キラキラネイルのウマ娘【SS】

  • 1二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 23:34:02

    モブ視点です
    多少書き溜めていますが、まだ書き終えていません
    試験的に随時更新する形をとります

    それでもよろしければどうぞ

  • 2二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 23:34:24

    投げ捨てられたカバンから参考書が地面にまき散らされる。
    「ネクラちゃ~ん?カバン軽くしてあげたんだからお礼くらい言えよな~?」
    下卑た男女の声とともに肩を押され、地面に倒れこむ。
    「ちょっとお~、大げさじゃねえ?まるでアタシらがイジメてるみたいじゃんかあ」
    「そうそう!わざわざ構ってやってんだぜ~?」
    もう悔しいとも思えなくなった。
    じっと黙ってさえいれば飽きてどこかへ行くのだから、それまで我慢すれば……。
    「こらあー!」
    抜けるような青空を大声が貫いた

  • 3二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 23:34:36

    ざっ、と誰かの足が急ブレーキをかけた音がした。
    うつむいていた顔を上げると、目の前に青や黄の派手なネイルが見えた。
    さらに目線を上げる。
    女の子が私の前で腰に手を当てて立ちはだかっていた。
    「寄ってたかってイジメるなんてかわいそうじゃんか!やめなよ!」
    彼らは一瞬気圧されたが、すぐにニタニタと笑い出した。
    「ふぅ~ん?いいのぉ~?ウマ娘がアタシらに手なんか出しちゃったら大問題だよぉ?」
    そこで初めて目の前の女の子がウマ娘であることに気がついた。
    確かに白い被り物をした耳がぎゅっと後ろを向いている。
    すると彼女が顔だけこちらを振り向き。
    にっと私を安心させるように笑った。
    なぜか心臓が跳ねる。
    彼女は彼らに向き直ると肩をすくめた。
    「たしかにあたしが手を出しちゃったら色々まずいよね。あんたらを無事ですます自信ないし」
    ニタニタ笑いの集団が距離を詰めてくる。
    さらに後ろから別の集団が現れた。
    思わず彼女の手に縋りつく。
    握り返してくれた手はとても温かだった。
    後ろのほうの集団から声が上がる。
    「まあ、俺たちはウマ娘ではないがな」
    その瞬間、前のほうの集団からニタニタ笑いが消える。
    よく見ると後ろの集団の中には私の学校の先生もいた。
    後で聞いたところによると、あたりを見回っていた先生方を彼女が走り回って集めてきたそうだ。
    彼女が今度は身体ごとこちらに向ける。
    そして繋ぎっぱなしだった手を引いて立たせてくれた。
    「大丈夫?」
    「は、はい……え、えっと、お名前は……?」
    おずおずと尋ねる私とは対照的な明るい声で彼女は答えた。
    「あたし?トーセンジョーダンだよ!」

  • 4二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 23:35:40

    あの日以来私はジョーダンさんとたびたび会うようになった。
    同い年なんだし呼び捨てでいいって、なんてことも言われたが丁重にお断りした。
    この日も公園のベンチでジョーダンさんと話していると。
    「ねえ、なんでいつもマスクしてんの?」
    突然ジョーダンさんが顔を覗き込んできた。
    「いやまあマスク取ったら性格が変わる~、とかなら無理して取らなくていいけどさ。ていうかあたしの後輩がそういうやつでさ」
    私の返答を待たずに喋りまくる。
    なんとか間隙をついて話す。
    「べ、別に大した理由ではないんですけど……私、かわいくないので……」
    そう答えるとジョーダンさんがマスクに手をかけた。
    というか顔が近い……。
    「んなわけないって。それにマスクつけっぱなしだと肌荒れの原因にもなるんだから」
    そっとマスクを外される。
    「ん!全然かわいいじゃん!つーか美人系?これでかわいくないとかヅカでも通ってる感じ?」
    「い、いえ、普通の高等学校ですけど……」
    あわあわしているとジョーダンさんが自分のカバンを探り始めた。
    「このあとガッコとか塾に行く用事ある?」
    「と、特にないですけど……」
    おっけーおっけー、と上機嫌に話しながらいくつかの化粧品を取り出す。
    「ちょーっと、じっとしててね~」
    思わず目をつぶり、ジョーダンさんに身体を預ける。
    唇や頬になにかをされているのはわかるが、そのなにかがわからない!

  • 5二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 23:35:56

    しばらくじっとしていると、ジョーダンさんから目を開けていいよと声をかけられた。
    目を開けると、嬉しそうなジョーダンさんがいた。
    あ、やっぱりかわいい。
    見惚れていると手鏡を渡される。
    鏡を覗き込むとそこには。
    「……これ、私ですか?」
    「そりゃそうっしょ」
    自分でも見たことのない、明るい女の子がいた。
    「ネイルはもちろんだけど、メイクにも多少は自信あるからね~。あ、シチーには負けるかも……」
    信じられなくて自分の頬に触れる。
    ……現実だ。
    どうしても頬が緩んでしまう。
    「うん、それそれ!」
    「えっ?なんのことですか?」
    「だからその笑顔!女の子ってのは笑顔が一番のメイクなんだから!ほら笑って!」
    あの日と同じく、にっと笑みを浮かべるジョーダンさん。
    つられるように私からも笑みがこぼれた。

  • 6二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 23:36:27

    とりあえずここまでです
    続きは少々お待ちください

  • 7二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 23:39:18

    健全なジョーダンSSいいぞ〜
    こういうのを待ってた

  • 8二次元好きの匿名さん21/10/15(金) 23:56:54

    また別の日、先に着いてしまったのでぱらぱらと単語帳をめくっていると。
    「うへぇ……トレセン以外の学校だとこんなのもやるの?」
    気がつくと後ろからジョーダンさんが覗き込んでいた。
    「えっと、今やっているのは学校指定のものではないので……」
    「自分で買ってやってんの!?すごっ!」
    目を真ん丸にするジョーダンさん。
    その純真な目つきから目をそらしてしまう。
    「……すごくなんてないです。私はただ当てもなく勉強してるだけですから」
    心配そうな顔になってしまったジョーダンさんをごまかすように話を変える。
    「そういえばジョーダンさんって将来の夢とかあるんですか?」
    「ん?あたしはねえ……レースで活躍することと自前のネイルサロンを開くこと!」
    正直、かなり驚いた。
    「レース関係だけじゃないんですか?」
    「んー、もちろん走ることも好きだけどさ。やっぱりネイルをしてあげたいんだよね」
    ジョーダンさんが手を宙にかざす。
    「手ってさ、自分の身体の中で一番直接見ることが多い部分でしょ?だから手がきれいだとそれだけで幸せってことをみんなに知らせてあげたいんだ」
    ジョーダンさんの横顔はネイルよりキラキラして見えた。
    「それと同じでさ、あたしが走る姿を見て元気になったり力をもらえる人がいるんなら、あたしはレースを精一杯走り切りたい」
    今のあたしの夢はその二つかな、とジョーダンさんは話を締めくくった。
    「すごい、です」
    「あはは、そんなことないと思うけどね。そうだ!」
    ジョーダンさんが私の手を取る。
    「今度のレース、見に来てよ!」
    「へ!?」
    繋がれた手からジョーダンさんの熱が伝わってきた。

  • 9二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 00:27:18

    初めて訪れたレース場はすごい熱気に包まれていた。
    きょろきょろとあたりを見回しているとちょうどパドック入りが始まったところだった。
    ひときわ大きな歓声が上がる。
    ジョーダンさんだろうかと人ごみの中一生懸命背伸びをする。
    観客に手を振っていたのは別の人だった。
    周りの反応からして一番人気らしい。
    あ、ジョーダンさんの名前が呼ばれた。
    拍手で迎えられたが、さっきのものよりかなり小さかった。
    私はそのことにどうしても我慢ができなかった。
    肺に目いっぱい空気を送り込む。
    「ジョーダンさーん!!!」
    私に気がついたのかジョーダンさんが顔を向ける。
    びっくりする周りに構わず声を張り上げる。
    「がんばれえー!!!」
    語彙力もなにもない、稚拙な応援。
    それでもジョーダンさんは。
    いつものように、にっと笑って応えてくれた。

  • 10二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 00:44:38

    レースが始まった。
    素人の私はジョーダンさんがいい位置なのかどうかもわからなくて。
    ただ祈るように見つめることしかできなかった。
    そして最後の直線。
    外側からジョーダンさんが先頭集団に追いすがる。
    抜けた!
    いや、内側から黒い影のようなウマ娘が離されまいと食い下がってきた。
    どちらも譲らない。
    そしてゴール前数メートル。
    ジョーダンさんが最後の力を振り絞るように前に出て。
    ゴール板を駆け抜けた。
    勝った!
    ジョーダンさんが勝ったんだ!
    ぴょんぴょんと小躍りしていると、周りが掲示板を指さしたり携帯で写真を撮ったりしている。
    掲示板にはタイムらしい数字の上に赤字で“レコード”と表示されていた。
    レコードってことは。
    ジョーダンさんが今までの誰よりも早くこのレースを駆け抜けたってことで。
    心臓がばくばくとうるさく鳴っている。
    ふらふらになりながらジョーダンさんが私たちの目の前に歩いてきた。
    そして。
    キラキラしたネイルと一緒に、いつもの笑顔を見せてくれた。
    あっ。
    その瞬間、私はジョーダンさんのとりこになった。

  • 11二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 01:03:34

    数年後、とあるファンレターにて


    ジョーダンさんへ。
    受験やら引っ越しやらで連絡が遅くなってしまい申し訳ありません。
    ドリームリーグトロフィーでのご活躍のほど、大変喜ばしく感じております。
    私は今、大学の経済学部に通っています。
    朝早いのがちょっとつらいですけど、なんとか頑張っています。
    それで、もしジョーダンさんがよろしければなんですが。
    私が卒業したら、ジョーダンさんのネイルサロンの夢のお手伝いをさせていただけませんか。
    私はあなたの走る姿、そして夢を話す姿を見て、勇気をもらいました。
    だから今度は私がお返しをしたいんです。
    私が卒業した後も走るというのならずっとあなたをお待ちします。
    あなたの夢の支えになりたいんです。
    勝手なお願いであることは重々承知しています。
    でも、どうか。
    あなたの夢を叶えさせてください。
    私に夢を与えてくれた他ならぬあなたの夢を。

  • 12二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 01:06:13
  • 13二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 01:10:31

    光のジョーダン書きか……
    ありがとう……

  • 14二次元好きの匿名さん21/10/16(土) 01:13:09

    ええやん!

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