【ss.cp.閲覧注意】小さいルフィ

  • 1122/11/01(火) 19:53:48

      真上から刺す陽光が、木の葉を抜け、紅白のツートーンカラーに彩られた髪一本一本を輝かせている。
     「ここは……」
     見覚えのある森にウタはいた。それは幼馴染と遊んだ、競い合った思い出の森に似ている。懐かしさにどこか安堵を覚えるウタだったが、ひとつ疑問があった。

     なぜ自分がここにいるのか。

     ウタは先日、エレジアの事件で亡くなっている。それは、新時代を迎えるためのライブで多くの人を巻き込んでしまった事件。ウタは最後の思いで、歌でみんなの心を救い、この現実から逃れたはずだった。

  • 2二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 19:55:12

    🍲

  • 3122/11/01(火) 19:58:54

     「ギャアアアアアアア」
     疑問を抱えるウタの近くで、叫び声が轟く。

     叫び声の元へ向かうと、麦わら帽子を被った男の子が、猛獣に襲われていた。

    「……!今、助けるから!」

     気づくと体が動いていた。
     頭の中は目の前の子を助けることにいっぱいになっていた。

     ウタは少年へ一直線に飛び、抱えながら猛獣から距離をとる。
     しかし、猛獣は息もつかせず、攻撃を繰り出してくる。
     反撃をしようにも、ここはウタワールドではない。自分の思い通りにはできない。
     歌を聞かせることで、ウタワールドに連れ込み、眠らせるか。
     無理だ。圧倒される状況に声が出ない。

     襲い掛かる猛獣を前に、ウタは目を瞑ってしまった。
     しかし、少年を抱える腕は決して緩むことはない。
     どうか、この子を守ってください。
     ウタは願い、猛獣へと手を向けた。

  • 4122/11/01(火) 20:04:56

     次の瞬間、ウタの手から強風が発生した。
     猛獣を圧倒し、遠くへ飛ばしてしまった。
     大したダメージは与えられたように見えなかったが、猛獣はこちらから一歩ずつ距離を離していく。
     その表情は困惑……得体の知れないものに対する恐怖のように見えた。
     ウタウタとは違う、得体の知れない力。ウタ自身も同じく戸惑った。
     だが、今は少年を守れたことが素直にうれしかった。

     少年の身を起こした後、ウタは身につけているアームカバーを破き、包帯のようにして少年の怪我を包んだ。
    「大丈夫?応急処置しといたけど、後でちゃんと見てもらうんだよ?」
    「うん……。ありがとう……」
     顔をぐしゃぐしゃにしながら、か細く答える少年を見てウタは驚いた。

     ルフィだ。

     正確には幼い頃のルフィである。自分といた時とは異なり、目の下には傷を、頭には麦わら帽子を被っている。でも、なにより驚いたのは泣きじゃくる彼の姿だった。
    「呆れた……。ほら、男の子でしょ?涙拭いて」
     ウタはしゃがみ、ルフィの目から溢れる雫を指で拭き取りながら言った。
    「うぅ……。うっ……ありがとう……」
    「ほら、もう泣かなーい。で、なにがあったの?」
    「お、おれ……修行してて、そしたら襲われて……」
    「手も足を出ず、やられちゃったのか」
     あいかわらず、無茶は続けているらしい。
    「……。どうしてそんな無茶するの?」
    「おれは……。強くなるんだ……。強くならないと……ひとりぼっちになるから……」
     ルフィは自分がいなくなり、シャンクスがいなくなり、遊び相手がいなくなってしまった。ルフィも自分と同じように、寂しい思いをしていたのだと、辛かったのだとウタは気づいた。
    「……。そっか……。きっと強くなれるよ。海賊王にだってなれる」
     ウタはルフィを強く見つめ応えた。
    「だから、もう泣かないの。ほら、よしよし」
     ウタはルフィの頭を撫でる。ルフィが泣き止むまで、落ち着くまで。

  • 5二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 20:07:06

    アームカバー破いてるから新時代のマークは見てないのか‥

  • 6122/11/01(火) 20:09:56

     すっかりルフィは泣き止み、馴染みある明るさを取り戻していた。
    「もう大丈夫?」
    「うん!ありがとう!それよりよ、ねーちゃん、なんでおれが海賊王になるの知ってんだ?それにさっき、どうやって風出したんだ?もしかして……」
     まずい……。エレジアにいた時、未来の人が過去の人に干渉した結果、未来が変わってしまうという話を読んだことがあった。ルフィと接触している時点で今更な気もするが……。
     とにかく、ルフィの未来が変わってしまう可能性があるならどうしても避けたい。どうすれば……。
    「魔女か?」
    「え、あ、うん」

     意外な答えにウタは拍子抜けしてしまった。だが、勘違いしているなら都合はいい。話を合わして、もう少しルフィと話したい。
    「そうだよ〜。おねえちゃんは魔女!だからなんでもお見通しなの」
    「やっぱりか〜!おれ初めて見たよ!魔女!他になんか出せねーのか?火とか!」
    「いや、えーっと……。そう!おねえちゃんは風の!魔女なの!だから、火は出せないの」
    「そーなのかー」
     うまく誤魔化しは効いたようだが、心なしかルフィは落ち込んで見るように見えた。イメージしていた魔女と違ったことがショックだったのだろうか。

  • 7二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 20:10:21

    ウタがタイムスリップするのは何気に見たこと無かったな

  • 8122/11/01(火) 20:15:15

     ひと段落がつき、ウタはルフィと話すことを決意する。ルフィとは先日のエレジアでの事件で会い、昔のように勝負はしたものの、12年という月日で生まれた溝は大きく、かつての関係に完全に戻ることは最後を除いて叶わなかった。ウタにとって今のルフィが一番馴染み深いのである。
    「えーっと……ルフィ……くん?」
    「おれの名前……。本当に魔女なんだなぁ」
    「あっ……あああ、うん!そうだよ!」
     忘れていた。今の自分がルフィを知っていても、過去のルフィはウタを知らない。危うく、ボロが出てしまうとこだった。
    「でね、おねえちゃんにルフィくんのこと、もっと教えてくれない?私……魔女はね、人間との掟?で、この森から出る事ができないの。そのせいで、お友達がいなくて……。ここで知り合えたのも奇跡だと思うの!だから、お願いしてもいい?」
    「おう!いいぞ!」
     そこからルフィはウタにたくさんの話をしてくれた。フーシャ村のこと。シャンクスのこと。自分が強くなろうとする理由に、ある女の子との約束が関係していること。
     ウタはルフィの話を笑顔で受け止める。
     懐かしさからだろうか、なぜここにいるかという疑問すら忘れてしまうほどに、安心していたから。なにより、自分との約束を守ろうと強くなろうとするルフィの気持ちが嬉しかったから。

  • 9122/11/01(火) 20:20:10

     話を終えたルフィは、ウタにひとつお願いをした。
    「おれも、魔女のねーちゃんにお願いしていいか?」
    「いいよ」
    「……おれと遊んでくれ」
     ルフィはか細い声で言った。
    「もちろん!」
     ウタは間髪入れず、満面の笑みで応えた。
    「本当か!やった〜!じゃあよ!勝負しよう!勝負!」
    「え、勝負?」
     ウタは驚いた表情をみせる。それは、ルフィの口から発せられた『勝負』という言葉のせいである。ルフィとはフーシャ村にいた頃、たくさんの勝負をした。ウタとルフィにとって『勝負』という言葉は2人の関係を象徴するものなのである。その言葉をかけるということは、自分がウタだという事がわかっているのでは?そう感じたのである。
     そんなウタの気持ちなど知るはずもなく、ルフィは元気に話し続ける。
    「おう!魔女のねーちゃんに勝ったらよ、おれ強いってことだろ!だからやろう!勝負!」
    なるほど、それで勝負。ウタの中で腑に落ちる。そうとわかれば、ルフィの想いに応えるまでだ。
    「いいよ〜!ルフィくんの言う通り、私に勝てたら、あなたは最強よ!」
    「よーし!やるぞー!!」


     ルフィが提案した勝負は『かくれおに』
     鬼にタッチされれば試合終了。鬼から隠れ、逃げを繰り返し制限時間内に捕まらなければ勝ち、というものだ。
     ジャンケンの結果、ウタが鬼となった。ウタは木の正面に立ち両手で目を覆う。
     後ろから「絶対、見ちゃダメだぞー!」と声が聞こえたが「見ないから早く行きな、捕まえちゃうよ」と軽くあしらい、ウタはカウントを始めた。

  • 10122/11/01(火) 20:25:17

    「--9、10!行くよー!!」
     ゲームが始まった。制限時間は日が暮れるまで--1時間くらいだろうか。森は広い。むやみに探せば、間に合わず負けになる。
     手がかりとなるのは、数えている時に聞こえた音、地面についている足跡くらいだろうか。
     ウタが数えている時に聞こえてきたのは、ルフィの声、そして葉が崩れ、木の枝が折れる音。左斜め後ろからだったはず……。
     ビンゴだ。足跡が残っている。所々、途切れはあるものの、ある程度の方角は掴める。
     足跡を頼りに進むと、正面には〜があり、足音はそこで途切れていた。
     ここへ辿り着くまでにルフィの姿はもちろん、目立った音は聞こえなかったため、隠れている可能性が高い。辺りを見回していると、〜の影に麦わら帽子の唾が見えた。
    「あっ!見つけ……」
     ウタは声を抑える。声をかけていいのだろうか。もしここでルフィに呼びかけても、追いつけず逃げられてしまったら……。そう考えると、今呼びかけるのは得策ではない。なにより、驚かせてやりたいといういたずら心がウタにはあった。
     そうと決まれば実行に移すまで。ウタは息を殺しルフィの方へ足を動かす。一歩。また一歩。木の枝一つ割れる音にさせ気を配らせ、近づいていく。
     木々を退け、麦わら帽子の唾が見える洞窟の近くへ着いた。そっと身をかがめ、驚かす準備を整えていると、洞窟の中から小さく声が聞こえた。ウタは洞窟に身を寄せ、そっと耳を澄ます。
    「ししし!ここならバレねぇ。でも、ずっとこのままなのも退屈だな……。よし!隠れるのやめだ!外でて逃げよう!その方が楽しい!魔女のねーちゃんがいないうちに--」

    「出た!」

     指先を曲げた手をルフィに向け、笑顔で言った。

  • 11122/11/01(火) 20:30:12

    「ギャアアアアアアア」
     ルフィは目ん玉を飛び出し、叫び声を上げる。望み通りの反応が見れたことに喜びつつ、
    ウタはルフィの方へ手を伸ばす。しかし、伸ばした先にルフィはいない。すでに洞窟を出て、走り出していた。
    「あ!こら!待てー!」
     すかさず、ウタは追いかける。
     ルフィは早かった。しかし、ウタも負けてはいない。フーシャ村にいた頃でさえ、ルフィと一緒に競えるくらいには運動能力はあった。14歳離れている今、身体的に考えてウタの方が有利である。
     そんな時の流れを感じさせるように、2人の距離は縮まり、ウタはルフィを抱き上げ捕まえる。
    「はい!捕まえた〜!」
    「クソー!離せ〜!脅かすなんて卑怯だ〜」
    「負け惜しみかな〜?ルフィ君の負けだよ」
    ウタはルフィを揶揄いながら、おでこをつつく。
    「ぬ〜!もう一回だ!」
    「いいよ!意外と早く終わっちゃったからね〜。次はタッチされたルフィ君の番だよ」
     ウタはルフィの体をそっと地面に下ろす。
    「おれだって、あ!という間に捕まえてやる!!」
     地団駄を踏みながら、ルフィはウタに言い返している。そんなルフィを見ながらウタは微笑んだ。
    「ふふ、期待してる」


     2人の勝負は、その後2回行われた。
     一回はルフィの能力に引っかかり、ウタが負け。
     もう一回は今、夕暮れをもってウタの負けとなった。

  • 12122/11/01(火) 20:35:07

    「ルフィーくーん!!おねーちゃんの負けー!でてきてー!」
     ウタは1人、森を歩いている。勝敗が決まったからと言って、お互いの安全を確認できなければ、それで終わりというわけにはいかない。
     出会った時のこともある。一刻も早くルフィの安全を確保しなければいけない。
     そんな不安から、ウタは少し後ろ向きになっていた。
     1人の時を思い出してしまう。居場所を求めていたあの時を。考えないようにしようとすればするほど、自分の前に立ち塞がってくる。
     ファンを巻き込んだ自分が幸せで良いのか。自分は最後に居場所を貰えた。でも、ファンの人は?
     自分が消えた……居場所を無くした世界で生きていけるのか。あの大海賊時代に耐えられるのか。
     自分は信じた。ファンのみんなを。
     自分は信じた。恩人の……父親の言葉を……。
     でも……。怖い。
     そんな思いに囚われてしまう。
     体が沈み、海底の闇に誘われるような。大海原を目指す泡沫が、次第に消えていくような。そんな気持ちになる。
     深く沈んだウタの心に明るい声が届く。
    「おーい!」
     ルフィだ。
    「おー……あ!」ルフィがこちらに気づく。「魔女のねーちゃーん!よかった!会えた!」
     ルフィは笑いながら続ける。
    「暗くなったしよ!おれの勝ちだよな!にししし!これで、おれはさいき--」ウタはルフィの背後に手を回し、優しく包み込む。
    「よかった」
     不安はすでに消え、心は落ち着いていた。
     そして、ウタの心に旗が立つ。髑髏のついた、大きな旗が。

  • 13122/11/01(火) 20:40:17

     ウタはルフィと手を取り森を歩く。
     日が暮れ、子供はもう帰る時間。
     ひとりぼっちとは言っても、村長さんや、酒場でいつも面倒を見てくれていたお姉さん……マキノさんもいる。心配しているだろう。
     ウタは責任を持ってルフィをフーシャ村へ送っていた。
     
    「あ!見えてきた」
     ウタが声を上げ、森を照らす光源に指を指す。フーシャ村だ。
    「じゃあ……ここでお別れだね」
    「……うん」
     ウタの言葉にルフィは小さく答える。
    「どうしたの?」
     ウタはルフィに目線を合わせる。けれど、ルフィは目を逸らしウタを見ようとしない。
     小さい手が強く、こちらを握っているのが伝わる。震えているのがわかる。
    「……もう少し行こっか」
    「……うん」


     顔を合わせることはなかった。ましてや、会話など。
     時折、ウタはルフィの顔を見る。ルフィもウタの顔を見る。だが、目が合うことは決してなかった。
     お別れの時が迫る。
     もっと話をしていたい。
     寂しいけど……
     
     最後は笑顔でいたい。
     

     そんな思いも虚しく、木の葉を取り払う枝が、森の終わりを告げる。
     フーシャ村はもう、目と鼻の先だ。

  • 14122/11/01(火) 20:45:33

    「……じゃあ」ウタはルフィの前でかがみ込む「……今度こそ、お別れ」
    「……嫌だ」
    「え?」
    「……嫌だ!」
     ルフィは絞り出すように声を出す。しかし、決して顔は上げようとしない。
    「でも、村の人心配しちゃうよ?」
    「だって……ここで別れたら……もう会えねェ気がする……」
     会えない……。それはウタも感じていた。
     根拠があるわけではない。でも、そうなんだと、体が教えてくれているような気がする。
     それに、自分が決断した……選んだ道を進むには、会わないはうがいい。
    「……会えるよ。また……」ウタは俯く「すぐにってのは無理かもしれないけど……必ず会えるよ」
     嘘ではない。魔女ではない、歌姫のウタに、ルフィはこれから会える。
    「嫌だ!そんな待てねェ!」
    「わがまま言わないで……」
     ウタは唇を震わせながら応える。
    「魔女のねーちゃんも一緒にフーシャ村に行こう!」ようやく顔をあげルフィは言う。「そんでよ!明日も明後日も一緒に遊ぼう!」
    「ダメだよ……。言ったでしょ?おねえちゃんは魔女で、森から出られないって。破ればルフィ君にだって迷惑かけちゃう。」
    「そんなの関係ねェ!もしなんかあっても、おれなら大丈夫だ!だって、魔女のねーちゃんに勝ったんだ!最強なんだ!」ルフィの瞳から涙が溢れる。「だから……一緒に行こう……」
     ウタはルフィの手を強く握る。
    「私も、ルフィ君と行きたいよ……」
    「じゃあ!」
    「でもね」食い気味にウタは応える。「私きっと……戻れなくなるから」

  • 15122/11/01(火) 20:50:31

     夕暮れ時。ルフィを見つけた時の気持ちに、ウタは覚えがあった。
     憧れで……恩人で……船長で……父親のシャンクスの口から出た「俺の娘」という言葉。
     自分がシャンクスと離れてしまってから12年。捨てられたと思っていた。自分の居場所なんてないのだと思っていた。
     そんな自分にかけられた言葉。
     どれほど嬉しかっただろうか、どれほど安心しただろうか。
     その気持ちと同じだった。
     同時に、この気持ちはきっと、ファンの人達も同じなのではないか。ウタはそう思った。
     自分は最後に取り戻した。赤神海賊団の音楽家に……ルフィと元の関係に……シャンクスの娘に戻れた。
     でも、ファンの人は今も探しているだろう。自分が幸せになれる場所を。
     自分の新時代では、みんなの幸せにすることはできなかった。
     けれど、自分の歌は……探す手伝いを、背中を押すことができる。
     なんたって、『世界を幸せにできる』と大切な人が言っていたから。
     だから、ルフィとは別れなければいけない。絶対に。


    「なんだよ!戻れないって……」
     ルフィが声を荒げる。
    「ごめんね……ごめんね……!」
     ウタは俯く。髪に隠れた瞳から雫が落ちていく。
    「……魔女のねーちゃん。顔……あげてくれよ」
     震えるルフィの声に従い顔を上げると、ルフィが笑顔を作りこちらを見ていた。
    「わかった!おれもう……わがまま言わねェ!」
     言葉を発するたび、ルフィの目から涙が溢れている。
    「……大丈夫?寂しく……ない?」
    「あぁ!だって……おれは……最強だから……」ルフィの声が掠れていく。「寂しくなんかねェ!」
     ルフィの作り笑いは、今にも崩れそうだった。そんな彼の顔にウタは手を近づけ、人差し指でそっと鼻をつつく。
    「ふふ……ウソツキ」
     ウタの顔も同様に崩れてる的な。
     ウタはルフィの背中に腕を回し、自分の方へと抱き寄せる。右腕はそっと、麦わら帽子の方へもっていき、軽く叩く。
    「また会おうね……」

  • 16122/11/01(火) 20:55:01

     小さい背中は光のもとへ向かって行った。
     何度もこちらを振り向き、その度に手を振る。
     こちらも手を振り返す。
     見守っているよと、強く念じながら。


     結局、なぜここに来たのか、過去に行けたかは分からずじまいだった。
     でもそれは、風がどこから吹いてくるかわからないのと同じなんだ。
     ウタは自分の手から発生した風を思い出す。
     風はどこから来たのか分からない。
     いつから吹いてきたのかも。
     確かなのは、人の元へ吹くこと。
     時には、人のゆくえを阻む風として。
     時には、人のゆくえに寄り添う風として。
     その人の夢のために。

     紅白の髪が靡き、紫の双眸が露わになる。
     その目に迷いはない。

     今日も、我が身に歌声を乗せ、君の元へ行く。

  • 17122/11/01(火) 20:58:07

    以上です。読んでいただきありがとうございました。
    ウタは風の妖精になってしまった。という形で書きました。
    時間移動に関しては、風ってどこから吹くのかな?今吹いてる風って、いつから吹いてるのかな?過去に吹いた風?それとも未来から吹いてる?という連想から来ています。ガバです。

  • 18二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 20:58:57

    それで風かぁ、いいな

  • 19122/11/01(火) 21:00:04

    投稿してる途中に「新時代マーク見られたらバレる」というのに気付いた間抜けです。
    一応、ルフィはウタかなと勘づいてるといいなと思っています。一瞬ウタかな?と思いはするものの、大人の姿のせいだったりで選択肢から外してしまう。それでも、似た特徴を持っているせいで、無意識に重ねてしまう。
    そういったウタを思わせる部分を持っているところと自分に優しくしてくれるところ。
    嫌悪と好意が向けられているということで、魔女と呼んでいる。
     マークも嫌がらせでつけているんだ!と思えばセーフ。そうだ、セーフなんだ。

  • 20二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 22:51:06

    風のゆくえか‥

  • 21二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 23:00:19

    素敵な雰囲気だった。
    自由な発想で書かれたSSはよいものです。

  • 22二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 23:02:44

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  • 23二次元好きの匿名さん22/11/01(火) 23:04:35

オススメ

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