- 1二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 21:37:36
乾いた風が頬に吹き付ける、どこまでも続く草原が波打っていた。
……いや、流石にどこまでも続きすぎだ。
ずっと遠くに連なる山脈がかろうじて見えるのだが、いつまで歩いても近づいている気配もない。
時間にいくらでも余裕があるとはいえ、気を急いてしまう。
「ちょっと待って〜!」
アケボノの声にはっと冷静になる。パートナーを置いて先々進んでしまうところだった。
「んしょ、よいしょ……ちょっと焦っちゃった?」
一歩一歩ゆっくりと、体よりも大きな荷物を背負ったアケボノがようやく並び立った。
「ごめん、あんまりにも景色が変わらないものだから」
「うふふ、気にしないで〜。やっぱり大陸の草原は、日本と違っておっきいからねえ……」
世界は広いと言うが、実際に飛び回ってみるとそのことをつくづく実感できる。一生かかっても踏破するのは難しいかもしれない。この草原でさえ、広い大地のごく一部に過ぎないのだ。
「リラックスだよ〜。時間はたっぷりあるから、少し休んで落ち着いてみようよ♪」
「そうだね」
気づけばかなり汗をかいていた。アケボノの方は未だけろっとして疲れた様子なんて微塵も見せていない。彼女の気配りにはいつも助けられている。
アケボノは荷物を地べたに置くと、その端へ頭が乗るように仰向けに寝転んだ。
「ん〜!風が涼しくてボーノ♪トレーナーさんもほら!」
ぽんぽんと真横の地面を叩く。 - 2二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 21:38:05
「もうトレーナーじゃないんだけど……まあいいか」
アケボノの隣、同じように荷物へ頭を預け、天を向く。
「……うん、良いな」
ずっとずっと空高く、うっすらと雲が流れている。草花の囁きが耳元で賑やかにそよぎ、風と共に消えていく。
青空に体が溶けていく、自分と世界の境目が曖昧になったような。小さな人一人だってこの地球の一部なんだと感じる。
またひとつわかったこと、景色が変わらないなんて大間違いだ。こうして一息つけば、そこには新しい視界が広がっていた。
「ありがとう、アケボノ」
「どうしたの急に〜?ふふ……でも、こちらこそありがとうだよ♪」
「君と旅に出てきて、本当に良かった」
「感謝されるのは嬉しいけど……旅はまだ始まったばかりだからねえ。これからも〜っとボーノなところ、いっぱいいっぱい回っていこうね!」
今見ている青空のように、さわやかにアケボノは笑う。
「ああ……ゆっくり、ね」
「うん……ゆっくり、だよ」
草原の上、二人の手がぎゅっと繋がれた。
かつて短距離を制したパワフルな加速はもうないけれど。まだ足は動くのだから。
時間も場所だって、行きつくせない程に僕達を待っているはずだ。
気の向くままに、のんびり行こう。
どこまでも続く青空と、君の笑顔を連れて。 - 3二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 21:39:25
- 4二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 21:40:20
素敵で爽やかな未来だ…ありがとうございました
- 5二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 21:40:47
いつもありがとう
- 6二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 21:44:48
どこまで行っても同じような風景だから草原で行方不明にならない?
ボーノが一緒なら大丈夫だろ
それもそうか - 7二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 22:09:52
ボーノと過ごした思い出をアルバムに残そう
- 8二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 23:01:29
- 9二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 23:18:43
一つ一つの料理の写真に食べたときのトレーナーさんの笑顔とか細かいこだわりが書いてありそう
- 10二次元好きの匿名さん22/10/03(月) 23:26:54
ありがてぇ…ありがてぇ…
- 11二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 02:00:11
- 12二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 02:03:28
- 13二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 02:03:45
てっきりクウガパロSSと思ったらとても良質なSS出されて困惑した…素晴らしい!
- 14ちゃんこ主22/10/04(火) 07:41:20
- 15二次元好きの匿名さん22/10/04(火) 16:14:47
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