- 1二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 21:13:52
- 2二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 21:16:51
情報量が多いな…
- 3二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 21:23:10
誰か説明してくれよ!
- 4二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 21:28:51
- 5二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 21:30:08
じゃ、もらっていきますねー
- 6二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 21:41:12
美琴さん...
- 7二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 21:52:20
これはシャニPがにちかに負い目があって、漬け込まれた感じ?
- 8二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 21:54:52
なんで業を繰り返すんだ…
- 9二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 21:55:51
パクったのかよ……!
- 10二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 22:00:52
娘もどうしてそうなった
- 11二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 23:19:28
「お母さん、またお父さんと喧嘩したのー?」
「……」
むすりとした顔でスプーンを口元に運ぶ母。
こういった表情を見るのは今月だけでも二度や三度ではない。
些細な衝突――というより、母が一方的に父へ当たっていることが殆どのように私には思える。
あえてそうして、自分が愛されているのかどうかを試す行為……もしかすればそれが母なりの愛情表現なのかもしれない。
ただ、私はそれに悩み苦しむ父の姿を見るのが少し辛かった。
「お父さん、『今日も0時くらいになる』ってチェイン来てたよー。あと、お母さんに『ごめん』だってー」
「……チェインで謝るくらいなら、さっさと帰ってきて直接言えばいいんじゃないですかねー」
母のスプーンに乗ったカレーがガブリと消える。
「私に言われても困るんだけどー……それに、お仕事だから仕方ないんじゃないー?」
さらにペースが早まり、どんどんとお皿のカレーが減っていく。
しかし、その隅では手付かずの彩りが寂しそうにしていた。
「嫌いなのー?」
「えっ……」
はっとしたように顔を上げる母に言葉を続ける。
「それ。赤いやつ」
「あ、ああー……!」
どこか安堵したかのように肩の力を抜く母。
「っ……別に、食べれるけどー」
そう言いながらもバツの悪そうに少し目を逸らすその姿は、まるで子供のよう。
「でも好きじゃないんだよねー?」
「そんなこと……」
否定される前にスプーンを持った手を伸ばし、母のお皿に乗ったそれを『すくう』。
「じゃ、もらってくねー。……んっ」
私はこれが好きだ。
素直になれない態度ばかり取る母なんかよりきっと。
遠慮なく噛むと、カリリと小気味の良い音と共に
汁気のある甘い味が口の中で広がるのだった。 - 12二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 23:40:29
にちかの愛し方、不器用過ぎない?
- 13二次元好きの匿名さん22/09/20(火) 23:46:21
略奪愛は一生疑心暗鬼に囚われるらしいからな…
- 14二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 00:34:45
あははっ! 「にちかは幸せになるんだ」とか偉そうなこと言ってたのに、自分だけ幸せになるんだー! すごーい!!
……違うって言うんなら、別れてください。あの人と
と、あの日の言葉を呪いにして迫るまっクろにちかは見たい
- 15二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 00:42:27
幸せになりたくて他人から奪ったのに、幸せになった結果生まれた娘にそれを奪われるのか
- 16二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 00:54:06
こんなひどい未来福音があるか
- 17二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 07:20:35
地獄のグルメ
- 18二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 08:16:53
- 19二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 12:31:50
そういう愛情表現しか出来ないって悲しすぎない?
- 20二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 12:45:28
略奪に成功して最初の頃は幸せに過ごしていたのに、だんだんと「この幸せを奪う者が出てくるんじゃないか」って不安感が募って病んじゃうんだよね
いつか自分が誰かにそうしたように - 21二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 12:48:43
『あの頃みたいに家族が揃えば幸せになれる』って妄信しつづけた結果、歪な過程で歪な形の家族を作っちゃうにちか可愛いね…
- 22二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 13:12:31
- 23二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 14:30:35
妻は夫に父性を見出し、娘は父に異性を見出している家庭か……
- 24二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 17:31:23
ルカ
- 25二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 19:34:31
にちかとシャニPの子供って地味に人たらしモンスターなのでは?
- 26二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 19:38:35
人たらしだけど、本命は父親というやばさ
- 27二次元好きの匿名さん22/09/21(水) 19:41:48
続きをどうか…
- 28二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 01:30:41
同僚と妹と姪がこんなドロドロ関係とか、はづきさんの胃がヤバい
- 29二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 02:40:39
「お父さんっ、どうー?」
「……えっ」
トン、と古びたトレーニングシューズが床を叩き終える。
最後の音でようやく意識が帰ってきたかのように、父は素っ頓狂な声をあげた。
「見てなかったのー……?」
「い、いや、見てたよ! ちゃんと……!」
口を尖らせる私に、慌てた様子で釈明をする父。
……見ていたことなんてわかっている。
私は父の目をずっと見ていたのだから。
「じゃあ、どうだったー?」
「その……急にどうしたんだ? ダンスを見て欲しいだなんて……」
その目が少し泳ぐ。そして返答を避けるようにして質問を投げかけてきた。
ここまでは想定の範疇だ。父のことは誰よりも私が知っている。
そして父もきっと、私がこれから何を言うのか……心の底では理解しているはずだ。
「んー……あのね」
少し勿体ぶってから、今の私ができる一番可愛い笑顔を作り上げた。
まばたきすらさせないくらい魅了して、次の一瞬へ決してNOと答えさせないために。
「私、アイドルになろうと思う」
そしてここから、全てを始めるために。 - 30二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 07:34:58
やはり血か
- 31二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 07:35:50
- 32二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 08:13:01
七草だろうとシャニPの苗字だろうと爆弾じゃねぇか!夏葉とか誰かは芸能界にまだいるだろうし。
- 33二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 08:19:45
才能があってもなくても、七草にちかの娘ってネームバリューが勝っていたとしても「それでいい。早く駆け上がれるのなら。最後にお父さんに見てもらえるのが『私』であれば、それで」って振り向かせる覚悟が据わってるくらいがいい
- 34二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 20:03:40
ほしゅ
- 35二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 21:01:34
ひょっとしてはづきさんから略奪なんてしてないよね?
もしそうなら社長の胃さえやられるぞ - 36二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 21:06:49
- 37二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 02:39:12
レッスン室の扉を開けようとして、手が止まる。
この部屋で、これまでプロデューサーとして何人の背中を見つめてきただろう。
しかし一度として、その後ろ姿が他の誰かと重なったことはない。
それはきっとこれからもだと、確かに自分はそう思っていたはずだった。
同じ『アイドル』という存在を目指していたとしても、背負うものは、歩む人生は、皆違うはずなのだから。
そう信じていた。
――『W.I.N.G.で優勝できたら続けてもいい』
――お母さんはアイドルになったとき、はづきお姉ちゃんからそう言われたんだよね?
――それなら私も優勝するから。……絶対に。
「……」
「……おっと、どうも283さんっ、お疲れ様です! お迎えですか?」
部屋を出てきたダンストレーナーの声に、慌てて頭を切り替える。
「お疲れ様です。すみません、それもあるのですが……先生と少しお話をと」
「お、そういうことでしたか。大事な娘さんですもん、気になりますよね」
わかりますよ、と言わんばかりに大きく二度頷かれる。
「はは……いえ、うちに所属している子はみんな平等に大事な子ですから」
「ああっ、それは確かに……ふふっ、そうですね。283さんはそういうところしっかりなさってますもん」
本当に……
今の自分は、本当にそう胸を張って言えるのだろうか。
全てを公平にして、正しい判断ができているのだろうか。
投げかけられる信頼の言葉が、今は少し痛い。
「恐縮です。えっと、それでなんですが……」
「……はい、あの子のことですね。正直言って――」 - 38二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 02:40:47
「――そうですか。……その、何と言いますか」
「いやあ、教えれば教えるほど伸びてくれて、本当に驚くばかりですよ。何でも吸うスポンジみたい、とでも言えばいいんですかねー……」
お世辞や遠慮の類ではない、心からの言葉。
客観的な評価を得てようやく安堵できた自分に、思わず苦笑しそうになる。
「……ええ、筋が良いのは私から見てもわかります。親馬鹿と言われるかもしれませんが」
親馬鹿。
あの日彼女のダンスを初めて見たとき、我に返ってからその言葉がまず浮かんだ。
見よう見まねの自己流……その分で差し引いたとしても明らかな、いわゆる天賦の才を自分の娘に見出してしまったのだから。
誰が踊っているのかすら、忘れさせるほどの才を。
「いやいや、親馬鹿なんてとんでもない! むしろ、ぜひたくさん褒めてあげてください。あの子にはそれだけの才能があるんですから!」
「ははっ……そうですね。わかりました」
それではっ、とトレーナーが去っていく。
その姿を見送ってから改めてレッスン室のドアに手をかけ、一度大きく息をした。
「……たくさん褒めてあげて、か」
――おおー! うん、いい感じだ!
いつかの言葉が頭の中で反響する。
重なるはずはないと信じているのなら、どうして俺は……手放しに褒めてあげられなかったのだろうか。 - 39二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 09:49:03
ここのシャニP、胃痛案件ばっかりだな…
- 40二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 18:43:05
「先生、凄く褒めてくれてたよ」
ハンドルを握りながらそう明るく話す父。
窓を流れる夜景の光が、ゆらゆらと線を描く。
「そうなんだねー」
こうして父の運転する車に乗るのはいつぶりだろうか。
優しく揺れる車内は、まるでゆりかごのようだった。
「明日もお迎え、来てくれるー?」
レッスン中降っていた雨は既に止んでいた。
今朝見た天気予報によると、明日は晴れるらしい。
「え……ああ、もちろん」
父にとってきっとこんなことは我儘じゃない。
ずっとそうして毎日を過ごしてきたのだから。
「あははっ、やったー」
それでも思いがけない役得に心が躍る。
「……その、ごめんな」
対向車線を走る車が水たまりを踏んだ。
雨が雨に戻って、わずかに窓を濡らす。
「え?」
並び立つオフィスビルのひとつが明かりを消した。
「仕事ばっかりでさ……寂しい思いをさせてたんじゃないかって」
ガタン。
張り付いていた水滴が流れ落ちる。
夜が、泣いていた。
「……ううん、気にしてないよー」
少しだけ頭を傾けてみると、建物の代わりに空が広がった。
作り物ではない月や星の光が目の中へ溢れるほどに入ってくる。
「お父さんは『敏腕プロデューサー』なんだから」
父を知るものはみんな口を揃えてそう言う。
何の曇りもない、私にとっての誇りだった。 - 41二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 19:01:06
娘は無邪気なのがまた
- 42二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 01:56:58
保守
- 43二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 02:12:18
なんだこの地獄みたいなスレは…
- 44二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 05:27:25
早朝からやべースレを見つけてしまった......
期待 - 45二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 07:37:10
Pとにちかの娘なんだよな…?それとも前妻とPの娘…?
- 46二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 09:34:04
スレ主的にはどちらの設定?
- 47二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 09:43:10
Pにちの娘の方が邪悪で俺得
- 48二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 20:40:00
保守保守
- 49二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 07:15:58
ほし
- 50二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 10:47:40
「……にちか、話があるんだ」
急ぎで入った資料の作成をようやく終え、ソファの端で座っている後ろ姿へ声をかける。
「……今から洗い物するつもりだったんですけど」
少し首を伸ばしてみると、確かに彼女の袖がまくられていることに気付く。
だが、沈み込んだその腰はどこか重そうな様子だった。
「俺がやっとくよ、洗い物。その後で話そう」
踵を返してキッチンへ向かおうとすると、背後でソファの軋む音が鳴る。
傍を緑の髪が追い抜いていった。
「……無理しなくていいんだぞ?」
シンク下のキッチンマットに、にちかの足が乗る。
「主婦は家事が仕事なので、めちゃめちゃ余計なお世話ですねー……」
重怠く返事をされる。その口振りはどこか、『自分の役割を奪われたくない』という不安を含んでいるようにも思えた。
「……じゃあ、洗った食器拭いていくな。そのくらいならいいだろ?」
返事を聞く前に隣へ立ち、吊られた布巾を手に取る。
「……」
彼女の細い指が、諦めたように蛇口のレバーを引き上げた。
「……話ってなんですか」
手際よく水洗いをこなしながら、にちかが口を開いた。
水の流れる音にかき消されてしまいそうな、小さな声。
「えっ、ああ……うん。あの子のことなんだけど」
「……」
水音が止まった。
白い泡を纏ったスポンジが皿の上で舞う。
「研修期間を予定より短くして、早めにデビューさせようかと考えてる。今日先生から話を聞いて、そう判断した」
「それって、社長と相談する内容じゃないんですかねー」
二枚、三枚と泡立った食器が積み重なっていく。
「もちろん社長とも話すよ。けど、一度デビューしてしまえば簡単には辞められない。だから、改めてにちかの気持ちを聞いておきたいんだ」
「……許可なんて必要無いって、あの子の前でも言ったと思いますけど」
再び、水が流れ始める。 - 51二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 10:48:43
「……うん、わかった」
賛成も反対もしないのは、過去に苦しんだ彼女なりの思いやりなのだと……そう信じたかった。
「よかったじゃないですか。才能あって」
針のように冷たい雫が、布巾を持ったままの手に飛んでくる。
一粒だけではない。乾いていたはずの布巾が湿り気を帯びていく。
「……え?」
視線を戻すと……動きを止めたにちかの手首に、蛇口からの水流が強く叩きつけられていた。
抑えを失い始めた流れが、再び蛇口に戻ることはない。ただただ、溢れる。
「デビュー早めるってことは、もうそれだけ出来てたってことですよね。あははっ、誰かさんとは大違いだなー」
「にち――――」
にちかの体温を奪い温くなった液体が、指先を伝ってボタリボタリと排水口へ流れていく。
まるでそれは――……
「それにあの子、その誰かさんよりお姉ちゃんの言葉の方が大事みたいだし。っ……本当は私なんかじゃなくてお姉ちゃんの――――」
――『W.I.N.G.で優勝できたら続けてもいい』
――それなら私も優勝するから。……絶対に。
「っ、にちか!!」
自分でも驚くほどに荒ぶった声だった――――絶対にそれ以上の言葉を出させてはいけないと。
……その瞬間、後ろで扉の開く音がした。
「お母さんー。お風呂上がったよー?」
「――――っ」
壊れた笛のような、息をのむ音が響く。
それは自分のものか、にちかのものか……あるいは両方だったのだろう。
「……お、おお、そうか! にちか、あとは俺がやっておくから」
「――……」
タオルで手を酷く擦るように拭いて足早に去っていくにちかに、誰かへ目を向けるような余裕は見えなかった。 - 52二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 11:10:56
にちか…
- 53二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 11:13:00
娘ちゃんこんな大きくなるまでよく続いてたなこの夫婦……
- 54二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 12:13:37
逆に子供が出来たら別れられないだろうし
- 55二次元好きの匿名さん22/09/25(日) 21:45:26
にちにち
- 56二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 07:11:57
保守
- 57二次元好きの匿名さん22/09/26(月) 17:11:55
ほしゅしゅ
- 58二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 00:19:06
あげ
- 59二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 07:09:59
保守です
- 60二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 17:05:08
母親に似た柔らかな緑色の髪の毛とドライヤーの温風が、指の隙間を通り抜けていく。
「――♪」
リビングをステージにして奏でられる、ご機嫌なハミング。
この背中が小さかった頃から変わらない……自分がこうして髪を乾かしてやることへの、この子からの対価だった。
――対価。
この子はアイドルになることで、どんな対価を得たいのだろうか。
何度か訊ねてみても、はっきりとした答えはまだ貰えていない。
父親としてこれでいいのかと思う反面、どうあれ無条件に応援してやりたいという気持ちもあった。
……それで本当に、幸せになれるのなら。
「お母さんと、何を話してたのー?」
思わずドライヤーをかける手が一瞬止まってしまう。
「……うーん、そうだなあ」
別の髪を掬ってから風で揺らしてやると、再び心地良さそうに目を閉じてくれた。
ただの誤魔化しに、あえて騙されてくれるかのように。
「研修期間を短くして、デビューを早めようって話とかかな」
「えっ、ほんとー?」
「ああ。本格的にどうするかは、また社長と話してから決めることにはなるけど……」
「そうなんだー……! でも嬉しいなー!」
髪を持たれていることも忘れた様子でふらふらと左右に身体を揺らす。
ドライヤーの狙いは定め辛いが、それを咎める気は起きない。
「ははっ、そうか……! 喜んでもらえるなら安心して準備を進められるよ」
アイドルという道を選ぶのなら、出来るだけそのことに喜びを感じて欲しい。
父として、プロデューサーとしての想いだった。
「あ、そうだ……! ひとつだけワガママがあるんだけど、いいー……?」
何でもない日に欲しい物をねだるような、少し遠慮の混じった声。
「おう、いいぞ。なんでも言ってくれ」
その声を聞き逃さないよう、ドライヤーのスイッチを切る。
今この瞬間はどんな我儘でも……聞き入れるつもりでいた。
「やった! じゃあ――――」 - 61二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 19:44:27
早朝の社長室。
染めきれていない白髪が、ブラインドからわずかに漏れる光で鈍く輝いていた。
「『七草』の名を――……」
重々しいデスクの向こう側に立つ背中が、ようやく口を開く。
「……背負わせると言うのか。齢十四の子に」
肺の空気を吐きつくすようなその声は、まるで溜め息にも聞こえた。
「……正直俺としては反対です。ただ、本人たっての希望でして……どうすればいいのか」
母の旧姓でデビューをしたい――――それがあの子の我儘だった。
無論名前がどうであれ、あの子がにちかの娘であることがすぐに知れ渡ることは間違いない。
しかしあえてその名前を使うことは、事務所としてあの子を『七草にちかの娘』として売り出すことを意味している。
……それはきっと、最初から彼女自身の可能性を閉じ込めてしまうことになる。
伝説として消えたアイドル……『七草にちか』の名で。
「……よく似ているな。彼女は」
「……」
それは、誰に投げかけた言葉だろうか。
「……暗いな」
ブラインドの紐が引かれ、朝日が煌々と差し込んでくる。
……閉じていたはずの目が無理矢理に開かれたように。
「デビューの件も含め、思う通りにやれ。……だが、お前の辞表が私のデスクの中にあることを忘れるな」
「……はい。失礼します」
逆光により影を落とす背中に一礼して部屋を出る。
久しく聞いていなかったライターの音が――扉の向こうで響いた気がした。 - 62二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 19:47:14
シャニP…
- 63二次元好きの匿名さん22/09/27(火) 20:38:09
何がしんどいって娘が母親と違って幸せになるために突き進んでいることよ
- 64二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 00:34:33
ああ愉悦
- 65二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 07:25:56
保守
- 66二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 17:22:12
ほしゅ
- 67二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 20:51:57
楽しみ
- 68二次元好きの匿名さん22/09/28(水) 21:27:53
結婚しても素直に甘えられないにちかと、素直に甘えられる娘の差よ
- 69二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 00:30:04
業が深くて良き良き
- 70二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 03:40:56
「七草ちゃん! 次はもっと元気な感じで笑ってみようかー!」
「あっ、はいー!」
カメラレンズがその姿を捉え、フラッシュが焚かれる。
焼き付くような強い光は、こちらに向かって「これで良かったのか」と問うているようでもあった。
「瓜二つですねえ……本当に」
自分と共にその様子を眺めていたベテランのスタッフが、年季の入った目を細めて呟く。
「……ええ」
こうしてあの子が仕事場に立っているのを見ると、声も、笑顔も、背丈も、立ち方すらも、にちかによく似ていると改めて思う。
まるで十数年前にタイムスリップをしたかのような、そんな奇妙な感覚を覚えていた。
「いやあ、それにしても嬉しいですよ。あの夢の続きをまた見られるなんて」
「……」
紆余曲折を乗り越えたにちかの活躍。
それは華々しいものと言うよりほかなかった。
日本中に熱狂を巻き起こし、たった二年余りの活動で世界にまでその渦が広がろうとする勢いに――人々は無限の可能性を夢見ていた。
だが……
「彼女、勿体なかったからなあ……」
黄金期に差し掛かった瞬間での電撃引退。
それがアイドル、七草にちかの結末だった。 - 71二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 03:59:04
「……申し訳ありません」
思わず頭を垂れる。
多くの人々の夢と、彼女の可能性を踏みにじってしまった、深く重い……自分の罪を悔いて。
「あっ……! ああすみません! そういうつもりは……。どうか」
手で促されてこちらが顔を上げると、彼は同情を隠せない様子で頷いた。
「困りますよねえ……週刊誌ってのは好き勝手書くから」
その悪意の無い言葉とは対照的な、悪辣な見出しが脳裏に浮かぶ。
言った彼もそれは同じだったようで、歯痒そうに頭を掻いていた。
「でも、283さんの人柄と仕事ぶりを見てたらわかりますよ。彼女もアイドルを辞めるに足る理由を見つけたんでしょう」
軽く息を吸ってから力強い口振りでそう言った後、その皺の入った顔は照れ臭そうに表情を変えた。
「なんて、赤の他人が偉そうな口ですよね……! ははは……!」
「いえ……!」
言葉を探そうとすると、ただ穏やかに微笑まれる。
それはまるで、子を見る父親のような面持ちだった。
「すみませーん!」
遠くにいる若いスタッフがこちらの方へ手を挙げている。
隣にいる彼を呼んでいるようだ。
「あ、はいはいー! ……すみません、それではこれで」
「……よろしくお願いします」
こちらに軽く会釈をし、ゆっくりと遠ざかっていく背中。
深く一礼をしてそれを見送る。
何年この場所に立っていたとしても、結局は他の大人達の背に負われてばかりいるのだと……そう痛感した。 - 72二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 10:28:36
続きが来てるやん、ありがとう
- 73二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 18:51:44
とてもいい
- 74二次元好きの匿名さん22/09/29(木) 23:57:13
保守なり
- 75二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 00:00:41
はづき(葉月)
にちか(日花)
ときたなら、ほしみ(星実)辺りの名前なんだろうか - 76二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 09:07:10
保守
- 77二次元好きの匿名さん22/09/30(金) 18:32:24
ほしゅ
- 78二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 00:29:35
続きが…続きが見たい……!
あわよくばPと娘のドロドロなラブも見たい… - 79二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 00:56:44
いいね
倒錯的で美しい - 80二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 06:56:05
楽しみだね
- 81二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 16:07:19
保守
- 82二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 17:00:58
この娘、七草にちかに憧れた主人公ポジが出てきても全く動揺せず
「へー、パクったんだお母さんのこと」って鼻で笑いながら母親以上の動きで完勝しそうっすね - 83二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 19:58:33
嬉しそうにタブレットを眺める我が子を、窓から差し込む夕日が照らしている。
その様子が微笑ましくてついキーを打つ手が止まってしまうのは、やはり親馬鹿なのではないかと思う。
音が止んだことに向こうも気付いたようで、パッとこちらに顔を向けた。
「見てみてお父さんっ! これすごく可愛く撮れてないー?」
わざわざデスクまで寄ってきて掲げたタブレットには、先日撮った彼女の宣材写真が映し出されている。
「おお、そうだな……! うん、可愛いぞ」
明るく楽しそうな笑顔を掛け値なしに褒めてやると、『やっぱり』と言わんばかりに声のトーンが高まる。
「やった! あとこれと、これもー!」
「ああ、良い出来栄えだな。初めての撮影とは思えないくらいだ」
みずみずしい輝きに満ちた写真が次々と流れていく。
画面の中に閉じ込められているのは、間違いなくアイドルの姿だった。
「撮ったのいっぱいあるけど、お父さん的にはどれが一番かなー?」
「一番か……そうだなあ」
写真を一覧表示にしてから画面に指を滑らせる。
「お、これなんて凄く良いんじゃないか?」
何十枚と並ぶ中でタップしたのは、予めチェックをしていた段階から目についていた一枚だった。
しかし―― - 84二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 19:59:09
「んんー……? ……うーん?」
先程の調子とは打って変わって首を傾げられてしまう。
「えっ……駄目、だったか?」
おかしな点でもあっただろうか、と改めてその写真を確認してみる。
だがやはりそんなところは一切見当たらない。
「……あははっ! んーん! そろそろ私、レッスン行ってくるねー!」
そんなこちらの様子を見て、何でもなかったかのように明るい調子に戻ってそう告げられた。
確かに丁度良い時間にはなっていた。だが……
「お、おう。気を付けていくんだぞー!」
はーい、と返事をしてそそくさと出ていく様子は、何らかの感情を隠しているようにも見えた。
「……えっと」
静かになった事務所の中で、置いてけぼりのタブレットが寂しそうに天井を見上げている。
「ジェネレーションギャップ、とかではないよな……?」
もう一度そこに映し出された写真を眺めてみる。
「……うん。やっぱりよく撮れてるよ」
微笑む娘の姿を傍らへ寄せて、再びキーボードの上に手を置いた。
今日の仕事は捗るだろうか。 - 85二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 20:37:52
「……」
レッスン室の大きな鏡で、笑顔の練習をする。
もっと可愛い写真を選んで欲しかった。
もっと完璧に笑った写真を選んで欲しかった。
あんなのじゃ、いつまで経っても私は父の娘のままだ。
このままだと気付いてもらえない。
このままだと恋してもらえない。
練習しないと。
もっと。 - 86二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 20:40:19
娘……
そういうところは母親似か - 87二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 22:58:11
きたわね
- 88二次元好きの匿名さん22/10/01(土) 23:20:47
血は残酷ですねえ……
- 89二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 01:30:07
おとこのひとと、おんなのひとが、ひとりずつ。
ひとりが、ひとりを、みようとしない。
ひとりが、ひとりを、みてるのに。
どうやったら、
わたしの、だいすきなひとを、しあわせにできる?
どうすればいいのか、わからない。
こえが、でない
ああ、これはゆめだ。
ちいさいころの
、
きおく
「ん……う……?」
「目、覚めたか? ……ごめん。起こしたくなかったんだけど、家着いちゃったからさ」
「ん……」
「えっと、自分で起きれるか?」
「ねるー……」
「はは……じゃ、背負うからこっち寄っかかってきてくれ」
「んー……」
「よいしょっ……おっ!? 重くなったな……!」
「ひどいー……」
「ああいや、ごめん……そうだな……! 大きくなったって……言おうとしたんだ……!」
「おとうさんー……」
「ん……? なんだ……?」
「すぅ……んぅ……」
だいすきだよ - 90二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 02:00:35
幸せになることから逃げ続けた女が奪うことを選んだ結果産まれた幸せに手が届かない女……
- 91二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 11:38:47
ほしゅ
- 92二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 11:40:13
嫁が重い、娘も重い
- 93二次元好きの匿名さん22/10/02(日) 21:47:25
保守
- 94二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 07:45:37
ほしゅー
- 95二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 17:51:32
保守ほしゅ
- 96二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 02:15:36
保守
- 97二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 12:22:45
保守ぜよ
- 98二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 23:05:19
保守
- 99二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 01:16:42
「……はぁ」
静かな事務所でひとり溜め息を吐く。
マグカップに入ったコーヒーは、とっくに熱を失っていた。
「『敏腕プロデューサー』が聞いて呆れるよ……」
あの子がアイドルになると言い始めてから――いや、この仕事を始めた頃から、ずっと悩んでばかりいる気がする。
自分の選択が合っていたことも、間違っていたこともあって……こうして悩むこと自体が過ちだったこともあって。
果たして今回はどうなのか……わかるのは全てが終わってからだ。
「お父さんっ、ただいまー」
扉が開き、明るい声と笑顔が入ってくる。
職場のデスクでこの子を迎えるのもすっかり慣れてきた。
「ああ……おかえり」
それだと言うのに、今日は自分でも驚くほどに沈んだ声で返事をしてしまう。
「……嫌なことでもあったのー?」
首を傾げて心配そうに問われる。
……担当アイドルにこんな顔をさせるようではプロデューサー失格だ。
今自分がやるべきこと――それは悩むことではない。
「そういうわけじゃないんだ……むしろおめでたい話だよ」
「うんー……?」
冷めたコーヒーを一気にあおって、声を紡ぎだす。
「――デビューライブが決まった。大きな……とても大きな、ステージだ」 - 100二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 02:50:00
このレスは削除されています
- 101二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 02:54:50
――はっきり言って、デビューライブとしては異常な規模のステージだ。
――プレッシャーやリスクも大きい分、W.I.N.G.出場へ一足飛びに近づけるまたとないチャンスでもある。
――だけどその代わりにひとつ……先方からの条件が提示されてる。
「1、2、3、4……」
レッスン終了後、父の迎えが来るまでステップを踏んで待つ。
そうしないといられなかった。
足がふわふわとしていて、落ち着かない。
「……5、6、7、8っ」
プレッシャーなんて感じてない。
リスクなんて最初から覚悟の上だ。
「……あははっ」
嬉しいんだ、これは。
母の名前を借りたお陰で、何もかもが上手くいく。
やっぱり私は間違ってなかった。
奪ってみせる。絶対に。
どんなことをしてでも。
――『七草にちかの衣装と同じものを着て踊ること』……それが呑めなければこの話は無かったことになる。 - 102二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 06:33:51
朝から重い…
- 103二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 12:56:46
当時のにちかの衣装を着て「胸の辺りがきつい」って言うんでしょ?(現実逃避
- 104二次元好きの匿名さん22/10/05(水) 18:44:37
にちか(推定Dカップ)よりもグラマラスな14歳は凶器なんよ
- 105二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 00:23:39
叔母からの遺伝かな
- 106二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 08:54:20
保守
- 107二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 16:50:29
ほしゅ
- 108二次元好きの匿名さん22/10/06(木) 21:08:33
期待
- 109二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 04:28:42
保守
- 110二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 12:24:14
保守
- 111二次元好きの匿名さん22/10/07(金) 21:38:33
ほしゅ
- 112二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 05:58:50
保守
- 113二次元好きの匿名さん22/10/08(土) 14:40:26
保守
- 114二次元好きの匿名さん22/10/09(日) 00:26:56
hosyu
- 115二次元好きの匿名さん22/10/09(日) 09:14:54
保守
- 116二次元好きの匿名さん22/10/09(日) 19:24:57
保守
- 117二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 06:36:41
保守ー
- 118二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 16:02:40
ほしゅ
- 119二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 22:54:32
保守
- 120二次元好きの匿名さん22/10/10(月) 23:04:12
湿度がやばい…
- 121二次元好きの匿名さん22/10/11(火) 10:13:22
ほしゅ
- 122二次元好きの匿名さん22/10/11(火) 19:49:39
世界の美しい遺産を映し出すドキュメンタリー番組。
テレビの画面から溢れる鮮やかな光が、静かに座る身体を照らしていた。
「……隣、いいかな」。
ソファの背もたれに手を置き、驚かせないよう小さく声をかける。
「いちいち許可とか要らなくないですかね……自分の家なんだし」
「……うん。ありがとう」
腰を沈ませると、その傾きで傍に置いてあったリモコンが転がってきた。
それをにちかの手がおもむろに拾う。
「……あの子のデビューライブが決まったんだ」
「……」
小さな吐息ひとつと引き換えに、テレビの音と光が消えた。
視線を落とすと、彼女の人差し指が赤いボタンに触れている。
「ああ……ごめんな、見てたのに」
「別に、見てないですけど……点けてただけなので」
そう答えながら、座り直すようにもぞりと身体を動かす。
話を続けろというサインのようだ。……今日は少し気分が落ち着いているらしい。
「それで……にちかが着ていたそのものではないけど、同じデザインの衣装でステージに立つことになってる。先方からの強い要望があった」
「やば……15年以上前のデザインですよね。めちゃめちゃ時代遅れ……」
自虐的な口調の奥には、心からの同情が多分に滲み出ていた。
ドレスではなく、灰をかぶらせたまま舞踏会へ向かわせる――そんな愚かな所業だと言わんばかりに。
「そんなことはないよ、今でも十二分に通用するさ。……それに七草って名前を使う以上は、そういう売り方が求められてる」
あの子が纏うのは決して灰などではない。ダイヤモンドの煌めきだ。
ただそこにあるだけで輝いてしまうような魔性の装飾を、自分はあの子に施そうとしている。
「……名前なんて、ほんとどうでもいいと思いますけど」
「きっと……どうでもよくないんだ。皆にとっては……あの子にとっては」
暗くなった液晶が、ぼんやりとした誰かのシルエットを反射している。
スポットライトの消えた舞台のように、名残惜しく。
「……これが正解なのかどうかはわからない。だけどどうあれ、にちかが積み重ねてきたものの上にあの子が立つんだ。だから――……」 - 123二次元好きの匿名さん22/10/11(火) 19:50:15
「だから――……えっと」
『見にきてやって欲しい』――たったそれだけの言葉が喉元で止まった。
……自らアイドルの全てから遠ざかったにちかにとって、それを求めるのはきっと酷なことだ。
そうさせてしまった張本人に、こんな願いを言える資格などあるだろうか。
「……」
これ以上、にちかに無理をさせたくはない。
親としての役割だって、自分ひとりが舞台袖から見てやればそれで済む。
追い詰めてしまうのが……怖い。
「……ちゃんと見に行きますよ。そんな気使わなくたって、別に」
ソファを立ちながら言ったそれは、強がるような口振りとは裏腹に……今にも消え入りそうな声だった。
「にちか……」
遠ざかる後ろ姿は既に手の届く距離にいない。
「それじゃ……チケットとかお願いしますね。おやすみなさい」
廊下への扉が静かに閉じられる。
ただ悲しそうに。
「……ごめん」
きっと今日だけじゃない。
俺は何かを、ずっと間違い続けている。 - 124二次元好きの匿名さん22/10/11(火) 19:56:57
冷たいベッドの中で、強くシーツを掴む。
ライブなんて行きたくない。
とっくの昔に捨てたはずの名前が、もう誰も着なくなったはずの衣装を着て、踊る。
そんなのは地獄だ。
何かの間違いであって欲しい。
もしもこれが夢なら、一秒でも早く目を覚ましたい。
……でも。
地獄が間違いなんかじゃない。
間違ったから地獄なんだ。
ここは一生覚めることのない現実だ。
――なんで……なんでこんな酷いこと……書けるんですか……?
――っ、わた……私が……アイドル、だったから……?
「……っ」
罪を償えと、過去が迫ってくる。
きっとこれは天罰だ。
『これでよかったんだ』と、思い込みそうになった自分がいたから。
だからあの子は、アイドルになったんだ。
だってあの子は
私が産んでしまった――呪いだから。 - 125二次元好きの匿名さん22/10/11(火) 19:57:44
唐突なスマホの振動が、突っ伏していた机を揺らす。
「ん~……」
うたたねから目を覚ましてロックを解除してみると、一件の通知が表示されていた。
「社長~……?」
要件だけが書かれた淡々としたメッセージ。
かつての自分の職場に所属するアイドルがひとり、デビューライブを行うとのことだった。
「あ~、あの子の……ふふっ、見に行かないとね~」
日付を確認し、眼鏡をかけてからスケジュール帳を開く。
「え~……五分五分かな~……」
多少無理をしてでも見に行きたい。
このライブは大切な子の、大切な晴れ舞台なのだ。
……なにより、自分には責任がある。
「七草――……」
見慣れた苗字と、見慣れた名前のちぐはぐな組み合わせ。
それは私が
あの子にかけてしまった――呪いだから。 - 126二次元好きの匿名さん22/10/11(火) 20:05:02
おんなのひとが、ひとりいる。
わたしと、おんなじかみのいろ。
おかあさんと、おんなじかみのいろ。
すごくやさしそうなのに、
すごくかなしい、めをしてるひと。
「だれ……?」
こえが、でた。
「……私は~、『お母さんのお姉ちゃん』だよ~」
あたたかいこえ。
やわらかくて、あまい、わたあめみたい。
ねえ、おしえて。
わたし、しあわせにしたいひとがいるの。
それは、あなたみたいなひと
あなたみたいに
、
ずっと
こころで
ないて
る
ひ と - 127二次元好きの匿名さん22/10/11(火) 20:32:55
続きありがとう
あれ、これってつまり… - 128二次元好きの匿名さん22/10/12(水) 04:00:07
ほしゅ
- 129二次元好きの匿名さん22/10/12(水) 13:37:26
保守
- 130二次元好きの匿名さん22/10/12(水) 19:46:40
にちかのベッドシーンきたな…
- 131二次元好きの匿名さん22/10/13(木) 00:34:43
嬉しくないベッドシーンなんだが
- 132二次元好きの匿名さん22/10/13(木) 10:12:59
保守
- 133二次元好きの匿名さん22/10/13(木) 20:37:28
保守
- 134二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 04:31:10
保守~
- 135二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 14:04:27
ほしゅ
- 136二次元好きの匿名さん22/10/14(金) 19:29:34
続きが楽しみっす
- 137二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 05:47:25
保守
- 138二次元好きの匿名さん22/10/15(土) 14:11:09
保守
- 139二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 00:04:25
保守
- 140二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 11:03:09
保守
- 141二次元好きの匿名さん22/10/16(日) 19:28:26
保守
- 142二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 00:59:46
あー
保守? - 143二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 10:54:02
ほしゅ
- 144二次元好きの匿名さん22/10/17(月) 18:32:31
保守
- 145二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 00:47:41
保守っす
- 146二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 09:09:19
保守
- 147二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 19:12:28
保守
- 148二次元好きの匿名さん22/10/18(火) 21:13:47
保守
- 149二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 07:00:54
ほしゅ
- 150二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 17:28:40
保守
- 151二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 03:50:11
保守
- 152二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 14:58:58
ほしゅ
- 153二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 00:39:17
保守
- 154二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 11:38:04
保守
- 155二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 20:50:04
保守保守
- 156二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 21:29:52
保守
- 157二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 07:27:35
保守
- 158二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 17:15:24
保守
- 159二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 22:47:44
保守
- 160二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 07:06:59
保守
- 161二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 16:58:27
保守
- 162二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 03:05:00
保守
- 163二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 13:15:18
保守
- 164二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 23:33:49
保守
- 165二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 05:39:27
保守
- 166二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 15:15:04
保守
- 167二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 00:52:14
ほしゅ
- 168二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 09:44:32
保守
- 169二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 19:37:09
保守
- 170二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 06:51:52
保守
- 171二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 14:14:09
保守
- 172二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 00:59:50
保守
- 173二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 11:59:26
保守
- 174二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 20:52:12
保守
- 175二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 07:30:19
保守
- 176二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 18:21:08
保守
- 177二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 03:17:55
保守
- 178二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 13:11:32
保守
- 179二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 00:05:43
保守
- 180二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 11:40:00
保守
- 181二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 21:44:04
保守
- 182二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 21:44:19
ほしゅ
- 183二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 21:44:44
保守
- 184二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:11:53
なんじゃこりゃ
- 185二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:12:08
いっそ埋めとくか
- 186二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:12:20
埋め
- 187二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:12:31
埋め
- 188二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:12:42
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- 189二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:12:55
埋める
- 190二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:13:15
埋めは埋めで埋まってくれ
- 191二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:39:02
このレスは削除されています
- 192二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:39:16
うめ
- 193二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:39:35
うめry
- 194二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:39:48
うめちか
- 195二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:39:59
さんちか
- 196二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:40:22
良SS
- 197二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:40:35
埋め
- 198二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:40:46
埋める
- 199二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:40:57
埋まって
- 200二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:41:16
またいつか