- 1◆y6O8WzjYAE22/10/28(金) 20:58:51
お付き合いを始めてからの初デート。途中ブライトたちが乱入してくるというアクシデントがありつつも無事終えることが出来た。
そして、一度デートに誘ってしまえば不思議なもので、その後は自然とお誘いすることが出来るようになっていた。慣れって偉大。
今日も今日とて……いや、別にそこまで頻繁にデートしてる訳じゃないけど。デートの為に週末の予定を聞き出す。
「ねぇ、今週末って空いてる?」
「何? デートのお誘い?」
なんで分かったんだろう。いや、週末の予定を聞いた時点でお出掛けしたいのはバレても当然か。
かといって流石にその程度ではもう照れない。
「そうだけど。空いてるの?」
「ありゃ、今日は照れないんだな」
「もう、流石にその程度じゃ照れないからね?」
「そうか、残念だな……可愛いドーベルを見る機会が減っちゃったか……」
大して残念そうでもない顔をしながら、平然と甘い言葉を口にする。
あーもう。どうして平気でそんな事が言えるんだろう。顔が熱くてたまらない。
まだ学生とトレーナーいう立場で恋人らしいことをさせてあげられないという理由も大きいのか、トレーナーは恋人になってからは好意や褒め言葉を口にする事が増えた。
多少のからかいには慣れたけど、未だにストレートに褒められる事に慣れていなくて、どうしても照れてしまう。
「大丈夫、いつもちゃんと可愛いよ」
なんでわざわざ追い打ちをかけてきたの……!? - 2◆y6O8WzjYAE22/10/28(金) 20:59:03
「……うん、予定は……そうだね。大丈夫。空けられるよ」
空いている、じゃなくて空けられる、なのが少し引っ掛かるけど。
無理はしないで、とは常々伝えているから本当に大丈夫なんだと信じよう。
「行先はどうするんだ?」
「え~っと」
初デートの時は何も決めていなかったけど、それ以降はちゃんと行きたい場所を決めてからお誘いしてる。今回も行きたい場所があったからお誘いした訳で。
スマホでウマスタグラムを開き、お店の宣伝を見せる。
「ここ。ここのカフェ。期間限定のメニューが美味しそうだったから、一緒に行きたくて」
「へ~、モンブランか。秋だしな」
秋の新作スイーツと言えばモンブラン。という事で特徴的な見た目にも創意工夫が凝らされていて、思わず興味を惹かれてしまった。
「大丈夫そう?」
「もちろん。楽しみにしておくよ」
つつがなくデートの約束を取り付ける事ができ、カフェのモンブランにも期待が膨らむばかりだった。 - 3◆y6O8WzjYAE22/10/28(金) 20:59:15
ウマ娘寮とトレーナー宿舎は距離的にもそこまで離れてないんだし、近くで待ち合せればいいのかもしれないけれど。
ちょっとした特別感を味わうためにも、デートの日は駅前のあたりで待ち合わせをするのがアタシたちのお約束になりつつある。
今日の待ち合わせはアタシの方が来るのが早かった。大体トレーナーの方が早いからちょっとだけ何かに勝った気分になる。
「ごめん、待たせちゃった?」
「ううん、今来たとこ」
恋愛ものの物語でよく見るやり取りだけど、狙った訳じゃなくて本当に着いたのは今さっき。
別に言ってみたかった訳じゃない。……嘘、本当は『今来たとこ』って言ってみたかった。
いつもは流れるように『可愛いね』とか言ってくるくせに、今日はやけにトレーナーの反応が鈍い。
……? これは鈍いというよりも呆けてる?
「どうかしたの?」
「あっ、いや、ごめん。見惚れてた」
普通に可愛いねとか言ってくれた方がまだ耐えられた。
飾りっ気のない言葉でそんな事を言われたらときめいてしまう。
「……そんなに?」
「俺、女の子が着てる秋物の服って好きだからさ。それで」
立ったまま話しているのもなんだしカフェへと向かいながら。
トレーナーから服装の好みとか初めて聞いた気がする。
男の人なのに全然そういう話をしないから、あんまりそういう事に頓着がないのかな、って思ってた。
意外とあるんだな、そういう好み。 - 4◆y6O8WzjYAE22/10/28(金) 20:59:27
「意外か?」
「だって、アンタからそういう話あんまり聞かないから」
「自分の担当トレーナーがこういう女の人の服が好きで~、とかペラペラ喋ってたら普通嫌だろ?」
「まあ、そうだけど」
「流石にそういう話を担当の子の前でするやつはいないと思うな~……」
あくまでトレーナーの好みを知りたいアタシ目線の話であって、一般的に考えると確かにトレーナーの言ってる事の方が正しい。
しかし今来ている服はトレーナーの好みだとして、ひとつ、気になる部分がある。
「男の人ってマニキュアとかって好きじゃないんだっけ……」
ライアンにワンピースを送られて以降、マニキュアやネイルをする機会が増えた。
あんまり過度に自分を着飾るのってどうなのかな、と思っていたんだけどやってみると不思議で。
飲み物を飲んだりする時にふと綺麗に塗られた爪が見えると気分が高揚する。
そういった事もあり今日もデートだししてきた訳だけど、トレーナーの好みに合わせる事を考えるとあまり適してない気がする。
「ん? ああ~、俺の好みで言えばそうだね。イヤという程ではないけど、基本的にちゃんと短く切り揃えられた爪が好きかな?」
御多分に漏れず、トレーナーも別にマニキュアやネイルは好きじゃないみたい。
そっか……。好きじゃないんだ……。
「次からはやめようかな……」
「いや、それは困る」
「トレーナーが困ることなんてなくない?」
トレーナーの好みに沿ってないのなら、してこないに越したことはないはず。 - 5◆y6O8WzjYAE22/10/28(金) 20:59:37
「あるぞ? デートが楽しみでお洒落してくれたんだな~とか一目で分かるし。ドーベル自身もやっぱり楽しそうだしさ」
「そう、なのかな……」
流石にウマ娘の事をよく見ているトレーナーという職業なのも相まってか、こういう時のトレーナーは中々に観察眼が鋭い。
トレーナーから見てもそう見えるんだったら、違いないんだと思う。
「それにさ。ドーベルのそれは俺の為にしてる訳じゃないだろ?」
服に関してはトレーナーが可愛いって思ってくれるかな……という部分もかなり大きい。
ただマニキュアに関してはその通りで。アタシ自身の気分を上げる為とか、綺麗に塗ってある爪を見るとちゃんとお洒落できてる自分に自信が持てるからとか。
とにかくアタシがどう思うか、という部分が大きい。
「あ、うん……そうだけど」
「じゃあ俺の事を気にする必要はないんじゃないか?」
「……そうなの?」
「そうだよ? 俺はドーベルがどう思うかの方が大事かな。そういうドーベルを見ている方が俺自身も楽しいし、嬉しいから」
そっか。じゃあアタシ自身の為にするお洒落も結果的にトレーナーも喜んでくれるんだ。
お洒落をする理由がひとつ増えたみたいで、嬉しさと共にどこかこそばゆい。
「だからさ、ドーベルがどういう衣服を身に着けて、どういうお化粧をしていようが、きっとそれは俺の好きなドーベルなんだよ」
……本当に。素面でよくそんな事が言えるなぁと思う。 - 6◆y6O8WzjYAE22/10/28(金) 20:59:55
「それ、結構恥ずかしいこと言ってる……」
「そうか?」
「アタシじゃ絶対言えないよ、そんなこと」
「本心だからなぁ……」
本心だとしても。そこまでオブラートに包まずストレートに好意を伝える事はアタシには難しい。
どうしても遠回しな伝え方になっちゃうだろうし、そんなにすらすらと褒め言葉は出てこない。
「まあ結局俺が言いたいのは、俺はドーベルが自分の好きな格好をしているのを見ていたいんだよ。俺好みの格好をしようとしてくれるのは男心に嬉しいけどさ」
「じゃあアンタはどんな服装が好みなの?」
「この流れで聞くか? それ」
「聞く。だって気になるもの」
もうこの際聞いてしまおう。
少なくとも今日着てきた服はアタシ自身がいいなと思ったもので、それを褒めてくれた事は勿論嬉しいけれど。
トレーナーの好みな服装をすることだって、きっとアタシのしたいお洒落に違いないから。
そうして言おうか言うまいか悩むような素振りを見せた後、少し恥ずかしそうに呟く。
「ああ~、いや……君が普段してる格好……」
「へ? そ、そうなの?」
「……多分、綺麗めな印象の服とかが好きなんだと思う」
意外だった。
正直、その答えだと本当にアタシの服装の好みとそう大して変わらない。
まあ、アタシの場合可愛いガーリーな感じの服は似合わないから着たくないし、フェ ミニンな感じのものもアタシの雰囲気とはかけ離れてるから消去法的な意味合いも大きいんだけど。
「じゃあ、アタシ好みの服を着てればそれがアンタの好みってこと?」
「……だからそう言ってるじゃないか……」 - 7◆y6O8WzjYAE22/10/28(金) 21:00:06
少しむっ、としたように。
自分の好みを掘り起こされたのがお気に召さないのか、ちょっとだけ不機嫌そう。
「ふふ、ふふふふっ……!」
「なんで笑うんだよっ」
けれどそんなトレーナーの様子がどうしてもおかしくて、笑いを抑えきれず零れてしまう。
「ふふふっ……! いや、だってトレーナーにしては回りくどい言い方してくるんだもの……!」
「君だって自分の好みとかあんまり公言したくないだろ!?」
「いや、でもさ。さっきもっと恥ずかしいこと言ってたじゃない。あれは大丈夫で好みがバレるのは嫌なんだ?」
「ドーベルの事が好きなのは本当なんだから別に恥ずかしがる事じゃないだろ」
「うっ……! やめてよ、アタシがそうやって言われると照れるの分かってるでしょ……」
分が悪いと悟ったのか。咄嗟の切り返しでそれは反則だと思う。
「そういうドーベルの好みはどうなんだよ」
「あ、アタシは……」
アタシは……。
「男の人ってどういう恰好してるんだっけ……」
「苦手意識があったのは分かるんだけどそこまでか……」
今までまともに関わってきたのがお父さんやトレーナーくらいで。
同年代の男の子に関してはトレセン学園にいた関係でほとんど会う機会はなかったし、道行く人を観察してたわけでもないからある程度仕方ない部分もある、と思う……。 - 8◆y6O8WzjYAE22/10/28(金) 21:00:16
「じゃあさ。こんな雰囲気の男の人、とかなら漠然とイメージ出来ないか? 服装とかも」
確かに。それなら連鎖的にイメージ出来るかもしれない。
……そういえばアタシって男の人の好みとか気にしたことあったっけ。
「……あれ? アタシってどういう男の人が好みなんだろ……」
「え? ないのか? この俳優さんが好きとか」
「演技がいいな~とかは思ったりするけど容姿はあんまり」
「え、えぇ~……」
アタシの無頓着っぷりに、流石のトレーナーも困惑を隠しきれていない。
「じゃあ少女漫画とかに出てくるヒーローは?」
「ああ~、確かに。そういうのはちょっと憧れる部分はあるかも」
それなら日常的によく読んでるからイメージしやすい。
少女漫画のヒーローか……。こんな恋愛をしてみたい、という憧れは持っていたから。
好きだった漫画のヒーローがアタシの好みという可能性は確かにある。
……いや、でもやっぱり。
「……多分違うと思う」
「なんでだ?」
「だってアンタとは似ても似つかないもの」 - 9◆y6O8WzjYAE22/10/28(金) 21:00:28
そう。少女漫画のヒーローでよくいるタイプは優しげな風貌の王子様的な人か、もしくは強引に詰め寄ってくる俺様系か。
このどちらかなことが多いと思うんだけど、トレーナーはそのどちらにも当てはまらない。
というかトレーナーみたいな人って、いるなら多分ヒーローのライバルポジションの人じゃないかな……。
ちょっと暑苦しくて、どこか強引なところもあるけど、優しい人。
それでも本当にあんまり見ないタイプだけど。
「なんで顔赤くしてるの?」
「いや……君、無自覚だと結構大胆なこと言うよね」
「はい?」
大胆? ただトレーナーみたいな人は少女漫画にはあんまりいない、って言っただけだと思うんだけど。
色々と頭の中を探ってみるけど、やっぱりこれという好みは浮かんでこない。
「う~ん……ごめん。誤魔化す訳じゃないけどさ、アタシにはどういうタイプが好みとか多分ないんだと思う」
「……そっか」
「……?」
相変わらず顔を赤らめたまま。照れる理由がよく分からない。
「じゃあさ、ドーベルが俺の服選んでみる?」
「アタシが?」
「そう。それなら自分の好みも分かるんじゃないか?」
確かに、どういう服装が好みか分からないのなら、トレーナーに着て欲しい服で判断する方が早いかもしれない。
「カフェでお茶した後にでも。時間はあるだろうし」
「うん、アタシはそれでもいいけど。正直アタシあんまり自信ないよ?」
「まあ、男の服なんて女の子よりかはシンプルだよ。最悪シャツにジャケット羽織っとけば様になる」 - 10◆y6O8WzjYAE22/10/28(金) 21:00:41
今も確かにそんな服だけど。あんまりおかしな組み合わせをしてたら軌道修正してくれるだろうしいっか。
でもアタシだけが選ぶのはちょっと不公平。だったら。
「その代わりアンタも選んでよ? アタシの服」
「お、俺もか?」
「うん。だってアタシだけトレーナーの服を選ぶなんてズルいじゃない。だからアンタも選んでよ」
「そう言われると断れないな……」
今のアタシの服装を好きって言ってくれるんだったらきっと大丈夫。
それに。
「よくあるでしょ? 彼女が彼氏に向かってどっちがいい? って聞くやつ。あんな感じでいいから」
「それなら全然。むしろ楽しみだな」
トレーナーが選んでくれた服なら、絶対に自信が持てるもの。
だってそれは、それを着たアタシを可愛い、って思ってくれてる服だから。
……そういえばデートの時に気合を入れる服も勝負服って言うよね?
「トレーナーが選んだ服、デートの時に着て来るから」
「それは……責任重大だな」
……今日買うとなるときっと冬物になる。となると着る時期はクリスマスも視野に……。
そう考えると、今から着る時の事が楽しみになってきた。
今日、トレーナーに選んでもらう服は、言うなれば。
「期待してるからね?」
「あはははは! お手柔らかにな?」
アナタ色の、勝負服。 - 11◆y6O8WzjYAE22/10/28(金) 21:00:52
みたいな話が読みたいので誰か書いてください。
- 12二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 21:01:28
達筆すぎないか?
- 13二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 21:09:43
お前が始めて終わらせた物語だろ
- 14二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 21:12:01
もう終わっとるやんけ
ありがとう - 15二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 21:15:37
お互いに無自覚に殴り合ってるの、見てるこっちが悶える()
恋人といえば服選びイベは外せないから超助かる~ - 16二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 21:21:09
最後のフレーズ、凄く良いな…
- 17◆y6O8WzjYAE22/10/28(金) 21:31:39……ねぇ、今年はお祭り行かないの?|あにまん掲示板「……ねぇ、今年はお祭り行かないの?」「お祭り?」 トレセン学園も夏休みに差し掛かろうかという時期。 今は冷房のあるトレーナー室で涼ませてもらってる。「毎年アンタが連れ回すでしょ、だから……」 この時…bbs.animanch.comあのさ、その……で、デート、してほしいんだけど|あにまん掲示板「あのさ、その……で、デート、してほしいんだけど」「別に構わないけどなんでそんな恥ずかしそうにしてるんだ?」 仕事がいち段落したのか、休憩をしてるトレーナーにデートのお誘いを持ちかける。『アタシ、アン…bbs.animanch.com
お付き合いするまでの過程はこちらの過去作で書いておりますが多分読まなくても問題ない、はず?
ベルトレの好みがドーベルの好みと似通ってたらいいよね的なお話でした。
後、割とよく見るベルトレが少女漫画から出てきたような人柄評なんですけど、普段読んでる側の人間的には結構珍しいタイプなんですよね……。
ドーベルに言わせたみたいに王子様系か俺様系が2大巨頭で、他色々みたいな感じなんですけどとにかくベルトレみたいなちょっと熱い青年タイプは正直見ないです。
いるとしても本当に当て馬ポジションですね。
なので仮にドーベルが理想の男性像をベルトレに会う前に持っていたとしても多分合致しないだろうな、というのは書きながら感じました。
まあ、それでもドーベルってあんまりそのあたりを気にしてそうにないな、ってのが結論だったんですけども。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
- 18◆y6O8WzjYAE22/10/28(金) 21:34:06
いつもセリフ抜粋でスレ立てしてるので今回もその流れに乗っ取りましたけど、格納する時にそこのフレーズがタイトルになるのでタイトルでスレ立てしても良かったかなぁ……とは若干思いましたね
絶対誰か使ってると思ってたんですけど意外と使われてなくて驚き
- 19◆y6O8WzjYAE22/10/28(金) 21:35:59ヤマニンゼファー、ありがとうございました。|あにまん掲示板 昨夜放送された『LOVEだっち』の最終回。架空の高校を舞台にしたウマ娘たちの青春ドラマだけれど、そのラストシーンがその……非常に……。 と、とにかく。見ている子が多いドラマだったこともあってか、放送…bbs.animanch.comこの子ってさ|あにまん掲示板長女のはずなのに真ん中っ子みたいですよね。甘えベタだったり、何かと人に合わせがちだったり。なのでその原因ってなんだろうなぁ……と考えていると幼少期にライアン、ブライトとよく遊んでいたので疑似的に3姉妹…bbs.animanch.com
息抜きに書いた前作たちです
正直1時間半の勢いで書いた上のSSが渋のランキング入りしたの若干納得してないです
- 20二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 21:45:22
やはり貴方でしたか
- 21二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 21:51:31
もうクリスマスケーキはいらねぇやってくらい甘々成分摂取できたわ…ありがとう…
- 22二次元好きの匿名さん22/10/28(金) 23:00:29
チップはここにおいとくよシェフ