- 1◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 19:29:23
現パロ転生ヤンデレウタちゃんのお話、「私の方が、ずっと前から」の後輩ちゃん視点です。
※ウタちゃんによってモブの女の子がちょっと可哀想な目にあいます。
前作を読まれている方は少ないかと思うので、幼馴染み視点の「私の方が、ずっと前から」を先に読まれることを強くオススメします。
あと長いです。
【現パロ・CP・ヤンデレ注意】私の方が、ずっと前から|あにまん掲示板現パロ転生ヤンデレウタちゃんが書きたかったので書きます。※ウタちゃんによってモブの女の子がちょっと可哀想な目にあいます。 あと、表面上はあまりヤンデレヤンデレしてないかもしれません。bbs.animanch.com - 2二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 19:30:06
待ってました
- 3◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 19:30:42
0.
「う、うーん……どこ行っちゃったんだろうなー、鍵……」
「なあ、もしかして探してたのコレか? すぐそこに置いてあったぞ」
うずくまって探しものをする少女に、後ろからかけられた声。振り向くと、黒髪の少年がそこにいた。その手には、キーホルダーのついた鍵がぶら下がっている。
「そ、それ……私の鍵! ありがとうございます! なにかお礼を――」
「いいっていいって! 気にすんな!」
かばんを漁る少女に、少年はそう言った。ただの通りがかりで、鍵も探したというよりは見つけただけだからと。だが、今後のつながりを作らねばと、少女は少し焦りながら追いすがる。
「じゃあ、せめて名前だけでも……」
「名前か? おれはモンキー・D・ルフィ!」
「あ、その、えっと……」
少年は笑った。まるで太陽のような笑顔に、赤くなった頬を軽く抑えた後、少女は深々と頭を下げる。
「私、○○って言います。本当にありがとうございました!」
「おう! もうなくすなよ、○○! じゃあな!」 - 4◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 19:31:31
「ルフィ、先輩……」
少年の背中を見送って、少女は確かめるようにしてその名前を呟く。彼の学年章は2年生のものだった。少女は1年生のため、先輩ということになる。彼女にとってそれはやや慣れない響きだったが、決して不快なものではなかった。
「やっと見つけたんだ。私の――」 - 5◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 19:35:24
1.
――気付いたら、私は子供になっていた。
時間が戻っていただとか、そういうことではなくて。どうやら"生まれ変わっていた"というのが正確なところだと思う。大海賊時代なんかじゃなくて……平和で便利な、夢のような世界だった。
私が歌を配信するのに使っていた映像電伝虫の、もっとすごいものを大人はみんな持っている。記録も配信もいくらでもできて、遠くの街まで行く時だって海賊に襲われるなんてことは絶対にない。そんな世界だった。
遠い未来なのかな、なんて思ったけど、そうでもないみたい。"大海賊時代"も"ゴールド・ロジャー"も、それどころか"世界政府"すらも誰も知らなかった。私が生きた世界の話は、「面白い物語だね、漫画にしたら人気出そう」なんて受け取られた。
当然、そんな世界で街が海賊に襲われるなんてことはないわけで……シャンクスに拾われることもなく、ルフィに会っていた9歳を過ぎた今でも、生んでくれたお父さんとお母さんのもとで私は暮らしてる。 - 6◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 19:36:34
「またハズレか……ルフィ、いったいどこにいるのかな」
そう、ルフィ。私の幼馴染みで、2つ年下だった男の子。私はずっと、彼を探していた。幼稚園でも、小学校でも、中学校でも。自分の通っているところだけでなく、いろんな場所で2つ下の学年を探し回った。おかげで交友関係自体は広くなったけど、未だに見つからないままだ。
そもそも、ルフィがこっちに来ているかどうかもわからない。あっちでの知り合いに出会ったこともない。……まあその、私のあっちの交友関係が非常に狭いし、人の名前もほとんど知らないのが原因なんだけどね。うん、もっと外の情報を積極的に取り入れるべきだったかもしれないなぁ。でも途中からはそんな余裕もなかったし……。
「ルフィという男の子を探してる」と切り出すのも厳しい。なんたって、こっちで会ったことなどないのだから。ルフィ本人ならともかく、その周りの人に警戒されて完全にシャットアウトされてしまったらおしまいだ。怪しまれないように、でも見逃しもないように。この2つを両立するのは、なかなか大変だった。
雲を掴むような、とはこのことだろう。中学校を卒業する頃には、私はまるで手応えのないルフィ探しに疲れ切っていた。
理性が「もうやめようよ」と言っている。感情が「諦めたくない」と言っている。理性と感情の力関係は、ついに理性が優勢になりつつある。なにせ、全く進展のない状況だ。達成感も希望もなく、ひたすらに徒労感だけが積み重なっている。せめて、なにか少しでも、この世界にルフィがいる希望が持てるような何かがあれば。 - 7◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 19:41:00
2.
そうして日々を過ごしていると、希望が唐突に目の前に現れた。朝になって自室からリビングに向かった私が目にしたのは、見覚えのある顔だった。お父さんがいつも見ている、朝の情報番組のインタビューコーナー。今回の対象は、新進気鋭でありながらも世界的な大企業へと成長しつつあるレッド・フォース社、その社長。
「シャンクス、ありがとうございました」
「シャンクス……!?」
目の傷もなく、左腕も残っているけど、間違いなくシャンクスだった。私は初めて、あの世界に生きていた人を見つけることができたんだ。
それは私が希望を取り戻した瞬間であり、新しい手法を思いついた瞬間でもあった。 - 8◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 19:43:21
「初めまして、UTAだよ!」
新しい手法……それは、配信をすること。私がシャンクスを見つけたのと同じで、ルフィからも私を見つけられるように。そして、何かアイデアを見つけた時に、視聴者のみんなに協力してもらえるように。あの世界でもやってたことだから勝手はわかるし、それなりの知名度は得られるだろう。
正直雑な考えだったとも思うけど、知名度上げに関しては実際びっくりするほど上手くいった。半年もしないうちに、私は全国レベルでの知名度を得られるほどになった。でも、ルフィからのアプローチもなく、視聴者のみんなに協力して貰えるようなアイデアもない。
ただ漫然と活動しているうちに、私はとうとう16歳の誕生日を迎えてしまった。 - 9◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 19:44:54
「はぁ……上手くいかないなぁ」
出来れば、高校ではルフィと一緒に過ごしたいけど……これじゃ厳しいかもしれない。どうしたものかな。
限定品の"シュガーのグレープパンケーキ"を食べながら、私は考える。行き詰まったとき、私はお店のパンケーキを食べる。頭にエネルギーを回すためでもあるし、気分をリフレッシュするためでもある。
「ん……? なにあれ」
食べ終わった後に店内を軽く見回すと、大判の写真が壁に貼り付けられていたのを見た。"パンケーキチャレンジ成功者! ボニーさん"と表されている。 - 10◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 19:46:08
「あァ……これはな、"ドンキホーテ式"パンケーキチャレンジさ」
写真を見つめる私に気付いたのか、店長さんが席までやってきて説明してくれた。"ドンキホーテ式"パンケーキチャレンジ。超大型パンケーキを10枚、時間内に食べられるかどうかのチャレンジだそうだ。成功者には栄誉と賞金、失敗者には恥辱と罰金が与えられる……とかなんとか。
罰金はともかく恥辱って何?と思ったら、挑戦の前後で写真を撮るんだそうだ。タブレットでその様子を見せてくれた。自信満々でテーブルに座っている挑戦者と、それがパンパンのお腹を押さえて真っ青な顔になっている姿が並べてSNSにアップロードされている。これが"ドンキホーテ式"のミソらしい。
「フッフッフッフッ……自信満々だった挑戦者が情けなく倒れ伏すザマが、人間に眠る"残虐性"を刺激するのさ!」
というのが、店長さんの言。実際大受けしているようで、全国いろんな飲食店でこの"ドンキホーテ式チャレンジ"は行われているみたい。なるほど、こういうのがあるんだな。ルフィならこのくらい普通に完食するだろうけど……あっ。 - 11二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 19:46:22
タイトルが少し不穏だけど前作の後輩視点だし大丈夫だろ
- 12◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 19:47:52
「これだ!」
「!?」
店長さんにお礼を言って、私はお店を飛び出した。これなら、視聴者のみんながきっと助けてくれる。さっそくその日のうちに、緊急配信を行った。
「大食いチャレンジって面白いよね。限界に挑戦!って感じで。実はね、私もやってみようかなーって思ってるんだ」
「そこで、視聴者のみんなにお願い! "ドンキホーテ式チャレンジ"をやってるお店を教えてほしいの。ジャンルはスイーツでもお肉でもお魚でもなんでもOK! 必要なのはお店の名前と、場所と……あと、できれば写真もあったら嬉しいな。みんな、よろしくね!」
流石私の視聴者たちと言うべきか、山ほどの情報が入ってきた。そこからはローラー作戦だ。みんなからもらった情報を整理して、お店のアカウントのがアップロードする写真をひたすら確認していく。 - 13◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 19:49:09
『ありがとよ挑戦者! 面白い画像が撮り放題だ!』
違う。
『なかなかしぶとい……悪ィなナメてたよ挑戦者』
違う。
『たった2杯でギブアップしてええのんか~?』
ここも違う。
『制限時間の半分以下で余裕のクリア。敵わぬ……😢』
『んでも同じ日にウチのスペシャルパフェまで完食できてる理由に関しては一切が謎のままだねぇ』
――見つけた! - 14◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 19:50:44
制服を着た男の子と、綺麗に平らげられた料理の写真。天使の笑顔……ルフィだ!やりとりをしているのは同じ商店街のフルーツパーラーみたいで、そこでも同じように完食写真がアップロードされていた。
近辺にある学校は、1つだけ。その学校の制服を調べてみたら、ルフィが着ていたものと一致した。それにしても……。
「まさか高校生だったとはね」
これは完全に盲点だった。それも1つ上の2年生。先入観があったせいで気付かなかったけど、考えてみればあっちの世界と同じ年齢になるなんて限らない。つまり、"2つ下の男の子"で探すのは完全に無駄だったわけだ。調べてみると、シャンクスもまだ三十路に入ってないくらいだった。我ながらバカだなと思う。
「……まッ、いいや! 見つかったんだし!」
善は急げ。私は早速転校の手続きを行った。両親はこの時期にそこそこ遠くまでの転校ってことで心配そうだったけど、現時点までの配信収入で大学卒業くらいまでの生活費なら余裕でまかなえること、私の夢のために絶対に譲れないことなどでなんとか説き伏せた。 - 15二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 19:51:16
- 16◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 19:52:02
3.
そうして訪れた転校初日。みんなUTAについては知っているようで、朝はだいぶひどいことになった。質問についてはお昼にでも話す、ということでなんとか授業を始められて、先生はほっとしていた。
お昼はクラスメイトに誘われて学食で食べた。「ここの学食はおいしい」ってことで有名みたい。だからルフィもここを選んだのかな、と少し腑に落ちた。
特に区切りでもない微妙な時期の転校、それもそこそこ有名だったということで、「ストーカーにでもあったのか」「配信に関係することか」とかいろいろ聞かれたけど適当にごまかす。根掘り葉掘り聞いてくるようなこともなくてよかった。
質問攻めが一旦収まって、私はお昼を食べることにする。確かにおいしい……夢中になって食べている私を、みんなが優しい目で見てきた。クラスメイトが黙って見ているからか、少し遠くからの声が耳に入ってきた。
「ルフィくん、いいよね」
「うん、いい……」
「!?」
ルフィ!?振り向きそうになるのをこらえて、会話を聞くことに集中する。
「でも、年上の彼女がいるんだねぇ。昨日めっちゃ詰められたよ。ルフィに近付くなー、って」
「それ。私も同じようなこと言われたわ」
――えっ。
「えっ」
――彼女? - 17◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 19:55:28
彼女?ルフィに?
「幼馴染みだからって独占はちょっとひどいんじゃない? あの先輩」
「告白するくらいいいじゃんね」
"幼馴染み"で"年上"の"彼女"。それは……私のポジションになるんだと、ずっと思っていたものだ。
あんなにおいしかったはずのごはんも、全く味がわからなくなっていた。
でも、そうだよね。ルフィが幼馴染みだったら、すぐにでも告白して独占したくもなるだろう。私だって間違いなくそうする。
そっかぁ……ルフィに彼女かぁ。そりゃまあ私だってルフィの恋人になれればってずっと思ってたけど、日常を壊したいわけじゃない。ルフィが幸せで、その近くにいられるのなら……私は後輩、友達としてで十分なんだ。
私は、自分にそう言い聞かせた。 - 18◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 19:59:09
4.
ルフィはともかく、万が一にもカノジョさんに粗相をしないように、私は2人についていろいろと調べていった。
その生活リズムの把握を進めていくうちに、私は2人の関係が恋人と言うには不自然なものだと感じ始めた。登校こそ一緒だけど、それ以外の学校での行動も下校も別なことが多いし、ルフィの部屋の中にも2人の写真や記念品もないみたい。調べれば調べるほどに、ただの幼馴染みとしか思えなくなってくる。 - 19◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:00:40
不審に思った私が幼馴染みの女を尾行していると、とんでもない会話が聴こえてきた。
「あんた、いつになったらルフィくんと付き合うの?」
「え~? まだまだガキだしアイツ。ま、告白してきたら付き合ってあげないでもないけど」
――は?
「でもさぁ、ルフィくんに近付く女子を脅してんじゃん。いつも」
「"脅し"? "話し合い"って言ってほしいな。ルフィと付き合うには、私が認めるような子じゃなきゃダメなの」
――――はあ?
「へえ、どんな子なら認めるの?」
「私よりルフィのこと知ってて、私より前からルフィといて、私よりもルフィの駄目なところを受け入れられる子」
「きゃはは! じゃあルフィくん誰とも付き合えないわ!」
「まあ、もうちょっといい男になったら私から告白してあげよっかな。最初で最後のチャンスかもね」
――――――何様だ、こいつ。
私が心から求めていた環境をずっと持ってたくせに。告白なんていつでもできたはずなのに。それだけの時間を使ってやっているのがこれか。
ルフィに好意を持っているのはバレバレだからこそ、わけのわからない理由を付けてこんなことをしていることがなおさら腹立たしい。
後ろから殴りかかろうとする衝動を抑えるのが、こんなにも大変だとは思わなかった。 - 20◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:01:14
――うん、まあ、もういいや。あらゆる意味で、遠慮する必要なんてないことがわかった。じゃあ全部もらっちゃおう。
- 21◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:04:04
まず、あの女のいないタイミングでルフィと知り合うことにする。ルフィの通るルートと時間については検証済みだし、現在位置も把握できるようになっている。ルフィの視界に入る前に、私は鍵を置いて、わざとらしく探すふりを始めた。
「う、うーん……どこ行っちゃったんだろうなー、鍵……」
我ながらかなり大根役者かもしれない。大丈夫だろうか。
「なあ、もしかして探してたのコレか? すぐそこに置いてあったぞ」
うずくまって探しものをするふりをした私に、後ろからかけられた声。振り向くと、黒髪の少年――ルフィがそこにいた。その手には、キーホルダーのついた鍵がぶら下がっている。 - 22◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:04:42
「そ、それ……私の鍵! ありがとうございます! なにかお礼を――」
「いいっていいって! 気にすんな!」
お礼をしようとする私に、ルフィはそう言った。ただの通りがかりで、鍵も探したというよりは見つけただけだからと。でも、それで済ませるわけにもいかない。今後近付くためのつながりを作るために、私は少し焦った様子を出して追いすがる。
「じゃあ、せめて名前だけでも……」
「名前か? おれはモンキー・D・ルフィ!」
ルフィは笑った。その笑顔は変わらなくて、まるで太陽のようで。自分の頬の熱さに、顔がすっかり赤くなってるのを感じる。そのことに気付かれないうちにと、深々と頭を下げる。
「私、ウタって言います。本当にありがとうございました!」
「おう! もうなくすなよ、ウタ! じゃあな!」 - 23◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:06:06
「ルフィ、先輩……」
ルフィの背中を見送った私は、確かめるようにしてその名前を呟く。前は私が年上だったから慣れない響きだったけど、嫌な感じはしなかった。
キーホルダーの新時代マークにも、私の名前と顔にも反応がなかったということは、ルフィには記憶が無いということになる。でもそんなことはどうでもよかった。重要なことじゃない。そんなことより。
「やっと見つけたんだ。私の――」
誰よりも、大切なひと。 - 24◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:09:11
5.
それから、私はルフィに全力で近付いた。記憶はないものの、ルフィは私に好印象を抱いてくれているみたいだった。積極的にくっついて、一緒にお昼を食べて、帰りに商店街でちょっと買い食いもしたりして。
"ルフィ先輩"と敬語で話すのは少しむずがゆい気持ちになるけど、新鮮で楽しかった。睨んでくる"ルフィ先輩の幼馴染みさん"に関しては適当にあしらう。あいつは別に彼女でも何でもないんだし、ルフィと一緒にいることを禁止なんてできない。そういう形にしたのはあいつ自身なんだから。
それと、私はルフィの部屋に入るときや尾行するとき、証拠隠滅を少し雑にした。もちろん私には繋がらないようにしているけど、"誰かがいた"ことはわかるように。それもあの女のアリバイのないタイミングで揃えた。ルフィがあいつを疑うことはまだ無いだろうけど、布石を置いて損はない。
「それでよ、なんか最近部屋に誰か入ってきてる感じがするんだよな」
ルフィがストーカーについて私に相談してきたときは、流石に申し訳ない気持ちになった。私を疑う様子がまったくないこともあって、なおさら。でも、これが計画を一気に進めることになった。 - 25◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:10:09
「そ、それは酷いですね先輩!」
「なんかいい方法ねェかな」
……ん?これは使えそう。早速、ものは試しとルフィに打診してみることにした。
「私に良い考えがあります! か、仮に、ですけど……私と付き合って、デートするんです! ルフィ先輩が好きでつきまとってるわけでしょ? 恋人なんていれば諦めるか、もしくは『許せない!』と怒って尻尾を出すはずです」
「……」
一気にまくしたてた私に、ルフィは少し考え込んでいるようだ。いけるかな……どうかな……。
「いいなそれ!」
いいんだ。
「じゃあ、早速次の日曜日に行きましょうか。ストーカーに見せつけてやりましょう!」
「わかった!」
そういうことになった。
……少し遠くから"幼馴染みさん"が恨めしそうにこっちを見ていることを、私は知っていた。 - 26◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:13:10
6.
デート当日。ちょっと早めに到着した私は、一人でルフィを待つ。やっぱりと言うべきか、ルフィは少しだけ遅れて来た。
「わりぃ! 待ったか?」
「私も今来たところですよ、先輩!」
むっ、これじゃ私も遅れて来たみたいかな。まあいいか。ルフィは気にしてないみたいだし。
ルフィと並んで街を歩く。それだけなのになんだかとっても楽しいから不思議。
「初々しいカップルだなぁ」「なんか怪しい人いるよ」「あの子UTAじゃない?」「ねぇ、あの人目が怖いよ。通報した方がいいのかなぁ……ひっ!?」
周りからひそひそと声がする。初々しいカップル、か……悪い気はしないや。顔がにやけるのを抑えて店のガラス戸に目をやると、後ろの方からあからさまに怪しい"誰か"が着いてきてるのも確認できた。うん、まだなにもしてないから、通報はしないであげてね。
ルフィを連れて、ショッピングモールに入った。かわいいカーディガンとジャケットを見せて、「どっちが似合いますか」と尋ねる。「どっちもいいな」とルフィは言った。生返事じゃなくて本心で言ってくれてるのがわかって嬉しい。
お昼はモール内のカフェ。ここはカフェとしては珍しく、がっつり系のメニューも豊富なんだよね。そこはしっかり調査済み。ルフィはメニューを見つめて、どれにしようかとワクワクしながら選んでいる。
なかなか決められないようだったから、「私も結構たくさん食べられる方だし、半分ずつでシェアしませんか」と提案したら、キラキラした目で「いいのか!? じゃあこれとこれと――」だって。かわいい。 - 27◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:14:20
食事の後はゲームセンターへ。狙いは2人でできるゾンビシューティング。
「ねぇ、ルフィ先輩。このゲームでスコア勝負しませんか? 負けた方はなんでもひとつ言うことを聞くんです」
「よし、やろう!」
まんまと乗ってくれたルフィと勝負する。このゲーム、ダメージを与えるよりとどめを刺した方がスコアが入るんだ。ルフィが傷つけた敵を私が横取りする形でかっさらっていく。ダブルスコアで私が勝った。
「ズルいぞウタ!」
「ふふ、負け惜しみですね~」
「もう1回! 今度はそれ無しだ!」
「良いですよ? また負かしてあげます」
ハイエナ作戦は禁止されたけど、他にもいくらでもやりようはある。黄色と黒のストライプのアイテムが出てきたので、ルフィに譲ってあげることにした。
「先輩、それあげます」
「ほんとか! ありがとう!」
アイテムを撃つと爆発して、ルフィの体力がガクッと減った。罠アイテムだ。ルフィはその後すぐに撃破され、スコアが減る。
「ウタ、お前ェ……!!」
「はい、負け惜しみ~」
結局、5回やって5回勝った。ルフィは「あれ全部ズルだからおれの5連勝だ」なんて言うけど、結果は結果だからね。 - 28◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:16:09
そういうわけで、私達はプリクラコーナーへ向かう。男だけだと入れもしない場所ということもあり、ルフィとしては物珍しいんだろう。興味津々の様子で、機能説明を読んだり、中の構造を見渡したりしている。
「ルフィ先輩、キスプリ撮ってみませんか?」
「なんだそれ」
ちょっと攻めた言葉だったけど、もちろん知らないルフィ。説明すると、流石にそれはどうかということだった。まあ、本命はこれじゃないからいい。
「じゃあハグプリでいいです」
ハードルをちょっと下げて要求してみる。まあ、それにしたって多分断られるだろうけど――
「ん~、それならいいか!」
いいんだ。
ということで、あっけなくハグプリ(抱きつきながら撮ること)は了承された。これはいわゆる、フット・イン・ザ・フェイスっていうテクニック……だっけ。とにかくそういうものだ。本当はもう一段階くらい譲歩するつもりだったんだけど、予想以上にスムーズにいった。
『撮影するよ♪ さん、にー、いち……』
カウントダウンする機械の声に、私は内心とってもドキドキしながらハグをしようとして――「駄目っ!!」「え?」――その瞬間、ルフィが外に引きずり出されて……マヌケな顔の私が、一人で画面に映った。
……あーあ。よりによって、このタイミングで邪魔するとか。空気読んでほしいかな。 - 29◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:17:00
"幼馴染みさん"はルフィの顔を見て、自分が何をしたのかようやく理解したみたい。帽子とサングラスは勢いのせいか取れてしまっているし、さすがのルフィも誰だかわかっただろう。彼女は必死で釈明を始めた。
「違うの! ルフィのストーカーは私じゃなくてそいつなんだよ!?」
その通り。
「それに落とし物だって、ちょうどルフィが来るところでなんて不自然だよ! 自作自演に決まってる!」
ご名答。
「今のことだって、私を陥れるための罠なんだよ! 気付いてよ!」
お見事。全問正解、でも無意味。途中式がないから0点です。
私への敵愾心で、私が犯人って前提で、そこに理屈をつけただけなんだもの。証拠の1つもないくせに、ストーキングの現行犯を見られているこの状況でそれを言ったところで、苦し紛れの言い逃れでしかない。
ルフィもそう思っているようで、こちらからは見えないルフィの顔を見ている彼女が、だんだん青ざめているのがはっきりわかる。 - 30◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:19:14
ちょっとスカッとした。でも、これだとまだ致命傷には足りないし……そろそろ"助けて"あげようか。
「違うんです、ルフィ先輩!」
「えっ……」
私は、"幼馴染みさん"をかばった。私が彼女に見守ってもらうよう頼んだ、って。彼女もストーカーについては警戒していて、ルフィにそうだと疑われてパニックになってしまっただけだろうから、私は気にしていない。そういうことにした。まあ、でも……最後はちょっと苦しいかな?
「ウタがそう言うならおれはいいよ」
いいんだ。
ルフィもちょっと悩んでたけど、私がここで大事にしたくないと思っていることを汲んでくれたみたい。
「……?」
私に庇われて、事態が飲み込めずにきょとんとしている"幼馴染みさん"を見たら、つい笑いがこみ上げてしまった。声は出なかったからルフィには気付かれなかったみたいだけど、彼女からははっきり見えただろう。
"幼馴染みさん"は、一瞬だけ怖ろしい目で私を見たと思ったら、すぐにそれを抑え込んだのか、笑顔で私達から離れていった。「安心した! もう私が見守っていなくても大丈夫だね」なんて心にもないことを言ってたけど、目の奥で燃える憎しみが私にははっきりとわかった。
うん、いい感じに火は付けられたみたい。あとは爆発するのを待つだけかな。 - 31◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:20:25
それからは、正真正銘2人だけのデートをした。
「ありがとな! 今日は楽しかった!」
笑顔のルフィ。私も、本当に……本当に、楽しかった。だから、つい魔が差しちゃったんだろう。
「ルフィ先輩。私も、今日はとっても楽しくて……その。仮の、じゃなくて、本当に付き合ってくれませんか」
言ってしまった。本来なら、あの女を排除した後にするつもりだったのに。いくらなんでも急すぎるし、不自然だ。いくらルフィでもこれは――
「いいぞ!」
いいんだ。
それにしてもルフィ、異様に私に甘くない?もうちょっと渋ってもいいと思うけど。私のこと好きなの?いや好きじゃなきゃOKはしないか。記憶はないはずだけど、でも―― - 32◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:21:23
「ウタ?」
あれこれ悩んでいたら、ルフィが不思議そうな顔で見てた。いけない、とにかく返事をしないと。
「ありがとう! 正式な恋人としてもよろしくね、ルフィ!」
あっ、違う!しまった、つい素が出ちゃった!言い直さなきゃ!
「え、ええと……すみません、間違えました! よろしくお願いします、ルフィ先輩!」
「ん~……さっきの方がしっくりくるな、おれ。呼び捨てでいいよ」
――しっくりくる?これは、もしかしたら、もしかするかも。
「じゃ、じゃあ、これで……うん。改めてよろしくね」
「ああ! よろしくな!」 - 33◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:28:09
7.
翌日、ルフィは1人で学校に来た。アレは今日休んだらしい。ショックで休んだのか、それとも……なんて。意外と早かったな。多分すぐに決着がつくだろう。
堂々と教室まで迎えに行って、一緒にお昼を食べた。私がルフィを呼び捨てしているのを聞いた隣の席の先輩が、なんだかギョッとした顔をしているのが少し面白かった。
帰り道、フードを目深に被った人影が隠れているのが見えた。気付かないふりをして歩く。スマホでルフィに連絡するのは忘れない。
『変な人が後ろから着いてきてる』
『すぐいく! まってろ!』
通知音は消しているし死角になるようにしてるから、後ろからはわからないはず。GPSの位置共有アプリは、昨日のうちに入れてある。あとは適当な場所で、言い訳出来ないようにしてしまおう。
順調に進む計画に鼻歌を歌いながら、繁華街から路地裏に入る。ここなら多少は人目を避けつつも騒げば誰かが気付くだろうし、ここまで人通りの多い道を通ったから、監視カメラにも"私をつけ回す不審な人間"はバッチリ映ったはず。私が曲がり角に着いたあたりで、後ろから声がかかった。
「そこで止まって」
「~♪ ……なんですか?」 - 34◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:29:17
立ち止まって振り返り、"謎の人影"に問いかける。本当は、誰が何の用事で来たのかなんて全部わかってるんだけど。そいつは顔を隠しながら、私に要求を突きつけてきた。
「ねぇ、ルフィに近付くのやめてよ」
なんというか……芸がなくて、つまらない。軽くため息が漏れる。
「はぁ……あなたにそんなこと言う権利はないと思いますけど」
「あるよ、だって私は――」
ああ、それか。完全に先が見えてしまったので、聞くのも面倒になって遮る。
「『ルフィの幼馴染みだから』ですか? だから何、としか思いませんよ。私、もうルフィの彼女なんですから」
私がそう言うと、怒りの気配が強くなった。フードの下から鋭い眼光が見える。
「仮の、でしょうが! ルフィを呼び捨てにするな!」 - 35◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:31:28
声を荒げて言ってくるけど、まるで怖くない。それに本格的にキレさせるまではまだちょっと足りなそう。なので煽ってやることにする。
「あれ、知らなかったんですか? あのあと正式にお付き合いすることになったんですよ。呼び捨てもルフィからOKもらってますし」
予想もしなかった発言だったのか、そいつはさらに激昂した。鞄をごそごそと漁って、包丁を突きつけてくる。
「ふざけるなっ! ルフィは私と付き合うんだ……結婚するんだ!!」
あまりにも確信に満ちた言葉に、私は困惑した。本当にわからない。
「どうして? 恋人でもなければ、結婚の約束をしたわけでもないんでしょ?」
ずっと何もしてこなかったのに、どうしてそこまで自分の"権利"を信じられるのか、それが私にはわからない。
私の半ば本気の困惑に、そいつも一瞬ひるんだみたいだった。少し考え込んで口を開くと言った。
「それは、私が幼馴染みだから」
「うん、それはもう聞いたけど。それで? 幼馴染みだから、それが何?」
もう一度問いかける。どうして"幼馴染み"のあなたは、ずっとルフィの一番近くにいられると思ってるの? - 36◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:32:22
「私の方が、あんたなんかより、ずっと前から好きだったんだから!」
――ああ、うん。それでいいんだ。あなたが私より上だと思っているところは……すがれるものは、本当にそれだけだったんだね。それだけを頼りにして、今までなにもしてこなかったんだ。なんだか、とてもがっかりしてしまった。
「……好きになるのが早かったほうが優先? あはは、よかった。じゃあ私の方が上だ」
「あんた、何を言って――」「あっ……ごめんね、時間切れみたい」
スマホのバイブレーションで、ルフィがすぐ近くにいることがわかった。両手を揃えて、"ごめんなさい"のポーズ。
私がルフィの姿を見たのと、女が私の喉に包丁を突きつけてきたのは、ほとんど同時だった。
「だから、わかるように説明しろって言ってるんだけど! あんまり調子に乗ってると、ご自慢の喉を台無しに――」
「――ウタァ!! ……何やってんだ、お前ェ!!」
完璧なタイミングで、ルフィの声が狭い路地裏に響き渡った。はい、おしまい。 - 37◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:34:16
背後からの声に焦った女は、ルフィに顔を見られる前に逃げようとする。でも、そうはさせない。
「逃がさない」
包丁を持っていた方の手首を掴む。
「よし、捕まえた!」
すぐさま駆けつけてきたルフィが、後ろから彼女を羽交い締めする。詰みだ。ルフィの力を、そんじょそこらの女子が振りほどけるはずもない。これだけ騒げばそろそろ人も集まってくる頃だろうけど、先に通報だけしてしまおう。そう思って、目を離した時だった。
ブス……となにか鋭いものが肉を斬り裂くような音。少し遅れて、ぽたぽたと血が落ちる音もした。振り向くと、血に濡れた包丁が光を反射して輝いていた。ルフィに抑え込まれながらも必死で暴れた女が、ルフィの顔に包丁を突き刺したんだ。
「――このっ!」
私が呆然としている間に、ルフィの手で包丁は弾き落とされて、女をうつ伏せに抑えつけていた。
騒ぎを聞いた野次馬がやって来て、その中の誰かの通報によって警察官もやって来た。
――これで、終わり。でも…… - 38◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:35:35
8.
私のせいで、ルフィを傷つけてしまった。左目のすぐ下を刺されたみたい。
不幸中の幸いというべきか、視力や神経には違和感もないようだったけど……あの時私がしっかり包丁を確保していれば、ルフィが怪我することはなかったのに。
私が謝ろうとしたら、先にルフィが私の方に声をかけてきた。
「ごめん、ウタ」
――えっ、どうしてルフィが謝るの?悪いのは私なのに。
「謝るのは私の方でしょ! 私のせいでルフィにケガさせちゃって……」
私がそう言うと、ルフィはにかっと笑った。傷の痛みなんて感じさせない笑顔で。
「そうじゃなくてよ。おれさっき、やっと思い出したんだ。ウタはあの最初から覚えてたんだろ」
「思い出したって……まさか!?」 - 39◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:36:19
突然のことに信じきれない私に、ルフィは説明してくれた。
「ああ、この傷のおかげかもな! あっちと同じ場所だしよ! あれはおれが自分で刺したんだけどさ」
「えっ、それ初耳なんだけど! 自分でやってたの!? なんで!?」
あの傷なんだろ、って思ってたけど自傷とは思ってなかった。えっ、本当になんで?
「それは今はいいだろ。――久しぶり、ウタ」
まあ、確かに今する話でもないか。私たちは、15年以上ぶりに再会したんだから。これまでのことは、これからたくさん話していける。
「――うん。久しぶり、ルフィ。これからもよろしくね」
「おう!」 - 40◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:37:20
――さようなら、"幼馴染み"さん。こんなことを言うのもどうかと思うけど……幼馴染みって立場にあぐらをかいて、ルフィに誠実に向き合わないでいてくれて、本当にありがとう。
- 41◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 20:40:30
- 42二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 20:42:38
お疲れ様でした。
もっと1つ年下としての立場を利用して甘えるウタちゃんを見たいと思いました - 43二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 20:47:18
乙です。
作者のヤンデレウタがまた見れるなんてラッキーです。 - 44二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 20:49:01
ヒェ
- 45二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 20:51:16
終わっちゃった…
- 46二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 20:52:41
かのじょさんがNGなのは女-さんがNGワードだからやね
家庭板とかの煽りとかで使われてるのでここでも禁止になったっぽい - 47二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 20:54:16
お疲れ様でした!
ウタの行動力やっぱすごい
新時代キーホルダー、依頼か自作かわかんないけど重いもの作ってるなあ、好き - 48二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 21:13:01
行動力の塊で怖い…ポロッ
だがいいのだウタはちょっと好意こじらせて病んでるくらいがちょうどいいのだ - 49◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 22:14:35
みなさま、感想ありがとうございます。
やたら変わり種の展開にしたくなる性があるのでいろいろと不安でしたが、楽しんでくださる方が多くいらして嬉しく思います。
年下ウタちゃんの魅力の出し方に関してはもっと完成度を上げてまた挑戦したいところもありますね。
それとせっかくなので、おまけでルウタほのぼの短編を投稿しようと思います。 - 50二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 22:18:06
おぉ
- 51◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 22:19:45
おまけ:ルフィのクラスメイトのお話
「こんにちは! ルフィ先輩いますか?」
その子と初めて話したのは、ある日の昼休みのことだった。おれの隣の席のルフィに用があったらしい。初対面なのに見覚えがあると思って顔をよく見て気付いた。"あの"UTAだ。
そんな有名人がルフィに何の用かと思ったら、昼食を一緒に食べようと誘いに来たんだと。なにやら鍵を落として困っていたとこを助けて貰ったとかなんとか。なんだアイツ、恋愛漫画の主人公みたいな出会いしやがって。うらやましいヤツ。
昼休み開始直後に学食に行った、って教えたらダッシュで追いかけていった。
それからは約束を取り付けたのか、かなりの頻度でウタちゃんが迎えに来ては仲睦まじげに教室を出て行くようになった。
「せんぱーい、私が来ましたよ!」
「ああ、じゃあ行くか!」
いいなぁ……おれもルフィみたいに、あんなかわいい後輩に「先輩、先輩」って慕われてェよ。 - 52二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 22:19:53
前作含めてこのSS好きだぁ
- 53二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 22:49:11
モブ視点まであるとは何てお得なんだ
- 54◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 23:01:09
「こんにちは先輩! ルフィ、どこですか?」
呼び方が変わったことに気付いたのはそれからしばらく後の月曜日のこと。金曜日の時点じゃ今まで通りだったから、土日に何かあったとすぐにわかった。
先生から荷物運びの手伝いを頼まれてる、と伝えると「じゃあここで待ってます」と自然にルフィの席に座った。
机に置かれた包みが少し気になっていたらウタちゃんが教えてくれた。付き合い始めた記念に、お弁当を作ってきたらしい。……か、彼女の手作り弁当!?なんてうらやましいヤツなんだ、あいつ。それにしても、3年生の彼女がいたような気がするが別れたんだろうか。
どこで食べる気か、と聞いたら特に決めていないとのこと。ルフィが戻ってくる頃には中庭も屋上もいっぱいになっているかもしれないので、おれが席を譲ってやることにした。
決してできたてカップルのいちゃいちゃを見るのが苦しいからではない。おれはもうお腹いっぱいだからいいのだ。本当だ。
それからの2人は、なんというか、長年一緒にいた幼馴染みのような遠慮のなさになっていった気がする。勝負?もなにやら200回以上してるみたいだし。
「今日はサンジさんから教えてもらった"海賊弁当"だよ!」
「おお~! うまそうだ!」
「ふふっ、じゃあ食べようか」
いいなぁ……おれもルフィみたいに、あんなかわいい彼女といちゃつきてェよ。 - 55二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:04:38
まさかサンジにも記憶が……?
- 56◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 23:08:02
「こんにちは先輩! バカルフィはどこ行きました!?」
……なんだか最近、2人の力関係が変わってきてる気がする。ウタちゃんの笑顔は相変わらず輝いているし、おれへの態度は親しくなりはしても礼儀正しいいい子のままではあるのだが、ルフィに対してだけはこう……なんというか、"姉さん女房"みたいだ。
あのルフィが、自由の象徴みたいな男が、見事に彼女の尻に敷かれている。それはなかなかに新鮮味のある光景だった。ルフィもルフィで、軽くイヤそうなポーズは取るものの、最終的には受け入れることがほとんどだ。
とはいえ、ひたすら上から抑えつけるようなものではなく、なんだかんだでルフィを立てるようにしていることがわかる。だからこそ、いい感じの関係で安定しているんだろう。
ルフィに対して、ウタちゃんは年上と年下の両方の性質を持つ……本当にうらやましいヤツだ。
「私に言わなきゃいけないことありますよね……ルフィ"せ~んぱい"?」
「ごめんなさい」
「うん、よろしい。じゃあ行くよ、ルフィ」
「はい……」
いいなぁ……おれもルフィみたいに、あんなかわいい年下のお姉さんの尻に敷かれてェよ。……あれ? - 57◆aaldx2uZMxoT22/12/10(土) 23:27:09
おまけは以上ですね。
ウタちゃん三変化でなにかが歪んでしまったクラスメイトくんでした。
サンジに記憶があるのか、単にウタがサンジの教えベースで作ったお弁当が海賊弁当なのかはご想像にお任せします。 - 58二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:28:03
年下の姉フェチかあ…
- 59二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:36:40
好き
- 60二次元好きの匿名さん22/12/11(日) 01:02:49
めちゃくちゃ良い、かわいい
- 61二次元好きの匿名さん22/12/11(日) 04:32:39
年下の姉はいいぞ
- 62◆aaldx2uZMxoT22/12/11(日) 13:26:57
例によって、まとめたものをPixivにも投稿しました。
NG避けを戻したこと以外はほぼ変わりませんが、よろしければどうぞ。
#4 さようなら、本当にありがとう。 | ヤンデレウタ - カニチリの小説シリーズ - pixiv0. 「う、うーん……どこ行っちゃったんだろうなー、鍵……」 「なあ、もしかして探してたのコレか? すぐそこに置いてあったぞ」 うずくまって探しものをする少女に、後ろからかけられた声。振り向くと、黒髪の少年がそこにいた。その手には、キーホルダーのついた鍵がぶら下がっている。 「そ、...www.pixiv.net - 63二次元好きの匿名さん22/12/12(月) 00:40:51