- 1二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 22:58:50
2022年。
人類はついに、完全なるウマ娘化を実現した。
(元ネタ:ソードアートオンライン)
本スレは「自分がウマ娘だったら」を妄想するスレです。
スレを開いたあなたも自分のウマ娘になった姿を想像してみましょう。
前スレ
あにまんウマ娘になりたい部Part157|あにまん掲示板『てぶくろ』降りつづく雪の中、ぽつんと落ちていたのは片方だけの暖かそうな手袋。最初に見つけたのは小さなフラワリングタイム。彼女は中にもぐり込み、言うのです。 「ここで くらすことに します!」 確…bbs.animanch.comアーカイブ
Wiki
umamusumeninaritai @ ウィキ【12/15更新】@wikiへようこそ ウィキはみんなで気軽にホームページ編集できるツールです。 このページは自由に編集することができます。 メールで送られてきたパスワードを用いてログインすることで、各種変更(サイト名...w.atwiki.jp - 2二次元好きの匿名さん22/11/06(日) 22:59:12
参考になりそうなもの↓
https://bbs.animanch.com/board/199950/?res=3
お絵描きできない人向け
https://bbs.animanch.com/board/199950/?res=4
https://bbs.animanch.com/board/246596/?res=141
診断メーカー↓
ウマ娘になったらの診断をプログラミングして作った!|あにまん掲示板https://shindanking.wixsite.com/my-site-1おかしくなったから立て直した画像のような結果が出ますbbs.animanch.com※入部希望者へ※
際限なくウマ娘が増えてしまうことを避けるため、原則一人一ウマ娘でお願いします!
次スレは>>190を踏んだ人が建てること!
建てられない場合は他の人にスレ建て代行をお願いすること!
スレの管理ができなくなるモバイル回線で建てないこと!
いいー?
- 3クアドラプルグロウ22/11/06(日) 23:02:52
今日から新時代が始まるかな…!
- 4スレ画芸考案者ラプ中22/11/06(日) 23:03:57
たておつです!
Q.なぜこのスレ画に?
A.2022年11月6日はSAO本編の開始日だから - 5クアドラプルグロウ22/11/06(日) 23:10:18
前スレ200
200なら
全 員 芦 毛
らしいかな… - 6レッカの中身22/11/06(日) 23:12:51
たておつ
- 7ラプ中22/11/06(日) 23:13:21
ジャスタウェイもこれにはにっこり
それはそれとして血統を変えないと!!!!
めんどくさい!!!! - 814622/11/06(日) 23:13:42
たておつです
- 9アルケミー22/11/06(日) 23:13:48
そ、そんな
ミーの美しい栗毛がーっ
まぁ栗毛ベースなら芦毛でも綺麗に白くなるしいいか… - 10ヨゾラギャウサルのうまそうる22/11/06(日) 23:16:00
- 11ラプ中22/11/06(日) 23:17:02
【広告】
ウマ娘になりたい部公式ディスコードは皆さまのご参加を心よりお待ちしております!
リンクはここには貼りませんが…「避難所の中」とだけお伝えいたします - 12クアドラプルグロウ22/11/06(日) 23:22:03
私は146氏の本格参戦を楽しみにしていて夜しか眠れません
- 1314622/11/06(日) 23:33:52
- 14クアドラプルグロウ22/11/06(日) 23:37:07
- 15ツキノミフネの背後霊22/11/07(月) 00:19:05
スカイセンサーさんよろしくお願いします!
名前の響きがすごく好きです! - 16ツキノミフネの背後霊22/11/07(月) 00:20:07
元々芦毛だからなぁ……ちょっとかなしみ
それはそうとして皆さんの芦毛バージョン……妄想捗る! - 17二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 00:25:47
聞きたいかね?
最初の「キンカメ×エンドスウィープ×アドマイヤラクティの近親」から
「母父エンドスウィープ母系エリンバード」
「母父スウェプトオーヴァーボード母系エリンバード」
「母父ダンスインザダーク母系エリンバード」
「母父ダンスインザダーク母系アンティックヴァリュー」
で下2つがいまだに係争中だ
あと「母父ロックオブジブラルタル」とか「ケイティーズ牝系」とかも試験はしてたのでそれを含めるとさらに増えるぞ
なんなら世代の変更すら考慮に入れて(足りぬ知識でなんとなく)好相性と判断した「父ミッキーロケット母父スズカマンボ」とかに変更することも検討してたぞ
近藤さんが中小牧場から買っていく図が思い浮かばなかったから没になったが
- 18スカイセンサー22/11/07(月) 05:02:50
深夜に失礼します。元146です
まだ工事中ですがある程度wikiができたため投げます
スカイセンサー - uma-musumeになりたい部 @ ウィキ【11/7更新】いろいろ工事中 スカイセンサー(ウマ娘) 画像準備中 プロフィール 名前 スカイセンサー 誕生日 4月23日 身長 158cm 体重 増減なし スリーサイズ B80・W57・H77 説明文考え中 ステ...w.atwiki.jp - 19メジロエスキーの人22/11/07(月) 06:58:08
- 20メジロエスキーの人22/11/07(月) 06:58:58
─────
「よーし! ストライドしっかり伸ばして! 最後まで気持ち切らさない!」
ゴール板の前を力強く駆け抜けると、クールダウンのために少しずつペースを落とす。急にスピードを落とすと脚にも負担がかかる上に勢い余って倒れてしまう危険性があるから気をつけないといけない。
「ふぅ……タイムどう?」
「あぁ、文句なしだ。順調そのものだな」
ジャパンカップへの特別登録者が発表された翌日、私が腰痛でコースに現れなかったから、その次の日の朝の各スポーツ新聞は一面に『メジロエスキモー、体調不良か?』とか『2強対決に暗雲……?』なんて書き立てた。ただその新聞が発行されたその日には腰の痛みはさっぱり消え去っていたから、コースでのトレーニングにすぐ戻り、今日もまた順調に追い切りをこなすことができていた。
「今日はいっぱいいっぱいになるまで走ったから、来週は軽めでいいんだよね?」
「ああ。レースに疲れは残しておきたくないからな。レース直前は如何にして本番に100%の力を注ぎ込める体制を作れるかが肝だから」
トレーナーが10人いれば当然10パターンのトレーニングメニューがあるし、もちろんウマ娘もそれぞれ違う訳だから全く同じメニューになることはまずあり得ない。もちろん流行りの調整方法は当然あって、どうしても似通うことはあるけれど。
「ま、私はトレーナーの言うことを信じるだけだから」
「そう言ってもらえるとトレーナー冥利に尽きるよ。じゃあ汗流したらトレーナールームに集合な」
そう言って別々の方向へと歩いていく私たち2人。私はトレーナーの言うとおりにシャワー室に向かい、すっかり汗を洗い流すのと同時に、汗で冷えた体をシャワーで温める。
「あー、気持ちぃー……」
ちょうどみんながトレーニングを終える時間だったからそんなに長居することなくそそくさと立ち去り、トレーナールームへと向かう。シャワーを浴びた直後はホカホカだった体も、暖房が効いていない廊下を歩いただけで軽くヒンヤリと冷たくなっていた。そんな冷たい体を温めてくれる暖房が効いた空間を求めて、足早にトレーナールームへと駆け込んだ。
「やっぱり11月も真ん中過ぎたら寒くなってくるね……明日はお鍋にしよっかな」
「何鍋がいいかな……キムチ鍋もありだし、ちゃんこもありだな……」 - 21メジロエスキーの人22/11/07(月) 06:59:53
2人暖房がかかった部屋でぴったりとくっつき明日の夕食のことを考える。ちなみに今日は茄子が安かったから麻婆茄子を中心にした中華料理の予定。もう作り置きしちゃっているから変更は利かない。ちょっと残念。
「……ってそうじゃなくてレースの話。このままお鍋の種類ひたすら挙げてくところだったよ……」
「危ない危ない……で、今度のレースの話だけど……昨日の資料はもう頭に入っているよな?」
昨日トレーナーが寝落ちしそうなところを耐えて作ってくれた出走予定者みんなの資料。エスキーを除いてもG1を複数勝ってる子、勝ってなくても繰り返して好走を続ける子ばっかり。どの子も一線級のウマ娘、ノーマークでいい訳はない。
「もちろん。見やすかったし分かりやすかったからスッと頭に入ってきたよ」
瞬発力勝負は苦手だけど、上がりがかかるレースなら上位に食い込んでくる古豪、逆に速いバ場こそポテンシャルを発揮できる子、直線一気を信条とする猛者。いろんなデータが頭の中を駆け巡っている。
「オッケー、分かった。もちろん誰がどんなウマ娘かなんてクイズするつもりはないから、隅から隅まで覚えておけとは言わない……ただ一番大事なのはどんなペースになるか。そこは逃げる子のことをしっかり頭に覚え込ませないと、まんまと逃げ切らせてしまうことになるからな。対戦相手はエスキーだけじゃない」
「分かってる。それで今回逃げそうなのは……この子でしょ」
まず私が手元の紙の資料をパラパラとめくり見つけたのが、前回の天皇賞ではハナには立てなかったが、常に前々でレースを運ぶベテランのウマ娘。出遅れ癖があるせいか逃げ宣言はしていないものの、スタートさえ上手く出られれば前でぐいぐいレースを引っ張りたいタイプだろう。
「正解。それと今回はもう1人。今までダートを使ってきた中唐突に芝のレース、しかもG1を選択したこのウマ娘だ」
さっきのウマ娘のページから再びペラペラと何枚か資料をめくり、トレーナーが指で指し示したのはまたしても古豪のウマ娘。
- 22メジロエスキーの人22/11/07(月) 07:01:04
「しかもさっきの子と違って既に逃げ宣言をしている。もちろんいきなり芝のスピードについていけるのかの問題はあるが、仮に追走できた場合はかなりのハイペースになりそうだ」
「そうなってくれたら後ろが有利になる。それで今回は私は中団後ろでポジション取りするから、練習通り1000mから捲っていけば問題なく差せる……あの子がいなかったら」
そう、例えハイペースになろうとスローペースになろうと、残り800mぐらいから一気に前をぶち抜きちぎり捨てることができるウマ娘がいる。それはもちろん……
「……エスキーがいなかったら君はかの覇王のように年間無敗を達成できていただろうな」
手を組んで思い切り伸びをして、ハァとトレーナーは1つ大きなため息をつく。
「もう……無敗は確かに途切れちゃったけど終わった話でしょ。前回負けても今回勝てばいいんだから」
去年の有馬記念みたいに勝ち筋が全く見えない勝負じゃない。私のこの脚とトレーナーの頭脳さえバッチリ噛み合えば勝機は確実にある。
「……強くなったな」
トレーナーはそう言いながら、我が子を褒める親のように優しく私の頭を撫でてくる。なんだか子ども扱いされてるみたいで私はその手を優しく払い除けてこう宣言する。
「当たり前でしょ。貴方にとって一番強いウマ娘なんだから!」
だから負けない、負けられない。愛するこの人のためにも。勝利を必ずこの手に手繰り寄せてやる。
─────
迎えたジャパンカップ。木曜日に発表された枠順では上位人気勢がわりと内枠に入る結果となった。エスキーは2枠2番、ストラテジーバードさんは3枠5番、そして私はその隣の4枠6番に配されている。唯一上位人気で外枠になったのは大外8枠15番のグッチオヌールさんだけ。
控え室ではいつもどおりのルーティーンで気合いを入れ、地下バ道からコースへと姿を現す。やはりこの大一番を見たい人が多いのか、この前の天皇賞の時より観客が増えている気がする。
(いち、に、さん、しっと。準備運動もこれでバッチリ)
- 23メジロエスキーの人22/11/07(月) 07:02:00
ホームストレッチの坂の終わり付近に置かれたゲートの後ろで入念に最後のストレッチを行う。ふと周りを見渡すと、レースが待ちきれずテンションが少し高くなっている者、緊張で若干ナーバス気味な者、周りの喧騒を気にせず静かにスタートを待つ者と各自様々な様相でレース前最後の時間を過ごしていた。
(エスキーは……いつもどおりか。まあそうでなくっちゃね)
奇数番号の枠のウマ娘が先に入れられ、左隣のストラテジーバードさんが静かにゲートへと収まる。奇数番号最後の13番枠の子まで入ると、今度は2番のエスキーから順にゆっくりと目の前の籠の中へと歩を進める。そのあと4番の子を挟み私もゲートへと体を収め、静かにスタートの時を待つ。1回、2回と深呼吸を繰り返し態勢を整える。
『──さあ最後に大外16番グッチオヌールがゲートに収まり、各ウマ娘態勢整います……スタートしました!』
出遅れたのは数名、海外から参戦してきた子と、あとは……
『──おっと、3枠4番ミラクルまたしても出遅れました! その隙に外から8枠14番のトウシが前へ前へと上がっていき1コーナーへと入ってまいります!』
ただ出遅れたミラクルさんも後ろからのレース運びを嫌ったのか、すぐさま外から前へと上がっていきトウシさんを交わして先頭へ立つ。その後ろにエスキーがいて、またその1バ身後ろに水色と白の耳飾りを着けたストラテジーバードさんがエスキーをマークするかのように虎視眈々と前を見つめていた。
『──さあ2コーナーを回って先頭は3枠4番ミラクル、そのすぐ後ろに8枠14番トウシ、少し離れまして……ここにいました1番人気、2枠2番メジロエスキーは前から3番手でレースを進めます』
ペースはそれほど速くはならず、前半は平均ペースで流れていく。この展開であれば、先行していてもある程度後方に待機していたとしてもどこからでも届く、脚さえ残っていれば。
『──向こう正面に入っていきまして最初の1000mをここで通過します……60秒フラット。バ場を考えるとスローにも思える展開、果たしてどこで誰が仕掛けるのか注目です』
残り400m。今はまだその背が遠くても。
『──3コーナーがそこに迫ってきます。少し坂を上ったところで中間地点、残り1200mのハロン棒を左手に見ながら各ウマ娘勝負所を伺っているか』
- 24メジロエスキーの人22/11/07(月) 07:04:05
(あああああああああああああ!!!!!)
“■■■■■■■■■■ Lv.0”
『──おっと!? ここで後方に控えていた2番人気メジロエスキモーが外から前へと迫ってくる! 早仕掛けか? それとも作戦通りか!? 一気にここでレースが動きます!』
(エスキーまではまだ4バ身ぐらい差がある。ただあの子はここからが……!)
─────
(なるほど、そういう作戦で来ましたか)
1000mを過ぎたところで後ろから誰かが勢いよく迫ってくる気配を背中で感じ取る。振り向く必要はない。このプレッシャー、この重圧、わたしにそれを感じさせるウマ娘は今ここで1人しかいない。
(エスキモーちゃん……成長しましたね……)
もちろんわたしもそれをただ見ているだけじゃない。娘の成長を見守る親では終われない。
(ただそれでわたしに勝てるなんてまだまだ甘いですよ……っ!)
残り800m。勝負はまだまだこれからだ。
“貴方と歩んだその先へ Lv.5”
(想いの強さはわたしの方が上だ……っ!!!)
─────
『──残り800m、一気にメジロエスキーがスパートを掛けた! この末脚! この加速力! 我こそが最強だと言わんばかりの切れ味でもうここで先頭へと並びかけ……いや交わした! 直線手前でもうメジロエスキーが先頭に躍り出た!』
- 25メジロエスキーの人22/11/07(月) 07:05:19
残り800mから2ハロン、彼女は尋常ではないスピードで前を交わし後続を突き放し先頭で最後の直線を駆けていく。もちろん全部予想通り。私はただ自分のレースをすればいい……はず……
(いや……これは届かない……?)
残り400m。彼女はここで一度息を入れるため少しペースを落とす。その隙に一気に迫り、最後の1ハロンで叩き合いに持ち込み交わしきる算段だったはずが想定より差を詰めきれていない。彼女はいつもの変わらないペースで走っているはずだからもしかしたらこれは……
(私の脚がまだ万全じゃなかった……?)
間違いなくグングンと伸びている。残り2ハロンの区間で詰めてはいるし、とっくに後ろの集団を突き放しているんだから。
(足りない……まだ足りない……何が……?)
練習? 経験? 一体彼女との差は何なのか。そして……
(スパートを掛け始めた時に一瞬世界が変わって見えた……)
残り1000m、作戦通りにスパートを掛けたその時、周りのウマ娘や観客の動きが遅くなったように感じる瞬間があった。ただ感じたのはわずか数瞬。すぐに周りが元の速さで動き出し、世界は元通りに回帰した。
(分からない……分からない……)
残り200m、息を入れたエスキーが2度目のスパートを掛ける。ただそれでも私は伸び続け4バ身、3バ身と彼女の背中に手が届きそうな所まで近づいた。ただそれは「届きそう」で幕を下ろす。手が届き、追い越すことは叶わなかった。
(ここまで、か……)
『──メジロエスキモーが凄い勢いで迫ってくるがこれは届かないか? メジロエスキー今1着でゴールイン! 1バ身後ろでメジロエスキモーが入線しています!』
またもや2着。トレーナーと作戦を立て、ゲートを決め、万全な態勢で道中を運び、ベストタイミングでスパートを掛けた。ただそれでもまだその背中は遠かった。
「ハァ……ハァ……」
- 26メジロエスキーの人22/11/07(月) 07:06:32
決着タイムはこれまでの記録を1秒塗り替える大レコード。私も当然今までこの距離を駆けたウマ娘より速くゴールを駆け抜けた。ただその前に先に1人ゴール板を通過したウマ娘がいた、ただそれだけで私の名前は記録には残らない。
息を整えてから観客席に向かって手を振るエスキーに声をかけ、お互いの健闘を讃えあう。
「おめでとう、エスキー。届くと思ったんだけどまだ足りなかったな……」
「ありがとうございます、エスキモーちゃん。あの末脚、もう少しで交わされるかと思っちゃいました」
これまでこの子と付き合ってきて分かったのが、彼女はあまりお世辞を言うタイプではないということ。それは言い換えるとウソをつきにくい性格とも言うことができる。だから今のこの彼女の言葉は本心から出たものだろう。私はそれを素直に受け入れ、ありがとうと感謝のハグをする。
「ここでですかっ!? もう仕方ないですねえエスキモーちゃんは。わたしもギュってしてあげますっ」
驚きつつもそっと彼女は抱き返してくれた。5秒、10秒……数える前にお互いパッと体を離しニッコリと微笑み合う。そして盛り上がる観客席に一礼をして地下バ道へと駆けていった。
─────
(何が足らなかったのかな……)
ウイニングライブの時もトレーナーの家に帰る間も晩ご飯を作る最中も、そして今湯船に浸かるこの瞬間も頭の中は延々と今日の敗因が何だったのかで一杯になっていた。
1つ思いついたのはあのラストスパートのあの瞬間に感じたもの。あれを極めることができれば最後交わしきれる可能性は十分高い。ただ問題は……
(どうやってその状態に入るか、そしてそれを維持できるか、なんだよね……)
武器をまだ磨き上げている状態だから入ることができないのか、それとも何か他にトリガーがあるのか。
(あの子に聞いても……教えてくれないだろなあ……)
自分が入りかけたから分かる。たぶんエスキーは残り800mから自分の世界へと完全に入り込んでいるということを。しかもそれ自体を磨き上げることで尋常ではない加速力を実現させていることも感覚ではあるが理解できた。ただ親友ではあるけど私たちはライバルでもある。相手に塩を送るなんて真似、彼女はおそらくしないだろう。
(自分で見つけるしかない、ってことね……)
- 27メジロエスキーの人22/11/07(月) 07:07:24
練習量か、レース経験か、果たして何なのか。そのヒントは予想もしていなかった人物から得ることができた。
─────
「ただいまでーす」
「おかえりなさいッス、エスキモーちゃん……今日は帰ってきたンスね?」
お風呂から出たあとは2人で夕食をとり、片付けをした後早々と帰途についた。もちろん何か喧嘩別れしたということではなく、むしろ逆。レース「前」ではなくレース「後」であるということ、レース明けの月曜日に授業を繰り返し休むのはよくないということ……まあそういうことだ。
「ちょっとカジっちゃん先輩意味深な言い方しないでくださいよ。レースに負けた後輩を慰めないなんて心冷たくないですか?」
ニヤニヤした顔で私を弄ろうとする先輩の言葉をサラリと躱し荷物を整理すると、そのまま自分のベッドへと倒れ込む。スプリングの反発で二度三度と体が跳ねるが、すぐにマットレスに全身が沈み込む。
「ごめんッス、エスキモーちゃん。お疲れさまッス。結果は惜しかったけど……」
「一気にテンション変わって風邪引きそうですよ! 気にしてないことはないですけど、また次のレース頑張るだけですから!」
次のレースはそう、去年初めて戦い負けた舞台、有馬記念。昨年は帰国初戦で少しだけバ群を捌くのに手間取っていたエスキーを尻目に最後の直線で抜け出そうとするも、進路を切り替えて前が開いた彼女が一気に私を捉えて貫禄を見せつけられたレースだった。もちろん今年こそはと意気込むものの、ジャパンカップの敗北をどう糧にしようかと頭を悩ませている。
「それならいいンスけど……次は勝てそうなンスか? あのエスキーちゃん相手ッスし、厳しいのは分かってるンスけど」
「それなんですよね……今日はなんとか1バ身差まで詰め寄れたんですけど、最後は迫ってるのに届く気がしなくて……」
たかが1バ身、されど1バ身。彼女に近づけた分、彼女との差は距離だけではないことをまざまざと見せつけられた結果になった。
「カジっちゃん先輩、もし経験あればなんですけど……レース中世界が遅く見えたことってあります?」
暗い話になりそうだったのを切り替えるためでもあったけど、ダメ元で今悩んでいる話を先輩に打ち明ける。失礼ながら先輩からいい回答が返ってくるとは思ってなかったけど、先輩はあっけらかんとした口調で答えをくれた。
- 28メジロエスキーの人22/11/07(月) 07:08:13
「あー、なんか経験あるッス。なんか自分だけ速く動いてるような感覚のことッスよね? いつかっていうのは記憶ないンスけど、重賞勝った時はその感覚になってたと思うッスよ」
「あの時も確か……」と少し上の方を見つめ自分の記憶を辿っていっている様子のカジっちゃん先輩。これは大きな手がかりになりそうな予感がした。
「ねえ、カジっちゃん先輩。その時って体の調子とかどうでした? 何か考えてたことあります?」
このチャンスは逃したくない。有馬記念を絶対に勝つためにも聞ける情報は全部聞き出したい。
「体の調子は……もちろん良かったとおもうッス。考えていたことは……うーん、ただ勝ちたいとしか思ってなかったような……」
「勝ちたい……想いの力ってこと……?」
勝ちたい、それはレースに臨む限り誰もが持っている欲求。むしろそれがなければ走る意味なんてない。ただ勝ちたい欲求なんて当然私も持っている訳で、それでどうこうとなる話なんだろうか?
- 29メジロエスキーの人22/11/07(月) 07:08:30
「詳細は省くンスけど、私全然勝てなかった時期あったンス。練習はこなせてるし、体の調子は悪くない、なのに勝てない。いろいろ試行錯誤しているうちに頭のぐちゃぐちゃになって……そんな状態で走ったレースなんて普通だったら勝てないじゃないッスか? でもその時なぜかトレーナーさんとか友人、家族もいたッスかね……みんなの私を応援する声が聞こえてきて、自分のためじゃなくてこの人たちのために勝ちたいと思えたンス。そうしたらその時フッと見えてた世界の色が変わって、目の前に光る何かを掴もうと駆けていったらいつの間にか先頭でゴールしていて……」
「応援……気持ち……想いの力……?」
先輩の話を聞いて分かったことが1つある。勝ちたいという欲求があることは前提として、そこに他の人からの想いを乗せることが大事だということ。自分だけじゃない想いの力、それがきっかけとなり、自分が考えていた以上の力を発揮することができる。
「あー、こんなの話半分に聞いてほしいッス。最初にその状態に入れてから次のレースからもずっとって訳じゃなかったッスし。他に条件あるかもしれないッスし」
「いえ、なんとなく分かった気がします。あくまでも漠然とですけど」
ありがとうございますと礼を伝え、明日の授業に備えるために部屋の照明を落とす。ベッドに体を預け布団を体に掛けて目を閉じると、想像以上に疲れが溜まっていたのか、すぐに夢の世界へと誘われていった。
- 30メジロエスキーの人22/11/07(月) 07:08:50
今日はここまで。それではまた次回
- 31スカイセンサー22/11/07(月) 07:17:35
あっ……やらかしてますね ありがとうございます
- 32クアドラプルグロウ22/11/07(月) 10:53:54
1991年とは今までいなかった世代だ…!
というわけでtipsの精霊働きますね…wikiにスカイセンサーさん追加しに行きます… - 33クアドラプルグロウ22/11/07(月) 11:18:28
と、そういえば新人さんたちのためにウマミミ付き画像メーカーを紹介しておきますね
YSDメーカー初めて作ってみました、キャラデザの参考や、TRPGセッション用の立ち絵などにどうぞ。遊んでいってください。小説のキャラクターや動画へのご使用の際は「メーカー名(必須)」と「URL(任意)」の記載をお願い致します。
Picrewサポートの禁止事項と併せて以下の内容をご確認いただき、ご利用ください。
●禁止事項
・商用利用(投げ銭機能のある配信アプリ等も含む)
・自作発言
・トレス
・イラストサイトへの投稿(pixiv等)
------------
2021/12/21 ケモミミ他色々追加しました。picrew.me警鐘が鳴ってるヒトとかが作れますパーツは気が向いたら更新すると思います
アイコン ヘッダーなどはご自由にどうぞ ( 私の名前やIDの表記はお任せ致します )
自作発言 二次配布 トレパクなどなどはお控えくださいませ~~
質問やこんなパーツほしいな~などあればTwitterのマシュマロにてお願いします
Twitter→むた
@muta_gurimaru
◆1/8 公開
1/22 最終更新 涙 黒マスク 上向きうさみみ 追加
以下質問いただいたので追記です
■作成した画像を自創作キャラのイメージ画像にしたい
→可能です!
■作成したキャラを自分の絵柄で描き起こしたい
→これも可能です!
■TRPGセッションや定期更新型ゲームの立ち絵に使用したい
→全部いいよ!でもyoutubeなどの動画内でご利用頂く際はメーカー名の記載をお願いしますのだ
その他個人的な質問はTwitterでtosってます
最低限のマナー守っていただければ基本なんでもOKメーカーなので好きに遊んでやってくださいpicrew.meテイク式女キャラメーカー女の子が作れるメーカーです。男の子も作れるかもしれない。※利用範囲を「個人」「非商用」に変更しました (2021/08/17)
【利用範囲について】
利益の発生しないご利用に限ります。
収益化していない個人アカウントのアイコンやサムネイル、創作キャラクターのイメージ画像などへのご利用を想定しています。
▼具体例(一部です)
・TwitterやLINEなどSNSのアイコン・ヘッダー画像
・Youtubeやツイキャス、Twitchなど配信時のサムネイル
・TRPGプレイ時やリプレイ動画の立ち絵
・夢絵のコテキャ
・他のイラストレーター様に依頼をする際の参考資料
上記のような画像そのものの利用のほか、作成した画像をもとに自身でイラストを作成することも可能です。
二次配布は有償・無償問わず禁止しております。
【加工について】
OK:サイズ変更、トリミング、フレーム追加、文字追加
NG:上記以外の加工(色の変更や描き込みなど)
Please use it within your personal range (eg SNS and blog icons, and TRPG character) .
Secondary distribution is not possible is not possible, whether paid or free.
【お問い合わせ】
マシュマロ→ https://marshmallow-qa.com/anrm_teina?utm_medium=url_text&utm_source=promotion
Twitter→ https://twitter.com/anrm_teina
【更新情報】
2021/1/27 リリース
…
5/05 「前髪メッシュ」「インナーカラー」パーツ追加
7/22 「口」パーツにアイテム3種追加、ハイライトパーツを左右に分割・アイテム7種追加、インナーカラーの不具合修正
8/15 「下着」パーツにカラー1色追加、水着アイテム8種追加、「頬」パーツにアイテム1種追加picrew.meサンプルはこんな感じ(エセドラプルグロウ)
- 34二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 12:40:24
- 35メジロエスキーの人22/11/07(月) 17:37:40
これで引退だもんな……サウジとかドバイで見たかった……
- 36ナックル宅の壁22/11/07(月) 19:30:00
wikiのメンバー申請が昨日、承認されていました。
部長、ありがとうございます。
みなさま、今後ともよろしくお願いします。
ナックル - uma-musumeになりたい部 @ ウィキ【11/2更新】(YSDメーカー様にて作成) 「誰より速く、かっ飛ばします! 『奇蹄グループ』、上空旋回中!」 プロフィール 名前----- ナックル(Knuckle) 誕生日----- 5月13日 身長----- ...w.atwiki.jp - 37二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 19:39:32
ドバイワールドカップくらい見たかった…けどフライトラインびっくりする程怪我しまくるからちょっと怖いので
- 38スカイセンサー22/11/07(月) 21:10:08
設定変更することにしました 91世代から99世代にします
- 39メジロエスキーの人22/11/07(月) 21:31:29
おっ、オペ世代じゃん
- 40二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 21:56:08
あの世代Youtube配信になるのたすかる
- 41二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 22:03:35
- 42フラワマッスルの人22/11/07(月) 22:06:30
- 43二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 22:08:16
- 44プログレスの人22/11/07(月) 22:28:24
しゃあっ!SS投下!
- 45二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 22:29:49
このレスは削除されています
- 46プログレスの人22/11/07(月) 22:30:33
「クアちゃん大変!」
「ケミちゃん!なにかあったの?」
「フラりんが増えちゃった!」
「どういうことなの…?」
ケミちゃんの持っているダンボールを開いて中を覗く。
「ドウイウコト…?」「パクパクー」「ライジョウサンダイジョウブカナ…」「トレーナーサン…」「アワワワ」
ダンボールの中には手乗りサイズの見慣れた桃色の髪のウマ娘が1.2.3…15人ほど居た。
「これは…?」
「部室にいた」
「部室に…?」
「うん」
彼女曰く、いつものように部屋に入った時机の上にいたそうだ。
「本当はもっといたんだけどね」
ケミちゃんが部屋に入った時に散っていったらしく、とりあえず机の上に残っていたフラりんちゃん?をダンボールの中に入れて運んでいるらしい。
ダンボールから増えたフラりんちゃんの1人が顔を出してこちらを伺っていた。
「あの、クアさん、アルケミーさん」
「どうしたの?フラりんちゃん」
「多分…なんですけど、分かれちゃった私を集めたら元に戻れる…気がします…?」
本人もよく分かっていない感じだった。
「確かにこーいうのって集めたらくっつくよね、ミーはあると思うよ」
「それに他のフラりんちゃんに何かあったら危ないし私は探した方がいいとおもうな」
「だよね!」
こうして私たちはトレセン学園内を駆け回った。
花畑にいたということをフラワーちゃんに教えて貰ったり何故か生徒会室にフラりんちゃんがいたりスカーレットちゃんの髪の毛の近くにいたりした。
「これで…100人目かなぁ…?」
「フラりーん…あと何人〜…?」
なんやかんやしている内にもう日は傾いて空はオレンジ色に染まっていた。さすがにほぼ一日学園を回っていては普段トレーニングしている私達も疲れる。
「えっと…あと一人だと思います」
ケミちゃんの肩の上に乗ったフラりんちゃんが言う。(他のフラりんちゃんは全部フラりんちゃんのトレーナーさんの預かってもらうことにした。)
「あと一人かー…もう学園全部回ったよね?」 - 47プログレスの人22/11/07(月) 22:30:58
「そうだねー…フラりんちゃん、いそうなところ心当たりないかな?」
「多分あそこにいると思います」
「じゃあ行こっか」
目的の場所に向かう途中ふと、コースを見てみるとそこには小さなフラりんちゃんが走っていた。
思わず足を止める。
「ケミちゃんケミちゃん」
「どしたのクアちゃん」
私に声をかけられたケミちゃんも足を止める。
「フラりんちゃんがコースで走ってる…」
「えっ…!?」
コースにおりてフラりんを追いかける。
当然逃げるフラりん。
「待って…!」
普段は追い込み・差しなのに随分と遠くにいる。
その小さな体からどうやってそんなに力が出るのだろうか。
とにかく、フラりんちゃんを捕まえるためにも追い抜かねば!
「クアちゃんがフラりんを抜いた!」
よし…フラりんちゃんよりも早くゴールした…
「あーっ!そうじゃなくてフラりんちゃんは!?」
「クアちゃん、後ろ後ろ」
「後ろ?」
ケミちゃんに言われた通りに後ろを向く。
そこにはこちらを見上げるフラりんちゃんがいた。
「フラりんちゃん…」
抱き上げると彼女は抵抗せず大人しく私の腕の中にいた。
トレーナーさんにこの二人のフラりんを預けたのだが朝起きた時にはいなくなっており確認したら寮の自室にいたそうだ。 - 48プログレスの人22/11/07(月) 22:31:18
ということで101人フラりんでした
- 49フラワンハンドレットの人22/11/07(月) 22:40:47
私が101人いますわー!?いっぱいいますわ〜!ダンボールに詰められてますわー!多分小動物チックで可愛いですわー!?最後の私ちっこいのに強いですわー!?クアちゃんとケミちゃんお疲れ様ですわー!?
- 50キタサンアイドルの人22/11/07(月) 22:53:28
深夜の小説投下です。
ちょっとホラーあるので注意です - 51キタサンアイドルの人22/11/07(月) 22:56:58
【縺壹▲縺ィ荳?邱偵↓】
…もう2時か、寝ないと……
「トレーナーさん」
…アイドル?なんでここに…と言おうとしたが声が出ない。それどころか体が動かせない。
[(っ…金縛り…?)]
金縛りはストレスによって起こる、大分溜まっているのだろうと思ったが彼女に明らかな異常性を感じた。
「トレーナーさんトレーナーさんトレーナーさんトレーナーさんトレーナーさんトレーナーさんトレーナーさんトレーナーさんトレーナーさんトレーナーさんトレーナーさんトレーナーさんトレーナーさんトレーナーさんトレーナーさん荳?邱偵↓譫懊※縺ク蜷帙@縺玖ヲ九※縺ェ縺縺イ縺ィ繧翫↓縺励↑縺?〒」
身の危険を感じた。…だがなぜか彼女から離れる気はしなかった。そしてやっと声を出せた
[あなたを…ひとりに…するわけ…ない…!]
その瞬間金縛りが解け、一瞬だけ声が聞こえた。
「ありがとう」
[はっ!……夢か]
なんとも不思議な体験だったが振り返る良いキッカケになった。…そう思おう。
__
はい、本編と一切関係ないホラーです。文字化けは文字化けテスターにもぶちこんでくださいアイちゃん寝ます - 52残滓(大)22/11/07(月) 23:50:10
自身の文才に絶望したので、残滓ちゃんちょっとロゴスの生涯まとめ投下して横になりますね…
0歳:上京して有馬記念を優勝したシンデレラストーリーを歩んだある名ウマ娘のもとに生まれる。
3歳:幼稚園に入園して間もなく、園庭一周タイムアタック中に同じクラスの男子にちょっかいを出され刃傷沙汰になりかける。
口頭注意のみで許されるも、交友関係の形成に影響を残してしまう。この出来事から「壊れたものは戻らない」ということを学ぶ。
5歳:母親に連れられ有馬記念の観戦をする。最有力バがブロックされて着外に沈み、完走後のそのウマ娘の顔を見た彼女は母親にそれを訴えようとするも、「いつかあなたも、今勝ったあの子みたいになれるといいわね」という言葉に遮られてしまう。
そして母親の言葉の真意を「運に左右されて理不尽に打ちのめされることはあたりまえ」であり「敗者の苦しみに共感するのは子供のすること」と曲解する。
6歳:小学校入学。意見の対立で友人と喧嘩し、それから目を背けるように自主トレーニングを始める。
8歳:VRの世界からの脱出を目指すという筋書きのライトノベルに触れ、全ての人類を個人用VR空間に入れることで「君の人生は君が主人公」を現実にすることを構想する。
この頃から父親のPCを使って勝手に本を買うようになる。
12歳:中央トレセン学園中等部の入学試験を受けるも、二次試験の面接で不合格となり、公立中学校へと進学する。
13歳6月:非公式レース出走時、群を抜いて速い大逃げを評価され、後の担当トレーナーにヘッドハントされる。
中途編入試験を受験し、無事合格。
担当トレーナーに走る意味を問われ、「現実逃避」と答えかけて「記録の追求」と答える。
7月から中等部1年として編入。 - 53二次元好きの匿名さん22/11/07(月) 23:50:12
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- 54残滓(大)22/11/07(月) 23:54:50
※以降、年齢ではなく学年を用いて表記する。
中等部1年9月:VRウマレーターを利用した1日2回の走行フォーム調整が習慣化する。
2年6月:メイクデビュー1着。敗者の悔しげな顔を見て同情してしまう自分に苦悩し、8歳頃に構想した計画の実行を本格的に検討し始める。
11月:ホープフルステークスへの出走が決定。「歯車仕掛けの時計」をテーマにした勝負服を手にする。
12月:ホープフルステークス1着。インタビューに「レコード更新はできませんでしたね」と答え、炎上する。
3年4月:大雨の日に、夢だと思い込んで大樹のウロで怨霊と契約する。その2日後、戦々恐々としながら皐月賞1着。
5月:試行錯誤と度重なる質問の末、怨霊が『呼びかければ答えるが思考を読むわけではない』『レースには影響を与えない』『適切な理由で申請すれば一時的に超能力を与えてくれる』『計画の進捗によっては命を脅かす』ことがわかる。怨霊を「出資者(パトロン)」と名付ける。
日本ダービー1着。
7・8月:夏合宿先で出資者の力の試験運用、同室を始めとする多人数に意図した夢を見させることに複数回成功。
10月:菊花賞1着、三冠馬となる。出走前に京都レース場付近にて刃物を持ったウマ娘に襲われるも、出資者を自身に憑依させて即席で武術を習得、物理法則に則って撃退。これを皮切りに同様の事例が増える。
12月:有馬記念1着。勝者インタビューにて精神混濁。保健室での休憩中に黒い泥がまとわりついて浸透してくる夢を見てから、度重なる憑依により出資者と混ざりかけていた自我が後戻りできないほど本格的に融合する。
2月:この頃から、学園内の目覚まし時計を片っ端から盗み始める。
3月:大阪杯1着。4月の自身の誕生日について言及する。 - 55残滓(大)22/11/07(月) 23:56:21
4年4月:
誕生日の夜、トレセン学園本校舎の大時計の裏にて、大量の使用済み蹄鉄と盗んだ大量の目覚まし時計、さらに誕生日ということで集めた注目を触媒に『自身を除く全人類を夢の中に閉じ込める』儀式を開始。
奇跡的に儀式の真っ只中に祭壇まで辿り着いた同室のウマ娘と遭遇。
出資者の内訳は殆どが故障や去勢その他の理由でクラシックレースに出られなかった"馬"の魂、残りが夢破れて去っていったウマ娘の言霊による残留思念であったため、「夢が潰えても人生は続く、覆水は盆に返らないがまたゆっくり注ぎ直せばよい」という旨の説得によってあっさり儀式が崩壊。
相反する思想による強烈な拒絶反応で融合した魂が爆発四散しそうなところを、どうにか綺麗に四つに分割、代償として自らの命を支払った。
彼女はそれから永遠に、自身の信念に沿って世界を彷徨い続けているという。 - 56残滓(大)22/11/08(火) 00:05:36
中等部4年ってなんだよ高等部1年の間違いです
ついでに、力を使っている時は副作用として目とか手を始めとする体表面から蒼炎が出ます。
アニメ版の"鬼を宿したライスシャワー"と同じ原理ですが、あちらは最大MPを削っているのに対してこちらは莫大な現在MPでごり押しているような違いがあります。
- 57ラプ中22/11/08(火) 00:23:14
おお壮大な物語が…
- 58メジロエスキーの人22/11/08(火) 06:28:52
壮大な物語が展開されている裏でこっちはSSの続き投げていきますね
- 59メジロエスキーの人22/11/08(火) 06:29:49
─────
「想いの力、かぁ……」
12月に入りすっかり冷え込んだ日、トレーニングの休憩中にポツリと独りごちる。
「想いがなんだって?」
「ああトレーナー。ううん、ちょっと独り言。気にしないで」
私が浮かない顔でため息をついているのが気になったのか、トレーナーが優しく声をかけてくれる。私はそんなトレーナーに甘えて今抱えている悩みを打ち明けた。
「トレーナー、1つ聞きたい、というか相談があるんだけど、いい?」
「もちろん。担当の悩みを聞くのもトレーナーの仕事だからな。よいしょっと、それで?」
コースの外側の芝生に座っていた私の隣に腰を下ろし、真剣な表情で私の話を待ち構えている。私はその顔を見て、少し躊躇いながらも「あのね……」と話し始めた。
「この前のジャパンカップ負けちゃったでしょ? そのあと何が足りないのかなって1人で考えてたら、あの子より勝負に対する想いが足りないんじゃないかって思い始めて…、でもだったらどうしたらいいんだろって考えてたら訳分かんなくなっちゃって……」
話すにつれて抱えていた膝をどんどん引き寄せ、終いには膝の上におでこを乗せて俯きこんでしまう。そんな私の頭をトレーナーは優しく撫でながら「大丈夫」と言ってくれた。
「あのな、エスキモー。オレは君の勝負に対する想いが他の子より劣っているとは全く思わない。むしろ他の子より強いからこそこれまでたくさんのレースに勝ててきたんだから。ダービー、菊花賞、大阪杯、春の天皇賞、宝塚記念、G1だけで5つも勝っているんだ。間違いなく君の想いは強い。それは誇っていい」
「だったら何が足らないんだろ……分かんない、分かんないよ……」
掴みたい勝利、ただそれを手に入れるには何かが足りない。エスキーにあって私にはない何かが。
「なあエスキモー。エスキーと話してみたのか?」
「ううん。だって同じレースを走るライバルだし、そんなの聞いても絶対教えてくれないよ」
もちろんそれは1回考えた。ただどれだけ優しい彼女でも譲れない、他人には言えないものの1つや2つはあるだろう。しかも文字通り敵に塩を送る行為なんてするはずが……
「直接聞いたらそれは教えてくれないと思う。ただ例えば遊びに行ったり2人で過ごしたりする中で垣間見えるものもあるんじゃないかな。彼女が普段何を大事にしているのか、何が心の柱となっているのか」 - 60メジロエスキーの人22/11/08(火) 06:30:57
レースに勝ちたい想い、それが強ければ強いほど普段の生活、レースには関係がない所でも薄っすらと漏れてしまうはず。トレーナーは直接聞けずともそれを彼女から感じ取ることができれば、一体何が足らないのか分かると教えてくれた。
「勝ちたい想い、というのは当然オレにもある。あくまでも君を通してになってしまうけど」
「それってつまり……?」
私がそう返すとトレーナーはニッコリと微笑み、彼の想いを語ってくれた。
「君と夢が見たい。勝利の先にある夢の景色を君と一緒に見たい。それがオレのレースに対する想い、かな」
「私と一緒に夢を……」
彼の想い、期待、そして夢。それを私に託して毎日を共に歩んでくれている。そんな彼に返せるものは私は持ち合わせているだろうか?
「あー、そんなに重く捉えないでくれ。オレが今まで勝手に考えていたことを言葉で表現しただけだから。ほ、ほら練習再開するぞ」
そう言ったトレーナーは「よいしょっと」と呟き立ち上がると、私に颯爽と手を差し出し立ち上がるのを助けてくれる。私はそれに甘えて彼の手を握り力強く引っ張り上げてもらった。
「ありがと。ちょっといろいろ考えてみる」
「少しでも手助けになったら何よりだ。また何か悩み事があったらいつでも言ってくれ」
そう答えてくれた彼の笑顔はいつだって眩しい。だけど少し気が晴れた私はそんな彼を少しだけからかってみたくなり、「あのね」と耳元でこう囁いた。
「誰かさんに愛してもらった次の日、いつも腰が痛くなっちゃうんだけどどうしたらいいかな?」
「なーんて」とクスクス笑って外ラチを潜り抜けコースへと足を踏み入れる私。彼はそんな私に向かって真っ赤な顔で
「な、なに言って……!?」
なんて言っちゃって。かっこいいけど可愛いなあ、私のトレーナーは。
- 61メジロエスキーの人22/11/08(火) 06:32:13
─────
トレーニングはもちろん真面目に終わらせ、練習後のミーティングも無事に済ませた。ミーティングのあとに携帯を見てみると何やら通知が1件届いていた。
「有馬記念のファン投票2位だって。1位は……まあエスキーだよね」
「君が21万4742票でエスキーが26万742票か。まあ実績だとどうしても差が出てしまうから仕方ない部分はあるな」
特別登録をしたウマ娘のファン投票上位10人に優先出走権が与えられるグランプリレース、有馬記念。21万以上もの人に想いを託され私は夢の舞台へと立つ……ってこの想いって……
「あっ、そうそうエスキーにメッセージ送っておかなきゃ。今度の休み空いてる?って」
忘れないうちにあの子にメッセージを送っておく。行き先は決めてないけど、2人でゆっくり話せそうな場所だったらなんなりと見つかるだろう。そう考えている間に既読がつき、『日曜ならいいですよ』と返事が返ってきた。
「『ありがと。場所はまたあとでね』っと。じゃあ今度の日曜出かけてくるね」
「オッケー。日曜は無理できないと……」
携帯をカバンに入れていると何やらトレーナーが不穏なことを呟いた。
「……加減はしてよね」
「……善処はする」
そんなこと言って本当に善処した試しあったかなこの人……
─────
有馬記念を2週間後に控え、街もいよいよクリスマスモードに色づいてきた日のお昼すぎ。待ち合わせの駅前で私は少しげっそりとした表情でエスキーを待っていた。
「今日の予定昼からにしておいてよかった……」
善処するとは一体なんだったのか。あの日の台詞をそっくりそのまま彼に聞かせてあげたかった。寒空の下冷たい手を暖めようと口に手を当てて吐いた息はまるでため息のようだった。
- 62メジロエスキーの人22/11/08(火) 06:33:09
「お待たせしましたっ! あれっ? なんだかエスキモーちゃん顔暗くないですか? 調子悪かったり?」
そうこうしている間に待ち合わせ場所にやってきたエスキーに大丈夫だよと返事をして楽しみにしていたカフェへと足を運んだ。入り口の扉が大人用と子ども用の2つあるユニークな店構えをしたこのお店はパンケーキが有名らしい。私たちも他のお客さんに合わせてこのお店名物の物を注文した。
「わぁっ! なんだかおとぎの国に出てきそうですっ!」
「すっごーい……! 噂には聞いてたけど、とってもかわいい……!」
私たちの前に現れたのは何枚かのパンケーキの上にクリームがたっぷり載っていて、さらにクッキーだろうか、小さな雪だるまやクマが隣に並んでいてとっても可愛らしい盛りつけになっている。しかもパンケーキの周りにフルーツも散りばめられていて、私たちは2人してお皿を見る目がキラッキラに輝いていた。
「食べるのもったいないけど食べるしかないよね……いただきまーす! 」
「いただきまーすっ! もぐもぐ……ん〜〜〜〜っ! とっっっても美味しいですっ!」
一口食べて分かるこのとろける甘さ。学園の近くだし前からクラスで話題になってていつか行ってみたいなって思ってたんだよね。来てよかった……
「それにしてもよくこんなお店見つけましたね、エスキモーちゃん」
「あれ? クラスとかで話題になってなかった? クラスのみんな美味しかったよ〜って写真何枚も見せてくれたんだけど」
私のクラスだけだったのだろうか。いやでも駅前数分の所にあるから他のクラスの子も行ってるはず……
「こんな話題に乗るのが得意じゃなくてですね……」
あははと苦笑いを浮かべるエスキー。愛嬌たっぷりでいつもみんなとニコニコ接してるから忘れがちなんだけど、そういえば中身は私のパパなんだよね。それは確かに一回りぐらい違う女の子の話題についていけって方が難しいかもしれない。ファッションにもあんまり興味薄いみたいだし。
「まあ人それぞれだと思うからさ、何に興味持つかなんて」
お互いお腹が空いていたのか凄い勢いで食べきってしまい、既に食後のミルクティーを味わっていた。甘く温かく、体の中を温もりが駆け巡っていく。
- 63メジロエスキーの人22/11/08(火) 06:34:52
「それはそうなんですけど……というよりエスキモーちゃん。このあとどこ行くんでしたっけ?」
「このあと……ぶらぶらーっとカフェ巡りとか街歩きとかどうかなーって思ってたんだけど……」
日常の中で気を解してもらって、何かレースのヒントを得られないかなって考えてたんだけど、他の人からしたらほぼノープランですよって言ってるようなものだよねこれ……
「……だったらエスキモーちゃんを連れていきたい所があるんですけど、いいですか?」
と思っていたらエスキーの方からお誘いを受けた。もちろん断る理由なんてないからすぐに首を縦に振る。
「ちなみにそれってどこなのか聞いてもいい?」
「……着いてからのお楽しみですっ」
そう微笑んだ彼女は手元のミルクティーを静かに飲み干し口を拭くと席を立つ。私も慌ててぬるくなった自分のミルクティーを口から流し込むと、レジへ向かうあの子の背中を追いかけた。
─────
駅から歩くこと10分少々。着いたのはよくある普通のアパートメントだった。特に何か特徴がある訳でもなく、ただただ一般的な造りをしていた。その中の一室の玄関の前へと迷いなく歩いていくエスキーの背中に説明を求めて声をかけた。
「ええっとエスキー? ここは?」
道中いくら聞いても笑ってごまかすだけだった彼女。私の質問にはまだ答えずにショルダーバッグから鍵を取り出し、そのまま鍵穴へと差して回す。ガチャリと音を立てたその扉のドアノブを持って捻ると、彼女は何も言わずに扉の中へと足を踏み入れた。
「入らないんですか?」
躊躇うことなく靴を脱いで部屋に上がり込むエスキー。そんな彼女の姿に少し体が固まったものの、その一言で新しい電池が入ったロボットのように一歩一歩足を前に踏み出していった。そうして彼女に倣い、おそるおそる靴を脱いで部屋に上がると、そこに広がっていたのは見知らぬ誰かの生活空間だった。
「……いい加減教えてくれてもいいんじゃない?」
わずかに怒気を含んだ声でこんな場所でも自然体でいる彼女に声をかける。すると彼女はいつもより低いトーンの私の声に気づいていないのか、あっけらかんとした表情で正解、いやヒントを伝えた。
- 64メジロエスキーの人22/11/08(火) 06:35:46
「周り見渡してみて何か気づきませんか?」
「周り……?」
部屋に広がるのはキッチンや食卓、そしてリビング。リビングに置いてあるソファの真正面にはテレビがあって、そのすぐ側には……
「ママの写真……どうしてこんな所に……?」
それはママがレースで優勝した時の写真だった。満面の笑顔で、優勝のレイも肩にかけたりなんかして。それがいくつも、いくつも。そんなママの隣に常に写り込んでいる男の人はもしかして……
「パパ……?」
間違いない。これはパパの姿。元々ママの専属トレーナーをしていたパパの姿がここにはあった。阪神JFの時は少し距離が離れていたけど、どんどん時が経つにつれて2人の距離は縮まっていって。ついには肩をくっつけるぐらいにまで2人の仲と距離は近くなっていた。
ここで1つの疑念が生じた。こんな写真を何枚も持っているのはどう考えても関係者に違いない。部屋の雰囲気としたら女性の部屋ではなく男性の部屋、そして最近ここで生活をしていたような空気も感じない。ただ掃除は行き届いていて、ホコリがあまり見当たらない。もしかして……
「元々ここはあなた、ううん、パパの部屋だった。そうでしょ?」
私の答えに彼女は普段と変わらない笑顔で、ただ何かを内に秘めたようないつもより低い声で私の推測が正しいことを告げた。
「さっすがエスキモーちゃんです、大正解です。そう、ここは元々わたしの部屋だったんです。今はたまにしか顔を出してないですけど」
─────
「1つ、聞いてもいいかな?」
「いいですよ、いくつ聞いても。今日はなんでも答えてあげます」
変わることない笑顔を振りまき、我が物顔──自分の部屋なんだから当然なんだけど──で部屋を練り回る彼女に堪らず口を突いて出たのがこの言葉だった。ただ彼女はなんでもどうぞとソファに座ってのんびりとした声でそう答えた。
「……なんでエスキーはそんなに強いの?」
「えー、そんなことですか? もっとこうわたしの内面を抉るような質問を期待していたんですけど……仕方ありません、答えてあげましょう」
- 65メジロエスキーの人22/11/08(火) 06:36:58
まるでダンスでも踊っているかのような滑らかな動きで立ち上がり、私にそーっと歩み寄ってくる。目の前で広がる光景に私の目が点になっている隙に体をぴったりと寄せ、上目遣いでこう呟いた。
「負けたくないからです、誰にも。もちろんエスキモーちゃんにも」
「負けたくないからって、そんな単純な……!」
彼女の言葉にハッと我に返って反射的に大きな声が出てしまった。そんな私の声にも動じることなく彼女は変わらぬ笑みで呟く。
「単純ですよ、すごく単純。ですが負けた姿を見せたくない相手がいる。それだけで人、いえウマ娘は強くなれるんです」
「負けた姿を見せたくない相手……もしかしてそれって……」
いつも彼女の側にいた、いつも彼女を見守っていた、そして彼女のことを誰よりも想っていた、そんな相手は……
「ママのこと……?」
「ピンポーン、大正解ですっ!」
1人しか思いつかなかった。彼女を今まで支えていた相手なんて……負けるのを見られたくない相手なんて。
「勝ちたい理由、すなわち負けたくない理由。もちろんわたしが負けず嫌いなのはありますが、一番大きいのは姉さま……いえ……」
彼女、いや彼は私から離れると天に向かってこう呟いた。
「ドーベルがいるから」
- 66メジロエスキーの人22/11/08(火) 06:38:06
窓から射す西日に照らされた彼女の姿は一瞬大きくなって男の人の姿に、パパに見えた。もちろん目を擦って改めて彼女を見るとそんなことはなく、目の前にいたのは頭の上に耳が、そして腰の下から尻尾が生えた1人の可愛らしいウマ娘だった。
「……なーんてっ。呼び捨てにしちゃったの姉さまには内緒ですよ?」
クルクルとその場で楽しそうに回る1人の少女を見て私は想う。愛するあの人を、ここにはいない元の世界のパパとママを。
(愛、か……)
見えなくて、形なんてなくて、触れなくて……だけど確かにそこにあるって分かるもの。そうか……この子は……
(愛されるから、強いんだ……)
気づく。そしてすぐに自分はと自問する。
(私は愛されているのかな……)
悩むな。私は愛されている。それは誰に?
(決まってる、あの人に……トレーナーに! パパに! ママに! そして応援してくれているファンのみんなに!)
体の底からふつふつと力が湧き上がってくるのを感じる。今まで感じたことのない、暖かい力、それはまさに夢を後押ししてくれる力。
(勝ちたい……勝ちたい……みんなのために……勝ちたい!!!!!)
想いは結ばれる。1つの形となって。
“貴方■■■た■■先■ Lv.0”
- 67メジロエスキーの人22/11/08(火) 06:39:14
─────
彼女の言葉できっかけを掴んだ私はあの子に連れられて部屋の中をグルグルと回る。
「こっちがお風呂で、こっちがキッチン、それでこっちが寝室ですね」
「へぇ、こんな所で生活してたんだ……あっ、そういえば……」
部屋の中を巡っていると頭の奥底に眠っていた古い記憶が呼び起こされた。
「確か私が生まれて家を買うまではパパの家にママが来て生活してたって。じゃあパパとママはここで暮らしてたってことなのかな……」
なぜだか懐かしい気持ちに包まれ部屋を見渡す。そんな部屋の中で何やら見覚えのある物を視界に捉え、目の前にいたエスキーの肩をポンポンと叩く。
「ねぇエスキー、あそこに掛かってる時計って……」
「あああの時計ですか。確か何かの記念でもらったような……おばあさまからでしたっけ……って針止まっちゃってますね」
よく見ると電池が切れていたのか針が11時59分を指したまま動きを止めていた。時計を壁から外して裏を覗き込んでみると、電池は2つ入っていたものの少し古く、両方入れ替えてあげないと動きそうになかった。
- 68メジロエスキーの人22/11/08(火) 06:39:52
「うーん、ここに電池はなかった気がしますし……また今度来るときに持ってきましょう。レースも近いですから、次来れるのはレースが終わってからになりますけど」
「……その時また一緒に来てもいい?」
「……ええ、一緒に来ましょう」
なぜとは聞かずに優しく微笑んで、希う私の願いをそっと受け入れてくれる。私はありがとうと礼を伝え、続けてもう帰ろっかと彼女に伝えた。
「……はい、エスキモーちゃんの悩みもちょっとは解決したみたいですし」
「あはは、バレてたか」
バレバレですよなんて、そんなに分かりやすい顔してたかな? でも憑き物は1つ落ちた気がする。ようやく手が届きそうなそんな気持ち。
(あとは目いっぱい頑張んなきゃ、だよね)
レースはもうすぐそこまで迫ってきていた。
- 69メジロエスキーの人22/11/08(火) 06:40:17
今日はここまで。それではまた次回
- 70二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 12:29:42
なんの為に勝つのか…ウマ娘としての、アスリートとしての根幹に触れた今のエスキモーならエスキーにも手が届きそう
ところで時計、ずっと動かない方が良いような気がしてきた……。 - 71二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 14:44:14
時計の電池、電池ねぇ……
- 72メジロエスキーの人22/11/08(火) 18:39:10
今日も月がきれ……月食やんけ!
- 73二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 19:00:58
今日も天王星がきれ…天王星食やんけ!
- 74ラプ中22/11/08(火) 19:10:34
こう考えましょう
「ああ、綺麗な月食だ…」と - 75メジロエスキーの人22/11/08(火) 19:20:25
もしかして視力100ぐらいあったりする???
- 76二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 19:28:16
告白失敗したことを暗喩するのに使えそう
- 77クアドラプルグロウ22/11/08(火) 19:31:02
月が綺麗かな…(意図0)
- 78二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 19:44:53
- 79二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 21:18:29
復活!
- 80メジロエスキーの人22/11/08(火) 22:11:53
そういえばチームカオス版「月が綺麗ですね」選手権前にやったな
- 81二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 22:18:00
- 82キタサンアイドルの人22/11/08(火) 22:30:01
- 83二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 22:34:13
(血統も立ち絵も用意したが「運命なんて無い」思想に基づき、SSを一切書かないのでコメントに困るクインちゃんの中の人───)
- 84二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 22:40:25
このレスは削除されています
- 85二次元好きの匿名さん22/11/08(火) 22:50:20
ブラボ自分も好き
ヴィクトリア朝の建築を味わうために買ったまである(目的) - 86キタサンアイドルの人22/11/08(火) 23:18:49
受験頑張ってください!とは言いますが正直身構えすぎても壊れるだけですアイちゃんは壊れてこうなりました。ROMってもカキコしてもアイちゃんは応援しますよー!by自由人アイちゃんより
- 87ツキノミフネの背後霊22/11/08(火) 23:51:03
コイツら気持ち悪いなって思いながら書いてます……
皆さんのキャラをお借りするときは本当に筆が乗って楽しいです
あまり浮上できていませんがキタサンアイドルさんと交流できたら楽しいだろうなって思っています
無念
- 88クアドラプルグロウ22/11/09(水) 00:05:38
SSの書き方
単発→推しが尊い 尊い尊い尊いよぉおおおおお って気持ちをぶつける
長編
まず出走するレースを決めて、テーマになるキーワードを決めて、あとはライブ感!!!
全体的に雑い - 89レッカの中身22/11/09(水) 00:17:40
大まかな流れを書く
↓
文章を肉付けする
↓
通して読む
↓ ↑
粗を探して修正する
(↓)
完成
私は大体こんな感じです - 90メジロエスキーの人22/11/09(水) 06:59:53
(レース描写ない話)
大まかな流れ決める→キャラが動くままに書く
(レース描写ある短編)
レースの結果と展開決める→レースの部分は決めた展開と結果のままに書いて残りの部分はある程度キャラが動くままに書く
(レースの描写ある長編)
全体の話の最初と最後はある程度固める→レースの結果と展開決める(複数あるなら結果は全部、展開は決められそうなら)→話の流れざっくりとでも決められそうなら決めておく(決められそうにないなら次に)→レースの部分は決めたとおりに、残りの部分はある程度キャラが動くままに、最初に決めたクライマックスに向かうように書く
って感じかな。キャラが動くがままにアドリブで書いてる部分があるのは否めないんだけど - 91メジロエスキーの人22/11/09(水) 07:00:24
で言うの忘れてた。今日もSSの続き投げていきますね
- 92メジロエスキーの人22/11/09(水) 07:02:02
─────
12月25日、クリスマスの日の夜、私とトレーナーは有馬記念の出走者全員が揃った記者会見とレース直前の軽いトレーニングを終わらせたあと、2人でホテルへと向かった。学園からは離れた都心の、私もメジロ家のパーティーとかで行ったことのある有名なホテルへと足を運んだ。
「やっぱり結構混んでるね。流石クリスマスって感じ」
2人してドレスコードをキッチリと守った服装で案内された席へと向かい合わせに腰かける。空間自体は広々としているが、あちらこちらに男女の2人組や忙しそうに料理を運ぶホールスタッフがいて、思っていたより手狭に感じた。
「みんな楽しそうだな……」
「えっ、どうしたのトレーナー? もしかして緊張してる?」
もちろん私も男の人と2人でこういう所に足を運ぶのは初めてだけど、メジロ家のパーティーなりで着飾ってディナーを楽しむことは何回もあったから全然緊張していない。もしかしてトレーナーは経験ないんだろうか?
「そりゃ多少はな……女性と来るの初めてだし、ホテルのパーティーとかも君と比べたら全然来たことないから、あまりこういう服着慣れてないからな……」
トレーナーの服装を改めて見ると、いつも学園内で着ているジャージみたいなラフな格好じゃなく、ドレスコードを守ったスマートカジュアルと呼ばれる、ジャケットやパンツスタイルの綺麗な服を身に纏っている。ジャージでも十分にかっこいいんだけど、ビシッとした服を着ている彼はより一層素敵に見えた。
「大丈夫大丈夫。その服似合ってるし堂々としてたらいいから、ねっ?」
「そう言ってもらえて少し肩の力抜けた気がするよ、ありがとう」
彼に向かって笑顔でウインクを飛ばすと、彼は緊張の糸が少し緩んだらしく、ぎこちなさは残るけど笑顔を浮かべた。そんな彼と2人しばし談笑していると、最初の前菜が運ばれてきた。
「美味しそう……」
「それじゃ食べる前にグラスを手に持って……メリークリスマス」
「メリークリスマス!」
小さくコンとワイングラスがぶつかる音が鳴り響き、楽しいディナーの時間が始まる。美味しいねと笑いあいながら、数日後にレースを迎えた最後の優雅な時間をしばし2人で、ゆっくりと。 - 93メジロエスキーの人22/11/09(水) 07:02:56
─────
食事を終え、ホテルから外に出ると、街はすっかりイルミネーションの光に包まれていた。お店の軒先には大きなサンタクロースの人形が置いてあったり、小ぶりなクリスマスツリーが飾ってあったり……なんだか魔法の国に飛び込んでしまったかのような錯覚まで覚える。
「今日は連れてきてくれてありがとね。高かったでしょ?」
「日頃の感謝の気持ちだから。むしろ足りないぐらいだよ」
2人手を繋ぎ街の喧騒の中を静かにゆっくりと歩いていく。時々道に面したお店の前で足を止めたり、イルミネーションをバックに写真を撮ってみたり。歩幅を合わせて綺麗な街の中を2人で一緒に。
「ねぇ、トレーナー?」
「どうしたエスキモー?」
今にも雪が降ってきそうな空を見上げ、彼に問いかける。
「私のこと、ずっと愛してくれる?」
唐突すぎただろうか、彼はピタリと足を止め、何度か目をパチパチさせる。ただすぐに答えが見つかったのか私を見つめてこう告げた。
「ああ。世界が終わるまで、いや世界が終わってもずっと」
「……ありがと、私も同じ気持ち」
世界が終わってもずっと……それは永遠と同じ意味。私も彼とずっと一緒にいれたらいいな。
─────
トレーナーの家へと戻り、リビングへ急いで向かいエアコンの電源を入れる。合わせて寝室のエアコンのリモコンを探し当て、同じく早く部屋が暖まるように指示を送った。そうして手洗いうがいを済ませ、2人ともラフな格好に着替えると食卓の椅子に向かい合わせで腰かけた。2人とも何か背中の後ろに隠すように。
「こういうのって男の人からじゃない?」
「時代は男女平等だよ」
お互い言葉や目で牽制しあい、事態が前になかなか進まない。そんなやりとりを続けること数分、トレーナーが諦めたように後ろに隠していた小包を2つそっと机の上に置いた。1つは私の目の前に、もう1つは彼のすぐ前に。
- 94メジロエスキーの人22/11/09(水) 07:04:01
「えっと、トレーナー、これは……?」
「開けてみて」
そう言われ包装を解き、そこに現れたのは……
「このケースの大きさ、もしかして……」
「メリークリスマス、エスキモー。オレからの気持ちだ」
小さな箱。その中には指輪が1つ入っていた。小さな宝石が埋め込まれた綺麗な指輪。もしかしてこれは私の誕生石のガーネットだろうか。部屋の照明に照らされてキラキラと眩しく輝いていた。
まさかのプレゼントに一瞬我を忘れかけるが、トレーナーの手元にも同じ大きさの小包があるのをもう一度視界に捉えた。
「……もしかしてペアリング?」
「ピンポン、大正解」
トレーナーが綺麗に外した包装の中から取り出したのは私と同じ小さな箱。そしてその中には私と同じ指輪が綺麗に収まっていた。
「指輪の内側見てみて」
そう言われ指輪を取り出し顔に近づけ、中に何か刻まれているのを見つける。そこに書いてあったのは私の名前とトレーナーの名前だった。
「……ずるいよこんなの」
零れそうになった涙を必死に抑え、彼に向かって微笑みかける。そんな彼は私が持っていった指輪をそっと右手の指先で掴むと逆の手で私の左手を持ち上げ、ゆっくりと薬指に嵌めてくれた。
「……なんかプロポーズみたい」
「……同じようなものだよ」
お返しに私も彼の左手の薬指に指輪を嵌めてあげて、嵌めた所を互いに見せ合う。
- 95メジロエスキーの人22/11/09(水) 07:05:11
「みんなの前では見せられないね」
「2人きりの時だけだな」
素敵なクリスマスの夜、永遠に続けばいいのにとサンタさんにお願いする。それが無理なことを分かっていてもそう願わずにはいられなかった。
─────
「はい、トレーナー、私からはこれ。開けてみて」
余韻に浸っているのも束の間、今度は私から彼にクリスマスプレゼントを贈る番。私がもらった物より少し大きめの包みに入ったプレゼントを彼は丁寧に包装を剥がしていく。
「これは……財布?」
「うん、トレーナー、今持ってる財布結構使い古してるでしょ。これからも私の隣にいてくれるんだったら、ちょっといい物持ってもらわないとね」
誰もが聞いたことがあるブランドの長財布を彼に贈る。また長く使ってもらえるようにしっかりとした物を、「ずっと一緒にいたい」という想いも乗せて。
「ありがとう……大事に使うよ」
「これは毎日使ってよね。隠す物じゃないんだし」
指切りげんまんとちゃんと使ってくれることをお願いしてプレゼントの交換を終える。夜も更けてきたしお風呂に入ろうと席を立つと、向かい側から腕を掴まれる。
「えーっと……トレーナー? レース明後日だよ? 忘れてないよね?」
「……善処するから」
これまで守られた試しのないその言葉を今度こそ信じてあげようかと悩み、悩み、悩み……
「……手加減してよね」
- 96メジロエスキーの人22/11/09(水) 07:06:24
─────
次の日の朝、窓から差し込んだ太陽の光に目が覚めると隣でぐっすりと眠っている彼を横目で見やり、大きくため息をつく。
「……ウソばっかり」
─────
有馬記念前夜、3度目となる白い部屋が夢の中に現れた。その夢の中で電池を手に持った私は時計が置いてある場所へと戻り、時計の裏の空いていた場所に掌の上のそれを嵌め込み、ホッとひと息をついた。
(これで完了かな……あれ? 動かない?)
新しい電池を入れてあげても時計の針は微動だにしない。カチコチとした音が鳴らないまま古びた時計は何も反応しなかった。
(もしかしたら……時間を合わせてあげないといけないのかな?)
そう思い時計の裏の蓋を外し、針の調節を行う。だけどそもそも今が何時か分からないし、時間を何で確認すればいいのかも分からない。
(何か時間が分かるもの……あれっ、なんだか人がいる。さっきまで誰もいなかったのに)
遠く離れた先に何やら人影が見えた。手を振りながら「おーい!」と大きな声で呼びかけると、私の存在に気づいたのか、私のいる場所まで駆け寄ってくれた。だけどなぜか顔がはっきりと見えず、男の人ということ以外誰なのかがさっばり分からない。
「今の時間? えーっと確か──」
その人がどこかで聞いたことがあるような声で時間を私へ伝えようとした瞬間、三度(みたび)目の前が真っ暗になり夢が途切れた。
─────
時は過ぎ、ついにやってきた有馬記念当日。レース直前の控え室にて最後のミーティングを行う私たち2人。互いに緊張はしているものの、終始和やかなムードでレースプランや他の出走者について確認を行うことができた。
「──と、こんなもんか。エスキモー、行けそうか?」
「もちろん大丈夫……いつものルーティーンもお願い」
- 97メジロエスキーの人22/11/09(水) 07:07:45
このレース前の恒例行事もすっかり慣れたもので、互いに椅子から立ち上がると向かい合って抱き合い、軽い口づけを交わす。
「……今日はゴール前で見ててほしい、私が勝つところを」
「……分かった。君が勝つのを信じて応援するよ」
その言葉を告げ離れようとしたトレーナーを私は引き留め、「もう1個」とお願いをする。
「私って……強い?」
私の不安そうな顔を見て、もちろんと言って力強く抱き締めてくれる。
「オレにとって世界で1番強いウマ娘だよ」
最高で最上で最強の言葉。トレーナーが言ってくれたなら信じられる、自分が1番強いんだって。今日勝つんだって。
「ありがと……勝ってくるね」
体を離すとトレーナーにポンと背中を叩かれ部屋から送り出される。私は背中に残ったかすかな彼の手の温もりを感じながらコースへと駆けていくのだった。
─────
『さあ年末の大一番有馬記念! 今出走者がターフへと姿を現しました!』
パドックから地下バ道を通じてコースへと足を踏み入れる。まだレース前だというのに割れんばかりの歓声が私たち出走ウマ娘たちへと降り注ぐ。
『頑張れー!』
『応援してるからねー!』
『夢見せてくれー!』
「夢、か……」
- 98メジロエスキーの人22/11/09(水) 07:08:24
そうここはみんなの夢が詰まった場所、有馬記念。ファンの期待、希望、夢の欠片が集まって形作られた夢のレース。
(夢のレース……だったらゴール板を過ぎたら夢は終わる? じゃあその先にあるのは……?)
夢の先、果たしてそこには何があるんだろう。そこにはどんな景色が広がっているんだろう。私は見たい、一体どんな絶景が広がっているのか、先頭で駆け抜けて。ただそのためには……
『──さあここで上位人気2人の登場です! ファン投票でも第1位、そして本日も1番人気! 2枠3番メジロエスキーです!』
この子を、メジロエスキーを超えなくちゃいけない。
より一層の大歓声が鳴り響く中、彼女は観客席に向かってペコリと頭を下げる。そしてスタート地点へと元気よく駆けていった。次にコースに私が登場すると、ファンのみんなはさっきと変わらないほどの声援を私に送ってくれる。
『──そしてファン投票第2位、本日2番人気。4枠8番メジロエスキモーの登場です!』
(このエールを力に変えて私は……!)
エスキーと同じように観客席に一礼しゲート場所へと走っていく。芝の状態を確認しつつ、今日のレース傾向を頭に呼び起こす。
(内が少し荒れ気味だったけど前残りのレースもあったし、外差しが決まったレースもあった。すなわち前が詰まらなければよっぽど最内ではない限りどこからでも飛んでこれるバ場状態)
後方待機勢ばかり好走していたならまだしも先行組も粘り込んでの着拾いも何度もあった。昨日のレースも振り返った結果、今回も中団やや後ろから仕掛ける私と先団に取りつくエスキー、どちらにも有利不利はなく極めてフラットなバ場と結論づける形となった。
(今回は前回スパートの直前に入りかけたあの世界に入り込めるかどうか、スタミナを切らさずに駆け抜けられるかどうか、それだけ)
絶対に負けられないこの勝負。果たして勝つのは──
- 99メジロエスキーの人22/11/09(水) 07:09:32
今日はここまで。次はいよいよ有馬記念の発走です
- 100ラプ中22/11/09(水) 08:23:49
このイチャイチャ譚(語弊)もいよいよ終盤か…
いけーっ 最強の娘!
ついでにSSの書き方の話です
基本的に書いている作品を映像にしたらどうなるか…を思い浮かべながら書いてる感覚かな?
それと大まかな構成をイメージしとくのも大事かと
後は文章が思い浮かんだならそれが後半の展開のものとしても前もってメモしておくのもおすすめ。ゴール地点がある程度決まりますからね
最後に一番重要なのは書く気分でないときは書かないことだと思います - 101カラレスミラージュの人22/11/09(水) 08:55:05
奇跡と偶然が産んだメジロ2名の激突も最終決戦、果たしてどちらが夢の舞台を制するのか
そして夢を超えたその先に待っているのは
だいぶ個人的なアレコレですが
短編:ノリ10割(何故か重くなる)
長編:
①3年間の大まかな流れを考える(ジュニア級は割と躍進の時期、クラシック級前半は同期にズタボロにされる……みたいな)
②上で決めた期間ごとの流れに対し、出走レースと結果を考える(大まかな起承転結)
③一つ一つのレースを区切り(1話)にして、起承転結を考える(入り切らないエピソードがあったらサブ話に持っていく)
最近のエピソードだと「ライバル不在の神戸新聞杯について談義」(起)→「担当以外のウマ娘と語らうトレーナー」(承)→「敗北寸前、領域覚醒」(転)→「勝利、トレーナーとの語らい」(結)くらいはざっくり決めてから書いてます
④演出と心情描写を盛るペコする←嫉妬拗らせて骨折しようねとか とてもたのしい
ちなみに起承転結を二重入れ子にした結果、ミラ中の書く長編は各話もれなく情緒がジェットコースターします アホ!
あとはラプ中さんも仰っていますが、書く気分じゃない時に筆を持っても進まないので書きたくなるまでは練り練りする期間と捉えるのが楽だと思います
- 102二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 14:15:31
- 103アラシュパーパス22/11/09(水) 14:27:44
- 104アラシュパーパス22/11/09(水) 14:35:46
(ここだけの話。メジロブランシュの父はメジロパーマーで、ルーミマイドの父はトウカイテイオーって考えてますわ。フラワーレーンはまだ考えてないですわ)
- 105クアドラプルグロウ22/11/09(水) 17:00:37
パーマーの子は珍しい気がする…!
というわけで(というわけじゃない)
SSを投げさせていただきます!
↓こちらの続きですー!
クアドラプルグロウのウマ娘ストーリー - uma-musumeになりたい部 @ ウィキ【9/30更新】1話「夢を教えて」 その日は選抜レースの日だった。 「いっちに、さんし…」 「すぅー…はぁ…」 『みんなやっぱり緊張してるんだな…』 そんなことを考えつつ、一人一人ウマ娘を眺めていた。 「ゲートイン完...w.atwiki.jp読んでない方は読んでからだとわかりやすいかと思われます
- 106クアドラプルグロウ22/11/09(水) 17:01:43
- 107クアドラプルグロウ22/11/09(水) 17:01:59
シニア級2月後半「君の夢の切符」
「ど、どういうことかなトレーナー!?その、わたくし短距離なんて走ったことないよ!?それに___」
『まずはこれを見てくれ』
「え?これは…何?」
それは彼女の夢への切符。
「___”果たし状”」
彼女はそっとそれを開いた。
=====
クアドラプルグロウへ
高松宮で待つ。
共にサイコーのレースをしよう。
シーキングザパール・バンブーメモリー
=====
内容はただ簡潔に、それだけだった。
「…パールさんは、まだわかるけど…バンブー先輩って確か、そろそろ”ドリームトロフィーリーグ”に進むんじゃ…」
”ドリームトロフィーリーグ”。
それは”サマードリームトロフィー”と”ウィンタードリームトロフィー”の2つのレースと、その予選で構成されるレースである。
しかし、このリーグに進むと…”トゥインクル・シリーズ”には出走できなくなる。
『君と走るために、まだ残ることにしたそうだ』
「ぇ………」 - 108クアドラプルグロウ22/11/09(水) 17:02:16
シニア2月後半「アタシの夢の後輩」
「たのもーっ!!!」
「ハァイ!お邪魔するわよ!」
『うわぁっ!?』
…それは年が明ける前のことの話だった。
『果たし状…?』
「ええ。私がバンブーに提案したのだけれど…迷惑だったかしら?」
『いやいや、クアの状況的にそんなことは…高松宮記念!?』
「アタシも走るっス!だから、クアと是非!対決させて欲しいっス!」
『え?君はそろそろ…』
「…あんなクアを放っておくことなんて、できないっスから」
その2人の目は真剣にこちらを見つめている。
どうやら、本気で彼女を心配しているようだ。
『…わかった、彼女に提案してみる』
「ほんとっスかー!?」
『ああ、本当だとも。…君にクアが憧れる理由、少しわかった気がするよ』
「んー…?そうっスか?よくわからないけど嬉しいっス!」
「…ふふ…エクセレント、って感じね」
「パール先輩!?どういう意味っスか!?」 - 109クアドラプルグロウ22/11/09(水) 17:03:08
シニア級2月後半「君の夢の在処」
「………」
『まあ、間違いなく適正は合わない。君が走りたくないなら、走らなくても…』
「走るよ」
彼女ははっきりと言い切った。
「走るよ、わたくし。走る。先輩と、パールさんと、走る。そこに…あるかもしれないから。”わたくしの夢”が…」
『…そうか。出走の手続きをしておくよ』
「うん、ありがとうトレーナー」
(…わからないよ。先輩は何を考えてるのか)
彼女はそっと何かを見上げる。少し上を見上げて、まるでそこに誰かの視線があるかのように。
(でも、わたくし…先輩と走ってみたい。そこに何かが、ある気がするから) - 110クアドラプルグロウ22/11/09(水) 17:03:49
以上となりますっ!
クアドラプルグロウ 短距離適正 D - 111ラプ中22/11/09(水) 17:17:16
希望を掴むための敗北が近づいているって感じだ…
「貴方の夢」を超えた先の「私の夢」に期待してます! - 112メジロエスキーの人22/11/09(水) 17:31:14
負けたとて何かを掴んでくれ……
- 113ツキノミフネの背後霊22/11/09(水) 18:27:46
さ、最後に夢を掴んで笑えていたらハッピーエンドですから……()
- 114二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 19:44:35
- 115二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 21:41:53
- 116キタサンアイドルの人22/11/09(水) 21:54:04
- 117二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 22:01:03
- 118二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 22:02:51
男どもの方が胸デカいの芝生えますよ
- 119二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 22:04:32
ノリで承認しそうな秋川やよい会長ならともかく総理大臣までつくとかこの国終わりだよ
誰だ総理大臣に伝手持ってたやつは - 120カラレスミラージュの人22/11/09(水) 22:05:23
- 121二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 22:13:33
- 122クアドラプルグロウ22/11/09(水) 22:13:48
胸の話は全クアちゃんに喧嘩を売ることになります
- 123ラプ中22/11/09(水) 22:14:13
ダーク・ラプラスは執筆の速度をコントロールできない……
突然のSS投稿予告を発射! - 124メジロエスキーの人22/11/09(水) 22:14:30
ぜ、全……?
- 125二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 22:15:15
うちのパクパク勢が越冬する為に土の中に埋めといたスイーツがあるだろ?
それを食えば胸に回るよ多分 - 126ラプ中22/11/09(水) 22:17:08
正午前、練習用コース。
ターフの上を駆けるアドマイヤラプラスの勢いは、コーナーに入ってさらに増していく。やがて直線で最高峰となり、勢いを保ちながらゴール位置を通り抜けた。
同時にトレーナーが、ストップウォッチのボタンを押す。固定されたデジタル数字が、彼女の能力が戻りつつあることを証明している。
「上々!」
「わーい」
やや抑えめな喜びの表現とともに、ラプラスはトレーナーのもとに向かった。スポーツドリンクの入ったペットボトルが手渡される。
「問題ない、能力水準はほとんど戻ってる。流石はG1候補ウマ娘だな」
「候補は正直いらなかったんだけどなあ…いやシルコレ組にもそりゃあ味はありますけども」
ボトルを口から離しながらラプラスは言う。彼女の執念は決して強いわけではないが、それでも思うところの無い筈はなかった。特に皐月賞。
「で、これからもう一走…な雰囲気じゃないです?体調はまだまだ大丈夫ですけど」
「まあそうなんだろうが、念のためだ。体の仕上がりのおかげで丈夫になったと言っても、まだ怖さは残ってる。下手にやり過ぎると健康に悪いのは君だって良く知ってるだろう?」
「…人の黒歴史には触れないのが礼儀ですよ」
「黒歴史なんだ…まあとにかく今日は終わり。自主練するときもやりすぎは控える。後はアイシングも忘れずにな」
太陽がちょうど頭上に輝き、風は春の目覚めを告げつつあった。 - 127ラプ中22/11/09(水) 22:20:58
「予期せぬフリー時間…」
学園近くの公園のベンチで子供たちを見守りながら、一定まで飲み終わったはちみー(Mサイズ、濃さ硬さともに普通)のストローを口から離して呟く。
この土曜日は元々一日練習のつもりだったのだが、好タイムと配慮によって思わぬ予定変更が入った。公然と休むのは彼女の好みではあるが、そうは言っても急が過ぎれば面食らうものだ。
ともかく状況は良好であるのだから活用しよう…と思いつつ、彼女はまた一口すすった。
しばらく経ち、彼女があてもなく歩いていたのは、近隣のショッピングモールの2階。休日の午後と言うこともあってか、老若男女が賑わいを演出している。
ファンからサインを求められる…と言うことは残念ながらなく、彼女はあいも変わらず専門店街の喧騒を旅していた。数人がこちらをじっと見てきた気もするが、少なくとも声を掛けられることはなかった。煩わしさはないとはいえ、これはこれでよい気分でもない。
とりあえず書店でレース雑誌でも漁ろうか…と思い、エスカレーターに近づいたタイミング。
「おー、ねえキミキミ!」
聞き慣れていないが、しかし記憶に残っている声が、自分を呼んできた。方向に顔を合わせた瞬間に、声の主を発見する。
「あ…どもー」
「よっす!ブレちゃんのダチちゃん、友達のフレンドもフレンド!」
「海外帰りみたいな話し方になってる…」
秋華賞ウマ娘、フルールドゥオーロも、ちょうどここで休日を過ごしていたのである。 - 128ラプ中22/11/09(水) 22:24:51
「お待たせしました、『春のフレッシュフルーツパンケーキ ホイップ増量』です!」
「おー!映える映える!色とか映えるっしょ?」
「映えるね」
「いや、反応薄くない?濃縮還元何倍なのそれ?」
「何そのめんつゆみたいな表現法…」
そんなことを言いつつも、ラプラスは律義にカメラアプリのシャッターボタンを押した。
場の流れが、二人をフードコート店のパンケーキ専門店に連れてきた。
流れに乗った二人はおもむろにフォークを取り出し、フルーツ部分とクリームを巻き込みながら、パンケーキを切り取り、ほとんど同時に口に運んだ。
「んん、よきよき!このフルーツのバン!ってのとクリームのドドン!ってのにパンケーキ部分のふわあ…ってのが最高にベストマッチグー」
「表現法が少年誌にバブル期を混ぜたみたいになってる…でも確かにおいしいね、コレ。今度ブレイズに教えよっかな」
「あー、ブレちゃんなら数回食ってるよー?アタシらも込みで」
「……あの子交友広いねー」
謎の敗北感とともに、フォークが運ばれる。甘みと引き立ての酸味が口の中に広がり、セットで注文したコーヒーの味を要求した。まあ、彼女は誰からも好かれるタイプである。流石に妥協の圏内だ。妥協というのもアレだが。
淡々とパンケーキとフルーツを口に運びながら時間は過ぎ、両者の皿から商品が無くなったころ。
「ところでお主さあ」
「お主?」
何故か古語になりつつ、フルールは先ほどからの思い付きを伝えた。
「こう、シンプル過ぎね?服が。人それぞれだし悪いとは言わねーけども、それ込みでも」
「あー…まあ、興味なかったからなあ」
実用性を追求した白のシャツとジーンズを軽く見ながらラプラスは言った。
「C組のファッションリーダーのフルール先生がコーディネイトしてしんぜよう。アタシみたいな雰囲気でね!」
「…おー」
興味なさげな中にも多少は意欲の含まれた反応を返しながら、ラプラスは相手の服装を改めて見返す。ふと、再認識する。眼前の少女は、俗にいうところの「ギャル」らしさがあった。へー、悪くないじゃん…と思ったあたりで、状況の新たな認識が可能になった。 - 129ラプ中22/11/09(水) 22:27:54
「…ちょっと待った、その服みたいな感じって…割と過激じゃnあっちょっと待って」
「良いではないかー、良きに計らえー!」
「悪代官と殿が混ざってるー!?」
手を引かれながら、フルールの背中の肌色が見える。へそ出しのファッションだから当然のことであった。おそらく彼女の狙いは「この手」の服装の普及…流石に恥ずかしい。
危惧の通り、この後数時間、ラプラスは無事に流行と趣味の実験台として過ごすことになった。
「あー満喫したわー…そっちはどーよラプラス先生?」
「なんていうか…まあいろいろかな。次服買う時も参考にしてみるかな」
財布のキャパシティが原因で今回は見送ったものの、ラプラスはフルールのセンスの良さは感じていた。
「うんうん、よろしいよろしい。ファッションの可能性は無限大だかんね。つーか割と楽しかったっしょ?」
「まあ…結構?」
二人は駅から寮への帰り道を歩く。世界は夕焼けの色に変わり、やがて来る夜の訪れを待っている。実時間も体感時間もそこまで長いわけではなかったが、それでも奇妙なほど、二人は満足していた。
「ねえ、ちょい聞くけど」
「どしたの?」
歩きながら、フルールの側から会話が始まった。
「そりゃまあ、負けてうれしくなる人なんてこの世にはいないとは思うけどさあ」
「つまりつまり?静かな岩の上にも三年みたいに、どんな時でもあきらめずやるのが正解なん?」
「ことわざと俳句が混ざってる…まあ、それでいいんじゃないかなあ」
「…はぐらかされてない?」
「この手に関しては基本は単純で良いと思うよ。あ、後はこっちからも質問あるんだけど」
特に意味のない、答えの見えた物だが、質問をできる相手のいない質問を、彼女はした。
「G1で勝つって、やっぱ嬉しい?」
「そりゃもう、ガチですげーめっちゃくっちゃ!」
移動はやがて、二人を終着点に導く。ここで一度別れることになるのを、二人は察していた。
「んじゃ、互いに頑張ろーぜ奥方様」
「未婚…まいっか、そっちも元気でね」
そうやって二人は、互いの寮の方向に向かっていった。
休暇の意味は、その終わった直後には分からない。ただし、その後しばらくの様相が、その価値を定めるのである。 - 130ラプ中22/11/09(水) 22:29:45
今回は以上でーす
フルールドゥオーロのヒミツ①
実は、祖父が時代劇の俳優兼監督。
【広告】フルールちゃんの微妙に間違ったことわざとか台詞はいつでも募集中です - 131二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 23:14:17
- 132二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 23:28:00
- 133メジロエスキーの人22/11/10(木) 06:49:08
なんで既に変なTシャツ談義してるんだよとも思いつつ、SSの続き投下していきますね
- 134メジロエスキーの人22/11/10(木) 06:50:12
─────
『──さあ最後に大外16番アイメイクラフがゲートに収まり態勢整いました……スタートしました!』
横並び、いや2人ほど出遅れたか。私はいつものようにゲートを決めると、最初の3コーナーから4コーナーの辺りで中団やや後ろのポジションを確保することができた。そして肝心のエスキーはというと……
(あれ!? 今日はいつもよりちょっと後ろ!? 出遅れた訳でもなさそうだし……)
隊列が少し入れ替わりつつも最初のホームストレッチへと向かう。坂を上りゴール板を過ぎた辺りでエスキーが少し前へと動き、いつもの前から3、4人目のポジションにつけた。
大歓声のスタンド前を通過する。その中から私の名前を呼ぶ声が聞こえ、目線を観客席に少し逸らすと、私のグッズを持って声を張り上げるファンが大勢いた。そしてゴールの近くには……
(トレーナー……約束、守ってくれたんだ)
目線が少し合う。お互いに軽く頷くと私は前を、そしてトレーナーは前を向いてモニターを静かに見つめていた。
(応援……私はたくさんの声援を受けて今ここで走ってる……ファン投票で託された夢、ここに来て私に喉を枯らすほどの声で頑張れと叫ぶその姿が私の背中を力強く押す……そしてトレーナー。愛する人の姿はそれだけでも足を前に踏み出す力になる)
『──さあ先頭を行きますのは1番ジルカロイ、リードを2バ身ほどキープして最初の1000mを通過します……62秒2。平均かやや遅いかのペースでレースが進んでおります』
(重ねてきた練習、そしてこれまで積んできたレース経験、そしてファンのみんなの声、愛する人の存在……私の全部を、今ここで……!)
さあ行こう、夢の舞台を。ともに進もう、夢の向こう側へと。そして見ようよ、私と一緒に。夢の先に何があるか、夢を越えた先にどんな絶景が広がっているのか。ほら、私の手を取って。同じ歩幅で、同じ時を、2人呼吸を合わせて。
“貴方と夢見たその先へ Lv.1”
─────
『──向こう正面中間地点、ここで残り1000mを通過しますが……おっと!? 来た来た! 今日もメジロエスキモーがロングスパートを掛け、徐々に、徐々に前へと上がってまいります!』 - 135メジロエスキーの人22/11/10(木) 06:51:10
自分でもはっきりと分かる。ついに入ることができたのだと、エスキーたちが見ている世界に足を踏み入れることができたのだと。世界の速度がゆっくりと進む中、私1人が変わらないスピードで駆けていくようなそんな感覚。
(息も上がってない、脚も軽い、ここがスタート地点みたい……!)
まさに夢の中を無重力状態で駆けていっているような感覚に陥る。足取りは軽く、笑った顔で、私1人が走っているみたいで。
(いける……いける……!)
ただ迎えた残り800m。
──世界を制したその怪物がいよいよ牙を剥く。
─────
後ろから感じるプレッシャーに思わず振り返ってしまいそうになる。ジャパンカップの時より強烈な圧迫感、それは彼女が自分と同じく領域(ゾーン)に入ったことを意味していた。
(やっぱりあの時のわたしの言葉がヒントになっちゃいましたか……余計なことしちゃいました……いや違う、そうじゃない)
仮に彼女が今日領域(ゾーン)に入れなかった、すなわち全力を出しきれずに終わった場合、もしわたしが勝ったとしてもそれは真に彼女に勝利したことになるのだろうか? 全力を出した彼女を上回ってこそ真の勝利を掴んだことになるんじゃないだろうか?
(だからあれでよかったんです。しかも気づいたのはあくまでエスキモーちゃん自身。いくらヒントを出したとしてそれだけで答えにはならない。そこからエスキモーちゃんが頭で考えた結果、辿り着き手に入れたのが全てなんですから)
残り800mの標識がすぐそこまで迫ってきている。彼女の放つ重圧にこのまま呑まれてしまう訳にはいかない。
(わたしも全部ぶつけます。あなたにわたしの力を、全て)
これまで走ってきた道のり、そこで得た経験、力。そして「彼女」と歩んできたその先へわたしは行こう。
“貴方と歩んだその先へ Lv.6”
- 136メジロエスキーの人22/11/10(木) 06:52:06
─────
(きた……っ!!!)
残り800m。近づいたはずの背中がまるで矢のように猛烈な勢いで前へ飛んでいき、一瞬のうちに遠く離れてしまう。
(だけどここは我慢……最後の200mで捉えたらそれでいい!)
『──さあここでメジロエスキーが一気に前を捉えて先頭に立つ勢い! 後続からはメジロエスキモーが上がってきていますが、この加速力、このスピード、そしてこの距離。果たして届くのでしょうか!?』
残り600m。彼女の進撃はまだ続く。さっきの1ハロンと勢いを落とすことなく後続を突き放しにかかる。コーナーを曲がっているのに速度が全く落ちないのは持ち前のバランス感覚の良さか、それとも鍛え上げた体幹の強さか。
(私だって加速している。だって内側の子を1人、また1人交わして集団の前に立とうとしているんだから。ただ……ただ……)
それでもなお届かない背中が遠くに見えた。だけどレースはまだ終わっていない。最後の直線がまだ残っているんだから。
迎えた残り400m。彼女が一旦ペースを落とすその隙に10バ身以上あったその差を一気に詰めにかかる。一歩踏み出すごとに背中に近づいているのがはっきりと感じる。
──残り200m、その差5バ身。
─────
URAウマ娘列伝。URAが顕著な活躍や記憶に残る蹄跡を刻んだウマ娘を讃えるために作成するポスター群をいう。そこにはそのウマ娘と成績、さらにキャッチコピーが記された、ある意味ウマ娘にとっての1つの夢。時には関係者や作家たちが寄稿文も掲載されることもあって、見る者に感動と興奮を与えてくれる。オレはそんなポスターたちを眺めるのがとても好きだった。
今こうして彼女の走りを観客席から見ていると、ふととあるウマ娘のポスターを思い出す。彼女もまた長くいい脚を使って数々の大レースを制してきた偉大なウマ娘。そんな彼女のキャッチコピーは、今日のエスキモーの走りを表すのにふさわしい一文だった。その言葉は……
「“奇跡”は、ロングスパートから。」
ただ彼女にこの言葉を聞かれたらきっと怒られるだろう。奇跡なんかじゃないって、必然なんだって。
さあ残すは急坂に差し掛かった200mのみ。年末最大の決戦。勝者は、どちらか。
- 137メジロエスキーの人22/11/10(木) 06:53:22
─────
迎えた2度目の急坂。レースの最後の最後で立ち向かうそれはまさに壁のようだった。
(でもここで止まる訳にはいかない! 勝つのは私なんだからあああああああああ!!!!!)
4バ身、3バ身……一歩一歩その背中が大きくなるのがはっきりと分かる。だけど、このままだとあと一歩が、最後の一歩が届かない。
(読み誤った……!? どこで……!? 駄目、そんなこと考えてる暇ない! とにかく脚を動かさないと……!)
残り50m。あと数秒で迎えるゴール板。だけどまだ彼女の背中には届かなくて。俯きかけたその時、1人の大きな声が私の耳に届いた。それは勇気を奮い立たせる声、私の背中を押してくれる声、脚に力を注ぐ声。
「行っけーーーーー!!!!! エスキモーーーーー!!!!!」
- 138メジロエスキーの人22/11/10(木) 06:53:36
- 139メジロエスキーの人22/11/10(木) 06:54:43
─────
ほぼ2人同時に駆け抜けたゴール板。勝った実感はなく、さりとて負けた実感もない。レコードの文字が躍るモニターの右側、掲示板の着差を示す箇所には早くも「写真」の2文字が表示されていた。
2人して息も絶え絶えにターフへと仰向けになって倒れ込む。全力を使い果たした私たちの姿に観客席から盛大な拍手と喝采が送られる。
「はぁ……はぁ……お疲れさまです、エスキモーちゃん」
「はぁ…、はぁ……エスキーの方こそお疲れさま」
ターフに寝転がりながらも互いの健闘を称え合う私たち2人。息が整い立ち上がってからもゆっくり横に並んでコースを1周した。ただ1周ぐるりとコースを走ったあとでも結果は発表されず、掲示板の1着と2着の部分だけ数字が点灯していなかった。
「わたしはエスキモーちゃんが勝ったと思いますけどねっ!」
「いやいやいや! 最後差せたかどうか微妙だったし、エスキーが残してたかもだって!」
ターフの上で姉妹喧嘩が如き言い争いが行われる。ただそれは互いが互いを褒めるもので、コースにほど近い場所でそれを見ていた観客やトレーナーはかすかに漏れ伝わる2人の会話に笑みを零していたという。
ある意味しょうもない口喧嘩を何分も続けていると、観客席から「おおっ!?」といった声が一斉に上がる。着順掲示板には「確定」の2文字が、そしてその下の1着と2着を示す箇所に記されていた数字は──
─────
「「「──力の限り 先へー!」」」
レース後のウイニングライブ、すっかり慣れたこのステージ、堂々と大勢の観客の前で歌い上げるこのNEXT FRONTIER。春の天皇賞の時にもセンターに立って歌ったけど、今日のライブはあの時とは違い、何か込み上げてくるものがあった。
「お疲れさまです、エスキモーちゃん。センター、立派でしたよっ!」
レースのあと汗を拭いたにも関わらず、再び汗だくになっている2人。ステージ上で長い時間照明に照らされながら歌って踊っていたんだから無理もない。
「エスキーの方こそお疲れさま……それにしても私がセンターか……」
- 140メジロエスキーの人22/11/10(木) 06:55:32
その差わずか1センチ。判定に時間がかかったのも頷けるその着差。判定写真をどれだけ拡大にしても、見る者が変われば同着になっていたんじゃないかと思えるほどの差で私はエスキーに勝利した。たかが1センチ、されど1センチ。たったそれだけの差で私は6つ目のG1タイトルを獲得し、春秋グランプリを制覇した。逆に言えば、その1センチでエスキーは生涯初の黒星を喫したことになる。
会場から引き上げ、再度シャワーを浴びて汗を洗い流した2人。わずかな差ということもあってか悲壮感や優越感は互いに持ち合わせておらず、それぞれの控え室へ向かう間でも互いが互いを褒め合う明るい空気がそこには流れていた。
「ねえ、残り2ハロンの区間、いつもより速くなかった?」
「流石エスキモーちゃん、体内時計バッチリですね。そうです、このままだとエスキモーちゃんに交わされると思って少し早めに2度目のスパート掛けたんですよ」
やっぱりねと、私は自分の体内時計の正確さに深く感謝する。あの時気づかずにそのままのペースで突っ込んでいたら、トレーナーのエールがあっても最後捉えきれなかったと思うから。
「それにしても答え、見つけられたんですね」
「答え? あー、うん。本当に正解なのかは分かんないけどね」
領域(ゾーン)に入るために何が必要なのかを模索する日々。たまたまカジっちゃん先輩から得られたヒントをきっかけにして、エスキーの後押しで1つの解を得ることができた。もちろんそれが全員に当てはまる正解だとは思わないし、あくまで私だけの正解なんだとは思う。
「あー、エスキモーちゃんに負けちゃいましたし、そろそろ潮時ですかねー」
そんな話をしている中、彼女の口から引退宣言とも取れる言葉が発せられた。私は彼女の顔を二度見し、真意を問いただす。
「エスキー……それ、本気?」
「本気ですよ? エスキモーちゃんに負けたことが直接の原因じゃなくて……ちょっとわたしの口に耳近づけてもらっていいですか?」
秘密の話なんだろう、誰も周りにいないことを確認し、壁に寄りかかる。膝を少しだけ折り、耳の高さがちょうど彼女の口の高さにまで低くなったところで、口を私の耳に寄せ内緒の話を囁いた。
- 141メジロエスキーの人22/11/10(木) 06:56:28
「例のクスリの効果が来年の春までに切れるんです。もちろん飲み続ければ持続するでしょうけど、わたしはもうレースに未練はありませんから、わたしのトレーナー──実際は自分自身のことですけど──と入れ替わってトレーナーの研修に行ったことにして、元の姿に戻ろうと思うんです」
これ以上姉さまを放っておく訳にもいかないですし、と話すと私の耳元から口を離し、立ちつくす私を置いて1人で自分の控え室へと歩いていく。少しずつ離れていく背中がなぜか寂しそうに見えて、思わず大きな声で呼び止めた。
「エスキー!」
「どうしたんですか、エスキモーちゃん?」
私の呼びかけに足を止め、くるりと私の方に向き直すエスキー。振り向いた彼女の顔はやっぱり少し悲しそうな顔をしていた。
「前約束したよね、またみんなで温泉行こうって。有馬記念が終わったら4人でまた一緒にねって」
それは半年以上前のこと、私、トレーナー、エスキー、ママの4人で城崎温泉に行った帰りに交わした約束。その時はまた一緒に行けたらいいなぐらいの想いだったけど、今となってはそうじゃない。数ヶ月もすれば二度と会えなくなる人との旅。私のエゴかもしれない。彼女にとっては迷惑かもしれない。だけど私は希う、最後にあなたと旅がしたいと。笑いあった日々を、2人で過ごした思い出を1つでも多く作りたい。
「行こうよ、私と一緒に。いつか忘れてしまうかもしれないけど、それがずっとずーっと未来の話になるようにいっぱい、いっぱい思い出残そうよ」
だから、と彼女に向かって手を差し出す。この手を取ってと、そう願う私の方がもしかしたら悲しい顔をしていたのかもしれないけれど。
「……わがままですね、エスキモーちゃんって」
そう言いながらも彼女はまっすぐ歩いて私の手を掴む。強く、離さないように強く。
- 142メジロエスキーの人22/11/10(木) 06:57:33
「そうなの、私ってわがままなんだから。将来覚悟してよね」
「……先が思いやられますね」
そう言って互いに1秒、2秒と顔を見合わせ、同時に噴き出す。やっと笑顔が戻った彼女に私も笑顔で伝える。
「それじゃ、行こっか」
「はい、喜んで」
──手を繋いで歩いた先には素敵な未来が広がっている、そのときなぜかそんな気がした。
─────
「ただいまー……ふぃー、やっと帰ってきた……」
「お疲れ、エスキモー。取材とかいろいろ凄かったな」
外はもう真っ暗。ウイニングライブを済ませ、各メディアからの取材をこなし、チームみんなに祝福されて……気づいたらもう時計の針は夜9時を指そうとしている。
「ちょっと今日はご飯作れそうにないの……ごめんね」
「あんな激戦繰り広げたんだからゆっくりしてて。そのためにスーパーで惣菜買ってきたんだから」
既に眠気で頭が上手く回っていない。えーっと、お風呂入って、それからご飯食べ……
「すぅ……すぅ……」
「寝ちゃった、か。ソファで寝たら風邪ひくからベッドまで運ぶぞっと」
トレーナーにお姫様だっこで寝室まで運ばれたことに気づいたのは次の日の朝のことだった。
- 143メジロエスキーの人22/11/10(木) 06:58:22
─────
(あっ、またこの夢か)
目が覚めたと思ったらそれは夢の中で、私はまた白い部屋に閉じ込められていた。ただ今は隣に1人男の人がいる。その人の顔は見えないけれど、その声はとても優しく安心できる声だった。
「──これでよしっと」
時間の調整が終わり、裏のフタを閉めてひっくり返すとそこには本来の動きを取り戻した時計の針と振り子があった。
「アンティークで素敵……」
「だな」
そんな会話をしていると、何やらギーっと少し不快な音が鳴り、はっと顔を上げる。すると、さっきまではなかった木製の扉が目の前に出来上がっていた。
「なんだろう……どこかで見たことあるような」
左手で何かを掴んだまま、一体なんだろうと思い立ち上がる。興味本位にその扉に近づくと手が誰かに操られているかのように勝手にドアノブを掴み、ぐるりと右回りに捻る。その扉は鍵がかかっておらず、ガチャリと音が鳴ったあと、前へと力を籠めると何の抵抗もなく扉が開いた。
「真っ暗……? ううん、何か遠くに……」
扉の先にはこの部屋とは真逆の暗闇の世界が広がっていた。ただ遠く彼方に小さな光が瞬いているのがかすかに見える。
(行かなきゃ……あそこに行かなきゃ……でもどうして?)
分からない。でも頭の中から行けという声が聞こえる。走れと脳が指令を出す。私は誰かに操作されているかのように扉の中へと駆け出していった。
- 144メジロエスキーの人22/11/10(木) 06:58:38
- 145メジロエスキーの人22/11/10(木) 06:59:19
今日のところはここまで。ちなみにまだ終わりじゃないので安心してね。それではまた次回
- 146クアドラプルグロウ22/11/10(木) 12:32:24
不穏だぁ!不穏だよぉ!
そういえば冒頭の時点で不穏だったよぉ!
…楽しみにしてますね…はい… - 147ツキノミフネの背後霊22/11/10(木) 13:22:20
不穏だなぁ……ハッピーエンドだと嬉しいな
本当はSS投稿の直後に投稿するのは気が引けるのですが、これ以上ストック溜め続けるとアレなので投稿させて頂きます - 148ツキノミフネの背後霊22/11/10(木) 13:22:49
【予定調和①】
どこかで待ってる。言ってたね。いやどこかって濁してたけども! どこかって、学園の外含め!? 絶対無理じゃん……無理難題じゃん……かぐや姫かおのれは……ちくしょー……ツキノミフネ、学園のどこにもいない。それどころか外泊許可まで取ってやがる。用意周到! うーん……無理過ぎて笑えてくる。ぶっちゃけ燃えてきた! 意地でも見つけてやる! トレーナーの名にかけて!
商店街! いない! ショッピングモール! いない! この前会ったはちみー屋さん! いない! いない! いない! 美味い! いない! いない! いない! いない! いない! いない! 学園周辺一帯探したけど! どこにもいない! いや冷静になるとやっぱり無理難題だよねこれ! やられた! あのデコ芦毛絶対最初っからスカウトされる気ない! - 149ツキノミフネの背後霊22/11/10(木) 13:23:27
「どこにいるんだろ……」
あーあ、やっぱり学園内にいるのかな。
電車に乗って、揺られて、とにかく学園に帰ることにする。見つけられたらいいけど、見つけられなかったらヤケ酒だ。こういうときは日本酒か焼酎に限る。いやいや、弱気になるな、私。絶対にあの子を見つける。もう芦毛がどうとか関係ない! 担当するならあの子がいい! 意地と勘だけしか行動の根拠ないけど! ……とかなんとか考え事してたらさぁ……やっちまったよ……物の見事にさぁ……電車乗り過ごした!
「あぁ……」
思わず、天を仰ぐ。仰ぐしかないともいう。
やべぇよやべぇよ……もう夕方だよ……どうするのこれ? 今から学園に戻れば……って、そうじゃん外泊許可取ってるじゃん! 学園に戻ってもいないよツキノミフネ! うわっ、やらかしが渋滞してる! もはや練り歩いてるよやらかしが! どうしよう! どうしよう! でも! 諦めきれないよ! ヤバいけど! でも! だから! 探せ! ギリギリまで! ツキノミフネを!
ブティック! いない! 花屋! いない! コンビニ! いない! 港! いない! いない! いない! いない! いない! クソッ! どこにいるのッ! ツキノミフネ! - 150ツキノミフネの背後霊22/11/10(木) 13:23:56
「どこにいるんだよもぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
海に向かって叫ぶ。どうせ、誰もいやしないんだからいいでしょ。吐き出さないとやってられない。初恋だったのに。トレーナーとして。あの子を担当することを夢見て心を入れ替えてがんばってきた。でも、私はチャンスを与えられたようで、周到に撒かれただけだった。やっぱり、ダメなヤツはダメだったってことかな。心が張り裂けそう。見つかると思わなかったよ。そう、見つかるなんて思ってなかった。でも、見つけてやるんだって気持ちだけはあったんだ。追いかけてきてくれて嬉しいな。はじめて捕まっちゃった。うん。はじめて心を捕まえられたんだ、あの子に。
…………ん?
「下を見て」
下。落差。あるのは砂浜。裸足で腰掛け、傍には積み重なった本の山。私を見上げる芦毛のウマ娘──ツキノミフネがいた。 - 151ツキノミフネの背後霊22/11/10(木) 13:24:49
「合格。君は〝天命〟を覆した。すごいね」
夜天に輝く月。照らし出される薄い微笑み。言っていることはさっぱりわからないけれど、制服に包まれた白磁の肌が寒気を覚えるほど美しかった。
ウマ娘という種族の性質に同性として嫉妬を覚えなくもない。でも結局、その美しさへの感嘆、感動の方が強い。もっともっと輝かせたいなんて身の程知らずにも思ってしまう。こういうところはトレーナーなのかな、私も。なんて、自分を誇らしく思ったり。全くの偶然とはいえ、ツキノミフネを見つけることができて浮かれているのかもしれない。
「じゃあ、次は君が試験官かな」
ツキノミフネが立ち上がる。緩慢とも言える動作。月に手を伸ばすかの如く身体を解し、玲瓏な声で私に告げた。
「ああ……走り……」
すっかり忘れていた。そうだ、私はまだツキノミフネの走りを見ていない。
私がよっぽど間抜けヅラを晒していたのか、心なしか、ツキノミフネの薄い笑みが深まった気がした。
「忘れてたんだね。面白いトレーナー。かわいいワンちゃんみたい」
「……じゃあ、はじめよっか」
「私だけをみていてね、ワンちゃん」 - 152ツキノミフネの背後霊22/11/10(木) 13:25:27
【予定調和②】
月輪は全てを平等に照らす。そんな摂理を無視するかの如く。まるで、たったひとりに月光が降り注ぐ錯覚。いいや、きっと錯覚ではない。この夜の主役は、間違いなく〝走らない〟はずの芦毛。
海は唄い奏でる。風は息を潜める。砂浜の舞台が幕を開けた。
ざっ、とあまりにも軽い音。だが加速は決して軽くはない。かつて所属していたチームにも、これほどの加速をする者はいなかった。恐ろしい瞬発力。そして、尋常ではなく大きな跳び。砂浜でやる走りじゃない。速度を考えると、非凡な体幹の強さ、バランス感覚も必要になってくる。兼ね備えているのか、この子は。
誤った認識が燃え落ちて、まるで脳が焦げ付くような興奮が私を支配する。この芦毛は走る。そう、静かに確信した。
「どうかな。ワンちゃんのお眼鏡にかなった?」
焦げついた脳に染み渡る玲瓏な声。はじめて会ったときの笑顔は余所行きの笑顔だったのか。薄い微笑みで、ツキノミフネは私を見詰めてくる。
あれだけの走りをしたのに息の乱れひとつない。遊び歩いているって評判はなんだったの? 努力なしには天地がひっくり返っても身につかないって確信できるスタミナ。間違いない。この子は怪物だ。 - 153ツキノミフネの背後霊22/11/10(木) 13:26:31
「も、もちろん……です!」
食い気味に答えてしまう。がっつきすぎやしないだろうか。引かれたらどうしよう。
けれど、ツキノミフネは微笑む。心を見透かすように。私の不安を溶かすように。
「そう、よかった。じゃあ、改めてスカウトしてくれる?」
嬉しい! 嬉しい! 嬉しい!
この言葉がひたすらに嬉しくて、嬉しいってことしか考えられない。私が満足な指導ができるか、だとかそういうどうでもいい悩みは全部どこかに飛んでいってしまった。
「はい!」
呼吸を整える。平静を装う。トレーナーらしくあろうとするけど、やっぱり、喜びが溢れて表情筋が緩んでしまっているかもしれない。
「貴方を担当させて頂けませんか?」
自分でも驚くくらいに震えた声だった。
「いいよ。よろしくね、ワンちゃん」
一瞬だった。ツキノミフネは私を優しく抱きしめて、耳元で囁く。蕩けてしまいそうなくらい、冴えて美しい声。天使──いや、悪魔を思わせるような声だった。普通、他人に急に抱きしめられてしまったら拒否してしまうはず。だというのに、不思議なほど私の身体は強張らない。頭を撫でる手が、とても心地いい。
この日、私はツキノミフネの飼い犬/トレーナーになった。 - 154ツキノミフネの背後霊22/11/10(木) 13:26:53
🌑🌒🌓🌔🌕🌖🌗🌖🌘🌑
自分を必要以上に偉大に見せるのは骨が折れる。
湯船にゆったり浸かりながら、芦毛のウマ娘は深い溜息を吐く。
ようやくここまで来た。入学からずっと。ずっとだ。求める先へ辿り着くべく、舵取りに失敗は許されなかった。本格化の時期を調整し、デビューの時期を引き延ばし、己の走りを隠し通してきた。やりたくもない遊びに毎日繰り出し、裏でこそこそ非効率な努力を積み重ねてきた。縋るように己の才覚のみを信じ、必死に生きてきた。もう、そんな毎日ともおさらば。落ちこぼれ不良ウマ娘のロールからようやく解放される。
もし、この計画が頓挫するようであれば、このまま一生、どこにでもいる負け犬として過ごす覚悟でいた。走らない芦毛と蔑まれ、かわいそうだと憐れまれ、みっともないと後ろ指を指され、子供のウマ娘にああはなりたくないと詰られる、ありきたりなウマ娘として生きる覚悟を決めていた。でも、結果として賭けに勝った! 求めていた人材がついに現れた! 呼吸するかの如く〝天命〟を覆していくような人間! 天性の大バカ! 手に入れた! 最高の大バカ/トレーナー を!
「ふふっ」
こんなに嬉しいのはいつぶりだろう。
ああ、本当に嬉しくて、嬉しくて。
狂ってしまいそう。
「君のせいだよ、ワンちゃん」
見つけてくれて本当にありがとう。
これで私は──ようやく、息ができる。
はじめよう。忌々しい〝天命〟への叛逆を。 - 155ツキノミフネの背後霊22/11/10(木) 13:27:34
最後らへんだけ読んでくださったら……
色々恥ずかしい……恥ずかしい…… - 156ラプ中22/11/10(木) 16:19:44
本性表したね
しかし私は実態以上に自分を別の姿に見せようとする様は好きなので大変よろしいと思います
「彼女」への反逆劇を皆楽しみにしているぞ! - 157メジロエスキーの人22/11/10(木) 18:10:00
人前でワンちゃん呼びしたら正気を疑われると思うけど、その辺りは大丈夫かな()
- 158レッカの中身22/11/10(木) 19:53:11
トレーナー(ワンちゃん)可愛いね
(未来の)ご主人?探してそこかしこ走り回ってる感じが「犬」ってより「ワンちゃん」な感じ… - 159二次元好きの匿名さん22/11/10(木) 21:55:40
おあー…アルピニスタ引退ぃ…。
皆もトレーニング中の怪我気をつけような…。
11+ サッカー少年・少女が怪我に泣かない為のプログラムFIFA Medical and Research Centre (FIFA医学評価研究センター)通称F-MARCにより作成された、14歳以上の男女のサッカープレイヤーの怪我を予防する為のプログラムです。otreechiro.com - 160ツキノミフネの背後霊22/11/11(金) 00:07:58
- 161メジロエスキーの人22/11/11(金) 06:31:35
今日のSS更新は……諸事情によりありません。明日をお楽しみに
- 162二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 09:16:36
むしろなんであの質と量を連日投稿できてるんですかね()
どんだけ書き溜めてるんだ… - 163メジロエスキーの人22/11/11(金) 09:24:41
もう結末まで書き終わってるからあとは投稿するだけなんだよなあ
- 164二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 18:30:58
大学の講義で腸内細菌について色々やったので紹介(雑)
- 165二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 19:06:31
なぜ…?
- 166二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 19:50:22
趣味で栄養学学び直すのも楽しいものです
だが時間栄養学、てめーはだめだ - 167二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 20:15:40
地獄のヒーロー魔法少女ボバーは
「助けて」と救助を求めた悪魔の所に必ず現れて
加害者も被害者も皆殺しにする - 168二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 20:20:57
確かにチェンソーぶん回してるけども
- 169二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 20:25:26
ボバ・フェットチェンソーが要求するのは金銭くらいだろいい加減にしろ!
- 170二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 22:35:11
チェーンソーとショットガンで武装してる魔法少女ボバラカをニチアサ枠で放送する計画はあまりに(スプラッター的な)刺激が強すぎるため棄却されました。
- 171メジロエスキーの人22/11/11(金) 22:52:03
当たり前すぎる定期
- 172二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 22:55:17
待てよ なまじ顔はいいから相手の血肉諸共性癖も木端微塵にされるんだぜ
- 173メジロエスキーの人22/11/11(金) 23:01:29
・ノリが男子学生
・ウマ娘なので当然容姿端麗かつアメリカ帰りの恵体
・露出もそこそこ。水着風衣装も着るよ
うーんこの男児の性癖破壊兵器 - 174二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 23:02:39
でも金は取られる
多分悪徳レベルで - 175カンパナーレボバー22/11/11(金) 23:08:03
すごい天才的な閃きしちゃったんだけど
街守る報酬サブスク化すれば安定して金巻き上げられんじゃね - 176クアドラプルグロウ22/11/11(金) 23:13:51
その発想はなさすぎて今雷を食らったような衝撃を受けています
- 177二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 23:16:11
- 178ツキノミフネの背後霊22/11/11(金) 23:16:39
天才はいる、くやしいが
- 179二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 23:17:22
アドビに匹敵するレベルの悪!
- 180クアドラプルグロウ22/11/11(金) 23:19:26
ものすごく…すごくすごい発想を感じる…!
これが…伝説のボバニキ…! - 181二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 23:19:57
いやもうほんとサブスクやめてくれ
毎月毎月微妙に徴収されるの真綿で首を締められるようで嫌なんだ - 182レッカの中身22/11/11(金) 23:24:11
法外な治安維持費をリボ払いさせないだけまだ良心的
- 183カンパナーレボバー22/11/11(金) 23:25:42
- 184二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 23:25:42
家賃
食事代
電気代
ガス代
ボバ代 - 185二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 23:27:47
- 186二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 23:28:56
そっちはボバーの相方のほうが猟銃持ってきてくれるから……。
- 187ツキノミフネの背後霊22/11/11(金) 23:33:09
はじまりましたね、カオス名物チキンレース
- 188クアドラプルグロウ22/11/11(金) 23:33:50
さあさあ始まりましたチキンレース!
今回も実況はわたくしがお送りするかな! - 189クアドラプルグロウ22/11/11(金) 23:34:11
ちなみにわたくしは回線持ってないよ!悲しみかな!
- 190二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 23:35:40
- 191二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 23:36:15
了解!!リボルビングブースト!!!
ボバーとかバラカがCM出るとしたらどんなCMに出るのだろうか - 192二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 23:36:19
えっ(更新しないで文字入力してた代償)
- 193二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 23:39:14
- 194クアドラプルグロウ22/11/11(金) 23:39:40
梅タイムー!かなー!
- 195埋めますわ〜22/11/11(金) 23:40:08
ウメタイムの人
- 196クアドラプルグロウ22/11/11(金) 23:40:44
埋め埋めたてたて
- 197二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 23:41:42
200なら部室にあのウマ娘が……!?
- 198ツキノミフネの背後霊22/11/11(金) 23:43:06
梅
- 199クアドラプルグロウ22/11/11(金) 23:43:07
200まであとちょっと!
200だったらなんか無茶振りこたえる - 200二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 23:43:11
200ならたまにはなんか女子高生らしい事をしろ