|焚き火カフェss|黒くて深いエスプレッソ

  • 1二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 01:34:44

    それは、よく晴れた夜のこと。

    「……トレーナーさん。…エスプレッソを淹れませんか…。」
    その日カフェはトレーナー室に現れ、そう提案してきた。時刻は18時過ぎ。カフェは今日、トレーニングを休みにしている。そのため、トレーナー室に現れたのには少し驚いた。
    ─急だね。
    「…はい。エスプレッソに向いた、いい豆を手に入れましたので、いただきたくて……。」
    ─そうなんだ。カフェが言うなら相当いい豆なんだね。でも、どうしてここに?
    「……トレーナーさんの机の上のそれ、マキネッタですよね?ずっと気になっていたんです。」
    ─ああ、そうだよ。確かにこれでエスプレッソは淹れられる。…でも、マキネッタくらいカフェだって…。
    と、そこまで言ってからカフェにすごく見つめられいるのに気づいた。多分、こういうのを無言の圧力と言うのだろう。…ちょっと怖い。しばらく見つめられた後、カフェは机の上の資料とエナドリの空き缶に目を落として、口を開いた。
    「……ここ最近、……働きすぎではありませんか?………最後に、一緒に、コーヒーを飲んだのは、……先月です……。」
    (………つまりは、コーヒーを一緒に飲みたいということだろうか?カフェがそんなことを言うなんて……!)
    ─…うん!わかった。久しぶりに飲もうか。
    「…!ええ…!では、早速。」
    ソワソワしだしたカフェ。
    揺れている尻尾が可愛い。
    (ただ、行くのは少し待ってもらいたいな。今持ってるこの資料に、とりあえず目を通したい。)
    そう思ったので伝えようとしたが、
    ドンッ!、と背中に強い衝撃。イ ケ 、と言われたような気がする。
    (…仕方ない。コーヒー飲んでからにしよう。)

  • 2二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 01:35:38

    二人で、諸々の道具をもって校舎裏まで移動し、準備を始める。
    ─今日はエスプレッソだから、マキネッタを使うよ。
    「トレーナーさんのはビアレッティ社のモカエキスプレスですね。」
    ─そう。歴史あるコーヒーメーカーで、日本だと一番有名なんじゃないかな。
    「よく見かけますよね。」
    ─これはアルミ製だけど、持ち手のところは樹脂だから、焚き火はいつもより弱めの火にします。
    「持ち手がとけたら大変です。」

  • 3二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 01:36:13

    ─そうだ。焚き火をするのに、薪をちょっと加工するんだけど、今日はカフェがやってみる?
    「……薪の先端を、ナイフで細かいささくれを作るんですよね。」
    ─そう。いつも見てるもんね。ナイフを使ったことは?
    「…あります。……登山をするので。」
    ─そうだったね。

    「……意外と、力加減が難しいですね…。こう、ですか?」
    ─うーん。ちょっと力が入り過ぎかな。それじゃあ薪からささくれが取れちゃうね。……ちょっといいかな。
    そう言ってカフェの手を取る。
    (……手、ちっちゃいな。)
    「え、?あっ…。」
    ─力抜いて。…木の繊維に沿って撫でるように刃を入れるんだ…。こんな感じ。
    「……あっ……なるほど。」
    ─わかった?
    「…はい。………こう、でしょうか?」
    ─うん、いいね。ちょっと切れ込みが深いけど、初めてでこれだけできたら上出来だよ。
    「…ありがとうございます。」

  • 4二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 01:36:53

    ─よし、火が着いてきた。
    「…よかったです。」
    と、少し微笑んでるカフェ。
    (しかし、うまく着いてよかったけど、なんかいつもと比べて風が無いな?まあ、おかげで小さな火が消えずに済んだけど…。)

  • 5二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 01:38:01

    ─じゃあ、火にかけよう。
    「いよいよですね。楽しみです。」
    ─そうだね。粉もミルで挽きたてだし。いやぁ、カフェがミルを持っててよかった。俺、トルココーヒー用のしか持ってなくて。
    「むしろ、トルココーヒー用を持ってることの方が珍しいと思いますが…。」

  • 6二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 01:38:47

    ─ついでに晩ごはんに食パンを焼こう。カフェも食べる?
    「いえ、今日は大丈夫です。…それはそれとして、トレーナーさん、晩ごはんはちゃんと食べてください。」
    ─でも、食パンって結構お腹膨れるよね。…わかった。わかったからそんなに睨まないで…。

    「火がちょっと強くなってきましたね。」
    ─そうだね。…うーん。マキネッタはずらせばいいけど、食パンはどうしよう。このままだと火がつきそう。………そうだ!
    「…え……。」
    ─…まあ、これはこれで光が綺麗。
    「…いや、そんな…マキネッタを支えにするなんて…。…………ふ、ふふっ……んん。」
    ─……笑った。
    「いや……だってこれは、卑怯です…。」

  • 7二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 01:40:07

    ─ん、あっ、音が変わってきたね。
    「はい、ぶくぶくいってます。」
    ─よし、もう少ししたら音が変わって、
    「…湯気が出てくるんですよね。」
    ─…やっぱりマキネッタ持ってるんだね。俺のところに持ってこなくても飲めたろうに。
    「…一人で飲めと?」
    ─え?…いや。
    「……私は、この時間が好きです。」
    ─………俺もだ。

  • 8二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 01:40:34

    ─はい。…どうぞ。
    「…ありがとうございます。」
    ─いい香りだね。とても深い…。
    「はい。この香りは素晴らしいですね。」
    ─…美味しい。
    「……滑らかで深い苦味。その中にある、油分を感じる独特のコク。濃いコーヒーの味…。これぞまさしくエスプレッソですね…。美味しい…。」

  • 9二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 01:41:15

    ─食パンもうまく焼けた!
    「…………あれでちゃんと焼けたのが不思議です…。」

  • 10二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 01:41:33

    暖かさが伝わってくる…
    夜のいいひと時だなぁ…

  • 11二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 01:41:57

    「すっかり、寒くなってきましたね。」
    ─そうだね。そろそろ昼間に焚き火をしても、汗をかかなくなってくる時期だ。
    「…季節の移り変わりを焚き火で認識してるんですか?」
    ─そうだね。
    「…そろそろ、菊花賞ですね。」
    ─…そうだね。……だから忙しい。
    「……今の私では、不安ですか…?」
    ─そんなことないよ。…でも、君の初めてのG1だ。……気づいたら、俺に出来ることを探してる。
    「……充分ですよ。」
    ─……そう?

    「…勝ちますね。」
    ─……うん。信じてる。

    月の明るい夜だった。

  • 12二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 01:42:38

    うっ、好き………

  • 13二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 01:45:08

    エスプレッソssでした
    これでカフェが弾けた後の改訂版ssは以上です
    ついでにネタもつきました
    焚き火コーヒーという一つのシチュだけで繋げるのも中々難しく…
    まあ、できればアフォガードでssを書こうと思います

  • 14二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 01:48:31

    リアルな映像あるとコーヒー素人でも雰囲気伝わっていいなあ

  • 15二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 01:48:57

    毎度のことながら挿入される写真たちが素敵な味わいを感じさせてくれる‥

  • 16二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 01:49:22
  • 17二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 01:49:45

    そろそろリアルも寒くなってきてるから独り身には寒い…

  • 18二次元好きの匿名さん21/10/27(水) 02:06:27

    >>10

    >>12

    >>14

    >>15

    >>17

    感想ありがとうございます〜

    皆さん、これからの季節は焚き火ですよ!

    焚き火すればカフェを幻視できます!

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