【SS】マルゼン「君の母親に似てる、って?」【短編小説】

  • 1図書委員21/11/01(月) 21:07:47
  • 2図書委員21/11/01(月) 21:18:22

    ※リンク先の>>1の方が

    「マルゼンスキーの私服が、優しかった昔の母に似ていてつらい」

    「今は家族関係が悪くて、昔を思い出すのがつらい」

    「これをネタに誰かSSを書いてトラウマを拭ってほしい」

    ということをおっしゃっていたので。早速書かせていただきました。


    ちなみにご本人もそのスレで自分自身をネタにSSを書かれています。凄いな!


    ※本作はフィクションです。主人公であるトレーナーの家庭環境等もリンク先の方とは無関係です。

     詳しいことはおっしゃっていなかったこともあり、私の創作でやらせていただいています。

  • 3図書委員21/11/01(月) 21:19:38

    (タイトル)
    『彼女が私服を着替えたら』


     今日、母が死んだ――もしもそうなら、むしろどんなにか楽だろう。けれど実際、母は生きていて。けれどあの優しい彼女は、きっともうどこにもいない。――いや、それは今に始まったことじゃない。父が死んだあのときから、優しかった母は――
     そこまで考えて僕は腕を上げ、ワイシャツの袖で額の汗を拭った。

    「あっつぅ……」

     照りつける日差しに顔をしかめながら目の前を――現実を――見る。広い砂浜では多くの選手――ウマ娘――が、あるいは長距離を走りあるいは短距離に磨きをかけ。またあるいは体力を鍛えるべく沖へ向かって泳ぐ。
    夏合宿。当然誰もが練習用の水着か、動きやすいジャージ姿。彼女らに声をかけ、指導するトレーナーらも同様だった。
     その中で僕だけが――所用での外出から帰ったばかりとはいえ――ネクタイを締めている。場違いな感覚に顔をしかめながら、砂浜を――すでにじゃりじゃりと砂の入った革靴で――――歩く。
     程なくして、探していた選手は見つかった。僕が担当している、マルゼンスキー。

  • 4図書委員21/11/01(月) 21:21:17

    「あ、トレーナー君」

     彼女の方も僕を見つけ、かぶっていたストローハットを持って大きく手を振る。
     僕はそのとき、目を瞬かせた。何度も瞬いた、そうすればこの目の――あるいは頭の――バグが直るかと思って。
     そこには母がいた、若き日の。優しかったあの頃の。
     無論そう見えたのは一瞬だ、ただの錯覚だ。何しろ彼女が、マルゼンスキーが、記憶の中の母のような格好をしていたから。ジャージでも練習用の水着でもない、彼女の私服。清楚な白地に、小さな花柄を慎ましく散らしたワンピース。
     豊かに波打つ栗色の髪を揺らしながら、母は――いや、マルゼンスキーは――僕の方へと歩んでくる。片手でスカートの砂を払いながら。

    「どうしたの、そんな格好で。着替えてくればよかっ――」

     その言葉をさえぎるように、僕は言ってしまっていた。

    「マルゼンスキー。その服装をやめてくれ。僕の前では」

     あるいは消してしまってくれ、僕の方を。

  • 5図書委員21/11/01(月) 21:21:52

     昔は良かった、誰もが口にすることだろうけれど。僕の場合は本当に、昔こそが幸せだった。
     子供の頃は両親も健在だった、おぶわれた父の背中は大きく、その傍らで栗色の髪を揺らして微笑む母は美しかった。僕を撫でる手は温かく、滑らかだった。
     けれどあるとき、父が心を病んだ――先天的なものか後天的なものか、具体的な病名などは、小さかった僕は知らないが――。元々こだわりや思い込みの強い、言い出したら聞かないところはあった。それが自身の心に食い込むかのように強く出た。いもしない敵にいつもつけ回されていると怯え、僕や母にさえ命を狙われていると思い込んだ。
     何度かの入退院の後、父は。屋根から落ちて亡くなった――自死か、何かから逃げようとしたのかは分からない。

     そうして、母もまた変わってしまった。
     いや、父が病んだときから変わっていたのかも知れない。あの優しい微笑みは消えた。憂うようなしわがいつも、眉間に頬に宿っていた。お父さんのようになるな、というのが母の口癖になった。優しかった頃の父のことを、口にしたことは一度もなかった。
     懸命に働きながら無理をして、僕に様々な習い事をさせた。お父さんのようになるな、勉強して立派な人になれ、と母はいつも言っていた。確かに僕は、優秀にはなった――難関である中央のトレーナー試験、そこに現役合格できるほど――が。無理をして昼夜なく働く母と僕の生活とは食い違い、顔を合わせることも少なくなった。
     以来僕は、母の笑顔を見ていない。遠い記憶の中の他は。

  • 6図書委員21/11/01(月) 21:22:56

    「え……どうしたの、トレーナー君」

     僕の言葉に――あるいはこわばった表情にか――、マルゼンスキーは戸惑ったように眉を寄せた。すらりとした眉、それすらも母に似ている。
     僕は言葉を止められなかった。言いがかりに近いと分かっていながら。

    「伝えたはずだろう、所用に出る間は練習は休みにすると。君もオーバーワークが続いた、宿舎で休んでおくようにと。どうしてここにいる」

     マルゼンスキーは困惑したように目を瞬かせる。

    「それは、後輩ちゃんたちが練習を見てほしいって……」

    「担当のトレーナーの仕事だ。それに、見ていただけではないだろう」

     僕は彼女のスカートと、その下からのぞく脚を指差す。そこには、払い切れていない砂がついていた。

    「そりゃあ、ふざけて少し一緒に走ったりは――」

    「ふざけてだって? とにかく――」

     そこで僕は、どうにか言葉を止められた。――習っただろ、指導の基本だ、『アンガーマネジメント』、六秒待つんだ、大体これはただの八つ当たり――。

  • 7図書委員21/11/01(月) 21:23:42

     大きく息を吐いて吸い、意識してゆっくりと言う。

    「とにかく、だ。休養するんだ、宿舎に帰って……砂だらけのその服も、着替えて。もし練習したいのなら、軽くなら構わない……着替えてから、ね」

     マルゼンスキーは何度か目を瞬かせ、それから大きく息をついた。
    「そう、ね。でも……ふふ」

     微笑む。母のように。

    「着替えろ着替えろーなんて、言われるのもチョベリバかも。ビーチでネクタイなんて締めてる人には、ね」

    「それ、は……がっ!!?」

     それに賛同するかのように、あるいは罰のように。どこかから飛んできたボールが、僕の頭を直撃した。いい音を立てて。

    「ト、トレーナー君! 大丈夫!?」

     倒れかけたが、僕はどうにか踏みとどまった。駆け寄るマルゼンスキーを手で制し、かぶりを振る。転がるボールを拾った。
     駆け寄って何度も謝ってくる子たちに、苦笑いして肩をすくめてみせる。

    「いいんだ、お礼を言いたいぐらいだよ。ちょうどいい目覚ましになった」

  • 8図書委員21/11/01(月) 21:26:08

     ボールを持った子たちが立ち去った後。マルゼンスキーはいたずらっぽく微笑む。母とは違う表情。

    「さてと。それじゃあお言いつけどおり、着替えてきましょうか。君はここで待っててちょんまげ」

     練習をするということか。そう考えて、汗を拭きながらその場で待っていたが。

    「トレーナー君、お待た~☆」

     彼女は確かに着替えてきた、が。その大人びた曲線を持つ体は、ごくわずかな布地にしか覆われていなかった。彼女が身につけているのは、練習用の指定水着などではなく。黒いビキニ――しかも下着以下の面積しかない大胆なもの――だった。

    「なっ……そ……な……!?」

     口を何度か開け閉めして水着を指差す、そんなことしかできずにいたが。慌てて視線をそこからそらす。
     練習を続けていた回りの子たちが、遠巻きに彼女へ視線を向け。あるいは小さく、黄色い声を上げる。
     マルゼンスキーは微笑んで――母のようだったかは分からない、その豊満な果実から目をそらすので精一杯すぎる――、言い放った。

    「それじゃさっそく行きましょうか! 今日は終日ドライブデートよ☆」

    「ん? ……え?」

     僕は大きくー―比喩ではなくあごが外れるかと思った――口を開けていた。

    「えええええぇぇっっ!!? な、練習じゃ!!? ドライブって君、なんで水着、ドライブで――」

  • 9図書委員21/11/01(月) 21:26:41

     ばっちーん☆ と音がしそうな勢いで、彼女は大きな目でウインクしてみせる。愛車のキーを掲げてみせた。

    「さぁ、ノリノリアゲアゲでかっ飛ばすわよ!」

     強引に僕と腕を組み、駆け出す――思い出した、指導の基本。『ウマ娘の筋力の前に、成人男性の力など赤子のそれにも等しい』『だからあきらめろ』――。

    「待って、それこそ着替えろ君、っていうか待って、助け、誰か、誰かーー!!」

     砂浜に深い引きずり跡を残しながら、水着の美女は高速で駆けていった。駐車場へ。

  • 10図書委員21/11/01(月) 21:28:18

    トレーナー指導要綱「あきらめろ」

  • 11図書委員21/11/01(月) 21:28:49

    「レーコーMサイズ二つ下さ~い☆」

     言われてレジの店員が固まったのは、言葉の意味――アイスコーヒー――が分からなかったからだけではないだろう。
     コンビニに彼女はいた。海の近くでもなんでもないコンビニに。大胆不敵な水着の彼女は、レジの前に堂々と立っている。胸の谷間から取り出したカードを手に。
     僕はといえば、彼女に腕を組まれたまま――拘束具の如き力強さだった――そこにいた。せめて両手で顔を覆って。

  • 12図書委員21/11/01(月) 21:29:22

    コンビニでの情景(イメージ)

  • 13図書委員21/11/01(月) 21:30:01

    「はい、あ~ん☆」

     高速道路をかっ飛ばして――本来なら彼女の運転というだけで遠慮したいが、もはやそんなことはどうでもいい――やってきたドライブインで。彼女は名物のアイスクリームをこちらに差し出す。

    「……」

     エサを与えられるひな鳥のように、なすすべもなく僕はそれを食べる。味など分からない。何しろそれより、視線が刺さる。喫茶コーナーの客と店員、全てからの。
     そのときウェイトレスが、おずおずと彼女に声をかけた。

    「あの……お客様。失礼ですが、その、お召し物は……」

     マルゼンスキーは眉を下げ、肩をすくめて――その細い肩を――みせる。

    「それがね、うっかり着替えを波に濡らしちゃって。んもう、まいっちんぐ!」

     ウェイトレスは何か言いたげだったが、あいまいに微笑んで下がっていった。

  • 14図書委員21/11/01(月) 21:31:09

    「ほほーう、なるほど……奥ゆかしさを感じるわね、この曲線……」

     言いながらあごに手を当て、壁にかけられた墨絵を熱心に見ていた。墨より黒い水着の美女は。訪れた美術館で。

    「このかすれ具合がまた、何ともバッチグーね……」

     身をかがめ、食い入るように絵に顔を近づける。そのせいで、ふさふさと揺れる尻尾とはち切れそうな黒い布地が、後ろにいる僕の方へと突き出される。
     さすがに目まいを感じ、頭に手を当てながら僕は下がった。
     そのとき、館員であろう年かさの男性が静かに彼女へ声をかけた。

    「もし……失礼ですが、お嬢さん。何か羽織るものなどは……」

     マルゼンスキーは顔を上げ、腕組みをして口を開く。

    「ああ、新調した勝負服を着てみているんです。日常の動きも妨げないことが分かりました……レースでも十分使えそうね」

     男性は口を開けたが、やがて視線をそらせた。

    「そう、でしたか……マルゼンスキーさん、貴方ほどのウマ娘がそうおっしゃるなら……そうなのでしょうな」

     しきりに汗を拭いながら男性は去っていった。

  • 15図書委員21/11/01(月) 21:32:21

    「何なんだこれ……何なんだよこれーーーーっっ!!!」

     さらに走った後、人のいない海岸で――ようやく服装にふさわしい場所に来た――、僕は水平線に叫んでいた。
     マルゼンスキーも隣で叫ぶ。

    「夕陽のばっきゃろーー!!」

     息をついて、僕は砂浜に仰向けに倒れた。突然罵倒された夕陽も、今の僕ほどは困惑していないだろう。

    「本当に……何なんだよこれぇ……」

     半泣きにすらなった僕の顔を。空をバックに、マルゼンスキーがのぞき込む。

    「スッキリした?」

    「するかボケぇぇ!」

     思わず怒鳴ったその後で。息がこぼれた。笑い声のように。

    「ふ、ふ……はは……」

    そのまま笑った。二人で。

  • 16二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 21:33:34

    ええ話や…(困惑)

  • 17図書委員21/11/01(月) 21:36:27

     そして、隣に寝そべりながら彼女は言う。

    「ねえ。どうしちゃったの今日は」

    「こっちのセリフだけど……」

     どうしたんだと本当に言いたいが。とにかく、母の印象はその水着姿にぶっ飛ばされた。

     身を起こして座ると彼女は言う。僕の目を、真っ直ぐ見ながら。

    「トレーナー君。何だか変よ、帰ってきてから。いきなり着替えろだとか……ううん、何だか、出かける前から。……お母さんに会いに故郷に戻る、って聞いたけど」

     そうだ、そこまでは彼女にも話していた。

  • 18二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 21:37:06

    >>14

    フェニックスと化した館員さん

  • 19図書委員21/11/01(月) 21:37:29

     そして今、気づけば僕は話していた。僕の生い立ち。優しかった母、変わってしまった母。

    「僕がトレーナー試験に受かったときは、そのときだけは、喜んでくれたっけ……昔みたいな笑顔で」

     けれど。故郷を離れてしばらく後、親類から連絡があった。母に認知症の症状が出始めたと。一人では暮らせないので、世話をしてくれる施設に入居させると。
     もちろん金銭的なものは僕が負担したが。様子を見に行くことはできなかった。当時担当していた子が、本当に大事なレースの前だったし、その子は――僕と同じく――精神的なもろさを抱えた子だった。

    「でも、その後も……なんやかやと理由をつけて、会いには行かなかった……怖かった」

     だが、どうにか気持ちに区切りをつけようと、この夏合宿の間に休暇を取り、会いに行ってきたのだが。
    母はもう、僕のことなど分からなくなっていた。
     今日、母が死んだ――もしそうなら、むしろどんなにか楽だろう。けれど実際、母は生きていて。けれどあの優しい彼女は、きっともうどこにもいない。

  • 20図書委員21/11/01(月) 21:39:22

    「それで……帰ってきて、君が砂浜に行ったって聞いたから……練習しているなら止めようと思って……でも君は」

     僕の声はいつしか湿り気を帯びていた。鼻をすする音が交じる。

    「君は……まるで、お母さんがいるみたいで……優しかった、あの頃のお母さん……」

     その母はもういない。少なくとも、僕に微笑んでくれる母は。ようやくトレーナーとして、それなりになったというのに。いくらでも誉めてもらえる、喜んでもらえるはずなのに。
     温かな手が僕の頭をなでた。ゆっくりと。

    「そう……いい子……いい子ね……偉いわ。頑張ったね……すごく頑張ったのね……いいの。いいのよ……」

     僕は泣いた。傍らに座る母の膝に、すがりついて泣いた。

  • 21図書委員21/11/01(月) 21:42:15

     ひとしきり涙が出てしまった後。
     座り直して、僕は頭を下げた。

    「……すまない……なんだか、こんなことを」

    「ううん。でもね、それよりお姉さん困っちゃうわ。ずーっと君から、お母さん扱いになっちゃうとね」

    「そんなことは――」

     しない、と言いかけたところで。柔らかいものが僕の口を塞ぐ。彼女の唇が。
     口を離すと彼女は言った。

    「だからね、君と。やってみたいの、お母さんと違うこと。お母さんもしてくれないこと――」

     そして彼女は、ビキニの肩紐をずらす。僕の耳をくすぐるささやき。

    「にゃんにゃん、しましょ?」

     僕は母のそれを思わせる彼女の乳房に――

  • 22図書委員21/11/01(月) 21:42:51

    ーー検閲っ!!

  • 23二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 21:43:08

    >>22

    そんなー

  • 24図書委員21/11/01(月) 21:43:21

     ――検閲っ! 良い子の諸君にここからしばらくの内容を見せることはできないっ! 
     追伸! 我らが学園に生徒職員間の不純な交遊などない! これは隠蔽ではない、繰り返す、これは隠蔽ではない! 
     結論! ウマ娘は一切わいせつのない、健全なコンテンツ! 親御さん並びにPTA各位はご安心下さい! ――

  • 25二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 21:43:26

    くそっ!秋川理事長め!

  • 26二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 21:44:16

    クッソ!クソが!!!いや、ここからは二人の世界だもんな…

  • 27二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 21:44:51

    二人にだけわかればいいんだという心を見せてよぉー!!!という心が戦い二人にだけわかればいいんだの心が勝ちました。

  • 28二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 21:45:34

    おのれ理事長!おのれ図書委員!
    我らの夢を打ち砕きおって!


    お疲れ様です!ありがとうございました!

  • 29図書委員21/11/01(月) 21:45:54

     夏合宿の終わった、ある休日。

    「トレーナー君、待った?」

     マルゼンスキーは待ち合わせに、あの時の服を着てきた。花柄の、白い清楚なワンピース。いつか母が着ていたような。

    「いや、僕も今来たところ」

     けれど。もう彼女に、母の姿を見ることはない。
     なぜなら彼女は彼女だから。
     そして知っているから、その姿より美しいものを。その服の下の、彼女の素肌を。
     そう考えていると、はしたなくも抑えきれないものがもう――

    「トレーナー君」

     その声に跳び上がりそうになりつつ、彼女を見ると。
     微笑んでいた、最高に彼女らしい表情で。

    「今日の予定が終わったら、ね。……にゃんにゃん、しちゃう?」

     僕は、同じ顔で笑って、うなずいた。

  • 30二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 21:47:24

    マルゼンスキーほんといい女…

  • 31二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 21:47:32

    >>そして知っているから、その姿より美しいものを。その服の下の、彼女の素肌を。


    ぐぬぬ…

  • 32図書委員21/11/01(月) 21:47:53

     ――こうして、彼女を母と重ねることはなくなった。
     が、やがてまた、彼女を母と呼ぶことになる。

     自宅の玄関から、僕は中に声をかけた。

    「お母さん、お母さん! 何やってるんだ、もう出発するよ!」

     家の奥から彼女の声が聞こえた。

    「まいっちんぐ~! 指輪どこいったのかしら、落とすといけないからしまっといたのに……あっ、これね!」
     程なくして、旅行荷物を手に出てきた彼女の、左手の薬指には。慎ましい指輪があった、僕と同じく。

  • 33図書委員21/11/01(月) 21:48:43

     僕の隣から小さな声が上がる。

    「おかーさんおそーい! ちょべりば~!」

     僕たちの子供と共に僕も笑う。

    「ほんとだな、お母さんチョベリバだぞ」

     彼女も笑う。

    「メンゴメンゴ。それより、さあ出発よ!」

     小さな声が上がる。

    「おばーちゃんのおみまいにいくんだよねー」

    「そうよ、お父さんのお母さん……それから、色々回ろうね。お父さんのふるさとを」

     マルゼンスキーというスーパーカー、トレーナーとしてその助手席に座っていた僕は。
     彼女を助手席に、子供をチャイルドシートに乗せ。今、ファミリーカーの運転席に座る。


    (了)

  • 34二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 21:49:44

    すげぇよかった…あとマルゼンスキーの古語エミュ上手いのすごいな?

  • 35二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 21:54:24

    >>34

    完璧にナウイ現代語だゾ

  • 36二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 21:54:39

    あぁ……良かった……

  • 37>>121/11/01(月) 21:58:03

    本当にありがとう
    これ以上無いくらい穏やかな気持ちで読めたよ

    なんかね、読んでるとすごく癒される感じがした
    一番良かったのがマルゼンスキーに頭を撫でられるシーン
    これ元スレのSS書いてて感じたんだけど、俺母親に頭撫でられるのすごく好きだったなーって思い出したんだよね
    俺のSSではそのシーン入れられなくてすごく残念だったんだけど、こっちで入れてもらえて本当に嬉しかったよ

    本当にネタとかじゃなく面白かったし嬉しかった
    ありがとう、なんか俺の無念も少しは浮かばれた気がする

  • 38>>121/11/01(月) 22:00:35

    >>34

    俺のクソにわかマルゼンスキーより遥かに洗練されたエミュで死ぬほど泣いた

    マルゼン姉さんほちい…でも石無い…

  • 39二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 22:04:29

    というかこれ1日掛からずに完成させてるのもすごい…

  • 40図書委員21/11/01(月) 22:09:14

    というわけでありがとうございました!

  • 41二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 22:10:05

    ハッピーエンド最高!!

  • 42図書委員21/11/01(月) 22:17:40

    >>37

    元ネタを下さった(リンク先の)お主か…。

    少しでも喜んでいただけたならこの上なくありがたい。


    ところでワシも筆は遅い方…だが今回は6時間ちょいでプロットを1から作り、1万字超を書き上げることができた。

    これはワシ自身初めての速度…お主に刺激を受け、お主のためになればと思えばこそやりとげられた。

    文章書きとして新たなステージに立てたのはお主のおかげ……感謝する。

  • 43図書委員21/11/01(月) 22:27:01

    >>34

    >>35

    マルゼンスキーはワシにとってイチオシ殿堂入り…他にも好きなウマ娘は多いが、一線を画する存在…ゆえにできることよ。


    ……すみません本当はアラフォーのオッサンだからです……バブル期には小学生だったんで、マルゼン語を聞くと童心に帰れて正直癒される……。

  • 44>>121/11/01(月) 22:32:24

    >>42

    そこまで言ってくれるとこっちも嬉しいよ

    俺が書いたSSも「自分で書いた方が良い」って言われて一晩でバーッと書いた物だったしね

    皆の想像の余地を削っちゃったのは申し訳ないけど、俺としても新しい発見とか自信になったわ

    また機会があれば新しいSSを見せてくれよな

  • 45図書委員21/11/01(月) 22:37:35
  • 46図書委員21/11/01(月) 22:49:29
  • 47図書委員21/11/01(月) 22:51:57
  • 48図書委員21/11/01(月) 22:53:59
  • 49二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 22:56:38

    あんた純度の高くて長編SS書くの得意やな尊敬する…

  • 50二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 22:58:31

    アンタかよ!!!いつもありがとうございます!!!

  • 51図書委員21/11/01(月) 23:04:52

    >>49

    >>50

    こちらこそありがとうございます!

    ……正直長いSSはあまり読まれない……けどやりたいのはこういうのなんじゃ……。

    一次創作もこの調子で頑張りたいです(希望)。

  • 52二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 23:48:17

    保守

  • 53二次元好きの匿名さん21/11/02(火) 08:25:27

    保守

  • 54図書委員21/11/02(火) 12:29:27

    このスレの>1です。

    最初はカミュの『異邦人』を下敷きにしようとかオサレなこと考えてました…でも内容を「今日、ママンが死んだ」という書き出しと何か「太陽がまぶしかったから」という理由で殺人した主人公…ということしか覚えてなかった…ネットであらすじを見たけどよく分からん…

    ということで書き出しの文章だけパクっ…リスペクトして使わせていただきました。

  • 55図書委員21/11/02(火) 20:42:30

    ここの>1です。

    終盤の展開のアイデア元は、ウマ娘本編やってて

    マルゼンスキー素敵! カッコかわいい!→(水着マルゼンも引いた私)→何これえっち過ぎる…ていうか制服や赤勝負服の下もこのゴックンボディなんか…→もはやマルゼンスキーをえっちな目でしか見られなくなる…という体験からなんじゃ…。

  • 56二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 02:37:01

    保守

  • 57図書委員21/11/03(水) 12:52:34

    >>55

    つまりこう見える。

  • 58図書委員21/11/03(水) 19:14:26

    アイデア元は↑の通りアレじゃが…元ネタのスレの方に喜んでいただけたので何より。
    さて、せっかくなんであと1、2回だけ保守しとくかの…あとは書き終えた祭りで飲んだくれる。

  • 59図書委員21/11/03(水) 21:38:26

    ほなまた…

オススメ

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