- 1自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 14:43:32
思えばあれが、始まりだったのだろう。
トレーナーさんと3年間を駆け抜け、その後ドイツに戻る予定だったのを変更し、もう少しだけ日本で走る事を決めた。
一方のトレーナーさんは新しく担当を持つことを打診され、それを了承。かつて私をスカウトしてくださったときと同じく、選抜レースを見て回るらしい。
私は彼が新しく担当を持つようになることに賛成か反対かで言えば、正直反対の気持ちの方が強かった。
かつての自分に対し、トレーナーさんは粉骨砕身で指導してくれていた。それこそ、二人で一緒に出掛けるのに何の疑問も持たなくなるほどには距離感を詰めてきていたし、他人が聞けば歯がガタガタと浮くような言葉すら囁いてきたのだ。
流石にあれだけ私に言っておきながら、新しい担当をも口説くと言う事はしないだろう。
しかし、私は知っている。この三年間、どれだけ彼が私に心を砕いてきたかを。
それと同じことを新しい担当にもするのかと考えるだけで胸の中に黒いものが湧き上がってくるようだった。 - 2自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 14:43:45
(まだ誰かもわからないような相手にやきもちだなんて…)
大丈夫だ。担当が増えたとしても、私もまた彼の担当ウマ娘なのだ。
何より、三年間築き上げてきた彼との絆は他の誰にも負けていないという自負がある。
もしそれで新しい子が挑んできたとしても、正面から応えればいい。決して、負けはしないだろうから。
(…そろそろ戻ってきてもいい頃なのに…)
そんなことを考えながら、彼を探すべく歩き出す。大方、選抜レースに向けてグラウンドで自主練をしているウマ娘の走りを吟味しているところなのだろうとあたりをつけているからだ。
「…あれは…」
少し遠巻きに、彼を見つけた。予想通り、何人かのウマ娘たちの練習風景を見つめているようだ。
声をかけようと近づこうとするも、体はぴたりと止まってしまった。
「―――。」
何かに釘付けになっているかのように、彼は目を開いて見入っていた。
息を呑むとはまさにこのことで、その場に縛り付けられているかのように、微動だにする気配がない。
彼の視線の先には、それだけの走りを魅せたウマ娘がいるのだろう。しかし視線を動かすこともできす、私も彼と同様に固まってしまっていた。
その顔を、見てしまったからだ。
何を思っていたのか、何を感じていたのか。完璧にわかりはしない。
だから外から見た推測でしかないけれど。あえて形容するのならば、それは。
――ひと目惚れ、なのだと思う。 - 3自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 14:44:52
それから、随分と日常が変わってしまった。つい直前も、新しい担当に連れられてトレーナーさんが学園の外へと出て行ったばかりだ。
今日に限った話ではない。最近はずっとこんな調子だ。
トレーナーさんは、彼女…数か月前にスカウトした新米の子にずっとかかりっきりであり、練習メニューを考えるだけでなく休日まで付き添って買い物に行ったり食事に出かけたりと、傍から見ていても仲睦まじい様子が伝わってくるほどだった。
そしてあの時見た顔が脳裏にちらついて離れない。あんな表情をする彼を初めて見たせいか、いつも以上に心が落ち着かない。
かといって、私が何か言えるような立場でもない。
自分もかつてはトレーナーさんから同じことをされていたのだ。私はいいけど他はダメ、というのはあまりに横暴だろう。
それに、彼の気持ちも少しは理解できる。
一度、彼女の走りを間近で見たのだ。その時の衝撃たるや、今でも忘れられない。
自分の限界を超えようとするかのような力強さと気迫を感じさせながら、どこまでも伸びていく末脚。
一人だけ早送りでもしているかのような異次元の速さの前に、私は敗れ去った。
その併走は、最初から最後まで私の理想通りの展開だった。だというのに、結果は敗北。当然と言わんばかりに危なげなく勝利を掴み取ったその姿に、私は完膚なきまでに叩き潰されたのだ。
あれなら、クラシック三冠も夢じゃないだろう。
そんな期待を寄せられるだけの素質が彼女にはある。だからこそ、トレーナーさんが惹かれる理由もよくわかるのだ。
それに加え、ジュニアからクラシックへの過渡期の中という、ウマ娘にとって最も重要な時期だ。
これらを鑑みれば、トレーナーさんも彼女にかかりっきりになるのは必然というものだろう。
それでも、どうしようもないモヤモヤとした感情だけは消えてくれないもので。トレーニング中も、レース前も、寮に戻ってからも。
頭の片隅には常に彼の姿があった。
(…手のかからない子は、放っておかれがちとは言いますが…)
今までずっと二人でやってきたのだ。これからも変わらずにいてくれるものだと思っていただけに、これはなかなか堪えるものがある。
そんな寂しさを抱えながら、誰もいないトレーナー室で溜め息を溢す。外は薄暗く、厚い雲に覆われた空が広がっている。
まるで今の自分のようだと嗤っていると、ふとあるものが目に入る。 - 4自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 14:46:00
「…トレーナーさんの、手帳?」
まだ表紙が艶を保ち、今年の西暦が書かれた手帳がテーブルの上に無造作に置かれていた。
この手帳の事はよく覚えている。去年の有馬記念が終わって間もないころに、来年もよろしくと意味を込めて一緒に選んだものだ。
「………」
ダメだとわかっているのに、好奇心は抑えきれない。いけないことだとは思いつつも、手は自然とその手帳の方へと向かっていく。
どうせしばらく彼らは戻ってこないのだ。手帳の内容の確認程度に何時間と掛かるはずなどないのだから、ばれやしないだろう。
ゆっくりと、彼の秘密に触れるように、ページを捲っていく。中にはびっしりと予定が書き込まれていた。
『1月…日 フラッシュと温泉旅行』
『2月12日 16:00~ 今年の新作チョコレートを見にフラッシュとデパートへ』
『3月1日 16:00~17:00 材料の買い出し』
「…懐かしいですね。」
最初の方は、私との予定が殆どを占めていた。かつて福引で当てた温泉旅行のことや、つい数か月前のバレンタインデーやホワイトデーのこと。
そのほかにも、トレーニングの事や寝る前の電話など、細々とした内容まで事細かく書かれていた。
彼の筆跡で綴られた文字を見る度に、その時のことが鮮明に思い出されて。その一つ一つに、彼との記憶がある。
嬉しくて、楽しくて、幸せで。彼と過ごした日々を思い出すだけで、胸の奥底から暖かいものが流れ込んでくるようだった。
安心感を覚えたのも束の間の事だった。
『4月29日 15:30~ ××と河川敷で走り込み その後商店街で買い物』
『18:00~ トレーナー室でミーティング ××の今後のレースについて』
『19:30~ ××と食事』
『22:00~22:15 フラッシュに電話』
ある時を境に、私の名が出てくる頻度がぐっと減ったのだ。代わりに、新しい担当の子の名前が頻出するようになっていた。
そこからはずっとそんな感じのスケジュールが続いており、『彼女』との予定が占める割合がどんどん増えていく。
あまりにもわかりやすい変化を前に、私はただ打ちひしがれるほかなかった。 - 5自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 14:46:21
色付きで書かれた、彼女の名前が酷く憎らしく思えて仕方がない。
『楽しみにしている予定は色分けをして書き込む』
これはかつて、自分が教えたことだった。それを律儀にも守り続けている彼に、喜べない日が来るとは思いもしなかった。
オレンジ色の羅列の中に、まだら模様のように存在する黒。詳しい内容なんて、見なくてもわかる。私との予定だ。
始めの方は、黒のボールペンで書こうとしたものを上から色の付いたペンで上書きしていた痕跡があったが、徐々にそれもなくなり、最後にはただ黒い文字で書かれた文章が、橙の中で健気な自己主張を続けていた。これが意味するところなど、とうに理解できていた。
「………っ!」
震える手で手帳を放り投げ、トレーナー室を飛び出す。気づけば脇目もふらずに駆けだしていた。
何でもいい。どこでもいい。ここでさえなければ。とにかく今は、誰も見ない、誰からも見られないところにいたかった。
私の頭の中は、ぽつぽつと降り出した雨の音に気付かないほどに、空っぽになっていた。 - 6自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 14:47:08
「…ラッ…ュ!フ………!」
遠くから声が聞こえる。耳慣れた、大好きな人の声が。ずっと聞きたかったはずなのに、今は聞きたくない。
今私にこうして気にかけていても、どうせまたすぐにこの声は私には向かなくなる。他人のために、その時間を割いてしまう。
嫌だ。こんな気持ちになるぐらいなら、いっそ、最初から───
「フラッシュ!!」
重いまぶたを一気に開くと、ぼやけた視界に映るのは彼の顔。どうやら、いつの間にか眠っていたらしい。身体には毛布がかけられている。おそらく彼がやってくれたのだろう。
「…トレーナー、さん?」
「はぁ…よかった…やっと起きた……」
意識が覚醒した私を見るや否や、トレーナーさんは一気に緊張が抜けたような顔をして安堵の息を吐いていた。
訳が分からないままでいると、ふと自分の体に不快感を覚える。嫌な暑さが身を包み、首元は汗で濡れている感覚があった。加えて、服が肌に張り付いて少しだけ気持ちが悪い。
どうやら自分はいつの間にか寝てしまっていたようで、その間にトレーナー室にタオルケットを持ってきた彼は私に掛けてくれていたようだ。状況から察するに、彼はずっと傍にいてくれたのだろうか。そう思うと、申し訳なさと同時に嬉しさがこみ上げてくる。
「それまで普通に寝てたのに、急にうなされ出してたから…心配になってさ。」
彼からそう言われて、じわじわと記憶がよみがえる。
確か…トレーナーさんから、少し遅れると連絡をもらって…待っているあいだにいつの間にか眠ってしまっていて…
(…じゃあ、あれは夢…?)
起きてなおはっきりと思い出せる、最悪な悪夢。思い出すだけでも背筋が凍るようだった。
もし、あの夢の通りに現実が進んでいたとしたら…きっと私は耐えられなかっただろう。 - 7自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 14:47:51
「大丈夫?嫌な夢でも見た?」
優しく尋ねられるが、私は黙ったままだった。話したところで、意味はない。
だって、あんなものはただの夢なのだ。実際に起こるはずのないことで、考えすぎが見せた幻に過ぎないのだから。
しかし、それでも心のどこかで不安は拭えない。
「…手帳。」
「うん…?」
「トレーナーさんの手帳、拝見させてください。」
有無は言わせないという意志を込めて、じっと彼の目を見つめる。すると、諦めたようにため息をつくと、ポケットから手帳を取り出して渡してくれた。
恐る恐る中を開くと、そこには先ほどのものと変わらない予定の数々が書いてある。
一つ違う点は、私以外の名前がほぼ出て来ない事だった。少しだけ丸みのある、彼の筆跡。そこに並ぶのは私の名ばかり。
それが何より嬉しくて、つい口元が緩んでしまう。
「…トレーナーさん。以前にもお伝えしましたが…」
ただ、一つの事柄に突っ込みたくなる。正直、この事が最も嬉しいとまであるが、それはそれとして指摘せずにはいられなかった。
「色分けというのは、色を分けるから意味があるんです。こうしてすべてオレンジ色で書いてしまっては意味がありませんよ?」
その内容のほとんどがオレンジ色で書かれていたことだった。すなわち、私との予定を楽しみにしていたという証左だが…
「…前に君が言った通りにしてたら、いつの間にかこんなことになっててさ。」
『楽しみにしている予定は、色付きのペンで書き込む。』
確かに以前、私が教えたことだ。しかし、ここまで徹底されるとは思わなかった。その事実に少し呆れつつも、同時に愛おしさがこみ上げる。
私との予定を楽しみにしてくれていたことは素直に喜ばしいし、そこまで想ってくれていることもとても幸せだった。 - 8自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 14:48:13
「…もう。」
言葉とは裏腹に、思わず笑みがこぼれてしまう。あぁ、私はこの人のこういうところが好きなんだな、と改めて実感する。
自分は案外単純なのかもしれないと考えつつ、彼に手帳を返し、向き合った。
そんな私を見て、彼はきょとんとしている。それもそうだ。今私は、今までにないほどに満面の笑顔を浮かべている自覚がある。
そして、これから自分がしようとしていることは、もっと彼を困らせることになるだろう。そんな確信もある。
だけど、どうしても抑えられなかった。
「…トレーナーさん。」
私はただそうとだけ口に出し、彼に向けて両手を広げてアピールする。一瞬驚いた様子を見せた彼だったが、すぐに意図を理解してくれた。
ぎゅっと強く抱きしめられ、密着感が増す。互いの体温を感じながら、しばらくのあいだ何も言わずに、私たちはそうしていた。
「…トレーニングの開始時刻まで、こうしていてください。」
やがて、ぽつりと言った私の言葉に、返事の代わりに頭を撫でてくれる。その温もりと心音に安心しながら、彼に身を委ねていく。
私を安心させるように、背中を軽く叩いてくれる手つきが心地いい。
ずっとこうしていたかったが、時間切れが見えてきた。トレーニングの時間が迫ってきているのは分かっている。
でも、もう少しだけこのままでいたかった。今だけは予定の事を考えたくはなかった。
「…そんな寂しそうな顔しないでよ。別にこのくらい、いつでもしてあげるからさ。」
見透かすような彼の一言に内心ドキリとする。しかし、彼の表情には嫌味のようなものはなく、ただ穏やかだった。
彼は私を抱きしめたまま、今度はゆっくりと私の髪を指ですいてくる。優しい仕草に、心が落ち着いていく。
「…わかりました。」
少しだけ不満を込めてそう言うと、彼は小さく笑っていた。「しょうがないなぁ」とでも言わんばかりの態度なトレーナーさんにむっとしつつも、観念して体を離す。名残惜しさを覚えながらも、最後に一度、彼の胸に寄り添うようにして額をこつんと当ててから、立ち上がったのだった。 - 9自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 14:49:34
と言う事でフラッシュ曇らせでした
- 10二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 14:55:18
最後は晴れたからヨシ!
独占欲は良いな…! - 11二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 14:58:54
立ち上がったのだった。まで読んだ
- 12二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 15:07:44
独占欲マシマシフラッシュすき
- 13二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 15:18:56
最後まで夢が言えてないの芝
- 14自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 15:35:54
ところでこのSSのタイトルを「鳥無き里の蝙蝠」にしようかと思ってる
- 15二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 15:58:25
タイトルセンス×
- 16二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 16:02:59
良かった
でもマジでタイトルはなんとかしたほうが良い気がする…
丁寧な内容なのにタイトルだけ浮いててチグハグ感が - 17二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 16:14:25
タイトル無かったの、今気付いた
- 18自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 18:19:26
ドイツ語のタイトルって伸びるかなぁ
「Unter Blinden ist der Einäugige König」なんて - 19自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 18:30:11
ところでSSってこのまま直接書き込むのかテレグラフ使った方がいいのかわからないんだけどどっちがいいの
- 20二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 18:35:00
- 21自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 18:40:09
- 22二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 18:51:18
- 23自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 18:54:31
- 24二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 20:13:27
- 25二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 20:24:14
是非ぜひ
- 26自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:36:07
文字数多すぎて上のサイト使えませんでした。
いつものように、アイシャドウを塗る。鏡と向き合いながら、崩れていないかと念入りに髪をかきわけて目元を映す。何度見ても、鏡には高鳴りを抑えられない顔が映し出されるだけだった。
まるで一流のシェフが食材に下ごしらえをするように、寸分の狂いもないよう魂を込める。
「…よし。」
何度目かもわからない独り言をつぶやき、胸元で軽く手を握りこんだ。そしてそのまま深呼吸をしてから、何があってもいいようバッグに物を詰め込む。
普段なら使わないであろう、自分の肌よりも濃い色のファンデーションがのぞくのを見て、少しだけ頬を赤く染めた。準備を終えた旨のメッセージを『彼』に送り、ルームメイトの暖かな視線を背に部屋を後とする。念のため、外泊届は出した。化粧道具だって持ってきた。必要なものは全て入っている。
気障な寮長の揶揄うような笑みを流ししつつ、西の空に僅かに橙が残る中、私は『彼』の元へと向かうのだった。
◇
数日前。
中距離のTSクライマックスを制し、来るドリームトロフィーリーグへ向けて調整を続ける日々を送っていたある日のことだった。
「凄いタイムだ…!これなら向こうでも通用する!」
「当然だ。そうでなければ、女帝など務まらん。」
Tシャツ姿で腕を組みつつ、汗まみれの顔のままトレーナーからの言葉に応えるエアグルーヴ。その表情は満足げでありながらも、どこか自信に満ちたものだった。彼の手の中にはストップウォッチがあり、そこには今の記録が表示されていた。
――1:47.18。
ドバイDFと同じ距離の、1800mのタイムがこれだ。レコードには2秒ほど及ばないものの、これを本番でも出せれば世界の強豪相手でも戦える。
もはや「凄いタイム」で済ませていいものではないものの、この調子であれば国内では敵なしだろう。
エアグルーヴたっての希望で、海外レースも視野に入れて調整を進めている。はじめは不安の方が大きかったが、いざ蓋を開いてみれば順調そのもの。
未だ底を見せない『女帝』の強さに、彼は改めて驚かされるばかりであった。 - 27自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:37:14
「…何をしている?」
「今すぐにでもこのストップウォッチ見せに行きたい…!自慢しに行きたい…!」
「…………」
そんなことを言い出す始末である。今までにないほどテンションが上がっているのがわかるだけに、それを必死に抑えている姿を見ると何も言えなくなる。ただ一つ言えることは、おそらく彼女の言う通りになるということだけだ。それほどまでに今のタイムというのは誇れるものであり、同時に今後の目標を示す指標となるものであったのだ。
「とりあえず俺と君の後輩たちと…あとエアグルーヴのお母様に見せたいなぁ…今呼んだら来てくれないかな。」
「わざわざ呼び出す奴があるか…写真だけで十分だろう。」
「えー…」
興奮が冷めないままに呟くトレーナーに呆れながら、タオルを受け取りつつエアグルーヴはため息をつく。
しかしクールに振る舞うその裏で、尻尾と耳が確かに喜びを表現していたことを彼は見逃さなかった。
ひとまず彼女に二本目の水を差しだす。すると彼女は礼を言いながらもペットボトルを受け取り、喉を潤し始めた。
「…あぁ、そうだ。今度の土曜日、空いてる?」
「なんだ、藪から棒に……。」
トレーナーからの唐突すぎる質問に疑問を浮かべるも、律儀にも答えようとする彼女。スマホの中に入れた予定帳アプリを確認し、頭の中で照らし合わせていく。幸いなことに週末は特に用事もなく、生徒会の活動も休みとなっている日だ。そのため何かあったとしても融通がききやすくなっている。
しかしそれがどうしたというのか?話のつなげ方も妙に不自然な気がする。だが、エアグルーヴはそこに触れず続きを待つことにした。
「いや、食事でもどうかなって。いいとこ行こうかと思ったんだけど。」
何の変哲もない誘いだった。それはそうだろう。むしろそれ以外に何があるというのか。そうと分かれば、特に疑問に思うこともないだろう。目の前の男のセンスはいかほどか、少し楽しみではある。断る理由もない。
「…まあいいだろう。期待しておこうか。」
「よしきた。じゃあ時間とか決まったらまた伝えるよ。」
特に意味があるわけでもない問答を交わし、そこで会話を一旦区切る二人。
エアグルーヴは、一連のやり取りに少し思うところこそあったものの、さしたる問題ではないと判断して気にしないことにした。 - 28自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:38:49
「グルーヴさん、お出かけするの?」
「あぁ。今週の土曜日は少し空けることになった。」
その夜の事。ルームメイトのファインモーションに尋ねられ、エアグルーヴは小さく首を縦に振った。
普段ならここで話を聞いてくるのだが、今回は違った。目をキラキラさせ、まるで自分ごとのように喜んでいるように見える。いつもの穏やかな雰囲気とは少し違うものだ。そんな様子を不思議に思いつつも、一応は返事をする。
「…どうした。なぜそう目を輝かせる。」
「グルーヴさんもついに、結婚するのね!」
「なっ…」
思わず言葉を失うエアグルーヴ。しかしそれも無理はない。何故なら彼女が言ったことは、おおよそ想像がつくとはいえあまりにも飛躍しすぎていたからだ。そもそもあの男との関係は、あくまでトレーナーと担当ウマ娘であってそれ以上でもそれ以下でもないし、第一付き合っている訳でも何でもない。ましてや、自分のような女が結婚するなどという話など冗談でも笑えないくらいだ。……だというのに、ファインモーションはどこまでも楽しげだ。心の底から祝福しようという感情が見え見えである。
「いきなり何を言い出すんだ!どこからそんな発想が出てきた!?」
あまりのことに慌てて声を荒げるエアグルーヴ。しかしその反応すら想定内といった具合に、笑顔のままのファインモーション。そしてそのまま、いかに自分が正しいかを力説し始める。
「仲のいい男女が二人、お洒落なレストラン…ときたら、もう決まっているようなものじゃない?そんなのもう、プロポーズしかないと思うの♪」
「そ、そういうものなのか……?」
ファインモーションの勢いに押されてタジタジになるエアグルーヴ。しかしそれでもなお、彼女は止まらない。女子高生というのは、この手の話題になると途端にテンションが上がるのだ。
それを加味しても、まさかここまで食いついてくると思っていなかった。
「…いや待て。いくら何でもそんな………」
と言いつつも、その可能性はありうるような気がしてきてしまっている。しかしそんなことはありえないだろうと思考を巡らせるも、逆効果でしかなかった。
先程までの彼の言動を細かく思い出す。
普段よりも高かったテンション。妙に唐突で不自然な話のつなげ方と誘い方。それらすべてが、『プロポーズの準備で緊張していたから』で説明がついてしまうことに気づいてしまった。 - 29自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:39:48
「……流石にありえないだろう。私と奴の関係はただのトレーナーとウマ娘だぞ…?」
「ただのウマ娘とトレーナーは一緒に温泉旅館なんていかないと思うんだけどな~?」
うぐっ、と言葉を詰まらす。確かに言われてみるとそうだ。しかもあろうことか二人で泊まったのだ。これは最早疑いようがない。
しかし、だからといってすぐに『そういった関係』に限りなく近いと認めるというのも憚られた。せめてもう少し時間が欲しい。彼女の中に、乙女らしい葛藤が生まれつつあった。
「ねぇ、私にも協力させてくださらない?せっかくの機会なんだし、私からもお祝いしたいな♪」
「いや、まだそうと確定したわけでは…」
すっかりその気でいるファインモーション。こうなった以上は止めても無駄だろう。諦めたようにため息をつくエアグルーヴであったが、どこか嬉しそうな表情を浮かべていることを、当の本人は自覚していなかった。
◇
そのさらに翌日のこと。
エアグルーヴは、カフェテリアにて昼食をとっていた。食堂を利用する生徒は多く、今日も賑わっている。
楽しげな雰囲気を纏う場所だが、それとは対照的に彼女は難しい顔をしている。それは昨日の出来事について考えていたからである。
結局あの後はファインの勢いに負けてそこまで深くは考えなかったが、実際のところトレーナーの方はどう思っているのか。もしやとは思うが、本心は違うのではないか。そもそもあの男は自分に好意を寄せてくれているというのか。様々な疑問が浮かんできては消えていく。
まさか本人に聞くわけにもいかず、悶々とした時間を過ごしていた。
「…む。お母様から…?」
ふとした瞬間にスマホが鳴る。画面を見ると、そこには母親からの着信が来ていることを示す表示が出ていた。通話ボタンを押し、電話に出る。すると、スピーカーの向こうからはいつも通りの口調の声が流れてきた。 - 30自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:41:06
『やっほ~、エアグルーヴ。調子はどう?』
「いえ…特に変わったこともなく、穏やかな日々を過ごせています。」
そう答えると、母は嬉しそうに笑った。
『あら、よかった!あっ、そうだ。見たわよ、あれ。すごいじゃない!見せられた時、お母さんびっくりしちゃった!』
母の言うあれとは、十中八九昨日のタイムの事だろう。あの時は本当に無我夢中だったのだが、こうして改めて言われると恥ずかしく感じてくる。とはいえ、悪い気分ではなかった。誰かに褒められるというのは嬉しいものである。
『トレーナーさんから聞いてるわよ~。海外に挑戦するんですって?いや~!今から楽しみだわ~!』
心底楽しそうに話す母の様子を見て、エアグルーヴもつられて微笑んでしまう。
それからしばらく雑談をしたのちに、用件に入る。内容は近況報告がメインであり、あとは他愛もない話だった。しかしそんな中で、とんでもない爆弾が投下されるのだった。
『そういえば、土曜日にトレーナーさんとお出かけするのよね?』
「!!?な、なぜその事を…!?」
突然のことに思わず声を上げる。しかしそれも無理はない。何故なら、このことはファインにしか言っていないからだ。それをどうして、この母親が知っているというのか。
『お友達が教えてくれたのよ~。ほら、この間私の声真似してた…』
その言葉を聞いた瞬間、脳内に余裕綽々に笑みを浮かべるフジキセキの顔が思い起こされた。
ファインから、どういうわけかフジキセキを経由してお母様に伝わったようだ。そしてそこから話が広がったということか。なんとも言えない気持ちになるエアグルーヴだったが、そんなことはお構いなしに話は進んでいく。
『なるほどねぇ…トレーナーさんと二人でレストランねぇ…』
ニマニマと笑う様子がありありと想像できるような声で呟かれたその一言で、エアグルーヴは確信する。間違いなく勘づかれている。というか確実に聞かされている。
「…何か勘違いされているようですが、お母様が想像されているようなことはありません…恐らくですが。」
『あら?私はただ、”楽しんできてね~” って言うだけのつもりだったのに…』
「…っ!」 - 31自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:41:50
はっとなって口元を抑える。『ふ~ん…?』と呟く母親の顔が目に浮かぶようである。
完全に墓穴を掘ってしまった。顔が熱くなるのを感じる。一枚上手をいかれたと言わざるを得ない状況である。なんとか弁解しようと試みるも、何も出てこない。このままでは最後まで弄られ続ける羽目になってしまう…
『まぁ…二人の事なんだから、お母さんもあまり首は突っ込まないわよ。』
と思いきや、別にそんなことはなかったようで、意外にもあっさりと引き下がってくれた。
『ただ…迷えるエアグルーヴに、一つアドバイスをあげる。』
「アドバイス…?」
オウム返しをするエアグルーヴに向けて、母親は言った。その声は、先程までの揶揄うようなものとは異なり、真剣なものへと変わっていた。まるで諭すかのような口調で、彼女は語る。
ゆっくりと息を吸い、ゆっくりと息を吐く音が電話越しに伝わる。ゆっくりと生唾を飲み込むエアグルーヴをよそに、ゆっくりと口が開かれた。
『彼の肌と同じ色のファンデを持っていくと…捗るわよ?』
「お母様ッッ!!!」
二発目の爆弾が、投下された瞬間であった。 - 32自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:42:29
そうして迎えた当日。
どのような高級レストランへ行くことになろうと、ドレスコードに問題はない。バッグの中身も何度も確認した。忘れ物はない。大丈夫だと自分に言い聞かせながら、はやる気持ちを抑えて彼との待ち合わせ場所へと向かう。足取りが軽い。上がる口角を抑えるのにも苦労するほどに、今の自分は浮ついている。
さんざ掘り下げられ、弄られ、その結果本当に「そういうつもり」で誘われたのではないかと思えきていたのだ。すっかりとその気になってしまっている自分に呆れながらも、やはりどこか嬉しさを感じてしまう。
(…いかんな。落ち着け私……)
気を引き締めるように頬を叩き、意識を切り換えようとする。しかしそうは思っていても、どうしても胸が高鳴ってしまう。
そうこうしているうちに、トレーナーの姿が見えてくる。
車のドアに肘を置き、手首の時計を頻りに気にしている。その姿は、いつもと変わらない彼だ。
いつも通りのトレーナー。いつも通り。
だというのに、自分の鼓動が早くなっていくのを自覚する。これはいけないことだと思っていてなお、早まるスピードを抑えられない。そうして、彼がこちらに気づいたところで、いつものように近づいていく。
「待たせたか?」
「いや、俺もちょうど今来たところ。」
使い古された気遣いのフレーズだが、実際に使われると妙に嬉しく感じるのは何故だろうか。ふふっと笑いそうになるのを堪え、助手席に乗り込んだ。
シートベルトを着けたところで、車が発進する。高速で通り過ぎていく街の光が、黒い夜のキャンパスを彩る。心地よく揺れる車内の中、エアグルーヴが口を開いた。
「…ところで一つ、いいか?」
「うん?」 - 33自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:43:55
普段よりも少しだけトーンの低い声色に、トレーナーは何を言うのかと耳を傾ける。
「なぜ急に誘ったんだ?今まで、そんなことはしなかっただろう。」
そう問いかけると、彼はハンドルを握ったまま前を見据えて答える。その表情は穏やかなもので、当人の人懐っこさがにじみ出ている。いつものような優しい声音だった。
「まぁ…前祝い、かな?繁栄をお祈りして、みたいな。そんな感じ。深い意味はないよ。」
言葉の通り、深く考えていないのであろうことが容易に伺えた。確かに、そういった意味合いもあるかもしれないが、きっとそれだけではないはずだ。
それとは別に、何かあるのではないか。エアグルーヴには、そんな気がしてならなかった。
「それと最近、臨時収入も入ったし、丁度いいかなって。」
そんなことを言って笑う彼に、エアグルーヴは思わずため息をつく。まったく、相変わらず下手というかなんというか。ベタな理由付けだが、まぁ良しとしよう。これ以上追及してしまうというのは、それこそ無粋というものだろう。こういう時は、相手に華を持たせてやらねば。
「何か不満だった?」
「いや…まぁ、強いて言うとすれば…然るべき場に赴くというのに、またネクタイが曲がっている、というのはあるが…」
「え、うそ。俺今手が離せないんだけど…」
「直すのは降りてからでいいだろう。」
「…近くにコンビニとかないかな。」
「降りてからというのは、レストランの駐車場で、という意味だ、このたわけが。」
軽口を言いながら、車は走り続ける。会話が一度終われば、トレーナーはまた運転に集中して黙り込む。
普段とは違う表情を眺めていたかった気持ちもあるが、ぐっとこらえてスマホの電源を入れて検索ボックスに文字を打ち込んだ。
【レストラン プロポーズ】
一瞬で大量のページが表示される。見出しにはどれも大きな差はなかったので、適当に飛んでいき、一番上に出てきたものを開いてみる。
『レストランへのお誘いはチャンス!? プロポーズを受けるときの10の心得♡!』
…頭が痛くなりそうなタイトルに辟易としながらも、上から下にスクロールしていく。
その多くは目の滑るような煽り文句で埋め尽くされており、よくあるアフィリエイトのブログ記事だということはすぐに分かった。今すぐにでも全文推敲してやりたいところだったが、その一方で収穫も確かにあった。 - 34自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:44:56
(…ウェイターが指輪を持ってくる場合もある、と…)
事前に店に連絡して打ち合わせをしておけば、そういうサービスも受けられるということらしい。プロポーズと言われてすぐ想像できるようなシチュエーションではないだろうが、一応頭に入れておくことに損はないはずだ。
(・・・・)
詳しく想像していけばいくほど、どんどん現実味が増してきている。自分がその状況に置かれた時のことを考えているのだから当然なのだが、どうにも心が落ち着かない。胸がざわつく。まるでレース前の緊張感のような感覚を覚えながらも、電源を落として頬杖をつきながら、騒がしく夜を照らす灯りをただ見つめていた。
(…生半可なことでは、この女帝の心を動かすことは出来んぞ?)
ほんの少しの笑みを浮かべながら、期待を込めた目つきでトレーナーを横目に見る。そんなことは露知らずと、彼は普段通りに車を目的地へと走らせていた。
◇
「はぁ~…美味しかった…」
「・・・・」
満足げな顔をしながら、レストランを後にするトレーナー。すっかりと腹も心も満たしてしまったようで、その足取りは軽い。一方のエアグルーヴといえば、深刻な表情で俯きながらその後ろをついていく。
(……何も、起こらなかった…だと…?)
入店から退店まで、今か今かとその瞬間を待ち望んでいたものの、結局は何も起きずに終わってしまった。
席に着いた時から、注文をした時、料理が届いたとき、そして食べ終わった今もなお、彼の様子に変わりはなかった。もしや、私の思い過ごしなのか?本当にただ食事をしただけで、それ以上に発展することはないのか? いや、しかし……と、一人葛藤を繰り返す。 - 35自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:45:39
「…ん、どうしたの?お気に召さなかった?」
「いや…そんなことは無い。とても良かった…」
嘘偽りのない本心を告げてはみたが、やはりどこか納得がいっていないのもまた事実だ。ここまできて、こんなはずがない。そう思えば思う程に、疑ってしまう。まさかとは思いつつも、疑念を拭えない。
「よかった。じゃあ、行こうか。」
こちらを振り向いてそう言った彼は、もう既に車のほうを向いて歩き出している。その背中を見て、エアグルーヴは思った。まさか本当に思い過ごしではあるまいな、と。
あれほど覚悟を決めておいて、仮にそうであったら拍子抜けもいい所である。このまま、いつものように寮に送ってもらう流れになってしまうのではないか?そんな嫌な予感さえしてきたところで、ついにその言葉が投げかけられたのだ。
彼からの一言が。それはあまりに突然のことすぎて、思わず聞き返してしまいそうになるくらいには。
「ちょっと寄りたいところがあるんだけどいいかな?」
いつもなら遠慮がちに聞いてくるのだが、今日は珍しく強引だった。これはあるな、と察するのに時間はかからなかった。これで何もないわけが無い。
だからこそ、エアグルーヴはこの問いに対して即座に答えを出した。もちろん肯定以外の選択肢などない。
喜びを表に出さないよう、平静を装いながら返事をする。
「それはいいが…どこへ行くんだ?」
聞いた瞬間、彼は悪戯っぽい笑みを浮かべて振り返った。その顔を見た途端、確信に変わる。何か仕掛けてくる。この男は何事かを企んでいると。
「まぁ、着くまでのお楽しみってことで。」
今更引き返すわけにもいかないし、ここは大人しく乗ってやるしかないだろう。
どうせ何をしようとも、結果は変わらないのだから。今の言葉の意味するところは、つまりそういうことだ。きっとそうだ。間違いはない。心臓が高鳴るのを感じつつ、彼に手を引かれるがまま車に乗り込む。
徒歩でなくてよかった。
こんな喜びに暴れる尻尾など、彼に見られる訳には行かないのだから。 - 36自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:47:36
夜の街を走り抜けること数十分。車を降り、歩くこと数分。ぽつぽつと存在する街灯が土の道を照らす中、私は彼に手を引かれながら、夜の公園を歩いていた。
ほのかに潮の香りが漂う中、訳も分からないまま連れてこられて戸惑う私とは対照的に、彼は実に楽しげで。それがまた、私の不安感を煽ってくるのだ。
暗い中、硬く握られた手。こうしてしっかりと握られているのは初めてかもしれない。ぎゅっと握り返せば、より強く感じてしまう彼の手の温もり。
それだけで胸の内が満たされるような気がしたが、今はその心地よさに酔い痴れている場合ではないという事も理解しているつもりだ。
(一体、どこまで行く気なんだ……?)
この先に何が待ち受けているのか、今の段階では皆目見当もつかなかった。ただ、少なくとも先ほどのレストランのような場所ではないだろうということは確かだ。
少しだけ、早まった鼓動を抑えるように息を吐き出す。大丈夫だと言い聞かせるようにして気持ちを整えながら歩を進める。
「…よし、着いたよエアグルーヴ!ほら、見てよ!」
目の前に広がる光景を見て、思わず目を見開く。
湾を横切る連絡橋は明るい青で照らされ、骨組みの一つ一つまでもがはっきりと見えるほどに明るくなっていた。そして海を挟んだ向こう側には宝石箱をひっくり返したような夜景が広がっている。無数の光がまばらに輝き、黒く波打つ海面に反射してまるで星空がそのまま地上に降りてきたかのような美しさを放っている。
「綺麗でしょ?」
嬉々としてそう言うトレーナーの顔を横目に眺めながら、ふと思った。……確かに美しい景色ではあるが、なぜ今この場所に連れてきたのだろうか。
ここが特別な場所だという事は知っているが、それとこれとは話が別である。
(本命の場はここだったか・・・)
彼がここまでする理由はなんなのだ?もしや、ここでプロポーズしようという腹積りなのではなかろうか。
そう考えれば、今の状況にも、レストランでも何もなかったことにも説明がつく。 - 37自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:48:31
「・・・確かに壮観だが…なぜここに?」
恐る恐る尋ねてみると、あっけらかんとした様子で返答される。
「…なんで、ってほどでもないんだけどさ。こんなに綺麗な景色を見つけたんだし、どうせならエアグルーヴにも見てほしいなって。」
予想していたものとは違った答えに困惑してしまう。いや、決して悪い意味では無いのだが…まさかそんな単純な理由だとは思いもしなかった。しかしそうなると、いよいよ分からなくなってしまう。わざわざここまで連れてきて、こんなロマンチックな場所に誘ってきた意味とは…
「今までは色々とごたついてたから、なかなかこういう時間が取れなかったからね。せっかくだし、君に見せたかったんだよ。」
…そういう事か。ならば、今から行われるであろうことは決まっている。もう逃げることはできない。
「…ねぇ、エアグルーヴ。前に、さ。俺の事を理想のトレーナーだ、って言ってくれたよね。…それは、今でも変わらない?」
突然切り出された話題に驚くが、動揺は見せない。当然だ。あの時と変わらず、今もその想いに変わりはない。むしろ、より一層強まっていると言ってもいいくらいだろう。だからこそ、私は素直に答えることができる。
「…今のところは、な。これからもそうかは…貴様次第だ。」
「ははっ、手厳しいなぁ。」
困ったように笑う彼の顔を見ながら、言葉を続ける。
「そういう貴様は…どうなんだ?」
「俺?…そうだなぁ。」
意趣返しとばかりに、今度はこちらから問いかけてみる。その言葉を聞いて、彼は驚いた表情を浮かべたが、すぐにいつものように笑みを浮かべて答えてくれた。その笑顔を見て思う。やはり彼はこうでなければ、と。
「エアグルーヴが担当でいてくれてよかったよ。本当にありがとう。」
その答えを聞いた途端、思わず頬が緩んでしまうのを感じた。嬉しい。そんな感情が胸の中いっぱいに広がっていく。顔が熱くなるのを感じながらも、平静を装いながら言葉を返す。
「…そうか。」
きっと首まで真っ赤になっているだろう。それでも構わない。今は少しでも長く彼との時間を共有したい。
そう思ってのことだった。それからしばらくの間2人で夜景を眺めていた。会話はなく静かなものだったが、不思議とその沈黙も悪くないと思える。 - 38自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:49:26
しかし、満たされれば次の欲が湧いてくるのが人というもので。ここから次のステップへと進みたいと思ってくるのである。取り繕う事すらできないであろうほどに緩み切った口元を見られないようにしながら、そわそわと落ち着かない様子で彼の様子を伺う。
すると、それに気付いたのか彼の方からも視線を向けてきた。目が合い、ドキリとする。
そのまま見つめ合うこと数秒。
「エアグルーヴ。」
「っ……」
名前を呼ばれて、身体が震える。ああ、ついにこの時が来たのか。そう思った瞬間、無意識のうちに耳がぴんっと立ち、尻尾がぶんっと振られた。心臓がうるさい程に高鳴り、息が詰まる。喉の奥がカラカラになって、唾液の粘度が上がってしまったかのように感じるほど。
ゆっくりと、口が開かれるように見える。風に飛ばされる木の葉すらも、スローモーションで舞っているようだ。全身を駆け巡る緊張に耐えながら、彼の言葉を待つ。そして――
「そろそろ帰ろうか!」
「・・・・・・・・・・・は?」
一瞬、何を言われたのかわからず固まってしまう。今、なんて言ったのだ。帰ると言ったか。どこにだ。家にか。それはそうだろうな、彼には自分の部屋があるのだから。じゃあ私はどうなるというのだ。そこまで同行するとでもいうのか。
「…いや、ほら。トレセンから結構距離あるし。今から出発しないと間に合わないよ?」
「・・・・・・・・・・・」
……………… - 39自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:50:35
………車で揺られること一時間。行きの時のように外の景色に気を取られるようなこともなく、ただ呆気に取られていた。
「じゃあ、おやすみ。また明日ね。」
気づけば寮の前におり、トレーナーの声で一気に正気に戻る。脳の片隅でほんの少し、ここでフラッシュモブの類を仕掛けられるのではないかと期待していたが、特にそういったものはなかった。
盛大で壮大で雄大な肩透かしを食らったのだった。
ふらふらと自室に戻り、ベッドに倒れ込むようにして横になる。頭の中では先ほどの光景が何度もリピートされていた。
「あっ!おかえりな、さ…い?…えっと、グルーヴ、さん?」
「・・・・・結局私の思い過ごしだったということか・・・」
疲れた。非常に疲れた。私は一体何を期待していたというのだろうか。
生娘のようにこのシチュエーションに浮かれ、周りに囃し立てられるがままに期待して、結果がこれというのだから、つくづく笑える話だ。
「えーっと…だ、大丈夫…だった?」
「…ファイン。……これが大丈夫に…見えるか?」
今までにないほど無気力に呟く私の様子に、ファインは慌てふためくばかりだった。
「…ごめんなさい!私があんな風に盛り上げたばっかりに…!」
そう言いつつしゅんとして耳をぺたんと垂れさせる。最初から誰に対して怒っているというわけではなかったが、少なくとも彼女本人は善意でやってくれていたのだ。いくらこうなるのが予想外でも、この結果に打ちひしがれていようと、結局悪いのは何よりも私自身なのだ。
「…お前は悪くない。私がただ、勝手に浮かれていただけだ…」
「でも…」
俯き、落ち込んでいる様子の彼女に罪悪感を覚えつつも、自分の気持ちを伝える。正直、今日はもう何もやる気が起きなかった。このまま眠ってしまいたい。
しかしそんなわけにもいかない。せめて汗ぐらいは流してからにしようとした。
「………あれ?」
「……む?」
そんなことを考えていると、私の携帯が鳴った。こんな時間に誰かから電話がかかってくるなど珍しいことだ。画面を見ると、そこには彼の名前が表示されていた。嫌な予感を感じながらも、出ない訳にはいかず通話ボタンを押す。もし仮に、万が一にもないとは思うが、そういう展開があった場合に備えて、心の準備だけはしておく必要があったからだ。 - 40自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:52:21
「………なんだ、忘れ物でもしていたか?」
『ごめんね、こんな遅くに。』
聞こえてきた声からは、普段の彼らしい穏やかな雰囲気を感じ取ることができた。どうしたんだろうと思いながらも、その疑問を口に出すことはない。
『さっき別れた時、なんかすごく落ち込んでた顔してたから。何かあったんじゃないかって心配になって。』
どの口が言うんだと恨み言を放ちたくもなるが、ぐっと堪える。確かにあの時の私は、どこか寂しげな雰囲気を放っていたかもしれないし、それを察してくれたことは素直に感謝すべきだと思ったから。
「あ…それについては私から説明させてくれないかな?」
「お、おい…」
近くで見ていたファインが、申し訳なさげに口を開いた。私の手首をつかんでスマホを自分の方に引き寄せ、事の経緯を彼に話す。その間、私はされるがままになっていた。引き止めることもできたが、今の自分にはそれがやれなかった。
『………プロポーズ………あぁ、それで…』
合点がいったとばかりに彼は相槌を打つ。どうやら話は理解できたようだ。
『なんだかずっとそわそわしてたなぁ、って思ってたんだけど。なるほど…そういう…』
なるほどなぁ、と繰り返し呟いている。別にこちらとしてはそこまで気にすることでもないのだが、なんとも居心地が悪い気がする。
それにしても、だ。彼の反応を見る限り、本当に彼が勘違いをしていただけということなのだろう。そう考えれば、自分だけが空回りしていたことが途端に恥ずかしく思えてくる。穴があれば入りたいとはまさにこのことだろう。
『…とりあえずその、二人にしてもらえる?』
ファインはこくりと首肯すると、静かに部屋から出て行った。パタン、という扉の音とともに少しの沈黙が訪れる。そうして5秒と経たないうちに、今度は彼から話しかけられた。
『えー…っと…その。まず冷静に聞いてほしいんだけど。エアグルーヴはまだ、学生でしょ?別にエアグルーヴのことを子供だとは思ってないけど…学生相手にプロポーズっていうのは、ちょっと…』
「・・・・・・」 - 41自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:53:09
この上ないほどのド正論を告げられ、私は言葉を失った。返す言葉がない。
それはそうだ。まだ未成年の学生に、結婚してくださいなどという大人がどこにいるというのか。思い返せば私の知り合いのトレーナーに約一名ほどいたが、あれは色々と例外中の例外である。つまり、今回の件は完全に私の一人相撲だったということになる。
そして同時に、私がどれだけ舞い上がって、勝手に期待をして、勝手に裏切られたような気分になっているのかということを改めて自覚してしまったのだ。羞恥に身悶えそうになる自分を必死に抑え、なんとか言葉を絞り出す。
「…………それはまぁ、その通りだろう。だから、私が勝手に舞い上がってしまっただけの話であって…」
だから気に病むようなことではない、と付け加えるように言うが、彼はそれでもやはりどこか煮え切らないようであった。これ以上わかり切った話を続けるというのもあまり建設的とは言えないため、早いところ電話を切ろうかと考えていた。
『だからまぁ…その、さ。そういうのは…あと2~3年くらい待ってほしいな、って。』
しかし、次に発せられた一言が私を硬直させた。私は何を言われたのかわからず、数秒間思考を停止する。
ようやく脳が再起動し、今の言葉の意味を理解したところで、再び全身が熱を帯びるのを感じた。そんな私の様子も知らず、彼は続けて言葉を続ける。
『その時が来たら…改めてプロポーズさせてよ。』
婚約の予約をするという異常性に、可笑しいと感じながらも、体を支配していた重い感覚がすっと抜けていくのがわかる。少しだけ笑いを溢しながら、私は彼へと言葉を紡ぐ。
「…プロポーズの予告を本人にする奴があるか、このたわけが。これではプロポーズしているのとほとんど変わらないではないか。」
『………あ。言われてみれば確かに…』
どうやら本人も気づいていなかったらしい。だがそんな抜けた部分も含めて、愛おしく感じてしまう自分がいた。先程までとは打って変わって、すっかり心が落ち着くことができたことに気がつく。
そんな様子を見て安心してくれたのか、電話越しにほっとした様子が伝わってきた。 - 42自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:54:48
「という事は当然、今日以上のサプライズを用意してくれるんだろう?」
いたずらっぽく言ってみると、彼は困った様子ながらもどこか楽しげな声で返答してきた。
『そんな所まで厳しくならなくてもよくないかな?』
「ふっ、何を言う。だからこそだろう。言っておくが…生半可なことでは、この女帝の心を動かすことは出来んぞ?」
『ははっ、わかってるよ。そっちこそ覚悟しておいてね。』
お互いに冗談めかすようにして会話を続けていると、自然と頬が緩んでいることに気づく。
今までずっと張り詰めていた気持ちも、いつの間にか霧散していた。どうしようもなく単純な自分に呆れつつも、今はこれでいいかという結論に至る。
『じゃ、おやすみ。また明日ね。』
「あぁ。くれぐれも、夜通し仕事をしようなどと考えるなよ?」
最後に釘をさすと、彼は小さく笑う声を最後に通話を終えた。
『その時がきたらその時は…また改めてプロポーズさせてよ。』
…しかし本当に、あの男は。こんなことを私に言って、明日からいったいどんな顔をして会いに来いというのだ、まったく。
本当に、仕方のない男だ。
ふぅ……と息をつくと、ファインが僅かに空いた扉からこちらをうかがっていることに気づく。会話は全て筒抜けだったようで、彼女はどこか嬉しそうな表情を浮かべている。
「…結果オーライ、かな?」
「あぁ……どうやらそうらしいな。」
ファインに礼を言いながらベッドに腰を下ろす。ただ、と前置きをして口を開く。
「今回はいいが、あまりこういう与太話をむやみやたらと広げるのはよせ。お前も王族なのだから、不確定な情報がどれほど影響を及ぼすかはわかるはずだろう。」
「うん。でも、グルーヴさんのこんな姿が見られるなんて思わなかったな…」
くすりと笑ってそう言われると、何も言い返せない。ファインに弱みを見せてしまったことが、少しだけ悔しかった。
「…反省の色は無し、か。そういえば時折お前が夜中に密かにカップラーメンを食べていたという話を聞いたな…?」
「グルーヴさんも食べる?深夜の背徳感を一緒に味わおうよ!」
「そういう意味の言葉ではない!というかアスリートがそんな不健康な事をするな!」
仕返しにそう呟いてみるが、ファインは動じることなく平然と答える。……結局いつものように叱りつける羽目になってしまったが、不思議と悪い気分ではなかった。 - 43自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:55:32
「…ごめんなさい、グルーヴさん。色々と大変なことにしちゃって。」
「そう頻りに謝るな。申し訳ないと思う気持ちがあれば、それで十分だ。」
改めて今回のことについて謝罪をしようとする彼女に、私は問題はないと告げる。そもそも今回の件に関しては完全に私の自業自得である。謝られる筋合いもないのだが、彼女としては気が済まないようだ。…まぁ、その辺りの律儀さも含めて好ましく思えるのだから、私としてもあまり強く咎めることはできないが。
「これじゃあ、結婚式の招待状はもらえそうにないかなぁ…」
「待て。気が早すぎるぞ。それ以前に、その頃にはもうお前はアイルランドの第二王女だろう。」
「大丈夫だよ!出席はできなくても、祝電は送れるから!ご祝儀と一緒にアイルランド政府名義で送るね!」
「大騒ぎどころの話じゃ済まんぞ!せめてお前個人から送ってくれ!」
「あっ!グルーヴさんがもう結婚する気になってる!」
「…はっ!」
しまった。はめられた。今のは完全に失言であった。こんな風に私を弄ぶことができるのは世界広しと言えどそう多くはいないであろう。先程までのしおらしさは何だったのかと言いたくなるような変貌ぶりに、私は大きくため息をついた。……だが、まぁ良い。
ファインが気にしていないのならもう、私がそれ以上言うことはないだろう。元気よく笑う彼女に、私はただ苦笑するばかりだった。 - 44自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:56:13
以上、「プロポーズを期待していたのに何も起こらなかったエアグルーヴ概念でした」
- 45二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 22:58:04
ブラボー!おぉ…ブラボー
- 46自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 22:58:51
毎回毎回こんな長くなってたら見てくれてる皆疲れたりしない?大丈夫?
- 47二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:00:14
面白かったー
これだけ面白かったら疲れないよ - 48二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:02:49
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- 49二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:03:08
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- 50二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:03:34
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- 51二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:03:53
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- 52二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:04:19
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- 53自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 23:04:31
やばいかもしれない
管理はするからノータッチでお願い - 54二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:05:10
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- 55二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:05:23
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- 56二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:05:41
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- 57二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:05:53
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- 58二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:06:36
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- 59二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:07:17
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- 60二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:07:41
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- 61二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:08:13
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- 62二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:08:37
とりあえず問い合わせしたぞ
管理人ちゃん起きてるかね - 63二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:08:37
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- 64二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:09:30
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- 65二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:13:54
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- 66二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:14:29
こりゃどうしたんだ?
まあ書き手は気にせず - 67自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 23:14:29
あれひょっとしてもうお問い合わせの効果出てる?
早くない? - 68二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:14:37
あにまんやっぱ荒らしに弱いな
- 69二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:15:00
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- 70二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:16:23
- 71二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:16:33
百合アンチが他スレで暴れてるけど同一人物か?
- 72二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:18:09
- 73自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 23:19:13
こりゃあファンアートどころじゃないかもしれないなぁ
万一まずいことになったらスレ消しも視野に入れないと - 74二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:20:01
あまりにもカス
- 75二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:21:28
嫌いなネタの為に他のスレも荒らすとかキチかよ
- 76二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:21:57
フラッシュのもグルーヴさんのもええやん
同じスレにしないで別に立ててもよかったんとちゃう? - 77二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:22:44
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- 78自分のSSにFAを描いて貰うこ22/09/11(日) 23:23:42
あっ確かに
- 79二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:26:49
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- 80二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:27:55
んー…一応トリップとか付けといた方がいいんでない?
スレ建てしたスクショとかあるとなおいいかも
前に作ったスレとかレスとかのミュート機能を改良したい……|あにまん掲示板前にそんなの作ったけどもうちょっと改良したい……というわけで機能改造の時間だおらーbbs.animanch.comあと削除されたレスの安価はこれで消せるから気になるなら使うがよろし
- 81二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:30:02
百合アンチかは知らんが、トレウマってだけで発狂するやつが最近暴れてるから、SS書くならトリップは使った方がいい
スレ主の自演認定されるぞ - 82二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:33:35
このレスは削除されています
- 83◆dmhOfkvJIk22/09/11(日) 23:34:01
こうかな?
- 84二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:34:19
だめだこりゃ
- 85二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:34:53
このレスは削除されています
- 86二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:35:24
このレスは削除されています
- 87二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:35:37
一周まわってたわけの方がまともな事言ってて笑える
タイトルセンス以外は良いね どちらもハッピーエンドなのもグッド - 88二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:36:23
- 89二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:36:52
- 90◆dmhOfkvJIk22/09/11(日) 23:37:46
- 91二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:38:51
- 92◆dmhOfkvJIk22/09/11(日) 23:40:53
- 93二次元好きの匿名さん22/09/11(日) 23:44:41
- 94◆dmhOfkvJIk22/09/11(日) 23:47:21
- 95二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 00:02:17
このレスは削除されています
- 96二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 00:04:13
このレスは削除されています
- 97二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 00:15:28
寝る前に良いssが見れたよ
ありがとう - 98◆dmhOfkvJIk22/09/12(月) 09:11:37
待ち
- 99二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 09:46:08
エアグルーヴが内心で掛かりまくってるのが面白かった
- 100二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 20:27:24
描かれるのが先か
落ちるのが先か - 101二次元好きの匿名さん22/09/12(月) 23:59:10
- 102◆dmhOfkvJIk22/09/13(火) 00:00:31