- 1◆kvQQiMAh9w22/11/18(金) 22:55:43
センゴクおじいちゃんと孫扱いされて可愛がられるローくんの穏やかな会話……と思ったらローくんが大事件を起こしてしまったスレ。会話文のみでサクっと読めるので、前スレから読むことをオススメします。
【SS】センゴク「お・か・き~!!」ロー「……あられ」|あにまん掲示板センゴク「やはりおまえが出たか。久しぶりだな。ロシナンテの電伝虫がついに見つからなかったから、もしかしたらと思ってかけてみたのだが……」ロー「……あの日、たまたまおれが持っていた。あの島から持ち出せた…bbs.animanch.com - 2二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 22:56:44
立て乙です
前スレ中盤まではほのぼのSSスレだと思ってました… - 3二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 22:58:57
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- 4◆kvQQiMAh9w22/11/18(金) 22:59:46
【Attention!!】
・時系列のイメージは本編終了数年後くらい、センゴクとロー、スモーカーやドレークなどなどが会話しながら進行する、会話のみのストーリーもののSSです。
・天竜人や政府、海軍、海賊たちの現状について、少しずついろんな設定(考察を挟んだ妄想)が出てきます。
・固有名詞は架空国名メーカー(https://namaemaker.net/archives/country-name.html)を使用しています。
・同じような設定の小説を他所でも連載しています。そっと見逃してください。
- 5◆kvQQiMAh9w22/11/18(金) 23:01:12
【あらすじ 1/3】
センゴク「お・か・き~!!」
ロー「……あられ」
センゴク「やはりおまえか。ロシナンテの電伝虫が見つからなかったから、もしかしたらと思ってかけてみたのだが……」
ロー「……あの島から持ち出せた数少ないもののひとつだ」
***
ロー「引退したら……どこへ行く?」
センゴク「北の海へ行き、ミニオン島へ墓を建ててやろうと思っている」
***
ロー「白猟屋もついに大将か。出世したな」
センゴク「力が支配する時代はもう終わりだ。その象徴に、聡く強い男は相応しい」
***
ロー「眠れない。あのひとを喪ってからずっと」
ロー「聞き慣れたソナーの音でも、おれにはうるさすぎるんだ」 - 6◆kvQQiMAh9w22/11/18(金) 23:01:40
【あらすじ 2/3】
ロー「……自慢話のタネにもなれねェ孫で悪かったな」
センゴク「……!!おまえ、いま何と──」
ロー「失言だ、忘れろ!」
***
スモーカー「フレバンスの件は胸糞悪いが、てめェ個人に情けはかけねェ。海賊どもは片っ端から捕まえて、一人残らず監獄に送ってやる」
スモーカー「だが、それでもおまえが“正義”を信じてくれるのならば……待っていろ。今にきっと、胸がすく思いをさせてやる」
***
ロー「……ドレークお兄さま」
ドレーク「ぐはァッ?!」
***
センゴク「聞いたぞ! おまえさん、ウチの兵たちを助けたそうじゃないか!」
ロー「成り行きだ。たまたま立ち寄った島で白猟屋の部下の女海兵が怪我してんのを見かけたから、恩を売ろうと思ってな。ひとつ頼みがあるんだが……」 - 7◆kvQQiMAh9w22/11/18(金) 23:02:08
【あらすじ 3/3】
センゴク「身体の調子はどうだ? エストブルク軍立病院の居心地は?」
ロー「悪くねェ」
センゴク「しかし、おまえさんの希望が『重体患者が回復するまで診ること』と『海軍との一時休戦』とはな。無欲であることは美徳ではないぞ」
***
センゴク「おお、今日は機嫌が良いようだな?」
ロー「機嫌? あァ良い。とても良いよ。良すぎて酒まで呑んじまった。とびっきりのイイコトがあった! 故郷のひとに会えたんだ!」
センゴク「……おまえさん、大丈夫か?」
ロー「今までありがとう──さようなら」
***
センゴク「貴様、何をしてくれた!! 軍病院への無差別攻撃は誰であろうと死罪だ!!」
ロー「おれは海賊、奪いたくて奪った!あんたと何ヶ月も話してたのも、今日この日、海軍の病院に忍び込むためだ!」
ガチャ...
プルプルプル...プルプルプル...
プルプルプル...プルプルプル......... - 8◆kvQQiMAh9w22/11/18(金) 23:03:08
【他所連載版ヒント】
・500user入りタグ付き長編小説
・腐向けタグあり/恋愛要素なし/最終話(未投稿)以外年齢制限なし
・キーワードは「嵐」と「珀鉛病」
・ハートの海賊団がメインで動いています
・表紙は白黒
設定は同一ですが完全な別世界で、欠片も掠っていません
人を選ぶ作品ではございますが、合う方の暇つぶしになれましたら幸いです - 9◆kvQQiMAh9w22/11/18(金) 23:06:49
後半戦ですが、シナリオ上に出す人の余裕がちょっとあります。
「この人出して!」がありましたら是非書き込みをおねがいします。
※出せるかどうかはシナリオの都合にもよります。ご理解いただきたくお願い申し上げます。 - 10二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 23:13:41
たて乙です!
コビーはどうなってるのか気になる…ローとも縁があるしルフィやドレークにも繋がりやすいから見てみたい - 11◆kvQQiMAh9w22/11/18(金) 23:14:34
前回スレが不穏な感じで終わっていますが、曇らせはありません
無いと思います。たぶん。曇らせではないんじゃないかな。
明日の夜から再開しようかなと思います。登場キャラリクエストなど、何卒よろしくお願い申し上げます。
今回もごゆるりとお楽しみくださいませ。 - 12二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 04:30:54
たて乙です
- 13二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 08:07:09
保守
- 14二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 08:19:40
スレ主の書く登場人物たちの距離感めっっちゃ好きなので続き読めるの嬉しい
- 15二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 15:14:43
追いついたので保守します
ドキドキしてる… - 16二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 15:26:57
不穏な空気しかない
助けて… - 17二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 21:55:33
話の展開がどうなるか読めなくてワクワクする
- 18◆2LEFd5iAoc22/11/19(土) 22:11:40
シャチ「──あーあー、こちら機械室シャチ。医務室のペンギンに応答願う。キャプテンの容態は?」
ペンギン「こちらペンギン、容態は最悪だ。さすがはローさん、怪我のほうはちょっと転んだ程度だが、ヒドい泥酔状態でさ。こんな酔っ払い久々に見たよ。こないだ女のコにフられたときのシャチよりぐでんぐでんなんじゃないか?」
シャチ「みんなソレ言うけどあのときのおれマジで何したの?! 全然記憶にないんだけど?!……いや、それはいいから。そんなに酔ってんのかロー。酒は飲めないって自分でもわかってんのに」
ペンギン「普段はわかってるんだけどなァ。飲み方も普通じゃなかったろ、吐きながら飲んでたぞ」
シャチ「……ま、何かあったんだろうな」
ペンギン「だろうな。ローさん最近海軍の大目付と電話してるだろ? そいつに何か変なこと言われたとか?」
シャチ「いやァ? いっつもベポが聞き耳立ててるけど、下らねェ話ばっかりらしいぜ。白猟も電話してくるが、こっちもケンカ腰に見せかけた仕事の愚痴が大半だ。変な所なんてひとつも無ェ」
ペンギン「うーん……じゃあ何だ? ローさんが飲めない酒飲んで、聖域みたいに思ってる病院にまで乗り込んで、大暴れするようなこと?」 - 19◆kvQQiMAh9w22/11/19(土) 22:12:40
シャチ「……わッかんねェなあ。『やっと手に入れられた』とかなんとか言ってたけど、返って来たとき手ぶらだったし……まあいいや。それで? 処置は?」
ペンギン「急性アル中だろうから、とりあえず点滴して保温中。毛布被せて湯たんぽも抱っこさせてるけど、顔真っ青で『痛い、痛い』ってガタガタ震えてる。今はぐっすりだけどな」
シャチ「そりゃ重症だ。戸棚の酒ぜんぶ隠すか。クリオネとイッカクは反発するだろうけどさ。ハハハ」
ペンギン「……いや、待てよ? ローさん、帰って来たとき何て言ってた?」
シャチ「え? ああ、『やっと手に入れられた』『やっと取り戻した』みたいな……それがどうした?」
ペンギン「『手に入れられた』ってことは、何か持ってないとおかしいよな?」
シャチ「うん、まあな。見たトコ手ぶらだったけど、宝石か何かコートのポケットにでも入ってたんじゃねェのか?」
ペンギン「いや、何も。洗濯担当のウニが細かくチェックしたから確実だ。紙切れひとつすら無かった」
シャチ「……じゃあアレだな、酔っ払いの妄想的な……」
ペンギン「その割に、センゴクと話してるときのローさんはしっかりしてた。だんだん酷くなってる気がする──いや、まさかな。まさか……」
シャチ「なんだよ。おまえが思ってるコト全部言ってみろよ相棒」 - 20◆kvQQiMAh9w22/11/19(土) 22:13:06
ペンギン「いや……あのさ。ローさんの症状って、ホントにただのアルコール中毒なのかな?」
シャチ「へェ?」
ペンギン「アルコールが原因なら、ぼちぼち抜け初めてておかしくないと思うんだ。だってローさんが酒飲んでたのって、もう8時間くらい前だろ?」
シャチ「あァ、確かに……じゃあ何だ? 意識の混濁、痛み、顔面蒼白、震え……貧血っぽいよな。あるいは受傷をきっかけとした迷走神経反射……は、ちょっと考えづらいかもしれねェけど……」
ペンギン「……なあ、たとえばクスリとか宝石とかの密売人って、身体ン中にブツ詰め込んで隠すことがあるよな?」
シャチ「ああ、するよな。それがどうした?」
ペンギン「ローさん、手ぶらで帰って来たのに『手に入れられた』って言ってたんだよな?」
シャチ「そうそう。『手に入れられた』って……いや、おい、まさか──」
ペンギン「……至急、胃洗浄とレントゲンの準備を。開腹手術にも備えろ。麦わらの所の船医にも連絡を取れ。急げ!」 - 21◆kvQQiMAh9w22/11/19(土) 22:14:48
わざわざつけたトリップを間違える痛恨のミス!以降気を付けます。
後半では様々な登場人物が出てきます。ご期待に沿えるよう頑張ります。 - 22◆kvQQiMAh9w22/11/19(土) 22:28:57
ところでペンギン&シャチ→ローの呼び方はノベルではどちらも「ローさん」ですが、なんとなくペンギン→「ローさん」、シャチ→「ロー」にしています。ベポは「キャプテン」、ジャンバールは「船長」。特に意味は無いのですが、文章上で性格を区別するための措置です。ご了承ください。
- 23二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 22:30:41
不穏しかない
- 24二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 22:38:34
「身体痛い」ってさぁ…
これ、あの… - 25二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 22:39:31
……「は」から始まる四文字ですかね?
- 26二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 22:40:27
例の物質見つけてきたパターンですか……?(震え声)
- 27二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 22:44:52
チョッパー!!助けてーッ!!!!!!
- 28二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 22:45:54
は、はんぺん……
- 29二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 22:54:37
「それ」は漢字で二文字?
- 30二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 22:59:50
>顔真っ青で『痛い、痛い』ってガタガタ震えてる
寒いんじゃなくて…
- 31二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 23:22:19
船長の不穏に身構えてたらシャチの「おまえが思ってるコト全部言ってみろよ相棒」にぶん殴られた
- 32二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 23:25:27
手に入れたのがアレだったとして、どうして体内に隠したのか、そもそもなんで軍病院にあったのか謎だ
続きが気になる~!! 待ってるね! - 33◆kvQQiMAh9w22/11/20(日) 00:43:50
たしぎ「──定時連絡です、スモーカーさん。朝になってエストブルク軍立病院の被害状況が把握できました。建物のほうは大した被害もありません、少し壁がズレていたりはしますが、G-5のみんなが押したら戻りました。相変わらず妙な能力ですね……」
スモーカー「“切断”だ。太刀筋に入ったものをなんでもぶった切るが、殺傷能力は無く、くっつければ元に戻る……おまえも受けただろう、たしぎ」
たしぎ「ハイ、情けないことに昔……話を戻します。院長のスノーシュタイン氏によると、トラファルガーは深夜、泥酔状態で院長室に侵入。トラファルガーがエストブルク病院の医師や看護師を嘲ったために口論が発生し、最終的には抜刀騒ぎとなったようです」
スモーカー「酒に酔った上での暴挙か。よくある話じゃねェか」
たしぎ「大将黄猿は攻撃を当てたそうですが、トラファルガーは応戦せずに逃走。スノーシュタイン氏はバラバラの状態で看護師に発見されました。もちろん命に別状はありませんが、大変なショックを受けています。無理もありませんね、バラバラでも意識があるんですから」
スモーカー「そういうものか? 痛みもなく戻るんだから良いじゃねェか」 - 34◆kvQQiMAh9w22/11/20(日) 00:45:01
たしぎ「スモーカーさんは煙だからバラバラになることに慣れてるんですよ! 盗み出された医療機器は人工心肺装置に、超音波装置、放射線治療機、透析装置……どれも最新鋭で高額なものです。薬のほうは薬価が1万ベリーを超える新薬ばかり盗まれています。中には裏社会で盛んに取引されている向精神薬も……」
スモーカー「高ェ薬もあるもんだな。直接的な被害は盗難だけか?」
たしぎ「ハイ。もちろん暴行や器物破損もありますが、治っているので被害の度合いを申告しづらく……報告は以上になります」
スモーカー「ご苦労。引き続き調査を続けろ、明日にはおれも現地へ到着する」
たしぎ「正直……がっかりしています。穏健派だと思っていたトラファルガーが、こんな事件を起こすなんて……やはり海賊は海賊、スモーカーさんの言っていることは正しいのだと思います」 - 35◆kvQQiMAh9w22/11/20(日) 00:46:31
スモーカー「どうだかな。動機がわからねェうちは善悪を決めつけるな──ところでたしぎ、例の資料は?」
たしぎ「……まだ続けるつもりなんですか? “それ”は、トラファルガーのためのものでしょう?」
スモーカー「もう幾つかコッチに有利な判例があれば活路が見えてくるハズだ。重大犯罪としての認定に時効の停止、新法の制定、当事者の炙り出し……やることは山ほどある」
たしぎ「今回のことでハッキリしたでしょう? トラファルガーは海賊で、犯罪者です! それに情けをかけるようなことがありますか?!」
スモーカー「海賊で犯罪者である前に人間だ! それを忘れるんじゃねェ!」
たしぎ「──!! ハイ……そう、でした。わたし……」
スモーカー「おれはローに『信じろ』と言ったんだ。信じてほしいと言ったのに、おれがヤツを信じねェでどうする!」
たしぎ「……」
スモーカー「人間、そう都合よくはできてねェ。聖者だって怒りの拳を振り上げることはあるし、極悪人が人助けをすることもある──見えねェものに注意を払え、たしぎ。この件には、裏がある」
たしぎ「……長年のカン、ですか?」
スモーカー「いや。これはおれの“正義”だ」 - 36二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 00:49:08
ふーんほーへー…すまんマジでローが何盗んだか思いつかん…はではじまる4文字ってなんだっけ…?
- 37二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 00:52:50
- 38二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 00:55:29
透析装置かぁ…
- 39二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 01:03:15
はんぺん...
- 40二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 01:04:52
うわぁ…わぁ…
- 41二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 01:08:20
これ薬はキレート剤か?
- 42二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 01:10:33
「治療法」は必ずあるんだもんね……
- 43二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 06:14:59
「みんな」をみつけたのか……
- 44二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 08:03:20
保守
- 45二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 08:33:35
ヒェッ……
コラさん助けて…… - 46二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 09:00:17
おっとぉ??大丈夫かローさん
- 47二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 13:35:41
保守
- 48二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 16:13:05
SAN値というかメンタルというかそのあたりが深刻に心配になるな
医者は聖職!と真面目に言い切る男の病院大暴れだぞ - 49二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 21:20:50
そりゃ吐いて飲んでじゃないとやってられねえわな…
- 50◆kvQQiMAh9w22/11/20(日) 21:44:00
ゾロ「──もしもし? おうチョッパー、潜水艦の乗り心地はどうだ?」
チョッパー「ゾロ! すっげェ良くしてもらってるよ。何日もお日様が見れてないのは苦しいけど、ハートの海賊団はみんな優しくて良いヤツだからさ」
ゾロ「優しいかァ? おれが乗ってた時は監視までつけられて、囚人みたいな扱いだったってのによ」
チョッパー「それは……ウン……仕方ないんじゃねェかな……」
ゾロ「それで? トラ男は?」
チョッパー「隣にいる。金属の中毒っていうのは治療にそこそこ時間がかかるんだ。トラ男もだいぶ回復してるけど、まだ本調子には戻ってない。加えて内臓も弱いっていうし……辛そうだ」
ゾロ「フン、弱ェな。おいトラ男! この海を渡り歩くンなら、他船の医者の力なんて借りねェで、毒くらい自分でなんとかしろってんだ! ウチの船長はそこまで弱ェ男と同盟組んだ覚えは無ェぞ!」
チョッパー「やめろって! 普通の中毒じゃねェから薬が効き辛いんだよ。生まれた時からの病気が悪く作用してるんだ、これ以上強い薬なんて軍病院にしか無ェし……」
ゾロ「病気ねェ。おれはなったこと無ェからわからねェな。ったく、医者が無茶してぶっ倒れてどうする」
ロー「……てめェにだけは言われたくねェな、ゾロ屋」
ゾロ「おうおう、軽口叩く余裕はあるじゃねェかバカ医者。くたばってはねェようだな」 - 51◆kvQQiMAh9w22/11/20(日) 21:44:48
ロー「重篤な中毒を起こす前に能力で摘出するつもりが、酒にやられてこのザマだ……もう一生酒なんて飲まねェ、苦いし臭いし不味いだけじゃねェか……」
ゾロ「わかってねェなあ。飲んでもバカしなきゃ良いだけの話だろ」
チョッパー「シラフでバカするゾロが言えた台詞じゃないぞ」
ゾロ「うるせェ。あーその、何だ……ロビンが心配してるぜ、『お爺さま』が何とかって。仏のセンゴクが直属の艦隊動かして捜索するなんざ大事件だ。トラ男、てめェ何したんだよ」
ロー「……酔って記憶が曖昧だ。ろくに覚えちゃいねェよ」
ゾロ「おーおー白々しい。どうもてめェの周りには海兵が多いな」
ロー「おれが海兵と繋がってるとでも?」
ゾロ「てめェは別の船に乗ってるんだから詮索はしねェし、疑ってるわけじゃねェ。だが、“何か”あるからスモーカーだのドレークだの面倒なのが出てきてんだろ」
ロー「……別れは告げた。肉親でもなけりゃ、それで十分だろう」
ゾロ「そうかよ。そんなら、どこぞの英雄ジジイからの伝言は伝えなくても良いな?」 - 52◆kvQQiMAh9w22/11/20(日) 21:46:18
ロー「待て!……伝言は、伝えてこその伝言だ。伝えねえ伝言なんてただの独り言で……」
ゾロ「素直になれよ」
ロー「……聞かせろよ、伝言」
ゾロ「ほ~ん? それが人にものを頼む態度かァ?」
チョッパー「ゾロ! 病人イジメはダメだぞ!」
ゾロ「はいよ。ま、伝言って言っても意味もわからん暗号みてェなもんだけどな。おれにはさっぱりだが、トラ男ならわかるんじゃねェのか?」
ロー「暗号……?」
ゾロ「あァ。『おかき』だと。意味わかるか?」
ロー「……そうか。ゾロ屋──ありがとうな」
ゾロ「ン。トラ男てめェ、飯食う元気くらいあるんだろ? クソコックがさっきから厨房籠ってガサゴソしてやがる。あれも北の海の生まれだ、ハートのクルーどもに会えるっていうんで文句たれつつ張り切ってんだろうな」
ロー「黒足屋が? 悪ィが中毒の症状で、今はそこまで食欲が……」
ゾロ「医食同源、メシは命の源だ。食わなきゃ出る元気も出ねェ。ウチのコックはクソ野郎だが、腕だけはべらぼうに良い。明日浮かんできたら美味ェメシ、期待しな」 - 53◆kvQQiMAh9w22/11/20(日) 21:47:51
【注記】
珀鉛病とオペオペの能力でできる治療/できない治療については細かに設定を作りましたが、完結後に載せようと思います。よろしくお願いいたします。なおノベル・ローの設定には準じていません。 - 54二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 22:55:12
ゾロォ…ゾロォッ!!おめえってやつは!!!!!!
スモーカーさんもたしぎちゃんも信じてくれるしよぉ…!!
トラ男!いい友達持ったな!!!
サンジもチョッパーもいるんだ!絶対に治る!! - 55二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 23:16:16
コラさん!
お願いコラさん!
万が一ローがそっち行ったら追い返して!!
何がなんでも追い返してぇぇぇ!! - 56二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 01:13:08
保守
- 57二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 05:20:52
ロビンが心配してるのなんかいいな…このコンビ好き…
- 58二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 05:30:06
いやあ続きが気になる
一味の出番もありそうでワクワク - 59◆kvQQiMAh9w22/11/21(月) 09:11:00
【おまけSSS】
サンジ「どうだ野郎ども! 美味ェか?」
ハートの海賊団「美味ェよ~!」「ありがとな!」「故郷の味がするよォ~!」「キャプテンにも食わせてやりてェな!」
サンジ「当たり前だろくそ野郎! 誰が作ってると思ってんだ!」
ハートの海賊団「怒られた?!」
サンジ「──ってなワケだ。ロー、海の底から起き上がれねェくらい身体悪いなら早く言えっての。もしもし? 聞いてるか?」
ロー「あァ……悪ィな、一食無駄にしちまって」
サンジ「いや、ルフィが食ったからそれは問題ないんだが……それよりどうだ? そっちに送ったキャロットケーキ。北の海生まれにゃ懐かしい味なんじゃねェか?」
ロー「……いつも、てめェが作る故郷の料理は……美味いが何か一味違うと思っていた」
サンジ「あァ?! 喧嘩売ってんのかテメェ?!」
ロー「だが……フフ。今日は不思議と、故郷の味に感じるよ」
サンジ「……そんな味は忘れちまえ。忘れた方がいいんだ、それは」
ロー「そう言われると思っていた。それでもおれには、家族の味なんだ──」 - 60二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 09:31:55
...珀鉛混じり...?
- 61二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 09:38:39
………珀鉛の甘味料ってのがあったよね
ていうかローパンがだめだけどケーキはオッケーなんだ… - 62二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 09:43:02
ワインに鉛を入れたら甘くなるんだっけ、確か
- 63◆kvQQiMAh9w22/11/21(月) 09:54:14
ローはどうしてパンが苦手なんでしょうね?大した意味は無さそうですが、「宗教的忌避感で食られないのでは」という説もあるようです。なかなか面白いですよね
個人的に、ケーキとパンは別物だと思っています
ところで、金属中毒では口の中に金属味が出ることがあるようです - 64二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 09:59:28
口ぶりからして珀鉛の毒性の事わかってそうなサンジが甘味料に使うとも思えないがでも珀鉛を甘味料にした味だから懐かしんでるっぽいよなと思ったが、つまりサンジが作ったのは普通のキャロットケーキで口の中に珀鉛の味がするからローには懐かしい味に感じたってことか
- 65二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 15:03:28
うう…どうなるんだ保守
- 66二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 16:12:40
牛タン美味しすぎるから自分の舌が牛タンになればずっと口の中が美味しいのにってやつじゃん
- 67◆kvQQiMAh9w22/11/21(月) 19:49:01
プルプルプル...プルプルプル...
ガチャ...
スモーカー「おかき。ロー、1分切るな」
ロー「……何の用だ白猟屋」
スモーカー「喋らなくていい。こっちも喋らねェからな」
ロー「はァ? 聞き耳立てようったってココは医務室で、ソナーの音しか聞こえないはず──」
スモーカー「……」
ロー「……」
スモーカー「──1分経ったな。よし、結構」
ロー「……何だっていうんだよ?! こっちも暇じゃねェ! 用があるなら話せ!」
スモーカー「フン。信用の有無を確認しただけだよ」
ロー「信用? 悪いがおれは、海兵を信じたことなんて一度も──」
スモーカー「おれを信じているから、通話を切らなかったんだろう?」
ロー「……」 - 68◆kvQQiMAh9w22/11/21(月) 19:49:39
スモーカー「てめェはおれを信じているから、おれが意味の無い戯れをしないと信じているから、1分も黙って待っていた。違うのか?」
ロー「……勝手に言ってろ」
スモーカー「都合がいいように解釈させてもらうよ。まァ、これでおれの目的は果たされた。また連絡する。じゃあな」
ロー「おい待て!……何も聞かないつもりなのか、白猟屋」
スモーカー「今日、おれは信用の有無を確認するためにこの番号にかけた。てめェはおれを信用してる。ならばおれもおまえを信用するだけだ」
ロー「……軍病院の襲撃は死罪だろう」
スモーカー「海軍を舐めるな。おまえが何も言わずとも、おれはすぐに真実に追いつく。おまえの処罰は、そのあとに決めればいいだけのことだ」
ロー「真実? そんなものありゃしねェ。おれはおれがやりたいようにやっただけ。最初ッからてめェらを騙して──」
スモーカー「ひとつだけ忠告しておく。てめェの言葉でてめェを追い詰めてんじゃねェぞ、ロー」 - 69◆kvQQiMAh9w22/11/21(月) 20:01:13
このごろ、別所投稿版の方にたくさんコメントを頂きます。ありがとうございます。
この1はモノを書く仕事をしておりまして、その関係で趣味の執筆が遅れ、そこから来るストレスにより、サクっと書けるライトな読み口の本作を構想しました。結果として1エピソードごとの起承転結に追われててんやわんやになっています。
今日はもういっこ投稿します。引き続きごゆるりとお楽しみください。 - 70二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 21:29:23
- 71二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 22:13:47
泣きそう(´;ω;`)
- 72二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 22:55:26
ありがとうイッチ...
正直これを楽しみに1日過ごしてる - 73◆kvQQiMAh9w22/11/21(月) 23:26:40
コビー「“海”」
ドレーク「“霧”──どうだ、何かわかったか?」
コビー「ええ、ローさんの動機はわかりませんが……スモーカーさんの言う通り、この件は“見えないもの”に鍵があるかもしれません」
ドレーク「何かを掴んだな」
コビー「掴んでいるかはわかりません。ただ、気になることがあるんです。エストブルク軍立病院について詳しく調べたところ、無かったんですよ──盗まれた高額機器の使用実態が」
ドレーク「なに? それは妙だな。Dr.スノーシュタインは確かに盗難届を出しているし、盗まれた医療機器は前年の設備リストにも載っている」
コビー「でも一方で、買った記録がどこにも無いんです。4,500万ベリーもする人工心肺装置も、3年前から設備リストに載った透析装置も、定期的に仕入れられている1錠3万ベリーの鉱毒治療薬も」
ドレーク「しかし、この病院で治療を受けた者は多いはず……」
コビー「ええ。設備が実在しないのに、治療記録だけはあります。もしかしたら、これは……」
ドレーク「エストブルク軍立病院では高額な機器や薬を買ったことにして、その代金を横領している……ということか」
コビー「確実な証拠はありませんが、その可能性はあるかと」 - 74◆kvQQiMAh9w22/11/21(月) 23:27:10
ドレーク「それが正しかったとして、トラファルガーの件とどう関係していく? 海軍には大醜聞だが、トラファルガーには関係が無いだろう?」
コビー「幾つか考えられます。横領の証拠を隠滅するため共謀した可能性や、病院が別件でのローさんとのトラブルで横領を隠そうとした可能性、ローさんの怒りを買うようなことをして暴れさせた可能性、ローさんが横領に気付いて何か工作した可能性──」
ドレーク「……あるいは、トラファルガーが何か別のものを見つけた可能性もあるな。おれは暫くゼセニャン公国周辺海域から動けない。引き続き調査を頼む」
コビー「了解しました。──ところでドレークさん、G-5の兵たちが噂していたんですが、“あのこと”って本当なんですか?」
ドレーク「あのこと? どのことだ?」
コビー「みんなが持ってるあの写真の女海賊が、実はあなたの婚約者だって噂があって……」
ドレーク「何がどうしてそうなった?!」 - 75◆kvQQiMAh9w22/11/21(月) 23:27:23
【おまけSSS】
「もしもーしスモやん大将! ミトメリア島周辺は今日も異常なしだぜー!」
「ネロフホリ王国南海もだ! みんな元気で天気もいいよ!」
スモーカー「あァ、平和で結構。治安が悪ィのはむしろてめェらのせいかもな」
「ひっでェや! あ、そうだスモやん知ってるか? みんなが持ってるマブい女海賊の姉ちゃんの写真! アレってドレーク中将の“イイヒト”なんだろー?」
スモーカー「何がどうしてそうなった?!」
「ほら、ドレーク中将って女と見たら目も合わせられねェのに、あの姉ちゃんの写真だけは大事に持ってるじゃねェか!」
「ってことはよォ、見慣れるくらいに顔合わせてる大事なヒトなんじゃねェかって思ってな! 名推理だろ~?!」
スモーカー「……ぶッ……ククク、ははは……!」
「ヒィ~! スモやんが笑ってらァ!!」
「明日は大時化かァ?!」 - 76◆kvQQiMAh9w22/11/21(月) 23:30:56
本日はここまでとなります。楽しみにしてくださって本当にありがとうございます。
のんびりお楽しみいただければ幸いです。 - 77二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 23:39:52
うぎゃァァァ面白すぎる!!!
スモやんのローにかける言葉が優しすぎて泣きそう…そうだぞトラ男…自分で自分を追い詰めたらダメなんやぞ……
あと、コビーとドレークがローのことをある程度信用してるんだろうなって感じられてとてもありがたい!! - 78◆kvQQiMAh9w22/11/22(火) 00:27:46
明日(きょう)更新分から内容が際立てて重くなるので1話ずつの投稿となります。曇らせはありません。よろしくお願いします。
果たして年内にトラ男は本誌に登場するのか。私は単行本の切れ間となる回に出てくると予想しておきます。 - 79二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 06:37:43
ドレークは癒し
はっきりわかんだね - 80二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 08:08:42
保守
- 81二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 08:54:44
ドレーク写真大事に持ってないでさっさと燃やせw
- 82二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 09:05:41
まだ持ってんのかい
- 83二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 14:01:22
お守りとしてなのか慣らし行動なのかどっちなんだドレーク屋
- 84二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 14:37:16
後生大事に懐にしまっとんやろな...
- 85二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 19:24:07
ここのドレークさん笑ってしまう
- 86二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 21:07:03
トラ男は器材を盗んだのかでっち上げなのか…ペンギンシャチチョッパーの反応からしてでっち上げっぽいけど病院サイドが本当に盗まれたものを誤魔化すために報告したのか虚偽のもの盗まれた〜って騒ぎを起こして損害賠償なりふんだくってやろうとしたのか…闇が深くなりそう
- 87◆kvQQiMAh9w22/11/22(火) 21:13:15
プルプルプル...プルプルプル...
ガチャ...
センゴク「……もしもし」
ドフラミンゴ「フッフッフ……珍しいじゃねェかよォ、センゴク。てめェが電話をかけてくるなんざ、明日はガレキでも降るんじゃねェか? どうした。おれの声でも聞きたくなったか?」
センゴク「黙れ! 本当ならば貴様の声など聞きたくもないわ!」
ドフラミンゴ「それならおつるさんの手を煩わせるんじゃねェよ! 何を話したいんだ? おれのコラソンの、ロシナンテの思い出話でもしたくなったのか?」
センゴク「……貴様と共有するロシナンテの思い出など一つでもあるものか! わたしの息子に、鉛玉をぶち込み殺した貴様と……!」
ドフラミンゴ「誰がてめェの息子だって? ちょいと傲慢が過ぎやしねェか? ロシーはおれの弟だ! 天地がひっくり返ったってその事実は変わりゃしねェ!」
センゴク「……今のはわたしの失言だ。謝罪する。失礼した」
ドフラミンゴ「……こんな話をするためにかけてきたんじゃねェだろう。おれは退屈だが、まどろっこしいのは嫌いなんだよ。早く要件を言え」 - 88◆kvQQiMAh9w22/11/22(火) 21:14:19
センゴク「藁にも縋る思いで訪ねたい……貴様の思うことでいい。トラファルガー・ローが信頼を投げ打ってでも欲しがるものは、何だと思う?」
ドフラミンゴ「ロー? フッフッフッフ! 何かと思えばそんな話か! おれが知るかよ、あの裏切者のクソガキのことなんざ!! あれだけ手をかけてやったのに、何の恩も返しやしねェ! おれの首だけを狙って現れやがったあいつのことなんてなァ!」
センゴク「……やはり貴様を頼ったのは間違いだったな。もういい、話はここで終いだ」
ドフラミンゴ「まァ待てよ。せっかく頼りにしてくれたんだ。もう少し話そうじゃねェか。話しているうちに何か思い出すかもしれねェしな」
センゴク「……そうか。それも、そうだな」
ドフラミンゴ「まァ……考えてもみやがれ、おれが知ってるローはガキの頃の数年ばかり。そこから今日までどう過ごして来たかなんてわかりゃしねェから、大人になったアイツが何を欲しがるか想像もつかねェよ。それが当然だろう?」
センゴク「……貴様の言う通りだ。しかし、それでもいい……わたしはあの男を知りたいだけなんだ。少年の頃の思い出でもなんでもいい……」
ドフラミンゴ「フン……泣かねえガキだったなァ。本を読むのが好きで、物にも金にも執着しねェ。ツンツンして可愛げが無ェのは難点だが……そういう所が放っておけねェと可愛がられてたのかもしれねェな」
センゴク「……そうか」 - 89◆kvQQiMAh9w22/11/22(火) 21:16:43
ドフラミンゴ「ローが何を欲しがるって? 何だろうなァ、あいつの欲しいものなんざ、おれの首くらいだと思っていたからなァ。甘いお菓子は今でも好きなのかなァ?──ああ、そういや……」
センゴク「なんだ? 何か思い当たったのか?!」
ドフラミンゴ「……フッフッフ!! てめェ、ホントはわかってるんじゃねェのか? 元帥の権限まで使ってロシナンテの骨を手に入れたんだろう? なァ、おれにも一目拝ませろよ! おれの弟の成れの果てを!」
センゴク「ッ、貴様に見せてやるものなど、何も──」
ドフラミンゴ「なァ教えてくれよ。人間が燃えたあとには何が残る? 骨も残らず燃えた後に残るものは何だ? 政府の無能どもが無残に燃やしたフレバンスで、焼け残ったものは何だ?」
センゴク「……!」
ドフラミンゴ「灰と消毒剤で真っ白になったあの町で、何が残った? 焼け残ったもので政府のアホどもは何を作った? あァ、思い出してきたよ……15年くらい前だ。おれが仕切っていた闇オークションに、あの薄気味悪ィ“美術品”が出た……」
センゴク「美術品……まさか、“あれ”なのか?」 - 90◆kvQQiMAh9w22/11/22(火) 21:18:43
ドフラミンゴ「ああ、落札したのはどこかの医者だ。トレーボルかディアマンテに聞きゃあ何か覚えてンだろう……ローがファミリーを離れてなかったらおれが競り落としてやったってのによォ」
センゴク「……」
ドフラミンゴ「なァ、センゴク。てめェが手に入れたものを、ローも手に入れたんじゃねェのか? あのガキはてめェが羨ましくなったんじゃねェのか? てめェが自慢げにおれの弟の骨を見せびらかしたから、ローは“あれ”に手を伸ばしたんじゃねェのか?」
センゴク「……そうか、ああ、きっと……そうだ、わたしが……」
ドフラミンゴ「わかったならローに、たまにゃあ顔を見せろと伝えておけ。ここはあいつの好きな海の底。静かで、何の音もしねェ場所だ。一緒に過ごすのも悪かねェだろう」
センゴク「……いいや。あの子は光のもとで、わたしとロシナンテが生かす。あの子が好きなのは深海の暗がりではない。朝焼けの、眩い光だ」 - 91◆kvQQiMAh9w22/11/22(火) 21:26:34
群像劇は構成が命、あとはココをこうしてアレをああして……
おそらく本スレ完走の200ぴったりくらいの字数感かなと思います。
今週中に完結します。もう少しお付き合いください。 - 92二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 21:30:17
うーわ、その医者って…
そういうことか…… - 93二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 21:41:16
ここで憎まれ口を叩きながらでも教えてくれるあたりドフラミンゴらしいなぁって思う
- 94二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 22:34:23
美術品、さぞやいいお値段だったんでしょうね。
- 95二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 22:45:48
うわ悪趣味ぃ〜…そりゃローもキレるわ…
それはそうとして、今でもローを待ってるドフィの情緒どうなってんの…?ローは光の中で生きるんだよ!!! - 96二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 23:57:35
ごめん絶対本筋に全く関係ないんだろうけどドフィがお菓子って言うのちょっと萌えた……菓子じゃなくてお菓子……
- 97二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 00:46:55
...甘いお菓子、か。
あったんだろうな。フレバンスには、たくさん。 - 98二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 00:48:05
えへ、珀鉛たしか甘味料にもなりましたよね……
- 99二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 02:16:25
ヘビーラムは「琥珀色」なんだよな
まあ琥珀なんだけど、化合物を入れると
つまり……ラムも? - 100二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 02:33:38
これ、その医者が純粋に欲しくて買った(かつ横領もした)のか、珀鉛病を治す方法を突き止めたくて珀鉛の塊を買い実験をした(医療器具はちゃんと買った)のか、どっちなんだろう。
...前者かなぁ... - 101二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 03:38:13
ドフラミンゴに電伝虫かけるほど追い詰められてんのかセンゴクさん…
- 102二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 07:57:48
医学的に珀鉛が必要だったならそう言えば和解出来ただろうし
今回の医者はただ贅沢したかっただけって方かな
しかし大方無い筈の薬を盗まれて患者に被害がって何か胡散臭いね - 103二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 08:16:04
美術品買った金を医療器材を買ったものとして帳簿を誤魔化してたか?
- 104二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 08:34:23
ヒェッ
- 105二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 10:43:21
続きが気になる
- 106二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 14:33:33
患者に珀鉛を投与し珀鉛病を発症させ、実験と言った方がいいような治療行為を行っていたとすれば患者に被害は出る
- 107二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 20:59:27
保守…
- 108◆kvQQiMAh9w22/11/23(水) 22:31:31
プルプルプル...プルプルプル...
ガチャ...
キッド「──よォ。てめェなんで出てこねェんだトラファルガー。この間の詫びだ。酒も料理もたんとある、クルーどもは楽しくやってるぜ?」
ロー「別に……酒も飲めねえし、宴にも興味ねェってだけだ」
キッド「あァ? せっかくこのおれが格下のてめェのためにプレゼントを持って来たってのに……」
ロー「プレゼントだと?」
キッド「前にツラ合わせたとき、おれの能力でてめェのピアスをダメにしちまったからな。暇つぶしに代わりのモンを作ってきた。幾つかあるんで、出てきて気に入ったのを選べや」
ロー「作ったのか? てめェが? 趣味が悪そうだな……」
キッド「ハハ! 刺青だらけのてめェに趣味をとやかく言われる筋合いは無ェなァ。そっちに出てくる気がねェならおれが行くぜ。つーか、もうそっちに向かってる」
ロー「は? おい、だからおれは出ねェって……やめろ! 扉を引っ張んな! てめェのバカ磁石でこの部屋の医療機器が壊れたらどうする! 機械はてめェより繊細なんだよ!」 - 109◆kvQQiMAh9w22/11/23(水) 22:32:21
キッド「だァもう、うるせェなあ! とっとと出てきやがれ! てめェのクルーどもに纏わりつかれて気持ち悪ィんだよ! 早く出てこい!」
ロー「ぜったい嫌だ! 部屋からは出ねェ!」
キッド「ガキかよ?! それともなんだ? トラファルガー。てめェ何か悪ィもんでも食って目も当てられねェ姿になっちまったのかァ?」
ロー「……」
キッド「おっと図星か? ハハハ! どんな不細工になりやがった? もともと大したツラでもねェんだから、見せてくれてもいいじゃねェか格下がァ!」
ロー「……白いんだ」
キッド「ん?」
ロー「……肌が、まだらに白いんだ。誰かに見せたくねェ。帰ってくれ」 - 110◆kvQQiMAh9w22/11/23(水) 22:35:21
キッド「なんだ、それだけか?」
ロー「……“それだけ”だと? この肌の色のせいで、おれがどれだけ──!」
キッド「何かの病気なのか? まァ何でもいいな。おれは病気になんて罹らねェから気にしねェ。肌が白かろうが黒かろうがどうでもいい。ンなことを気にして揶揄ったり恐れたりすんのはバカだけだ」
ロー「……」
キッド「だから、扉を開けろトラファルガー。おれの宴だ、不参加は許さねェ」
ロー「……ユースタス屋」
キッド「うん?」
ロー「てめェは……バカだな」
キッド「ああ……今日はそれでいい。ほら出てこい、ツラ見られたくねェってなら、外はクソ暑ィがコートでも貸してやる。てめェは格下だが、いねェといねェでつまらねェからな──」 - 111◆kvQQiMAh9w22/11/23(水) 22:40:41
「キッドとローのデュエットキャラソンがあるよ」という話がなんだか妙に好きです。
思ったよりスレの流れが速いのと、今日は祝日なので、3つぶん投稿したいと思います。 - 112◆kvQQiMAh9w22/11/23(水) 22:46:05
プルプルプル...プルプルプル...
ガチャ...
たしぎ「……スモーカーさん。わかりました、トラファルガーがなぜ凶行に走ったのか」
スモーカー「そうか。なら、まずは──動機がわかったとき、おまえがどういう感想を抱いたかを教えろ」
たしぎ「遣り切れない気持ちと、怒り。権力を持った者たちが、誰かの人生を蹴散らして……わたしたちが守るこの世界は、そんなことばかりじゃないですか。悔しくて、辛いです……!」
スモーカー「泣いているのか、たしぎ」
たしぎ「だって……! ハイ、わたしは弱いから……泣くことしかできません。この事実を公表して良いのかもわからない。それが彼を余計に傷つけるのではないかと思って……」
スモーカー「そうだな。安易に公表していい情報じゃねェ」 - 113◆kvQQiMAh9w22/11/23(水) 22:47:03
たしぎ「彼が欲しがるに決まっています。だって“それ”は、帰ることすらできない故郷の形見、墓標そのもの……けれど、彼が持っていてはいけないもので……」
スモーカー「ああ。所有権うんぬんの話ではない。あれは毒だ、あいつには特に効く」
たしぎ「……それなのに、元凶となった大罪人を裁く法すら無い! こんなのって、こんなの、わたし……」
スモーカー「だから法を作るんじゃねェか。本当の悪人を裁くための法をな」
たしぎ「……!」
スモーカー「ここからが正念場だ。気合い入れろよ?お嬢さん」
たしぎ「ハイ! わたし、できることは何でもします。それがわたしの正義になるように、子どもたちに誇れる仕事となるように……! 泣いてる場合じゃありませんね、早く資料室に行かないと!」
スモーカー「それでいい。おれたちの仕事をするぞ、たしぎ」 - 114二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 22:59:05
頑張って!海兵さん!!
- 115二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 23:01:29
キッドもスモーカーもかっこいいよぉ!!
たしぎちゃんスモやんと一緒に頑張ってね!! - 116二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 23:05:16
救いの手がさ、いっぱいあってさ
泣いてる - 117◆kvQQiMAh9w22/11/23(水) 23:07:31
プルプルプル...プルプルプル...
ガチャ...
センゴク「……おかき」
「……」
センゴク「……何も言わないで良い。わたしが勝手に話したいだけだから。どうか静かに聞いていてくれ、老いぼれのつまらぬ戯言を」
「……」
センゴク「わたしはこれまで、己の心をひた隠しに生きて来た──政府の指針に従わねば、わたしの一声で落とされる命よりももっと多くの命が失われる。わたしの人生は、目の前の命を潰して大勢の暮らしを守る、そればかりだった」
センゴク「しかし、心は痛み続ける。歴史を探ることの何が罪だ。知を求めて何が悪い。人間は知の動物、赤子は黙っていても本を手に取り、目に見えるものの名を知ろうとするではないか」
「……」
センゴク「政府の威光を守るためと研究を禁じても、それを破る者は後を絶たず……それを裁くのは、気が重い仕事だった。海で冒険しているだけの連中を海賊と呼んで砲撃し、海賊王に船や武器を売っただけの商人を投獄し、赤子まで手にかけて……」
センゴク「それでもわたしは君臨し続けた。これが正しいのだと、これで幾つもの命を救えたのだと、これで平和が守られるのだと、わたしが責任を負えば誰かが救われるのだと、そう信じて──それは今でも変わらない。それは確かに、事実なのだ」 - 118◆kvQQiMAh9w22/11/23(水) 23:09:28
センゴク「だからといって……人が人を裁く罪が消えることはない」
「……」
センゴク「……新たな海賊王が壊した世界と、新たに作られた秩序とが平和を作っているとは……わたしには思えない。以前より悪くなった所もあれば、良くなった所もある。苦しむ者は絶えず、富を得る者は限りない」
「……」
センゴク「しかし、世界とはそういうものだ……おまえのような犠牲者は、必ずまたどこかで生まれるだろう」
「……」
センゴク「……ときどき、ひとりで海を見に行った。わたしとて海の男。悪を憎みつつ、自由に海を航るおまえたちを、心の底では羨ましいと思いながら……不自由な場所で輝く波を眺め、潮騒を聴いた」
「……」
センゴク「……結局わたしは、息子のように思っていたただひとりの命すら守れなかった。己の命令のせいでロシナンテを喪い、おまえから大好きなひとを奪った、無能な男に過ぎないのだ──」 - 119◆kvQQiMAh9w22/11/23(水) 23:10:28
ロー「いいや。あんたはおれを救っただろう?」
センゴク「──!」
ロー「あのひとは、おれに『愛してるぜ』と言った。きっとあんたが、あのひとに繰り返しかけた言葉だ」
センゴク「……」
ロー「あんたがあのひとに贈った愛は、おれの中にも、確かに生きているよ」
センゴク「……」
センゴク「……おかき」
ロー「……あられ」 - 120二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 23:16:47
泣いた
- 121◆kvQQiMAh9w22/11/23(水) 23:33:56
しばしお付き合いいただいたこの物語もあと3話。もともとは「海の男が夜に酒を飲みつつ昔を思い出す」といった感じの曲を聴いていて、こんな物語を書きたいなあと思ったのが執筆のきっかけでした。
最後までお付き合いいただければ幸いです。 - 122二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 02:19:40
合言葉が最後にきたところで、もう、なんか......うわあ!!!!😭になってしまった 上手く言えないけど......
- 123二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 07:16:48
泣きそう
- 124二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 08:03:35
保守
- 125二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 12:40:44
保守
- 126二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 13:21:15
たしぎちゃんとスモやんの会話に救われて、センゴクさんとローの会話に胸が温かくなる😊
スモやんとたしぎちゃんなら出来る!って確信があるから楽しみ - 127◆kvQQiMAh9w22/11/24(木) 21:36:57
スモーカー「おかき」
ロー「……あられ」
スモーカー「身体の具合はどうだ。送った薬は効いたのか?」
ロー「おかげさまでほぼ全快だ。本当によく効きやがる……不愉快なほどにな」
スモーカー「そいつァ良かった。一抱えの鉛の塊なんざ身体ン中に入れる酔狂なヤロウはそうそういねェからな。効くかどうかと心配してたんだよ」
ロー「……どうしてわかった」
スモーカー「おまえの能力は物体の入れ替えだ。単純な瞬間移動じゃねェ──院長室に入った時に不自然な消毒剤臭さと、微かな胃酸の臭いがした。胃の中のモノと“何か”を入れ替えたなとすぐにわかった」
ロー「文字通り“鼻が利く”な白猟屋。野犬ってのはそういう意味か?」
スモーカー「あァ、ついでに耳も良い。さて……やっとトラファルガー・ローの罪状と刑罰が決まったんで、報告させてもらおうじゃねェか」
ロー「勿体ぶってんじゃねェよ。とっとと話せ」 - 128二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 21:37:33
センゴクさん(元海軍大将)の愛がロー(海賊)に巡っているって思うと感慨深いな…じじ孫もっと仲良くして
- 129◆kvQQiMAh9w22/11/24(木) 21:37:46
スモーカー「まず、エストブルク軍立病院についてだが──院長Dr.スノーシュタインの逮捕によって閉鎖が決定した。罪状は横領と盗難品の闇取引だ。ひょっとすると、横領についてはおまえも初耳かもしれねェな」
ロー「……初耳だな。どういうことだ?」
スモーカー「あの院長と会計担当は、十数年前から高額な医療機器や薬品の架空取引を行っていた。横領された総額は、おまえの首に懸けられた金より高くなる。医療機器ってなァ高ェんだなあ、驚いたよ」
ロー「ンなことが起こってやがったのか。全く知りもしなかった……」
スモーカー「それだけでも重罪だが、院長は横領した金を使って闇オークションで美術品を競り落とすのが趣味だった。捜索に入ったところ、院長の自宅から過去に盗難された幾つもの美術品を発見。そっちの業界が大騒ぎになってやがる」
ロー「それも初耳だ。あの野郎、そんなことしてたのか」
スモーカー「そして……あの夜おまえが盗んでいった『フレバンスの鉛の心臓』も、闇オークションでの戦利品とのことだ」
ロー「……」
スモーカー「『フレバンスの鉛の心臓』……珀鉛病という“恐ろしい感染症”を封じ込めた証として、フレバンスの焼け跡に残った珀鉛から作られた美術品──だったな? ロー」
ロー「……訂正しろ。あれは、火葬場の底に残った珀鉛をかき集めて作られたものだ」 - 130◆kvQQiMAh9w22/11/24(木) 21:38:41
スモーカー「そうか、失礼した──あのタマ無し野郎は軽い尋問ですぐに吐いたよ。おまえに『鉛の心臓』を盗まれて、ソレを持っていること自体を追求されたら自分の立場が危うくなると思ったと」
ロー「……」
スモーカー「そもそもトラファルガー・ローは無用な騒ぎを起こさねェことで知られた海賊。そんなヤツが暴れたとなりゃァ、むしろ被害者側である病院のほうが真っ先に疑われる。捜査が入れば、違法オークションでの取引と『鉛の心臓』の所持がバレて失脚だ」
スモーカー「だから院長は、ハートの海賊団による強盗事件をでっちあげた。海賊の捕縛へ目を向けさせ、『鉛の心臓』の存在と横領を誤魔化す時間稼ぎをするためにな──バカがその場しのぎで考えた稚拙な作戦だ。まったく下らねェ」
ロー「……」
スモーカー「てめェもてめェだ。『心臓』の盗難を誤魔化すためとはいえ、一般人を巻き込んで暴れるなんてらしくもねェことしやがって。まァ、お陰でおれはすぐに院長を疑ったわけだが」
ロー「……」
スモーカー「なァ、ロー。そろそろ、あの夜なにがあったか話してくれねェか?」 - 131◆kvQQiMAh9w22/11/24(木) 21:39:27
ロー「……あの日は院長に用があったんだ。患者のことで……治療方針の相談が終わり、それだけのはずだったんだが、院長に呼び止められた。見せたいものがあると言われて」
スモーカー「そして、『鉛の心臓』を見せられたのか」
ロー「あァ。『世界政府が死の疫病に打ち勝った証の品』と言われて──疫病だと? 笑わせるな! 珀鉛病は中毒だ、感染症じゃねェ! あれは中毒なんだ!」
スモーカー「知ってるよ。珀鉛病は感染しねェ。わかってる」
ロー「それなのにあいつは、誇らしげに政府の功績を語り、父様のことをバカにした! 『フレバンスの町医者如きが中毒だなんだと訴えていたが、政府の医師団が間違うはずがない』と!」
ロー「おれの父は、母は、最期まで病院で戦った! 最期まで世間に珀鉛病の真実を訴え続けた! あのクズ野郎とは違うんだ!」
スモーカー「それで、手に入れたくなったのか。『心臓』を」
ロー「……一度は船に帰ったんだ。おれは医者、どんなに反吐が出そうでも、患者を途中で放り出すことはしたくねェ。投げ出せば、おまえらへの義理も果たせねェ」
スモーカー「だから飲めもしない酒に逃げたんだな?」
ロー「飲めば忘れられると思ったんだ。みんなそう言うじゃねェか。だから飲んで、飲んで……だが……」
スモーカー「下戸のてめェは知らなかったんだろうが、酒で悪ィこと忘れられたら世話ねェよ。バーカ」 - 132二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 21:40:27
ソウダネ...飲んだあとのことは記憶に残らないことはあるけど、飲む前は消えないネ...
- 133◆kvQQiMAh9w22/11/24(木) 21:40:40
ロー「……羨ましく、なったんだよ」
スモーカー「あ?」
ロー「大切なひとの骨を持っていられる、センゴクが」
スモーカー「……」
ロー「故郷から運び出され、骨の欠片すら残さず燃やし尽くされ、身体の中に溜まっていた鉛が熱で溶けて固まって……」
ロー「そして、おれの愛した人たちは、一緒に学んだ友達は、両親は、妹は、一握りの珀鉛になった。己の命を奪った、白い鉛に」
スモーカー「……」 - 134◆kvQQiMAh9w22/11/24(木) 21:41:10
ロー「『鉛の心臓』……存在だけは知っていた。しかし、あれがあんな所にあるとは思っていなかった。戦いになっても落としたくないから、身体の中に仕舞って奪い取った……家族の遺骨を欲しがって、何が悪い」
スモーカー「……それでもその『心臓』は、おまえの身体と心を蝕む毒だ。白斑まで出たそうじゃねェか。一度は治せても二度目は無いかもしれねェぞ。手放せ、ロー」
ロー「てめェらは……家族の墓すら無い、故郷の土を踏むこともできないおれから、また奪おうとするのか」
スモーカー「……」
ロー「草木も枯らす消毒剤の白い粉に汚染され、フレバンスは今も閉ざされている。生きた人間が入れる場所じゃねェ、近くまで行くことすらも叶わなねェ……やっと出会えたんだ。やっと……」
ロー「もう……奪わないでくれ……」 - 135◆kvQQiMAh9w22/11/24(木) 21:41:44
スモーカー「……いいや。よく聞け。その『心臓』についてだが、センゴクさんが保管すると申し出ている」
ロー「……は?」
スモーカー「わからねェのか?『いつでも会いに来い』ってことだよ」
ロー「……!」
スモーカー「誰もおまえから奪おうなんてしていない。『心臓』はおまえが持つべきものだ。いずれ正式な所有権を譲渡させるが、今のおまえは感情的になりすぎている。少し距離を置き、頭を冷やすべきだ」
ロー「……おれに命令するな、白猟屋」
スモーカー「命令じゃねェよ。提案だ」
ロー「……そうか」 - 136◆kvQQiMAh9w22/11/24(木) 21:42:33
スモーカー「さて──てめェに科される刑罰だが、無期懲役に決定した。ロー、“そこ”から東に半日ばかし進んだところの無人島に、今は使われてねェ海軍の訓練所跡がある」
ロー「……なんの話だ?」
スモーカー「そこの地下室がおまえの独房だ。もともとは不良新兵への懲罰室だった部屋でな、どんなに叫んでも喚いても誰にも聞こえねェ、真っ暗い部屋になっている」
ロー「……」
スモーカー「施設の鍵は、入り口の郵便受けに入れてある──おれも昔は随分閉じ込められたもんだよ」
ロー「……あんた、不良だったのか?」
スモーカー「おれが真面目に見えるか? 部屋に置いてある毛布はたしぎからの差し入れだ。感謝して使え」
ロー「……」
ロー「……スモーカー」
スモーカー「あァ?」
ロー「……ありがとう」
スモーカー「フン。海賊に感謝される筋合いはねェよ。またな、“ふかふか頭”」 - 137二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 21:48:27
自分、涙いいすか?
- 138二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 21:55:53
あぁ…そうか…センゴクさんは近くに身内が"ある"けどローは"ない"のか…
- 139二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 22:06:49
泣きそう辛い……
- 140◆kvQQiMAh9w22/11/24(木) 22:12:08
私の祖父は海の向こうで眠っています。その国の習慣であるロッカー式のお墓には故人の顔写真がずらりと並び、祖父はオルゴールの小箱ほどの綺麗な箱に収められています。書いている途中、ふとその重さと不思議な匂いを思い出しました。
今夜もお読みいただきありがとうございます。明日の夜に完結させようとおもいます。
もうすこしお付き合いくださいませ。 - 141二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 22:32:39
うちの家は代々、跡継ぎ=一族の墓守の考えを持ってる
自分は跡継ぎではないけれど改めて墓があることの意味を考えさせられたよ - 142二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 00:03:29
スモやんとたしぎちゃん、センゴクさんの優しさとローの悲しみが沁みる…泣きそう
いくら無くしたくないからって一抱えもある鉛を体内に入れないでくれキャプテン!
にしても皮肉だな、自分らを殺した鉛しか残らないなんて - 143二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 06:01:24
保守して待機
- 144◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 10:50:56
【保守がてらのSSS】
ボルサリーノ「おやおや〜?ドレークくん、別嬪さんとはいえ海賊のブロマイドを持っているのは感心しないねェ〜」
ドレーク「や、その、これは……て、手配書を持ち歩くようなものでして」
サカズキ「その女にゃあ懸賞金も掛けられとらん。中将が追う価値も無いじゃろうが」
ドレーク「し、しかしその……この女、とても優しい顔をしていて、眺めていると安心すると言いますか……け、決して海賊を許すわけではなく!」
サカズキ「……」
ボルサリーノ「……」
サカズキ「……(どうせ実在すらもせん女じゃけェ、正体は……黙っとこ)」
ボルサリーノ「……(あんたも罪な男だねェ〜)」 - 145二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 10:52:45
ドレークwwwwww
- 146二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 11:05:03
設定から話の流れからキャラ同士のやり取りから全てが最高です...ずっと読んでたい
- 147二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 12:07:44
ドレーク屋がその女性の正体を知った時どうなるか気になる
- 148二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 12:19:20
女海賊のブロマイド=ローだって知ってるの何人いるんだ?
- 149◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 12:27:02
設定上では大将以上のみです
- 150二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 15:02:05
ちゃうねん大将…
恋愛感情とかではなく、本能的にこの子がこんな顔できるようになったんだって
肉親の情に近い安心感なんです…多分
知らんけど - 151◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 16:11:13
【保守がてらのSSS】
サンジ「よう、この間は残念だったな。こいつは快気祝いのスフレ・グラッセだ。本当はレディーたちにしか出さねえものだが、おれは病人に優しいんでな。特別サービスだ、有り難く食えよ?」
ロー「……アイスクリームは好まねえ」
サンジ「なんだと?この偏食ヤロウ!そんなんだからルフィに身長抜かされるんだぞてめェ!」
ロー「成人過ぎてもぐんぐん伸びやがる麦わら屋の方がおかしいんだ!」
サンジ「じゃあ人の善意を踏みにじんな!おら!せっかく作ってやったんだからさっさと食いやがれ!!」
ロー「うっ……わかったよ、いただきます」
ロー「……!」
サンジ「どうだ?懐かしいだろ」
ロー「……この、味は」
サンジ「それは蜂蜜と熟成フルーツ酢にザラメで甘味を足したものだ。フレバンス製の甘味料は有害物質の規制で手に入らねェが、それを使ってた死に損ないの料理人の話を聞きゃあ、それなりのものは再現できる。それをアルミのスプーンで掬えば完璧ってわけだ」
ロー「……」
サンジ「おれも試してみたかったからな、白い町の幻の甘味料……おいおい、泣くほど美味かったか?」 - 152◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 16:57:39
他スレでのご紹介、本当にありがとうございます。昼間から酒を飲みつつ書いていたらうっかり自分で設けた縛りを破ってしまいましたが、引き続きお楽しみくださいませ
- 153二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 17:07:40
流石サンジ……色んな気持ちを汲み取ってその上料理に反映してくれるの素敵だなぁ
- 154二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 20:33:57
やっぱ料理できるってすごい
- 155二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 20:40:57
その料理人さんによく出会えたね…
- 156二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 21:32:16
ゼフ……かな……?
- 15715522/11/25(金) 21:41:36
なるほど…!?
- 158◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 21:42:53
プルプルプル...プルプルプル...
ガチャ...
イッカク「もしもし? こちらスワロー島市街イッカク。おいポーラータング、そっちにキャプテンいるか?」
ジャンバール「こちらポーラータング操舵室ジャンバール。船長はここにはいない。2時間ほど前にふらりと出かけて行ったが、誰も行先を聞いていないそうだ」
イッカク「もー、白猟との約束の時間まで5時間を切ってるってのに! ペンギンたちは『友達に会いに行く』って消えちまったし、この島じゃ妙に歓迎されるしで調子狂うなァ」
ジャンバール「ハハハ。イッカクもたくさん土産を持たされたのか? おれは子どもたちに花飾りやら菓子やらを括りつけられて大変だ」
イッカク「たくさんどころか大荷物だ! 船に乗った時だってカバン1個だったってのに……流行りのスカートだの口紅だの、似合わないからいらないっての!」 - 159◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 21:43:42
ジャンバール「良いじゃないか。今日はみな礼装だ、おまえもツナギを脱いで綺麗な服を着れば良い」
イッカク「ウチの制服はツナギだろ? どうして脱がなきゃいけねェんだ! あたしはいやだ! 海賊らしくねェ!」
ジャンバール「わがまま言うな、船長の良い日だぞ。おれやベポだってスーツを仕立てさせられたのに」
イッカク「それはみんなが楽しいからいいの。あ、祝い花をいっぱい渡されたから適当な瓶を用意しといてくれ。こないだ麦わらと会った時にコーラで乾杯しただろ? その瓶をクリオネが取っておいてたはずだ」
ジャンバール「了解した。ふふ、ポーラータングがどこもかしこも花まみれだ。ハクガンのくしゃみが止まらない」
イッカク「なんだかなあ。ハートの海賊団からお花の海賊団に改名するかァ?」
ジャンバール「そりゃ大変だ、ツナギに花粉がつくと洗濯が──それにしても、海は変わったな。数年前には海賊の上陸が歓迎されて、七武海でもない海賊団が海軍の式典に呼ばれるなど想像もしていなかった」
イッカク「そうだな。あたしたちも随分いろんなことをしたっけ」 - 160◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 21:45:50
ジャンバール「ボルヴォア島の動乱鎮圧と島民の救護活動に、魚人島の海底地震災害救助に、海軍と合同でやったバリアケ帝国での戦いに、エルバフの風土病の研究……」
イッカク「ドレスローザでのキリアン肺炎封じ込めは骨が折れたな、海軍の医療チームは感染症に慣れてないから、キャプテンが過労で倒れちまったし」
ジャンバール「あれは本当に肝が冷えた。通りすがりのユースタスたちが働いてくれたから良かったが、船長は5日も目を覚まさず……」
イッカク「後から考えると、あのときキャプテン6日もほとんど寝てなかったからね。倒れるのも当たり前だよ」
ジャンバール「違いない。しかし、ユースタス・キッドのマスクと白衣の似合わなさときたら……」
イッカク「……思えばあたしたち、海賊らしくねェことばかりしてるな」
ジャンバール「それもそうだ。何時の間にか医療団のようになっていた」
イッカク「でもまァ……キャプテンはケンカしてる時よりも、医者やってる時のほうがカッコいいよね」
ジャンバール「全くだ」 - 161◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 21:47:19
イッカク「あーあ、白猟にも随分世話になっちまったなァ。あいつのお陰でキャプテンの故郷が無くなった元凶どもが処刑された時はスッキリしたよ。これまであんなクズどもを裁くホーリツも無かったなんて信じられねェ」
ジャンバール「野蛮な復讐はさせず、一から法を作って裁くというのがあの男らしい正義だ。権力を上手く使っている。お陰でおれたちの船長は手を汚すことも無かった」
イッカク「珀鉛病が感染症じゃねェってことも、煙ヤロウどもが見事に証明しやがった」
ジャンバール「あの男と部下たちとが自ら珀鉛の毒を身体に入れた時には驚いた。あれほど焦った船長は見たことがない」
イッカク「能力使って海軍本部にすっ飛んでったよな。大騒ぎになって……でも、赤犬のヤツがうまいことキャプテン宥めてくれたから良かったよ。あいつもあたしたちの同郷だったんだな」
ジャンバール「ウチの船長には大男からの説教がいちばん効く。海軍の要人たちが公開治験をやったことで世間は注目し、珀鉛病は鉱毒病だと認知された……感謝しか無いよ」
イッカク「……でも、キャプテンはそんなに喜んでなかったね」
ジャンバール「ああ、そうだな」
イッカク「処刑のニュースを見たときも、全快した白猟に会いに行ったときも、どちらかっていうと……悲しくて仕方ねェように見えた」 - 162◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 21:48:20
ジャンバール「……どんなに世界が変わっても、船長の故郷が還るわけではない。復讐をしても死んだ者たちは戻らない。それでも胸は痛み続け、血を吐くような日々が続く」
イッカク「……」
ジャンバール「だからこそ──世界が良くなれば良くなるほどに苦しいこともあるのだろう。あの時この薬があれば、あの時この法があればと、おれたちの船長が思わぬはずがない」
ジャンバール「それは誰でも同じこと。おれも昔、船員をみんな殺されて奴隷になった。だから船長の心を欠片くらいは理解できていると……傲慢にも思っているよ」 - 163◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 21:48:56
イッカク「……ジャンバールはさ。もしもキャプテンが船を降りて、町の医者になるって言い出したら、ついていく?」
ジャンバール「当然だ。船長にはおれたちが必要だろう? おれがいなかったら誰が巨人族の患者に座薬を入れるんだ?」
イッカク「アハハ、そうだな! あたしも一生キャプテンについていく!」
ジャンバール「おれたちはハートの海賊団、愛と心がおれたちの繋がりだ。船長がどこへ行こうとも、何をしようとも、決して離れるものか」
イッカク「で、そのキャプテンはどこ行ったって?」
ジャンバール「ううむ、やはり姿が見当たらん。慣れない川のぼりもある。そろそろ出航しないと約束の時間にフレバンスへ間に合わないのだが──」 - 164◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 21:58:01
ちょうどいいくらいのスレ進行度で残り1話となります。最後までお付き合いいただきたく。
- 165◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 22:06:25
「お・か・き~!」
「……あられ」
「久しぶりになってしまったな。やれやれ、この頃は引っ越しだの何だのと忙しくて敵わんわ」
「呼んでくれりゃァ良かったのに。おれの“能力”は、引っ越しに適任だ」
「おまえの“能力”は人の命を助けるためのもの。引っ越しなんぞガープに手伝わせりゃ良い。さんざん迷惑かけられたんだからな」
「そのガープも歳だろうが。あんたも車椅子だし……」
「おや。もしかしておまえさん、お爺ちゃんを手伝いたかったのか?」
「……引っ越しには蕎麦がつきものだからな。蕎麦は好きだ」
「ンフフフフ……しかし、よく似合っているぞ。おまえに白が似合うのは、魂が潔白であるからだろう」
「よくコラさんのスーツを仕立て直せたな、身長がずいぶん違うのに」
「そりゃあ海軍御用達の仕立て屋だからな。自然系能力者が大暴れしても破れぬスーツを作る腕だ、幅詰めくらい赤子の手をひねるようなものだろう。ガッハッハ!」
「幅詰めって域か? ああほら、そっちは崖なんだからフラフラすんな。車輪を固定しろ。ったく危ねェ爺さんだな……」
「え~」
「“え~”じゃない! 海に落ちたらおれも助けられねェぞ!」 - 166◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 22:08:32
「ところでおまえさん、最近どうしてる? また女ヶ島出張の時期だろう」
「あァ、女ヶ島には2週間前に行った。今度は試作のワクチンを打ったが、やはり改善が必要だな……若干女体化しちまった」
「若干って何?」
「おれのほうは相変わらずだ。麦わら屋に引っ張られて、無理やり国盗りの賊との争いに巻き込まれたり、ユースタス屋にちょっかいかけられたと思ったら、妙な霧に迷い込んで海王類の群れと戦うハメになったり……」
「ほうほう。それで、“若干女体化”というのは……」
「シャチの一目惚れに付き合ってたら、いつの間にか黒ひげ傘下の海賊団と戦争になってたり、ベポの嫁を探しているつもりが大冒険になったり、ペンギンが女ヶ島の娘にさらわれたり……あァ、昔馴染みのベビー5が子どもを産むから、西の海に手伝いにも行った。おれの能力は産科にも向いているからな」
「だから若干って……まァ良い。健康であれば良い」
「海軍も何度おれを呼ぶ気だ。白猟屋の腕がぶっ飛んだときはまだいいが、藤虎の盲腸手術や海兵どものワクチン接種なんて誰でもできるだろうが」
「ふふふ、面白かったなァ。注射器持ったおまえさんにビビってる海兵たちの顔……」
「今やってるキリアン肺炎のワクチン接種が終わったら、もうしねェからな!」
「わかったわかった。ところで、たしぎくんが言うには本部の近くに美味い大福屋ができたとか」
「ン……来年の健康診断の時に寄る」
「そーかそーか。ハッハッハ!」 - 167◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 22:12:08
「……実をいうとな。わたしはロシナンテの死から1年ほど、顔も名も知らぬおまえを探していたのだ。おまえはロシナンテが命を懸けて守った子。本当は深い海の底ではなく、わたしのもとで守りたかった」
「……」
「だが、知っていたのは『珀鉛病の少年』ということだけ。ついにおまえを見つけることは叶わず、わたしは海軍元帥に、おまえは億超えの大海賊になっていた。鉄の船に乗り、海底を泳ぐ自由のツバメに」
「……」
「“トラファルガー”は北の海にありふれた姓。手配書で初めておまえの名を見たときはわからなかった。気づいたのは、七武海の候補に名を挙げられたときだ──」
「……ドレスローザで会う前から気付いていたのか。おれが“そう”だと」
「わたしを見くびるな。オペオペの実の能力者。北の海・フレバンス出身。その年齢。記録を見て、おまえが当時ドフラミンゴのもとにいた珀鉛病の少年だと勘付いたよ。ミニオン島を生き延びて、海賊に身を落としたのだと」
「……ドフラミンゴの手下だと疑わなかったのか?」
「疑いを持たないわけではなかった。しかし……おまえに惚れこんだロシナンテを、信じてみようと思ったのだ。ハッハッハ、結果的に大正解だったな! 見事にドフラミンゴを打ち倒してくれた!」 - 168◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 22:12:45
「責任者のくせにハイリスクなことをしやがる。だが結果的に助かった。ドフラミンゴを討てたんだ。これ以上のことは無い」
「珀鉛病が完治しているのかが気になって、七武海加入の際に健康診断をさせたのは悪かった。今だから話すが、あの健康診断を受けたのはおまえだけだ」
「は? おい、全員裸になったんじゃねェのか?!」
「いいだろう、二十歳過ぎた男の裸なんぞ減るもんじゃないし!」
「海軍のセクハラ案件だ! 新聞に売ってやる!」
「それはシャレにならん! 本当に申し訳なかった!! 心配で心配で、もし何か影響があるなら新しい薬もあることだと思い──」
「……ふふ、ハハハ! ったく……売らねェよ。海軍に落ちる信頼なんてもうどこにも無ェ。どちらかっていうとおれのスキャンダルになるからな……」
「お爺ちゃん傷つくんだけど」
「うるせェ」 - 169◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 22:14:41
「しかし……今日は良い天気だ。空は高く澄み、ミニオン島の廃墟には白い花が咲き誇る。波は柔らかく煌々として、風は帆を膨らませる。船出にはおあつらえ向きだと思わんか?」
「なんだ爺さん、おれの船に乗りたくなったのか? 生憎こっちは満員だ、余裕は無ェぞ」
「ああ、もうしばらくしたらわたしも箱に収まるほど小さくなる。そうしたら、乗せてくれるんだろう?」
「……よく言うよ。あんた200歳まで生きそうだ。おれはそんなに生きねェからな」
「いや、今にその日が来るよ。それからのんびりおまえさんの船に揺られて、ロシナンテと共に海を泳ぐのも悪くない」
「……」
「ほら、もっとよく顔を見せてくれ。最近は目が霞んで仕方ない。お爺ちゃんのそばにおいで」
「……ああ」 - 170◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 22:16:32
「そうだ、忘れるところだった──今日はおまえさんに見せたいものがある。これを、どうか受け取ってくれ」
「宝箱? 妙に軽いが……」
「開けてみなさい」
「……これは」
「ナギナギの実と、ロシナンテの遺骨。そしてわたしが持っている数少ないロシナンテの写真を、おまえに預けようと思う」
「……」
「わたしが『鉛の心臓』を持つ代わりに、おまえはこれを持っていてくれ」
「……ああ……おれも……」
「うん? どうした?」
「おれも、宝箱に入れられたんだ……コラさんに、命が尽きる前に、ドフラミンゴから守るために……」
「──そうか」
「あァくそ、あんたらつくづく親子だな、おんなじことしやがって……」
「おいで。おまえを抱き締めたい」
「……ああ」 - 171◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 22:21:58
「──ほら、もう時間だ。おまえの船が遠くに見えている。青い輝きに向日葵の色が飛沫を散らし、おまえを迎えにきているよ」
「……そうだな。もう、行かなければ」
「顔を上げてみろ。おお、好い顔だ」
「……」
「その瞳で星を読み、その耳で風を聴く、潮に焼けた海の男の顔じゃァないか。御両親に見せてやれば、さぞ喜ばれることだろうな」
「……そうかな。そうだと、いいな」
「フレバンスに撒かれた意味の無い消毒剤を除染するのに何年もかかってしまった。だがようやく、防護服なしで帰れる日が来た。いま、あの土地には白い花が咲き乱れている。鉱毒に冒されながら、なお気高く咲き誇る白い花が」
「ああ……幻のような風景だと聞いている」
「さあ胸を張れ。船出の時だ。おや、船の上でシロクマくんが手を振っているぞ。フフフ、可愛いなァ。最近ますますふわふわになったな」
「あんまり甘やかすんじゃねェぞ、ベポは最近肥満気味なんだ。もう30を過ぎてるからな、ただでさえ冬は脂肪を蓄えやすいし……」 - 172◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 22:30:48
「愛は巡り、時代を越えて死をも越え、新たな命へ受け継がれてゆく。おまえはその“心”を胸に抱き、自由に生きていけばよい。理由無き愛に怯えるな。今度はおまえが与えて行け。おまえを愛する者は、この世界にたくさんいるのだから」
「……ああ、わかってる。『受けた愛に理由などつけるな』──あんたから貰った、大切な言葉だ」
「さて、迎えが来た……いってらっしゃい、ロー。愛しているよ」
「行ってきます、お爺さま──愛してるぜ」
おわり - 173二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 22:38:13
素敵な作品に出会えたこと、感謝します
- 174二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 22:40:04
感謝
あなたの文章が好みすぎて某所の方も一通り読んじゃったよ - 175二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 22:40:25
全ワンピースファンに見てもらいたい神ssでした
ありがとうございました! - 176二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 22:44:11
これは語り継がれる…と言うか
語り継ぐ
感想を表現できる語彙がないことが悔やまれる
一先ず、読ませて頂きありがとうございます
このご恩は一生忘れません - 177◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 22:46:07
【あとがき】
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
もともと本作は「掲示板投稿形式でしか書けない表現技法を研究する」「セリフ回しの練習をする」という2つの大目標のために書き始めたものとなります。
お読みいただいた皆様のお陰で、最後まで穏やかなスレとなりました。
本当にありがとうございます。
スレ途中で出しました「2つの縛り」は以下の通りとなります。
1.地の文を一切書かないこと
2.最終話以外で会話している人間同士を対面させないこと
2に関しては酔っぱらって書いた保守用おまけSSSで自ら破ってしまう痛恨のミスがありましたが、予定していたプロットでは全て守っております。セーフセーフ。
また、G-5の兵などの原作登場モブを除くオリジナルキャラクターには喋らせない、という縛りもあります。
スモーカーまわりのことについては、別所連載版のほうで回収することにしました。じつは2作とも同じプロットから派生したものでして、今後同じようなセリフや展開が出てくるかと思います。
彼方はCP要素アリ/成人向け描写アリとなってはおりますが、お口にあいましたらぜひ。
質問などがありましたらお願いします。 - 178二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 22:47:35
お疲れ様!
言葉の端に人情を感じる言い回しが好きです - 179◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 23:25:57
【補足・珀鉛病の設定について】
珀鉛病については本作および別所連載版ともに、原作の描写とノベル・ローを参照に作った独自設定を使用しています。
・基本的な症状は鉛中毒に準じ、高熱と全身の痛みが特徴
・初期症状は日没に合わせた微熱
・白斑の出現から末期症状までの間隔は世代によって異なる
・遺伝性疾患であり、珀鉛は発症のトリガーに過ぎない
・珀鉛を除去だけで完治するわけではない
・寛解状態の患者から子へも遺伝するが、珀鉛を摂取しなければ生涯発症しない
・幼少期のローは能力が不完全だったため、内臓の切らなくて良いところまで切ってしまっている
・オペオペの実の能力では体内の異物を除去できるが、成分そのものを除去することはできない
なお、小説版ではオペ直後に白斑が消えていますが、本作の設定では肌のターンオーバーを待つことになっております。 - 180◆kvQQiMAh9w22/11/25(金) 23:33:14
ちなみに、本作(および別所連載版)は三次創作フリーでございます。セリフの使用や転載、場面のイラスト化、同一設定での創作、改変などなどご自由にお楽しみください。
ご紹介などしていただけますと大変喜びます。 - 181二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 23:41:47
素敵な作品をどうもありがとうございました
海を游ぐ心と愛のツバメのこれからにさいわいが満ちていますように! - 182二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 00:12:03
感謝……圧倒的感謝……!
最後のシーンで涙が出たよ - 183二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 00:12:25
言葉選びがすごく綺麗で素敵なお話でした‥!みんなに愛されるローさんが見れて嬉しかったです‥!ありがとうございます!!
- 184二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 03:52:13
絶対見つけたいのに他所の連載がどれか全くわからん
でもこんな掲示板で直接的な情報を晒せなんて言えないから泣いとる。もうちょいがんばるぞい - 185二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 04:10:22
この世界においてローは医者として人々の不幸を無くす幸福な王子であると同時に、自らの力で世界を巡るツバメでもあるのでしょうね。また鉛の心臓も、センゴクさんの下でならば割れることは無いのだろうな、と思えます。
一抹の切なさや寂しさはありつつも、総じて優しい文章でとても感動しました。
別所連載版の方も楽しみにお待ちしております、素敵な物語をありがとうございました。 - 186二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 06:40:00
別所連載版からのファンなのですが、言葉ひとつひとつに愛を持って書かれてるなあと読む度感動します。最後のローとセンゴクのやり取りが本当にステキでした。原作でも欲しいぐらい。
いつも感動をありがとうございます!! - 187二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 08:33:20
乙でした
また神SSが完結してしまった - 188二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 09:13:55
若干女体化で笑った
素敵な作品をありがとうございました - 189二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 11:14:00
素敵なSSをありがとうございました。
別所連載版も楽しみに続き待ってます! - 190二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 14:33:11
見つけた!!!!!やった~!!!イッチの文章がまだ読めるぞ!!
- 191二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 19:30:40
ガチの神スレ・神SSだった
支部の連載も恐らくこれかな?というものを見つけたのでこれからゆっくり読みます。作者様ありがとうございます! - 192二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 19:40:50
「お爺さま」でもうダメだった泣く
素敵なSSをありがとうございました…! - 193◆kvQQiMAh9w22/11/26(土) 21:19:06
みなさま本当にありがとうございます。
あたたかい御感想をたくさんいただき、感謝感謝でございます。
いちどもスレを落とすことなく連載を終えられたのは皆様のお陰です。
別所連載のほうはBLが主題ではないものの、CPタグがついている以上、本作のノイズになりかねないと判断し、こちらではURLなど掲載はしません。タイトルには「鉛」、ペンネームには「鯨」の字が入りますので、スレ冒頭の情報とあわせてお探しいただければ幸いです。年内完結予定です。11月中には更新したい……。
そろそろ私も考察系スレの名無しに戻ります。
次に書くのはハートの海賊団で下ネタギャグ系ダイス&安価スレかなあ……とぼんやり考えております。また近いうちにお会いすることができましたら。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。 - 194二次元好きの匿名さん22/11/27(日) 02:09:11
何かもう、とにかく“愛”が溢れたssだった
「おかき」「あられ」から始まって「愛してるぜ」で終わるのが
二人の根底と言うか心には常にコラさんの存在があるって感じられて良い - 195◆kvQQiMAh9w22/11/27(日) 09:10:51
あとちょっとで完走するので埋めがてら裏話。
最初のスレ立て時点で最後までのプロットがありました。ペース配分が完璧にできたことが最も嬉しいです。
・前半のほうでポーラータング号を引っ張り上げたキッドは珍しい酒が手に入ったから一緒に飲みたくて、それだけでやっています。そのあとキラーにめちゃくちゃ怒られて本気で反省しました。
・後半のおまけSSSのサンジはバラティエに連絡を取っています。
・この世界線のスモーカーは今後めちゃくちゃローと共闘していきます。体力温存したいローと移動特化のスモーカーは相性が良いはず。なお設定上、スモーカーはアラマキの代わりに大将になっています。アラマキは倒されそう。クザンは現時点での立場が不明なので出せませんでしたが、本作時系列では各地を放浪しています。
・「フレバンスの生き残り=世界政府にとって消したい存在なのによく七武海に入れたな」という昔からの疑問点に関しては、センゴクが細工して出身地を誤魔化し、スワロー島になっている設定です。
・勘違いに勘違いと伝言ゲームが重なった結果、ある日ドレークのもとに「ドレーク屋!結婚するのか。おめでとう」と祝い花を持ったローが現れます。そのとき写真の女の正体がバレて海軍が大騒動になりますが、結局写真を捨てた人はいなかったようです。 - 196二次元好きの匿名さん22/11/27(日) 14:37:30
ドレーク屋が最後までww
素敵なSSをありがとうございました…!別所連載版もギャグ系新スレも楽しみにお待ちしております!! - 197二次元好きの匿名さん22/11/27(日) 19:49:49
埋め
- 198二次元好きの匿名さん22/11/27(日) 21:56:22
この作品に出会えたことに感謝を!
愛に生かされ、愛を抱えて生きているローが、愛を返す言葉で旅立ちの言葉を告げるのがあまりにも美しく、暫し余韻に浸ってしまいました。
感動をありがとうございます。また出会える日を祈っています。 - 199二次元好きの匿名さん22/11/28(月) 07:27:57
折角なら完走まで埋め
- 200二次元好きの匿名さん22/11/28(月) 07:31:42