- 1スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 18:45:04
1作目↓
【CP注意】【SS】ルフィと謎の部屋に閉じ込められた…|あにまん掲示板『XxXXしないと出られない部屋』ルフィ「???」ウタ「???」ルフィ「なぁウタ、壁に書かれてるこれって何だと思う?」ウタ「……始めの数文字にモザイクがかかって読めないから、訳わかんないよ」ルフィ「だ…bbs.animanch.com2作目↓
【CP注意】【SS】ルフィとまた謎の部屋に閉じ込められた|あにまん掲示板以前投稿したSSと同じ設定でルフィとウタが謎の部屋に閉じ込められる話ですhttps://bbs.animanch.com/board/1012086/『1000点稼ぐまで出られない部屋』ウタ「……また…bbs.animanch.com3作目↓
【CP注意】【SS】ナミと謎の部屋に閉じ込められた…|あにまん掲示板1作目↓https://bbs.animanch.com/board/1012086/2作目↓https://bbs.animanch.com/board/1062466/ルフィとウタが謎の部屋に閉じ…bbs.animanch.comルフィとウタが謎の部屋に閉じ込められる話の続きになります(4作目)
今回は冒頭からウタ視点で話が進むので、ウタとルフィの会話でのやり取りは少なめです。
※タイトルに【CP注意】【SS】を入れ忘れていたので立て直しました。すいません。
- 2二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 18:45:40
今度こそ大家さんは屈さずにいられるか
- 3スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 19:00:46
ナミと謎の部屋を満喫して数日が経った。
私は今、サニー号の自分のベッドに横たわったまま謎の部屋について考えを巡らせている。
ルフィと2回、ナミと1回の計3回過ごした謎の空間。
いくら世間知らずの私でも薄々感じていることがある。
あの部屋は私にとって都合がいいことばかり起こっている。
初めて閉じ込められた時は不安な気持ちになったけど、最終的にはルフィと大切な約束をすることができた。
2回目は色々な部屋でルフィと楽しい時間を過ごすことができた。『大聖堂』で幼い頃の夢の続きを見ることができた。
3回目はナミとたくさんおしゃべりすることができた。ナミが作ってくれたお酒は美味しかったし、ナミが私の夢を応援してくれて嬉しかった。
結局3回とも無事に脱出できたし、脱出後も特に被害は出ていない。
寝ている数時間の間に大体1日分の経験を楽しめているのだから、むしろまた閉じ込められたいなんて考えてしまうほどだ。
でも、前回ナミに危機感が無いと言われたように、確かにここまで私に都合がよいことばかり起こると何か裏があるような気がしてくる。
本当に何なんだろうあの部屋は? - 4二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 19:02:05
煮込む
- 5スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 19:02:15
私にとって都合の良いことが起こる夢の世界。
はたしてあの空間は本当にウタワールドとは無関係なんだろうか?
謎の部屋は現実世界と時間にズレがあったり、私の知らない物があったり、私自身が眠っている時にしか入れないなど、私のウタワールドとは異なる点がたくさんある。
でも、物心がついた時からウタワールドと向き合ってきた私の五感はあの空間からウタワールドと似た空気を感じ取っている。夢の世界で五感っていうのも変な話だけど。
だから、どうにかして謎の部屋にこちらからアクセスできないかベッドの上で思案に暮れている。
お昼の間にウタワールド内で試行錯誤してみたけど、これといった手掛かりを掴むことはできなかった。
寝ている間にしか入ることができないと考えた私は、夜になってからベッドの上で謎の部屋へのアクセスに挑戦することにした。
とは言っても私が思いついた方法は謎の部屋を強くイメージしながら寝るという単純なものだ。
だけど、ウタワールドにおいて一番大切なのは私自身の想像力なので、謎の部屋について瞑想しながら寝るって方法は一番可能性が高いと思う。
ゆっくりと呼吸を整え、謎の部屋の細部まで深くイメージする。
私の五感があの部屋で感じたことを思い出しながら、私の意識はもやもやと夢の世界に溶け込んでいった。 - 6二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 19:03:06
きたきた!!
- 7二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 19:03:48
あなたでしたか…前作全部大好き
- 8スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 19:12:24
「ん?またこの部屋か。久しぶりだな」
意識を取り戻すと同時に聞き慣れた声が耳に入る。隣を確認するとルフィが傍にいた。
「……なんでルフィがいるの?」
「なんでってまた大家さんに呼ばれたんじゃねェのか?」
ルフィは私の質問に対して首を傾げながら答えた。
……今回はこの部屋に来る直前の記憶がはっきりとある。
私はこの部屋にこちらからアクセスしようと瞑想しながら眠りについたはずだ。
だから、アクセスに成功した場合は私一人でこの部屋に入ると思っていた。
でも隣にはルフィがいる。ということはルフィの言う通り今までと同じで大家さんに呼ばれて閉じ込められたのかな?
うーん、そうなるとこの部屋に自力でアクセスするのは無理なのかな?
「今回の脱出条件は何だろうな?」
「何だろうね。とりあえず確認してみようよ」
自力でアクセスできなかったのは残念だけど、謎の部屋に来たからには脱出に向けて行動しないといけない。
今回もルフィと楽しく過ごすことができるといいな。 - 9二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 19:19:09
続編待ってたぜーっ!
- 10二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 19:19:38
このシリーズ大好き
- 11スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 19:22:40
「あれ?何も書かれてないな?」
「……本当だ」
気持ちを切り替えてこの部屋を満喫しようとした矢先、いつもなら脱出条件が書いてある壁が真っ白になっているのを目にする。
「それに部屋の感じがいつもと違うな」
ルフィに言われて部屋の中を確認してみる。ベッドは掛け布団やシーツが無い状態で、床にはバケツや雑巾が置いてある。これってあきらかに掃除中だよね。
この状況を見ると部屋に招待されたというより、勝手にお邪魔した感じがあるんだけど、どうなんだろう?
「とりあえず今回も大家さんに聞いてみるか!」
「そうするのが手っ取り早そうだね」
「おーい!大家さん!脱出条件が書いてないけど、今回は何したらいいんだ!」
ルフィが大きな声で問いかけてみるが壁は真っ白のままだ。2回目と3回目のときはこちらからの問いかけに対してすぐに返答してくれたのに。
「おっかしいなァ?聞こえなかったのか?」
「1回目みたいに壁にメッセージを書かないといけないのかな?」
ベッドサイドの引き出しからペンを取り出して、壁にメッセージを書いてみることにした。
<脱出条件がわからないので教えてください>
「これで気づいてくれるといいんだけど」
- 12二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 19:30:38
スレタイ最後が「?」なのも見るにこれやっぱり勝手に入場してしまったのでは…
- 13二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 19:32:17
無知ウタルフィ大好き
- 14スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 19:33:59
壁にメッセージを書いてから数分、体感的にはもっと長い時間待っていたような気もするけど、大家さんから返答はない。
「……もしかして本気で閉じ込められたのかな」
この部屋にこちらからアクセスする方法ばかり考えていたけど、アクセスに成功した場合でも無事に脱出できるものだと勝手に思い込んでいた。
ルフィが一緒にいる理由はわからないけど、今の状況は私がこの部屋にアクセスを試みたことが原因なのかもしれない。
もし本当に閉じ込められたのなら、それは私の軽率な行動が招いた結果だ。しかもルフィを巻き込んでいる。
「どうしたウタ?顔が真っ青になってるぞ!?」
私の異変に気付いたルフィは顔を覗き込んでくる。そんなにひどい顔をしているのか今の私は。
「気分が悪いならベッドで休憩したほうがいいんじゃないか?」
心配するルフィに促され私はベッドに腰を掛けた。無意識にルフィの手を握ってしまっていたけど、ルフィは気にすることなく優しく手を握り返してくれた。
自責の念で頭がぐちゃぐちゃになっていたけど、ルフィの温もりのおかげで少し気が楽になる。
……まだ、この状況が私のせいだと決まったわけではない。今まで毎回脱出の条件は変わっていたわけだし、今回の趣旨が今までと大きく違うだけなのかもしれない。
だけど、私の試みが影響を与えている可能性はある。だから、ルフィには私が試したことを正直に話さなきゃいけない。
「ねぇ、ルフィに話さなきゃいけないことがあるんだけど……」 - 15スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 19:46:10
この部屋に関する私の考察や部屋にこちらからアクセスしようとしたことを洗いざらいルフィに話した。その間ルフィは静かに私の話に耳を傾けてくれた。
「んー、外から部屋に入れたのに出られないなんてことがあるのか?」
私の話を聞き終えたルフィは腕を組みながら彼が感じた疑問を口にした。
「物理的な部屋ならそんなことはないと思うけど、ここって夢の世界だし概念的な部屋だからその可能性はあると思うんだけど……」
私の考えがうまく伝わっていないのか、ルフィは腕組したまましばらく唸っていた。
「とりあえず部屋を探索してみよう!いつもと違う場所に脱出条件が書いてあるだけかもしれねェし!」
考えているだけでは埒が明かないと判断したルフィは勢いよく立ち上がった。
「ウタはどうする?まだ気分が悪いならしばらく休んでていいぞ」
今の状況は私のせいかもしれないのに、そんなことは微塵も気にせずに私を気遣ってくれる。
だけど、この状況が私のせいだとしたら、きちんとけじめをつけないといけない。ルフィひとりに任せて休んでいる場合じゃない。
「ありがとうルフィ。でも大丈夫、私も探索手伝うよ」
「そっか!ならキッチンから探索すっか!」
にこやかに笑うルフィに手を引かれ私たちはキッチンに向かった。やっぱり頼もしいな私の船長さんは。 - 16二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 19:48:23
健全な関係でグレート良いぞ!
- 17スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 19:59:45
ルフィと一緒にキッチンに足を踏み入れる。
「キッチンもいつもと様子が違うな」
「なんか本やメモ用紙が置いてあるね」
食事を並べるテーブルの上には料理本やメモ用紙が置きっぱなしになっていた。
料理本はパンケーキの作り方が載っているページが開いてあり、メモ用紙には『準備するものリスト』と書いてあった。
「メモ用紙にはいろんなお肉の名前やお酒の名前が書いてあるね。あっ、ホイップは絶対って書いてある」
「冷蔵庫の中も前回より少なくなってるな」
ルフィとキッチンを探索してみたところ、ここも準備中といった様相を呈していた。
隅々まで確認してみたけど、脱出の条件と思われるメッセージは見つからなかった。
もしかしたら、料理本やメモ用紙が暗号になっているのかもしれないけど、部屋全体の探索を終える前に考えてもしょうがないので、他の場所を探索することにした。 - 18スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 20:07:19
その後、浴室やトイレを確認してみたけど、ここにも洗剤と書かれたボトルやスポンジ、ブラシ等が準備されており、いかにも掃除中といった感じだった。
ルフィと二人で手分けして隅々まで確認してみたけど、ここでもメッセージらしきものは発見できなかった。
「なんかどの部屋も準備中って感じだな」
「うーん、そうだね。やっぱり私たちが無断で部屋に入ったような状態だよね」
時間をかけて探索したのに手掛かりらしきものが見つからず、二人とも少し気落ちしながらベッドのある部屋へ戻ってきた。
あと確認していないのはスイッチ1つで変化する摩訶不思議な部屋だけだ。
「残りはあの不思議な部屋だけだな」
「うん。でも今の状況であの部屋に入れるのかな?」
2人並んで摩訶不思議ルームの扉の前に移動する。扉の横のスイッチを確認すると『大聖堂』の1つしかなかった。
「スイッチが1つしかねェな。それにプレートの表示もちょっと変だな」
ルフィの言うように扉のプレートには『大聖堂(清掃中)』と表示されており、推奨衣装も『エプロン、三角巾、マスク、保護メガネ』となっていた。
「部屋に入るならこの衣装に着替えたほうがいいのか?」
「ちょっとクローゼットの中を確認してみるね」 - 19スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 20:21:12
クローゼットを開けてみると、明らかに前回より衣装の数が減っていた。そのおかげで衣装を探す時間は短くなったけど、エプロンや三角巾は見当たらなかった。
「推奨衣装が見つからないけど、どうしよう?」
「なら、このまま入っちまうか」
「……ごめん、もう少し待ってくれない?」
まだ払拭できていない不安があったので、ドアノブに手を伸ばそうとするルフィを引き止める。
扉のプレートには清掃中と書いてある。ということは、部屋の中で誰かが、……いや人じゃない可能性もあるから何かが掃除している最中かもしれない。
大家さん本人なのか清掃員さんなのか人以外の何かはわからない。というかそもそも大家さんが人じゃない可能性だってある。
「ねぇルフィ、プレートに清掃中って書いてあるから、もしかしたら中に誰か居るかもしれない」
「あーそっか。なら大家さんが掃除してるかもしれねェな」
「かもしれないけど、部屋に入るときは細心の注意を払ってくれないかな」
「わかった!ししし、おれにまかせとけ!」
ルフィは大家さんに会えるかもしれないという期待でうずうずしているみたいだ。私も大家さんには会ってみたいけど、今回の部屋は今までと雰囲気が違う。
ルフィがゆっくりとドアノブを回す。果たして鬼が出るか蛇が出るか。 - 20スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 20:43:32
ルフィはうずうずを抑えながら静かに扉を開けてくれた。2人して扉の隙間から中の様子を窺ってみる。
「ん、誰かいる気配がするな」
扉から覗き込んだだけで、ルフィは何者かの気配を察知した。見聞色って呼ばれる覇気の力だろうか?
「ねぇどこにいるの?どんなやつ?」
「部屋の奥のほうで気配がするなァ」
大聖堂の奥ならば祭壇のところだろうか?扉の隙間から覗いただけでははっきりと見えない。
「じゃあ中に入るぞウタ」
「ゆっくりね。ゆっくりだからね」
ルフィの背中にしがみつき、耳元で必死にお願いする。私はそのままルフィに引きずられる形で部屋に入った。
「ほら、奥で誰か掃除してるぞ」
ルフィが指さす方向を見ると、祭壇付近で動く人影をステンドグラスから差し込む光が照らしていた。
ここから見る限りでは子供のようなシルエットで、背丈と同じくらいの長さの箒を持っているように見える。 - 21二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 20:59:36
大家さんの正体分かる?
- 22スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 21:00:05
「おーい!もしかして大家さんかー!」
「ちょっ、何やってんのルフィ!大きな声出さないでよ!」
ルフィに対して怒鳴ったので結果として2人して大声を上げてしまった。
ルフィはそのまま駆け足で祭壇に向かおうとしたので、私は必死に背中にしがみついて止めようとしたけど、ルフィに力で敵うわけないので、そのままルフィにおんぶされるような形で謎の人物に近づくこととなった。
ルフィの背中から少し顔を出して前方を確認してみると、こちらの存在に気付いた謎の人物は動きを止め、こっちを見ていた。
ルフィの脚力では謎の人物の前にたどり着くのは一瞬だった。
恐る恐る謎の人物の容姿を覗き見てみると、身長は私たちより頭2つくらい小さく、三角巾とマスク、保護メガネを装備しているので表情は読み取れない。
「なァ!お前が大家さんなのか!?」
ルフィはウキウキとした声色で謎の人物に話しかける。謎の人物はすぐには答えず、私たちをしばらくじっと見た後に口を開いた。
『どうしてあなた達がこの部屋にいるのですか?』
うーん、声だけで判断するなら女性だろうか?だけど、どこか無機質というか感情の無い声のように感じた。それに質問に対して質問で返されてしまったので、会話が進んでいない。
だけど、私たちがこの部屋に居ることを疑問を抱いているということは、少なくとも目の前の人物によって部屋に招待されたわけではなさそうだ。 - 23スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 21:13:16
ひとまず会話を進めるためにまずは目の前の人物の質問に答えることにする。
「ごめんなさい、私たちがなんでこの部屋に入れたのかはよくわかってないの。でもこれだけは信じて。私たちはこの部屋やあなたに危害を加えるつもりは一切ないから」
向こうからしたら私たちは不法侵入した2人組になっているので、敵意が無いことを訴えてみる。話が通じてくれるといいんだけど。
『ええ、ルフィさんとウタさんが優しい人だということはわかっているので、心配はしていないですよ』
「おれ達のことを知ってるってことは、やっぱりお前が大家さんなのか!?」
『はい、あなた達からはそう呼ばれていましたね』
大聖堂に入る前から予想はしていたけど、本当に大家さんに会えるとは。聞きたいことはたくさんあるのだけど、いざご対面となると思考が固まって言葉が出てこない。そもそもこんなに小さい子だとは思ってなかったし。
「なァ大家さん!いつもうめェ肉を用意してくれてありがとう!」
そんな私とは対照的にルフィはウキウキとした表情で大家さんと会話している。
『喜んでいただけたのなら何よりです。ここで立ち話するのもなんですから、一旦キッチンに移動しましょうか』
「わかった!よかったなウタ!やっと大家さんに会えたぞ!」
「うん。そうだね。……ごめんなさい、大家さん。今回は私たちが勝手に押しかけたってことなんだよね?」
ともあれ、目の前の人物が大家さんであるのなら、今回は私たちの不法侵入ってことが確定する。大家さんを困らせてしまったはずなので素直に謝罪する。
『そのことについてもキッチンでゆっくりお話ししましょう。私は掃除道具の片づけをするので、先にキッチンで待っていてください』 - 24スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 21:15:57
- 25二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 21:19:10
大家さんの正体は「楽譜」なのか?
- 26二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 21:26:06
ちょっとクラバウターマンを連想した
- 27スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 22:03:23
その後、片付けなら私も手伝うと申し出たのだけど、丁重にお断りされたので、大家さんのご厚意に甘えキッチンで待つことになった。
「背は子供くらいだったけど、どんな顔してるんだろうな大家さんって」
キッチンにて冷蔵庫から取り出したジュースを口にしながら、ルフィが話しかけてきた。ジュースについては待っている間、冷蔵庫の中は好きにしていいと言われたので、ありがたくいただいている。
「顔を見せてくれるといいね。声の感じは女の子みたいだったけど」
「だな。でも話し方は全然違うけど、声はウタにそっくりじゃねェか?」
「えっ?そうだった?私には似てないと思うけど……」
自分自身に聞こえる“私の声”と他人に聞こえる“私の声”は全く違うってのは知っているけど、歌手をやっている私は録音した自分の声を何度も聞いている。
だから、自分自身の声が客観的にどう聞こえるかは熟知しているつもりだ。
その上で私は大家さんの声と自分の声を似ているとは感じなかったけど、どうしてルフィは似ているって感じたんだろう?
そんなことを考えてるとキッチンの扉がガチャリと開く音が聞こえた。
『お待たせしました。テーブルの上もすぐに片付けますね』 - 28二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 22:06:29
何かの精霊…かな?
- 29スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 22:19:49
ルフィも私もキッチンの入口に目を向ける。
そこには三角巾とマスク、保護メガネを外したエプロン姿の女の子がいた。
えっ!?でもこれって……
「大家さんってウタだったのか!?」
私が驚きの声を発するより先にルフィが大きなリアクションを取った。
目の前にいる少女は子供の頃の私にそっくりだった。
だけど、私のトレードマークであるヘッドホンはしておらず髪も下ろしていた。
そして、ルフィが私と声が似ているって言ってたのは私の子供の頃の声に似ているってことだったのか。
「……その、どういうことなの大家さん?大家さんって私の潜在意識とかそういう類のやつなの?」
もし、この部屋がウタワールドと関係があるのなら、大家さんの正体が私だという可能性も少しは考えていた。だから、驚きはしたけど予想外のことではない。
『驚かせてしまってすいません。見た目は子供の頃のウタさんなんですけど、私とウタさんは完全に別の存在です。この姿はこの世界で実体化するのに最適だったので使わせてもらっています』 - 30スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 22:37:39
「ウタとそっくりなのにウタとは別ってどういうことだ?ボンちゃんみたいなもんなのか?」
ルフィはすかさず疑問を投げつけた。というかボンちゃんって何?人の名前かな?
『とりあえず、並行世界のウタさんだとか、子供の頃のウタさんがタイムスリップしたとかそういう類のものではありません。アバターとして子供の頃のウタさんの姿をお借りしているだけです』
並行世界?タイムスリップ?アバター?聞き慣れない言葉を連発されて余計に意味がわからなくなる。
「確認したいんだけど、この部屋ってウタワールドに関係ある世界なの?」
聞きたいことは山ほどあるけど、まずは一番重要なことを聞くことにした。この世界の正体がわからないことには話が進まない。
『……そうですね、その通りです。やはりウタさんには気づかれてしまいましたね』
「やっぱりそうだったんだ。でもそれならどうして私の能力が使えないの?」
『現実世界のウタさんが寝ている間だけウタウタの能力をお借りしている形なので、基本的にはウタさんの意識が作用しないようになっているんですよ』
「あーなるほどねー」
そういうことだったのか。私が寝ている間にウタワールドを展開してルフィやナミを引き込んでいたんだ。
だけど私以外の存在でウタウタの能力に干渉できる存在と言えば心当たりは1つしかない…… - 31二次元好きの匿名さん22/10/23(日) 22:41:07
ちょっと
- 32スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 22:56:29
「もしかしてあなたってトットムジカ?」
脳裏に浮かんだ疑問をストレートにぶつけてみる。私の能力に干渉できる外的要因と言えば古の魔王トットムジカくらいしか思いつかない。
「ん?トットムジカってシャンクスたちとぶっ飛ばしたあのでっけェ化け物だよな?なんでウタの姿になってるんだ?」
私の質問にかぶせてルフィも疑問をぶつける。大家さんの正体がトットムジカだとしても、ルフィの言う通りなぜ今はあの禍々しい姿ではなく私の姿になっているのだろうか?
『私はトットムジカそのものではありません。ですがお察しの通りトットムジカに関係がある存在です。んー、なんと説明したらいいのでしょうか……』
大家さんはいったん言葉を区切ると、少し考えるそぶりを見せた。トットムジカそのものではないなら、生まれ変わりとかなのかな?
『トットムジカ自体はルフィさんとシャンクスさんの攻撃で消滅しました。私はトットムジカが消滅した直後に生まれたのですが、性質自体はトットムジカと異なるので、トットムジカが生まれ変わった存在と言うよりは、トットムジカの子供という表現が一番近いかもしれません』
トットムジカの子供か…… だけど負の感情の集合体であるトットムジカから大家さんのような敵意を感じない存在が生まれるものなのだろうか?
「その、あなたからはトットムジカのような禍々しい感じがしないんだけど、それはどうして?」
「そうなんだよなァ。大家さんからはドロドロした感じがないよな」
私もルフィもトットムジカの子供を自称する少女をまじまじと眺めながら首を傾げる。
ルフィとシャンクスの攻撃で浄化されたりしたんだろうか? - 33スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 23:22:19
『私が説明したことを信じてもらえるかわかりませんが……』
大家さんはそう口にすると、しばらくの間、あごに人差し指を当てたまま言葉を探しているようだった。
『トットムジカはもともと負の感情の集合体だったのですが、ルフィさんとシャンクスさんの攻撃によって消滅する瞬間に、トットムジカの持つ感情を集める能力がその時一番近くにいたルフィさんとシャンクスさんのウタさんを大切に想う感情を引き寄せて、想いの核ができました。その核が中心となってその時エレジアにいた人々が持つウタさんの幸せを願う気持ちが集合体になって私が生まれたみたいなんです』
私の幸せを願う気持ちの集合体。大家さんは丁寧に説明してくれた。にわかには信じがたい内容だったけど、今までの出来事と照らし合わせると腑に落ちる話だった。
なるほど、だから大家さんからは敵意を感じないし、この部屋で私に都合の良い出来事ばかり起こっていたのはそういうカラクリだったのか。
「つまり、大家さんがこの部屋で私の知らないものを生み出せたのはあの時エレジアにいた人たちの記憶を元にしていたからってこと?」
『ご明察の通りです。ウタさん以外の人々の経験や記憶をデータベースにしているので、ウタさんの知らないものも生み出すことができました』
はー、なんか気持ちがいいほど合点がいくなァ。データベースって言葉はよくわからなかったけど。
「んー、つまり大家さんはウタの味方ってことでいいんだよな?」
ルフィもルフィなりに一生懸命大家さんの話を飲み込もうとしてくれている。
『はい。そう認識してもらえると助かります』
さっきまでは声と表情が無機質な感じがしていたけど、今の大家さんは嬉しそうにルフィと向き合っているように見える。
「でもルフィとシャンクスの感情が核になってるなら、ルフィは大家さんのお父さんってことにならない?」
ふと頭に浮かんだ疑問をそのまま口にしてしまう。その言葉を聞いた大家さんはなぜかルフィのほうを見つめたままフリーズしてしまった。 - 34スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 23:28:33
本日の投稿はここまでとなります。お付き合いいただきありがとうございました。
続きは明日の19時以降に投稿する予定です。
今回の話は前回までと違ってルフィとウタがイチャイチャする感じは少ないので、コメディ要素を期待していた人には申し訳ないです。 - 35スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 23:34:49
もともと大家さんの正体を考えていない状態で1作目を書いてて、正体をぼかしたまま終わろうと思っていたんですけど、大家さんの正体を考察してくれているコメントがいくつかあって、正体不明のまま終わらせるのはよくないなと思い今回の話を書いてみました。
- 36スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/23(日) 23:44:57
- 37二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 01:19:18
ルフィの娘なら名づけイベントとかもあるのかな
明日の更新、楽しみにしてます! - 38二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 01:22:56
そのライブ感もスレ投稿小説の醍醐味よ! おつかれさんっす、待ってるよ
- 39二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 06:41:23
ルフィの娘ならウタの娘だな(?)
- 40二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 12:13:26
保守
- 41スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/24(月) 12:37:28
そういえばトットムジカを倒した後にウタがどうやって一命を取り留めたかを考えずに書き進めてましたけど、これも大家さん(ウタの幸せを願う集合体)のおかげってことにしときますか
ウタのおかげでトットムジカが救われたのなら、トットムジカの子供のおかげでウタが救われてもいいよね? - 42スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/24(月) 19:24:38
ぼちぼち投稿を再開します。
書き溜めがないので、投稿ペースは遅いです。 - 43スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/24(月) 19:30:20
『ルフィさんが私のお父さん……』
私たちの対面でフリーズしていた大家さんがようやく動き出した。
そのまま様子を見ていると、大家さんは席を離れルフィの近くに歩み寄ってきた。
「どうしたんだ大家さん?」
大家さんは何も言わずに顔を見上げてルフィを見つめている。対するルフィも大家さんの顔色を窺っている。
『失礼します』
そう言うと大家さんはルフィの膝の上に座り、そのままルフィに抱き着いてしまった。
「え?大家さんどうしたの!?」
大家さんの突拍子もない行動に思わず声を上げる。な、なんて大胆なことを……
『父親と娘のスキンシップを再現してみようと思い、ウタさんが昔シャンクスさんにやっていたことを真似してみたのですが何か間違っていましたか?』
「ちょっ!なんで知ってるの!」
いきなり過去の恥ずかしい思い出を暴露される。いや、別に恥ずかしい思い出ではないよ!小さい頃ってみんな親に甘えてたでしょ!
「大家さん軽いなァ。あの時のウタってこんなに軽かったんだな」
ルフィは大家さんを自然に抱きしめながら頭を撫でている。えっ、それ私にもやってほしい。……じゃなくって、なんかルフィから父性があふれ出てるんだけど! - 44二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 19:34:35
疑似親子来るか!?
更新待ってました - 45スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/24(月) 20:09:53
ルフィと小さい子供が戯れ合っているだけなのだから、これは微笑ましい光景のはず。
だけど、大家さんが子供の頃の私の姿をしているせいで、なんかすっごくモヤモヤする。
いいなァ子供の体だと全身でルフィの温もりを堪能できるんだよね。
ぐぬぬ、私も9歳の頃に今のルフィに出会えていれば……
『ありがとうございます。いい経験ができました。ルフィさんの胸の中は温かくて心地よいですね』
大家さんはルフィにお礼を言いながらルフィの膝から降りていた。
「もういいのか?」
『はい。大丈夫です。ありがとうございました』
「そっか」
ん?んんん?なんかルフィのほうが名残惜しそうにしてない!?
なんか今のハグでルフィの中に何か目覚めちゃってるよね? - 46スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/24(月) 20:37:37
「なァウタ、おれ思ったんだけどさ」
「ん?どうしたの?」
ルフィは頬を搔きながら私に問いかけてくる。
「おれが大家さんの父ちゃんになるならさ……」
おっと、この流れはもしかして……
「ウタは大家さんの姉ちゃんになるな!」
「……なんで?」
いや、そこはお母さんって言うところだったでしょ!?私とルフィの2人で大家さんをひたすら愛でる流れだったよね!
「ん?だって、大家さんはおれとシャンクスの感情から生まれたんだよな?ならシャンクスも大家さんの父ちゃんになるから、大家さんはウタの妹になるんじゃねェか?」
「……確かにそうだね」
いや、ルフィの言う通りなんだけどさ、私は今ルフィに論理的な発言を求めてないよ!
『ウタさんが私のお姉さん……』
あれ、いつの間にか大家さんが私の隣に来てる。ど、どうしてそんなに切ない目で私を見つめるのかな? - 47二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 20:46:24
つまり大家さんはルフィとシャンクスの子供…ってコト!?
- 48スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/24(月) 21:28:43
『失礼します』
大家さんは断りを入れるとすかさず私の膝の上に乗り抱き着いてきた。
なにこれめっちゃ温かい。ルフィのハグとはまた違った心地よさを感じる。
『……ウタお姉さま』
えっ!?お、お、おおおお姉さま!今お姉さまって呼んでくれた!
年下の女の子からお姉さまって呼ばれる日が来るなんて……
あぁ、思い返してみれば最近は誰も私のことをお姉ちゃん扱いしてくれてなかったなァ。
ルフィは私より大人っぽくなってしまったし、ナミは私より1つ年下なのに私を妹扱いするし……
そっか、私に足りていなかったのは今この手で抱きしめているこの温もりだったのか。
私に全力で甘えてくれる妹。これが私にとっての新時代だったんだね。
「ししし!ウタと大家さんはそっくりだから、本当の姉妹にしか見えないな!」
ルフィは慈愛に満ちたまなざしでに私たち2人を見つめている。
その表情は私が幼い頃に見たシャンクスにそっくりだ。もう完全に父性に目覚めてるよルフィ。 - 49二次元好きの匿名さん22/10/24(月) 22:23:58
それだとシャンクスがお母さんになっちゃう……
- 50スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/24(月) 22:52:14
『あの、ウタさん。……う、ウタお姉さま!』
「あっ、ごめん。どうしたの大家さん?」
高揚感でふわふわになった状態で大家さんの髪をさわさわと撫でていると、大家さんが私の腕の中でもぞもぞし始めた。
『そろそろ離してもらってもいいですか?』
「……もう終わりでいいの?」
『はい。ウタさんの胸の中もとても心地よかったです』
ああ、これは確かに名残惜しくなる。だけど、私の我儘で大家さんに迷惑をかけると嫌われちゃうかもしれない。
妹に慕われるお姉さんであり続けるためにもここはしっかりしないと。
「またハグしたくなったらいつでも言ってね」
『はい。ありがとうございました』
大家さんは私の膝の上でぺこりとお辞儀をした。その後、私の膝から降りると元々大家さんが座っていた席に戻っていった。 - 51スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/24(月) 23:45:22
『そういえば、テーブルの上のお片付けがまだでした』
そうだった。大家さんがキッチンに入るや否や矢継ぎ早に質問を浴びせていたので、大家さんの作業を止めてしまっていたのだった。
「片付けなら私たちも手伝うよ」
極上の妹力を注入してもらったので、手伝えることならなんでも協力してあげよう。
『いえ、大丈夫です。すぐに終わりますので』
だけど、またしても丁重にお断りされてしまう。うーん、お姉さんとしては少しは頼ってくれると嬉しいんだけどな。
「なら、飲み物を用意してあげるよ!大家さんは何が飲みたい?」
『ありがとうございます。でも、お気持ちだけで十分です。お二人はゆっくりしていてください』
んー、ここまで頑なに手伝いを断るのはなんでだろう?大家さんは完璧なメイドさんを目指しているのだろうか?
「ねぇ大家さん?私は大家さんを手伝う事ができるとすごく幸せな気分になるんだけどなァ」
大家さんには悪いけど、少し意地悪な言い方でお手伝いを志願してみた。大家さんが私の幸せを願う気持ちの集合体ならば、この方法でいけると思うんだけど。
『あ、あの、その……ええっと』
今までお淑やかだった大家さんは、私の申し出を聞いてあたふたしだした。
「大丈夫か大家さん?」「どうしたの大家さん!?」
異変に気付いたルフィと私は慌てて席を立ち大家さんに駆け寄る。 - 52スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/25(火) 00:36:32
大家さんに駆け寄った私たちは少し屈んで、目線を大家さんに合わせた。
『あの、ごめんなさい。こういうケースを想定していなかったので、少し取り乱してしまいました』
「想定していなかったってどういうこと?」
大家さんが落ち着きを取り戻してくれたので、ひとまず安心する。だけど、なんであんなに取り乱したんだろう?
『その、私を手助けすることがウタさんにとって幸せを感じることになるとは思っていなかったので、どう答えればいいのかわからなくって……』
あーそっか。私が今回みたいに無理やり謎の部屋に入らなければ、大家さんはずっと裏方にいたはずの存在だから、私と直接会うことを想定していなかったのか。
そりゃそうだよね。私も今回大家さんに会うことができたおかげで、彼女の助けになりたいって想いが初めて生まれたんだから、いきなりその想いをぶつけられてもビックリしちゃうよね。
「ごめんね大家さん。私が変なこと言ったせいでビックリさせちゃったね」
妹を困らせてしまうなんて、私もまだまだお姉さん力が足りないなァ。こういうときナミならどうするんだろう?
『でもどうして私を手助けすることがウタさんの幸せになるんですか?』
「どうしてって、大切な家族や仲間の手助けをして、その人が笑顔になってくれたら嬉しいからなんだけど」
『??? ウタさんにとって私は大切な人になるんですか?』
「当たり前でしょ!だから私は大家さんが笑顔になることをしてあげたいな」
私の気持ちが大家さんに届くように彼女の目をまっすぐ見つめて想いを言葉にする。 - 53スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/25(火) 00:38:40
本日の投稿はここまでとなります。お付き合いいただきありがとうございました。
続きは25日の19時以降に投稿する予定です。 - 54二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 00:53:12
今日も面白かった!
大家さんもかわいいな
待機します - 55スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/25(火) 00:53:50
- 56二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 05:17:03
大丈夫だイッチよ、麦わらの一味のIQは共有制だからその分ルフィに働いてもらえばいいのだ
- 57スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/25(火) 12:39:29
保守
3人がわちゃわちゃする話を書くのは楽しいけど、話が進まないからなんとかバランスをとりたいですねー - 58二次元好きの匿名さん22/10/25(火) 12:39:52
良いのだウタちゃんは幼さと大人っぽさのどちらの姿を見せても良いのだ
- 59スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/25(火) 19:01:51
投稿再開は20時以降になりそうです。
本日も書き溜めがないので、投稿ペースは遅いです。 - 60スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/25(火) 20:05:34
『私がウタさんにとって大切な人……』
私は大家さんの瞳をまっすぐ見つめるが、彼女はどこか遠くを見つめているような表情している。
『わかりました。それではウタさんの優しさに甘えさせてもらいますね』
ふーぅ、よかった。ようやく大家さんが手助けを受け入れてくれた。これでこちらも全力で甘やかすことができる。
「それで大家さんは何が飲みたいの?」
改めてドリンクの要望を聞いてみる。私と同じで甘いものが好きなのかな?
『ありがとうございます。コーヒーをお願いしてもいいですか?』
おおっと予想外の注文が来てしまった。大家さんコーヒー飲めるんだ……
どうしよう。私は進んでコーヒーを飲まないから、淹れ方がよくわからない。
人が淹れているのは見たことあるけど、見よう見まねでいけるかな?
「こ、コーヒーね!えっと、ホットにする?アイスにする?」
『ホットでお願いします。あっ、豆は中細挽きで大丈夫です』
やばい、聞き慣れない単語が出てきちゃった。何が大丈夫なのかさっぱりわからない。
ここで見栄を張って失敗したコーヒーを出しても大家さんを困らせるだけだよね。
「あのね大家さん。私、コーヒー淹れたことないから淹れ方教えてくれる?」 - 61スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/25(火) 20:33:52
『あっ!ごめんなさい!我儘なお願いをしてしまって……』
また大家さんに謝られてしまう。違うの大家さん。悪いのはコーヒーがいまだに苦手なダメダメお姉ちゃんの私なんだよ。
「大家さんは悪くないからそんなに謝らないで。それよりさ、私もこの機会にコーヒーの淹れ方を覚えたいから一緒にやろうよ。一緒に片付けして、一緒にコーヒー淹れよ?」
先ほどから大家さんと私の気持ちがうまく嚙み合わず少しギクシャクしてしまう。はーぁ、私のお姉さん力がもっと高ければこんなことには……
「なァ大家さん。おれもウタもまだ大家さんのことよく知らねェから、今日は大家さんが好きなことをおれ達に教えてくれねェか?」
ここまで黙って私と大家さんのやり取りを眺めていたルフィが助け舟を出してくれた。
『私の好きなこと……?』
「ああ!だから大家さんがいつもやってることを今日は3人で一緒にやってみよう!」
ちょっと待って、ルフィの父性すごくない!?これはパーフェクトコミュニケーションでしょ!レッド・フォース号みたいな心強い助け船が来たよ!
「そうだよ大家さん!3人で一緒にやればきっと楽しいよ!」
ルフィの出してくれた助け船にすかさず乗り込む。父性に目覚めたルフィに任せておけば全て上手くいく気がしてきた。大船に乗った気持ちというのはまさにこのことだろう。 - 62スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/25(火) 21:38:44
私たちの言葉を聞いた大家さんは静かに目を閉じ、深くゆったりと呼吸を整えていた。私たちはじっと大家さんを見守る。
『その、上手くできるかわかりませんが、今日は頑張ってルフィさんとウタさんのお言葉に甘えてみます』
ゆっくりと目を開け、頬を少し赤くしながら大家さんはそう宣言した。
「ししし!なら早速テーブルの上を片付けるか!」
ルフィの明るい笑顔につられて私と大家さんも笑顔になる。ルフィの笑顔には助けられてばかりだな。
その後、大家さんの指示を受けながら、3人で片づけを進めた。この程度の作業ならきっと大家さん一人でやったほうが素早く終わるのだろう。
だけど今は効率を求めているわけではない。大家さんの気持ちを知ることが目的なのだ。
大家さんも自分の気持ちを伝えるために、ひとつひとつの指示を親切丁寧にやってくれる。
たかだか数分間テーブルの上を片付けているだけなんだけど、とても濃密な時間に感じた。 - 63スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/25(火) 22:21:23
テーブルの片づけを終えた後、大家さんのコーヒー講座がスタートした。
『このダイアルを5のところに合わせてください』
「ん、これでいい?」
『はい、あとは豆を入れてハンドルを回すだけです』
ゆっくりとハンドルを回してみるとゴリゴリと音を立てながら、コーヒー豆が粉に姿を変えていった。
あたりにコーヒー豆の香りが漂う。コーヒーを飲むのは苦手なんだけど、この香りは好きだな。
私が豆を挽いている間、ルフィはケトルでお湯を沸かしていた。どうやらお湯の温度も重要らしくルフィは温度計と睨めっこしていた。
「大家さん、94℃になったぞ!」
『それでは火を止めてください』
私は挽いた豆を予めフィルターをセットしていたドリッパーに移し、サーバーの上にセットした。
お湯を注ぐのにもコツがいるみたいなので、今回は大家さんのやり方を見学することにした。
注ぎ方は人によって色々こだわりがあるらしいが、最初は必ず蒸らさないといけないみたい。
大家さんは慣れた手つきでお湯を少量そっと注いでいた。粉がもこもこ膨らんでいて見ていて楽しい。
大家さんも見るからに上機嫌で、微笑みながらお湯を注いでいた。私、コーヒー飲めないけど大家さんがカフェをやるなら常連になってしまうだろうな。 - 64スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/25(火) 23:04:45
大家さんが淹れてくれたコーヒーを手に私たちはテーブルに戻ってきた。
私がコーヒーを苦手にしているのはバレているので、砂糖とミルクはすでに準備されていた。
「「いただきます」」
とりあえず、最初はブラックのまま飲んでみる。
……うん、苦い。なんとなく今まで飲んだコーヒーとは違う気がするけど、正直美味しいかどうかわわからない。
『ウタさんの好きなように飲んでいいんですよ?』
大家さんに柔らかな眼差しで見つめられる。そうだよね無理は体に毒だよね。
目の前に準備されていた砂糖とミクルを躊躇いなく投入する。
だけど、いつもよりは少なめにしてみた。徐々に量を減らしていけばいつかきっとブラックでも飲めるようになるでしょ!
改めてコーヒーを口にする。はーぁ、苦味と酸味が程よく和らいで美味しいなァ。
大家さんに目をやると彼女はブラックのままコーヒーを嗜んでいた。
実は砂糖とミルクを入れるんじゃないかって密かに期待していたけど、そんなことはなかった。 - 65スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/26(水) 00:31:45
大家さんとキッチンで対面してからしばらくはバタバタしていたけど、コーヒーのおかげで今は穏やかな空気に包まれている。
一度にたくさんの質問をすると大家さんを困らせてしまうから、遠慮してまだ聞いていないことがいくつかあるけど、今なら大丈夫かな?
「ねぇ大家さん?聞きたいことがあるんだけど、大丈夫?」
『はい、何でしょうか?』
「大家さんが私のために色々頑張ってくれていることはわかったんだけど、なんていうか、なんでこんなヘンテコな部屋を作ったの?条件を満たさないと脱出できない部屋にした理由がよくわからないんだけど?」
結果的に今までこの部屋で楽しい思いをしてきたのだけど、初めて閉じ込められたときは脱出条件にモザイクがかかっていて意味不明だったし、脱出できるかわからなくて不安になった。
『……この部屋を作った理由ですか』
あれ?なんか罰が悪そうにしてるけど、どうしたんだろ?
「もしかして大家さんにもわからないのかな?」
『いえ、理由は私から説明できます。それにウタさんには説明しなければならないことだと思っています』
ん?説明できるのにどうしてためらうんだろ?
「もしかして、おれがいると話しにくいことなのか?」
『……そうですね。この件はまずウタさんと2人でお話したいです』
「うし、わかった。じゃあ、おれは隣の部屋で寝てるから、終わったら起こしてくれ!」
そう言い残してルフィはキッチンを後にした。え?ルフィには聞かれたくないってどういうことなの?なんか不安になってきたんだけど。 - 66スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/26(水) 00:32:54
本日の投稿はここまでとなります。お付き合いいただきありがとうございました。
続きは26日の19時以降に投稿する予定です。 - 67二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 00:37:29
おつです!楽しみに待ってます!
- 68スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/26(水) 07:14:54
保守
昨夜の投稿ペースが遅くなった理由はコーヒーの淹れ方を調べながら書いていたせいです。 - 69二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 08:43:13
ルフィはエスプレッソなのか、ウタに合わせてカフェラテなのか
最近ルフィにスパダリのイメージ強くて何選ぶかわからん - 70二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 18:42:06
最近はマジでルフィはスパダリになるイメージしか湧かないわ
- 71スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/26(水) 19:03:17
- 72二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 19:34:30
一番左のコマ湯気も消えてるから冷ましてたりもしてたかもしれない
- 73スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/26(水) 20:12:47
『あの、次の飲み物を用意しましょうか?』
大家さんは空になったコーヒーカップを片付けながら問いかけてくる。話が長くなりそうなのかな?
「んー、私は遠慮しとくよ。あっ、でも大家さんがまたコーヒーを飲みたいなら淹れるの手伝うよ」
水分を取り過ぎて話の途中でトイレに行くのもなんかイヤなので、おかわりは断っておいた。
『私もおかわりは遠慮しておきます。でしたら、飲み終わったカップを片付けますので、少し待っていてください』
「今日は一緒にやるって言ったでしょ。私も手伝うよ」
またご奉仕モードに入りかけていたので、すかさず手助けをする。
『……そうでした。では、お手伝いお願いします』
そのまま2人でキッチンのシンクに移動する。3人分のカップだけなので、あっという間に洗い終わる。
「よし終わり!じゃあテーブルに戻ろうか」
さて、いよいよこの部屋が生まれた理由を聞くことができる。ちょっと嫌な予感もするけど、気を引き締めて話を聞こう。 - 74スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/26(水) 20:53:00
テーブルに戻り、2人が向かい合う形で席に着く。大家さんは少しソワソワしている。私は急かすことなく、大家さんから話を始めるのを待っていた。
『……この部屋はウタさんの願いを叶えるために作りました』
意を決した大家さんは私を真っすぐ見つめながら語り始めた。
「私の願いを叶えるってなんか漠然とした理由だね。この部屋には何か具体的な目的があるように思えるんだけど?」
疑問に感じていることをどんどん投げ込んでみる。なんかこの部屋にはピンポイントな目的があると思うんだよね。
『この部屋はウタさんの願望の中で一番強い願いを叶えるために作ったんです。その、ウタさんがルフィさんと今よりも親密な関係になりたいっていう願いを叶えるために……』
大家さんは申し訳なさそうに、とんでもないことを言った。えっ!そんな理由だったの?というか私の願望って大家さんに筒抜けになってるんだ……
「でもルフィと仲良くするのが目的だと言われてもいまいちピンと来ないよ。閉じ込める必要あるの?」
『私を形成している記憶や経験のデータベースをサーチしてみると、男女の仲を深めるには一線を越えないと出られない部屋に閉じ込めるのが一番手っ取り早いという意見があったので、こんな部屋になってしまいました……』
大家さんは顔を赤くしながらどんどん声が小さくなっている。でも大家さんの説明を聞いてもいまだによくわからない。
「ねぇ大家さん一線を越えるってどういう意味なの?」
わかんないことはどんどん聞くしかない。ごめんね大家さん。私世間知らずだからたくさん質問するけど許してね。 - 75スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/26(水) 21:38:46
『そ、そそそれは、こっ、子作りをすることです!』
「あー、だからキスしないと出られないって条件だったんだね。ん?でもそれだとおかしいな。結局キスに変更される前の条件って何だったの?」
一線を越えるのがキスのことならそれは途中で変更になった条件だよね。なら、最初のモザイクがかかった条件は何だったの?
『あの、それは、その、あのですね……』
あれー、大家さんどんどん赤くなってるんだけど。でも今までの物静かな感じと違ってこれはこれで可愛いなァ。
『えっと、わ、私にもわかりません!データベースにあった子作りに関する言葉を並べただけなので!な、なんだったんでしょうね!私わかりません!』
大家さんは今日一番大きい声を出した。あたふたする大家さんは見ていて面白い。
「そっか、この部屋については大家さんにもわからないことがあるんだね」
感情の集合体ってことだし最近生まれたばかりの存在だから、自分自身のことがわかんなくても仕方ないよね。
「ちなみに部屋にあった【おとなのおもちゃ】ってどう使えばよかったの?あれも子作りに必要なものなの?」
あのおもちゃも正しい使い方がわかんなかったんだよね。ルフィがやったゾロ君の真似には死ぬほど笑ったけど。
『あわわわ、はわわわわ』
「えっ!ちょっと大丈夫!?」
大家さんは顔を真っ赤にして目がグルグルしている。えええ、どうしちゃったの!? - 76スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/26(水) 21:58:57
- 77二次元好きの匿名さん22/10/26(水) 22:03:27
最低なんだこいつら!
- 78スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/26(水) 23:18:51
「大丈夫!?冷たい飲み物持ってくるね!」
原因はわからないけど、大家さんは明らかにオーバーヒートしている。急いで冷やしてあげないと。
『はぅあぅぅ、ありがとうございます……』
急いで持ってきたオレンジジュースを大家さんに渡すと、小さな口でこくこくと飲み始めた。
「どう、落ち着いた?」
『はい、ありがとうございます。お見苦しいところをお見せしてしまいました……』
まだ、ほんのり顔に赤さは残っているけど、落ち着きを取り戻していた。
『それで、あのおもちゃのことですが、わ、私にはよくわからないです』
あれも大家さんの知らないものだったんだ。それよりも私が質問攻めしちゃったことで大家さんがへとへとになってしまっている。
「ごめんね、一度にたくさん質問してしまって。少し休憩する?」
『いえ、大丈夫です。オレンジジュースのおかげで落ち着けました』
大家さんはぺこりと頭を下げる。顔色も元に戻っているみたいだ。
「それじゃあ、質問を続けても大丈夫?」
『はい、なんでも聞いてください』
なんでもとは言われたけど、これからはもう少し考えてから質問しよう。これ以上大家さんを困らせるわけにはいかない。 - 79スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/26(水) 23:39:47
今日の投稿はここまでとなります。お付き合いいただきありがとうございました。
ちょっと今は文章が上手くまとまらないので、明日は続きを投稿できるかわかんないです。
投稿再開するとしたらいつものように19時以降になると思います。 - 80二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 00:14:19
ゆっくり書き溜めておくれ おつかれさま
- 81二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 07:29:30
期待保守
- 82スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/27(木) 12:44:58
保守
- 83二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 13:22:41
そういえば大家さんの見た目ロリウタちゃんなんだよな…
スケベな大人たちのせいでオーバーヒートしてるとこ想像したらめっちゃ可愛い - 84スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/27(木) 19:14:25
今日もぼちぼち投稿していきます。のんびり書いてるのでペースは遅いです。
- 85スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/27(木) 19:16:17
「んー、それなら2回目と3回目の目的を教えてもらおうかな?1回目と条件が変わってたし、3回目に関しては相手がナミだったのはなんで?」
『2回目の目的は1回目とほぼ同じでルフィさんとの仲を深めてもらうつもりで作りました。ただ、1回目のような条件だとウタさんを困らせてしまうと思ったので、推理要素がある条件にしてみたり、色々な部屋を準備してみたのですが……』
2回目のほうがバラエティに富んでいたのはそういうことだったんだ。確かに摩訶不思議ルームを探索するのは楽しかったな。
「カラオケボックスとかすごくよかったよ!そういえばこの部屋の設定は大家さんが生まれた時にエレジアにいた人の記憶を元にしているんだよね?」
『はい、そうですが、何か気になることがありますか?』
「それじゃあ、大聖堂はゴードンの記憶を元にしているの?」
私とシャンクスたちは12年前にエレジアを訪れた時に大聖堂も案内してもらったけど、細部までは覚えていない。だから、崩壊前の大聖堂を再現できるのはゴードンしかいないはず。
『それについては断言できませんね。データベースにある記憶については元々誰の記憶だったかまではわからないんですよ』
「へー、そうなんだ。でも大聖堂についてはほぼ間違いなくゴードンだろうね」
となると、ゴードンには大聖堂で一人寂しくブーケ投げをしていたのも見られていたのかもしれない。ゴードンにはいらぬ心配をかけちゃったな。
「ちなみに大家さんには私がエレジアの大聖堂でやっていたことや、結婚式に憧れてたことは筒抜けになってるんだよね?」
『……はい、ウタさんの叶えたい願いの1つとして認識していました。余計な真似をしてしまいましたか?』
「そんなことないよ。むしろとっても嬉しかった。ありがとね大家さん。幼い頃の私の夢まで叶えてくれて!」 - 86スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/27(木) 19:29:08
- 87二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 20:02:40
維持
- 88スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/27(木) 20:47:59
大家さんにお礼を言うと、彼女は安堵した表情を見せてくれた。
『……ウタさんに喜んでもらえてなによりです。それで3回目についてですが、この時はウタさんがナミさんともっと仲良くなりたいって想いが強かったので、ナミさんを招待しました』
「確かにあの頃はナミとたくさんおしゃべりしたいって考えてなぁ。大家さんのおかげでナミと仲良くなれたから助かったよ!」
とはいえ突然巻き込まれたナミは怖い思いもしただろうから、また改めてお詫びをしよう。大家さんと会わせることができればいいんだけど。
「これまでのことは大体わかったけど、今回は私が自力で部屋に入ったんだよね?なんでルフィも一緒なの?」
『それはこの部屋の性質が原因だと思います。この部屋はウタさんが気になる相手と仲を深めることが目的なので、他の人と一緒じゃないと入れないようになっています』
「ならルフィは完全に巻き込まれただけなんだ。悪いことしちゃったな」
でも巻き込まれたのがルフィでよかった。ルフィ以外だと話がややこしいことになってただろうから。
『ちなみにこの部屋に入れるのはウタさんが眠っているときに近くで眠っている人だけです。今回はウタさんが眠りについたときにルフィさんも眠っていたので部屋に呼ばれたみたいです』
誰でも呼べるわけじゃないんだね。だけど、ルフィと私は別々の部屋で寝ていたからある程度距離が離れていてもこの部屋に呼べるみたい。恐らく私が眠る直前にこの部屋の出来事を思い返していたからルフィが選ばれたんだろうな。 - 89スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/27(木) 21:33:25
大家さんが私の質問に丁寧に答えてくれたおかげでこの部屋の仕組みを大体理解することができた。
「ありがとう大家さん。この部屋のことが大体わかってきたよ。だけど、これからこの部屋はどうなるの?私が自力でアクセスしたせいでおかしなことになったんじゃないの?」
『この部屋がウタウタの能力の一部であることをウタさん自身が認識したので、今後ウタさんはこの部屋に自由に出入りできるようになったと思います。ウタさんがこの部屋の仕組みを理解したことで、何か条件を満たさないと脱出できないという縛りはなくなっているので』
「じゃあ、寝る直前にこの部屋のことをイメージしたら、いつでも入れるんだ」
『そうですね。基本的にはいつでも入れると思います。ただ、部屋を維持するのにウタさんの気力を少しお借りしているので、ウタさんの体調が万全でないときや連日来ることは避けたほうがいいと思います』
「そうだったんだ。確かにこんな便利な空間を何のデメリットもなしに利用できるわけないから、気を付けないとね。この部屋にいるときに気力が尽きたりしたら何が起こるかわかんないもんね」
『恥ずかしながら私もまだ自分自身の能力を把握しきれていないので、気を付けてもらえると助かります』
「まぁ大家さんの能力についてはこれから一緒に考えていこうよ。ウタワールドに関係あることについては私が教えることもできるだろうし」
『ありがとうございます。ウタさんがいてくれると、とても心強いです』
ウタウタの能力を借りているのだから、私の経験や感覚が少しは役に立つはずだ。自分自身のことがよくわからないというのはきっと不安でしょうがないと思うので、大家さんの不安を取り除くためにも出し惜しみせず全力で協力してあげよう。 - 90スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/27(木) 22:12:12
「そういえば今の大家さんは私が子供の頃の姿をしているけど、見た目を変えたりはできそう?」
今のままでも私にそっくりな妹だと思えなくはないけど、大家さんなりの個性が出た姿になれるのならばそうしてほしいところだ。
『試したことはないのですができると思います。今、私がこの姿をしているのは、ここがウタワールドの一部なのでウタさんの姿が一番イメージしやすくて安定しているからです。なので、別のイメージをはっきりと持つことができれば、その姿で実体化することができると思います』
「そっか!じゃあ大家さんが実体化するイメージもこれから一緒に考えていこうか。きっと大家さんにぴったりな素敵な姿が見つかるはずだよ!」
『……私にぴったりのイメージ。一体どんな姿になるのか楽しみですね』
大家さんは今の姿に固執しているわけではなかったので、新たなイメージを作っていくことに賛同してくれた。私なんかよりも可愛い姿にしてあげたいな!
「それと大家さんはトットムジカみたいに現実世界に顕現することはできそう?」
大家さんの新しいイメージが完成したらみんなにお披露目したい。みんなをひとりひとりこの部屋に招待するのは大変だから、現実世界にも出てこれるようになればいいのだけど。
『……現実世界に顕現することは今まで考えたこともなかったです。しかし、トットムジカが現実世界に顕現できたのは私よりもずっと強力な感情の集合体だったからだと思います。私はかなり限定的な感情の集合体ですので、トットムジカと同じようにはいかないと思います』
んー、でも大家さんがトットムジカの子供みたいな存在である以上、トットムジカにできたことが彼女にはできないと断言するにはまだ情報が足りないよね。トットムジカが顕現するにはウタウタの能力が必須だったのだから、大家さんが顕現するには私の能力がキーになるはずだ。 - 91二次元好きの匿名さん22/10/27(木) 22:16:00
大家さんの姿、気付いたらわたし(ウタ)とルフィの間にもしも…
っていう乙女な妄想のやつやってそう - 92スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/27(木) 23:29:53
トットムジカが現実世界に顕現するためのトリガーはウタウタの実の能力者が古の楽譜に記された曲を歌うことだった。
なら、大家さんが顕現するために必要なものもきっと……
「大家さん!あなたのためにあたなの歌を作ってあげる!」
『? 私の歌ですか?』
「うん!トットムジカは元々古来から伝わる楽譜が本体でそれが顕現したわけだから、大家さんが顕現するにはきっとあたなのことを歌った曲が必要だと思うの!」
『……ウタさんの言うように私が顕現するには曲が必要不可欠かもしれませんね。ただ……』
大家さんは私のアイデアに賛同しつつもその表情は硬い。何か気になることがあるのだろう。
「ねぇ、気になるところがあれば教えてほしいな」
『その、私が顕現するには大きなエネルギーが必要なはずです。トットムジカの場合は世界の破滅を願うほどの大きな想いが顕現のエネルギーになっていると思うのですが、私の場合は現実世界に対してどうこうしたいという想いがあまりないので……』
なるほど、現実世界に顕現するには現実世界に対する強い想いが必要になるか。トットムジカは負の感情の集合体で現実世界を破壊したいという強い想いがあったけど、大家さんは私の幸せを願う気持ちの集合体だから、トットムジカと違って現実世界に対して強い想いがあるわけではない。
そうなると顕現に必要なエネルギーはトットムジカとは違う方法で生み出さないといけないのか。 - 93スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/27(木) 23:41:10
今日の投稿はここまでとなります。お付き合いいただきありがとうございました。
続きは明日の19時以降を予定しています。今日はなんとか話が進めることができた…… - 94二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 06:56:09
お疲れ様でした
姿変わるならそのとき大家さん呼びも変更なのか続投なのか - 95スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/28(金) 12:26:14
保守
- 96二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 15:45:59
大きな感情のエネルギー…愛じゃな!
2人の愛のパワーで現世に姿を現す…
やっぱり2人の……じゃねーか! - 97スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/28(金) 19:49:03
今日もぼちぼち投稿していきます。たぶん21時からは金曜ロードショーを見てると思いますw
- 98スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/28(金) 19:51:02
「大家さんの曲が世界中から愛される曲になれば顕現に必要なエネルギーが集まったりしないかな?」
大家さんはトットムジカと真逆のような存在だから、顕現に必要なエネルギーも正反対なんじゃないかな?
トットムジカは封印されて世間から隔離されていたけど、大家さんはその逆で世界中から愛される曲になってもらえれば顕現できるんじゃないかな?
『その方法はいい案だと思います。ただ、ウタさんの案では曲にエネルギーが集まるというよりは、世界に私の存在を認めてもらうことで、私が現実世界に顕現するために必要なエネルギーが少なくなる、つまり顕現のハードルが低くなるという表現が正しいかもしれませんね』
「?う、うん。難しい話はよくわからないけど、とりあえずこの案は大家さんが顕現する可能性があるってことだよね!」
『だけど、この案はほぼウタさん任せになってしまい、私にできることがないのですが……』
私の案は大家さんのお墨付きをもらえたけど、彼女は申し訳なさそうにしている。
「そんなことはないよ。大家さんの曲を作るのだから、大家さんの協力なしには曲は完成しないからね」
『ですが、私なんかの曲が世界に認められるのでしょうか?ファンのみなさまが求めているのはウタさんの曲であって、私の曲ではないような……』
大家さんは少し怯えた表情をしている。確かに大家さんのための曲を発表して、それが世界に受け入れられなかったら、その時のショックは想像を絶するものになるだろう。 - 99スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/28(金) 21:37:16
「大家さんは私が世界一の歌姫になれないと思ってる?」
『そんなことはありません!ウタさんは絶対に!絶対に世界中から愛される歌姫になります!』
私の問いかけに対して大家さんは興奮気味に答える。
「私が世界中から愛される歌姫になれるのなら、私が歌う曲も、大家さんの曲も世界中から愛されるはずだよ!」
私は世界一の歌姫になる自信がある。だって、仲間と家族のみんなが世界一の歌姫になるっていう私の夢が叶うと信じてくれているから。
「だから、私のことを信じてみてよ!絶対に素敵な曲にしてみせるからさ!」
大家さんにも私の夢が叶うって信じてもらえれば向かう所敵なしだ。
「ね!大家さんは私の幸せを願ってくれる存在なんでしょ?」
今一度、大家さんの存在理由を聞いてみる。
『はい、そうです』
大家さんは力強く答える。
「なら大丈夫だね!大家さんが世界中から愛されることは私にとって幸せなことだから、大家さんが私の幸せを願ってくれるなら、この夢は絶対に叶うよね!」 - 100スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/29(土) 07:24:27
保守
- 101スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/29(土) 11:38:34
大家さんはこの部屋で私の夢をたくさん叶えてくれたんだ。この新たな夢もきっと叶えてくれる。
『……そうですね、ウタさんの幸せを願う私が弱音を吐いてはいけませんね』
大家さんは自分の頬をパンパンと軽く叩き、気合を入れていた。そんな大家さんに私の気合も分けてあげたいと思い、私は立ち上がり大家さんの隣に歩み寄った。
「へへ、音楽のことならウタお姉さんにまかせといて!」
昔、シャンクスにされたように大家さんの頭をわしゃわしゃと撫でてみる。幼い頃の私はシャンクスに頭を撫でられるのが大好きだった。
『……とても気持ちがいいです』
大家さんも気に入ってくれたようだ。わしゃわしゃを受け入れて身を任せている。お姉さんらしいことができて私も嬉しい。
「それじゃあ、そろそろルフィを起こしにいこうか」
話がひと段落したので、ルフィにも説明しないとね。大家さんのこれからのことについてはルフィにも協力してもらわないといけないし。
私は大家さんの手を取り、ルフィの待つ寝室へと歩みだす。
んー、でもこの部屋が出来た理由は少しぼかして説明しよう。
さすがにルフィとの仲を深めるために部屋が出来たってことをルフィ本人に知られるのは恥ずかしいからね。 - 102スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/29(土) 12:04:35
「ルフィー!起きてー!もう話終わったよ!」
ベッドで爆睡しているルフィの頬をぺちぺちと叩きながら呼びかかる。
「んん~、よく寝た!おはようウタ!もう話は終わったのか」
「うん。待たせてごめんね」
「いいよ、気にすんな!」
私と大家さんはルフィの隣に腰を掛け、この部屋の仕組みや大家さんのこれからのことについて説明した。
いつでもこの部屋へ入れるようになったこと、大家さんの新しい姿を考えていくこと、大家さんが顕現するために曲を作ることを話した。
「それでこの部屋に入るには私以外にもう一人来てもらわないといけないから、これからもルフィにはこの部屋に来てほしいけど、いいかな?」
これから大家さんの姿を考えたり曲作りを進めるためには誰かに協力してもらわないといけない。できれば毎回ルフィに来てほしいのだけど……
「ん、いいぞ。おれも大家さんとこの部屋のことは好きだからな!」
相変わらずルフィは何の躊躇いもなく好意をストレートに伝えてくる。
『……す、好きだなんて///』
ルフィに不意打ちされた大家さんは顔を赤らめている。大家さんには早いとこルフィ耐性を付けてもらわないといけないね。 - 103スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/29(土) 12:29:03
「それで思ったんだけどよ、大家さんの名前も考えたほうがいいじゃないか?」
「確かにいつまでも大家さん呼びはよくないよね。というか大家さんってもともと名前ある?」
今まで私たちが勝手に大家さんって呼んでいただけで、すでに名前があるのかもしれない。勝手に新たな名前を考える前に確認しとかないと。
『いえ、私の名前は決まっていません。ですから好きに呼んでいただいて良いですよ』
「そっか、なら新しい姿や曲と一緒に名前も考えてあげなきゃね!」
トットムジカはもともと曲名だったから、大家さんの名前も彼女のために作った曲のタイトルを名前にしたらいいかな。
『名前も考えていただけるなんて、とても嬉しいです』
「んー、それじゃあ名前が決まるまでどうするんだ?とりあえず、大家さんって呼んでいいのか?」
『私はそれでいいですよ。大家さんの名に恥じぬようにこれからも部屋の管理をがんばります!』
どうやら、大家さんと呼ばれることを意外と気に入ってくれていたみたい。なら、新たな名前が決まるまではそう呼ばせてもらおう。
名は体を表すって言うくらい大事なことなので時間を掛けて素敵な名前を考えてあげないとね。 - 104スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/29(土) 13:09:31
「これからの方針は決まったし、この話は一旦ここまでにしとこうか」
少しでも早く大家さんの姿や名前を決めてしまいたいって想いはあるけれど、慌てて考えてもいい結果にはならないだろう。
今日はこの辺でお開きにして、後日ゆっくりと話を進めていくのが最善だと思う。
「そだな!おれも今日はすげェ頭を使ったから、これ以上考えるとパンクしそうだ!」
『ルフィさん、ウタさん、今日はありがとうございました。どれでは今日はもうお帰りになりますか?』
今回は私たちが勝手に入り込んで、大家さんにひたすら質問していたので、大家さんは疲れ切っているはずだ。
私たちはもう退散して大家さんにはゆっくり休んでもらったほうがいいかな。いや、でも……
「今回私たちは大家さんが部屋の掃除をしている最中に入り込んだんだよね?」
『はい、そうですね』
「なら、今日は大家さんの掃除を最後まで手伝うよ。ルフィもそれでいいよね?」
「おう!大家さんがいつもやってることを3人でやろうって言ったしな!」
そういえばそうだったね。それに掃除を手伝って大家さんのことをもっと知ることができれば、曲作りなどにも生かせるはずだ。
『それではお言葉に甘えて今日はお二人に手伝ってもらいます。その、わ、私の指導はとっても厳しいので、か、覚悟してついてきてください!』
私たちを和ませるためか、大家さんは慣れない教官キャラに挑戦していた。できればしばらくそのキャラでいてくれないかな?可愛すぎるんだけど。 - 105スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/29(土) 16:57:21
「教官殿!次の指示をお願いします!」
『えっと、つ、次は床の拭き掃除にとりかかりなさい!』
「「イエスマム!」」
私がふざけて大家さんを教官呼びするとルフィも乗っかり、軍隊ごっこが始まった。
最初、大家さんは私たちの悪ふざけに戸惑っていたが、私たちがしつこく教官呼びするので、根負けして付き合ってくれている。
『ウタさん!隅の拭き上げが甘いですよ!ルフィさんは力の入れ方にムラがあります!』
けど、今は割とノリノリで教官役をやってくれている。しかも結構教官役が板についてるし。
終始こんな感じで掃除をやっていたので、最後まで楽しみながら掃除をすることができた。
「あっという間終わったね」
「ピカピカになったな!」
『ルフィさん、ウタさんありがとうございます。いつもよりキレイになりました!』
大家さんも満足げな表情だ。いやーいい汗かいたよ! - 106スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/29(土) 17:25:07
「結構汗かいたな」
「そうだね。いい運動になったよね」
服がしっとりするくらいの汗をかいてしまった。正直、今すぐお風呂に入りたいけど先ほど浴室も掃除したばかりだ。
また掃除するのもなんだしここは我慢しておこう。夢の世界で汗をかいているだけで、この部屋を出れば汗の不快感もなくなるわけだし。
『お二人はお風呂にお入りください。掃除なら私が後でやっておきますので』
「いやいやさすがにそれは申し訳ないよ。部屋を出るまで我慢したらいいだけだから気にしないで」
「なら3人で風呂に入って、3人で掃除したらいいんじゃねェか?」
私と大家さんがお互いに気をつかいあっているところにルフィがナイスな提案をする。
「大家さんも汗かいてるし、それでいこっか」
『!? いえ私は大丈夫です!お二人だけでゆっくりしてください!』
「もー、今日は遠慮しちゃダメって言ったでしょ。大家さんが大きな浴室にしてくれたおかげで3人入っても余裕あるから大丈夫だよ!」
「そうだぞ大家さん。今日は3人で一緒にする約束だろ。じゃあおれはお湯溜めてくるから、少し待っててくれよ」
そう言ってルフィは先に浴室に向かった。行動が早くて助かる。
『ホントに大丈夫ですので!私のことは気にしないでください!』
あたふたする大家さんはダラダラと汗を流している。ほら、ますます汗だくになってるからお風呂入らなきゃダメでしょ! - 107スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/29(土) 17:44:31
「ウター!お湯溜まったぞォ!」
しばらくして浴室のほうからルフィの声が聞こえた。
「ほら、大家さんいくよ」
私は大家さんの手を取り浴室へ向かう。大家さんの手は汗でびしょびしょになっていた。
『あわわわわわわ』
大家さんは力ない足取りでよろよろと歩いている。やっぱり今日は大家さんに無理をさせていたのだろう。疲れ果ててしまっている。
「大家さんばんざいして。ほら、ばんざーい」
大家さんが来ている服は私が子供の頃に来ていた服と同じだったので、脱がすのは容易かった。私も素早く自分の服を脱ぎ去りルフィの待つ浴室へ入った。
「ルフィおまたせ!お湯溜めてくれてありがとね!」
大家さんのほうを見ると、彼女は顔を手で覆っていた。目を塞いでいると危ないよって注意しようと思ったけど、よく見ると指の隙間からルフィのほうをじっと見ていた。
『……ルフィさんはお父さんだから、一緒にお風呂に入ることはおかしなことじゃない。うん、家族ならこれは当たり前のこと』ボソボソ
大家さんは小声で何か唱えてる。どうしたんだろ? - 108スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/29(土) 18:07:46
「じゃあ、さっそく背中流してあげるねルフィ!」
いつものようにルフィの背中を流す準備をする。あー、でも今日は大家さんもいるから手分けしたほうが効率いいよね。
「今日は大家さんがルフィの背中を流してあげて。私はルフィの髪を洗ってあげるから」
『えっ!私がですか!?』
「うん、お願いね」
大家さんにボディタオルを手渡す。このボディタオルは肌触りが良くて私も気に入っている。大家さんが準備してくれているものはどれも一級品のものばかりだ。
「今日は大家さんが洗ってくれるのかァ。ありがとう大家さん!」
『……で、では失礼します』
大家さんは恐る恐るルフィの背中に触れる。洗っているというよりはくすぐっているように見えるけど。
「あひゃひゃひゃ、大家さん!くすぐってェよw」
ルフィにとってはもどかしい感触だったらしく、笑いを我慢できていなかった。
『ご、ごめんなさい!もっと強くしたほうがいいですか?』
「おう!力いっぱい洗ってくれ!」
ルフィの要望に応えようと大家さんはゴシゴシと力強く背中を洗い出した。よし、私もルフィの頭を洗ってあげないとね。 - 109スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/29(土) 18:23:59
「ふぅ!ありがとう二人とも!すっげェ気持ちよかったぞ!」
大家さんと協力したのでスムーズに洗い終わった。ルフィも満足してくれて何よりだ。
「じゃあ、次は私の髪と背中をお願いしようかな!背中はまた大家さんにお願いしていい?」
たぶん、髪を洗うのはルフィのほうが慣れていそうだから、背中を大家さんにお願いしてみる。
『……はい、がんばります』
「うん、お願い!私は優しくお願いね!」
ルフィと場所を変わり、大家さんに背中を向ける。ルフィは慣れた手つきで髪を洗う準備をしている。
『では、失礼します』
そう言って、大家さんは私の背中をボディタオルで洗い始めた。
「おお、いい力加減だよ!すっごい気持ちいい!」
なんというか一生懸命さみたいなのが伝わってきて心が温かくなる。これはいいものだ。
「じゃあおれも髪洗うぞウタ」
「頼んだよルフィ」
ルフィはいつものように優しい手つきで私の髪を洗い始めた。やばいよこれは。背中と頭が幸せで包み込まれている。ここってもしかして天国? - 110スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/29(土) 18:48:58
楽園はここにあった。そんなことを考えていたら、いつの間にか髪も背中も洗い終わっていた。
今後この部屋に来たときは絶対に毎回お風呂に入ろう。うん、そうしよう。
「それじゃあ、次は大家さんを洗ってあげるね」
『お手柔らかにお願いします……』
さて、大家さんの小さな体を私とルフィの二人がかりで洗うわけにはいかない。どちらか選んでもらわないと。
「大家さんは私とルフィのどっちに洗ってもらいたい?」
『えっと、それでは、ウタさんでお願いします』
「だってさルフィ!大家さんは私のほうがいいってさ!残念だったね!」
「いや、別に残念じゃねェけど。それより優しく洗ってやれよ。大家さん子供なんだから」
勝ち誇る私に向かって、ルフィは悔しがるそぶりを見せず、むしろ調子に乗る私は注意された。そんな言い方されるとシャンクスに怒られたことを思い出してしまう。
「はい、気を付けます。じゃあ大家さん背中洗うよ」
優しくって言われたから、ボディタオルじゃなくって素手で洗うのが正解だよね。
『!? あの、ウタさん?どうして素手なんですか?』
「子供のお肌は敏感で繊細だからね。タオルは子供のお肌を痛めるかもしれないから素手で洗うよ」
うん、嘘は言ってないよね。断じて私が大家さんのもちもち肌を直に堪能したいとかそういうことじゃないからね。 - 111スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/29(土) 19:12:55
はーぁ、なんだこのモチモチ感は。私の手に吸い付くんだけど。水を弾くほど瑞々しく、きめの細かい柔肌だ。
ふと、大家さんが自らの体を使って私の背中を流してくれたらさぞ気持ちがいいだろうなって思ってしまう。
でも、なんでだろう。それは絶対にやってはいけない気がする。すっごい悪いことのような気がする。
『あの、ウタさん?もう背中洗い終わってますよね?』
「あっ、ごめんね!なんか無我夢中になってた。じゃあ次は髪を洗うね」
『……?はい、お願いします』
いけないいけない、集中しないと。髪もデリケートなところだから、優しくしないとね。
「うわー、髪の毛さらっさらだね。これ私の子供の頃の髪じゃないよ。私が子供の頃はもっとごわごわしてたもん」
『そんなはずはないと思いますけど。今の私は子供の頃のウタさんをきちんと再現しているはずなので』
「それならあれかな。私は実際は船の上で生活してたから髪はごわごわしてたけど、船に乗らずに室内で過ごしていたら、これだけサラサラだったってことかな?」
『もしかするとそうかもしれませんね。環境による影響までは再現できていなかったのかもしれません』
なるほど私の髪の毛にはこれだけのポテンシャルがあったのか。もう少し髪のお手入れに手間をかけておけばよかったな。 - 112スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/29(土) 19:43:27
3人とも体を洗い終わり、今は湯船に並んで浸っている。
「そういえば、大家さんはかなづちじゃないの?」
私とルフィは能力者だからお湯につかると少し力が抜けてしまうけど、私の姿をした大家さんはどうなんだろう?
『ウタさんの能力までは再現していないので、お湯につかっても変化はありません。ただ、私自身は泳いだことがないので、かなづちの可能性はありますね』
「そうなんだ。なら、いつかナミに部屋に来てもらって、摩訶不思議ルームのプールで泳ぎ方を教えてもらおうよ」
サニー号には能力者が何人もいるから、泳げる人が増えて困ることはない。
『ぜひ、お願いします!私が泳げるようになったら、いつかウタさんの助けになると思うので!』
大家さんも泳ぎを身に着けることには前向きみたい。自分で提案しといてなんだけど、ナミに泳ぎを教えてもらえるのはなんか羨ましいな。
「そんじゃ、そろそろ上がって掃除するか」
「そうしよっか。これ以上温まると掃除してるときにまた汗かいちゃうしね」
一度掃除をしているから、そこまで手間はかからないでしょ。ささっと終わらせますか。
『あの、その裸のままで掃除するんですか?』
そのまま掃除を始めようとする私たちに向かって大家さんが問いかける。
「服が濡れるのを気にしなくていいから、このまま掃除するけど変かな?」 - 113スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/29(土) 20:17:15
『……いえ、とても合理的で素晴らしい判断だと思います』
なんかロボットみたいなしゃべり方になってる。今度はお掃除ロボ的なキャラでいくのかな?すこしキャラが変わった大家さんは気になったけど、3人で協力して掃除したので、すぐ終わることができた。
浴室から出て、服を着替え髪を乾かした後、私たちはキッチンに移動し、冷たい飲み物で一息ついていた。
「それじゃあ、これを飲み終えたら今日はもう解散にしようか」
「そだな。大家さん!今日も世話になったな!」
『お礼を言うのはこちらのほうです。今日は私にとって忘れられない一日になりました』
大家さんは立ち上がり深々と頭を下げた。頭を下げる姿も品があってきっちりしている。
「顔を上げて大家さん。忘れられない一日なったのは私もだよ。これからも私とルフィは大家さんにたくさん迷惑かけると思うけどよろしくね!」
「これからもよろしくな!またうめェ肉食いに来るから!」
『はい!お肉もお酒もパンケーキもたくさん準備して待ってます!』
私たち3人は屈託のない笑顔で次回の約束をする。
「またね大家さん!今日はありがとう!」「またなァ!」
私はルフィの手を取り目を閉じる。このまま私が現実世界を強く意識すると部屋から脱出できるのだろう。
『今日は本当にありがとうございました!本当に……本当に……』
だんだんと大家さんの声が遠のいていく。時折、鼻をすする音がしていた。そんなに寂しがらないで大家さん。またすぐに会いに行くから。 - 114スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/29(土) 22:06:36
私は何度もお礼を言いながら二人を見送った。
目と鼻から溢れてくるものを止めることができなかった。
溢れてくるもので視界がだんだんぼやけてきたので、必死に両手で目を拭うと、次に目を開いた時にはもう二人の姿は見当たらなかった。
しばらく私は立ち竦む。あまりにも夢のような時間だったので、今までのことは私が生み出した幻影だと考えてしまう。
先ほどまで二人が座っていた席に触れてみる。そこにはまだ二人の温もりが残っていた。
大丈夫、幻影なんかじゃない。私はルフィさんとウタさんに会うことができたのだ。
二人はまたすぐに会いに来るって約束してくれた。
ルフィさんとウタさんは嘘をつかない。もしかしたら、明日にでも来てくれるかもしれない。
食材や料理は私がイメージするとすぐに冷蔵庫内に準備することができる。
だけど、毎回同じものだと二人も飽きてしまうだろうから、バリエーションを増やしておかないと。
データベースの情報を調べて、二人が喜びそうなものを勉強しなきゃ。 - 115スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/29(土) 22:20:06
この部屋はウタさんの能力をお借りして作っているので、私やこの部屋の存在をウタさんに拒絶されると簡単に消えてなくなる。
ウタさんは初めてこの部屋に閉じ込められたときは、この部屋のことを気味が悪いと思っただろうし、私自身もトットムジカに関係のある存在だから、私の正体がばれた時点で私は拒絶されて消えてなくなると思っていた。
だけど、ウタさんは拒絶することなく、私という存在を受け入れてくれた。それどころか私の姿や名前をこれから一緒に考えてくれると約束してくれた。
そして、私のために歌を作ってくれると言ってくれた。
私はずっとこの部屋の中にしか存在できないと思っていた。そんな私の手を取り、外の世界に連れ出してくれると約束してくれた。
ウタさんは絶対に世界中から愛される歌姫になる。ウタさんは私なんかが手助けしなくても自力で夢を叶える強さがある人だ。
だけど、ウタさんは私の手助けを望んでいる。だから、私はこれからもウタさんの幸せのためにこの身を捧げ続ける。
だって、私はあの時エレジアにいた人たちの、ウタさんの幸せを願う人々の想い背負って生まれたのだから。
今日は色々と突然の出来事が多くて、ウタさんやルフィさんと少し距離を置いた対応をしてしまった。でも、二人はもっと甘えていいと言ってくれた。私が甘えると二人とも嬉しそうにしてくれた。
だから、次は頑張って今日よりも甘えてみようと思う。ウタさんはお姉さまって呼ぶととっても喜んでくれたので、次は積極的にお姉さまって呼んでみよう。
ウタお姉さま、本日はお越しいただきありがとうございます。とても楽しい時間を過ごすことができました。またのお越しを心よりお待ちしております。
……いや、こんな言い方ではウタさんは喜んでくれないよね。
……ごほん。ウタお姉ちゃん!今日はありがとう!たくさんおしゃべりできてとっても楽しかったよ!また遊びに来てね♪楽しみにしてるよ♪
……こんな感じでいけばよろこんでくれるかな?
-fin- - 116スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/29(土) 22:24:12
これにて完結です。お付き合いいただきありがとうございました。
謎の部屋シリーズもこの話で完結になります。
大家さんの正体と謎の部屋の仕組みを明かすことをゴールとして書いていたので、なんとか書き終えることができました。 - 117二次元好きの匿名さん22/10/29(土) 23:41:46
お疲れ様!
ええ話読ましてもらってありがとう! - 118スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/30(日) 00:10:55
今回の反省点は想定よりも話が長くなってしまったことですね……
文字数で言うと1作目が10,546文字、2作目が15,784文字、3作目が19,449文字。
そして今回は29,527文字。15,000文字前後で収めようと思っていたのに、その2倍の量になってしまいました。
大家さんの正体が判明するまでは書き溜めた文章を投稿していたのですが、その後は思いついたことを書いて投稿していたから、冗長でまとまりがない文章が多いのなんのって。 - 119二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 08:11:44
いい話だった…
- 120スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/30(日) 13:27:55
一応、私が考えているこの後の流れを箇条書きにしてみました。
・ルフィが海賊王になり新時代をつくる。
・大家さんのために作った曲を発表する。その曲が世界中でヒットし、ウタは名実ともに世界一の歌姫になる。
・ナミの協力によってルフィとウタの結婚式が実現する。
・結婚式で初めて大家さんが顕現しお披露目会になる。
・シャンクスのことをお父さんと呼び甘えまくる大家さん(ウタの差し金)。私以外にこんなに可愛い娘がいたんだねって言いながら冷めた表情でシャンクスを見つめるウタ(茶番)。その後、大家さんはルフィのこともお父さんと呼びながら甘えるので困惑するシャンクス。 - 121二次元好きの匿名さん22/10/30(日) 22:05:34
確かに長かったですが、その分読み応えがあってとても楽しめました。ありがとうございます。
その後のやつも見てみたいですが、それはやはり蛇足ですかねこのキレイな終わり方だと。 - 122二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 10:06:20
このレスは削除されています
- 123スレ主◆vpF1Oo.Q9w22/10/31(月) 10:08:20
pixivには近いうちに投稿するつもりです
- 124二次元好きの匿名さん22/10/31(月) 21:37:40
すごく良かったです!幸せになれるとええなあ