- 1二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 00:06:38
「アヤベさぁ〜ん! お願いがあるんですけどー……」
「嫌」
甘い声で話し掛けてくるのはカレンさん。こういう頼み方をする時は大体面倒臭いことに巻き込まんでくる事を理解している
「ええー、そんなあ! カレンのこと、嫌いになっちゃいましたか……?」
「そういうわけじゃないけど……」
彼女のことが嫌いなのか、と言われると否だ。けれど面倒事に巻き込まれたくないのは本音だ
「……要件だけ聞くわ。断っても文句は言わないで」
「やったー! アヤベさん大好き!」
「はいはい……」
毎回こういう流れになってになってしまうのは私の悪い所だろう。ビシッと言ってやらなければいつまでもこんな調子で振り回されるのは明らかだ。しかし、この娘の天性の才能だろうか、断ろうとすると罪悪感に襲われてしまって、踏ん切りがつかない
「カレン、アヤベさんが本当は優しい人ってこと。ちゃんと分かってますからね」
心を見透かさないで欲しい。やりにくいったらありはしない - 2二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 00:06:56
今から執筆するので遅筆です
- 3二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 00:20:29
「それで、頼み事って何?」
「実はカレン、ボーノちゃん達とキノコパーティを開こうと思ってるんです。ただ、問題があって……」
「……問題?」
「その、皆自由なタイプというか、奔放というか。思い付きで色々な具材を持ち込むと思うんです。それは良いんですけど、キノコは野生のものを使うので、万が一の時はアヤベさんにストッパーになってほしいんですよ」
「……私である必要、ある?」
「アヤベさん以外で頼れる人が居ないんです……お兄……トレーナーさんもお仕事で忙しいみたいなので、付き添えないですし……」
キノコ、か。野生のものはプロでも見極めが難しいらしいけれど、ヒシアケボノさんやマヤノさんなら選定眼や直感で上手くやるのだろうか
……実際はストッパーというのは建前で、私を誘いたいだけなのか、と考えてしまった。軽く首を横に振り、自惚れを頭から消し去る
「まぁ、あまり役に立てないとは思うけど、それでも良ければ」
「やったー! ありがとう、アヤベさん!」 - 4ボーノの喋り方わからねえ!21/10/19(火) 00:43:54
そんなこんなでキノコパーティの当日。少し歩いた場所にあるキャンプ場にて行われるらしい。カレンさんに連れられて辿り着いたそのキャンプ場は、深い木々に覆われており、どこか神秘的な雰囲気を感じる空間だった
「今日は集まってくれてありがとね〜。美味しいキノコ、いっぱい振る舞うよぉ〜!」
「マヤも美味しそうなキノコいっぱい拾ってきたよー! 皆、いーっぱい味わってね!」
ヒシアケボノさんとマヤノさんが歓迎の音頭をとっている。大丈夫だろうか、私。空気を悪くしていないだろうか。少しだけ不安になる
というか、ストッパーの話はどこに行ったのか。やっぱりアレは口実だったのだろうか
「アヤベさん、だっけ? カレンちゃんから話は聞いてるよ!」
マヤノさんが声をかけてくる。カレンさんと似てるようでかなり特色が違う子で、カレンさんより子供っぽさが目立つ子……だったような気がする
「優しくて大人っぽくて、ミステリアスなレディだって聞いたんだ! ねえねえ、マヤもアヤベさんみたいなオトナな女の人になりたい!」
「……大人、と言われても。私も中等部よ? マヤノさんと年齢差はあんまりないし、無理に私みたいになろうとしなくてもいいんじゃないかしら」
カレンさんとは違う意味でやりにくい相手だ。純粋に尊敬の気持ちを抱いているのがわかるから、無碍にしにくい。しかし大人っぽいと言われても、私は意識してるわけじゃないからアドバイスのしようがない
「か……か……」
か?
「かっこいい……! カレンちゃんがアヤベさんに憧れる気持ちがわかっちゃったよ!」 - 5マヤのエミュも難しい21/10/19(火) 01:10:19
「……へ?」
「アヤベさん、すっごく大人っぽい……! なんだか、空の上にいるみたい!」
キラキラ光る目、という表現がそのまま浮かんできたかのような、そんな目でこちらを見つめてくるマヤノさん。何が彼女にヒットしたのかは分からないけれど、なんだか買い被られてる気がする
「……まぁ、貴女は貴女のやり方で進んで行けばいいと思うわ」
これ以上キラキラした目を向けられると、純粋とは言い難い自分の心が苦しくなってくる。私はそんな尊敬される程の存在じゃないのに……
「あ、アヤベさぁん!」
少しだけ黄昏れていると、後ろから声を掛けられる。振り向いてみると、そこに居たのは大柄なウマ娘、ヒシアケボノさんだ
「はいどうぞぉ! キノコ汁、たっぷり味わってねぇ!」
すっ、と。特大の器に入ったキノコ汁を差し出された。 見るだけでお腹いっぱいになりそう
「あ、そうそう。大丈夫だとは思うけど、もしかしたらアルコールに反応するキノコが入ってるかもだから、3日くらいはウイスキーボンボンとかお酒を使った料理は食べないようにしてねぇ」
……聞き捨てならない単語を聞いた。それは、毒キノコなのでは?
「味は良いし、万が一アルコールと反応しても悪酔いしちゃう以上の影響は出ないから安心してねぇ! なるべく、そういうキノコは取り除いてはいるけど……」
……まぁ、実際すごく食欲をそそる香りだ。うん、アルコールを摂取しなければいいんだろう
「わぁーい! 待ってました! ボーノちゃんのキノコ汁はね、すーっごくおいしいんだよ!」
マヤノさんもこう言っているし、差し出された料理を残すのは失礼だ。いやまて、まずい。あまりの匂いに理性が若干飛びかけている気がする
それだけ眼の前のキノコ汁は食欲を刺激してくる - 6二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 01:18:15
「……ご馳走になるわ。いただきます」
「「いっただっきまーす!」」
こうして味わったキノコ汁は、今まで食べてきたキノコ料理の中でも一番美味しいと言えるものだった。深い香りにじっくり醤油と出汁で煮込まれたキノコ。味付けは単調なはずなのに、手に持った箸が止まることがない。思わず3杯もおかわりをしてしまった。招かれた身であるとはいえ、少しはしたなかったように思える
「……でも、おいしかったな」
キノコパーティの翌日。学園の食堂で私はポツリと呟く。眼の前の鮭のみりん焼きを食みながら、昨日のキノコ汁の味を思い出す
あれ、そういえば昨日、なんて言われたっけ。ええと、アルコールは3日くらいは摂取しない方が良い、だっけ。まぁウイスキーボンボンなんてものは滅多に食べないし、未成年だからお酒も飲まない。問題はないだろう、と思って大きめに切り分けた鮭の切り身を口へと運ぶ
「……????」
せかいが、くるくるまわる。おや、わたしは、どうしたのだろう。あれ、そういえばみりんって、アルコールをつかってたんだっけ
転がってゆく意識の中、そんなことをおもいだしていた - 7二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 01:20:34
- 8二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 01:21:19
悪酔い……どうなるかなあ
- 9オペエミュは本当に難しい21/10/19(火) 01:32:11
ここからオペラオー視点
「アヤベさんが変になりました!!」
「どうしたんだい急に」
ドトウが慌てた様子でボクに話し掛けてくる。アヤベさんが変になった? 要領を得ないが故に、思わず首を傾げてしまう。ああ、こんなふうに首を傾げてしまっても魅力的なボク……
「なんか、その、すごく笑顔というか、明るいんです」
「ふむ? 良い事じゃないか。いつも思い詰めてる様子だったしねえ」
「と、とにかく、来てくださいぃ! 私一人だと、なんかこう、私が駄目になっちゃいそうなんですぅ〜!」
駄目になる? 我がライバル、ドトウがそう言う程の状態と言われるとますます興味が湧く。ふむ、この覇王が変なアヤベさんと対峙するのも一興だろう!
「安心したまえドトウ。このボクが居るからにはアヤベさんだろうとアドベさんだろうとひれ伏すだろ___」
「あはぁ、居たあ〜! オペラオーも居たあ!」
……目の前に現れたのは、アヤベさんの姿を借りた別人。そう言われたほうが納得いくレベルの状態のアヤベさんだ
「ぎゅー!!」
突貫してきたアヤベさんは、ボクとドトウを押し倒してくる。え、ちょ、どういうことなんだ?
ドトウは打ち所が悪かったのか、あるいはパニックになったのか気を失っている
「えへへ……オペラオー、ドトウ。いつもありがとうね。あんた達のおかげで、私、もう一度頑張れてるんだあ」
その言葉に嘘偽りやお世辞といったものは感じられない。感じられないが、そもそも様子が変だ。まるで何かに取り憑かれているような……酔っているような……? - 10二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 01:33:35
泥酔アヤベさんかわいい
- 11二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 01:37:39
「アヤベさん。君、もしかして……百薬の長と呼ばれる物を飲んでしまったのかい?」
「ひゃくやく……? おさけのことぉ? そんなの飲めないに決まってるじゃない。わたし、未成年よ? あ、でも……お昼ごはんに魚を食べてからずーっときもちいいんだあ!」
魚……酔い……今日の献立は確か、鮭のみりん焼きだったな。まさか、それで酔っ払った? しかしそれだけでこうなるとは考えにくい。トレセン学園のカフェテリアは健康バランスを考えた献立だからだ。つまり、アヤベさん自身に原因があると考えるべきだろう
「アヤベさん。最近、変なものを食べてたりしないかい?」
これしかない。アヤベさんが変なものを食べたから、みりん程度のアルコールでも酔っ払ってしまった。そう考えるのが自然だろう
「食べてない! キノコおいしかった! オペラオーとドトウあったかーい!」
キノコ……酔っ払う……そういえば、昨日はヒシアケボノさん達がキノコパーティを開いた、と言っていた気がする。関係あるのだろうか?
「オペラオー」
施行を巡らせていると、真剣な声色になったアヤベさんが居た。酔いが覚めたのだろうか
「あなた、こうしてるとかわいいわねえ。あんなに速いのに、こんなに小さいなんて」
くぅ……!? しまった、ドトウが言っていた"駄目になる"というのはこれのことか……!
ま、まずい……ストレートに表現されると、は、破壊力が……!
「……zzz」
……そう言うと同時に、アヤベさんは夢の中へと旅立っていった - 12二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 01:39:25
押し倒したままこの火力は反則でしょ……
- 13二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 01:40:50
なんだろう、沈静化したはずなのに、すごく納得いかない。普段のボクらしからぬ感情が渦巻いている
そろそろ気を失っているドトウを起こすべきだろう。そう思ってドトウを揺するが、目を覚ましそうにはない
「やれやれ、やはり最後に立つのはボク、か。これも勝者の定め……」
アヤベさんとドトウの両手で抱え、そのまま保健室へと向かう。アヤベさんの運び方だけ雑なように見えたのは気のせいだ。気のせいと言ったら気のせいだ - 14二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 01:49:50
アヤベさん視点
「んぅ……ここは、どこ? ていうか、頭いっったあぃ……吐き気もする」
ぐわんぐわんとする視界をなんとか制御し、辺りを見渡す。トレセン学園の保健室だった
……記憶が無い。何をやらかしたのか分からない。せめて、何もしてないことを願う
「やあアヤベさん。起きたようだね」
駄目みたい。オペラオーの表情がかつて見たことない程に険しい。というか、若干怒ってる?
初めて見た気がする
「ごめんなさい。私には記憶が無いけど、きっと何かやらかしてるわ」
襲いかかる吐き気と頭痛に耐えながら、ベッドの上で土下座する。普段の私なら土下座どころか謝りもしないだろう。何故なら、私に非がない事がほとんどだからだ
しかし今回は別。オペラオーが不機嫌になるというのは私が知る限り初。その感情をこちらにぶつけてくるという事は、私が記憶を失っている間に何かをやらかしたと考えるべきだろう
「……忘れているのなら、それでいい。アレは、誰も幸せにならないから忘れるべきだ。あと、アヤベさんはもう少し食事に気を遣うべきだね」
……オペラオーが真剣な顔で説教する程とは、本当に何をやらかしたんだ。しかし忘れるべきと言われたのなら素直に従おう
「あ、アヤベさん! 起きたんですねぇ!」
オペラオーの後ろからドトウが顔を出す。どこに隠れてたのかしら
「え、えっと……可愛かったですよ、アヤベさんとオペラオーさん」
「ドトウ!」
え、待って本当に何をやらかしたの?
そんな疑問へ答えを出してくれる人は、この場にはいなかった - 15二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 01:50:40
- 16二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 01:51:19
あなたでしたか……
- 17121/10/19(火) 01:52:30
最近は雑談ばかりしていたのでリハビリがてら即興。一時間もかかるとは思わなかった
- 18二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 02:52:58
あっすき
- 19二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 04:04:43
ホテイシメジか
- 20二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 06:09:45
よきよき…破壊力バツグンだ…