美味しく食べれるのかな?
    マム曰く本来は腹には溜まるが旨くはないらしいけど

  • 33二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 00:57:09

    おつらい展開から晴れてくまでの流れが良い……好き……

  • 34二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 01:06:49

    展開もそうだが原作の要素を上手く扱ってるのがすげえ……続き楽しみにしております

  • 35二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 01:07:54

    カタクリお兄ちゃんはこういうことしてくれるよ

  • 36二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 01:08:07

    モチ食い続けるウタかわいい

  • 37二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 01:51:06

    >>23

    前スレの>>58の記述ってそういう意味か

  • 38二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 05:38:15

    覇王色の理由付けが上手過ぎる

  • 39二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 12:13:20

    サンジがMVPだこれ

  • 40二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 12:21:19

    カタクリお兄ちゃんは面倒見のいい兄ちゃんだからなんだかんだウタの面倒も見そうだよな

  • 41二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 16:21:23

    シーザーって

    ・細かいオリジナル設定を解明・説明させる
    ・便利な効果のガスや薬を出させる
    ・(一味ができない)悪意混じりつつも常識的な立場の範囲からの客観的意見
    ・ヘイト集め役かつどれだけボコってもよい

    とSSでかなり便利なキャラなのでは?
    うまくやらないと目立ちすぎそうなくらい
    唯一の欠点は自分のSSにクズを出さなきゃいけなくなること

  • 42黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/09(金) 19:58:08

    一発ネタのつもりだった前スレをSSスレに移行させられたのは7割くらいシーザーのおかげであることをお前に教えるシュロ
    人脈広いし能力は便利だし頭も良いし性格が悪いし読者の反応も良いからあらゆる状況で活躍できるシュロね👍

  • 43二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 20:00:21

    >>42

    流石だなぁ

    まぁそれはそれとしてムカつくので心臓ニギニギします

  • 44二次元好きの匿名さん22/09/09(金) 20:11:56

    >>41

    あと

    ・本編は海楼石や心臓という理由もあったけど、捕囚の時は基本的に無理に策を弄しないから安心

    もだな

  • 45二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 01:08:40

    そういやあと他に覇王色持ちどんくらいいただろうか保守

  • 46二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 01:09:26

    保守

  • 47二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 09:20:08

    ほし

  • 48二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 09:20:46

    保守保守のミニマムピストル

  • 49二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 16:33:46

    保守

  • 50黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/10(土) 18:56:32

    (ペース落ち気味ですがなんとか書き進めてます。完結したら外部のハーメルン等に再編集して投稿するのってアリなんですかね?)

  • 51二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 18:57:27

    >>50

    ここの他のSSスレでもそれやってる人たくさんいるで

  • 52二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 18:57:55

    ありありのあり
    大変かと思うけどぜひやってほしい

  • 53ええええ22/09/10(土) 23:06:30

    全然アリ。というか無しだと私ここに顔出せなくなるので許してください。

  • 54二次元好きの匿名さん22/09/10(土) 23:18:30

    ほしゅほしゅ
    後に救われると分かってて見る可哀想なウタは健康に良いとされている

  • 55二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 04:08:56

    保守

  • 56二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 08:38:48

    しゅ

  • 57二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 16:26:19

  • 58二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 19:28:40

    保守
    どうかウタが救われるまで見届けさせてほしい

  • 59二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 21:32:38

    一応保守

  • 60黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 21:52:04

    そろそろ貼るのだ
    世界最強のワンピ本編に沈められる前に書き逃げするのだ

  • 61黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 21:54:35

    ──サニー号に、かすかに音楽が響く。

    『アナタと最強──!!』
    「アナタとさいきょ〜……」

    シャーロット家35女にしてカフェ「カラメル」オーナー、シャーロット・プリン。「私は最強」が封入されたトーンダイアルを聞きながら、ささやくように歌って歩む。親の仇の海賊船に乗せられた亡国の姫君という立場にはまるで見えない。

  • 62二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 21:56:02

    このレスは削除されています

  • 63黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 21:56:23

    「“アナタ”に……会えるかな」

    プリンがここに来た理由は、兄のカタクリの要請によるものだった。

    『サウザンド・サニー号に乗船し、麦わらの一味が保護している“歌姫”ウタの記憶を読み取れ。それをもって彼らへの助けとしろ。歌姫本人の許諾もある』
    『船内ではロロノア・ゾロに案内を頼むといい。あの男の案内ならば船をより知ることができるはずだ』

    「……シャーロット・プリンです」

  • 64黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 21:57:52

    「よう、こっちだ。ぐる眉エロガッパとはもう話せたか?」

    ロロノア・ゾロ。サンジと並ぶ麦わらの一味の両翼、大剣豪。カタクリの全力を凌ぎ切ったという事実だけでこの男の強さはプリンにも容易に理解できる。……それはともかく、なぜか妙に気に食わない。

    「さ、サンジさんのことを悪く言わないで!」
    「通じてるじゃねェか」
    「!」

    ──なぜか一瞬船外に出たり、同じ階段を往復したりと訳のわからない挙動を取り続けるゾロ。とはいえ、プリンが聞けば色々と解説してくれる辺り悪気はなさそうだ。だが、

  • 65黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 21:58:56

    「……ここから先はあまり音を立てんなよ」

    廊下が、ゾッとするような極彩色に彩色され始めた。言葉にならないような色彩の狂乱。

    色とは、元来それぞれ対等なものである。泥土の色と艷やかな栗のブラウンにさしたる差はない。不快な色があるとすればそれは組み合わせの問題であろう。

  • 66黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 22:00:03

    ──逆に言えば、ラピスラズリの瑠璃色も繊細な鴇色も、組み合わせ次第でいくらでも不愉快な存在にできる。

    (趣味悪。……道に迷ってねェかこのマリモ)
    「さすがにサニー号では迷わねェよ」
    (バレてる!?)

    それから三度ほど同じ道を辿った気がするが、なんとか極彩色の部屋に辿り着いた。

    「趣味は悪ィが勘弁してくれ。船長の幼馴染の趣味だ。……入るぞルフィ、ウタ」

  • 67二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 22:01:09

    しっかり迷ってて草

  • 68黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 22:02:03

    「おう!」

    ──極彩色に囲まれたベッドで、歌姫は安らかな寝息を立てている。その手を握るのは新たなる四皇、麦わらのルフィ。かつて紆余曲折の末に、自分がホールケーキアイランドから逃した”あの”海賊たちの頭領。

    かつて自分の一家がウタを誘拐せんとしたこともプリンは知っている。多少の罪悪感やら推しの寝顔やら、それを優しげに眺める男やらで脳内をかき回されたプリンは、

    (世界の歌姫に何してんだエロガッパの親分!?)
    「る、ルフィ君。お、お久しぶりで……」

    逡巡ありつつも自分から声をかけることにした。

  • 69黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 22:03:22

    「ありがとな、プリン。手伝ってくれて。……ウタは今、ちょっと病気でさ。お前の能力がどうしても必要なんだ」

    エレジアの騒乱については詳しく知らないが、自分の兄弟が病気の一因になってしまったのだろうか。そうでなければよいが。

    ──そっとウタの頭に触れ、可能な限り丁寧にフィルムを引っ張り出した。

  • 70黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 22:04:38

    「……ッ!?」

    赤、赤、赤、異形、内臓。フィルムサイズですら戦慄を禁じえない光景。それと、たった一人きらめいて見える“麦わら”。彼以外は全てが人体の内部をひっくり返したような様相だった。

    ──これ、覗いていいのか。というか、覗いて正気を保てるのか。
    「……ほ、本当にこれがウタの記憶なの……?」

  • 71黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 22:06:13

    「……ああ。……毒キノコ食って、脳がやられちまったんだ。今のウタには、人が人にも見えないし……歌もまともに聞けない。食べることもカタクリのモチ以外はままならねェ。どうにかして治してやりたいんだ」

    あの快活で明朗、ママにすら軽口を叩ける豪胆さを持ったウタにこの仕打ち。……毒キノコを食わせた人間はよほどの悪党に違いない。カタクリ兄さんにはいっそう感謝しなければ。

    「……編集(エディット)!」

    特に“麦わら”の少ない時期の真っ赤な記憶を少しだけ切り取って、残りを丁寧に戻した。

  • 72黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 22:09:15

    「ん……」
    「ま……目を覚ますよな。大人しくおれかルフィの後ろに隠れとけ」

    言に従いゾロの背にそそくさと隠れた。間もなくウタは起き上がり、目を伏せ気味に周囲を見回し、ルフィを見つけて朗らかに笑った。屈託のない笑顔、の具体例として相応しいくらいに。

    「おはよ。もう記憶は読めたの?」
    「おう!」
    「道理で!少し心が軽いなって思ったよ」

    日を追うごとに累積して脳裏に巣食う赤黒い記憶が、多少なりとも削られた。それが心底嬉しいようだ。

  • 73黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 22:11:58

    「メモメモの実だっけ?世界は広いねぇ。……ルフィ、そこにいるメモメモの人は……私のファン、だったりする?」
    (……!)

    天賦の才かウタウタの実の恩寵か、なんにせよウタには自分の歌声のファンを見出す才覚があった。

    「どーなんだ?プリン……あ」
    「……」

    だがプリンは答えられない。自分の声は狂った雑音に、自分の一挙手一投足がたまらなく不快な触手のうねりに映ることを知ってしまったから。

  • 74黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 22:13:36

    「……そういや、ウタの曲を聞いてた気がすんな。最強がどうとか」

    そこでゾロがプリンの代わりに答えた。こういう時の彼はやたら気が利く。

    「ははん、”私は最強”かぁ……ねぇ、本当はどんな娘なのか教えてくれない?」

    「感情の裏返しがすごいやつだぞ!」
    「『男の趣味が変』だ」
    「???」

    まいった、全然分からない。

  • 75黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 22:16:14

    「ま、結構いいやつだよ!この前は逃げる手伝いをしてくれたし、無茶な頼みを聞いてくれたしな」
    「変な趣味だが最悪ってことはねェ」
    「……ルフィたちがそういうんなら、きっと凄く良い娘なんだろうね」

    が、善良な女の子らしいのは分かった。ここまでずっと物音を立てず、視界に入らないように努力してくれているのだから。その優しさには答えなければならないだろう。

    ゴソゴソと袋をあさって、乱雑に突っ込まれた貝殻を選り分け、ウタは一つを机上に置く。

  • 76黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 22:17:46

    「このトーンダイアルに入ってるのはね、”私は最強”のインストゥルメンタル版。これを、耳元にあてて聞いてね」

    「私のカラオケなんてなかなか聞く機会ないよー?ゴードンさん以外だと初めてかも」



    「──じゃ、歌います。”さぁ、怖くはない”──」


    私は最強


  • 77黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 22:19:21

    ──熱唱。四分半弱の目くるめく時間。血肉の庭と化したウタワールドに取り込まないように、細心の注意を払って、歌声だけを全力で届ける。ルフィの前で練習し続けていたおかげで、滞るようなことはなかった。

    ルフィに、ゾロに、プリンに。溢れんばかりの感謝の念を込めて歌う。歌を唄えば緋色の霧だって晴れる、と信じて。

  • 78黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 22:20:40

    ──熱唱が終わった。

    「良かったぞォ~~!!」
    「……!!」

    ルフィとゾロの拍手に交じり、水音がぽたぽたと聞こえる。泣き声を漏らすことすら抑えるプリンの気合をもってしてなお、三つの瞳は涙を止められない。

  • 79二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 22:21:40

    歌えるようになってる…!

  • 80黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 22:22:54

    「ありがとう!……本当に、ありがとう!……が、我慢しなくていいよ!」
    「……だとよ」

    ゾロから手渡されたのは、『わたしの声、きっと変に聞こえるから』と乱雑に書かれたメモ。

    「あはは、大丈夫!そんなこと、私はぜんぜん気にならないよ。だって──」

    「無理はちょっとしてでも、花に水はあげたいもの」
    「──う、う、うゥ~~~~……!!」

    狂った聴覚と脳は呻きと雑音を聞き取っている。それでも、ウタは久しぶりに何万人もの歓声を浴びた気持ちになれた。

  • 81黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 22:23:44

    ──それから少しあと、シーザー・クラウンがまたサニー号に来訪した。

    「なんであの場におれを呼ばねェ」
    「シーザーをウタの部屋に入れるわけねェだろ」
    「……」
    「ほら、ウタの記憶だ。見せたくねェな……」
    「見せたくないなぁ」

    ものすごく”イヤそう”な顔のルフィとウタ。だが、ネズキノコ中毒による知覚障害にこの世で一番詳しい相手にはやむを得ない。不承の様子で記憶の入ったフィルムをシーザーに差し込む。

  • 82黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 22:25:20

    「シュ、……シュロロロ……ロロロ…!!!???ギエエエ〜〜ッ!!!」
    「すげェ悲鳴だな」
    「歌姫てめェ“コレ”に耐えてやがったのか!?豚を百万匹かき集めて半径100キロにぶちまけたような光景してるぜ!避けてくるとはいえ部屋の外には内臓グルグル巻きのバケモンがいるし……うわぁ、ゴム野郎だけ輝いてる……」

    「そこの記憶だけ返して?」
    「……いや……その」
    「返して」
    「はい……」

    ──この後、シーザーからウタに対してへりくだるような態度が目に見えて増えた。

  • 83二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 22:26:54

    クズが絶叫するレベルて

  • 84黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 22:29:55

    今回はここまでです。究極の自己肯定ソングたる『私は最強』をルフィの前で全力で歌えるウタが見たい人生でした……

  • 85二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 22:36:18

    プリンちゃんやっぱり良い子だ…
    前スレの悲惨さが嘘のようにウタが明るく振る舞えるようになってて良いですね………

  • 86黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/11(日) 22:37:55

    (もうちょっとだけ書き溜めはあったんですが本誌やら三回目のREDの情緒整理で多忙でして。保守ありがとうございます……)

  • 87黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/12(月) 00:15:45

    (ちなみに沙耶の唄で一番好きなのは病室エンドです。“純愛”を感じるんですよねこのセリフ)

  • 88二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 05:50:53

    待ってます

  • 89二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 11:16:27

    思ったんやがこの状態のウタってブルックのことどう見えんのかな、前スレも見て感情が逆になってるのは把握してるけど全身骸骨のブルックだったらどう見えるのかが気になるんや

  • 90二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 15:56:04

    ほし

  • 91二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 18:51:44

    保守
    待ってます

  • 92二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 22:40:13

    >>89

    ぶよぶよ腐肉塊よりはマシな…気持ち悪い土と泥の塊?

  • 93黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/12(月) 22:48:00

    (元ネタの郁紀には金属製の包丁がこう↓見えてるので全身ガイコツ人間のブルックも肉のへばりついた骨に見えるものと思われます。ちょっと再生してますね)

    (普段は身だしなみに気を使う紳士で音楽家だからこそ今は一歩引いたところから見守ってます。この辺を描写する機会があるといいんですが…)

  • 94二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 23:36:26

    狂ってもおかしくない日々を過ごしてきたブルックにとって、二人の支えになってあげたいだろうね

  • 95二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 02:03:43

    ちょっと再生してて草
    ブルックは中途半端に腐りかけのした死体じゃなくて白骨死体に蘇ってよかったな
    俺も病室エンド好きです。あの2人の純愛を感じられるので

  • 96二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 08:13:48

    保守

  • 97二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 15:25:47

    ほし

  • 98二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 16:55:20

    ほし

  • 99二次元好きの匿名さん22/09/13(火) 21:06:40

    ほしゅ

  • 100黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/13(火) 23:00:19

    ──今日のうちに投稿できれば理想なんすがね…
    ──量ばかりでしてちっと推敲が足りていないほうとは思ってんすがね…

  • 101黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/14(水) 00:36:50

    ワンピ伝統の過去回想編なんすがね…

  • 102二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 00:37:53

    >>101

    圧つよすぎィ!

    それはそれとしてウェルカムだぜ

  • 103黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/14(水) 00:38:45

    ──あの日のこと。

    歌を唄いきって、死を目前とした私の耳に聞き取れたのは、ルフィが仲間たちに届けた言伝。赤い雷が、見えた気がした。

  • 104黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/14(水) 00:40:01

    『見聞色で未来を見ちまった!ウタは……ウタは、薬を投げ捨てて死ぬつもりだ!……頼む!どうか、どうか助けてくれねェかなぁ!?おれの言葉じゃ届かねェんだ!』

    『逃げたい、って思ってて、シャンクスに会えて、全部ウタ自身の意思で決めたことだから……どう止めたらいいのか……わかんねェ……!』

    『でも!おれは!ウタに、生きて笑って歌ってほしいんだよ!どうかおれに!ウタともう一度会わせてくれェ!』

    ……きっとシャンクスは私の死に顔をルフィに見せる気なんてなかった。そういう、ズレた気遣いをする人だから。

  • 105黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/14(水) 00:41:58

    「おれの協力が前提か麦わら屋。貸しにするぞ!」
    「ヨホホ……若い娘さんが寂しく死ぬことなんて、誰が見過ごせますか!」
    「わしらは海から回り込む!ウソップ!見聞色で位置がわかるか!?」
    「……プリンセスウタの現在位置はあっちだ!急げ急げ!」

    何人もの声が薄らと聞こえる。ルフィの聴覚が、私にも共有されていたのかもしれない。

    「しゃんく、す……」

  • 106黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/14(水) 00:43:09

    「この薬を飲めば、命は助かる」

    ……駄目だ。死なないと、ダメなんだ。12年前のことだけじゃない。トットムジカが現実であんなに暴れたのだから、私のせいで、私自身の判断で人が死んだことくらい分かる。



    逃げさせて。そう思って、瓶を投げ捨てた。

  • 107黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/14(水) 00:44:49

    しかし、投げられた薬はせり上がった水に沈んだ。そしてその瓶を、アフロの骨が拾い上げてる。

    「間に合った!」「間に合いましたね!」
    「……“海侠”のジンベエに“鼻唄”のブルック!ルフィの仲間か……!」
    「船長命令じゃ。どうか早まらんでくれい、ウタ!」
    「……ルフィのとこの人か。ごめんね、もう……」

    間に合わない、と言おうとした。

  • 108黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/14(水) 00:46:17

    「ちょっと待ったぁ!」

    言えなかったのは、ジンベエという人の大きな背から女性が飛び出したからだ。薬を受け取り、私のもとに猛然と走る。

    「私だって貴女に死んでほしくないけど……!もう、それじゃ届かないのよね」

    「……ルフィから!もう、何も奪わないであげて!」

  • 109黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/14(水) 00:47:52

    ……ルフィから、奪う、か。私が死んだら悲しんでくれるのかな。……悲しんでほしくないなぁ。

    「貴女に会ったとき、ルフィがどれだけ嬉しそうな顔してたか……!どんなに、優しく抱きしめてたか……」
    「一番知ってるのは!貴女でしょ!?」

  • 110黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/14(水) 00:48:45

    「……あ」
    声と容姿で、一番最初に『歌にした』人だと気付く。嫉妬混じりで弾き飛ばした彼女が、こんな愚劣な私に、どこまでも優しく教えてくれた。ずっと右腕で抱いてくれてるシャンクスの表情も、少しだけうるんだように見えた。


    全部、私が悪いのは、分かっているけど……

  • 111黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/14(水) 00:50:03

    「……じにだく、ない……!』
    『死ぬのが……寂しいよぉ……!」

    現実でもウタワールドでも、同じようにめそめそと泣いたと思う。

  • 112黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/14(水) 00:52:13

    「ウタさん。"どんな試練も今のため"ですよ。……おつらい経験の果てに、家族や友達と出会えたのです。今のあなたに越えられない苦難など、ありはしません」

    骨の人、ブルック……見覚えがある気がする。もしかして、いやもしかしなくても……あのソウルキング、なのかな。私の心を救ってくれる人……!

    「もう大丈夫よ。ルフィを信じて!」
    『大丈夫だ。おれの仲間を信じろよ、ウタ!』

    ──助かろう。そう思って、口を小さく開けた。つうっと甘い薬が流し込まれる。ホンゴウさんは薬に関しては甘いんだ、色んな意味で。助かったらありがとうって言わないと……。

  • 113黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/14(水) 00:53:51

    「……?」

    私を腕に抱くシャンクスと、夢の中の目の前のルフィ。それ以外が、段々と赤色に変貌していく。歪んで奇怪に音を立てる。

    (……大丈夫)

    二人がいれば、怖くない。

  • 114黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/14(水) 00:54:58

    ──そう思ってから、随分な時間が過ぎた。

    あの日助けてくれたオレンジ髪の彼女やジンベエさん、それからソウルキングは今の私の前に現れない。それこそが彼らの優しさの現れなのだ。彼女にはナミという名前があるのを、あとからルフィに聞いた。

    ナミは、……ナミは、ルフィとどんな風に会話を交わしているんだろう。何年の付き合いなのかな。たった数年だとしても私の12年より濃密な……

    バカ。

  • 115黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/14(水) 00:56:17

    「ね、ルフィ」

    ここは極彩色の部屋。私にとっては心安らぐ緑色。ベッドの上ですやすや眠りこけるルフィに、そっと話しかけてみる。

    「私ね、あの時ルフィに背を向けられたとき」
    「心臓がえぐられるような気持ちになったんだ」

    「……あの夢が、私の心臓だったんだもん」

  • 116黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/14(水) 00:58:11

    「この血塗れの世界で生きてられるのは、心臓が動いてるから」
    「……夢の果てを見せてね。新時代を、作ってね。私は、当分無理そうだから」

    ふふ。まるで、これから死ぬみたいなこと言ってる。もう、死ぬ気なんてないくせに。

    「ゾロは方向オンチ以外はカッコいいし、カタクリさんのモチは美味しいし、歌を聞いてくれた優しいプリンちゃんもいるし、シーザーだってちょっと真面目になった。……なったのかなぁ」

  • 117黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/14(水) 01:00:53

    「こんな狂人にはおこがましいけど。みんなが私を見守ってくれるように、私にもみんなを見守らせてね」

    それだけ言って、私はルフィの額に、軽く唇をくっつけた。

    「……ふふっ」

    舐めたことだってあるくせに、今までのどんな触れ合いよりも恥ずかしかった。

  • 118黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/14(水) 01:05:01

    少々短いですが今回はここまでです。

    アウ!おれの見せ場は最終盤まで持ち越しか!?

  • 119二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 01:05:01

    メンタル改善されてきたか…?

  • 120二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 01:06:22

    >「……じにだく、ない……!』

    >『死ぬのが……寂しいよぉ……!」


    言えたじゃねェか……!!!

  • 121黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/14(水) 01:19:25

    次回はいよいよおれの出番だべ

    REDと同様に先輩方の邪魔にならないよう謙虚ながらも盤石な活躍を心掛けるべ…!

  • 122二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 01:27:53

    仲間に頼るのが一番スマートなウタの救済方法か…
    まだまだ悶着ありそうだけど

  • 123二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 08:54:21

    ほしゅ

  • 124二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 12:30:37

    保守!

  • 125二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 14:33:30

    このレスは削除されています

  • 126二次元好きの匿名さん22/09/14(水) 21:18:00

    もしかして少しずつ晴れそうな空気になってきた?

  • 127黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/14(水) 23:40:14

    一日一レスしてセルフ保守するのだ

    鳴らない言葉をもう一度描いて赤色に染まる時間を置き忘れ去るのはだいぶこのスレのウタっぽいのだ

    [Alexandros] - 閃光 (MV)


  • 128二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 07:03:16

    ビッグマム倒したんならそこの海賊業界一という情報網も利用できそうだ

  • 129二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 12:58:26

    保守

  • 130二次元好きの匿名さん22/09/15(木) 19:03:07

    ほす

  • 131二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 00:20:55

    保守

  • 132二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 00:21:24

    ほしゅほ

  • 133黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/16(金) 01:04:15

    (明日…というか20数時間くらい後の今日に投下できたらいいなァ…と思ってます)

  • 134二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 06:07:21

    待ってます

  • 135二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 08:21:55

    ほあっ

  • 136二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 13:41:55

    しゅ

  • 137二次元好きの匿名さん22/09/16(金) 19:52:28

    しゅ

  • 138黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:02:12

    投下するカネ…

  • 139黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:04:11

    ──時刻は夕刻。船を降りたプリンと少しだけ会話を交わしてからサニー号に帰還したサンジは、いの一番にゾロのもとに顔を出した。

    「マリモこの野郎、よくもプリンちゃんと!と言いたいところだが、仕方ねェか。ウタちゃんに近づけるのはお前らの特権だからな……」
    「……」

    懸賞金その他で煽ることは数あれど、個人の資質に由来する物事ではどうこう言わない情がゾロにも存在した。

  • 140黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:05:54

    「……ビッグマムの消息不明と四皇脱落の報を受けて総料理長シュトロイゼンが昏倒した。もう92だ。人望も料理の腕も惜しい男だが、先は長くねェ」

    言い終わり、咥えたタバコに点火する。紫煙が橙色の空に溶け消えていく。

    「継承の理屈とその条件はシーザーが解明済みだ。お前がシュトロイゼンのククククの実を受け継げば、ウタちゃんは食べる喜びを完全に取り戻せる。……その時は頼めるか」

    「考えておいてやる。ま、その前に治しちまえば済む話だろ?お前に料理の腕“でも”勝ってやる、ってのも面白そうだが」

    「んだとォ?」

  • 141黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:06:41

    喧嘩が勃発──することはなかった。感傷を互いに乱したくないし、ウタも船内で起きているだろうから。

    「なぁ、プリンちゃんは元気してたか」

    「『私は最強』……だとよ」

    「そうか。プリンちゃんにピッタリの、とてもいい歌だ」

  • 142黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:10:05

    ──それから数日、ホールケーキアイランドに程近い海域。


    ハンコックの座する”パフューム遊蛇号”、バルトロメオが誇る“ゴーイングルフィセンパイ号”、そしてシーザーがお楽しみの真っ最中だったガールズシップは、諸般の事情から一触即発の仕儀に陥っていた。


  • 143黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:11:28

    「なんだっておれ達が“海賊女帝”相手にしてんだよ……!」

    「おめェなぁ!ガールズシップ連れて元七武海にケンカ売るバカは初めて見たべ!」

    「売られたってんだろうが!紳士的に僻地で女遊びにしゃれ込もうとしたおれを、九蛇の女共どもに追われてよォ!」

    「……そうね、シーザーの首を渡せば全部丸く収まらないかしら?」

    「発想が怖ェよ!」

    「過激すぎるべロビン先輩!」

  • 144黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:12:30

    ──ロビンとバルトロメオがルフィの名代に客人を迎えに向かったところ、たまたま近くにシーザーとガールズシップが来航していた。一隻でうろつくのが不安になったのか、ガールズシップの側が勝手にゴーイングルフィセンパイ号に随伴した。

    結果、モメた。

    「なぁ……ガールズシップの船長が悪くねェか……?」

  • 145黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:14:11

    「無関係の船長の首を渡しても誠意を見せたことにはならないわね……どうしようかしら」

    「殺意が!殺意が漏れてますべぇロビン先輩!……あ!」

    九蛇の船が、揺れる。

    数秒の後、バルトクラブの幾名かは着地の余波で昏倒した。



    「──“麦わらのルフィ”の傘下を僭称し、女人に奉仕を強要する外道はどこにおるか!」

  • 146黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:17:45

    ボア・ハンコック。女ヶ島アマゾン・リリーの皇帝。王下七武海の撤廃後、真正面から海軍を撃退し実に16億5900万ベリーもの懸賞金を懸けられた強く気高き世界一の美女。

    「……」

    見渡す限りしん、と静まり返ったゴーイングルフィセンパイ号。しかし船首筆頭に各部の狂気スレスレの様相は全然静まっていない。

    「……意外に趣味の良い船じゃな。入るか」

  • 147黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:18:45

    この海賊船がメリー号のエッセンスを取り入れていることなどハンコックは当然知らないものの、ある種本能的な親しみを感じた。不運にも倒れた船員やガールを無視し、船内に一歩、二歩、三歩と踏み入る。

    「食らいやがれ“ガスローブ”!”ガスティー──」

    「”メロメロ甘風”!」

  • 148黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:20:08

    「あっダメだ耐えられねェ!クソ後やっとけ!」

    かくして待ち伏せしたシーザーは問題なく石化した。

    「……ぬう!」

    本来の体躯からすれば莫大な体積を保ったままに。

  • 149黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:21:28

    「自然系、それも気体……!予め室内に充満することで自分自身を石の壁にしたか!」

    気配からするにシーザーの石化により少なからぬ人数が直撃を免れたようだ。意図したものならば見事な自己犠牲である。

    「蹴り砕くのは容易いが……このような男とはいえ死なせるのは早計じゃな」

    「……やっぱ強えべな“海賊女帝”!毒ガス撒かれて汗一つかいてねェ!」

    ハンコックの死角から緑色の影が飛び出す。それが可能なほどにこの船の構造をよく知るものといえば──

  • 150黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:25:00

    「“芳香脚”!」
    「バ~~リアッッ!!」

    “人食いのバルトロメオ”。彼の無敵のバリアはハンコックの強烈な蹴撃を受け止めた。何者も寄せ付けぬという『理屈』、四皇に抗し得る一撃だろうと難なく止めるそれは、遺憾なく性能を発揮する。だが──

    「……能力と覇気の練度の不利を精神のみで補うか?」

  • 151黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:26:28

    「いっ……今のおれは情欲なんぞに振り回されねェべ!」

    だが、光と音は通す。この二点において、ハンコックに対しバルトロメオの勝ち目は絶対にない。ハンコックの美しい肢体と美声、衣擦れの音はそれぞれ単体で他者を魅了するからだ。

    「ぬ、ぬぐおおおお!」

    ──バルトロメオが脳裏に思い出すのはあの日の言葉。

  • 152黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:28:42

    エレジア事件の日、ウタがサニー号に担ぎ込まれた後。バルトロメオは”赤髪”に土下座して詫びた。

    『……貴方がウタ様のお父君で、ルフィ先輩のご友人であることをつゆ知らず、旗を焼く極限の非礼を行ったことをお詫び申し上げまするべ。お望みならばこの首を叩き切っていただきてェ……!』

    『まァ何もさせないわけにはいかないんだろうが……なぁベック、どうしよう』

    『命がけで賠償させりゃいいんじゃねェか』

  • 153黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:30:23

    『じゃあ、お前の命とやらはウタとルフィを守るのに使ってくれ』

    『おれの娘と友達を助けてくれたんだろう?安いもんだ、旗の一つくらい』

    ──託されたのだ。負けられるものか、退けるものか、一歩たりとも!

    「退け、ねェ……!」

  • 154黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:32:37

    血が身体の各所から滲む。本来ならば、この時点でメロメロの圧力とハンコックの猛連撃を食らってバリア以外の全てを叩き壊されているほどの絶対的不利。そうはならなかったのは、双方に殺意も敵意もなかったからだ。

    不意に声が聞こえる。

    「ニワトリ君を放してあげてくれないかしら?彼には責任はないの」

  • 155黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:33:45

    「ロビンせんぱッ……!」

    (……女の声……誰が、どこから話しておる?)

    四方八方から声が聞こえるように感じた。おそらく幻聴ではない。であれば機械か、能力者か。ハンコックは素直に”ニワトリ君”への攻撃を取りやめ、相手の出方を待つことにした。

    「──麦わらの一味の考古学者、ニコ・ロビンよ。何卒よしなに」

  • 156黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:35:58

    体咲き(クエルポフルール)。ハンコックの眼前に花が咲くように現れる美女。

    「……そなたがニコ・ロビンか。ルフィから話は聞いておる。……学識に優れた淑女、とな」

    わらわには及ばないが、なかなか美しいではないか。わらわには及ばないが。そんなことを思いつつ、ハンコックはロビンの行動を観察する。

    「……ふふっ」

  • 157黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:39:16

    ふいに浮かべた笑み。

    ガスティーユを放ちかけたままメロメロ甘風を食らったシーザーを見て、ロビンはニコニコと笑っていた。アゴをあんぐり開けて目をときめかせた滑稽な石像がそこにある。

    「この男を海に投げ捨てるわけにはいかぬのか」

    「必要な人材ですもの」

    「しかし……のう」

    ──ハンコックのシーザーに対する第一印象は最悪に近い。以下のような経緯で遭遇したから。

  • 158黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:41:26

    『『『ご主人様〜〜〜♡』』』

    『シュロロロロロ!!!!ロンスカメイドたまんねェ〜!!』

    『人の船で呆れたもんだべ。ガールの皆様にお茶でも振る舞わねェと』



    「な……なんと……」

    ルフィからの招待を受け、喜色満面に来航した彼女がいの一番に見たのは給仕服の女性を侍らせる下劣な表情の男だった。

    当然、何もかもがハンコックにとっての”地雷”。

  • 159黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:42:58

    「許し難い!あのような下品な男どもがルフィの旗を掲げ、あまつさえ船首にルフィ像!露骨すぎるわ……!」
    「蛇姫様、いかがなされます」
    「拿捕して吐かせる。仮に本物の使者でもよかろう……なぜなら!」


    「わらわは“美しい”から!」

  • 160黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:44:17

    「──で、ハンコックを連れてきてくれたのか!」

    ゴーイングルフィセンパイ号とパフューム遊蛇号は、紆余曲折の末に和解して港に停泊した。シーザーは犠牲になった。

    「ロビン!ロメ男〜〜!ハンコック〜〜〜!!」

    「ルフィ!ルフィ〜♡!……!!」

    ハンコックが飛び出すよりも早く、ルフィの方から飛んでいく。

  • 161黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:45:18

    「本名でお呼ばれ……すげェべハンコック様!?おアッ、この船にルフィ先輩がァ~~!!」

    「相変わらずおれの乗ってそうな見た目してんなぁ!入るぞ」

    ガチャ、と扉を開けた先にはシーザー。ロビンがニコニコしながら眺めている。

    「シーザー!何固まってんだ!?」

    「タスケロ……タス……」

    「可哀想にね……“海賊女帝”の怒りに触れて……」

    「そりゃ仕方ねェな。行こうぜロビン」

    ガチャ。

  • 162黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:46:41

    「……あ、あいつの石化解除してやってくれよ」

    「勿論じゃ♡」「ウボァ‼」

  • 163黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:48:57

    ──所変わって、ホールケーキアイランドの瀟洒なホテル。

    元はシャーロット家や重臣が密議をする際に使用されていたそれを選定し、ハンコックを歓待する判断はロビンの提案によるものである。

    そのラウンジで、ハンコックはモチを食んでいた。

    「『会ってほしい人がいる』、と。ルフィの伝言にはあった。わらわと何者を引き合わせるつもりなのか、教えてはくれぬのか」

  • 164黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:51:33

    「おれから申し上げてよいものか……ロビン先輩、ウタ様は……」

    「ちょうど今分かったわ。『見える』そうよ」

    「あ~~えがった!さすがだべハンコック様は!」

    「話が見えんぞ」

    きなこモチを食みながら、やや呆れたような顔を二人に向けるハンコック。

    「ウタ、という歌手のことはご存じかしら」

  • 165黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:52:46

    「……行方知れずの”歌姫”、女ヶ島にも慕うものはおるな」

    幸いというべきか、ハンコックはエレジア事件について仔細を知らない。
    自室で執務中、漏れ聞こえる楽曲で気づかぬうちにウタワールドに取り込まれ、気づかぬうちに目覚めた。楽曲に対する興味もさしてなく、女ヶ島の孤立性から不穏な情報も得難い。素直に世経の記事を受け入れていたし、周囲も慮って話題にすることはなかった。

  • 166黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:54:44

    『ルフィが”歌姫”とやらを抱擁していたというのはまことか?』

    『とんだ早とちりのようだニョう。みな男の区別がつかぬから』

    『……そうか』

    ニョン婆の言にやや不審なものを感じたが、あくまでその程度。
    その歌姫と自分に何のかかわりがあるというのか。

  • 167黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 00:57:41

    「彼女は今、私たちの保護下にあるの。ルフィの手で助けられて」
    「……!」

    瞬間、噂が真実であることを悟る。並々ならぬ関係にある幼馴染、公然と抱き合うほどに親しい女が!あのルフィの保護下にあったというのか!

    「ルフィが助けた、他の女、か……うぬ、ぬ……!」

    「この件に関してはルフィも貴女以外に頼りがいなくて……」

    「……今更断らぬわ。ルフィの頼みならば、な!」

    ちょうどその時、待ち望んでいた愛しい声が響いた。

    「──連れてきたぞ~~!」

  • 168黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 01:02:52

    「ウタね。……失礼するわ」

    「おれ達は失礼して……どうかウタ様をお願いしますべ、ハンコック様!」

    ロビンとバルトロメオが席を外し、残ったのはハンコック、ゾロ、カタクリ、そしてシーザー。一人だけ浮いている。物理的にも浮いている。

    「……こやつがなぜこの場にいるのか、よう分からん。わらわとルフィは当然として……黙々と呑んだくれておるルフィの右腕とシャーロット家の次男、それとルフィの連れも万歩譲って許せるとして……」

    「こやつか」

    「おれだっていたかねェよ!?」

  • 169黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 01:14:16

    扉が開き、ルフィが飛び出してくる。

    「ハンコック!こいつがウタだ!」

    「っ、な……る、ルフィの上着……!?」

    先刻、センパイ号で会った際にルフィが来ていたマント。それをルフィの隣の紅白髪の女が羽織っている。──それを理解した刹那、ハンコックの脳は少し破壊された。だが、

    「不届き──」
    「あは、あは、あはははは!いやった~~~!!!女の人だ~~~!!!!」

    脳はそれ以上壊れる前に凍り付いた。矢の如き勢いで、その不届きな女──ウタが己に抱き着いてきたから。

  • 170黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 01:19:30

    今回はここまでだガネ

    フンフフフフ……“ウタハン”を供給する方法などいくらでもある!!

  • 171二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 02:10:45

    確かに地獄みたいな環境の中で人の姿をした同性が居てくれたらルフィ達とはまた別方向で安心できるよなぁ

  • 172黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/17(土) 02:49:09

    ボチボチ次スレの準備をするカネ…

  • 173二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 03:03:04

    これギャルディノーさんも活躍の場があるってことか?

  • 174二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 03:20:52

    おっつ

  • 175二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 07:52:56

    希望が見えてきて良かった…

  • 176二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 08:05:27

    モチ辺りからテンションハイなウタ好き

  • 177二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 11:48:12

    まあ治療が進んでルフィ以外にも視認できる人が増えて、まともなもの(カタクリの餅)も食えるようになった訳だし、そりゃテンションも上がるわな

  • 178二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 11:55:08

    今の晴れかけてるウタもいいけど
    最初辺りの精神病んだルフィ依存状態のウタも魅力的だったから
    介護してたロビン視点もみたいなと
    もちろんスレ主のしたいこと優先だけど

  • 179二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 17:01:15

    追いついた
    何だこの退廃的なスレは…
    怖いもの見たさで読み進めちまったよ

  • 180二次元好きの匿名さん22/09/17(土) 23:20:41

    さらっとゾロが悪魔の実の能力、しかも単純に強さに繋がる類いでないククククを得る覚悟キメてるのヤバいわ…

  • 181黒酢◆ISaFUJjzC/xn22/09/18(日) 01:50:01
  • 182二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 01:57:29

    ハンコックも覇王持ちだったな

  • 183二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 02:00:04

    あんま大声では言えないけど1スレ目の発症後のよわよわウタちゃん凄く好き……

  • 184二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 08:56:26

  • 185二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 09:04:13

    うめ

  • 186二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 09:19:50

  • 187二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 14:27:49

  • 188二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 18:01:48

  • 189二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 20:04:35

  • 190二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 21:55:30

    うめ

  • 191二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 22:19:36

  • 192二次元好きの匿名さん22/09/18(日) 22:45:29

    梅うめ

  • 193二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 08:49:50

    うめうめ

  • 194二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 09:10:35

    産め

  • 195二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 09:11:27

    このレスは削除されています

  • 196二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 14:10:34

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  • 197二次元好きの匿名さん22/09/19(月) 20:09:10

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  • 198二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 01:58:49

    うめ

  • 199二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 06:37:25

    200ならハッピーエンド

  • 200二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 15:51:34

    200なら幸せな結末がまってる!!

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