- 1121/10/24(日) 00:00:23
- 2121/10/24(日) 00:00:45
「雨が降っているからこそ、こんなにも美しい風景を見ることができるのだ!」
そして、彼は歌うように叫んだ。
「ああ! 世界よ! この世で最も美しいものを見せてくれてありがとう!」
「…………何をやっているんだ?」 - 3121/10/24(日) 00:01:16
背後からの問いに、少年は振り返った。
そこに立っていたのは一人の青年だった。年の頃なら二十代半ばというところか。
だがその顔には生気が感じられない。まるで死人のような虚ろな目をしていた。 - 4121/10/24(日) 00:01:42
「あなたは誰ですか? 僕の邪魔をしに来たんですか?」
「そうじゃない。ただ――」
「僕は今、とても幸せな気分でした。それを邪魔しないでください」
「幸せだと? この雨の中でか?」 - 5121/10/24(日) 00:01:59
「ええ、もちろんですとも」
「ふむ…………」
青年は何かを考えるような仕草を見せた後、おもむろにポケットに手を入れ、そこから一枚の写真を取り出した。
「これはお前だな?」 - 6121/10/24(日) 00:02:08
それは先ほどの写真と同じ人物だった。
「それがどうしたと言うのです? 僕と何の関係が?」
「大ありだ。お前はこの写真を撮られた時、嬉しそうな顔をしていた」
「当然ですよ。だって - 7121/10/24(日) 00:03:26
「当然ですよ。だって、あんな素敵な場所で撮影ができたんですから」
「しかし、今のお前の顔からはそんな感情は見られない。一体どういうことなんだ - 8121/10/24(日) 00:05:14
「しかし、今のお前の顔からはそんな感情は見られない。一体どういうことなんだ?」
「………………」
少年は無言のまま、青年を見つめている。
「お前は一体、何を隠している - 9121/10/24(日) 00:07:00
「お前は一体、何を隠しているんだ?」
「……何も隠してなんかいませんよ。僕はいつだって素直に生きてますから」
「 - 10121/10/24(日) 00:07:38
「そうかな?」
「ええ、そうですとも」
「じゃあ、質問を変えよう。お前は何のために生きている?」
「決まっています。愛する人と結ばれ、家庭を築くためです」
「愛する人と結ばれるために、どうしてこの写真が必要なんだ?」
「だから、言ったでしょう? - 11121/10/24(日) 00:08:34
「だから、言ったでしょう?そのために撮ったって」
「違うな。本当はこう思っているんじゃないのか? こんなことをしても無駄だと」
「そんなことはありませんよ」
「では、なぜ - 12121/10/24(日) 00:09:26
「では、なぜそんな風に思う?」
「だって、僕は愛しているんですよ? その人が心の底から愛しているんです。たとえ他の - 13121/10/24(日) 00:10:57
「だって、僕は愛しているんですよ? その人が心の底から愛しているんです。たとえ他の誰かを愛していたとしても、きっと最後には僕を選んでくれるはずです」
「本当にそう思ってるのか?」
「もちろんですとも!」
「……………………………………………………………………………………………………………………………… - 14121/10/24(日) 00:14:37
※以下、……が続いたため「……を削除
「ならば聞くが、もしその相手が別の男を選んだら、お前はその相手を恨まないのか?」
「 - 15121/10/24(日) 00:17:28
「そんなわけがないでしょう! でも、それもまた運命というものかもしれませんね」
「運命か…………」
青年 - 16121/10/24(日) 00:17:54
青年はそこで言葉を止め、じっと少年の目を見た。
「なるほど、確かにお前の言うとおりかもしれないな - 17121/10/24(日) 00:19:11
「なるほど、確かにお前の言うとおりかもしれないな」
「でしょう!?」
「だが、これだけは覚えておけ。お前が信じているものが全て正しいとは限らないということを - 18121/10/24(日) 00:20:01
「だが、これだけは覚えておけ。お前が信じているものが全て正しいとは限らないということを」
「………………」
「それを忘れなければ、お前はまだ救われる」
「…………何を言っているのかさっぱりわかりません」
「今はそれでいいさ。だが、 - 19121/10/24(日) 00:20:33
「今はそれでいいさ。だが、いずれわかる時が来る」
「もう行ってもいいですか? 僕には大切な使命があるんです」
「ああ、 - 20121/10/24(日) 00:21:24
「ああ、好きにするといい。ただし、最後に一つだけ忠告しておく」
「まだ何かあるんですか?」
「お前 - 21121/10/24(日) 00:21:54
「お前が今いるその場所は、決して居心地の良い場所じゃないぞ」
「…………わかってますよ、そんなこと」 - 22121/10/24(日) 00:23:32
「いや、わかっていない。お前は自分の本当の気持ちに気づいていないだけだ」
「何を言ってるんですか?」
「 - 23121/10/24(日) 00:24:39
「…………まあ、せいぜい気をつけることだな」
それだけ言い残し、青年はその場を立ち去った。
「 - 24121/10/24(日) 00:25:02
「いったい何だったんだろうか?」
少年は首を傾げながらも、再び歩き始めた。
そして、彼の視界にとある建物が映った。
それは、先ほどの写真に写っていた建物だった。
「うわぁ、綺麗だなぁ!」
少年は目を輝かせながら、 - 25121/10/24(日) 00:26:11
少年は目を輝かせながら、写真に収まっていた風景を見つめた。
それは、とても幻想的な光景だった。
どこまでも広がる海と空、そして、そこに佇む巨大な城。
まるで絵画の中に入り込んだかのような錯覚 - 26121/10/24(日) 00:26:46
まるで絵画の中に入り込んだかのような錯覚すら覚えてしまう。
「こんな素敵な場所に来られて幸せだなぁ!」
少年は満面の笑みを浮かべ、そう呟いた。
「あの人もきっと、こんな景色を見ながら愛しい - 27121/10/24(日) 00:27:18
「あの人もきっと、こんな景色を見ながら愛しい人と結ばれたに違いない。なんてロマンチックなんだろう!」
その時、少年の脳裏に一つの考えが浮かんだ。
「そうだ! この写真をあの人にプレゼントすれば、きっと喜んで - 28121/10/24(日) 00:28:18
「そうだ! この写真をあの人にプレゼントすれば、きっと喜んでくれるよね?」
そして、彼は先ほどの青年の言葉を思い出す。
(『お前が今いるその場所は、決して居心地の良い場所じゃない』)
「…………そうか、そういうことだったんだ」
少年はようやく自分の置かれている状況を理解した。
「僕は騙されていたんだ。最初からこの写真は偽 - 29121/10/24(日) 00:29:26
「僕は騙されていたんだ。最初からこの写真は偽物だった。僕は騙す側に回っていたつもりなのに、いつの間にか騙されていたんだ」
だが、不思議と怒りはなかった。 - 30121/10/24(日) 00:30:12
だが、不思議と怒りはなかった。「こんなにも美しい風景を見せてくれただけでも、感謝しないといけませんね」
少年はそう思い、その場を後にした。
それから数年後、その写真を撮った人物と瓜二つの少年が - 31121/10/24(日) 00:30:50
それから数年後、その写真を撮った人物と瓜二つの少年が、ある女性の前に現れた。
「僕と結婚してください」
少年は目の前の女性に向かって求婚する。
「えっ?」
突然のことに戸惑う女性だったが、少年の真剣な眼 - 32121/10/24(日) 00:31:51
突然のことに戸惑う女性だったが、少年の真剣な眼差しを見て、微笑みながらこう答えた。
「はい、喜んで」
そして、二人は永遠の愛を誓った。 - 33121/10/24(日) 00:34:24
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なんか終わった雰囲気が出てるのでこの辺りで終了です。 - 34二次元好きの匿名さん21/10/24(日) 08:22:56
おつー