- 1二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 12:23:51
ウタ「はぁ…」
少女の名はウタ。かつてエレジアにてウタウタの能力で人類の7割をウタワールドに閉じ込めようとした者だ。戦いの末、紆余曲折を経て麦わらの一味の船に乗ることになった。その際、生き延びる際に予想だにしないことがあったのはウタ以外知らない。
__________
今、私の身体はすこぶる健康だ。ただのペットだと思っていたたぬき…チョッパーが船に乗った後の私の体調を診てくれたし、船のコック…サンジが健康を意識したメニューにしてくれたから。最初は不安が多かったけど、一味が気安く接してくれたおかげですぐに打ち解けられた。エレジアでずっと(ゴードン以外)独りだったから大勢で一緒にいるのは赤髪海賊団を思い出してすごく安心するし、楽しい。けど、不安が全部無くなったわけじゃない。 - 2二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 12:25:06
まつ
- 3二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 12:27:00
釜を煮詰めて君を待つ
- 4二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 12:32:42
〜〜〜〜
その夜、私は町にいた。見覚えがある。音楽の国、エレジアだ。みんな楽しそう。
その時、轟音が響く。音の先に目を向けると巨大な怪物、“魔王”がいた。“魔王”は、周囲にビームを放つ。瞬く間に町が、国が、壊されていく。逃げ惑う人々の悲鳴が聞こえる。私は身がすくんで動けない。人々は逃げながら、私を見ると叫ぶ。
「お前のせいだ!!」「あなたが歌ったから!!」「アンタは化け物だ!!!」
何も言えない。そうしてる間にも、“魔王”は暴れ、人は死に、私は独りになってしまった。燃える国を背に、“魔王”はそのうち私を見つけ、迫り来る。
ウタ「フゥ....フゥ....」
脚が震えて逃げられない。目の前まで来て顔を寄せ、“魔王”は笑顔で囁いた。
『お前のおかげだよ、ウタ』 - 5二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 12:37:11
〜〜〜〜
ウタ「ひっ……!!!」
良かった。また夢だった。時々私はこんな夢を見る。わかってる。悪いのは私じゃないって。エレジアを滅ぼしたのはトットムジカだって。ゴードンも、シャンクスも、船のみんなもそう言ってくれた。
だけど……怖い。ある日起きたらみんないなくなっちゃわないかって。独りにならないかって。置いていかれたりしないかって。あの日みたいに。この夢を見るたび、そう思って寝れなくなる。 - 6二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 12:40:46
🍲
- 7二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 12:41:47
情緒不安定になるウタちゃんほど美しい物はないでありんす…
- 8二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 13:02:24
ほし
- 9二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 13:05:11
ウタ「う〜ん…」
正直、誰かにこの気持ちを話したい。けど、同時に話したくないとも思う。だって、これ以上気を遣わせたくない。きっとみんななら受け入れてくれるのだろう。でも、ただでさえここまで助けて貰ってるんだ。このくらいは自分で折り合いをつけたい。
ウタ「こんな時は…」ドンドントットッ
そう。こういう時に良い曲があると、エレジアにいる時に本で知った。
ウタ「ドンッドットットッ、ドンドットットッ」
『あるリズム』を口ずさむ。眠れない日はこれを思い浮かべて気を紛らしている。もちろんナミたちを起こさないように部屋からは出ている。
????「『解放のドラム』。人々を笑わせ、苦しみから解放する曲ですね」
不意に声が聞こえ、少し驚いた。 - 10二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 13:19:27
ウタ「…起こしちゃった?ブルック」
ブルック「いえいえ。これから寝るところでした」
礼装を着たガイコツ…ブルックはサニー号の音楽家。なんと世界的アーティスト『ソウルキング』の正体だ。ウタワールドで会ってたはずなのに、なんでその時は気づかなかったんだろう。
ウタ「この曲知ってたの?」
今は愚痴を言いたいわけじゃないから、とりあえず話題を『解放のドラム』に持っていく。
ブルック「ええ。私も独りでいる時によく奏でました。きっとこの孤独から解放されると信じて」ドンドットットッ
ウタ「独りってどのくらい?」
ブルック「そうですねぇ。ざっと50年ほどでしょうか」
ウタ「っ!!!」 - 11二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 13:50:29
50年!突然信じがたい数字が飛び出て思わず目が丸くなる。
ウタ「辛かった?」
ブルック「ええ、もちろん。ルフィさんと会うまでずっと、霧の中で仲間の全滅が夢だったら良いのにって…毎日幻を見ては傷つきました」
50年…ずっと1人…。ゴードンがいてくれたのに12年間はすごく辛かった。その4倍の年月を正真正銘の孤独で過ごすなんて、私だったら耐えられただろうか。
ウタ「……なんか12年がすごく短い気がしてきた」
あんな大事件を、随分と小さな動機でやってしまった気がする。そんな惨めな思いが私を襲い、目が潤む。 - 12二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 17:16:13
ブルック「気を病むことはありません。どんな年月でも、孤独が耐えがたいほど辛いことに変わりはありませんよ。ましてや当時のあなたは幼い子どもでした。その苦悩も決して私に劣らないものだったことでしょう」
孤独だった日々を思い出すかのように、ブルックは遠くを見つめる。
ブルック「大事なのは過去の辛さよりも、今その辛さから救われたことだと私は思います。あの時は本当に、生きてて良かったと感じました」ドンドントットッ
ウタ「私もいつか、そんな風に心から思えるかな」
ブルック「過去の辛さは、そう簡単には拭えないことでしょう。ですが、あなたならそれが出来ると信じています。今もこうして生きているのですから」 - 13二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 17:34:46
マジでブルックはお前みたいないいやつだよ
- 14二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 17:40:31
ウタ「ありがとう。ブルック」
少しだけどすっきりした。誰かと一緒がやっぱり好きなんだな私。
ブルック「ところで、今しがた気になったことがあります」
ウタ「何?」
ブルック「あなたは、自分が死ぬことを計画に入れていました。ルフィさんの必死な姿を前にしても、覚悟は揺らぎませんでした。そんなあなたがなぜ、今こうして生きることを選んだのでしょう?」
ウタ「それは……」 - 15二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 17:56:09
おお!
- 16二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 18:09:28
思わず言い淀む。これは、なんて言えば良いのだろう。
ウタ「ええと…」
みんなが眠っている時、急にルフィが白く染まって起き上がった。そのルフィと言い合ううちにウタワールドのルフィに本音が漏れたことで私たちは本心をぶつけ合い、私が折れたのが生きてる理由だ。
ウタ「…白い人と言い合ってるうちにルフィに本音を聞かれちゃってさ。その後はルフィに言い負かされちゃった」アハハ
ウタウタの能力からは、自力では出られない。つまり、あの白いルフィは絶対にルフィじゃない。
ブルック「ヨホホホ。でしたら、その白い人にお逢い出来たら御礼を言わなければですね」
ウタ「そうだね」
白い人。何もわからないからこう言うしかない。みんなは白いルフィを現実で見てないから、言っても困惑するだけだろう。 - 17二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 18:24:32
ブルック「では、私はそろそろ眠りますね。ウタさんも早く寝た方がお肌に良いですよ。ガイコツの私にお肌なんてありませんが!ヨホホホ!」
ウタ「……」
“スカルジョーク”を言い放ち、ブルックは部屋に戻った。
そういえば、ルフィの中の白い人はどうして出てきたんだろう。部屋に戻った私は、ふと浮かんだこの疑問で不安を忘れ、いつのまにかぐっすり寝ていた。 - 18二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 19:03:48
翌日の昼間は、とにかくルフィに目を向けようとした。何か白い人と繋がるところは無いかと。でも、だんだんと楽しくなって結局いつも通りの時間を過ごすことになってしまった。
_________
さぁ、夜が来た。白い人を呼び出すために、あの時に近い状況を作ることにした。ウタワールドに閉じ込めている時に出てきたから、まずはルフィには悪いけど、心にウタワールドへ来てもらおう。
みんなに歌を聴いてもらい、眠ってもらう。ルフィ以外を部屋に戻したら後は現実で出てくるのを待つ…だけ…… - 19二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 19:10:04
〜〜〜〜
私は陸にいた。周りには、何もない。あるのは瓦礫だけ。見渡すと遠くに船があった。暗くてどんな船かはわからないけど…私は背筋が凍り、思わず岸辺まで走った。
その途中で、聞き覚えのあるセリフが耳元でよぎる。
「お前は騙された」「利用されていただけだ」「ヤツらは捨てたんだ」
恐怖で息が荒くなっても脚は止めず岸辺へ着いた。
ウタ「みんなァああああ!!!置いていかないでええええ!!!」
思いっきり叫ぶ。でも、船は止まらない。そのまま沖へ進み続ける。私は叫んだ。呼び続けた。船が見えなくなっても、叫ぶのをやめなかった。 - 20二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 19:14:11
悲しいくらいにトラウマ刻まれてる…
- 21二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 19:40:53
- 22二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 20:12:48
今日も眠れず、海を見つめる。やっぱり言った方が良いのかな。でも聞かれたくない。自分でなんとかしたい。答えの出ない自問自答を繰り返す。気持ちが悶々とするばかりだ。
ウタ「も〜〜〜どうしよ〜〜〜!!!」
ルフィ「どうした?」
ウタ「ひゃあッ!?」
びっくりした!急に声かけないでよ!
ルフィ「何かしたいのか?」
ウタ「あ〜大丈夫大丈夫!」
ルフィ「そっか!じゃあおれは寝るよ!」
いや、待った。しばらく船に乗ってわかったことがある。ルフィはこっちからアピールしないと何もしてくれない。態度で察して動いてくれるなんてことが全く無い。思えばエレジアで逢った時からそうだった。逆に言えば…
ウタ「ねぇ、ルフィ」
ルフィ「ん?」 - 23二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 21:04:57
ウタ「ちょっと…話聞いてくれる?」
ルフィ「ああ」
アピールすれば、応じてくれる。ルフィは私の側に来て、座った。
ウタ「ルフィは悪い夢を見た時どうするの?」
ルフィ「う〜〜ん。夢なんていつも見ねェし、見ても覚えてねェからわかんねェ」
ウタ「そう…」
羨ましい。こっちは忘れたくても忘れられないのに。
ルフィ「ウタは覚えてんのか?」
ウタ「うん…怖い何かが町を壊してたり、私が独りになっちゃう夢。最近はこんなのばっかり」
ルフィ「なんかゴードンのおっさんが似たようなこと言ってた気がするな」
ウタ「聞いてたの?」
ルフィ「ああ。あの時は最後まで聞かなかったけど」 - 24二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 21:42:04
ウタ「じゃあ、エレジアにいた時のこと話すね」
前に喋った時は、私もルフィもそれどころじゃなかった。今ならゆっくり話せる。
ルフィ「…わかった」
私はエレジアでの12年間を話した。私が歌って目覚めたトットムジカによってエレジアを滅ぼしたこと、私のためにと思ってシャンクスが私の…いやトットムジカの罪を被ったこと、その事実を知らなかった私がずっとシャンクスを憎んでいたこと、映像電伝虫を拾ってから配信活動をしたこと、少し前にエレジア滅亡の真実を知ったこと。
……自分で喋っておきながら、思ったより長くならなかったことに驚いた。あまりにも話すことが無かった。
ルフィ「…シャンクスのせいじゃないってわかってたなら、なんであんなことしたんだ?」 - 25二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 22:10:39
ウタ「そう思うよね」
それを知ったのは当日よりかなり前。計画をやめてただの能力を使ったライブにするのに充分な時間があった。眠気を抑える方法なんて他にもあるし、ちょっと頑張れば数時間ぐらいなら多分出来た。
ウタ「……もう止まれないって思ってた」
ルフィ「何で?」
ウタ「配信してからずっとさ、“海賊嫌い”っていうていでやってたの。だからそこを好いてるファンもいて、今更好きな海賊がいますなんて言ってショックを受けてほしくなかった…」 - 26二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 22:39:58
ルフィ「そんなにファンが大事だったのか?」
私は頷く。
ウタ「ずっと独りで希望の無かった私には、必要としてくれたのが、すごく嬉しかった」
初めて視聴者に感謝の言葉を貰った時の感動は、今でも覚えてる。まるで白黒の世界に色が戻ったような、舞踊りたい気分だった。
ウタ「だから、希望をくれたみんなの期待に応えたかった。私の歌で、喜んでほしかった」
ルフィ「お前は昔からそういう奴だよな」
そういえば、赤髪海賊団にいた時から歌を聴いてもらうのが大好きだったな。 - 27二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 23:35:37
ウタ「けど……だんだんみんなの辛い声も、配信から聞こえるようになってさ」
とりわけ多かったのは、海賊による被害。シャンクスのことで海賊に不信感のあった私は、その声に耳を傾けてしまった。
ウタ「海賊のこととか、市民を助けてくれない海軍とか、そんなことばっかり聞いてるうちに、私がみんなを救わなきゃ!ってなったの。私を救世主って呼ぶ人も出てきてたし、昔から『新時代』を夢見てたことはルフィも知ってるでしょ?」
ルフィ「……」 - 28二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 23:37:47
ウタ「すっかりその気になってる時に、シャンクスがトットムジカに立ち向かってる映像を見ちゃってさ。もうどうすればいいのかわからなかった」
涙が溜まったから落ちないように上を向く。
ウタ「私は何をしていたんだろうって。私を庇ってくれたシャンクスをずっと憎んでたなんて。シャンクスはずっと、私の知ってるシャンクスだった。逢いたくて逢いたくて、配信外でずっと泣いてた」
ルフィ「その時に、やめられなかったのか?シャンクスよりも、そっちの方が大事だったのか?」
ウタ「……出来なかった。ライブの開催が近づいてて、ファンのみんなはすごく盛り上がってた。『新時代』へ行けばずっとウタワールドの中だから、途中でやめれば期待を裏切るって思った。それに…」 - 29二次元好きの匿名さん22/09/22(木) 23:49:06
まずは涙を堪える。泣き虫だなんて思われたくない。
ウタ「…逢えると思ってなかった。シャンクスが悪くなくても、12年ずっと逢えてなかったのは本当だったし。シャンクスだけじゃないよ。ルフィとだって、もう逢えないと思ってた」
ルフィ「!」
ルフィが反応した。驚いたのかな。
ウタ「だったらもう、シャンクスたちは思い出だって割り切って今いてくれるファンのみんなを取ろうって」
何かを思い出したかのように、ルフィは空を見る。
ルフィ「……頼りが、いなかったんだな」 - 30二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 00:08:00
ウタ「そう。私には必要としてくれるファンしか」
ルフィ「ずっと独りだったんだな」
ウタ「…ルフィ?それは違うよ。みんなは私を頼ってくれたんだよ?それが私の心の支えで…」
ルフィ「そいつらはお前をどう助けたんだ?」
ウタ「え?」
ルフィ「ウタはそいつらの中に頼ろうと思った奴はいるのか?お前の力になろうとした奴は?」
ウタ「それは…」
言葉が詰まる。ルフィの問いに、1つも答えられない。そんな人がいると、考えたことも無かった。 - 31今日はここまで22/09/23(金) 00:38:32
ルフィ「お前の歌声や期待に応えるところが好きなだけで、お前がどう思ってるかに興味
のある奴はいなかったんじゃねェのか?」
ウタ「………いなかった」
嫌な考えがよぎる。考えたくないけど、それはきっと事実だ。遮ろうとするのをグッと抑える。
ルフィ「ウタ。そいつらはただ、何も出来ねェからお前に縋っただけだ。そんな奴らと閉じこもったってお前は独りのままだった」
ウタ「……そんな気はしてた」
ライブを開催した時でさえ、自分で自分を鼓舞していた。鼓舞してくれる誰かはいなかった。
ウタ「さっき、感謝の言葉を貰って嬉しかったって言ったじゃん?でも…ルフィやシャンクスと逢った時の方がずっと嬉しかった」 - 32二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 01:16:40
本編でルフィとウタが全然話ができてないまま終わったことに気づいてしまったからこういうちゃんと2人が話すSS見つけるだけで嬉しくなる
- 33二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 01:33:47
ルフィがすげえ道理を踏まえてる
でもなんかありそうだなと思えるわ - 34二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 07:21:59
こうやって話し合える時間さえあればわかりあえたハズなんだ…悔しいなぁ
- 35二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 10:13:18
観客があれだけいたのに、お構いなしでハグしたり、チキンレースしたり。ちょっと周りが見えなくなるほど気分は最高潮だった。
ルフィ「…」
ウタ「だからさ。急にルフィに船で寝るって言われた時、結構ショックだったよ?置いていかれた気がしてさ」
ルフィが背を向けた瞬間は、あの日のシャンクスたちが頭に浮かんで身体が止まった。
ルフィ「……ああ、ごめんな」
ウタ「私も急に海賊やめなよなんて言ったのは悪かったけど…」
自分を棚に上げてる気がして、付け加える。ルフィだって赤髪海賊団が大好きだった人からいきなりこんなこと言われたらね。 - 36二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 13:39:00
ウタ「ええと、その…つまり…」
弱音を吐くって結構恥ずかしいな。ましてや一応歳下の相手に言うのは。
ウタ「私独りが怖い。ルフィはそんなことでって思うかもだけど、私は何よりも辛い。特にこう…私だけ置いていかれるっていうのが1番辛い」
ルフィ「……」
ルフィは何も答えない。険しい表情だけど、何を考えてるんだろう。
ウタ「だから……そう、独りになりたくない。ずっと一緒にいたい」
ルフィを真っ直ぐ見つめ、静かに私は頼む。……なんか変な雰囲気。
ルフィ「……当たり前だ……!!」
ルフィも真っ直ぐ見つめ返し、静かに、力強く答えた。普段の子どもっぽいルフィとは違う、とても頼もしい眼差し。…本当に良い男になったな。心なしか顔や胸が熱くなるのを感じた。 - 37二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 13:45:58
ウタ「今夜はありがとう。話をしてくれて。あの時はありがとう。本心を言わせてくれて。今は毎日楽しいし嬉しいよ」
ルフィ「ああ、独りにはしねェ」
今夜は良い夢が見れる気がする。晴れ晴れとした気分で部屋に戻ろうした時だった。
ルフィ「あ!そういえばお前、あの時誰と喋ってたんだ?」
ウタ「へ?」
ルフィ「急に誰もいない方を向いて喋ってたじゃねェか」
ウタ「えっと、あれは…」 - 38二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 14:03:42
間違いない。現実の世界での“白いルフィ”のことだ。ここまでいろいろ話したんだ。もう喋ってしまおう。
ウタ「…ルフィたちが私と戦ってる時にね、現実の方でルフィの身体が動いたの。私はそれと言い合ってた」
ルフィ「おれの身体が!?」
ウタ「物凄いスピードと自由な動きだった。喋りながらトットムジカを手球にとるぐらい」
ルフィ「あいつを!?」
この様子だと、ルフィ本人に自覚は無いみたい。
ウタ「それ以上は私には何もわからないけどね。ただ、その時のルフィは髪や服が白くなってた」
ルフィは興味津々だ。食い入るように聞いている。
ルフィ「……ウタ、それを使えるようになりてェ。そしたら、もっと強くなってみんなを守れる気がする」 - 39二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 14:15:58
ルフィは真剣だ。自分の知らない力があるなら、それを使えるようになりたいと思うのは当たり前の気持ちだろう。
ウタ「じゃあ、何か手伝うよ」
ルフィ「ああ」
ルフィは身体を動かし始める。白くなるヒントが無いかと探しているのだろう。私も思い出せ。何か、ルフィの身体にあった変なことを。………まさか。
ウタ「そうだ。ルフィ」
ルフィ「何だ?」
ウタ「確かルフィの身体から、『解放のドラム』が聞こえてた」 - 40二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 17:45:29
ルフィ「?????」
訴えている。「なんだそれ???」と顔に書いてある。
ウタ「ほら、ドンドットットッ♪っていう」
ルフィ「ああ〜〜〜!それか!」
良かった。リズムは知ってた。
ルフィ「それをおれの身体で鳴らせば良いんだな!……どうやって?」
ウタ「わかんない」
手を叩いてみた。何も起きない。
脚を鳴らしてみた。何も起きない。
リズムに合わせて身体を動かす。何も起こらない。
踊る。何もなし。
やけくそで私の演奏を聴かせた。もちろん何も起きない。 - 41二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 17:52:29
ウタ「う〜〜〜ん、どうしてああなったんだろ」
お手上げだ。もう何も思いつかない。白くなった理由はよくわからないけど、多分あの時限りの出来事だったのだろう。部屋に戻ろうとルフィに言おうとした時、
ルフィ「!!!」
何か思いついたのか、ルフィは拳を床につけた。
ドクン……
この音は…心臓の鼓動?
ルフィ「上がれ心臓の音…!!」
ドクン…!ドゥン…!ドッ…!ドン…!
ウタ「えッちょっと、大丈夫なの!?」
どう見ても普通じゃない。医療とかよくわからないけど、心臓がこんなに不規則に動くのが普通じゃないことはわかる。ルフィも辛そうだ。 - 42二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 18:09:31
ドゥン…ドッ…ドゥッ…ドッ
ドゥンドッ…トッ…ドッ
ドン…ドッドッ…トッ
不規則な鼓動は、少しずつ整っていき、次第にリズムを作り出す。
ドン…ドッドッドッ
ドン…ドッドットッ
ドンドットットッ
そして、遂にリズムを刻む。
ドンドットットッ♪
ドンドットットッ♪
『解放のドラム』が聞こえる。ルフィの髪と服は白く染まり、蒸気は羽衣の形を成す。そして、
ルフィ「あっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!!!」
ルフィは大笑いを始めた。 - 43二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 18:43:31
ルフィはサニー号を動き回った。手足を伸ばし、振り回し、自由に跳ね回る。
ウタ「やったよルフィ!!」
とっても楽しそう。あの時の白いルフィになれたことに私も喜んでいた。
ルフィ「いやっほ〜〜〜〜う!!」ビヨ--ン!
ウタ「あ!」
跳び回るうちにルフィは横へ飛び出てしまった。ダメ!下は海!
ルフィ「む!」
落ちると思った瞬間、
ルフィ「んぎぎぎぎ!」ギャギャギャギャ!!
ブイーーーン!!
ウタ「!?」
脚を回して飛んでしまった。飛ぶってそんな風にして出来たっけ? - 44二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 18:49:01
ニカ!!!
- 45二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 19:13:39
ルフィ「よっと」
目の前へと降りてきた。あの時と同じ、本当に自由だ。
ウタ「今のどうやったの?凄かった!」
ルフィ「ん?ああウタか」
ウタ「え?」
あれ?急に他人みたいな反応。
ルフィ「久しぶりだなァ!」ニカッ
背筋が冷える。恐る恐る私は尋ねる。
ウタ「……誰だっけ?」
ニカ「『ニカ』。確かそう呼ばれてた」ニッ
うそ。ルフィじゃない。じゃああの時も、身体を動かしたのはルフィじゃなかったんだ。
ウタ「……そんな」
ニカ「そう悲しい顔すんなよ!おめーも楽しもうぜ!」グニャン!
ウタ「うわッ!?」
サニー号の床が沈む。 - 46二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 19:32:21
ニカ「ふゥ〜〜〜!!」バイ--ン!!
ウタ「ひゃあ!!!」ボヨ--ン!
波打つ床で私の身体も跳ね飛ぶ。何が起きてるの?まるで床がゴムのように跳ねる。
ニカ「あっはははは!楽しいな〜〜〜!!」ボイ-ン!
ルフィ…いや、ニカは楽しそうだけど、私はそれどころじゃなかった。前と違って今、ルフィの心はルフィの身体にある。そんな状態でニカになったら…ルフィはどうなるの?
ウタ「ハァ....ハァ....」ビョ-ン
もしこのまま、ルフィが戻って来なかったら……。私がニカの話をしたせいで……。迫り来る不安で息が浅くなる。 - 47二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 20:27:12
ニカ「〜〜〜♪♪」
ニカはまたしても跳ね回っている。ルフィの意識が無いなら、やることは1つだ。
ウタ「うッ!動きにくい…!」バイ-ン!
そっちへ行かなければ。『ルフィ』を呼ばなければ。
跳ねる床に苦戦しながらも、なんとか柱にしがみつく。ニカが近づくのを待って、叫んだ。
ウタ「ルフィ!!」
ニカ「ん?」
ニカがこっちへ視線を向ける。
ウタ「起きてよ!!」
ルフィ「……」
ニカ「ルフィか?心配すんな!オレが引っ込んだら元に戻る」
ルフィは戻ってくるのか。良かった、最悪なことは起きないんだ……いや、ダメだ。 - 48二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 20:49:37
ニカ「オレだって戦えるのは見ただろ?大丈夫!ルフィが寝てても平気さ!」ニカッ!
ウタ「大丈夫じゃないよ!!」
ニカ「!」
その力は、ちゃんとルフィの意思で使えなきゃ。これからもルフィたちはきっと戦う。もし大事な戦いが自分の知らないところで終わってたら。自分が知らないまま、仲間を失ってたら。そんなことはあったらダメだ。
ウタ「ルフィ!!」
だから、ニカは本当は出てきちゃいけない。
ウタ「何で!海賊になったの!!海賊になって!何になりたいの!!!」
「!!!」 - 49二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 21:05:49
「おれは…」
「『新時代』をつくる……」
ルフィ「海賊王に!!なる男だ!!!」
力強く、彼は答えた。
サニー号の床が元に戻った。ちゃんと歩ける。私は座り込んだ彼の元へ駆け寄る。
ウタ「……ルフィだよね?」
ルフィ「……もちろんだ」ニッ
ウタ「良かった〜…ヒヤヒヤしたよ…」
ルフィ「これ…楽しいな…!おれのやりたい事…全部出来そうだった…!心臓の音も面白ェしよ…!」ドンドットットッ
心配してる側でその調子なんて。ちょっと呆れる。
ルフィ「多分これだ…おれの…最高地点…!」
“ギア5”!!! - 50二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 21:17:16
ウタ「ギア5…」
ルフィが最高地点と思えた力の名前…。…5(フィフス)ってことは1(ファースト)から4(フォース)もあるのかな?
ルフィ「ん?」ズズ...
ウタ「え?」
ルフィ「ゼー…」シュウウウウゥゥゥ……
ウタ「えッえッ」
ルフィ「ヘ-…ヘ-....」
一瞬の出来事だった。元に戻るのかと思ったら、ものすごい勢いでルフィが萎んでしまった。
ルフィ「ツカレタ...」
ウタ「……結構消耗すごいんだね。それ」 - 51二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 22:06:54
もう部屋に戻る体力すらも無さそうだ。私も結構疲れたからルフィを部屋へは運べない。
ウタ「じゃあ、もうここで寝よっか」ゴロン
ルフィ「ン?アア」ヘタッ
その場で並んで横になる。
ウタ「というか、今日は私を怖がらせたから!ルフィがなんて言っても一緒に寝る!」
いつも男女で部屋が分かれてるし、ついでだからこうしてやる。
ウタ「おやすみルフィ。大好き」ギュッ
ルフィ「…ああ」ギュッ
そのまま、私たちは眠った。 - 52二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 22:09:42
_________
〜朝〜
ナミ「部屋にいないと思ったら…」
ロビン「あらあら」
ルフィ(zzzz)ギュ-
ウタ(zzzz)ギュ-
ウソップ「サンジが見たらすげェ顔しそうだな…」
ナミ「2人とも!起きなさいよ!」
ウタ「んァ!?」
もう朝か。
ナミ「こんなとこで寝るなんて、夜何してたの?」
ウタ「えーっと……まあ、いろいろ?」
ナミ「………」
言葉に困ってそう。 - 53二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 22:26:36
- 54二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 22:30:55
解放の戦士か…
- 55二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 22:39:54
まだまだスレは残っていますが、これでSSはひとまずおしまいです(なんか思いついたら追加するかも)
最初は生き延びたけどトラウマ抱えたウタをルフィで癒したいという前提で考えていましたが、なんで生き延びたかの理由を考えたり音楽家で接点を持たせたいとか思いつくうちにブルックとの話やニカ・ギア5イベントをくっつけてしまいました
あとルフィのエミュはやっぱりむずすぎますね…
ウタは救われるのが好きです
曇らせても最後は晴らしたいです
脳が焼かれてるうちはまたSS書きたいです!というか本当はここにあるような長期SS書きたいのにすぐ終わってしまう!!! - 56二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 22:55:03
- 57二次元好きの匿名さん22/09/23(金) 23:11:32
- 58二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 00:48:24
良SS感謝する…
- 59二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 00:52:34
おまけ1
ブルック「いや〜、ウタさんとお話しした“白い人”。一体どんな人なんでしょうね〜」
白い人。ニカのことである。
ウタ「ブルックは逢いたい?」
ブルック「ええ!お2人から本心を引き出すような方です。きっとその人にもルフィさんのような魅力があると私は見ています。是非ともお話ししたいです」
ウタ「そっか、逢えたら良いね」
……そういえば、この前せっかくニカが出てきたのに、お礼を言うどころか怖くなってルフィを起こすのに必死で出てこない方が良いとか思っちゃった。ルフィの中にいるなら、私の言ったことは聞こえてるかな?……あとでルフィが昼寝してる時にでもごめんって言っておこ。 - 60二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 02:44:10
おまけ2
【
この前ルフィとハグしながら寝たのが気持ち良かったから、またそうしたい。どうせならもっと良い場所があるか聞いてみよ。
ウタ「ねェナミ」
ナミ「?」
ウタ「ルフィと寝たい」
ナミ「…それ私に言うこと?」
バツが悪そう。なんでだろう?
ウタ「だって女子と男子って部屋別じゃん?どこが寝心地良いかな」
ナミ「それじゃあ、あんまり音が聞こえないところにしなさいよ」
ウタ「何で?寝るだけだし音なんてしないでしょ?」
ナミ(…え?本当に寝るだけ?もっとあるでしょ?)
ナミ「…船のことならフランキーに聞いた方が早いと思う」
ウタ「そうだね。ありがとう!」
その通りだ。フランキーは船大工だもの。船のことなら詳しいはず。 - 61二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 07:38:31
ウタ「ねェフランキー」
フランキー「ん?」
ウタ「ルフィと寝るのに良い場所知らない?ほら、いつも寝る時って女子と男子で別でしょ?」
フランキー「アウ!任せろ!おれ様がステキな夜に出来る部屋を作ってやる!」
ウタ「え!?待って待ってそこまでしなくていいよ!」
フランキー「けどサニー号に防音の整った部屋は無いぜ」
ウタ「大丈夫だよ。ルフィとハグしながら寝たいだけだから音なんてしない」
フランキー「う〜〜む。…!場所を探すよりは、いろいろ発明してるウソップならウタの望みを叶えられるかもしれねェ」
ウタ「なるほど!ありがとう!」
ウソップって結構器用だったよね。確かに何かグッズ作れるかも! - 62二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 07:55:24
ウタ「ねェウソップ」
ウソップ「どうした?ウタ」
ウタ「部屋の外でルフィと寝たいんだけど何か良いものないかな?」
ウソップ「もしやこの前のことで?」
ウタ「そうそう。気持ち良くて…」
ウソップ(くゥ〜〜〜〜!!!)
一瞬ウソップが涙を流した気がするけど、きっと気のせいだろう。
ウソップ「どこでも寝れるか…あ、そうだ!」
ウタ「何か思いついた!?」
ウソップ「ああ!任せろ!!」グッ!
ウタ「やった〜〜!」 - 63二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 08:22:43
_________
ウタ「これは……袋?」
ウソップ「ただの袋じゃねェ。衝撃を和らげ、保温性を持ち、寝心地すらも確保した代物だ!」
ウタ「すごい!これ『寝袋』って呼んでいい?」
ウソップ「あ……うん、いいぞ(名前考えてたのに…)」
こんなにてんこ盛りなもの作れるなんてウソップはすごいな。
ウタ「これ結構大きいんだね」
ウソップ「わざと1人じゃ少し大きいようにしたんだ。そうすれば2人入った時ちょうどいいだろ?」
ウタ「そうなんだ!ありがとうウソップ!」
ウソップ「いやいや」エヘヘヘ
これに入ってルフィと寝るのが楽しみだ。今度ルフィを誘おっと♪
】
おまけ2:おわり - 64二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 09:07:47
- 65二次元好きの匿名さん22/09/24(土) 19:11:46
語り継がれる…