わたくし、トレーナーさまに嫌われたかもしれませんわ~……

  • 1◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 22:59:07

     スキンシップが激しい子、というのがいる。
     男女ともに存在するが特に顕著なのは女の子だろうか。ふざけて抱き着き合ったりなど。
     男同士だとやめろよ気持ち悪い、となりがちだが女の子同士だと意外とそうでもないと思う。

    「トレーナーさま~♪」

     俺の担当ウマ娘であるメジロブライトは……そのスキンシップが激しい寄りの子だった。
     トレーナー室にやって来たかと思うと、棚の書類を整理していた俺の右腕に、腕を組む要領で抱き着いてくる。
     正直ここまで慕ってもらえているのは嬉しい。嬉しい、が。抱き着かれている腕に、制服越しとはいえ胸が押し当てられる。

    「~っ!」

     たまらず腕に抱き着いてきたブライトを引き剥がす。もう少し自分が年頃の女の子だっていう自覚を持って欲しいんだけど!?

    「……ブライト」
    「ほわぁ?」
    「俺も一応男なんだけど」

     ……マズい。そんなつもりはなかったのに、驚くほど冷たい声が出てしまった。
     言の葉がトレーナー室に響いた瞬間に後悔するも、ブライトの瞳からじわぁと涙が滲む。
     ただ身体は突然の出来事に反応しても、頭では状況を理解できていないのか、依然として硬直したままだ。

    「ご、ごめん! こんな冷たい言い方をしたかった訳じゃないんだ……」

     目の前でぽたぽたと涙を流す彼女へ必死に謝る。ああ……! 別に怒るつもりじゃなかったのに……!

    「申し訳ございませんでしたわ、トレーナーさま……」
    「ごめん! ちょっと抱き着くのを控えてもらいたかっただけで怒ってるつもりはないんだよ!」

     ぐすっ、と。鼻を啜る彼女を宥める事に精一杯で、今日のトレーニングの時間は終わってしまった。

  • 2◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 22:59:19

    「なにやってんのお前」

     あの日以降、ブライトの様子がおかしい。
     注意した通り、スキンシップは控えめになった。……いや、控えめどころか全くなくなった。
     それだけならまだ良かったのだが、声を掛けるとどこか一瞬怯えた素振りを見せる。

    「嫌われたんじゃないのか?」
    「やっぱりそう思うよねぇ~……はぁ~……どうしよ……」

     一人悩んでいても仕方ないと、昼食の時間を利用して同期のメジロドーベルのトレーナーへと相談を受けてもらう事にした。
     同じメジロ家のトレーナーという事と。共にトレーナーとして研鑽しつつ、同い年な事もあって仲良くさせてもらっている。

    「取り合えずお前が悪い、それは」
    「そんな事は分かってるよ……大体自分でもキツイ言い方をするつもりなんて全然なかったんだからさ」

     本当に、あの時出した声は今でも信じられない。何故キツイ言い方をしてしまったんだという後悔と、自分にあんな声が出せたのかという驚愕。
     やんわり、女の子なんだから抱き着くのは控えてねくらいのニュアンスで言おうと思っていたのに。

    「普通に謝ればいいんじゃないのか?」
    「それくらいはもうやってるって。だけどどうも元気がないというかさ……」
    「元気がないのはお前も一緒だけどな」

     メジロドーベルに対して見せる気遣いはどこへいったんだと言わんばかりの辛辣な言葉が突き刺さる。
     傷心してるんだからもう少し労わった言葉をかけてくれてもいいだろう……?

    「大体別に注意するほどの事でもないだろ」
    「するよ! 年頃の女の子に会うたびに抱き着かれてたら心臓が持たない、って!」
    「ふ~ん、そっか……」

  • 3◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 22:59:30

     自身に当て嵌めて考えて欲しい……! 君だって自分の担当から毎日抱き着かれたこうなるに決まってる!

    「まあお前がどう思ってるかはいいよ。で、解決策を考えてくれと?」
    「出来れば……」
    「まあいいけどさぁ……そうだなぁ……」

     昼食を食べる手を休めて、顎に手を当て熟考を始める。すると何かを閃いたように口を開く。

    「なあ。それって必要以上に遠慮しちゃってるんじゃないか?」
    「遠慮?」
    「そう。ブライトにとってはお前の腕に抱き着くのって当たり前のスキンシップだった訳だろ? それが咎められてどうすればいいのか分からないんじゃないか?」

     どうすればいいか分からない? どうするも何も普通に言葉を交わせば。

    「抱き着かなくたって別に普通に」
    「そこだよ。あの子にとっての普通は抱き着く事だったんだよ」

     ブライトにとっての普通、か。とはいえ一般的な感覚としては年頃の女の子が無警戒に大人の男性へと抱き着くのは些か非常識じゃないだろうか。
     いくら甘えるのが上手な子とは言え。彼女の感覚したら親戚のお兄さんにじゃれているようなものなのだろうか。

    「聞いてる感じ挨拶も兼ねて抱き着いてきてた訳だろ?」
    「まあ、最近はそうだね」
    「……最近? まあいいや。お前から示してあげないと。あの子ずっと迷子になったままだぞ?」
    「迷子……」

     そうか……。ブライトからしたら挨拶みたいなものだったのに、それを拒否したことによって急に距離感が分からなくなってしまったのか。

  • 4◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 22:59:41

    「甘え上手な子だからそれを拒絶される事には慣れてないんじゃないのかな……」
    「そっ、か……」

     自分の担当ウマ娘ではないのに、話を聞いただけでそこまで推察が出来る察しの良さには恐れ入る。
     ブライトがメジロドーベルと特に仲がいいから、ある程度人柄を把握しているのも多少は関係しているだろうが、俺だけだと行き詰まってしまっていた。

    「仲直りするなら早めにしておけよ?」
    「いや! だからそれをどうやればいいのか相談してるんだけど!?」
    「お前が今後も抱き着いても大丈夫だよ、って言えばそれで終わりだろ? めんどくさいな」
    「問題あるよ! 心臓が持たない、ってさっき言ったじゃないか! その方向性はなしだ!」
    「ワガママな奴だなぁ」

     ブライトにとっては挨拶みたいなものとは分かったとは言え。会うたびに抱き着いてくる事は容認出来ない。
     やはり年頃の女の子が年上の男性に対してする行為だとは思えないし、そんな日々が続いて俺が耐えられると思えない。

    「なぁ。なんで抱き着かれるのがそんなに嫌なんだ?」
    「そりゃ女の子に抱き着かれたらドキドキするでしょ」
    「本当に、それだけか?」

     スッ、と。瞳の奥を見据えるような鋭い眼差しが突き刺さる。

    「それだけ、だけど」
    「はぁ……自覚なしか……」

     呆れたように溜息を零す。考えが全く読めない。君は俺に何を問おうとしてるんだ?
     そうして水を飲んで一息ついたかと思えば。

  • 5◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 22:59:52

    「お前、好きなんじゃないの? メジロブライトの事」

     訳の分からない事を宣った。

    「はぁ……? 何をいきなり……そりゃ担当の事が嫌いなトレーナーなんていないでしょ」
    「いや、そうじゃなくて。女性として」
    「……はい?」

     俺が? ブライトの事を? 女性として好き?

    「いやいやいやいや、ないでしょ。だって相手はまだ学生だしさ。それにメジロ家のご令嬢だよ? 俺なんかとは釣り合わない、って」
    「それ、お前が彼女の事を好きな否定にはなんにもなってないぞ?」

     うぐっ……! 確かに今挙げた事柄は否定材料と言うには相応しくないかもしれない。だからと言って女性として意識してる証拠も不十分だ。

    「抱き着かれたらドキドキするんだろ?」
    「ブライトに限った話じゃなくない? それは」
    「そうか。俺もメジロブライトには抱き着かれた事あるけど特にドキドキはしなかったけど」
    「は?」

     軽口のように放たれた言葉を聞いた瞬間。自分以外の人にもやっているという落胆と、目の前の人間にメジロブライトという女の子が軽視されたという赫怒。
     頭に急速に血が上っていくのが感覚的に分かる。自分の目つきが据わったものになっているという事が、鏡など見なくても理解出来た。

    「冗談だ。あの子が誰彼構わず抱き着くような子じゃないのはお前が一番知ってるはずだろ? 大体女の子相手でもそうするのってお姉さまって慕ってるライアンくらいだぞ? 俺が知ってる限り」
    「っ!」

     一瞬にして昇った頭の血に、冷や水を浴びせられる。なんで俺はブライトを疑うような事を考えてしまったんだ。

  • 6◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:00:06

    「たちの悪い冗談を言ったのは謝るよ、悪かった」
    「いや、俺の方こそごめん……」

     カッとなってやっと気づいた。そうか、嫌だったんだ。あまりにも当たり前のように抱き着いてくるから、自分以外にもやってるんじゃないか、って不安になって。それで、あんな冷たい言い方を。ようやくあの日の自分の発言が腑に落ちた。

    「もう否定するのも苦しくないか? 流石に普通の担当ウマ娘ってだけであんな怒り方しないだろ。というか俺も内心ビビったよ」
    「……そういうことなのかな、やっぱり」
    「客観的に見たらそう見える。まあ周りには気づかれてないと思うけどな」

     それに気づく君は何なんだとも思うけど。

    「まあそういう事なら俺からも何か出来ないか考えとく」
    「ありがとう、助かるよ……」
    「同じメジロ家のトレーナーのよしみだしな。それにブライトが落ち込んでたらドーベルだって心配するから。気にするな」

     なんだかんだ言いつつ、自分の担当の為という理由を付けて引き受けてくれるあたりが優しい奴だと思う。

  • 7◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:00:17

    ~Bright's View~

     お休みの日の昼下がり。学園近くの喫茶店にてドーベルとお茶会を開いております。わたくしが、相談事をしたかったので。

    「わたくし、トレーナーさまに嫌われたかもしれませんわ~……」
    「嫌われた、って……一体何をしたらそうなるのさ」

     トレーナーさまの腕へと抱き着くという、挨拶のように交わしていたスキンシップ。あの日突然それを拒絶されてしまいました。
     そしてその時の声音がとても冷たくて。わたくしの知ってるトレーナーさまの、お日様のような温かい声音とは正反対の冷たいもので。
     思い出しただけでも涙が溢れてしまいます。どうしてあのような事になってしまったのでしょう……。

    「ちょっと!? 泣かないでよっ……」

     わたくしの涙に呼応するように、ドーベルも泣きそうな顔になっております。ドーベル自身が悲しい思いをした訳ではありませんのに。
     わたくしの為に共に悲しんでくれるなんて、やっぱり優しい子ですわね。
     しばらく感情のままに涙を流した後、落ち着いた頃合いを見計らってドーベルが喋りかけてくれます。

    「ねぇ。取り合えずなんでそうなったのか教えてくれない?」
    「そうですわね……今週の火曜日、いつも通りトレーニングに行く前にトレーナー室へと向かったのです」

     あの日の出来事を、出来るだけ詳細にドーベルへと伝えます。すると次第に顔つきが怪訝なものへと変わっていきます。

    「なるほどね。……取り合えず一言いい?」
    「はい、お願いいたしますわ~」

     こほん、と。ひとつ咳払いをしてから事の裁断が下されます。

    「それはブライトが悪いよ」
    「そうです、わよね~……」

  • 8◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:00:27

     分かってはおりましたが。ドーベルの目から見てもわたくしが悪かったようですわ。

    「ブライトのトレーナーもさ。毎日毎日そうやって抱き着かれてたら困っちゃうよ」
    「やはり、そうだったのですね~……」
    「うん。だって付き合ってもない男の人に抱き着くなんてさ。普通に考えたらおかしいと思う」

     トレーナーさまはお優しい方ですから。あの日までは何も言われませんでしたので、おかしな事をしているとは思っておりませんでした。
     けれどドーベルの口振りからすると、どうやらわたくしははしたないことをしていたようですわね。

    「まあ皆が皆スキンシップが得意な訳じゃないしね。アタシだって別に得意ではないし」
    「トレーナーさまもそうだったのでしょうか?」
    「それはアタシには分からないけど……でも引き剥がして来た、って事は得意ではないんじゃない?」

     知らず知らずのうちにトレーナーさまが嫌がるような事をしていたなんて。やっぱり嫌われてしまったのでしょうか……。

    「ちょ、ちょっと、また泣きそうにならないでよっ。嫌いになったわけじゃないと思うからっ」
    「でもトレーナーさま、とっても冷たい声で怒ってましたのよ?」
    「それは謝られたんでしょ? そんなに怒るつもりじゃなかったって。わざわざそんなことで嘘つかないでしょ」

     確かに、引き剥がされた後にすぐに謝られましたわ。怒ってるつもりはないとも。
     けれど、あの冷たい声が頭にこびり着いてしまって離れません。本当は、わたくしの事など嫌いになってしまわれた。
     もしくは、最初から嫌いだったのかもしれないと。そんなはずはないのに、不安になって仕方がないのです。

    「その日の事はどうにもならないけどさ。最近はどうなの? 前と様子が違ったりするの?」
    「いいえ~。以前と変わりありませんわ~」
    「それなら本当にもう気にしてないんじゃないの? それよりもブライトの様子がおかしい方が気にしてるかも」
    「わたくし、そんなに変でしょうか~?」
    「うん、すぐ分かるくらいには変」

  • 9◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:00:37

     そんなに分かりやすく態度に出てしまっているのでしょうか。

    「……あのさ。ひとつ確認しておきたいことがあるんだけど」
    「ほわぁ? 確認したいこと、ですか?」

     なんでしょうか? 今話せる事は全てお話したのですが。

    「ブライト、トレーナーのことが好きなの?」
    「トレーナーさま、ですか? 勿論好きですわ?」

     わたくしの為に親身に尽くしてくれるトレーナーさま。嫌いになるはずなどありませんわ。
     それはわたくしに限らず、全てのウマ娘に当てはまる事だと思うのですが。ドーベルは違うのでしょうか?

    「そうじゃなくて。男の人として、って意味」
    「殿方として……」
    「そう。だってブライトさ。女の子相手にも別に誰彼構わず抱き着いてる訳じゃないでしょ?」
    「考えたこともありませんでしたわ〜」
    「えっ、そうなの……」

     抱き着く相手を選んでるだなんて、考えたこともありませんでしたわ。
     ライアンお姉さまやドーベルは姉妹のようなものですから。抱き着くのが特別なことだとは思いませんわ。
     けれどクラスの方たち、トレセン学園のみなさまには……。

    「アタシやライアンにやるのはまあ分かるけどさ。けどそれ以外の仲のいい子達にはやらないのに、トレーナーにはやってるんだもの。少しは疑りたくなっちゃうよ」
    「ほぁ……」

     どうしてでしょう。胸の奥がポカポカと暖かくなります。トレーナーさまの声、笑顔、抱き着いた時に感じた体温。
     わたくしとは違う、逞しい体付き。そのどれもが思い出すだけで、陽だまりのような温かさをわたくしにくれます。
     ああ、そうですわ。わたくし、トレーナーさまのことが。

  • 10◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:00:47

    「ドーベル」
    「なに?」
    「わたくし、トレーナーさまのことが好きみたいですわ~」

     日差しに当てられたように。頬が熱くなってしまいます。それにトレーナーさまへの恋慕を自覚した今、今まで行ってきた事を思い出すと。

    「わたくし、と~っても、恥ずかしいことをしていたのですわね〜……」
    「あっ、やっと気付いたんだ……」

     何故わたくしはあのようなことが出来ていたのでしょう。したくなった理由はよく分かりましたわ。
     好きな殿方に甘えたかったのだと思います。けれど恥じらいもなく抱き着くことは、今は到底出来そうにもありません。

    「わたくし、どうすればよいのでしょう?」
    「う〜ん。別に嫌われてる訳じゃないと思うから今までの態度を謝ったらそれで済むと思うんだけど」

     そうですわね。まずは今までの非礼をお詫びしませんと。それから……。

    「告白、した方が良いのでしょうか~?」
    「は!? えっ!? 気が早くない!?」

     確かにトレーナーさまの気持ちを確かめてから想いを告げる方が安全なのでしょう。
     けれどトレーナーさまは素敵なお方ですから。のんびりしていましたら別の素敵な女性にとられてしまうかもしれませんわ。ですので、気持ちだけでも伝えておきませんと。

    「……凄いね、ブライトは」
    「ほわぁ?」
    「だってアタシには無理だもん、絶対に」

  • 11◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:00:57

     あら? やっぱり、ドーベルもトレーナーさまの事がお好きなのでしょうか?
     直接聞いたことはございませんが、今の口ぶりからすると恐らく間違いないと思いますわ。

    「ドーベルも、トレーナーさまのことが好きなのですか?」
    「いやっ、違っ! アタシはそんなんじゃ……」

     まあまあ。頬を真っ赤に染めて。やっぱりドーベルは可愛らしいですわね。

    「ふふふっ♪ わたくしとお揃い、ですわね~♪」
    「そういうのはお揃いって言わないんじゃ……って! アタシは違うからね!?」

     今はそういうことにしておきましょうか。素直じゃないですものね、ドーベルったら。

    「それよりも! ちゃんと謝るのが先でしょ? どうするの?」
    「休み明けにお詫びしようかと」
    「まあそっか、そうなるよね。……ブライト? 電話鳴ってるよ?」
    「あら~? どなたでしょう~?」

     バッグから携帯を取り出して、着信画面を見ますと、表示されていたお名前は。

    「トレーナー、さま?」

  • 12◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:01:19

    ~Trainer's View~

    「え? ブライトとデートに行って来い?」

     土曜日の昼下がり。唐突にトレーナー宿舎の俺の部屋にメジロドーベルのトレーナーが訪れたかと思うと「デートに行って来い」と開口一番に告げてきた。

    「ああ。遊園地のチケットは買ってきたから」
    「いやちょっと待ってちょっと待て!? 買ってきた!? 大体まだ気まずいままなんだけど!?」
    「だから行くんだろ。ほらこれ。俺から貰ったって建前もあるし、期限がどうのこうのって理由を付けたら来てくれるかもしれないだろ?」

     半ば押し付けるような形で遊園地のペアチケットを手渡して来る。確かに以前も似たような理由でお出掛けしたことがあった。
     ブライトが父親から貰ったチケットの有効期限が切れそうだったから、と。あの時は偶然街で出会ったからではあったけど。

    「いや、でも君から貰ったって聞いたらブライトは遠慮するんじゃないか? 十中八九ドーベルと一緒に行って来て、って言うでしょ」
    「……確かにな。まあ、俺の都合が付けれないって事にしておいてくれ」
    「はあ。でも本当に来てくれるのかな……」
    「話を聞いてる限りだと多分大丈夫だ。どうやって甘えればいいのか分からなくなってるだけだと思うから」

     本当にそうならありがたいんだけど。そういう事なら明日にでも誘ってみよう。別に本当に有効期限ギリギリって訳でもないし。今月末までだから来週でも十分ではある。

    「あっ、今から電話掛けろよ?」
    「今から!?」
    「じゃないとお前怖気づいて先延ばしにするかもしれないし」
    「いや、別に来週でも」
    「あのさぁ。来週の休日まで引っ張る気か? 向こうの都合が悪いとかで先延ばしにするならまだいいけど、一緒に出掛けたいって気持ちくらいは今日中に伝えられるだろ?」

  • 13◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:01:34

     確かに、それは一理ある。少なくとも何もしないで明後日の平日を迎えるよりも、一緒にお出掛けがしたいという事だけでも伝われば今週のような空気にはならないはずだ。
     しかしそんな逡巡すら彼をイライラさせる材料になってしまったのか、若干睨まれている。君、そんなに男に厳しい奴だったか……?
     いやまあ、担当を悲しませたくせに煮え切らない態度が気に食わないんだろうけど。
     携帯を取り出し一呼吸おいて、意を決して通話ボタンをタップする。少し長いコール音の後、通話が繋がった。

    「もしもし、ブライト?」
    『もしもし、トレーナーさまですか?』
    「うん、今電話大丈夫?」
    『はい、問題ありませんわ~。ドーベルとお茶をしておりますので~』

     メジロドーベルと? まあ彼女たちは仲がいいしそういう日も普通にあるか。

    「ああ、そうなんだ。それで早速要件を伝えたいんだけどさ」
    『はい、なんでしょうか~?』
    「明日、俺と出掛けてくれないかな? いでっ!」

     何か言いたげにメジロドーベルのトレーナーが横腹を軽く殴って、小声で囁いてきた。そこはデートって言え?
     無茶言わないで欲しい……俺だって自分の気持ちに気づいたのはつい先日の事だっていうのに。

    『お出掛けのお誘い、ですか? ええ、明日の予定は特にございませんので、構いませんわ』
    「そっか。良かった。え~と、待ち合わせはどうしよう。明日の9時半に駅前でも大丈夫かな?」
    『ええ。ところでトレーナーさま? 近くにどなたかいらっしゃるのでしょうか?』

     さっき横腹を殴られた時声を出しちゃったし流石に気づかれるか。まさか彼の声までブライトに届いてないよね? それは勘弁願いたいんだけど……。

    「え? ああ、メジロドーベルのトレーナーが」
    『まあ~。ドーベルのトレーナーさまでしたか。仲がよろしいのですね~』
    「ああ、うん。そうだね」
    『わたくしのトレーナーさまとドーベルのトレーナーさまが仲良しさんで、わたくしも嬉しいですわ~』

  • 14◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:02:15

     あれ? なんだか長電話になりそうな気配がする。メジロドーベルとお茶会してる、って言ってたし早めに切り上げよう。

    「ブライト、話は明日たくさん出来るだろうから今は切るね? ほら、メジロドーベルとお茶会してるんでしょ? あんまり待たせちゃ悪いから」
    『あら、確かにそうですわね。では、トレーナーさま。また明日、楽しみにしておりますわね~』
    「うん、また明日、よろしくね」

     通話を切り、彼の方を見るとどこか満足げな表情を浮かべている。

    「上手くいったみたいだな」
    「おかげさまで」
    「よ~し、ドーベル達もお茶会してたみたいだし俺たちもどっか遊びに行くか」
    「はぁ、別にいいけど」

     確かに、特に休日の予定があった訳でもないし、たまには同期と遊ぶのもいいかもしれない。

  • 15◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:02:30

    「飯おごれ飯」
    「はぁ!? ああ~、いやチケット貰っちゃったしいいけどさ」

     チケットを貰ってしまった手前、絶妙に拒否しにくい。いや、貰った事を気にさせない為の彼なりの気遣いかもしれないけどさ。

    「ちなみに焼肉な?」

     前言撤回。絶対にこいつが焼肉食べたいだけだ。

    「ちょっとは加減してくれない? デートをけしかけたのは君なんだけど?」
    「あの時ちゃんとデートして欲しい、って言っておけば考えたかもな?」
    「言えるわけないだろ!? そんな事担当に言えるの俺の知ってる限りだとメジロアルダンのトレーナーくらいだぞ!?」
    「俺も言えるけど。言ったらドーベルが恥ずかしがるから絶対言わないけど」
    「なんで……俺がおかしいのか……?」

     ちなみに彼が食べたお肉の量は、遊園地のチケット1人分くらいの金額だった。

  • 16◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:02:43

     そして日曜日である今日。待ち合わせた駅前へと向かう。いつもお出掛けする時は俺の方が着くのが早い。
     遅刻、とまでは言わないけど待ち合わせギリギリになってから到着するのがいつもの彼女だ。
     だからそれを見越して、五分前には着くように家を出たはずなのに。

    (えっ、嘘でしょ? ブライトの方が来るのが早かったの?)

     見慣れない、待ち合わせ場所で佇むブライトの姿が目に映る。彼女らしくない、腕に着けている時計をしきりに確認している姿に慌てて駆け寄る。

    「ごめん! お待たせ!」
    「あら~、トレーナーさま~。ごきげんよう。今日はわたくしの方が早かったですわね~♪」
    「そうだね、びっくりしたよ」

     数日前の、怯えた様子は今日は見られない。その事実に胸を撫でおろしながら、遊園地へと向かうため電車で移動し、開園時間を少し過ぎたくらいの時刻に到着する。

    「チケット、どなたからかいただかれたのですか~? お誘いが急でしたので~」
    「えっ、ああ、メジロドーベルのトレーナーから」
    「ドーベルのトレーナーさま、ですか? それであの時一緒に居られたのですね。いただいてもよろしかったのでしょうか~……」

     変に嘘を吐いても誤魔化すのが難しくなるだろうし、昨日彼が言った理由をそのまま使わせてもらう事にする。まあ一応有効期限は今月末ではあるから嘘って程嘘でもないし。

  • 17◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:02:56

    「有効期限も結構ギリギリで都合がつけられそうになかったんだって。それで」
    「まあ、そうでしたのね。ふふふっ、以前もこんなことがありましたわね〜」
    「そうだね。あの時はブライトが持ってたチケットで……」

     その時ふと思い出す。あの時のブライトは確か俺をエスコートしてくれようとしていたはず。それで普段は気にしないだろうに待ち時間をとても気にして。……なら。

    「トレーナーさま?」
    「前はブライトがエスコートしてくれたよね? だから今日は俺の番だよ」

     俺の手よりも一回りは小さいブライトの手を握る。
     そういえば彼からも昨日『手くらい繋いであげろよ』って言われてたっけ。
     普段ならしないであろう俺の行動に驚いたのか、こちらの顔をまじまじと見つめて来る。

    「なに?」
    「いえ、ふふふっ♪ なんでもありませんわ~♪」

     楽しげに笑いながら手を軽く握り返してくる。……そっか。ブライトからしてみれば、抱き着くのを拒否してきた俺から繋いでくれる事には大きな意味があるんだ。
     ティーンエイジャーでもあるまいし、流石にこれくらいで緊張したりはしない。
     だけど……ああ、どうやら俺は本当にこの子のことが好きみたいだ。どうしようもない、胸の高鳴りを覚えながら、園内へと並んで入っていった。

  • 18◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:03:08

    ~Bright's View~

     わたくしがエスコートした時とは違って、スムーズにアトラクションを巡る事が出来ています。
     思えばあの時は乗りたいアトラクションではなく、乗れるアトラクションを探していましたものね。結局、あまりたくさん乗ることは出来ませんでしたが。

    「ふふふっ♪」
    「どうかした?」
    「い〜え♪ トレーナーさまはエスコートがお上手ですのね」
    「あ、ありがとう。ちゃんと出来てるなら嬉しいよ」

     まあ、ご謙遜なさって。
     ああ、でも。きっとお上手でなくとも、わたくしの心はウキウキと弾んでいたのだと思います。
     だってトレーナーさまがわたくしを楽しませようとしてくださる、そのご厚意がなによりも嬉しいのですから。

    「不思議ですわね〜。以前ご一緒した時は待ち時間がもっと長かったのですが〜」
    「まあトレーナーだしね、一応。この手のスケジュール管理は得意分野だよ。空いてる時間は何時くらいか、とかは調べておいたから」

     なるほど。今日の為に準備してくださったから、でしたのね。

    「でも待ち時間自体はそんなに大きく差はないと思うよ?」
    「そうなのですか? トレーナーさまとなら一時間があっという間でしたので〜。列が進むのが早いのかと思っておりましたわ」
    「俺もそんなに待ち時間は苦じゃないな、とは思ってたよ」

  • 19◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:03:21

     どうしてか、頬を少し赤らめながら、恥ずかしそうに視線を逸らしながらポツリと呟かれます。

    「君と……ブライトと一緒だから。多分、それが理由」

     感じていた疑問が、すとんと腑に落ちます。一週間ほど、ちゃんとお話が出来ておりませんでしたから。
     トレーナーさまにお話したいこと、たくさんあって。もしかしたらわたくしは今、アトラクションそのものよりも、待ち時間を楽しんでいるのかもしれません。

    「わたくしも……わたくしもきっと同じですわ、トレーナーさま」
    「そっか」

     同じ気持ちで、同じ時を共に過ごせていますのに、どこかこそばゆいのは。
     きっとわたくしが、トレーナーさまに恋をしているからなのでしょう。この気持ちも、同じなのでしょうか?

    「これに乗り終わったら休憩しようか」
    「ええ、そうですわね」

     同じなら、嬉しいのですけれど。でも、同じでなくとも良いのだと思います。
     だってこんなにも暖かな気持ちにさせてくれるだけでと~っても、素敵なんですもの。

  • 20◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:03:31

    ~Trainer's View~

     少し休憩を挟んでいくつかのアトラクションに乗ると、次第に日が傾き始めている。
     帰る時間も考えると次に乗るアトラクションが最後になるだろう。

    「明日はお屋敷の方から学園に行くんだっけ? なら前みたいに門限の心配はいらないかな?」
    「ええ」
    「そっか。じゃあ、最後にあれ乗ろうよ」

     そう言って観覧車の方を指差す。待機列を見るに……待ち時間は1時間弱程だろうか。

    「うふふふっ♪ あの時と一緒、ですわね~」
    「まあ遊園地で最後に乗る物といったらね」

     今日一日を通して、気まずかった距離感はすっかり元に戻ったと思う。待ち時間が話をするのにちょうど良くて。
     今度メジロドーベルのトレーナーには改めてお礼をしなくては。彼、なんだかんだ言いつつブライトの分はチケット代を要求してこなかったし。

    (ああでも。変わってしまったものもあるかもしれない)

     彼がデートと言ったせいもあるとは思うけど。自分のブライトを見る目が変わっているのを明確に意識してしまった。
     表情豊かに輝く彼女の顔に、今日だけで何度目を奪われたか分からない。
     自分達が観覧車に乗る頃には、辺りは夜の色に染まり始めていた。ゴンドラが一番高いところに差し掛かる前に今日のお礼と、あの日の非礼を詫びる為に口を開く。

    「ブライト、今日一日ありがとう。久し振りにちゃんと話せて楽しかった」
    「ええ、わたくしも。数日お話出来なかっただけでも、お話したいことがた〜くさん、増えていくんですもの」
    「ブライトがたくさん話してくれたおかげで待ち時間もとても楽しかったよ」
    「ふふっ、そうですわね~。お話が出来ていなかった分、今日はたくさん出来ました♪」

  • 21◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:03:42

     良かった。誘う前は怯えさせてしまっていたから不安しかなかったけど。そんな事が気にならなくなるくらい今日は楽しかった。
     けど、それはそれとして。

    「それとあの日の事なんだけど改めて謝らせて欲しい。本当にごめん。あんなキツイ言い方をする気は全然なかったんだ」

     謝罪だけじゃ足りないだろう。恥ずかしくてもなんであんなことをしたか、説明してあげないと。今の俺は、その理由を理解しているのだから。

    「恥ずかしかったんだ。君に抱き着かれるように腕を組まれて。俺も男だからさ。女の子にああいう事をされたらドキドキしちゃうから」

     君が好きだからという理由は、伏せさせて欲しい。この言葉を告げられる日は、来るとしてももっと遠い未来だと思うから。

    「だからその……なんて言うのかな。これからは、控えてくれると嬉しい。俺も毎日されてたら心臓が持たないから」

     照れながらも、ちゃんと伝える事は出来た。

    「わたくしからも、お詫びをさせてくださいませ」

     ブライトから? 彼女が謝らなければいけないことなんてあっただろうか?

    「あの日からわたくし、トレーナーさまに対して失礼な態度を取っておりましたわよね。ちょっぴり、怖くなってしまっていたのですわ。トレーナーさまに、嫌われてしまったのではないかと」
    「そんな。それは俺があんな言い方をしたせいで」
    「いいえ。元はと言えば、わたくしがトレーナーさまに抱き着いていたことが原因ですもの。ですから、お詫びを。申し訳ございませんでしたわ」

     君が謝る必要なんてない。そう言おうと口を開く前に。

  • 22◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:03:52

    「……わたくし、好きな殿方に甘えたかったのだと思います」

    (──好きな殿方?)

     あまりにも自然に紡がれた言葉に、俺の言うはずだった言葉はどこかに消えてしまった。
     今、ブライトはなんて言った? 先の言葉を反芻するも、どう考えても俺の事を指しているようにしか聞こえない。いや、実際そうなのだろう。
     言葉を失い、返事すらままならない俺と目が合ったブライトが嫋やかに微笑む。
     それはいつもあどけない、少女のような可愛らしい笑顔を見せている子とは思えない、息を呑んでしまうような大人びた表情で。
     魅入られたように彼女から目が離せない。……いや、目が離せなくなっていたのは、ずっと前からか。

    「トレーナーさま」

     これから告げられる言葉がどういうものなのか、本能的に理解し、思わず居住まいを正す。

    「お返事は、まだしていただかなくても構いませんわ」

     もしかしたら、ブライトは昨日誘った時点で今日伝える事は決めていたのかもしれない。そう思ってしまう程に、淀みなく、言葉は紡がれていく。
     お返事はまだしていただかなくても構いません、か。

    「けれどこの気持ちだけは、今すぐにでも伝えておきたいのです」

     だけどブライト。返事はもう、決まってるよ。

    「いつの日からか、あなたさまの、陽だまりのような暖かさに心惹かれておりました」

     だって俺も、君と同じ気持ちだから。

    「わたくし、トレーナーさまのこと、お慕いしておりますわ♪」

  • 23◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:04:10

    みたいな話が読みたいので誰か書いてください

  • 24二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:04:34

    22レスに渡って紡がれたお話を我々に書けと!?

  • 25二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:05:27
  • 26二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:05:30

    目の前にあるんですよ

  • 27二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:06:17

    めっちゃ良かったです…好き…
    そこにあるじゃん!あるじゃん!

  • 28二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:09:03

    そこにありますね
    そしてボリュームすごいな!ブライト主役は初?

  • 29二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:09:17

    そこにある素晴らしいものに続ける奴がいるわけないだろ!!

  • 30二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:10:08

    あぁー、メジロにされてしまうぅぅ

  • 31二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:19:45

    次来る時はカップル割だな…

  • 32二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:21:49

    ほわぁ…?

  • 33二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:22:47

    pixivに投稿しろ
    ブクマするから

  • 34二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:27:39

    >>23

    が無茶なこと言ってるけど

    >>23

    が一番やばいことしてるのよ

  • 35二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:31:24

    我々に蛇足を書けと申すか

  • 36二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:32:45

    >>33

    (多分後日あげてくれるから待とう)

  • 37二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:32:53

    ふむ、感想としては、

    おい、続きどうした?止まったぞ?

  • 38◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:59:07

    ブライトに対するキュートアグレッションを抑えきれませんでした。
    一応着想自体はブライト冬ボイスのふわふわ雪合戦だったんですけど、当初これをドーベルにやらせてトレーナーからの矢印重めな話にしようと思ってたんですよね。
    結果は見ての通りなんですけど。
    正直このふたりクリスマスとかバレンタインのイベントでかなり先の事を約束しちゃうのでこの展開にするの苦しくない……?とも思ったんですが、ブライトがバレンタインの方で絆の方が強調して来ていたのでまあいっか、という事で結構ご都合主義的に話を進めています。

    反省点としてはブライトの特徴的な早食べさんとかの○○さんという言い方、ぽかぽかなどの副詞多めだったり、意外と発言内容自体はアルダンとかに近い詩人っぽい感じな事を全然活かしきれてない事ですかね……。
    後割と前作とシチュエーション似てる感じあるなぁ、という事。
    ここまで読んでいただきありがとうございました。

  • 39◆y6O8WzjYAE22/12/10(土) 23:59:49
  • 40◆y6O8WzjYAE22/12/11(日) 00:00:23

    >>33

    これ今からタイトル考えるんですよね……

    そのうち放り投げるのでお待ちいただければ……

  • 41二次元好きの匿名さん22/12/11(日) 00:16:19

    ラストの差し脚がエグすぎる
    好き

  • 42二次元好きの匿名さん22/12/11(日) 00:27:39

    長いのにズイズイと読み進めてしまった
    とんでもない追い込みだぁ…

  • 43二次元好きの匿名さん22/12/11(日) 01:12:38

    あー。ブライトが欲しくなる―。
    家にいるのはライアン、マックイーン、ドーベルの3人なんだけど、他の子も来てくれないかなぁ。

  • 44二次元好きの匿名さん22/12/11(日) 12:16:33

    あげ

  • 45二次元好きの匿名さん22/12/11(日) 21:34:56

    やっぱりドーベルの人だった
    いつもボリュームすごいのにスッと読めるのスゴいよね 今回も面白かったです

  • 46◆y6O8WzjYAE22/12/12(月) 01:33:53

    書いた自分が言うのもなんなんですけどトレブラ需要あったんですね(困惑)
    びっくりするほど見ないので

  • 47二次元好きの匿名さん22/12/12(月) 04:24:14

    so good

  • 48◆y6O8WzjYAE22/12/12(月) 14:25:27

    そういえば解釈諸々とか書くのを完全に忘れておりました。

    個人的にはこの作品で書いたように、ブライトは恋心を自覚したら取り敢えず気持ちだけは伝えてくる派です。
    お付き合いどうのこうのはこの段階では考えないんじゃないのかな、と。
    逆にドーベルは明確に将来のビジョンが浮かばないと絶対に告白してきそうにないな、って思ってるのでこの二人は告白する意味合いが全然違いそう。
    ブライトは告白≠お付き合い
    ドーベルは告白≒お付き合い
    なイメージがあります。

    後ブライトトレの人物像が割と分かりづらい……というかそれが理由であんまりブライトのトレウマを見ないんでしょうけど。
    取り敢えず描写を見てると流されがちな感じがあったのでそれっぽく書いてます。
    ブライトののんびりに付き合いがちだったり、そもそも仮トレーナーに流れでされちゃったり。
    ベルトレはスパダリムーブさせとけばいいので書くのめちゃくちゃ楽なんですけどね。
    スパダリっぽくはならないように、は意識しました。


    それと幕間的な話を思い付きはしたんですけどブライト全く出てこない、ドーベルとベルトレの話になる可能性が確実なんですけどいります……?
    正直ブライト出ないので書くか書くまいか迷ってるんですけども。
    いらなかったらこのまま落としてもらって大丈夫です。

  • 49二次元好きの匿名さん22/12/12(月) 18:43:12

    >>48

    主のスレなのだし、自由にしたらいいと思います。


    個人的には見たいと思ってます。

  • 50おまけ1/4◆y6O8WzjYAE22/12/12(月) 22:02:21

    「珍しいな、ドーベルからお茶に誘ってくれるなんて」
    「まあ、聞きたい事があったし」

     ブライトの相談に乗った翌日。
     気になったことがあったからトレーナーを喫茶店に呼び出した。

    「聞きたいこと?」
    「そう。あのさ、昨日ブライトのトレーナーと一緒にいたんだよね?」
    「ああ、そうだけど」
    「ブライトに電話させたの、アンタだよね?」

     気になっていたのは……なんでブライトのトレーナーが電話を掛けてきたタイミングでアンタが一緒にいたのか、っていう事。
     正直かなり怪しい。ブライトは今日トレーナーとお出掛けに行ってる訳だけど、何か一枚噛んでるような気がする。

    「……いや? 普通に遊びに誘ってただけだけど」
    「嘘。だってタイミングが良すぎるもの。大体おかしくない? 普通友達が遊びに来てるタイミングで担当に電話掛ける?」

     アタシが怪しいと思ったのは特にそこ。お出掛けに誘うのならわざわざ友達が遊びに来てるタイミングでするとは思えない。

    「はぁー……降参だ。ドーベルには誤魔化しが効かないかぁ」

     コーヒーをひと口飲み、ほっと一息ついてからトレーナーが喋り始める。

  • 51おまけ2/4◆y6O8WzjYAE22/12/12(月) 22:02:33

    「正解。あいつをけしかけて電話させたのは俺。多分だけどさ、ドーベルも昨日ブライトから相談受けてたんだろ? 最近トレーナーと上手くいってない~、とかで」
    「うん。よく分かったね?」
    「俺も昨日ではないけど昼飯食べてる時に同じような事相談されたんだよ。怖がられてるから何か解決策が欲しいって」
    「あっ、そうなんだ」

     なるほど。それであの時一緒にいたんだ。という事はお出掛け先を指定したのもトレーナーって事なの?

    「じゃあ遊園地に行く事に決めたのもトレーナー?」
    「まあ。朝から金券ショップはしごするの大変だったわ……」
    「え? アンタ昨日そんな事してたの? わざわざ?」
    「そりゃほっとけないだろ。あいつはともかく、ブライトはドーベルと仲良いんだからさ」

     男友達相手にそこまでしたという事実が恥ずかしいのか、アタシとブライトの為という事にしてしまうのはトレーナーなりの照れ隠しなのかな?
     ツンデレ、ってやつ?

    「でもなんで遊園地にしたの? 他の場所にしておけば朝からそんな事しなくても済んだんじゃないの?」
    「ほら、遊園地ってどうやっても待ち時間が出来ちゃうだろ? アトラクションの」
    「うん、そうだけど」
    「だからだよ。多分だけどギクシャクしてからしっかり話も出来てないと思ったから。列に並んでる間、会話でもしないと間が持たないしな」

     びっくりした。当事者でもないのに、そこまで考えて選んでいたなんて。それに遊園地のチケットなんて安いものでもないのに。
     友達の為にそこまでする行動力は流石というなんというか。

  • 52おまけ3/4◆y6O8WzjYAE22/12/12(月) 22:02:44

    「アンタさ、やっぱり人が良すぎるよね」
    「そうか? これくらいは普通だと思うけど」

     絶対に普通じゃない。アタシ相手にですら担当ウマ娘の為という理由では収まりきらない事をたくさんしてもらってるのに。

    「ううん、絶対普通じゃないよ。だって普通友達の為だからってそこまでやらないよ?」
    「いや、あいつの為というかドーベルの為というか……」
    「それ、結局人の為になってるんだけど」

     そのアタシの為ならセーフ理論、みたいな口ぶりはなんなんだろう。アタシの為でも十分人が良すぎると思うんだけど。

    「そうやって褒められると流石に照れるな……そんなつもりじゃなかったんだけど」

     珍しくトレーナーが照れる。でもアタシも似たような事はよく言われるし、その気持ちはなんとなく分かるかも。
     別に褒めて貰いたくてそうしてる訳でもないから。そうしないと自分が気持ち悪くなる、ってだけで。

    「ブライトたち、楽しんでるかな」
    「いい感じになってたら俺としては万々歳かな。両おも……」

     トレーナーが言葉を言いかけて、ハッとバツが悪そうな顔をする。両想い。両想い!?

    「えっ!? アンタブライトがトレーナーの事好きなの知ってたの!? そ、それに両想いって……」
    「……ふたりとも、ごめん」

     恐らくお出掛け中であろうふたりに向けた呟き。
     トレーナーとしては密かに応援するつもりだったんだろうけど、間抜けな形でボロが出てしまった。

  • 53おまけ4/4◆y6O8WzjYAE22/12/12(月) 22:02:56

    「ああ~もう……全部話すよ……取り合えずブライトがあいつの事を好きなのはドーベルも気づいてた、って事でいいか?」
    「う、うん。知ったのはほんの昨日だけど」
    「俺もそっちはつい最近。というか相談を受けた日だから似たようなもんだよ。最近抱き着かれるようになった、って言ってたからさ。あの子そんな子だったか? って思って。何かしら心境の変化があったんだろう、って考えたらまあ」

     それだけで勘付いてくるのは流石に恐ろしすぎるんだけど。

    「あいつの方は……まあ他の人からは気づけないレベルかな。最近こいつブライトの事目で追ってんな~と思っててさ。多分担当ウマ娘以上の感情は持ってるだろ、って事で。そっちは言質も取ったし」

     という事は心配だったというのと別に、トレーナーなりにふたりの恋路を応援しようとしてた、って事かな。
     ……けど待って? ブライトのトレーナーはともかく、ブライトの恋心まで勘付くくらい察しがいいって事は、より身近にいるアタシは当然気付かれてない?
     もしもそうなら。嫌な汗が背中を伝う。

    「あ、あのさ。もしかして、気付いてる?」
    「なにに?」
    「その……アタシの気持ち……」

     言葉を発した瞬間、トレーナーの顔が僅かに強張る。ああ、やっぱり……。
     けれど気づかれているなら気付かれているでやりようはある。
     告白のようで、そうじゃない。卑怯な言い方でトレーナーの気持ちを探ろうと。

    「もしも。もしも、だよ? アタシが──」
    「ドーベル」

     問いかけを言い切ってしまう前に、イチゴ味のマカロンを口に押し込まれ、無理やり黙らされてしまう。

    「その言葉は、卒業式の日まで取っておいて欲しいかな?」

     ある意味で。トレーナーからの解は得られたけども。
     ドキドキと鼓動が高鳴るのを感じながら、マカロンを口に含んだまま、こくりと頷くしかなかった。

  • 54◆y6O8WzjYAE22/12/12(月) 22:07:02

    という訳でシチュエーション的になんで遊園地を選択したのか、というのと。
    ここまで勘がいいと間違いなくドーベルの気持ちには気づいてるよね?的な裏話でした。
    遊園地ネタってアトラクションよりも待ち時間が長くなっちゃうので中々に書き手殺しだよね……って思った反面。
    今回の話のシチュエーション的に上手い事逆手にとれたな、って感じはします。
    あと単純にブライトのストーリー6話に絡めたかっただけ。
    最後のイチゴ味のマカロンに含めた意味は……お察しください。

  • 55二次元好きの匿名さん22/12/12(月) 22:17:28

    があああああああ!!!やめてくれないか!!!あとがきでもチリッチリに脳を焼いてくるのは!!!

    いやごめん今後とも是非とも書いてほしいんだわ、ありがとうございます

  • 56二次元好きの匿名さん22/12/12(月) 22:23:17

    まーたドーベルの脳みそ焼いてくー。

    いいぞもっとやれ。

  • 57◆y6O8WzjYAE22/12/12(月) 23:21:03

    書いている間はひとりで自分の文章とにらめっこするしかない関係で、書いている文章が読みやすいかどうか判断する術がないので、読みやすいと言っていただけるの非常に嬉しいですわー!
    この場を借りてお礼申し上げますわよー!

  • 58二次元好きの匿名さん22/12/12(月) 23:32:43

    おもしろかったです

  • 59二次元好きの匿名さん22/12/12(月) 23:35:44

    ベルトレはまた軽率に脳を修復不能にして…

オススメ

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