【ウマ娘SS】誓いの言葉【カワカミプリンセス】

  • 11◆0QST4bqSOw21/10/19(火) 22:08:58

    そのドレスは、とても綺麗で、素敵で、輝いていましたわ。
    一流のデザイナー、ビューティー安心沢さんが、私の為に作ってくださった、ウェディングドレス。
    優雅で気高いプリンセスの服が、プリファイの中からそのまま出てきたような、素晴らしい勝負服。
    「───本当に、とってもとっても、素敵な勝負服ですわ」
    控室の鏡の前で自分の姿を再確認する。おかしな場所がないかのチェックを短い間にもう何度も何度も繰り返しています。
    現在は『ミューズ』のウェディングドレスお披露目レースが始まる前。控室で僅かな時間があるだけ。
    今の私が、この美しい衣装にふさわしい淑女になっているかは正直わかりませんわ。けれども、お披露目レースが始まってしまうその前に、どうしても、見てほしい人がいるのですわ。
    私の、たった一人の、王子様(トレーナーさん)に。

  • 21◆0QST4bqSOw21/10/19(火) 22:10:02

    ───彼女からメッセージを受け取り、控室に向かう。何かトラブルでもあったのか、自分で対処できることだといいが。
    「お待たせ、何かあった───」
    一人のお姫様が、鏡の前でこちらを見つめていた。
    「……………」
    息を吞んだ。今日が勝負服のお披露目の日だということは理解していた。プリンセス用のドレスも資料で確認していたし、
    控室にいるならもう既にウェディングドレスに着替えているだろうということも頭に入っていた。
    しかし、目の前の光景は、自分の想像を遙かに超えていた。まるで、本当にプリファイの物語の中から出てきたような、素敵で、可愛らしいウマ娘。
    「……どうでしょうか、トレーナーさん?」
    彼女が聞いてきた。すぐに返事をしようと思ったが、上手く言葉を紡ぐことができなかった。
    (とてもよく似合ってるよ)
    ありきたりな言葉しか浮かばない自分が情けない。本当に綺麗なんだ、本当に、プリンセスと一緒に観たプリファイの───

  • 31◆0QST4bqSOw21/10/19(火) 22:11:21

    『───本当に綺麗だ。世界中、いや宇宙の誰よりも、君が一番素敵なプリンセスだよ』
    とある台詞が口から出てくる。そう、これは確かプリファイの──
    「まぁ!それはプリファイに出てきた台詞ですわね!」
    そう、プリファイに出てきた『伝説のトレーナー』の台詞だ。我ながらよく覚えていたと思う。
    「あぁ、確か伝説のトレーナーが、最終回直前の最後の戦いに挑むプリファイに掛けた言葉だったよな」
    「えぇそうですわ!それでプリファイは勇気をもらい、見事最終回でハッピーエンドを迎えたましたのですわ!プリファイと伝説のトレーナーの強い愛がもたらした素敵なお話ですわね!
    ふふ、この台詞で褒めてくださってありがとうございますわ!」
    その場でくるりと回転しながらドレスをふわっと浮かび上がらせる。その動きにも目を奪われてしまう。
    「……ですけど、トレーナーさん?」
    ピタッ、と動きを止める。
    「プリファイは、この言葉を言っていただいたことが嬉しいのでしょうか?誰に言われても、同じくらい喜んで、同じくらいの姫力(ひめぢから)を出せたと思いますか?」
    「……いや、そうは思わないな」
    この台詞を『伝説のトレーナー』に言ってもらったからこそ、彼女は途轍もないすごい力を発揮できたのだ。
    「そうですわよね、プリファイは、伝説のトレーナーに言ってもらえたからこそ、とてもとても、嬉しかったのだと思いますわ」
    彼女がゆっくりとこちらに歩いてくる。
    「ねぇトレーナーさん、私は今、貴方の目にはどういう風に映っていますか?」
    下からこちらの顔を覗き込むように彼女が顔を上に向ける。
    「確かに伝説のトレーナーの台詞は素敵な言葉ですが、それはプリファイに向けて言った言葉。プリファイだけに言った言葉ですわ」
    更に顔を近付けてくる。

  • 41◆0QST4bqSOw21/10/19(火) 22:12:02

    「私のトレーナーさんの、私だけに向けた言葉が欲しいですわ……ダメ、でしょうか、トレーナーさん?」
    少しだけ不安そうな顔をする。プリンセスには、似合わない表情だ。
    「……とてもよく似合ってるよ、プリンセス」
    最初に考えた、とても在り来たりな言葉。本当に在り来たりな、それでも自分で考えた言葉を、目の前のお姫様に。
    「……もう一度、言ってくださいまし」
    「とても、よく似合ってる、本当に、とっても素敵だ」
    プリンセスの目をしっかりと見据えながら、ゆっくりと言葉を紡いでいった。
    「ふふっ、ありがとうございますですわ、トレーナーさん」
    柔らかな笑みを浮かべ、彼女が少し離れる。
    「喜んでくれてよかったよ。でも、いきなりどうして俺を呼んだんだ?」
    「それは……」
    彼女の顔がキリっとした表情になる。
    「私、このお披露目レースで一番になりたいのですわ、このドレスに相応しい、立派な淑女になれているということを証明したいのです!」
    力強く言い放つ。
    「ですが、マヤノさん、ヒシアケボノさん、ドーベルさん、エアグルーヴさん、皆さんもウェディングドレスがとても似合う素晴らしい方達です、一筋縄ではいきませんわ」
    「ですから、レースが始まる前に、トレーナーさんに、今の私にこのドレスが似合っているっていう言葉を言ってほしかったんですの、トレーナーさんの言葉で」
    「……そうだったのか」
    彼女のお姫様への道はまだ終わっていない。日々精進し、理想のお姫様へと近づこうとしているのだ。今回のお披露目レースでもそれは変わらない。

  • 51◆0QST4bqSOw21/10/19(火) 22:12:54

    「それともう一つ……」
    プリンセスが言葉を続ける。
    「お披露目レースとなると、たくさんの方々に見ていただけるわけですわよね?このドレスが皆様に見ていただけることはとても嬉しい事なのですが……」
    少し言い淀んだ後に、
    「この姿を最初に見てもらう殿方は、トレーナーさんが良いと思ったのですわ。あまりお姫様らしくない、とも思いましたのですが、どうしても見てもらいたかったんですもの……ダメ、でしたか?」
    少し拗ねたような言い方が可愛らしい。全然ダメじゃないよ、と言いつつ、頭の中で考える。このお姫様の気持ちに、応えることはできるだろうか、いや、応えなくてはいけない。
    「プリンセス、手を出してもらってもいいかな?」
    「はい、よろしいですわよ?」
    差し出されたプリンセスの手を取り、優しく握る。
    「トレーナーさん……?」
    ウェディングドレス、ならばそれに相応しい文言で。言うのは恥ずかしいが、これがぴったりだと思う。

  • 61◆0QST4bqSOw21/10/19(火) 22:13:37

    「───私トレーナーは、病める時も、健やかなる時も、トレーニングの時も、レースの時も、プリンセスを支え、共に走り続けることを誓います」

    「───!」
    この気持ちに嘘はない。これからのトレーナー人生、どちらもプリンセスと共に歩んでいきたい。彼女が理想のお姫様となれるその日まで。
    「返事を聞いてもいいかい?プリンセス」
    多分今自分の顔は真っ赤になっているだろう、それに気付いているかはわからないが、彼女の顔も真っ赤になっていた。
    「───もうっ、既にご存じでしょう?」
    プリンセスが、満面の笑みで答えてくれた。

    「私カワカミプリンセスは、病める時も、健やかなる時も、トレーニングの時も、レースの時も、王子様を支え、共に走り続けることを誓いますわっ!」

  • 71◆0QST4bqSOw21/10/19(火) 22:15:32

    SS初心者ですが、カワカミプリンセスのストーリーを見てから書きたくなったので書かせていただきました。下手くそですが何かが気に入っていただければ幸いです。

  • 8二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 22:16:30
  • 9二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 22:20:22

    嗚呼……いいなぁ……

  • 10二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 22:25:17

    カワカミプリンセスはいいなぁ

  • 11二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 22:31:13

    このレスは削除されています

  • 12二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 22:40:50

    このレスは削除されています

  • 13二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 22:43:31

    最高ですわ~~~~!!!

  • 14二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 22:59:32

    言葉が出てこない...ありがとう....それしか言える言葉が見つからない

  • 151◆0QST4bqSOw21/10/19(火) 23:21:31

    見てくださってありがとうございます。嬉しい限りです。

  • 16二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 23:51:34

    カワカミプリンセスSSもっと増えろ、いや増えてください

  • 17二次元好きの匿名さん21/10/19(火) 23:55:53

    いいSSだった…

  • 18二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 00:15:11

    幸せにおなり...だ...

  • 191◆0QST4bqSOw21/10/20(水) 00:29:01
  • 20二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 00:46:04

    良き…

  • 21二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 00:50:43

    よかったぜ……王子様……

  • 22二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 00:57:04

    実装後のカワカミSSは某所含めても貴重だからなあ……ありがたや……

  • 23二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 07:49:54

    名作と呼べるSSでしょう。尊さで体が崩れてきたよ…

  • 24二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 09:06:28

    ブラボーですわ!

  • 25二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 12:27:34

    いいSSだ…

  • 26二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 14:48:44

    かわいいなぁ……かわいいなぁ……

  • 27二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 21:13:13

    このレスは削除されています

  • 28二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 21:15:22

    今夜はよく眠れそうだ

  • 29二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 21:42:02

    いい...

  • 30二次元好きの匿名さん21/10/20(水) 22:10:55

    最高だ…(語彙力喪失)

  • 31二次元好きの匿名さん21/10/21(木) 06:11:35

    あっしゅき…

  • 321◆0QST4bqSOw21/10/21(木) 13:34:50

    コメントとか♡たくさんいただいて大変感謝しております。もっとください(欲張り

  • 33二次元好きの匿名さん21/10/21(木) 13:56:02

    いい意味でコメントするのを躊躇う尊さだ……

  • 34二次元好きの匿名さん21/10/21(木) 18:21:24

    もっと純愛SSは増えるべき

  • 351◆0QST4bqSOw21/10/21(木) 22:17:32

    うわあああトップが赤色になっとる!!!ありがとうございます!!!

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