需要あるか分かんないしまず書けるかも分からないけど

トレセン学園の一室、少しばかり広めの場所になっていた。普通の扉で仕切られているが、一種の遊び場や憩いの場みたいな場所でもあった。本棚にはいくつかの雑誌や絵本、参考書なんかがあり、ときどきウマ娘が勉強しにきたりする時もある。隣には防音仕様の個室があり、他人に聞かれなくないことなんかは全部あちらで聞く仕様になっている。
しかし悲しいかな、学園自体が広すぎてここにたどり着きにくいこととカウンセラー室という名前のせいでウマ娘はほとんど来ない。コーヒーをすすりながら人を待っていると、珍しい来訪者がいた。
「やぁ、カウンセラーくん」
「シンボリルドルフか、今日は何を？」
ウマ娘、シンボリルドルフ。トレセン学園生徒会の会長であり、アスリートとしては"皇帝"という仰々しい二つ名を持つウマ娘。
ウマ娘を知ってる者で知らぬものは居ないだろうほどの知名度を持っており、そしてこのカウンセラー室、最初の利用者だ。
なんでも『自分が最初に行けば他の者たちも気軽に来れるだろう』と。その理論は正しく、何人かのウマ娘――シンボリルドルフの追っかけっぽかった――がここに来た。それでもここは閑散としていたのだが。
「今日はどのような悩みで？」
「あぁ、軽い悩みだ。ここでいい」
「分かった」
どんな軽い悩みでも吐き出した方がいい。私がこの部屋に貼ってある言葉でもある。どんな軽いストレスでも溜め込みすぎると枷になり、それが爆弾に繋がりそして、簡単に折れてしまうのだ。

「最近、ここを利用している者はいるか？」
「正直……あまりいません」
「そうか……すまない……私の力不足だ……こちらでプリントや名刺なども発布しているのだが……」
「気負わなくても大丈夫ですよ。日本……特にここでは精神病というのは受け入れられにくいのが事実なんですから。」
「しかし……それでは……」
「焦りすぎですよ、シンボリルドルフさん。一歩ずつ、一歩ずつ……それが意識の変革に繋がりますから……」
「…………走れば躓く、か。確かにその通りだな……」
彼女は少しだけ楽になった表情をする。ほんの少し緩んだ顔を見て、私はやっぱりこの仕事をして良かったと思う。