【SS】転生したら黒炭オロチの姉だった Part3

  • 1122/10/18(火) 23:53:03

    続きです。

    そして本編読む前に注意点を。

    今回からクシナ視点の一人称ではなく三人称になっていきます。

    今までとは若干毛色が違ってきますし、ぶっちゃけ批判も覚悟な展開になりましたが、それでも必要だと思ったのでこのまま行こうと踏み切りました。

    では、どうぞお楽しみください。

    あ、前スレ達と有志がまとめてくれたものはこちらになります。

    【SS】転生したら黒炭オロチの姉だった|あにまん掲示板掲示板初心者なのでクオリティは多目に見てくれ。この作品は、・転生者・女主人公・グロ・リョナ・曇らせなどの地雷要素もあるので、合わなかったらブラウザバックを推奨するぞ。しかし、スレ主的には是非読んでもら…bbs.animanch.com
    【SS】転生したらオロチの姉だった|あにまん掲示板続きやっていきます!前スレはこちら。https://bbs.animanch.com/board/1049173/bbs.animanch.com
    「転生したら黒炭オロチの姉だった」まとめ1「姉上ェ〜……! 腹が減って減ってしょうがねェんだ……助けてくれェ〜……」

    「うん。じゃあ、この林檎はオロチにあげよう」

    「ありがとう……! ああ、うめェ!!」

     日本の一般貧乏庶民として暮らしていた私は、ひょんなことから焼死して転生した。

     今世においての私の名前は「黒炭クシナ」。

     前世ではワンピースだけが唯一の楽しみであり、ワノ国編まで読破済みである。

     それ故に自分の姓が「黒炭」で、かつ弟の名が「オロチ」とわかった時点で転生を確信した。


    「姉上、どうしておれ達はこんなに貧乏なんだ?」

    「それは私達のお祖父様が罪を犯し、お家が潰れたからさ。この国では先祖のどうしようもない罪は孫子も背負うのが正しい〝しきたり〟なんだよ」

    「じゃあおれ達が石を投げられるのも、父上や母上が殺されたのも正しくて、仕方のねェことなのか?」

    「……うん。その通りだよ」

     このオロチという少年はワノ国編において、虐げられた過去を免罪符に民衆に悪逆の限りを尽くす人間になる。

     それが数え切れない悲劇を生み、多くの悲しみと苦しみ、そして怒りをこの国にもたらした。


    「いいかい、オロチ。人は悲劇を繰り返す生き物なんだよ。

     私達のお祖…
    telegra.ph
    「転生したら黒炭オロチの姉だった」まとめ2 数ヶ月経ち、私は〝白舞〟の霜月康イエの下を訪れていた。

     ひぐらしに言いつけられた、金を貯めて武器を増産し、カイドウを引き入れる手筈を整えるために。

    「クシナと申します。野盗に襲われ、家族が皆動けないほどの大怪我を負ってしまったのです」

    「おお、それは不憫だな……」

    「いえ……私は盲目ですが熱を感じることができ、動きに支障はございません。

     薬も作れますし、ある程度は戦闘もこなせます。言われたことは何でもやります。だからどうか、小間使いとして雇ってはいただけないでしょうか」

    「うむ、よかろう。ここで働くといい」

    「はっ、ありがたき幸せにございます!」


     未だなお、身を焦がす熱は私を離してくれはしない。

     一刻も早く、この苦痛を取り払いたい。

     その一心で私はあらゆる技能を貪欲に取り込んだ。

     〝呪い〟に追い立てられるように何かをしていなければ、身も心も炎に包まれて発狂死してしまいそうだったから。

     偶然にもその姿勢が康イエにも評価されたのか、小間使いの身ながら一目置かれ、重宝されるようになった。

     そうして康イエの下で働くこと数年、ついに〝花の都〟で〝山の神騒動〟が勃発。

     それによって都を追放された光…
    telegra.ph
    「転生したら黒炭オロチの姉だった」まとめ3「これより、ワノ国は武器の生産国とする。よって各郷の男衆を速やかに武器工場へと移住させなさい。

     逆らう者は一族郎党皆殺しにして構わない」

    「な……!? 何を言っておられる将軍代理殿!」

     私の発布した新政策に城の老中達が驚き、反対の声を上げる。


    「何か?」

    「何か、ではござらん! 一体そんな横暴がまかり通ると思っているのか! あなたを信じてこの国を任せたスキヤキ様のご遺志を愚弄する気か!!?」

    「なるほど」

     当然予想できたことだ。

     だからこちらが言う言葉も決まっている。

     私は立ち上がって刀を取り、筆頭老中の頭上に刃を振り上げる。

    「つまり、叛意と取って構いませんね?」

    「な……ギャッ!!?」

     銀光が一閃し、断ち切られた首から噴水のように噴き出した鮮血が大広間を朱に染める。


     一瞬の間に広間に響めきが伝わるが、しかしこれでも国の重鎮を担う侍達を集めた。

     直ぐに動揺は収まり、刀を抜いて臨戦体勢に移行する。

     平時のワノ国ならば、こんな事態に陥ったとて直ぐ様事態が収束するのだろう。

    「な!? 正気か貴様っ」

    「覚悟はできておろうな!?」

    「頭の足りぬ者も多いですね……。カイドウ様!」

     だが私がこ…
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    「転生したら黒炭オロチの姉だった」まとめ4 おでん帰郷から一夜が明け、つい先程彼が花の都に討ち入ったと報告が入った。

     城の階下では人と人が争う剣戟の音が響き、大きな気配を垂れ流す存在が天守にまで駆け上がる。

    「クシナァァァーーー!!!」

    「お逃げくださいクシナさ……ぎゃあああーー!!?」

     烈火の如く怒りに震え、天に轟く雄叫びをあげるおでんが私の前に姿を表す。

     その五体から放出される覇気に当てられるだけで側使えの者達が泡を吹いて倒れてゆく。


    「〝桃源——」

    「セミ丸、バリアを」

    「十挙〟ァァァーーー!!!」

     おでんの渾身の一撃は、私の鼻先三寸で受け止められた。

    「何だこれは……!?」

    「お久しゅうございます。おでん様」

    「てめェ、どういうつもりだ……! 出てこい、クシナァ!!」

     おでんは防がれてなお執拗に攻撃を加えるが、鎮座するバリアに傷一つ付くことはない。


    「バリアは何者も寄せ付けぬという理屈じゃ。お前の強さは無意味だおでん!」

    「貴様、能力者か!」

     おでんは鬼のような形相で睨みつけながら問いかける。

    「父がお前を将軍代理に押したそうだな……おれが帰ってくるまで!

     だったらすぐにおれにその座を明け渡せ!! そんな偉いものになる気は…
    telegra.ph
  • 2黒炭キズナ22/10/18(火) 23:54:03

    ★☆★

     処刑から程なくして〝九里〟のおでん城陥落の報は入った。
     しかし赤鞘の侍と光月の跡取りの死体が上がってくることはなかった。
     おそらく20年後へと飛んだのだろう。
     想定通りだ。
     そして怒りと憎しみによって顔の骨格が変わるほどの変容を遂げた侍が私のもとを訪れることもまた、想定通りである。

    「狂死郎一家……評判は聞いています」
    「金! 女! 兵! あなたに必要なものは全て動かせます」
    「良いでしょう。我が幕下に恭順することを許します」
    「有り難き幸せにございます、クシナ様!!!」

     名を〝狂死郎〟と偽るこの男こそ赤鞘九人男が一人〝傳ジロー〟。
     彼の使い方も最初から既に決めてある。

  • 3黒炭キズナ22/10/18(火) 23:54:34

    「早速ですが、お前に仕事を与えます。腕の立つ侍にしか頼めぬこと……引き受けてくれますね?」
    「無論、なんなりとご申し付けください!」
    「では、こちらに来なさい」

     私は傳ジローを伴い、城の奥へと彼を誘う。
     足を進めるごとに、何者かが暴れ回るような破壊音が響いてくる。

    「キズナ様! お待ちくだされ!!
     その調度品はワノ国の貴重な文化財! 一体どこへもって行かれるおつもりですか!!?」
    「バカ野郎お前そんなもん質に入れて金にするに決まっておろうが!!」
    「そんなこと将軍様がお許しになられるはずが!」
    「なんだお前も度し難いバカよのう! 母上がんなもん気にかけるようなタマかよ!!」

  • 4黒炭キズナ22/10/18(火) 23:55:08

     城の襖を蹴破って廊下に躍り出たのは、歳の頃は6歳程の少年であった。
     鮮やかな藤色の短髪に純金の王冠を被り、蛇のように鋭い瞳で追いすがる老中を睨みつけている。

    「全く、今月は金欠なんだ少しぐらい良いであろうに〜! 減るもんじゃなし、遊郭のねーちゃん達に貢ぐぐらいよかろ……げェっ、母上!?」
    「お前に新しく目付け役を用意しました。これからはこの〝狂死郎〟がお前の剣術、教養の指南役も兼任することとなります」

     騒動の原因は私の息子〝黒炭キズナ〟。
     生まれついての怪力無双ぶりから〝鬼子〟と呼ばれ城内の畏怖の対象となるうつけ者のバカ息子である。
     私は表情一つ変えずに言い渡した。

    「それと、1ヶ月飯抜きの沙汰を下します」
    「ええー……」

  • 5黒炭キズナ22/10/18(火) 23:55:59

    ★☆★

    「何をしておられるのです? キズナ様」
    「んー? 何って家出の準備だが」
    「ほう、何故ですかな?」

     狂死郎は襖に背を預け、箪笥からあれこれ物品をひっくり返して身支度をしているキズナに問いをかけた。

    「いやァ城に居ても飯が出て来んからな! いかに〝鬼子〟と呼ばれておろうが飲まず食わずで一月は保たん。
     だからちょいーと女のトコに寝泊まりしてタダ飯食ろうてくるわ! 赴任そうそうですまんな、狂死郎とやら!」
    「将軍殿はお許しになられるので?」
    「城を出ることか? 構わん構わん! どうせ母上は息子が家出しようが気にもせん!
     まっこと薄情なものよ! わっはっは!!」

  • 6黒炭キズナ22/10/18(火) 23:56:27

     狂死郎は、この親子との間は冷え切っているのだろうと考えた。
     元より他人に心を開かず何を考えているかもわからないクシナと、感情と行動が直結しているようなこのキズナとの相性は悪いだろう。
     実際、先程の彼らの会話は実に事務的なものであった。

    「ではキズナ様。よろしければ拙者の営む遊郭においでになられよ。良い女、美味い酒、美味い飯、何でも取り揃えておりまする」
    「おお、そうか! 中々話がわかる男ではないか、見直したぞ!」
    「む? 見直したとは?」
    「なに、お前の腹芸を褒めてやっただけのことよ。お前、獅子身中の虫となるつもりであろう?
     野心も上手く隠してある。よほど人をよく見る者でなければ、その腹の中の炎の熱さは量れまい」

  • 7黒炭キズナ22/10/18(火) 23:56:58

     狂死郎は眉を僅かに跳ね上げた。
     キズナの推測通り、狂死郎がそう提案したのはひとえにキズナからの覚えを良くするためである。
     あわよくば懐に取り入り、さらにこの国の中枢に潜り込んで影響力を増そうという算段であった。

    「わはは。あまりバカ殿だと侮るなよ。
     一年程前、お前達の処刑を見ておったがあまり頭が回るように見えなんだもんでな! とく許せ、〝傳ジロー〟よ」

     そうキズナが言った瞬間、狂死郎……もとい傳ジローの腰に佩かれた刀が抜き放たれ、部屋を一刀のもとに両断した。

  • 8黒炭キズナ22/10/18(火) 23:57:49

    「うおお!? 待て待て待て! 悪かった悪かった、ちょっとからかっただけではないか! そんな怒ることなくない!?」
    「正体が知られてしまったからには致し方なし……その首貰い受ける!!」
    「うわあ危な!? おいこらてめェ6歳の童相手に大人気ないぞ!!」

     傳ジローは一刀一刀に殺意を込めて刀を振るう。
     一瞬にして幾重にも張り巡らせれた斬撃は逃げ場もなくキズナを取り囲み、細切れにせんと迫り来る。

    「いやー、落ち着け落ち着け。ここで暴れてもお互いに得はせんぞ。一時休戦にしよう! そうしよう!」

     しかしそんな猛攻を嘲笑うかのように、スルスルとまるで流れる水のように全ての斬撃を躱したキズナは、飄々とした態度を崩さずそう言って両手を上げ、降参の意を示した。
     傳ジローもまた、自身の攻撃を完璧に避けられたことを鑑み、臨戦体勢を取りながらも一応剣を鞘に納める。

  • 9黒炭キズナ22/10/18(火) 23:58:23

    「ふう、やれやれ今のはだいぶヒヤッとしたぞ。母上に〝神通力〟を徹底させられていなければ今頃サイコロステーキ若将軍が爆誕しておった」
    「〝神通力〟……?」
    「うむ。〝悪魔の実〟の能力……お前達で言う〝妖術〟ってやつだな。傳ジロー、お前の正体を見破ったのもコイツのおかげだ」

     トントン、とこめかみを人差し指で叩きながらキズナが言った。

    「〝神通力〟とはな、言ってしまえば人智を超えた6つの〝人を識る力〟……〝六神通〟とも言うな。
     今回はその内の2つ、相手の心を見る〝他心通〟と他人の記憶を遡る〝天眼通〟を使わせてもらった」
    「なるほどな……それで一方的に拙者の正体を知ったわけか。悪趣味な小僧だ」
    「いや……ちょっと見えちゃっただけで……別にわざととかじゃないんだけど……」

     そこはわかってくれよ、とキズナは丁寧に否定した。

  • 10黒炭キズナ22/10/18(火) 23:59:22

    「そうだったのか、それならば致し方ない……わけあるかァ!!
     どうあれ我が一世一代の面従腹背が一日目で露見したことに代わりない! それをわざとじゃないから許せとは甚だ舐めてるぞこのクソガキァ!!」
    「ええい、誰がクソガキだ! 仕方ないだろ見えちゃったもんは! そんな腹に一物もニ物も抱えて城にやってくる方が悪いわ!!」
    「なんだと貴様我らがおでん様の仇のくせに一丁前に!! そもそも知ってたとしてそれなりの明かし方というものがあるだろう!!!」
    「複雑な男心というやつだ! 初対面のデキる奴に〝こいつ……只者ではない!〟って風に思われたいだろうが人生に一回は!!
     あーあ! 大人になるとこんな幼気な少年心も忘れてしまうのかなー! そんな汚い大人にはなりたくないなー!」
    「クソガキすぎるだろうコイツ!!!」

  • 11黒炭キズナ22/10/19(水) 00:00:15

     少年とおっさんがひとしきりギャアギャアと騒ぎ回って発散したところで、幾分か冷静になった両者は腰を落ち着け、額を突き付け合いながら密談を始めることにした。

    「……拙者が言うのも何だが、これほど騒いだ後に密談も糞もないと思うのだが」
    「問題ない。母上は何しようが興味持たんし、ここは一応離宮で本殿とは離れている。あと念入りに人払いも事前に済ませておいた。〝天耳通〟にも〝見聞色〟にも反応はない。故に、今ここでの会話は一切他人に聞かれていないから安心しろ。
     それにここで勝手に騒ぎが起きるのはいつものことだ。抜かりはない!」
    「とんでもねェうつけでござるな、お主」

  • 12黒炭キズナ22/10/19(水) 00:00:42

     傳ジローとて未だ目の前のキズナに警戒を解いてはいない。
     何かしようものならすぐにでも首を叩き落とすつもりだ。
     このキズナというバカを演じる切れ者は、腐っても敬愛する主君おでんの仇の息子なのだから。

    「まァ、聞かれていないのならば良い。して、話とは何だ。くだらんひそひそ話ならその五体を切り刻んでやるぞ」
    「いいだろう。狂死郎よ、これはお前にとっても益のある話だ。耳の穴かっぽじってよーく聞いておけよ?」

  • 13黒炭キズナ22/10/19(水) 00:01:04

     キズナはふんぞり返って不敵な笑みを浮かべて宣言した。

    「朕はな、この国を滅ぼすことにしたのだ!!
     母上の支配するこの血と毒と退廃の地獄——〝ワノ国〟をなァ!!!」
    「な……!!?」

     その出で立ちはまさに〝覇王〟が如し。
     彼、〝黒炭キズナ〟の名は同じく肩を並べて戦った勇士達と共に、後の世に広く語り継がれるようになる。

    「朕は王となるためにあらゆる才能を天に恵まれた生まれながらの王!!
     故に朕こそが! この地を統べる〝天皇〟なり!!!」

  • 14122/10/19(水) 00:02:36

    今夜はここまで。
    明日もできれば上げたいところ。
    賛否はあると思いますが、まぁ是非もないよね!

  • 15二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 00:05:51

    お疲れ様です!面白かったです!

  • 16二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 01:00:23

    乙!面白かった!
    けどすげえことになってきたな

  • 17二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 01:02:25

    息子くん、めちゃくちゃ良いキャラしてるわ
    おもしれー男すぎるよ
    おでんの生き写しレベルでぶっ飛んでる

  • 18二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 01:06:35

    幕末だぁ

  • 19二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 02:19:58

    そ、尊皇攘夷…!!

  • 20二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 02:33:49

    息子は何の実何だ?
    神通力人間?

  • 21二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 06:37:20

    本人の言を信じれば神通力にんげんっぽいな

  • 22二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 08:59:27

    憎い敵の子に敬愛する主の面影があるから居残り組の20年が原作を超えて愛憎渦巻きそうである

  • 23二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 10:02:47

    何かしらのパラミシアかゾオンかな?

  • 24二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 10:54:24

    天皇は激アツ

  • 25二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 16:39:18

    冷え切ってる親子関係なんだろうけど、型月の妖精国の親子がチラついてしまう…
    三人称なので、クシナさんの息子くんへの気持ちが解らなくなったので明かされる時を期待!

  • 26二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 16:52:03

    日本神話に当てはめたら
    クシナ=クシナダヒメ+ヤマタノオロチ
    おでん=スサノオ
    キズナ=オオクニヌシ?

  • 27二次元好きの匿名さん22/10/19(水) 18:34:47

    なんていうか… おでんも昔はこんな感じだったのでは?

  • 28二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 00:25:40

    保守

  • 29122/10/20(木) 00:35:35

    日付またいじゃったけど書けたので投稿していきます。
    あと訂正としてキズナの年齢を6歳から10歳に脳内で修正しておいてください。
    ちょっとした手違いなんだ。ごめんね!

  • 30黒炭キズナ22/10/20(木) 00:36:15

    ★☆★

    「〝天皇〟……だと!?」
    「うむ。朕が勝手に作った造語だ。カッコいいだろ?」

     狂死郎は無言で刀をブン回した。

    「わああ! 危なっ!? 今首飛ぶとこだった!! 生首危機一髪だった!!」
    「やかましい! 何を言うかと思えば、おでん様の愛したこの〝ワノ国〟を言うに事欠いて〝滅ぼす〟だとォ!?
     それになんだ〝天皇〟ってふざけているのか! 寝言は死んでから言えでござる!!」
    「死んだら寝言は言えんだろうが!!」

     キズナは大袈裟に驚いて見えるが、その実身のこなしには余裕があった。
     それがまた狂死郎の苛立ちを煽るのだ。

  • 31黒炭キズナ22/10/20(木) 00:36:50

    「まァそうカッカするなよ、順番に話そう。
     朕はな、物心ついた頃からこの〝ワノ国〟ってやつがそりゃあまー大っっ嫌いだった。
     どいつもこいつも愚か者に過ぎるからな!!」
    「何だと……」
    「否定できるか? ワノ国の連中は揃いも揃ってバカばっかりだ!
     八つ当たりのように迫害を行う民、脳足りんの武士、事態の重さを飲み込めんヤクザ者共、腰の重い大名達!
     母上もそうだ。こんな馬鹿げた恐怖政治をするなど国主として最低も最低! あの人がやっていることも他のワノ国の民達と変わらない愚かな所業、ただ駄々を捏ね、八つ当たりで鬱憤を晴らすクソガキの理論でしかないわ!!」

  • 32黒炭キズナ22/10/20(木) 00:37:24

     最初は愚か者だと馬鹿にされ苛立ちを募らせた狂死郎だったが、段々とヒートアップしていくキズナを見て考えを改めた。
     この年端もいかない少年は本心から国に対する嫌悪を語っていると。
     そして彼のワノ国への罵倒を狂死郎は否定できなかった。
     彼もまたおでんの処刑の際、真実を知った民達へ調子の良い奴らだと怒りを抱いたが故に。

    「この国は窮屈で嫌いだ! こんな腐臭漂う国に居ては鼻が曲がって息もできない!!
     だからな、朕は思い至ったのだ。気に食わないなら壊してしまえば良いのだと!!
     そして朕自らこの国の上に立ち、全く新しい国を創造する! ワノ国の忌むべき歴史の全てを過去のものにする……それが朕の成すべき大偉業だ!! 文句があるなら言ってみよ、狂死郎!!!」

     キズナは無邪気に笑いながら、狂死郎の額にビシッと人差し指を当ててそう言った。

  • 33黒炭キズナ22/10/20(木) 00:37:55

    「……ならば聞こう、黒炭キズナよ。お主の理想とする新しい国。それは、一体どんなものだ?」
    「決まっておろう。誰もが笑える国にする。
     今のワノ国は誰も彼もが辛気臭い顔で見るに堪えん。朕は人並み以上の才を母上より賜った……が、感性はただの人と変わらんよ人の苦しむ顔よりも、人の笑った顔の方が、朕は好きだ。
     故にここに誓おう! この黒炭キズナ、晴れて〝天皇〟となった暁には、誰もが明るく笑っていられるような治世を行うと!!」

     狂死郎は眩しいものを見るように目を細めた。
     この少年……いや、この男の言葉と振る舞いは不思議と人を惹きつける。
     まるでありし日のおでんのような豪放磊落さに、確かな優しさを感じられるのだ。

  • 34二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 00:37:59

    やべえ、こいつおでんより史実信長に近い香りを感じるわ

  • 35黒炭キズナ22/10/20(木) 00:38:21

    「……勝算は?」
    「完璧だ。お前が朕に頭を垂れるのならばな」
    「……我が主人は生涯に渡りおでん様ただ一人と決めている。
     だがしかし、拙者は貴殿をワノ国を取り戻すに足る一角の人物であると見込んだ」
    「ほう、それで?」
    「真に貴殿の侍となることはまだできない。故に共にワノ国を取り戻す同志として、あくまで対等に手を組むということで納得なされよ。
     拙者も武士の端くれなれば、亡き主から早々に鞍替えすることは容易ではないのだ」

     狂死郎は床に手をつき、頭を下げてそう言った。
     狂死郎にとっては、今は亡きおでんの遺言を全うすることが至上命題。
     それに未だキズナの全てに納得できてはいないゆえ、このように申し出ることとなった。

  • 36二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 00:39:01

    あ〜〜〜呪いを知らない息子が笑える国というルフィと似た国の夢を見るのか〜〜〜

  • 37黒炭キズナ22/10/20(木) 00:39:01

    「ふぅむ、まァそれでよかろう!
     お互い初対面だしな。信頼はこれから行動を共にしていく中で勝ち取るとしよう。お前が朕のことを真に天子として崇める気になった時にはいつでも部下になると申し出よ。その時は宴でも開いて歓迎してやろうではないか!!
     何はともあれ、これからよろしくな狂死郎!!」

     キズナはニカッと笑って握手のための手を差し伸べた。
     狂死郎も小さく笑みを浮かべながらその手を取る。
     ここに未だ種火なれども、確かに〝ワノ国〟打倒への一歩が踏み出された。

    「かたじけない。それではこれより我らは同盟関係! 共にクシナ政権を打倒する同士にござる。何か拙者への用向きがあるのでは?」
    「いや、今日は顔合わせだけのつもりだ。帰ってよいぞ〜」
    「……やっぱ拙者、貴殿のこと嫌いでござる」

  • 38黒炭キズナ22/10/20(木) 00:39:41

     あっかんべーしながらすごすごと帰っていく狂死郎に手を振って別れた後、キズナは早々に荷物を纏めて家出の準備を終える。
     その後、彼は真っ直ぐに母親であるクシナの部屋に向かう。

    「ふぅ……」

     深呼吸、背伸び、軽いストレッチをし、いざ行かんとばかりに部屋の襖を開け放つ。

    「やあやあ母上よ! ちょいと今から家出してくるわ! 飯が出て来んなら仕方がないからな、止めたければ飯を出せ!!
     どうしてもそれが嫌だというのなら、今日から一月、狂死郎の営む遊郭に厄介になるぞ! 連れ戻したいならば城の侍衆を千人ほど差し向けることだな! ど〜しても朕に帰ってきて欲しいならば素直にそう言うが良い!!」

     キズナは襖をバーンと開け放ち、将軍に対するものとしてはあまりに不敬な態度でそう宣う。

  • 39黒炭キズナ22/10/20(木) 00:40:14

     部屋の奥、日記をつけていた将軍クシナはそんな彼に対し、一度として顔を上げることなく冷たい声でこう言った。

    「好きになさい。私は忙しい……それだけの用ならすぐに失せよ」
    「……」

     キズナは少し顔を俯かせた後、再び不敵な笑顔を浮かべる。
     そこには覇王としての面影はなく、必死に強がっているだけの、ただの10歳の少年が居た。

    「そうか! それならば仕方がないなァ!?
     後悔しても知らんからな!? 絶対絶対知らんからな!? そんじゃあ行ってくるわ! 母上なんか大っ嫌いだからな、こんな城に未練などないわ!!」

  • 40二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 00:40:18

    キズナ君好きよ、できればクシナちゃんの呪いも解いてくれ...黒炭という恨みの呪いを解いてくれ...

  • 41黒炭キズナ22/10/20(木) 00:40:37

     キズナは背を向けて乱雑に戸を閉める。
     最後までクシナが己に視線を向けていなかったことは手に取るようにわかっていた。

    「はァーー、ったく畜生め!!」

     キズナは肩を怒らせながら、寒々しい廊下を渡り歩く。
     時刻はいつ間にか夜深く。
     降り注ぐ月光が朧に彼を照らし出す。

    「……こんな日は、女の肌が恋しいなァ」

     そう独りごちた後、彼は足早に城を出て行った。

  • 42二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 00:41:16

    息子くん、本当に好き

  • 43二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 00:41:20

    でもキズナくんはおでんやスキヤキと違って親子の情を与えられてないんだなぁ

  • 44二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 00:42:05

    息子君、カン十郎のことは知ってるのかな..

  • 45二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 00:42:30

    クシナちゃんは息子に対して本当に愛情を持ってないのかな?
    大きくなった腹を愛おしそうに撫でてたけど……

  • 46黒炭キズナ22/10/20(木) 00:43:10

    今日のところは以上となります!
    キズナは自分的にも頑張って作ったキャラクターなので受け入れられてホッとしてます。

  • 47二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 01:00:15

    キズナくんの堂々と夢を語る姿と母に気に掛けて欲しがってる姿のギャップがたまらんですよ

  • 48二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 01:02:26

    キズナ君なかなかいいキャラだ…。あれ?ここまでいいキャラだとモモの助の立場は?まだ気が早いしせっかくいい話の水を差すようで悪いけど。

  • 49二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 01:17:41

    色々言ってるけどこれママに自分のこと見てほしいんだろうなぁ

  • 50二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 04:48:53

    まさかとは、思うけどクシナちゃん、キズナくんにわざと冷たく接してないよな!
    自分を殺すことを躊躇わせない為にとか思ってないだろうな!?

  • 51二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 07:30:56

    保守

  • 52二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 14:40:56

    保守

  • 53二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 17:12:43

    このレスは削除されています

  • 54二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 17:15:30

    >>26

    じゃあモモは?って考えたら……

    ルフィ=アマテラス(女→男なのは許せ)、カイドウ=ワダツミ、ヤマト=豊玉姫だとするとモモの助=山幸彦ということになる。

    つまりワノ国編は黒炭=国津神、麦わら一味と赤鞘=天津神の国譲り神話。

    まあ、この考察はスレ主の構想とはなんの関係もないのでここまでにしますね。

  • 55二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 22:24:10

    キズナの父親が気になる。こんな傑物生み出せるなんて誰の血統だろう?

  • 56二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 22:35:00

    >>55

    やっぱカイドウなんかなぁ?

  • 57二次元好きの匿名さん22/10/20(木) 23:22:20

    女の肌が恋しいかぁ
    母親の愛に飢えてるんだな 

  • 58122/10/21(金) 01:14:35

    すまん!まだ書けてないわー!
    明日には上げられそうなんで待っといてーな!

  • 59二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 06:30:10

    父親まさかのスキヤキさん説押すわ

  • 60二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 07:11:35

    保守

  • 61二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 14:17:13

    保守

  • 62二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 15:46:59

    クシナちゃんはこっからの展開を全部知ってるからマジで光月家に勝ち目なくない?息子くんが大暴れするのは予想外だけど..

  • 63二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 17:59:40

    キズナくんどんなビジュアルなんじゃろ
    想像出来ぬ

  • 64二次元好きの匿名さん22/10/21(金) 21:15:36

    保守

  • 65122/10/21(金) 23:41:04

    お待たせー。書けたんで投下開始していきます。

  • 66黒炭キズナ22/10/21(金) 23:41:26

    ★☆★

     キズナが狂死郎が顔役を務める遊郭に入り浸って半月ほど経った頃。

    「ん? なんだお前。朕の店に何か用か?」
    「……ここ、あなたのお店なの?」
    「おう、そうだぞ! 朕の部下の店だからな! 朕の店と言って良いだろう」

     キズナはおそらく狂死郎が聞いていたならば「そんなわけなかろう」とどつかれただろうセリフを吐いた。
     彼の目の前には歳の頃ほぼ同じか少し上に思われる、青緑色の髪が魅力的な美少女。

    「しっかし、お前汚らわしいな。それにガリガリに痩せているし、服も見すぼらしいったらありゃしねェ。朕は貧乏人は嫌いだぞ」
    「そう…………」

     キズナは顔を顰め、嫌そうな目で少女を見る。

  • 67黒炭キズナ22/10/21(金) 23:42:03

    対する少女の顔には散々な罵倒をされたにも関わらず何の感情も浮かんではいない。
     全てを諦め、全てに何の期待も寄せていない無感情が見て取れた。

    「うむ! よってこれよりお前を湯屋に連れて行くことにした! 観念せい、わはははは!!」
    「そう…………えっ? ええ!?」

     先程までとはうって変わって豪快に笑いながらキズナはひょいっと少女を俵のように担ぎ上げた。
     少女は突然自分より幾分か背が低い少年に軽々と抱え上げられた事実に困惑を隠せない。

    「んじゃ、しっかり掴まっとれよー?」
    「え——わああ!!?」

     キズナは少女を持ち上げたまま猛スピードで駆け出した。
     景色を置き去りにするほどの速度で走り回り、時には猿のように飛び跳ねて都の建物を上へ下へと縦横無尽にくぐり抜け、あっと言う間に湯屋へと辿り着く。

  • 68黒炭キズナ22/10/21(金) 23:42:43

    「はぁはぁ……」
    「わはははは! 最近はめっきり城の侍衆と鬼事をする機会がなかったが、久しぶりに都を駆けるのは気持ちがいいな!
     ほれ、湯屋へ着いたぞ。さっさとその身を清めるがよい!!」
    「うわぷ!?」

     キズナはそう言って少女を浴槽に放り込んだ。

    「あっ、ちょっと若将軍! お代金は!?」
    「おう女将! 悪いが城へツケといてくれ! ついでにここに居る客共の分もな!
     ほーれ、お前ら! 今日は風呂がタダだぞ! のぼせ上がるまで楽しむが良い!!」
    「おお!? さすがは若将軍! 太っ腹だァ!!」
    「いよっ! ワノ国一の傾奇者! 大衆の希望!」
    「わははは! そう褒めるなよ、照れるではないか! あと朕のことは若将軍ではなく〝天皇〟と呼べ!」

     豪放磊落なキズナの噂は花の都の住人にとって今や絶好の娯楽である。
     時に城から町へ繰り出し侍達と大立ち回り、時に宝物庫から持ち出した金品を勝手にバラ撒いたりなど、彼が度々引き起こすぶっ飛んだ出来事は、親しみやすい性格なども含め、日々を暗い顔で過ごす住民達にとって希望とも呼べるものとなっていた。

  • 69黒炭キズナ22/10/21(金) 23:43:17

    「ふい〜! いやァ、ひとっ風呂浴びた後の酒ほど美味い飲みモンはないな! お前も飲むか、小娘」
    「飲まない。あと、あなた未成年じゃ……」
    「そんな常識、犬にでも食わせておけ」

     少女はグビグビと酒を飲み干すキズナを奇妙なものを見るような目で見る。

    「……ありがとう、良くしてくれて」
    「んー? 気にすんなァ、朕は国一番の綺麗好きだ。花の都は美しなければならんからな、その景観を損ねるお前が気に食わんかっただけのことだ」
    「そっか。でもちょっと驚いた……都の人はもっと冷たいと思ってたから」

     少女は目を伏せてそう言った。
     彼女の服装、体型から良い暮らしをしていないのは推し量れる。
     そんな小娘を花の都の住人が歓迎しないのも無理からぬことだとキズナは思っている。

  • 70黒炭キズナ22/10/21(金) 23:44:07

    「わはは! よし、では次は服屋だな!」
    「あの、そこまでしてくれなくても……」
    「人の好意は無碍にするな! お前はたいそう別嬪だ、身だしなみを整えれば引くて数多だろう。
     そんなお前を遊郭に紹介すれば朕の評価も鰻登り。果ては遊女ともっとお近づきになれるかも……。
     つまり全ては朕のため! お前は朕の言う通りにしておれば良い!!」
    「……もしかしてあなた、ろくでなし?」

     デリカシーをガン無視する発言に頬をひきつらせる少女に対し、キズナへ当然だと言わんばかりに鷹揚に頷いた。

    「ふふん、これは自慢だが朕はこの国一の傾奇者! 食って騒いで飲んで遊んで暴れて暴れる!〝鬼子〟の評判舐めるでないぞ!!」

     そうして少女は花の都をあっちへこっちへ連れ回される。
     服屋に細工屋、飯屋に賭博場。
     誰もが沈んだ顔をする花の都にあって、彼の周りだけが華やかに映った。

  • 71黒炭キズナ22/10/21(金) 23:44:53

    「……ねえ、ちょっといい?」
    「んー? なんだ、ついに朕に惚れたか!?」
    「いや別に」
    「わはは! ツレない女だ! そこもまた愛いぞ、くるしゅうない!!」

     時は既に夕暮れ。
     少女は豪気に笑うキズナに尋ねる。
     それは勢いに流されて聞きそびれてしまったことであり、敬愛する父親を殺され、全てを失った少女にとっては無視できぬもの。

    「あなたは若将軍って呼ばれてた。それって……今の将軍の跡継ぎってこと?」
    「まァ対外的に見ればそうなるな」

     少女は拳を握りしめる。
     それならば、目の前の気の良い少年は少女にとって許すことのできない仇の息子だ。
     少女がこの質問を躊躇ったのは、自分に何の見返りも求めずこれほど良くしてくれた人が、決して交わってはならない人種であると知るのが怖かったから。

    「じゃあ、もう私に関わらないで。あなたには感謝しているけど、これ以上は……」
    「わはは。おいお前、あれ見てみろ」
    「ちょっと話を聞い——えっ?」

  • 72黒炭キズナ22/10/21(金) 23:45:45

     まるっきり話を無視するキズナに少女は憤慨するも、直後目に入った光景に言葉を失う。
     それは磔にされ、五体を切り裂かれた人間だった。

    「うっ……」
    「おーおー、母上も趣味が悪い。斬創だけではないな。わざと疫病に感染させたか。それに火傷で爛れた痕もある。おまけに腐敗でひどい臭いと見てくれだ」

     夥しいほどの拷問の痕。
     都では将軍に叛意を持った者……いや、叛意を持ったと疑われた者は全てこのような拷問、陵辱の果てに磔にされ衆目の下に晒される。

    「なんで……こんなことが」
    「民衆の意気を削ぐためだな。こんなもんが毎日目に入ってしまっては都の活気が失われるのも道理というもの。
     カイドウという圧倒的な〝武力〟という後ろ盾と光月おでんの公開処刑という前例がある以上、民達を恐怖の名の下に抑圧するという意味では極めて合理的だと言えよう。
     まァ重大な欠陥があるにはあるが、母上は狂っているお人だからな。あの人にとっては些細な問題だろう」

  • 73黒炭キズナ22/10/21(金) 23:46:16

     少女は催した吐き気を必死に堪えた。
     これが我らの、あの偉大なる父の愛した美しいワノ国の有様かと。

    「う、ぐゥ……!」
    「わはは。飯の後に見るものではないな。こういうものは。お前、これを見てどう——おっ?」

     少女は唇から血を流すほど噛み締めて、怒りと憎しみを瞳に募らせてなお、上を向いた。

    「泣きません……!!」
    「……」
    「武士の娘だから……! いつかきっと……父の遺志を継ぐ侍が! この地獄を終わらせるから!!
     その時まで、無様に泣いてやるもんか……!!」

  • 74黒炭キズナ22/10/21(金) 23:46:57

     少女は大粒の涙を零しながらそう言った。
     それを見てキズナは獰猛に笑う。

    「〝神武天・射鉄炎〟」

     キズナがそう呟くと同時、宙空より雨と見紛うほど大量の業火を纏った鉄矢が降り注ぐ。
     一瞬にして見せしめの磔は燃やし尽くされ、辺り一面が火の海の如き有様へと早変わりする。
     突然の出来事に管理、警備をしていた侍達は慌てふためき、下手人であるキズナの存在に気づく。

    「な……! 何をなさっているのですキズナ様!! このようなことをなされては!!!」
    「わはははは!! すまんな、少々気が昂った!!
     だが朕は許される! なぜなら朕が偉いから!!」

     なおも燃え盛り、崩れ落ちる磔の残骸の上に飛び乗り、キズナは驚きに目を見開く少女を見下ろして謳う。

  • 75黒炭キズナ22/10/21(金) 23:47:34

    「貴様の覇気、朕はとくに気に入った! 故に良いことを教えてやろう! 
     ムカつく奴ァ焼いて踏みつけにするのが一番気持ちいい! それにこうすれば天地の果てまで供養の熱は届くであろう!
     〝燃えてなんぼの黒炭に候〟ってな!! わははははは!! わーっはっはっは!!!」
    「い、イカれてるのか!? あのお人は!!?」
    「おう当たり前よ侍共! 朕はもう〝鬼子〟などというちゃちな異名に収まる器ではない!
     花の都に〝鬼神魔王〟の名こそあれ!! わはははははは!!!」

     焼熱の赤を逆光にして、逢魔時に未だ小僧の魔王は愉快でたまらぬとばかりに笑う。
     見る者にとってその光景は地獄を統べる鬼にも見えよう。
     だがそれを見上げる少女の目には、地獄にあってなお中天に熱く輝く太陽のようにも見えた。

    「決めたぞ女! 朕はお前を嫁に迎える! いずれお前がもっと良い女になって出直してきたらな! わーっはっはっは!!!」

     その日の炎を、少女は生涯忘れることはなかったと言う。

  • 76黒炭キズナ22/10/21(金) 23:48:12

    「——それで、なぜあんなことをしでかしたのです? キズナ殿」
    「ノリ!!!」
    「こンの大馬鹿殿がァ!! 今アンタの身柄を預かってんのは〝狂死郎一家〟だぞ!! 下手なことしてクシナに目をつけられたらどう責任とってくれる!!?」
    「なんとかせい」
    「くたばれ終身名誉ロクデナシ!!!」

     狂死郎は耳をほじりながら適当に返事をするキズナに中指を立てた。
     花の都に降って湧いた大騒動。
     胸糞悪い光景を文字通り黒炭になるまで燃やしてくれたのは狂死郎とて胸の空く思いだが、その騒動の火消しを物理的に丸投げされたとあっては文句の一つも言いたくなる。

  • 77黒炭キズナ22/10/21(金) 23:48:44

    「まあまあ、そういきり立つな狂死郎。今日はお前も喜ぶだろう土産を持ってきたのだぞ?」
    「土産ェ?」
    「おう! こいつだ!」
    「あ、あの。はじめまして……?」
    「…………!!?」

     まだ言い足りないと言わんばかりだった狂死郎だが、進み出てきた少女の容姿を見て驚きに目を見開く。

    「キズナ様、それと……お前さん。少し奥で話を」
    「そのつもりだ! 邪魔するぞ!」
    「あの、お邪魔します……」

     遊郭の奥の座敷、普段狂死郎が密会に使用する部屋に三人は集った。

  • 78黒炭キズナ22/10/21(金) 23:49:22

    「え……!? 傳ジロー!!? ほんと!!?」
    「真です〝日和様〟!!!〝怒り〟という妖怪に取り憑かれたこの顔ではクシナはおろか錦えもん達ですら気づきますまい……!
     それが好都合、拙者のことはいつか来る〝決戦〟のその瞬間まで他言無用に願います」

     日和と呼ばれた少女は頼れる味方を得たことに歓喜するが、ハッと気づいたように畳に横になってゴロゴロしているキズナを見やる。

    「でも傳ジロー。あの人にこのことを伝えても良いの?」
    「ああ……構いません。というか、隠し事などあれの前ではやるだけ無駄です。ならば最初から口裏を合わせておくべきかと」
    「そういうことだ。まー、安心せい。朕は今んとこお前らクシナ政権に対する叛逆者の総大将。大船に乗ったつもりで任せておけ!!」

     日和はホッとしたように笑みをこぼした。
     どうやらまだ光月の火は消えていないのだと感じたからだ。

  • 79黒炭キズナ22/10/21(金) 23:49:58

    「そっか……うん。これからよろしく……お願いします、キズナ様」
    「え、そういう敬語キモいからヤダ」
    「……」
    「くォらァ!!! アンタうちの姫様に向かって何たる口の利き方かァ!!!」
    「だって朕それより偉いし」

     甘やかされて育った日和にとって、ナチュラルなキモい呼ばわりは結構心に刺さった。

    「ま、今日は日和も疲れたじゃろ。さっさと寝かせてやれよ。よく寝る娘は胸もよく育つ」
    「黙れ色鬼。ささ、日和様どうぞこちらへ。寝所は既に用意させております」
    「あ、うん。ありがとう傳ジロー。それと、キズナ……さん?」
    「呼び捨てで良いぞー。まァ朕の溢れ出る天皇オーラに身が竦むというのであれば〝陛下〟と呼ばれるのもやぶさかでは——」
    「じゃあキズナ」
    「うむ。そういう割とドライな所も嫌いではないぞ」

  • 80黒炭キズナ22/10/21(金) 23:50:35

     日和は頭と手を地につける。
     今日この日の、精一杯の感謝を伝えるために。

    「今日のことは一生忘れません……!!! ありがとうございました!!!」
    「ん。朕は胸のデカい女が好きだ。せいぜいよく食ってよく寝てよく育て」
    「はい! それでは、また明日!!」
    「おう。じゃーの」

     初対面の時の今にも死にそうな顔の少女はそこにはなく、生きる希望を見つけ、生来の無邪気さを少し取り戻した少女は狂死郎と共に足早に寝所へと退出していった。

  • 81黒炭キズナ22/10/21(金) 23:51:09

     そしてしばらくした後、今度は狂死郎のみが部屋に戻ってきた。

    「……改めて、拙者からも感謝申し上げる。よくぞ日和様を無事に保護してくださった」
    「なーに、ふと目についた上玉が偶々探し物だっただけのことよ」
    「相変わらず人が悪い。貴殿に限って〝気づかなかった〟は有り得ないでござろう。……故に一つ問い質す」
    「よかろう。申してみよ」

     狂死郎は今にも切り裂かれそうな覇気を纏った眼光でキズナを見やる。

    「日和様に取り入った真の理由は? 邪なものであるならば、拙者が刺し違えてでも貴殿を斬る」
    「ふむ。まァ流石に別嬪だったから、では通らぬか」

  • 82黒炭キズナ22/10/21(金) 23:52:08

     キズナもまた鋭い眼光でニヤリと笑いながら狂死郎に視線を飛ばす。

    「強いて言えば〝布石〟だな。〝光月家〟の直系ともあれば使い道は多い。
     朕はこれでも〝黒炭〟だ。情のみで動くはずもない。それ以上に朕自ら動く価値があの女にあったから動いたまでよ」

     狂死郎は脇に置いた長刀に手をかけた。

    「まあ待て待て。そう逸るなよ、狂死郎。
     朕は〝鬼〟だが別にあの娘を取って喰おうなどとは思っておらん。悪いようにはせぬと誓おう」

  • 83黒炭キズナ22/10/21(金) 23:52:44

    「……そうか。その言葉信じよう。失礼を致した、拙者もこれにて」
    「うむ。良い夢見ろよ☆」
    「……」

     狂死郎はため息を吐きながら出て行った。
     部屋に残されたキズナは一人、部屋の窓から花の都の天守を見上げる。

    「……さて、朕の手腕。どこまで理想に届くやら。
     あなたの描く絵図……果たして朕に舵を取れるか。勝負といこうではないか、我が偉大なる母上よ」

  • 84黒炭キズナ22/10/21(金) 23:54:14

     宵闇に伸ばした手の向く先、天守閣の一室にて。
     今日も日記を録るクシナに、騒動の鎮静を報告しに御庭番衆が馳せ参じる。

    「……処刑場での火災事故、一先ず鎮まり申し上げたことをここに」
    「ご苦労」

     クシナは興味がないと言わんばかりに、筆を進めるのを止めはしない。

    「此度の一件、将軍様のご子息と言えどあまりの横暴。処罰などの言伝はございますか」
    「ない。アレはまだ切り時ではない故、放置しておいて構いません」
    「御意に」

     御庭番衆は無駄口を一切叩かず、するりと闇に消えて行った。
     クシナは朧に翳る月を見上げる。

    「……たとえ心も記憶も知れようと、私の〝計画〟は狂わない。あなたの思考も行動も何もかも、全ては私の掌の上。せいぜいあなたの役を全うするが良いでしょう……」

  • 85122/10/21(金) 23:55:11

    今日はここまで。
    明日は投稿きついかもしれんから明後日になりそうです。

  • 86二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 00:03:34

    めちゃくちゃ面白い
    本当にすごいものを読んでいる

  • 87二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 00:04:20

    今回も面白かったです!クシナちゃんは本当にキズナくんを愛してないのかな...

  • 88二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 00:22:54

    キズナくんは多分お母さんに自分のことを
    認めてほしい、褒められたい、そいう想いが根底にある気がする。
    肝心なクシナちゃんの心の内はまだわからんけど''最後の希望’’って
    まで言ってるからキズナくんに何かしら賭けてるんだとは思う
    それが計画のことなのか、はたまた、、、
    今回も面白かったです!続き待ってます!

  • 89二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 01:23:04

    今回もとても面白かったです!もう城から動く必要無い立場でやる事は粛清と日記書くしか無いクシナと野望を叶えるため物語や登場人物を引っ掻き回す息子君のダブル主人公とても良い対比。
    あれから二十年後、と飛ばさずモモが戻るまでのワノ国の描写を描いて話に厚みを出してて好きです。

  • 90二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 09:41:17

    保守

  • 91二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 17:18:42

    保守

  • 92二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 17:48:11

    今更だけど、イッチの名前がキズナくんの名前だと気づいた。1スレ目から伏線張ってあったのか

  • 93二次元好きの匿名さん22/10/22(土) 21:48:06

    保守

  • 94二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 04:57:26

    保守

  • 95二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 11:09:21

    待ってるで

  • 96二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 17:02:38

    保守

  • 97二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 18:54:27

    もしかして息子くんは母親のクシナちゃんがこの世界で起こりうることをわかってる??

  • 98二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 20:04:32

    >>97

    心読めるからか…

  • 99122/10/23(日) 23:44:25

    今回あんま書けてないから短いけど投下していきます。

  • 100黒炭キズナ22/10/23(日) 23:44:48

    ★☆★

    「……ヒマ!!! なんか面白いことせい狂死郎〜!!」
    「それ宴会で言うと嫌われるでござるよ」

     キズナと狂死郎が手を組み十年近くの月日が流れた。
     その間、彼らは秘密裏に決戦に向けての準備を整えていた。

    「……と言っても、予想以上に早く終わっちまったなァ」
    「今はやれることが少ない故、致し方なかろう。我らは機が満ちるまで息を潜めてただ待つのみ」
    「それがつまらんと言っとんのだ」

     キズナ達は鬼ヶ島や将軍家に自由に出入りできる立場を使っての情報収集ぐらいのものである。

  • 101黒炭キズナ22/10/23(日) 23:46:07

    「というか今更の話、別にこれなら拙者とアンタが組む必要特になかったのではござらんか?」
    「いや同志がいた方がお互い気が楽だろ? それに朕とお前が懇意にする、というだけで意味がある。あーでも、そいつは全てにカタがついた後の話ゆえ、今はどうでもいい。頭の隅っこに放り込んどけ」
    「……まァこの後に及んでアンタを疑いはしねェが」

     なんだか釈然としない様子の狂死郎。
     寝っ転がったまま退屈そうに、遊郭の窓から空を見るキズナ。

    「ったく、朕は待ちくたびれたぞ。そろそろ来てもよい頃合いだろうに。こいつはいっぺん腹いせにブン殴ってやらねば気が済まんわ! ちょいと鬼ヶ島まで行ってくる!!」
    「……はて、誰か待ち人が? 決戦まで未だ4年と少しだが」

  • 102黒炭キズナ22/10/23(日) 23:46:31

    「あっ、そういえばお前には言ってなかったな。朕うっかりしてた」

     狂死郎の背に嫌な汗が流れる。
     こういう時のキズナは決まって爆弾を落としにくると長年の付き合いで察してしまえるのだ。

    「そろそろ朕この国出てくわ! 二年後までには戻るからそれで勘弁な!!」
    「この国の将軍候補にゃうつけの殿しかいねェのかァ!!!?」

     今日も元気よく、狂死郎の悲鳴が座敷中に響き渡ったとさ。

  • 103黒炭キズナ22/10/23(日) 23:47:08

    「——それでわざわざ鬼ヶ島くんだりまでやってきて真っ昼間から酒盛りしてるの? キズナ」
    「おーそうだ。お前も一献いくか? ヤマト」
    「じゃあ頂こうかな。こっちも退屈してたんだ。話し相手が来て助かるよ」

     ヤマトは盃に注がれた酒をぐいと飲み干した。
     キズナとヤマトは幼い頃から親の付き合いでよく顔を合わせており、お互い馬が合うこともあってすぐに意気投合することとなった。
     百獣海賊団において居場所のないヤマトにとって、キズナは唯一と言っていいフラットに会話できる相手である。

  • 104黒炭キズナ22/10/23(日) 23:47:50

    「それにしてもえらい静かだな。カイドウは出払っておるのか」
    「うん。幹部も全員連れて遠征中さ。キミ、城に住んでるのに知らなかったの?」
    「朕、今離宮ぶっ壊して飯抜き中だから」
    「あっはっは! 懲りない奴だな、キズナも!」

     ヤマトはキズナの自由奔放さに〝光月おでん〟を見出していた。
     おでんは自分だが、キズナは自分よりもおでんであるので、ヤマトはキズナのことを共におでんを目指す良きライバルのように思っている。

  • 105黒炭キズナ22/10/23(日) 23:48:25

    「……僕はちょっと焦ってるんだ。キズナは会うたびにどんどんおでんに近づいている気がするからさ」
    「人を勝手におでんにするのやめろ」
    「対して僕はこの歳になっても錠に繋がれてこのザマさ。これじゃあ僕は胸を張って〝光月おでん〟を名乗れない」
    「うーん、まず〝光月おでん〟を目指すっていう路線から間違ってると朕は思うなァー」

     キズナは呆れたようにそう言葉をこぼした。
     都合の悪いことは馬耳東風が基本姿勢であるヤマトには何を言っても無駄だと心底理解しているという風だった。

  • 106黒炭キズナ22/10/23(日) 23:49:00

    「まァお前がおでんを目指すのは勝手だが、おでんそのものに成ろうとするのは止めておけ。
     人は皆、生まれながらに自由だ。一つのことにこだわりを持つことは結構。しかしそれだけに固執するのは不自由でもあると自覚しておけよ」
    「わかってるさ。僕は僕なりのおでんを目指す!」
    「なら好きにしろ。人生は案外長いものだ。お前にはお前のペースというものがある。
     朕のように生き急ぐことはない。己の行く道を見定めるのに長いも短いもないのだからな」

     ヤマトはキズナのことを空気の読める男だと思っている。
     普段はその場の空気を読んだ上でそれをぶち壊しているが、ある程度気心の知れた者が相手だとさりげなくフォローをしてくれるような根の甘い奴なのだと。

  • 107黒炭キズナ22/10/23(日) 23:49:28

    「ありがとう、忠告は受け取っておくよ。ところで、どうして鬼ヶ島までやってきたの? 別に理由がなくても構わないけどさ」
    「いや、理由はあるぞ。朕はこの鬼ヶ島に待ち人を求めに来た」
    「待ち人?」

     キズナはニヤリと口端を吊り上げた。

    「おう。しかしその待ち人がいつ来訪するか正確にはわかっておらんかったゆえ、ダメで元々、痺れを切らして朕自ら出向いてやったのだ。
     そして朕はやはりツイている男よ。お目当ての男が来なすった」

     その直後、鬼ヶ島の正面入り口。
     多くの海賊が哨戒する大門より、轟音と共に火の手が上がる。
     襲撃犯はこの地に流れ着いた、畏れ知らずの炎の男。

    「邪魔するぜ。ここがカイドウの屋敷であってるか?」

     〝火拳のエース〟が鬼ヶ島に乗り込んだ。

  • 108122/10/23(日) 23:50:16

    今日はここまで。
    明日は上げられればいいんだけど、無理だったら明後日になります

  • 109二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 23:51:02

    お疲れ様です!!やっぱキズナくんはクシナちゃんがこの世界で起こることを全てわかっているのを知ってそうだな....

  • 110二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 01:03:03

    うおー!!これからどうなるのか楽しみ。
    キズナくんこれ白ひげに会うんかな?

  • 111二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 07:57:34

    保守

  • 112二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 09:17:45

    保守

  • 113二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 17:56:52

    保守

  • 114二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 20:23:13

    保守

  • 115二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 00:18:18

    保守

  • 116122/10/25(火) 00:34:37

    すまん! まだあんまり書き進められてないから今日は投稿できないっす!

  • 117二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 06:34:54

    保守

  • 118二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 16:05:10

    これもしかしてエース救済あるか!?
    まあ、未来を変えるなら不確定要素は必要だもんな。どうなるんだろう。

  • 119二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 22:47:22

    保守

  • 120二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 22:48:07

    保守

  • 121122/10/25(火) 23:58:22

    ちょい短いけど書けたんで投下しまーす!

  • 122黒炭キズナ22/10/25(火) 23:58:45

    ★☆★

    「〝火拳〟!!!」
    「ぐわァ〜〜〜!!!?」

     戦力の中枢がごっそり抜けた鬼ヶ島。
     今この島に〝王下七武海〟に推されるほどの男である〝火拳のエース〟を止められる海賊などいるはずもなく、既に彼は中心部近くまで足を踏み入れていた。

    「なんだ!? この揺れは!」
    「へェ、思ってたより強そうだ。これは期待できるなァ」

     ヤマトはその実力に驚き、キズナは興味深そうに見聞する。

    「キミ、この襲撃を知ってたの?」
    「いつ来よるかは知らなんだ。だが〝噂をすれば陰〟と言うだろう? いっちょこっちから動いてやれば運命が後押ししてくれるかもしれんとな。
     実際にこうして読みが当たった。いやはや良縁を感じるものよなァ」

  • 123黒炭キズナ22/10/25(火) 23:59:21

     しみじみと語るキズナだが、すぐさま獰猛な笑みを浮かべ、猛る気配の方へ向き直る。

    「だが朕を今まで退屈させた罪は重い! この憂さはきっちり実力で晴らしてもらおうか!!」
    「あー、キミが珍しく〝二刀〟を携えてきたものだから珍しいと思ってた。戦場になると思ってたんだね」
    「〝大通連〟と〝小通連〟のことか。いかにも!
     朕は文化人ゆえ平時において刀を持たんが、戦場であれば話は別よ。久しぶりに全力で暴れるとしよう!!」
    「僕も同行するよ。この島を守る義理はないけれど退屈していたからね」
    「良いな! どうせならば三つ巴でもやるとするか!!」

  • 124黒炭キズナ22/10/25(火) 23:59:56

     キズナはそう言うやいなや上空に飛び上がり、そのまま空中にいるにも関わらず、まるで地を踏み締めるかのように天を駆ける。

    「やはり〝天足通〟は便利だな! あっという間に射程距離だ!! そォら行くぞ!!」
    「!? なんだ、あいつ……!!」

     急激に接近したキズナをエースもまたいち早く察知する。
     遥か上空から落下しながら、キズナは自身の〝動物系幻獣種〟の力を解放していく。
     二刀を抜き放ち、その刃に雷鳴を走らせ一条の流星のような雷と成す斬撃。
     エースは両腕に灼熱の炎を纏って迎撃する。

    「〝彗星天・神怒河〟!!!」
    「〝神火不知火〟!!!」

     二人の男の凄烈な技の衝突は爆風となってカイドウの屋敷を瞬く間に瓦礫へと変える。

  • 125黒炭キズナ22/10/26(水) 00:00:25

    「わははは! 待ちくたびれたぞ海賊! 歓迎しよう〝ワノ国〟へ!!」
    「なんだ、こいつ……〝鬼〟か何かか!!?」
    「察しが良いな、いかにも! 朕はヒトヒトの実 モデル〝大嶽丸〟を喰ろうた〝鬼人間〟!!
     ワノ国に〝鬼〟の伝承数あれど、強大な神通力を繰り最凶最悪と呼ばれる〝鬼神魔王〟が朕の能力!!」

     キズナは距離を取って二刀一対の刀、〝大通連〟と〝小通連〟を構える。
     その額には平時には存在していなかった禍々しい〝角〟、八重歯は肉食獣のような〝牙〟となり、元より強靭な肉体はさらに二回り以上も巨大な威容の巨躯となる。

  • 126黒炭キズナ22/10/26(水) 00:00:50

    「そしてここに名乗りを上げよう! 朕の名は〝黒炭キズナ〟!! この国の次期〝天皇〟である!!!」
    「……! へェ、こりゃ強えな! 雑魚ばかりで拍子抜けだった。骨のある奴が出てきてくれて何よりだ!!
     おれの名は〝ポートガス・D・エース〟!! この島に四皇〝百獣のカイドウ〟の首を取りに来た!!!」

     互いに堂々と名乗りを上げる。
     両者共に王の座を求める者ならば、自身の名にこそ絶対の意味がある。

    「わはは、良い名乗りだ益々気に入った!! だがしかし、この場の強者は朕一人ではないぞ!」
    「あァ……!?」

  • 127黒炭キズナ22/10/26(水) 00:01:13

     次の瞬間、バキバキと音を立てて瓦礫の山が端から端へと凍りついてゆく。

    「〝無侍氷牙〟!!」
    「うおっ、氷か! でもおれ火だから大丈夫だ」
    「えっ、ずる。朕普通に避けなきゃなんだけど」

     彼らに割って入ってきた者もまた新世界有数の実力者。
     カイドウの実の娘にして自称〝光月おでん〟

    「僕の名は〝ヤマト〟!! キミ、キズナと張り合うなんて強いんだね!」
    「また強そうな奴! でもカイドウじゃねェのか」
    「父達は遠征中だ! 今この島には幹部の1人もいない!」
    「父ィ!?」

  • 128黒炭キズナ22/10/26(水) 00:01:37

     エース率いる〝スペード海賊団〟は鬼ヶ島へカイドウの首はもちろんのこと、拐われたワノ国の民を救出しに来たと言う。
     ヤマトが間に入ったことで一時休戦。
     その後まだ暴れ足りないとキズナ、エース、ヤマトは改めて三つ巴の戦闘を繰り広げた。

    「〝陽炎〟!!」
    「〝鳴鏑〟!!」
    「えっ、同時に挟み撃ってくんのは違くない?〝仁徳天・大鷦鷯〟!!」

     炎や氷、雷が飛び交い、斬撃や衝撃波が宙を舞う。
     さながら災害同士のぶつかり合い。
     キズナは二人の挟撃を間一髪で両の刀で以って防ぎきるが、衝撃で距離が開く。

  • 129黒炭キズナ22/10/26(水) 00:02:09

    「……おいヤマト! なんでお前は手錠なんか付けてやがる!?」
    「これは僕の父が島から出さないように付けたもので……」
    「親は選べねェぞ、ヤマト」
    「何を……!?」
    「そんなに親父を嫌ってんのに、手錠はともかく何〝心〟まで繋がれちまってんだ!!!」
    「ッ……!」

     カチン、というヤマトがプッツンした音がキズナには聞こえた。
     ヤマトは彼の言に反発するかのようにカイドウの力の象徴、鳥居に絡みつく龍の首を叩き落とす。

    「ぼくだって……!! 海に出て冒険してみたい!! おでんのように自由に生きてみたいよ!!!」

  • 130黒炭キズナ22/10/26(水) 00:03:01

    「よく言った!!!」

     エースは満足気に笑い、炎の拳で金の龍を殴りつける。

    「そうだ! 親は選べねェが生き方は選べる! おれ達海賊はだからこそ自由だ!!」
    「おお! 良いこと言うねエース! 僕もキミのこと気に入ったよ!」
    「おれもだ! お前らとは馬が合——」
    「隙ありィーーー!!!」
    「「キズナ!!?」」

     キズナは〝神通力〟を使用して気づかれないようこっそり移動、エースとヤマトが互いの出生に関するあれこれで気が逸れている隙を突いて思い切り刀の峰でぶん殴った。

  • 131黒炭キズナ22/10/26(水) 00:03:20

    「わはははは! 朕の勝ち! 朕の勝ち〜〜〜!!!」
    「ごっは……! てめェ、汚ねェぞ、キズナ……」
    「お、ごふ……! この、卑怯者ォ……!」
    「戦いの最中に気ィ抜く方が悪いわ! さーて、勝利の美酒に酔いしれるとするかァーー!!」

     こうして火拳のエースによる鬼ヶ島襲撃事件はひとまずの収束を果たしたとさ。

  • 132122/10/26(水) 00:04:16

    今日はこれまで。明日は投稿できないのでまた待っててくれ

  • 133二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 00:04:35

    もうキズナ君がおもしれー男すぎて好きだ

  • 134二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 00:04:58

    キズナがほんっとうに良いキャラしてるわ

  • 135二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 00:06:28

    お疲れ様です!キズナくん十中八九クシナちゃんの心を絶対読んでるわ。だからエースが来ることも知ってるんだ。クシナちゃんが未来で起こりうる出来事を全て知ってるってことはこれは親子の究極の騙し合いになってきたな..

  • 136二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 01:14:43

    このキズナくんのクソガキ感マジで好き

  • 137二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 06:31:00

    なるほど、鬼だったか。
    ……結局桃太郎に退治されませんかねェー!!!?

  • 138二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 12:56:26

    保守

  • 139二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 16:41:59

    ほしゅ! キズナくんがいいキャラすぎる

  • 140二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 22:37:58

    星ゅ

  • 141二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 07:27:18

    保守

  • 142二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 15:49:10

    ほしゅ

  • 143二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 20:36:29

    ほしゆ

  • 144二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 23:27:09

    ごめーん!まだあんま書けてないんで投稿明日でオナシャス!
    ほんとすまんな!

  • 145二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 07:38:36

    保守

  • 146二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 16:10:30

    保守

  • 147二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 16:12:11

    >>144

    ハーメルンかピクシブに早めにあげといた方がいいよ。無断転載動画される

  • 148二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 23:08:37

  • 149122/10/29(土) 00:05:13

    >>147

    マ? 考えとくわ。もし上がるとしたらハーメルンの方かな。普段そっちで書いてるし。

    んじゃ投稿してくよー。

  • 150黒炭キズナ22/10/29(土) 00:06:29

    ★☆★

    「宴だァ〜〜!! 騒ぐのは3人しかおらんけど!」
    「うおォ〜〜〜!!!」
    「元気いいねキミ達……僕まだ横っ腹が痛いんだけど」

     廃墟の如き有様と化した鬼ヶ島のカイドウ邸にて、下手人の3人は賑やかに杯を交わした。
     元より3人の飾らない気質は相性が良く、互いに拳を交わした相手ということもあり大いに盛り上がり意気投合した。

  • 151黒炭キズナ22/10/29(土) 00:06:54

    「惜しいなヤマト。こんなに強くて馬が合うのに!」
    「ああ。コレさえ取れたらいつか必ず! 僕だって海へ!!」
    「わはは! お前にゃまだ外海は早いだろ! もう少し世間を知ってから海へ飛び出すんだな、小娘!!」
    「何をー!!?」

     キズナの煽りにヤマトは憤慨する。
     その言葉の内に〝お前はワノ国のことすら知らないことが多いのだから、もっと内側を知った後に外を知れ〟という意味が含まれることにヤマトは薄々気が付いたが、それはそれとして煽られたことに腹が立つようである。

  • 152黒炭キズナ22/10/29(土) 00:07:40

    「そういやキズナ。お前あの2本の刀はどうしたんだ? 今は持ってねェように見えるが」
    「朕は戦闘時以外、人前に得物を持ち出すことはない。多分あそこら辺に放っぽいてあるぞ」
    「相変わらず不用心だなぁ、キミは」
    「だってアレ妖刀だし。下手に朕以外が触れようもんならそりゃ恐ろしいことが起こるぞ〜」
    「別の意味で不用心だろそれは」

     エースはちょっと引いた。
     そんな物騒なもんを無造作に置いとくんじゃねェよと。

  • 153黒炭キズナ22/10/29(土) 00:08:06

    「まーこれは朕にとってのこだわりみたいなもんでな。ほら、朕ってこの国の次期指導者じゃん? 国家の元首たるもの目指すべき〝国の形〟って奴やつがある」
    「〝国の形〟……ね」
    「そうだ。朕の目指す国ではな、くだらん争いなど起こらんのだ。それが理想だ。
     ならお前、争いのない国の王が人殺しの武器ぶら下げてよォ。酒なんざ呑めるかってんだ!!」

     キズナは杯をぐいっとあおり、ぷはーっと息を吐いてそう言った。
     エースもまた、そんな彼にニヤリと笑い返す。

    「いいなァ、その国。おれは気に入ったぜ! キズナ、絶対叶えろよその夢!!」
    「言われるまでもない。既に決定事項だぞ! しくじってたまるものかってんだ!!」

     そこで改まってキズナは言う。

  • 154黒炭キズナ22/10/29(土) 00:08:38

    「ま、朕なりに色々考えた。そこでなエース。朕をお前の船に乗せてくれんか」
    「ちょっ!? キズナ、僕にはまだ早いとか言ってたくせに一人だけ抜け駆けかい!? ずるいじゃないか!!」
    「だって朕、お前と違ってもう大人だもーん!」

     べーっ、と舌を出してキズナは煽った。
     ヤマトは思い切り金棒を頭に振り下ろした。
     キズナは地面に縫い付けられ、頭にたんこぶを作りながら話を続ける。

  • 155黒炭キズナ22/10/29(土) 00:09:10

    「朕はこの十五年近くで家出を利用し、ワノ国を大体漫遊し尽くした。もうこの国で見るべきものは全て見たのだ。
     であれば次に見るべきは国の外。五年後……この世界は大きく荒れる! その時のために、国の外でやっておかなければならないことが朕にはある。
     決して遊び気分で言ってるわけじゃないんだぞ、ヤマト」
    「むぅ……」
    「それはそれとして土産はなんか希望あるか? 朕的には魚人島辺りの海産物とか非常に興味あるんだが」
    「やっぱりキミ、存分に楽しむ気なんじゃないか?」

     ヤマトはやれやれといった風に座り直した。
     自分も頑固だという自覚はあるが、馴染みであるキズナもまた相当な頑固者だと知っているからだ。
     キズナの言い分には理しかないのだし、誰かの冒険を自分に留める理由はない。
     自然に送り出してやろうとヤマトは思った。

  • 156黒炭キズナ22/10/29(土) 00:09:53

    「そういうことだ、エース! 返事を聞こうか!!」
    「それこそ言うまでもないだろ? いいぜ、キズナ! おれの船に乗れよ!!」
    「小気味良いな! 流石は朕の見込んだ男よ!」

     エースとキズナはがっちりと握手し、ここに航海を共にする仲間となった。

    「おれ達はカイドウがいねェならこの国にはもう用はない。ログも溜まったしここに長居する気はねェが、何かこの国に用事でもあるんなら先に片してこいよ」
    「わはは! そんなものはない! 後のことは頼れる部下に引き継いできた! 上手くやってくれるだろう。母上にも言うことはない。どうせ全部筒抜けだろうしな!」
    「じゃ、すぐに出港だな。ヤマト! お前も達者でな。カイドウにはよろしく伝えといてくれ」
    「伝えなくても怒り心頭だろうさ。じゃあエース、キズナ。僕もいつかキミ達と共に海に出る! それまで心して待っていてくれよ!!」
    「「おう!!」」

  • 157黒炭キズナ22/10/29(土) 00:10:37

     そうして互いに酒を酌み交わした若者達はそれぞれの道を進んでいく。
     ある者は父を超えるため、海の王を目指し。
     ある者はロマン溢れる冒険を夢に。
     そしてある者は、国に燻る炎を絶やすために。

    「……スペード海賊団は出港したようですね。あれもとうとう海にに出ましたか」

     そして〝花の都〟の天守にて、遥か彼方を見やるクシナもまた、残り五年に近づいた決戦の日を夢想する。

    「これから世界は激動する。もはや誰にも止められない時代のうねり……予測するのは私でも困難か」

     がらんどうの瞳孔にどす黒い炎を猛らせ、蛇は誰にも悟らせず、ひっそり毒牙を磨き続ける。

    「化かし合いといきましょう……虫の息の〝ワノ国〟よ。お前の息の根は、あと少しで止めてやる」

  • 158122/10/29(土) 00:11:47

    今日はこの辺で終わり。
    次回から時間が飛んでいよいよ原作ワノ国編の時間軸に入ってく予定です

  • 159二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 00:14:50

    お疲れ様です!次回が楽しみ!

  • 160二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 00:36:33

    これでキズナくんは外の世界を実際に見て体験する訳であくまで知識として知っているクシナちゃんとは、そこがアドバンテージになるんかな、、
    クシナちゃんもまだ底が見えんしいい勝負になりそう
    それはそれはそれとしてクシナちゃん死なない?大丈夫?
    本編だとそのポジションめっちゃ危険だけども

  • 161二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 08:52:56

    保守

  • 162二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 13:05:09

    保守 イッチのコテが文章投下する時とする前で違うことに今更気付いた

  • 163二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 22:05:57

    保守

  • 164122/10/30(日) 00:07:57

    ごめんなー! ちょっと今週の土日忙しくて投稿できねェかもしれん!
    月曜にはいけると思うから待っててネ!

  • 165二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 11:17:39

    保守

  • 166二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 17:02:48

    ほしゅ

  • 167二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 22:00:49

    保守。

  • 168二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 06:59:51

    まってる

  • 169二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 07:31:16

    大嶽丸が坂上田村麻呂の刀振り回すのは因縁を感じますね

  • 170二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 15:28:09

    保守

  • 171122/10/31(月) 20:50:33

    いつもよりちょっと早いけど投下開始しまーす!

  • 172黒炭キズナ22/10/31(月) 20:51:38

    ★☆★

     〝花の都〟の天守閣に、一通の手紙が届けられた。

    「……時は来た、ということですか」
    「あァ? そりゃどういう意味だ、クシナ」
    「錦えもん、カン十郎、雷ぞう、菊の丞、モモの助、その5人が20年前のあの日から時を超えてやって来た……ということです」
    「ほォ、あの燃える城から……能力者ってのァ厄介なもんだ」

     カイドウと酒を酌み交わすクシナは淡々と、時を超えて復讐の刃を掲げる侍達の来訪を伝えた。

  • 173黒炭キズナ22/10/31(月) 20:52:02

    「海岸を見張り続けなさい。出国する者がいる筈です」
    「は、はっ!!」
    「殺すなよ? この20年で奴らに聞きてェことができた」

     クシナが配下の侍に指令を出すのを見ながらカイドウは言葉を続ける。

    「お前んとこのバカ息子はどうしてる?」
    「今は狂死郎の遊郭にでも入り浸っているでしょう。一年前に外海より帰ってきてから、相も変わらずですよ」
    「ウォロロ、結構じゃねェか。あいつとなら一戦交えてもそれなりに楽しめそうだ」

     ゴクゴクと瓢箪に満たした酒をあおりカイドウは不敵に笑う。

    「決着を付けようぜ。おでんの残り火……せいぜい盛大な〝祭り〟にしようじゃねェか」
    「きっと退屈しませんよ。私も今回は、本気で取りに行きますから」

  • 174黒炭キズナ22/10/31(月) 20:52:47

    「殿下ー!!!」
    「お前は出会い頭に飛び蹴りかましてくんのいい加減やめろ、日和」

     顔面直撃コースに飛来してくる成人女性の飛び蹴りを片手で面倒に受け止める。
     キズナは頂上戦争に参加した1年後にワノ国に舞い戻っていた。
     現在は狂死郎との打ち合わせ中である。

    「ついに20年経ちましたな。随分と長かった……」
    「朕も中々感慨深いぞ。それに武者震いが止まらんわ。我が人生において最大の晴れ舞台だ……ぶっちゃけ頂上戦争よりも緊張しておる」

  • 175黒炭キズナ22/10/31(月) 20:53:14

    「殿下が2年前にご参加致したという、世界最大規模の戦争でしたよね、確か」
    「おう。あれでだいぶ〝流れ〟を変えられて良かった。おかげで今日の対カイドウ用の戦力として大いに期待ができる」

     しみじみと頷くキズナ。
     彼はエースの船に乗った後、白ひげ海賊団の2番隊にエースの部下として所属。
     海軍本部と白ひげ海賊団との間で繰り広げられた頂上戦争で値千金の活躍をした。
     白ひげ海賊団の残党と連絡を取り合えるキズナは、討ち入りの際により強力な助っ人達を呼び集めることが可能となっていた。

  • 176黒炭キズナ22/10/31(月) 20:54:11

    「いやはやあんたがワノ国を本当に飛び出して行った時は本当にブチ殺してやろうかと思いましたが、結果的に良い方向に転がって安堵するばかりでござる」
    「ちょくちょく不敬になってない? 朕これでもお前の上司よ?」
    「ろくでなしの上司なんぞこの程度の扱いでよいでしょう」
    「わはは! 段々と遠慮がなくなってきて朕は嬉しいぞ!」

     キズナはからからと笑った。
     しかしすぐに表情を引き締めて狂死郎に向き直る。

    「此度の戦、おそらく頂上戦争に匹敵する戦力が集まる。最終討伐目標はカイドウと我が母上だ。この機に必ずこの二人の首を獲らねばならない。できれば同日中にな」

  • 177黒炭キズナ22/10/31(月) 20:54:50

    「それなのですが、二手に戦力を分けるという話であったでしょう? カイドウへ外界からの助っ人達を、クシナに我々侍をと。
     この際カイドウに両戦力を集中し、確固撃破する方が良いのではありますまいか。クシナは確かに強いが、カイドウ並ではない。カイドウを倒せる戦力が集まるならば、奴より弱いクシナを殺すなど造作もないのでは」
    「お前母上舐めすぎじゃない? 以前華麗にぶっ飛ばされたの忘れたの?」
    「ぬ……」

     意地悪くキズナは狂死郎を諌めた。
     赤鞘の侍7人がかりで返り討ちに遭った狂死郎は呻きながら押し黙るほかない。

  • 178黒炭キズナ22/10/31(月) 20:55:12

    「まァお前の意見も妥当ではある。失敗できぬからこそ確実をきして戦力を集中させるのも理に適っている。
     だがなァそれは母上の〝底〟が見えていたらの話よ。今の今まであの人を戦場に引っ張り出し、本気で戦わせたことのある者はいないゆえ……どんな〝奥の手〟を隠し持っているかわからんのだ」
    「……その〝奥の手〟とやら。カイドウの武力に匹敵すると?」

     キズナは神妙に頷いた。
     それは生まれてこの方、ずっと自身の頭上に居座る母に対するある種の信頼が故でもある。
     あの老獪な女が、そんな常人でも手の届く場所に自分の懐を晒すものかと。

  • 179黒炭キズナ22/10/31(月) 20:56:01

    「朕が外海に出払っている間、母上が数ヶ月間ある人物を客人として招聘したと聞く」
    「うむ……確か名を〝ベガパンク〟と」
    「世界最高の科学者だそいつは。母上がその男に何を頼んだのかは朕をしてもようと知れぬ。予感がするのだ。母上を軽んじて放っておくのは非常に拙い、とな」
    「なるほど。外海の事情には拙者よりもあんたの方が詳しい。水を差して悪かった」
    「良い。軍議に正解はないからな、お互いに落とし所を探っていこう」

     狂死郎も納得したように頷く。
     彼もまた長い時をキズナの協力者として生き、信頼しているから任せているのだ。

    「それにな、カイドウはあくまで外様の戦力に過ぎぬ。国の未来はその国に生きる者達の手で決着をつけるべきだと思わんか?」
    「違いない。……おでん様の遺志、必ずや我々が果たすのだ。例えこの命に替えてもな」
    「……ま、期待しとるぞ。狂死郎」

  • 180黒炭キズナ22/10/31(月) 20:56:36

     数多の思惑渦巻く花のワノ国。
     海賊、侍、将軍、民衆。
     それぞれの理想と仁義を胸に、時は過ぎ去り数ヶ月。

    「……ん〜? ワノ国か? ここ。あいつらどこ行った? 確か大渦に呑まれて……」

     これから始まる大戦。
     その鍵を握る海賊〝麦わらのルフィ〟が遂にこの地に流れ着く。

    「ま、いいや。あいつらなら大丈夫だろ。まずは飯だァーーー!!!」

     それを合図に、停止した20年の時の幕が今上がる。

  • 181122/10/31(月) 20:57:30

    今日はここまで。
    明日は忙しいので投稿できないと思うから明後日まで待っててけろ

  • 182二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 20:58:21

    これワンチャンエース無事か?

  • 183二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:38:28

    FilmZ観たせいでなんかクシナさん一本筋を通して逝きそうって思ってしまう。

  • 184二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:41:17

    投稿主が黒炭キズナになってるのはそういう事か。心を読む能力......

  • 185二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 22:59:33

    カン十郎の存在はキズナくんにバレてるのかな

  • 186二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 23:15:00

    と言うかクシナさん(になる前の前世だけど)がどこまで知っているかによるけどもしかしてプルトンの在処とか知ってる?

  • 187二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 23:25:10

    >>186

    何巻まで読んでるかとかか

  • 188二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 23:44:03

    >>187

    そう

    最新話辺りまで読んでるならワの国の本来の構造とかプルトンの在処とか知ってるよなあって

  • 189二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 07:12:05

    ワノ国編まで読破した設定だしそこら辺は普通に知ってるでしょ

  • 190二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 13:49:28

    追い付いた〜
    1スレ目から投稿時にキズナだったり仕込みが多そうでワクワクしている

  • 191二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 20:36:29

    追い付きましたわよ~
    キズナ殿下、「ワノ国」を破壊するということは改革成功の暁に国名を改めるのではなかろうか
    「日ノ本」とかになるんかな

  • 192二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 05:30:27

    保守

  • 193二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 16:11:20

    保守

  • 194二次元好きの匿名さん22/11/02(水) 21:46:20

    白ひげの船に同船していたって事はイゾウとも顔を合わせてるんだよな…

  • 195122/11/03(木) 02:16:33

    よく考えてみたらワノ国編のプロットガバガバだったんで、組み直すためにちょっと時間ください!
    原作読んで細部を詰めたいんすよね。
    というわけで2、3日くらい待っててネ!

  • 196二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 11:04:13

    ほしゅ

  • 197二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 11:05:20

    せめて次スレをたててくれスレ主

  • 198二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 19:52:50

    保守

  • 199122/11/03(木) 22:24:21
  • 200二次元好きの匿名さん22/11/03(木) 22:41:15

オススメ

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