- 1二次元好きの匿名さん23/01/13(金) 22:44:58
- 2二次元好きの匿名さん23/01/13(金) 22:45:26
- 3二次元好きの匿名さん23/01/13(金) 22:46:22
- 4二次元好きの匿名さん23/01/13(金) 22:46:52
たておつ
- 5二次元好きの匿名さん23/01/13(金) 22:48:56
たておつ〜
- 6二次元好きの匿名さん23/01/13(金) 22:53:03
- 7二次元好きの匿名さん23/01/13(金) 22:54:25
たておつ!
ソラさんと同じ髪型のサンジかわいいさもあり、お労しさもあり……すてき……… - 8二次元好きの匿名さん23/01/13(金) 22:57:17
立て乙です!
アシメだー!!かわいい!! - 9二次元好きの匿名さん23/01/13(金) 23:04:59
- 10二次元好きの匿名さん23/01/13(金) 23:11:00
立て乙ー
- 11二次元好きの匿名さん23/01/13(金) 23:12:28
ゾロとヨンジでワンパのグリーンゴリラの押し付け合いを思い出した
- 12二次元好きの匿名さん23/01/13(金) 23:39:21
猫車が引く客車には、上等品であろうことがすぐにわかる質の良い皮で包まれた柔らかなソファが備え付けられていた。
体格の大きなジンベエやフランキー、ブルックが乗っても余りある広い客車にのんびりと揺られながら裏門を後にする。
客車の端に座っていたローはふと庭に建てられている像に目を留めた。
土台には稲妻が走ったドクロのマークが描かれている。像は鷲を模っていた。鷲の胸元には______
「66、だと?」
いや、まさかそんなはずはない。あれは御伽話の世界の話だ。しかし………。
「トラ男?なにかあったのか?」
隣にちょこんと座っていたチョッパーの声にローは我に返った。鷲の像はすでに遥か後方へと過ぎ去っている。
「いや、なんでもねェ……が気になることが増えた」
「今日の夜、私たちの部屋に集まらない?」
突如聞こえた声にギョッとして前の座席を見ると、その背面に唇と耳が咲いていた。ロビンだ。
声を落としているのは、最前列に座るサンジに聞こえないようにするためだろうことはすぐに分かった。
「ふむ、それが良さそうじゃな」
チョッパーの隣に座っているジンベエが前を見据えたまま小さく答える。チョッパーもこくこくと頷いた。いつの間にか咲いていた瞳がそれに反応するようにパチリと一つ瞬いた。
「フランキーたちにも伝えたわ。今日の夜10時に私たちの部屋で話しましょう。どうやら、皆それぞれ考えていることがあるようだから」
「だが今日もあいつは俺たちと寝るんじゃないか?ゾロ屋たちはどうする?」
「大丈夫、ブルックが引き留めておいてくれるわ」
「分かった」
「もしサンジに何かに囚われているのなら、私たちの船長は必ず助けようとするわ。その時はよろしくね」
「………仕方ねェ、乗り掛かった船だ。それにおれが気になっていることが本当のことであるならば、おれはそれを見届ける必要がある。正当な読者として」
「ちょっと意味がよく分からないけど助かるわ、ありがとうトラ男君」
そう言うと咲いていたロビンの唇や耳はふわりと消えた。 - 13二次元好きの匿名さん23/01/13(金) 23:44:33
ちょっと何言ってるかわからない正当な読者さん…
- 14二次元好きの匿名さん23/01/13(金) 23:56:53
立て乙です‼︎
前スレから楽しく読んでおります!
とうとう正当な読者さんがサンジくんの陰にある存在に近づきはじめ、物語がまだ一段と広がりそうでめちゃくちゃ楽しみです‼︎ - 15二次元好きの匿名さん23/01/14(土) 05:23:49
「おーい!見えてきた!あれがブルーホールだぞ!」
最前列からサンジの明るい声が飛ぶ。その声に客車から身を乗り出すと、前方にドーム状の建物が見えた。
目を凝らすと海上には魚人族や人魚族の姿があった。
やがて客車がドームに近づくと、サンジは客車から降りてドームの扉へと近づいた。すると、ドームの扉の枠がキラリと青色に光り、やがて扉が左右に開いた。
「うおッ!?どうなってんだ、なんにもしてねェのに開いたぞ」
「おれの血に反応したんだよ。仕組みはおれもよく分からないけど、レイジュとおれの血だけをしきべつして開くんだってさ」
「こりゃあ、科学の範疇だな。スーパーに生かしてるぜ」
「サンジー!早くメシのとこ行こうぜ!!おれもう腹ペコペコで死にそうだァ……」
言葉通り本当に少しやつれたルフィが扉の中へと飛び込んだ。
「え、あんなに食べてたのに!?ルフィすごいな……」
「サンジくん、ルフィの胃袋を侮っちゃダメよ。ルフィはそりゃあもうとんでもない量を食べるの、そのせいでうちの船の経済状況は常にキツキツなのよ。酒をガバガバ飲むヤツもいるし」
ジトーとした目で後ろに目をやったナミを見てサンジがあぁ!と声を上げた。
「ゾロだな!」
「正解〜!他にもつまみ食い常習犯たちもいるから、とにかくうちの食糧を維持するのは大変よ。もう何万ベリーとっても足りないわ」
「もう十分金取ってるだろうが!」
「船ではナミさんが料理作ってるの?」
「えぇ、きっちりお代はいただいてるけどね。たまにロビンも手伝ってくれるわよ。男が多いととにかく量がいるし、サンジくんの料理みたいにはいかないけどね」
「そんなことない!どんな料理でも心を込めてつくられた料理は最高に美味しいんだよ!」 - 16二次元好きの匿名さん23/01/14(土) 08:47:48
識別が漢字変換できてないのとてもいい…
このサンジくん学力的にはどうなんだろ、原作の方は監禁前の知識+コックとして他者と話を合わせるための社会常識+専門知識でかなり頭きれる方だと思うんだけどこのサンジくんは監禁前知識と料理に対する専門知識だけしかないんだろうな
だから時々自分で言っててよくわかってない単語とかが存在してそう - 17二次元好きの匿名さん23/01/14(土) 11:33:29
天竜人・海軍・海賊を同時に招待しちゃったりと、少なくとも一般常識はかなりマイナス食らってそう
- 18二次元好きの匿名さん23/01/14(土) 13:32:23
ドームの中は映像電伝虫によって一面に海の映像が投影されていた。
中央にはエレベーターがある。これに乗って地下まで降りるらしい。
エレベーターに乗り扉が閉まると、それまで何の変哲もなかった壁に海中の光景が映し出された。
一面が青に染まる。かつてしらほしと過ごした海を彷彿とさせる美しい光景だった。
おぉ、と歓声が上がる。
「すげー!!」
「これはルフィたちだけ特別だぞ、地上から降りないとこのエレベーターには乗れないから。他の人には秘密にしててね」
「おいおい、こりゃどうなってんだ!?ガラスで出来てんのか?」
フランキーが興奮してサンジに問いかけた。外では優雅に泳ぐ魚たちや魚人族や人魚族の姿が見える。彼らは丸い水泡に包まれた料理を頬張っている。
「エレベーターの周りの海中の光景を壁全体が投影してるんだ。おれよりすごいだろ?」
「壁もスゲェけど、うまいメシを作れるサンジの方がもっとすごいぞ。それにおれは透明になれる壁よりメシのほうが好きだ」
サラリとルフィが言ったその言葉にサンジはきょとんと目を見開くと、嬉しそうに笑った。
「……ありがとう。あ、そろそろホールに着くぞ」
「ステルス………」
ぞろぞろとエレベーターを降りていく一味の後ろで、険しい顔でローは何も映さなくなった壁を睨んだ。 - 19二次元好きの匿名さん23/01/14(土) 14:29:56
投影…ステブラの技術…‼︎
66のマークといいこれはもうローさんはジェルマとなんらかの関連があるのに気がついたのでは? - 20二次元好きの匿名さん23/01/14(土) 17:02:16
ちょっとずつジェルマ関連が顔を出してきたな…。少しづつ不穏になっていくこの感じガチの劇場版みたいですき…。
Part1から読んできてやっと追いついた…。SS主さん、とても面白いSSを書いてくれてありがとう。更新毎回楽しみにしてます。精神チビナスちゃんだが体は大人なサンジくんめっちゃかわいいけどお労しい…。 - 21二次元好きの匿名さん23/01/14(土) 17:17:35
ホールの中は城へと続く扉とその隣にあるエレベーター以外は全てがガラス張りになっていた。
そのガラスも不思議と存在していないかのようで、瑠璃色に包まれたホールはまるで海の中に浮いているような感覚さえ覚える。
ホールの中心には陽の光に似た淡い照明が焚かれ、その下はぽっかりと大きな穴が空いて海と繋がっている。
その穴から顔を出した人魚たちに、魚人だけではなく人もミンク族たちもにこやかに料理を手渡していた。
すべての人が仲良くご飯を食べる、サンジがメインホールで語った願い通りの光景がそこにはあった。
「最高の場所だろ!」
見渡す限りの青に包まれた世界で、サンジは小さな子どものように楽しそうに笑った。 - 22二次元好きの匿名さん23/01/14(土) 17:21:21
※このあとオリキャラが少し出てきます
サンジたちの反対側にはガツガツと大皿に食らいつく大柄の男と、その隣でイライラした様子で周囲を見回しコツコツと足を踏み鳴らす痩せぎすの男がいた。
「おい、いつまでこうしてメシばっかり食ってるといいんだよ」
「んー?なんだよ、良いじゃあねェか!こんなに美味ェメシ、そうそうありつけねぇぞ」
「オレたちはこの城に宝を奪いにきたんだろうが!見てみろ、ここは特に兵士の数だって少ないし、呑気にメシ食ってるお貴族様もあの机に置かれてる真珠もどうぞ奪ってください〜って言ってるみたいだぜ」
「でもよぉ、もうちっと食べてェよなァ」
「いや、今だ。さっさとお宝を頂戴してずらかるぞ」
「仕方ねぇなァ」
皿に残っていた魚を骨ごとバリバリと噛み砕くと、大柄の男はのそりと立ち上がった。
「このガラスすごいな!こんなにでかい穴を開けても海水がホールの中へ入ってこないのか……しかも海との境がさっぱり分からねェ」
「特殊なガラスらしい。これも、その、仕組みはおれにはよくわからないんだけど……」
パァン!!
穏やかな空気を切り裂き、突如鳴り響いた銃声にルフィたちは音のした方を振り向いた。
「どけ!」
男の怒声と共に料理の置かれた机のそばにいた子どもが突き飛ばされる。
会場に悲鳴が響き渡った。銃を持った男は机の上に置いてあった真珠を掴むと、近くにいたミンク族の少女を羽交締めにした。
男の前にはどこから取り出したのか大きな斧を肩に担いだ大男が、ニヤニヤと口元に笑みを浮かべている。
「おいおい腰が抜けたやつばかりじゃねェか!どいつもこいつも呑気にメシなんか食いやがってよ!」
痩身の男はそう言うと机ごと料理を蹴り飛ばした。ガシャンという大きな音が鳴り響く。
人魚たちが慌てて海へと逃げていくのをサンジは呆然と見つめた。 - 23二次元好きの匿名さん23/01/14(土) 17:42:21
モブー!!
- 24二次元好きの匿名さん23/01/14(土) 17:46:11
ブルーホールめっちゃ綺麗だ………青に囲まれてるサンジくんも綺麗………
- 25二次元好きの匿名さん23/01/14(土) 18:07:27
うわァァァァ幸せそうに無邪気に笑うサンジくん最高だ…
青色の世界でやわらかな金髪を泳がせて笑うのが想像できる…最高…ずっと無邪気に笑っててくれ……
って思ってたのにモブおまえェ‼︎
きらきらの笑顔から一変して状況の理解が追いついてなくていっそ気が抜けちゃうくらいのぽかん顔サンジくんを想像してしまったじゃないか‼︎
そういえばこの世界線のサンジくんに覇気の素質はあるんだろうか
現在サンジくんが見聞色の覇気に向いてる、みたいなSBSがあった気がするからこのサンジくんも見聞色の素質があると良いなぁ
ただもしこのサンジくんに見聞色の素質があるなら原作みたいな感じってより人の心に対する感受性がめちゃくちゃ高い感じで
「あ、あの人イライラしてる…なんか物に当たりそうかも」
とか
「あのひと悲しそう…もしかしたら泣いちゃうかもしれないし、後であの人の近くにあったかいスープとか配膳しとこうかな」
みたいな感じなのかもしれない。 - 26二次元好きの匿名さん23/01/14(土) 21:35:43
「え…どうして?招待状に書いてあっただろ?おれはただみんなに仲良く料理を食べて欲しかっただけで、真珠なんて」
「バカなこと言ってんじゃあねェよ!料理より真珠の方がうんと価値があるに決まってるだろ、お坊ちゃん?それに、みんなで仲良く料理を食べるだなんてできるわけねェだろうが!ガキの夢じゃあるめぇしよ」
ギャハハと笑った痩身の男にサンジは狼狽した。
風を切る音と共に男に影が落ちた。
「…………お前ェ!!サンジの料理に何してんだァ!!」
「あ?」
ルフィの拳がメリと頬に食い込み、派手な音と共に男は壁に吹き飛んでいった。回り込んだジンベエが男を捕まえると、近くにいた漁師が縄を取り出しジンベエに手渡した。
「ルフィ、ケンカは…!」
「サンジくん、ルフィはわがままなの止めるのは無理よ。それに、私たちも今とっても腹が立ってる」
「でも………」
ルフィの一撃で床に伸びた痩身の男をあんぐりと口を開けて見た大男はたちまち慌てて逃げ出した。しかし、すかさずルフィがぐいと腕を伸ばし、大男の背中に拳を叩き込む。吹っ飛んだ先で床や天井から咲いたロビンの腕でゴキリと体を捻られ、大男はあえなく床に沈んだ。
事の成り行きを守っていた会場にワッと歓声が上がる。
張り詰めていた空気がたちまち明るいものへと変わった。
「ヨホホ!見事です、ルフィさん!サンジさん、手荒な真似をしたことどうぞお許しください。ルフィさんたちはあなたの優しさが踏み躙られるのが許せなかったんですよ」
「………ううん、ありがとう。本当に助かったよ。………おれがケンカが嫌いなのはさ、優しいからなんかじゃなくておれが弱いからってだけなんだ。ルフィたちみたいに強くて勇気があれば止められるけれど、おれにはできないから」
ぜんぶおれのせい。言い聞かせるように小さく呟いたサンジは突き飛ばされた子どもとミンク族の少女の元へと駆け寄った。 - 27二次元好きの匿名さん23/01/14(土) 21:36:11
「ごめんね、痛かっただろう?なにか好きな料理ないかな?おれは料理しかできないけど、もしそれでいいのならどうか食べて欲しい」
「お兄ちゃんのせいじゃないよ!それに、お兄ちゃんがここにある料理作ってくれてるんでしょう?わたし、お金がなくて普段お腹いっぱい食べられないから、ここは夢みたいな場所だよ!ありがとうお兄ちゃん!!」
「そうですよ、貴方のせいじゃない。このコソ泥たちにもしっかりバチが当たったことですし、もう大丈夫です。でも、そうだな……私広場にあったギモーヴが食べたいです」
「じゃあ〜、わたしはいちごミルク味のポップコーンがいいな!」
2人の少女はにっこりとサンジに笑顔を向けた。
「うん、了解!とびっきり美味しいのを作ってくるよ」
サンジの言葉に2人の少女は顔を見合わせると、やったー!と手を挙げて喜んだ。
「助けてくれてありがとう。ルフィ、ロビンちゃん。床に落ちた料理は………ってあれ?」
床に散らばっていたはずの料理はいつのまにか綺麗さっぱりとなくなっていた。床に座り込んだルフィが膨らんだ腹を満足げに撫でながら、ふい〜と息を吐く。
「おう!ぜんぶ食ったぞ!!」
「……………ハハっ!ルフィおまえ本当に良いやつだな!ありがとう、じゃあ行ってくるよ!ゆっくり楽しんで!」
そう言って駆けていったサンジの走り方は昨日よりもずっと自然になっていた。
「よかったぁ、サンジ元気そうで」
「サンジは人一倍優しいからなぁ、ヒヤヒヤしたぜ。にしても、こいつらときたらいろいろと台無しにしやがって」
ジンベエに縄でぐるぐるに巻き上げられた2人の男を、恨めしそうな顔でちょいちょいとウソップが突いた。
やがて男たちは、覆面をした兵士たちに引き摺られてどこかへと連行されていった。 - 28二次元好きの匿名さん23/01/14(土) 22:32:49
- 29二次元好きの匿名さん23/01/14(土) 23:22:45
- 30二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 00:28:51
保守
- 31二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 00:41:23
こっからの展開が楽しみすぎる
- 32二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 01:17:46
保守
- 33二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 06:12:36
このレスは削除されています
- 34二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 06:13:19
ギモーヴはスレ主の好物です
ふんわり甘くて美味しいので是非 - 35二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 06:45:04
猫車を走らせて城へと戻ると、サンジが戻ってくることを兵から聞いたらしいレイジュが門の前に立っていた。
「サンジ、怪我はない?」
「大丈夫だよ、レイジュ。ルフィたちがあっという間にやっつけちゃったからさ!ヒーローみたいだったよ」
ルフィの真似をしてぶんぶんと相手を殴る動作をして見せるサンジを、レイジュは心配そうな面持ちで見つめる。
言葉を選ぶように視線を彷徨わせると、ゆっくりと口を開いた。
「…………サンジ、この世から争いがなくなることなんてきっと無理なことなのよ」
「……分かってるよ。無くそうだなんて思ってない。そんな力もないし。………ただ、この3日間だけはみんな平和に過ごせれば良いなって思ってただけ」
唇を噛んで俯いたサンジは両手で髪の毛をくしゃりと抱え込んだ。
「………レイジュはいいっていうけどさ、やっぱりおれ強くなりたいよ」
______あぁ、ダメだ。
自分を守るように小さくなろうとする弟のこの癖は小さい頃から変わらない、彼の心が乱れている時の癖なのだ。
長い前髪で表情の窺えないサンジの腕をレイジュは慌てて掴んだ。
「あなたは今のままでいいのよ。強くなんてならなくても………!」
レイジュの言葉に顔をあげたサンジは泣きそうな顔をしていた。
「……レイジュはやさしいね」
おれ、作らないといけないものがあるから行くよ。そう言うとレイジュの腕をゆるりと振り払い、サンジは門の中へと消えるように飛び込んでいった。 - 36二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 09:13:02
少女が2人も無碍に扱われたというのに、足がすくんで動けなかった。
ソラならルフィたちのように勇敢に立ち向かっていったはずなのに。おかあさんならきっと………。
とうの昔に失敗作であることなんか認めていて、ならばせめて母が喜んでくれた料理だけできればいいと思っていたのに。心のどこかで父に愛される自分を捨てきれない、もっと強ければ兄弟たちと仲良く遊べて、困った人を救えるヒーローになれたのかもしれない。
「………おれはできそこないだなぁ」
強くなりたいと思ったのに、俯いた瞳から涙が溢れそうになるのを感じてサンジはぎゅっと目を瞑る。ふぅ、と一つ息を吐くと気持ちを切り替えるために顔をあげた。
すると、調理場の扉の前に3人の男が立っていることに気がついた。
「おいおい、どうしてアンタがここにいるんだァ?」
「……テメェに言う必要はねェな」
「赫足もおれと同じ志ある料理人ってことだろ!アンタの料理は食ったことねェが、噂は聞いてる。強くて容赦がねェが料理の腕は確かだってな!!」
髪の毛を頭頂部で束ねた男、やたら腕が屈強な坊主頭の男、そして"あかあし"と呼ばれた後ろから見てもよく分かる立派な口ひげを蓄えた男。
あかあし。聞いたことがない名前だ。長い間本しか読んでないのだから知っていることの方が少ないのだが。あかあしはあだ名だろうか、そういえば昔読んだ新聞には冥王という名前の海賊の記事が載っていた気がする。
なんだろう、怒られるのだろうか。怒られるのはなれてるけど、やっぱり怖い。
怒られるよりおかあさんみたいに優しく抱きしめて頭を撫でてくれる方がずっと好きだ。もう何十年もだれもしてくれないけれど。
「あ、あの、何かご用ですか……?料理、口に合いませんでした?」
おずおずと男たちの背中に声をかけたサンジに反応して、くるりと男たちは振り返った。 - 37二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 09:18:02
ウワーッジジイーッ
- 38二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 10:22:37
オワーーー‼︎キターーー‼︎‼︎
このサンジくんとゼフさんはどんな感じで会話するんだろ…めちゃくちゃ楽しみ… - 39二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 13:28:31
「お、オメェがこの城のコックか!」
ニッカリと笑った坊主頭の男はそうか、そうかと言いながらサンジを上から下まで観察した。
「口に合わねェわけがねぇよ。おれの料理は最高にうめェが、オメェの料理はおれの知りうる料理の中で最高の美味さだった!悔しいが、おらぁオメェの料理に惚れ込んだってわけよ」
「なぁにが最高にうめェだ、どんなもんかと食ってやったら毒みてェな料理だったじゃねぇか。クソコック!」
「なんだとクソコック!!」
「おうそうだぞ!おれはクソコックだよ、この野郎!!」
「うるせェ!!」
ゴン!ゴン!という重い音と共に赫足の振り上げた脚が2人の男に直撃した。
「おい、ガキ。てめぇの料理はなかなかのもんだ、だがメインホールにある牡蠣の味噌汁、あれは味が濁ってるぞ」
「え、濁ってる!?」
2人の男が驚いたような声をあげた。サンジも目を見開いた。
「火にかけすぎてるんだ。てめぇは才能は十分にある、その手を見る限り努力もしてるな。が、足りてねぇ。らしくもねぇが、おれはそいつも勿体ねぇと思った」
「勿体ない……」
「お前に足りないのは知見だ。他のやつの味を盗むことだ。おれはそれをお前に教えにきた。この城にいれるのは今日を入れて2日もねェからな」
それを聞いた2人の男はニヤニヤと揶揄うように笑った。
「なんだよ、赫足ィ!おまえ意外といい奴じゃねぇか。なんだ、コイツのこと気に入ったのか?お?」
グイグイと肘で赫足を突っついた坊主頭を赫足が鬱陶しそうに睨んだ。
「ただ惜しいと思っただけだ。それに、おれの船の奴らはおっ死んじまったしな……。暇なんだよ、おれは」 - 40二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 14:11:11
このジジイ多分まだ両足あるんだよな…なんか悲しくなってきた
- 41二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 17:10:29
「あぁ……クック海賊団が嵐で大打撃を受けたってのは本当だったのか」
「………大打撃どころじゃねェ。なんの因果かこうして生きてるが、生きてるからにはおれはやりてェと思ったことをやる」
「おぉ!いい心がけだぞ赫足!そうだ、やりてェことをやればいい!と言うことで、サンジ!!おれにこの城の料理を手伝わせてくれ!おれを臨時で雇えば百人力だぜ」
坊主頭の男はそう言うとグッと親指を立てて笑った。
「おれもお前の料理を知りたくてここに来た。だが、おれみたいなクソコックは礼儀ってもんが分からねェからな。おれのやり方はお坊ちゃんには毒かもなァ」
そう言ってニヤリと笑ったサングラスの男にサンジムッと頬を膨らますと、すかさず言い返した。
「おれはお坊ちゃんじゃないぞ、立派なコックだ!……でも、おれの料理を見てくれるのも、教えてくれるのも嬉しい」
ゼフの方へ向き直るとサンジはグッと視線を上げた。
「おれ……!行きたい場所があるんだ、すべてが集まる海!!だからなんでも作れる料理人になりたい!短い間だけど、よろしくお願いします!!!」
うまく言葉になっていたか分からない。
もう何十年もろくに話していなかったせいでずっと喋ることで精一杯だ。それでもサンジは散らばったピースを掻き集めるように一生懸命に言葉を紡いだ。
なんとなく、この人たちはルフィたちと同じようにサンジを笑わない気がしたのだ。 - 42二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 17:43:25
今更ながら誤字脱字しまくりで申し訳ない……心の目で直してください……
- 43二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 18:29:41
面白すぎるので全然気にならないですよ!!
ゼフとサンジくんの交流が最高すぎます………めちゃくちゃ不穏な空気が漂い始めてるけど、このサンジくんもオールブルーを見つける旅に出てほしい
けど、心の底でウタちゃんと同じ結末も見てみたいと思ってしまう邪な自分がいる……… - 44二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 18:50:11
守るために強くなりたいサンジ…………
- 45二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 19:07:13
誤字脱字は生物…幾ら見直しても投稿した後とかに生えてくるものなんで…‼︎全然気にならないです!
サンジさんとゼフさんの会話キタァ‼︎なんとなくスピンオフの食戟のサンジ最終回を彷彿とさせる雰囲気だ…
きっとこのゼフさんは料理を振る舞う仲間を失ったばかりで、このサンジくんは未だ己が料理を振る舞う理由になる仲間が居ないから2人ともどこか満たされてない空っぽ仲間なのかもしれないな……
似たもの同士の空っぽ仲間の2人が唯一追い求めるのが全ての食材が集まるオールブルーだと考えるとなんかエモいな…… - 46二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 21:31:29
勢いのままぺこりと頭を下げたサンジに、赫足は驚いたような顔を向けた。
「……?」
「………おれはゼフだ。お前は?」
誤魔化すようにフンと鼻を鳴らしたゼフは立派な口ひげを撫でながらサンジを見下ろした。
「おれは、サンジ……です。えっと……?」
「おれはパティだ。よろしくなァ!サンジ」
「おれはカルネだ!」
坊主頭はパティ、サングラスの男はカルネ。2人とも昨日初めて会って同じ部屋に泊まっただけの仲だというが息ぴったりだ。
「フン、さっさと始めるぞチビナス!!お前らもだ!ノロノロ動くボケナスどもはクビにする」
「いや、なんでお前が仕切ってるんだよ赫足!」
「そうだぞ、料理長はサンジじゃねェか!!」
「チ、チビナスっておれのこと?」
「お前以外に誰がいるってんだ。おら、とっとと開けろチビナス」
そう言うとゼフはサンジの目線に合わせて屈んだ。にやりと口元に笑みを浮かべたゼフは大きな暖かい手でぐしゃぐしゃとサンジの頭を撫でた。
「おれがてめぇに教えられるのは今から夜まで、そして明日の朝だけだ。言っとくが、おれは甘ったれたやつは大嫌いだ。厳しくするぞ、わかったな?」
「〜〜う、うん!!おれ作らないといけないものがあるんだ、まずはそれを作るぞ!」
頬を林檎のように真っ赤に染めたサンジは意気揚々と調理場の扉を開けた。 - 47二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 21:36:13
21歳でチビナスムーブしてるの可愛いけどおつらい…
- 48二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 22:54:58
サンジはゼフに見守られながらギモーヴといちごミルク味のポップコーンを作ると、猫車に飛び乗って来た道を急いだ。
少女たちに渡すとそれはそれは嬉しそうに喜んでくれて、サンジの心も晴れた。
会場を見回すと、ルフィたちの姿は見当たらない。他のホールへと行ってしまったのかもしれないなと少ししょんぼりとしたものの、今夜も独りではなくゾロたちと寝れるのだと思うとそれが何より嬉しくてさらに元気が出た。
それに、今から世に名を馳せているらしい強さも兼ね備えた名コックのゼフの指導を受けられるのだ。やっぱりこの大宴会を開いてよかった。
ゼフにはあぁ言ったけれど、たった2日で一生分の幸せをプレゼントしてもらえて、生まれてきた意味がちょっとだけ分かった気がした。
あと1日、あと1日したら、レイジュもお父さんたちもおれから解放されて幸せに暮らせるんだ。 - 49二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 23:01:36
え、え、え?
サンジくん……???? - 50二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 23:31:03
こんなことしたらジャッジにどう思われるかはサンジも分かってるだろうから、ジャッジの介入がなくても消えるつもりだったのか………
レイジュも罪悪感があるからサンジに踏み込めてないし、ウタとゴードンさん・シャンクスみたいにすれ違ってるのが悲しい
人生のほぼすべての間で父親と兄弟から否定され続けて自分はいらない存在なんだと思い込むともう抜け出せないよな……… - 51二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 00:05:16
あれ、これワンチャンゼフの方行くルートある・・・?
(麦わらルートとジェルマルートは多分ある) - 52二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 00:18:06
シャンクスとジャッジが違いすぎるから悲劇が増えるなぁ…
- 53二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 00:21:00
ゼフの指導は言葉通り厳しかったが、サンジの知らないような調理法や料理、そして料理人としての心構えを勉強することができた。それは、実際に海に出て料理をしないと分からないことばかりだった。本を読んでひたすら独りで料理を作っていた時とは違う達成感と高揚をサンジは味わった。
調理場では、必死にゼフの手元を見て、ゼフの作ったものを食べて味を覚えた。暗くて静かな部屋の中で過ごしていたサンジは、嗅覚と味覚は他の人よりもずっと優れていた。ゼフはそれを即座に見抜くと、やるじゃねェかとぶっきらぼうに褒めてくれた。
パティとカルネも今まで放浪していたとは思えないほど手際が良かった。明るくて人情に溢れた人柄は雇っていた料理人たちともすぐに打ち解けるには十分だった。
昨日よりも賑やかになった調理場では昨日よりももっと速いペースで料理が完成していった。様子を見にきたレイジュが食材は足りるかしらと苦笑いをするほどだ。
ゼフは小競り合いをするパティとカルネを自慢の脚でゴツんと蹴っていた。その脚の動きが本の中のヒーローにそっくりで、サンジはその時ばかりはゼフの足捌きを覚えようと料理に集中しているフリをして覗き見た。
チビナス!と大きな声で呼ぶゼフの声は確かに怒気が混ざっているものの、あの人の声とは全く違った。あの人は怒鳴らない時でももっと冷たい声をしていた。
出会って数時間しか経っていないのに、サンジはすっかりゼフのことが大好きになっていた。
時間はあっという間に過ぎ去って、サンジは9時にゼフたちと別れゾロとブルックの部屋へと向かった。
胸の辺りが焼きたてのじゃがいもみたいにほくほくとしていて、口元が緩むのを抑えることができない。
サンジはゼフに髪を留めておけともらった青色のリボンを胸元でぎゅっと握りしめると、軽快な足取りで廊下を駆けた。 - 54二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 00:26:51
部屋に帰ったら昨日と同じようにゾロとブルックといろんな話をするのだ。とにかくルフィたちともっと話をしたい。
ルフィたちの話を聞くのはとても楽しいのだ。彼らの冒険に自分も入り込んだような気持ちになる。
昔から本を読むのは好きだった、『嘘つきノーランド』はなんだか悲しい話しだった。レイジュが持ってきてくれた『海の戦士ソラ』はとてもかっこいいヒーローの話だった。ジェルマがサンジたちのことを指しているのは、幼いながらに分かったけれど、ならきっと"ソラ"はおかあさんのことなのだと思った。
悪いジェルマを倒してたくさんの人に笑顔を与える強いソラはサンジの憧れだ。
ルフィたちは強くてやさしい。まさにソラと同じヒーローだった。
きっとルフィたちもそしてローも、サンジと別れた後もひたすらに突き進んでそれぞれの夢を叶えるのだろう。
ふとサンジはルフィたちの船に乗っている自分を想像した。
キラキラと輝いている9人の中で自分がやけに霞んだちっぽけな存在に思えてくる、サンジはふるりと頭を振って不似合いな妄想を打ち消した。
おれはヒーローにはなれそうもない。 - 55二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 00:36:08
>>48の最後の部分をを読んだ私「えっ、ちょ、サンジくん、えっ」
- 56二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 01:46:35
- 57二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 03:14:58
保守
- 58二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 03:24:45
このサンジいいな…
保守 - 59二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 07:51:03
48読んでなんだかとても悲しくなってしまった…後1日だなんて言わないでくれ…‼︎‼︎
料理を教わるサンジくんもこっそり脚技を盗み見るサンジくんもリボンを貰ってほくほくのサンジくんもかわいいのに全部が不穏すぎて…‼︎
サンジくんにとってヒーローは強いものだからこそ出る「おれはヒーローになれない」なんだろうけど、君がヒーローだと思ってるルフィが思い浮かべるヒーロー像は「肉を他者に分け与えられる人」だから、君もルフィにとっては立派なヒーローなんだよ…‼︎ - 60二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 08:04:19
素敵なイラストありがとうございます!!とても嬉しいです……!
- 61二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 08:07:36
サンジが少女たちにお詫びの品を振る舞うのだとブルーホールから出て行ったあと、ルフィたちは昨日と同じく各々料理に舌鼓を打っていた。
懐かしい東の海の酒を片手に、鷹の爪のピリッとした辛さと鯛本来の甘みが絡み合ったカルパッチョを食べていたゾロは一点を見つめているルフィを見つけた。
「おいルフィ、どうかしたか」
「んー?ゾロか。あいつ、なんかおかしいんだよなァ」
「あいつ?」
ん、とルフィが指差した先には、サンジと似たフリルのついた緑のシャツに何故か緑色のニット帽を目のギリギリまで被った男がいた。
帽子から覗いている髪も緑だ。ベルトにはやたらデカいドクロマークがついている。
心底嫌そうに料理を手に取って食べては顔を押さえ、そしてまた嫌そうな顔をして料理に手を伸ばしている。
「………確かにおかしいな。ありゃ、やべぇゴリラだ。近づかないほうがいい」
「あのゴリラ強ェのか?」
「いや、おれのほうが強いな」
「そっかァ」
興味を無くしたのかモリモリと料理を頬張り始めたルフィを見て、ゾロもまた次のつまみを取りにその場を離れた。
それからも、その男はずっと料理を食べては顔を押さえるという謎の行動を取り続けていて、周りから不審がられていたのだが本人は全く気づいていないようだった。 - 62二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 13:37:29
「集まったわね」
ぐるりとナミが周りを見渡す。ナミとロビンの部屋にはブルック以外がずらりと揃っていた。
「なァ、ナミ、なんでおれら集められてんだ?」
「アンタ本当にわかってないの?サンジくんのことよ。何か変だなって思うことなかった?」
「サンジィ?んーー??うーーんんん、あるようなないような……。あ、でもサンジのやつ、おれに嘘ついてるよな。あと、サンジと姉ちゃんにそっくりな眉毛やついたな」
「……それよ、それ。そういうこと」
パンと一つ手を叩くとナミは紙とペンを中心にある机の上に置いた。
「それぞれが疑問に思ってること、気づいたことを挙げていってほしいの。この城は、そしてサンジくんたちは多分何かを隠してる」
「………あぁ。恐らく、それを紐解かねェとおれたちはまずいことに巻き込まれる」
ローの言葉にロビンが頷く。
「もうすでに巻き込まれてしまってるみたいだけれど、最悪の状況は避けたいわ」
「さ、最悪の状況とはなんでしょうか、ロビンさん」
ウソップが恐る恐る挙手をする。
「そうね、海賊と海軍が衝突して民間人が巻き込まれる………サンジやレイジュが命を落とす……とかね」
「それはダメだ!!!!」
ガタンという音を立てルフィが勢いよく椅子から立ち上がった。
「お、おう!そうだなルフィ!!って、海軍来てるのかよ!?」
「サンジのやつ見境なく招待状配ってたみたいだからなァ、当たり前ちゃ当たり前だな」
「事の深刻さが理解できたようね。今のままだとこの宴が終わると共に海賊と海軍が衝突する可能性が高いのよ。それは阻止しなきゃならない」
そこで言葉を切ると、ナミはもう一度仲間の顔を見渡して語気を強めた。
「それに、このままサンジくんと別れると必ず後悔することになるって思うの。なんでそう思うのかは分からないわ、だからこそみんなの考えを聞きたい。……じゃあ、私たちから始めるわよ」 - 63二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 19:13:56
この命に代えてでも保守!!!!(は?)
- 64二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 20:34:28
面白すぎる!
保守です! - 65二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 20:50:01
「ブルック!」
「おや、サンジさん。お疲れ様です、紅茶淹れてみたんですよ。ヨホホ!サンジさんの淹れた紅茶の方がきっと美味しいと思いますが」
サンジが意気揚々と部屋に入ると、ブルックが椅子に腰掛けてティーカップを口にしていた。
ブルックの柔らかい声はとても落ち着く。バタバタと忙しくなく料理を作っていたために、穏やかに流れる空気にサンジは心が落ち着くのを感じた。
つい先ほど淹れたばかりなのでまだ温かいですよ、と言いながら、机の上に置いてあるもう一つのティーカップにブルックが紅茶を注ぐ。
「そんなことないよ、ありがとうブルック。あれ、ゾロは?」
きょろきょろと部屋を見渡すサンジにブルックは席へと座るよう進めると、口を開いた。
「ゾロさんは鍛錬に行かれました。この2日食べてばかりだから体が鈍ると、ゾロさんはとても実直な方ですからね」
「鍛錬!!鍛錬は昔おれもしてたけどすごい痛いし怖かったんだよ。ゾロはすごいなぁ………」
芳ばしい香りとともに湯気が立ち上るカップにサンジは口をつけた。
「ん、おいしい!!!この紅茶すごくおいしいよブルック!!茶葉の旨味がよく出てる!それに色もすごく綺麗だ、全く濁りがなくてこんなに透き通ってる。すごいよ!」
「ヨホホホ!サンジさんに褒められるだなんて光栄です」
もう一口紅茶を口に含むとサンジは隣の部屋の方を見遣った。
「そうだ、おれルフィたちに冒険の話の続きをしてもらおうと思ったんだけど、もう部屋に帰ってるかな?」
「すみません。ルフィさんたちはまだ戻られてないのですよ。ですが、私でよければぜひお相手を致しますよ?」
「ほんと!?じゃあミンク族の国に行った時の話をしてくれよ!」
「ヨホホホ、了解しましたー!そうですね、あれは………」
ビシッと敬礼のポーズをとるとブルックは絵本を読み聞かせるように話し始めた。 - 66二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 20:54:58
好き・・・()
- 67二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 21:00:03
んァァァ年上とサンジくんのやりとりはとても良い……
ミンク族の話ってことはブルックさんはサンジくんにも「ネコマムシの旦那に会いに行こう」を歌ってあげてるんだろうか
こういうほのぼのをずっとみてたい…
一方その頃てな感じの一味+ローさんの情報共有の様子も気になる
それぞれどれくらいサンジくん周りの情報や違和感に気づいてるんだろう…… - 68二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 23:05:50
「私が気になったのはこのお城の国民の数よ。こんなに大きなお城なのだから、この城が一つの国だと初めは思っていたの。でも、それにしては国民の数が少なすぎる。覆面をした兵士は恐らく50人程度、そして調理場にいる料理人はサンジが5人だと言っていたわ。そうすると、サンジとレイジュを入れても100人もいないことになるわね。」
紙に『国民の数が少ない(100人より少ない)』とナミが書くのを待ってロビンは話を続けた。
「それで、お忍びでこの宴を開いているとも考えたのだけれど、お忍びにしては大胆よね。まるで、追っ手のことなんか考えていないみたい」
「計画的にこの宴を開いたんじゃなくて、突発的に国から逃げ出して宴を開いたって可能性もあるなァ。とすると、それを行ったのは恐らくサンジの姉ちゃんだろな」
フランキーの言葉にロビンは頷いた。ナミが紙に『サンジくんたちは逃亡中?』と付け加える。
「えぇ、そうなるわね。でも、レイジュはかなり頭がキレる人だと思うの。民間人と天竜人がいる場所に海軍と海賊を集めるだなんて無茶な真似をする人だとは思えない」
「レイジュ、サンジの願いを叶えようとしたんじゃないかな」
チョッパーは床を見つめながら悲しそうな声でそう呟いた。
「サンジの願いをどうしても叶えようとして、レイジュは突発的に計画を実行したのかもしれのう。それまでサンジは城に幽閉されていたが、何かのきっかけで逃げ出せる状況になったんじゃろう。わしらもそう話し合っておったところじゃ」
ジンベエの言葉に続いてローが腕を組みながら静かに口を開いた。
「おれは北の海のことならある程度知っているが、こんな城を持つ国なんて一度も聞いたことがねェ。この城が脱出のためだけに存在しねェ限りは、この国は国土を持たない海上国家だろう。そして俺の勘が正しいならかなり高度な科学技術を誇る悪の国だ」
やけに真面目な顔をして、いや真面目なのはおかしくはないのだが、普段とは違い妙に熱を含んだ言い方をしたローに皆が珍妙なものを見るような視線を向けた。
「………なんだその目は」
「「「いや、なんでもない」」」 - 69二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 23:09:02
- 70二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 23:11:00
- 71二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 23:22:02
スレ主ssも最高に面白くて絵も上手いとか神かな?
サンジくんが無邪気で箱入り息子(牢屋だったけど)感あるのに、オービット号バラティエで育った原作のサンジにつながる言動もしてて塩梅が上手い……
一味とローもまんますぎてストンと話が入ってくる……続きが楽しみ - 72二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 23:22:08
- 73二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 00:24:22
保守
- 74二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 07:08:28
- 75二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 07:35:09
実は>>48にずっと囚われてるのでちょっと感想及び考察を吐き出したい
48のラストの「あと1日、あと1日したら、レイジュもお父さんたちもおれから解放されて幸せに暮らせるんだ。」
って文章及び一味の「サンジくんたちは逃亡中?」って考察を見てもしやこのサンジくんは好きなだけ食事を振る舞える三日間の宴期間を自分の余生だと考えてるんじゃないかと思えてきた……
原作サンジくんも「ヴィンスモークサンジは8歳の時海難事故で死んだ」発言とか壮絶な飢餓体験からゼフさんと共に生き残って以降自分の夢よりゼフさんの夢であるバラティエを守るのが俺の存在意義、だから俺が死んでもバラティエは守る。ないしホールケーキアイランドでも(ビッグマムの思惑通り俺がタヒねばルフィたちは自力で逃げ出して助かる筈だ)みたいな思考タイプだし、
もしかしてフィルムブルー軸のこのサンジくんは「城から逃げ出した時にヴィンスモークサンジは死んだ。
でもおれがまだ生きてるからレイジュもお父さんも困ってる。
最期にちょっとだけわがままを言っちゃうけど、でも、そのあとほんとにおれが居なくなればみんな幸せになれるよね」みたいな思考タイプなのでは?
死ぬことは恩返しじゃねェぞ‼︎って言ってくれルフィさん……
(後もしそんな思考タイプならフィルムレッドの「私が居れば(私がタヒねば)みんな(ウタワールドで)幸せになれる!」みたいなちょっと歪んだ幸せの価値観を持つウタちゃんに重なる部分が有るな、と思ったり。
本来なら他人の幸せの責任をウタちゃんもサンジくんも背負う必要はないのに、自分の幸せが他人によって形作られてるからこそ「自分が他人に尽くす」形でしか幸せを表せないちょっと歪な人間なんだろうな…とレッドとの関連性を練るねるねるねしてました)
長文失礼しました。
- 76二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 11:15:59
スレ主さんssを読みながら浮かんだ妄想話とかイメソン書いてもいいですか……?
お話もこのサンジくんもドツボすぎて…… - 77二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 12:47:28
「他にこの城のことで考えたことがある人は?」
ナミの言葉にフランキーが手を挙げる。
「アウ、あるぜェ!さっきトラ男が言ってたことについてだ。トラ男の言ってる高い科学技術を持った国ってのは正しいだろうな。ブルーホールに使われてる背景を投影する技術や人物認証システムはちょっとやそっとの科学者じゃ実用化できねェ。
それに、この城の兵士にどう考えても同一人物だって奴らがいる。おれの考えが正しければコイツらは"クローン"だ」
フランキーの言葉に動揺が走る。
「クローン………。同一人物を作っている可能性があるということね。ベガパンクほど、とは言わないけれど、確かに相当の科学技術を持っていると考えて良さそうだわ」
ロビンの言葉にルフィとゾロが首を傾げている。どう説明したものかと顎をさすったフランキーが伝わるか分からねェが、と前置きをしてルフィとゾロに向き直る。
「つまりだな……例えばだルフィ、お前の血や細胞を元にして全く同じやつがたくさん作られる。その同じやつらがクローンだ。おもちゃを作るみてェにな、どれだけでもルフィがつくれるってことだよ」
首が床につくほど傾けていたルフィはフランキーの説明で少し理解できたのか、ぐいと首の位置を戻した。
「わかった、やべぇ技術ってことだな」
「あぁ、そうだ。スーパーにやべぇ技術だ」
「まぁ、おれは分かってたがな」
「いや、あんたもどう考えても理解できてなかったでしょうが!」
「電伝虫に猫、巨大な生き物が多いのも科学技術が関係しておるのかもしれんのう」
ジンベエの言葉にナミが大きな瞳を揺らした。
「……あの大きな子供たちに使われたものと同じ技術かもしれないってこと?」
「確証はねェが、デカい電伝虫と猫をこの城でしか見たことねェってのは事実だ。あの野郎が行っていたものと同じ研究が使われている可能性はある」
パンクハザードの子供たちの姿を思い浮かべ、ナミは複雑な面持ちでフランキーの言葉を受け止めた。 - 78二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 12:53:32
- 79二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 15:09:00
ありがとうございます!巨大な電伝虫って確かにシーザーの研究と繋がりますね、気付かなかった……
ssを読みながらこの曲がずっと頭の中を流れてます……>>48の展開でよりブルーのサンジくんに似合うなと思いました
- 80二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 17:17:20
初めて聴いた曲だけど歌詞がピッタリすぎる
全て書き出して語りたいぐらいだけど、あにまんの規約に引っかかるから語れないのが残念
「ちょう」「そら」という歌詞がblueのサンジは亡きソラさんに精神的にすごく依存してそうなのでワーッてなりました………
- 81二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 19:04:37
「それにだ、おれはとんでもないものを見ちまった!レイジュのやつ毒性のある果物が好物だって言って食べてやがったんだよ!!つまりだな、レイジュは毒が効かないとんでも体質だってことになる!そうだろ?」
ウソップが身振り手振りをつけて話した内容に、チョッパーが大きな瞳をさらに大きく見開いた。
「毒が効かない!?……もしかして、レイジュが解毒が得意だって言ってたのって、他人の毒を自分に移すことで毒素を取り除くことができるってことだったのかも。あの時は教えてくれなかったけど…………」
「チョッパー、サンジの姉ちゃんも能力者なのか?」
「確証はないけど、その可能性はあるぞ。毒を摂取しても平気ってことは普通の人間とは違う体質をしているってことだからな」
チョッパーの言葉を聞いてナミが紙に『海上国家』『高度な科学技術を持った国』『レイジュは毒に耐性がある(能力者?)』と書き加えた。
「あとな、おれたちで話し合ったことなんだけど……」
ジンベエとローの顔をちらりと窺ってから、絞り出すようにチョッパーが話し始めた。 - 82二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 19:32:01
「サンジは体が弱いんじゃなくて、いや弱ってるのは正しいと思うんだ。でも、本当はちゃんと育ってたら元気だったんじゃないかと思うんだよ」
「ちゃんと育ってたら?どういうことなの、チョッパー?」
「サンジは長い間幽閉されてたんじゃないかな。それに、暴力も受けていた。レイジュが屈んでサンジに触るようにしてたのはきっとサンジのトラウマを刺激しねェためだよ。上から殴られてたんだ、サンジは。だから……!!」
言葉に詰まったチョッパーの頭をジンベエが大きな手のひらで優しく撫でた。
「わしがこうやってサンジを撫でようとしたんじゃが、酷く怯えておった。咄嗟に庇うように手を顔の前で交差させてのう。あれは、わしの行動がフラッシュバックを起こさせてしまったんじゃろう。すまぬことをした」
「………あいつはおれたちが寝てるあのベッドを"昔寝てたベッドみたいだ"っつってたな。今は冷たくて暗い場所で寝てるとも」
ゾロの言葉に息を呑む音が聞こえた。
「冷たくて暗い場所……。そいつはとても病人が寝るような部屋じゃねェな。どうやらおれたちの考えは合っていたようだぜ、トニー屋」
「……できることなら合ってて欲しくなかったぞ、おれは」
ぎゅと唇を結んだナミがゆっくりと紙に『サンジくんは幽閉されて暴力を受けていた』と書き加え、どうしようない怒りをぶつけるように紙を睨んだ。
「それと、あいつの首には痕があった」
そう言うとゾロはクイクイと自らの首元を指した。
「痕?」
「あァ、髪で後ろの方は見えなかったが、首……いや顎か?まァその辺にだ、何かを結ばれたかはめられていたような赤い擦れた痕があった」 - 83二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 20:46:11
「そいつァ……」
「ひどい………。痕がつくほどなんてよっぽど強い力で絞められたか、長い間着けさせられてたのよ」
重苦しい空気が部屋に広がる。すると、微かに声が聞こえた。一切に皆が体勢を整える。カチャとゾロが刀の鍔に手を添えた音がする。その間も声は次第に大きくなっている、どこかで聞いたことのある声が……。
「あのォ〜すみません。扉、開けてもらえませんか」
「ウォォォオオ!?って、ブ、ブルックかよ!!びっくりさせんなよなァ!!」
飛び上がってチョッパーと抱き合ったウソップが半泣きになりながら扉へと向かう。
ガチャリと鍵が開く音がして廊下の奥からヨホホホ!という明るい笑い声が聞こえた。
「すみません、みなさん。電伝虫さんを使おうと思ったのですが、こちらの方が早いかな〜と思いまして」
「心臓が止まるかと思ったわ……」
「サンジはどうしたんだ?ブルック」
「サンジさんは眠られてますよ。たくさん冒険の話をしたんですよ、それはそれは楽しそうに聞いてくださって。サンジさん、ルフィさんに話してもらうの楽しみにしてましたから、明日話をしてあげてください」
ブルックの言葉にルフィがニヤリと笑った。
「ニシシシ、仕方ねェな!おれも小さい頃シャンクスによく冒険の話してもらったから、今度はおれの番だな!!昨日はシャンクスの話してやれなかったから、明日してやるか」
「ヨホホホ、えぇ、ぜひそうしてあげてください。サンジさん、ルフィさんの麦わら帽子に興味津々でしたから」 - 84二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 21:18:25
この時点で一味+ローさん視点だとサンジくんの首のあとは強く絞められたかはたまた首輪でもつけられてたか、って考察しかできないのがまたしんどいな…
実際は長期間かなりの重量と拘束感がある鉄仮面を年単位でつけられてたって事実を知ったらみんなぶちギレそう - 85二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 21:57:46
まさか8歳の子供が鉄仮面つけられてたとは思わんわな………
レイジュの毒に対する耐性も産まれる前に遺伝子操作されたからだなんて思わないだろうし、よく考えたら原作でもサンジたちが遺伝子操作されてることを知ってる人っていないのか? - 86二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 22:24:39
今までの話をブルックにも伝えると、ブルックはそうですか、と静かに呟くとそれきり口を閉ざした。
幽閉されていたかもしれない、という可能性は孤独を知っている彼には思うところがあったのだろう。
普段ならば表情が読み取れる顔は、今は暗く沈黙していた。
「………ステルスブラック、それにポイズンピンクか………」
誰も口を開くことなく重苦しい空気の消えない部屋にローの声が響く。
「………トラ男、正直に言うけれどあんた昨日からちょっと変よ」
「おれは至って普通だ、ナミ屋」
「いや、普通じゃないでしょ!!なに、今の言葉!?急に呪文呟かないでくれない!?」
「呪文じゃねェ!ジェルマだ!!」
「ジェルマ?ジェルマってなんだよトラ男」
ルフィに問いかけられて平静を取り戻したのか、ゴホンと一つ咳をするとローは演説するように握りしめていた手を解き組み直した。
「ジェルマは北の海では最も人気があると言っても過言ではない『海の戦士ソラ』に出てくる悪の軍団だ」
すると、ルフィたちが相槌を打つ暇もなくローは語り続けた。 - 87二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 22:27:16
「ソラは巨大なロボットとカモメと共に、悪しきを倒し人々を助け海の平和を守るヒーロだ。おれも幼い頃はソラに憧れた……。
そして、ジェルマはソラの前に立ちはだかる強敵だ!!
ジェルマを統率するガルーダを筆頭に、火花を自在に操るジェルマのNo.1であり敵ながらカリスマ性も備えたスパーキングレッド!!
電気の力を使い捉えどころのない動きでソラを翻弄するデンゲキブルー!!
景色を投影し消える能力で隠密行動や奇襲攻撃を行うソラを最も苦戦させたと言っても過言ではないステルスブラック!!
豪快な戦闘スタイルと圧倒的なパワーで全てのものを薙ぎ倒すウインチグリーン!!
そして毒とその美貌で蝶のように華麗に戦うポイズンピンク!!
おれはソラを応援する正当な読者、ジェルマは憎きソラの敵だ。しかし、その強さと力に惹かれる読者も多い…………。これは全て北の海の常識だ」
とてつもない勢いと熱量で海の戦士ソラとジェルマについて語ったローは、何事もなかったかのように机の上にあったカップを手に取り口に運んだ。
先程の咳は平静を取り戻したわけではなくこの語りをするための準備だったらしい。
「え、お、おう。そうか、海の戦士、確かに惹かれるワードだな!!うん!!」
あまりの勢いに押された一味の中でウソップがどうにか感想を口にした。
「………トラ男ってこんなキャラだった?」
「ナミ、男はなァ、ヒーローってもんに一度は憧れるもんなんだよ……」
ローお前にもそういう頃があったんだなァと感慨深そうに頷くフランキーをナミをじっとりとした目で見つめた。 - 88二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 23:15:53
- 89二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 07:47:31
正当な読者さんの勢いが強すぎて笑ってしまった
- 90二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 07:59:12
「トラ男、『海の戦士ソラ』っていうのは絵本か?」
「いや、『海の戦士ソラ』は世経に連載されている話だ。実際のところ世界政府と海軍のプロパガンダではあるが、北の海では絶大な人気を誇っている」
「ジェルマ、ですか……」
「何か気になることがあるのか、ブルック」
ブルックの声に緩んでいた空気が再び張り詰める。
「えぇ、以前聞いたことがあるんです。ジェルマ王国という国が存在すると」
ブルックの言葉にローが目を見開く。
「それは本当か、骨屋。ジェルマが実在する、だと?」
「ジェルマは空想上の存在じゃないの?そういえば、私も世経で少し読んだことがあるけど、あんな国が実在するなんて……」
「えぇ、私も詳しく知っているわけではありませんが。ジェルマ王国は、『戦争屋』とも呼ばれる軍事国家で、代々ヴィンスモーク一族が支配している国だと」
「ヴィンスモーク、それがサンジたちの姓かもしれないってことだな」
ウソップの言葉にブルックが頷く。
「そうか………。だとしたらおれの推測はほぼ100%正しいことになる。ここは、この城は、ジェルマ66の城だ。そして、あの姉弟はジェルマ王国の王族で間違いないだろう」
「もしかして、レイジュがポイズンピンクということかしら?」
「あぁ、おそらくは。弟の方は………」
「あいつはステルスブラックとかいうやつなんだろう」
「なぜ、そう思うゾロ屋?」
「あいつは昨日、透明になることを望んでた。強くなれるってな。あいつはそのステルスブラックだが、透明になれねェんだろ、なんでかは知らねェが」
ゾロの言葉にブルックも同意するように頷く。
「もしかしたら、サンジさん。そのことでご家族から酷い扱いを受けていたのかもしれませんね。強さを求める軍事国家で求められた強さを持つことができなかったから……」 - 91二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 08:07:27
「そんな、酷ェよ!そんなの……」
「戦うことしか考えてないような奴らなら有り得ねェ話じゃねェが、胸糞悪りィ話だぜ」
「でも、そうするとサンジくんがその家族にまた捕まっちゃう可能性もあるんじゃない?」
ナミの言葉に部屋の空気が焦りを帯びた。
「確かに……!!サンジのやつ、また酷い扱い受けることになっちまうじゃねェか。さ、最悪の場合……!!」
「そんなことさせねェ。……サンジはおれたちで守る!!絶対にだ!!」
ルフィの言葉に皆が頷き合う。ナミは紙にジェルマの話を書き加えると、始まりと同じようにパンと手を一つ叩いた。
「いい?明日、私たちがやらないといけないのは、海賊と海軍の衝突を避けること、そしてサンジくんをジェルマから守ること。どれも確実に起きると決まったわけではないけれど、油断しないで」 - 92二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 08:25:43
専門的知識のフランキーウソップによる情報伝達、地頭のあるロビンちゃんナミさんの仮説、医学的に観点のチョッパーとロー、実際に見たことを正確に報告するジンベイさん、北の海出身のトラ男だから落とせる情報、年長者だからこその情報を落とせるブルック、なんとなくサンジくんと関わる回数が多いからこそ皆の仮説を補強できる情報持ちのゾロ、そして皆の決意を鶴の一言が如くまとめ上げる船長ルフィ、って感じでとてもバランスが良いぞこの一味
- 93二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 13:07:47
コツコツと廊下を歩く音がナミたちの部屋の隣で止まった。
確かにブルックが鍵をかけたはずの扉は容易く開いた。
わずかに空気が震える。
その震えはゆっくりとサンジの方へと進んできているようだ。
シンと静まり返った部屋に微かに絨毯を踏む音が響く。
その音はブルックの奏でた音色で穏やかに眠るサンジの横でぴたりと止まった。
肩までかけていた掛け布団がめくられ、青色のゆるいパジャマの袖が捲られる。
自分とは比べ物にならない細くて白い腕に空気が愉快そうにクツクツと揺れた。
いつ見ても"失敗作"であることをありありと示すコイツの体は無様だと思う。
空中にふわりと注射器が浮かび上がる。
まるで魔法をかけられているかのように注射器だけが部屋に浮かんでいた。
天井を向いていた注射器はくるりと針先の方向をサンジへと変えると、迷うことなくその腕にプツリと細い針を差し込んだ。
「う"ぅ…………」
「……ッ……ハハッ!!」
微かに呻いたサンジを見て堪えきれない笑いが漏れた。
液を全て注入し終わると再び注射器が部屋へと溶け込むように消えた。
眉間に皺を寄せて苦しそうに息をするサンジを見降ろす。
「成功するのか知らねェが……。よかったな、まだお前にも、国のためにできることがあるらしいぜ」
やがて、足音はサンジが眠るベッドから遠ざかっていった。
ーーガチャ。
扉が閉まる音が静かな部屋にやけに大きく響いた。 - 94二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 13:39:29
な゛ん゛で゛そ゛ん゛な゛こ゛と゛す゛る゛の゛!!
- 95二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 13:56:21
何やってんだニジ(?)お前ェ!!
- 96二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 16:46:43
- 97二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 16:56:51
チョッパーにお姉ちゃんって呼んでもらおうとするレイジュ
- 98二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 17:07:17
うわァァァなんて、なんてことを‼︎‼︎‼︎
サンジくんどうか無事でいてくれ‼︎
うぅ…しんどい…
後、話は変わるのですが>>78でスレ主様が投稿範囲内でのSS投稿可とのお話をされていたので質問をした76さんとは別の人間なのですが拙いながらゼフさん目線のお話を少し考えてみました…問題等ありましたら削除します…テレグラフ初めて使います…
いやそれにしても本編しんどい…
とある料理人の夢の話偉大な航路帰りの海。全ての食材が集まる海を見つけることこそ叶わなかったが、俺はそこに奇跡の海の可能性を見出した。
気の知れた料理人仲間と立ち上げた船で、再度態勢を整えたらまたオールブルーを目指そうなんて話だってしていた。
ーーーだがその夢は、嵐海の藻屑になって泡沫のように消え失せたのだ。
***
(ーーー何も、無くなった。)
共に夢を追う同志を喪い、追い迫る海軍を蹴り散らした先で拾った招待状に導かれこの場にやってきたのは単なる気まぐれだった。
招かれた城の先には所狭しと料理が並んでいた。
入り口で受け取った飲み物片手に、目についたピラフを口にする。
瞬間、味の感想より先にぐわりと口の中に唾液が溜まる。
(ーーー美味い。)
がっつきそうになる手を必死に抑え食事を続ける。
食べやすいように食感を残した野菜や魚介、苦手な人間が多い食材ひとつひとつ施された工夫、味は勿論見た目や色味でも客を楽しませてやろうという気概すら感じる盛り付け、どんな種族でも食べられるよう用意された食器やカトラリー。
これは、この料理を食べる人の為に精一杯の心を込めた料理だ。
ーーーここまで他人の為に尽くす料理を作れるとは。
…telegra.ph - 99二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 17:09:27
- 100二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 17:27:14
このレスは削除されています
- 101二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 17:31:09
ゼフとからむサンジ
- 102二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 17:52:18
一味の好物を聞くサンジ
- 103二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 18:39:18
- 104二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 18:47:38
マリモのぬいぐるみ持ってるサンジ
- 105二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 19:03:26
サンジがナミとロビンに花をプレゼントする話
- 106二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 19:06:13
ゾロかブルックと添い寝するサンジ
- 107二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 19:14:53
ありがとうございました!本編の展開をもう少し練りたいので2つ書くことにします
1.チョッパーにお姉ちゃんと呼んでもらおうするレイジュ
2.ナミとみかんの話をするサンジ
3.ゼフとサンジ
4.一味の好物を聞くサンジ
5.マリモのぬいぐるみを持ってるサンジ
6.ナミとロビンに花をプレゼントするサンジ
7.ゾロかブルックと添い寝するサンジ
dice2d7=4 7 (11)
- 108二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 19:16:45
③添い寝する人
1.ゾロ
2.ブルック
dice1d2=1 (1)
- 109二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 19:26:16
film blueのゾロ大活躍だな、さすが両翼
- 110二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 19:54:11
幕間②
ぐるりと丸いテーブルを囲んだ一味とサンジは思い思いに話を続けていた。
ローは大きなシロクマ(ペボと言うらしい)の元へと帰っていった。ローはハートの海賊団という海賊の船長で、ルフィたちとは同盟関係らしい。
友達なんだとルフィは言っていた。同盟関係は友達のことらしい。
「そうだ、ルフィたちの好きな食べ物ってなんだ?」
ビーフシチューを頬張っていたルフィがごくんと喉の形を変えてビーフシチューを飲み込んだ。詰まらないのがすごいな。
「おれは肉が好きだぞ!!」
「肉か〜!でも、ルフィはなんとなく分かったよ。だって、肉ばっかり食べてるんだもん」
ルフィを初めて見かけた時もテーブルには、様々な種類の肉料理が所狭しと並べられていた。それが一口二口でルフィの手元から消えてしまうのだから、ルフィの食べる速さと食欲は料理人として清々しいものがある。
「ナミさんは?」
「私はみかんが好き。船で育ててるのよ」
「あ、みかんのジュレ褒めてくれたもんね!褒めてくれて嬉しかった。明日はみかんを使ったシャーベットとクッキー、あとサラダも作るから楽しみにしててね!!おれ、ナミさんのために気合い入れてつくるよ!」
そう言うとナミさんはにっこりと笑って、楽しみだわと言ってくれた。
「チョッパーはわたあめが好きなのか?」
「そうだぞ!おれ、わたあめがあれば生きていける!!」
「それは、偏りすぎだけど……。そうだな、明日はチョッパーの形をしたわたあめを作ろうか」
「えーー!?おれの形をしたわたあめ!?そんなことできるのか、サンジ!!すげェーー!!!!」
チョッパーにキラキラとした目で見つめられて、なんだかすごい天才になったみたいな気持ちになる。
隣に座っている小さな体をぎゅうと抱きしめると、とても暖かかった。
「えへへ、なんだよサンジー!甘えん坊だな!」 - 111123/01/18(水) 20:32:25
幕間②-2
「フランキーは?」
「アーウ!おれか?おれはハンバーガーだなァ!あとは、何と言ってもコーラだ!!コーラでおれは動いていると言っても過言じゃねェ。おれたちの船、サニー号もコーラで動いてるんだぜ」
「え、船がコーラで動いてるのか!?すごいな!!」
コーラで動く船はどういう仕組みなんだろう。フランキーもコーラで動いてると言ってたけど、見た目がロボットぽいことと関係があるのだろうか。
見るからに骨のブルックも不思議だけど、フランキーも不思議な人だ。
ルフィたちが乗ってるサニー号はおれの作ったコーラでも動くのかな。おれの作ったコーラでルフィたちがひとときでも冒険をすることができるなら、なんだかおれも船の仲間になれたみたいで嬉しい。
「ブルックは、カレーかな?」
「おや、よく分かりましたねー!そうです、私はカレーが大好物なんですよ」
そう言ってヨホホホと笑ったブルックはものすごい食べ方でカレーを食べていた。
「ハハッ、だってブルックずっとカレー食べてるだろ?食べ方が……なんだか不思議だけど、美味しそうに食べてくれるから嬉しいよ」
「えぇ!とっても美味しいですよ!もう頬っぺたが落ちてしまいそうです……って私、落ちる頬っぺたないんですけどー!!」
チョッパーがこそりと教えてくれたが、これはブルックのスカルジョークらしい。確かにブルックに落ちる頬っぺたはなかった。
けど、不思議なことにその顔からは表情が読み取れて、頬っぺたも落ちてる気がするから不思議だ。ルフィたちは不思議なことがいっぱいで、世界は広いんだなぁと思う。
やっぱり、一度でいいから城の外に出てみたかったな。 - 112123/01/18(水) 21:33:27
幕間②-3
「ロビンちゃんの好きな食べ物は?」
暗い方へと行きかけた思考を頭を振って振り払うと、今度は向かいにいるロビンちゃんに声をかけた。
せっかくルフィたちといるのだから楽しまないと、ルフィたちに申し訳ない。
「そうね、私はサンドウィッチが好きよ。あと、あまり甘くないケーキも。サンジのケーキは甘さがちょうど良くてとても食べやすいわ」
「ロビンちゃんの口に合って良かった。サンドウィッチは今日は種類が少ないんだけど、明日はたくさん作るから食べてみて!」
「あら、それは嬉しいわ。楽しみにしてるわね、サンジ」
ふふ、と笑ったロビンちゃんは大人の雰囲気が漂っていて、紅茶を飲む仕草も様になっていた。
「えっと、ジンベエは何が好きなんだ?」
「わしか?そうじゃのう、わしはもずく酢とフルーツが好きじゃな」
「もずく酢!本で読んだことあるよ、でもごめんね、おれ作った事なくて……」
「いやいや、気にせんでくれサンジ!もずく酢を売っているレストランはあまりないからのう!!じゃが、サンジのフルーツを使った料理はどれも最高に美味しいわい、本当にサンジは最高の料理人じゃな」
ワハハと豪快に笑ってジンベエはパイナップルを齧った。でも、ジンベエが好きだというもずく酢を用意できなかったのは悔しい。今からでも作れないだろうか。よし、あとでもう一度作り方を調べてみよう。明日は無理でも明後日には作れるかもしれない。 - 113123/01/18(水) 21:34:06
幕間②-4
「ウソップは何が好きなんだ?」
「おれは秋島のサンマだなァ。旬の魚が好きなんだが、特に秋島のサンマ、あれは最高に美味い!だから、まさかここで出会えるとは思わなかったぜ。秋島じゃねェってのにこの美味しさ!!身はほろりとして、しかもこんなに脂がのってて最高にジューシーだ……。すげェなサンジは!」
「えへへへ。ありがとう、ウソップ。勇敢なゴッドウソップに褒められるだなんてめーよあることだな!」
秋島のサンマはレイジュが取り寄せてくれたものだ。海鮮は特に鮮度が気になったけど、レイジュはどうやったのか各地の海鮮を抜群の鮮度を保ったまま届けてくれた。
「ゾロは?」
「おれは、白米と海獣の肉……まァ、酒に合うならなんでも好きだな」
「お酒かァ、おれ味見でしか飲んだことないけど、つまみ作るのは結構得意なんだぞ!レイジュにも太鼓判を貰ってるんだ」
「ヘェ、そりゃ楽しみだな。もう少し取ってくるか」
そう言ってゾロは酒を片手に席を立った。
「あ、おすすめのつまみ教えればよかったな」
「ゾロなら戻ってきてからで大丈夫だぞ。あいつ、すげェ酒に強いからよ、ずっと呑んでるぜ」
「そうそう。ほんと、酒代が嵩むったらありゃしないわよ。それより、サンジくん、あとでサニー号で作ってるみかんを採ってくるから私のみかんで料理作ってくれない?」
「え、いいの!?作る!作るよ!ナミさんのみかんで!!」
「とびっきり美味しいみかんだから、サンジくんの手にかかればさらに美味しくなっちゃうわね」
そう言ってナミさんは大きな瞳でパチリとウインクをした。
ナミさんの作ったみかんならきっと最高に美味しいに違いない。
明日の朝が楽しみだな。忙しくもなるけれど、こんなに喜んでくれるなら作り甲斐がある。
一味の顔を見渡して、サンジはにっこりと笑った。 - 114二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 22:12:20
わーーいスレ主様読んでくださりありがとうございます〜‼︎ゼフさんの心情描写気にして書いていたので触れて頂けて嬉しいです‼︎
そしてピラフはこっそり原作サンジさんがギンさんに提供した料理イメージでした…‼︎
幕間②ほのぼのなのにちょっとネガティブなサンジくん思考が混ざってて歯痒くなる感じが堪らんです…‼︎
ほんとこのサンジくん愛しくて可愛くて可哀想でなんかもう一味みんなでぎゅうぎゅうに抱きしめてあげてほしいです!
- 115二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 22:44:53
102ですありがとうございます
明るいのに切ない… - 116123/01/18(水) 23:05:42
幕間③-1
普段よりも早い時間に横になる。
サニー号の寝具とは違い、まるで王族のような上等なベッドは驚くほど寝心地がいい。
どこでも寝ることができる自信があるが、整っているに越したことはない。
くわと大きく欠伸をするとゾロは本格的に寝る体勢に入った。
暫くすると、隣のベッドから微かに動く音がした。
なんだ、まだ起きてやがるのかコックのやつ。ったく、明日起きれねェでも知らねェぞ。そう思いつつ、寝ようとしたゾロはごそりという音に片目を開けた。
隣のベッドを見ると、ゾロの方をじっと見つめる青い瞳とバッチリ目が合った。
「………なにやってんだ、お前」
「起きちゃったんだよ、そしたら………」
「寝れなくなったのか?ガキだなァ」
「おれは大人だぞ!!でも、なんだか寒くて……。寒いのには慣れてるんだけど、おかしいな」
ぐいと掛け布団を首元まで引っ張ると、サンジはおずおずとゾロを見つめた。
「ゾロ暖かそうだな」
「おれは湯たんぽじゃねェぞ」
「でも、ゾロなんか体温高そうだし……」
「お前がガリガリすぎんだよ、なんだ1人じゃ寝れねェのか?」
そう言ってゾロがニヤニヤと笑うとサンジは反論しようと口を開けて、また閉じた。
「……寝れない」
「ったく、仕方ねェな。おら、そっち詰めろ、お前が寝付くまで見ててやるよ」
「え、ほんとか!?」 - 117123/01/18(水) 23:10:26
幕間③-2
パアッと輝くような笑顔を見せると、サンジはいそいそとベッドの端へと詰めた。
掛け布団を捲ると、ポンポンと空いたスペースを叩いてゾロを促した。
「ったく………」
ボリボリと頭を掻いてゾロはサンジが寝ていたベッドに横になる。
「お前がちっこいとはいえ、男2人は流石にむさ苦しいな」
「おお、もうあったかいぞ!ゾロすごいな、湯たんぽ搭載してるんじゃないか」
「してねェよ、バケモンかおれは。んなこと言ってねェで、おら、さっさと寝ろ」
ゾロが寝かしつけるようにポンポンとサンジの背中を叩くと、おとなしくサンジは目を閉じた。
あんなに寝れないと言っていたのに、安心したのかすぐに規則正しい寝息が聞こえてくる。
肘枕をしながらそれを見守っていたゾロは、ふとサンジの首元に傷痕があるのを見つけた。
小さな常夜灯の灯りではっきりとは見えないが、顎に近い場所に何かが擦れたような跡が確かにあった。
首元を拘束するようなその跡は見ていて気分の良いものではない。
今日会ったばかりで加えて少々生意気だが、無邪気に人に尽くすことを幸福と感じているらしい子供が受けていたかもしれない仕打ちがいやでも頭に浮かぶ。
胸糞悪くなって、柔らかい金髪に手を伸ばした。
すやすやと眠るサンジの丸い頭を数回撫でると、ゾロはするりとベッドから抜け出した。
どう考えてもコイツは訳アリだ。だが、一人で深く考えても大した結論は出やしねえだろう。なら、さっさと寝たほうがいい。
そうして、今度こそゾロは自らのベッドで眠りについた。 - 118123/01/19(木) 00:41:33
【最終日】
調理場では朝早くから香ばしい匂いとフライパンの上で食材が焼ける音がする。
最終日だということもあって、料理人たちは皆張り切って料理に取り掛かっていた。
「___い!___おい!チビナス!!ったく、ぼーっとしやがって。体調でも悪いのか」
「えっ!?い、いや、悪くないぞ!おれは元気だ」
先程から偶に動きが鈍くなるサンジにゼフは疑いの目を向けた。サンジは、ゼフが調理法やコツを教えるときなどはしっかりとした眼差しで聞いているのだが、そうじゃない時には体を庇うような動きをする。
「体でも痛めたか?」
「お?サンジ、筋肉痛かァ?」
「ほっせぇ腕してるもんなァ!海のコックたるものもっと鍛えねェと荒波にすぐ呑まれちまうぞ」
「パティ!カルネ!てめェらは口挟む暇あるんならもっとキビキビ動け!」
「だからなんでお前が仕切ってんだよ、赫足!!」
ゼフに蹴られながら持ち場へと戻っていくパティたちをサンジはぼんやりと見送った。
「元気なんだ、本当に。でも、ちょっと体が変でさ……」
「変?」
サンジはフライパンからは手を離さず、俯きがちにそう言った。
「なんかギシギシするっていうか、なんだろう」
「成長痛か?とにかく無理して倒れられても迷惑だ。いいかチビナス、体調管理もコックの仕事のうちだ。無理はするんじゃねェぞ」
「身長伸びたらおれ大人になるかな?」
「身長なんざ関係ねェよ。人間、大事なのは心だ」
覚えておけ、とサンジの胸元をトンと叩いてゼフは大鍋へと向き直った。
「わ、分かった!」
人間は心!!と覚えるようにゼフの言葉を繰り返すサンジに、ゼフは深く刻まれた眉間の皺を緩めた。 - 119二次元好きの匿名さん23/01/19(木) 03:45:51
保守
- 120二次元好きの匿名さん23/01/19(木) 09:00:21
ゾロが兄貴してるのめっちゃいいです………
ゼフもサンジのことまだ成長痛があるような何らだと思ってるし、21歳だと知ったらみんなどんな反応するんだろうか…… - 121123/01/19(木) 09:33:46
「上手くいったか、ニジ」
電伝虫に話しかけると、向こうから自信に満ち溢れた声が返ってきた。
「ハッ!当たり前だろ?にしても、こんなことで本当にあの失敗作が役に立つのかァ?」
「父上がそう言っているんだ、なにか確証があってのことだろう」
「んで?次はなにをすりゃいいんだ」
「一旦、ヨンジと合流しろ」
船の上から遠くに見える城を見る。最近はたまに行っては出来損ないの弟に階位を理解させるためだけの城だった。しかし、どうやらその出来損ないが企ててくれた大宴会などという馬鹿げた計画のおかけで、重要な城になるらしい。
____我ら300年の悲願が果たされる時は近い。
そう語った父の顔はえらく上機嫌だった。レイジュが相変わらず信用ならない行動を取っているというのに、お咎め無しなようだ。
「で、ヨンジと合流して?」
「お前にはまだ重要な任務がある、が取り敢えず待機しておけ。これからおれ達も城へと向かう。そして、海賊と海軍が衝突する騒ぎに乗じて、北の海の王族を始末する。…………6人、でな」 - 122二次元好きの匿名さん23/01/19(木) 10:04:40
6人…………
不穏すぎる、もうこの先はサンジくん鬱展開に突入するんだろうなと思うとお労しいけど、テンション上がってしまう自分もいる……ごめんサンジくん…… - 123123/01/19(木) 11:15:01
父は、やはり今日何か起こすつもりでいるのだろう。
何か起きたとしても、サンジだけは守らないといけない。あの子は私が守らないと………。母さんの願いを守るためにも。
「おはよう、レイジュ」
声をした方へと振り向くと、そこには黒髪の女性が立っていた。手配書でよく見た顔だ、そして一昨日も。
「私に何か用があるのかしら、ニコ・ロビンさん」
「えぇ、お願いしたいことがあるのよ。宴が終わった後の出航順についてね」
出航順……。何か問題があっただろうか。だけど、この宴はあの戦争が終わってから2日で考えて実行したものだから、杜撰にも程があるものだ。サンジの願いを叶えることが何よりも優先するべきことだった。
「あなたはとっても頭が良い人だと思ったけれど、気づいていないのかしら?天竜人の後に、海賊船と民間人を乗せた客船が同時に出航する、これはとても危険なことだと思うのだけれど」
「………海軍」
「えぇ、そうよ。海軍は海賊を捕まえることを目的としてこの宴に紛れ込んでる。民間人が犠牲なることはできるだけ避けるとは思う。けど、このままだと城を出ると同時に大捕物が始まるのは必須でしょうね」
失念していた。杜撰どころの話ではないが、そこまで頭が回っていなかった。
「ありがとう。助かったわ、ニコ・ロビンさん、天竜人を先に出航させた後、客船を出航させる。そして、最後に海賊船。これなら、まず民間人に被害は及ばないはず。ただし、海賊と海軍の争いに関しては私たちがどうこうできる話ではないわ」
「えぇ、分かってる。そちらは私たちに任せておいて。どうにか、最小限の争いで済むようにするわ」
ロビンはそう言うと長い黒髪を靡かせて去っていった。
サンジには決して気付かれないようにしないといけない。
海賊船が出航したらすぐにサンジを城の奥へと連れて行こう、そして船で料理人たち共にサンジを逃す。
私は死んでもいいと思っていたけれど、どうやら父は私も許す気らしい。
すぐに追っ手を差し向けることなど容易だったはずなのに、父はサンジを本当に死んだものとして扱っているのかだろう。死んだ者がどうしようと興味も湧かないのだ。だから料理の本や道具をサンジに与えるのも許していた。
しかし、父はなにかを思いついた。
………嫌な予感がする、私じゃどうしようもできないことが起こってしまうような予感が。 - 124123/01/19(木) 11:47:36
「おはよう、みんな!今日が最後だけど明日の出航まで思う存分楽しんでくれよ!」
ニコニコとメインホールへと現れたサンジはルフィ達の元へと一直線に駆けてきた。
「なんか機嫌いいな、サンジ」
「えっへへへ!わかるか、ウソップ?おれ、すごい海の料理人に料理を教えてもらったんだよ!あかあしのゼフっていう人でさ、すごく料理が上手いし何より強くて優しいんだ」
「赫足……クック海賊団のゼフか。生きておったんじゃなあ。嵐に呑まれたと聞いてから全く噂を聞かなくなったが」
「やっぱりゼフって有名人なんだ!おれ、運がいいな。そんな人に教えてもらえるだなんてさ」
「それに、ルフィたちにも出会えたし!おれ、ルフィ達に会えて本当に良かったよ」
ぐるり、とサンジにルフィの腕が巻き付いた。
「ニシシシ!おれもだぞ、サンジ!!サンジに会えて良かった!だからよ、サンジ。お前、俺の船のコックにならないか?」
ルフィの言葉にサンジは信じられないものを見たかのように目を見開いた。
「え……。おれ、が、ルフィたちの船のコック……?」
「あぁ!おれはお前しかいねェって思ってる」
「私たちも賛成よ。サンジくんが私たちと旅をしてくれたら嬉しい」
「あ………おれもルフィたちと冒険できたら嬉しい……。けど、ごめん。おれはルフィたちの船には乗れないよ。おれ、はそんな資格がない」
拳を握りしめてぎゅっと目を瞑り、俯いたサンジにルフィは顔を覗き込むようにしゃがむと黄色の頭をガシガシと撫でた。
「そっか、分かった!でもよ、サンジ。資格がねェなんてことはねェぞ。お前は最高のコックだ、優しくてうんめぇメシを作れる最高のコックだぞ。覚えておけよ」
「うん……うんッ、ありがとう!!ルフィ!」
上を向いたサンジの顔には笑顔が浮かんでいて、ルフィたちもそれに応えるように笑った。
「おし!!じゃあ、今日もメシ食いまくるぞーー!!!」 - 125二次元好きの匿名さん23/01/19(木) 15:24:50
筆が…筆が速い…!
- 126二次元好きの匿名さん23/01/19(木) 15:59:31
このレスは削除されています
- 127二次元好きの匿名さん23/01/19(木) 18:00:58
このレスは削除されています
- 128二次元好きの匿名さん23/01/19(木) 18:46:08
んァァァァ不穏だけどこういう展開好きだ
フィルムブルーサンジくんの個人的イメソンを貼りつつ続き楽しみにしてます
【初音ミク】昨日をうまく生きられなかった私達はきっと明日もうまく生きられない。【オリジナル曲】by HaTa - 129123/01/19(木) 19:25:38
- 130123/01/19(木) 19:29:56
「ごめんな、ルフィ。せっかく誘ってくれたのに断っちゃって…」
そう言ったサンジは見るからにしょぼしょぼと萎れていた。ルフィの様子をちらちらと窺いながら綺麗に切り分けられたステーキを口に運ぶ動作も、まるで叱られた子どものようにゆっくりしている。
「気にすんなって、サンジ。おれは、サンジが嫌だと思うことはしたくねェ!!お前はおれに美味いメシを食わせてくれたからな」
これもうめェ!!と、甘い黄金色のタレがとろりとからんだ柔らかな肉を挟んだ肉まんをバクバクと頬張りながらルフィはニカリと笑った。
「ルフィにとってメシはお宝だもんな!!」
サンジの膝の上でチョッパーが元気よく言った。サンジを励まそうとしてくれているのだ。そんなチョッパーの帽子にぽすんと顎を乗せると、サンジは眩しそうにルフィを見やった。
「……ルフィはきっと素敵な海賊王になるな」
「サンジは何か夢はないのかァ?願いごとは聞いたけどよ、なりたいもんとかさ。ちなみにおれは勇敢な海の戦士になることだ!」
ウソップがそう聞くと、サンジは持っていたナイフとフォークを置き、少し間を置いてポツポツと語り始めた。 - 131123/01/19(木) 20:27:00
「おれは料理人になりたいってずっと思ってたんだ。むかし、おかあさんがおれに読んでくれた本があってさ、その本には『昔むかし、ある時神さまは食物を創り、悪魔さまは調味料を造った。そして天使さまと人は協力して食物と調味料で料理を作った。』って書いてあったんだ。幼かったから細かい話の内容はよく分からなかったけど、その言葉だけはすごく印象に残った」
そこで言葉を切ると、ふるりと青い瞳が揺れた。サンジは嗚咽を抑え込むようにごくんと喉を鳴らすと、再び語り始める。
「………だって、素敵だろ?料理はいろんな人が、いつもは喧嘩してるような神さまと悪魔でさえも協力してできたものなんだ。だから、おれ思ったんだ。神さまと悪魔と天使さまと、人間が協力してできた『料理』で、みんなを笑顔にできたら、それはすごく幸せなことだなって。
そしたら、おかあさんも『とっても素敵なことね』って……。『サンジならきっとみんなを幸せにできるわよ』って言ってくれたんだ。
……だからおれ、料理人になりたいって思ったんだよ」
サンジの様子からすでに彼の母親はこの世を去っていることは分かった。
キラキラと光る空のような瞳が涙を湛えているのを見て、チョッパーが小さな手でサンジの頬を撫でる。
それにサンジは小さな声でありがとうと返した。
「………そうだったのですね。えぇ、お母さんのおっしゃる通りです。とても暖かくて素敵な夢ですよ、サンジさん」
「アウ!それに、おめェは今!!みんなを幸せにするスーパーな料理人になってるぜ!!母さんもきっと喜んでくれてるぞ」
「そうだといいなぁ。……あと、おれもう一つ夢があるんだ」
「……世界一の料理人になる、か?」
ゾロの言葉にサンジは首を横に振る。
「ゾロは世界一の剣豪になるんだよな。ゾロは強いからきっとなれる。……でも、おれの夢はもう叶いそうもないからさ……。だから、みんなには秘密!!」
「そんな寂しいこと言うなよォ、サンジ!!ぜってぇ叶うぞ!!このウソップさまが保証する!!」
ドンと元気づけるようにウソップが自らの胸を叩く。
「そうじゃ、きっと叶えらる、諦めたらいかんぞ」
「……うん」
ウソップとジンベエの言葉にもサンジは曖昧な笑顔で頷いて見せるだけだった。
「……………」
そんなサンジの様子をルフィはじっと見つめた。 - 132123/01/19(木) 20:29:44
前スレ172で頂いた素敵すぎるネタとセリフを元に書きました
改めてありがとうございます! - 133123/01/19(木) 20:37:09
城の裏の港にそっくりな眉毛をした3人の男と、無造作に跳ね上がった金髪の男が立っていた。後ろには覆面をして銃を携えた男たちが控えている。
「どうやら、出航順を変更するらしい」
「ヘェ、レイジュに入れ知恵でもした奴がいるのか?アイツにしては雑な計画だからつけ込むにはうってつけだったんたがなァ」
イチジの言葉にニジは愉快そうにゲラゲラと笑った。
「どうするんだ、父上?」
イチジは前に立つ父ーージャッジーーを見上げた。
ジャッジはピクリとも表情を動かさない。
「すでに準備は整った。イチジ、ニジ、ヨンジ、これより我らは計画を実行する。海軍とはいえ、下っ端どもしか来ていない。統率が取れるような者はいないだろう。憎き北の海の国々へと復讐を遂げる日が来た!!我らジェルマ王国が再び北の海の頂点に立つ日も近い」
「了解」 - 134二次元好きの匿名さん23/01/19(木) 20:39:02
アッアッアッ前スレ172です…‼︎
ネタ使って下さりありがとうございます‼︎
うわァァァァあの拙い台詞が一味に夢を語る素敵な台詞に昇華されている‼︎
いやもうめちゃくちゃ最高です此方こそありがとうございます‼︎
- 135123/01/19(木) 21:22:18
「……とは言ったものの、本当にあの失敗作が役に立つのかよ」
頭の後ろで手を組みながらニジは大股で城の裏庭を進んだ。
「父上の技術がさらに進化を遂げたということだろう。まぁ、あいつとおれたちの階位は変わらないさ」
「なら、良いけど。あいつと肩並べて戦うなんざゴメンなんだよなァ。ぴいぴい泣いて足引っ張られたらたまったもんじゃねェ」
不貞腐れたようにブツクサと文句を並べるニジにイチジはサングラスの下から視線を向ける。
「それくらいにしておけ、ニジ。戦場に私情を持ち込むな。おれたちはただ敵を殲滅するのみだろう」
「へいへい。……って、さっきからテメェは何やってんだよ、ヨンジ」
「ん!?いや、なんでもないぞ。少し、腹が減っただけだ!」
物足りなさそうに腹をさすっていたヨンジにニジが不審そうな目を向ける。
「さっき食っただろうが、おれが持ってきてやったサンドウィッチをよ」
「ハッ、なんだヨンジ。ネズミの餌でも食いたいのか?」
ニヤリと揶揄うように口元を曲げたイチジにヨンジは慌ててぶんぶんと首を振る。
「そんなわけないだろう!!仕方なくサンジの料理も食ったが、あれはまさにネズミの餌だった!!人が食うもんじゃねェ!!」
「そりゃ、そうだろ。いつだか作ってたケーキなんか見るからに甘そうで、おれは見ただけで吐くかと思ったね」
ニジが吐く仕草をして見せると愉快そうにイチジも笑う。
ヨンジもそれに合わせるようにゲラゲラと笑った。 - 136二次元好きの匿名さん23/01/19(木) 21:36:26
保守
楽しみー - 137123/01/19(木) 22:20:09
「ペボ」
「あれ?キャプテン!!」
声をかけると同時にこちらへと駆け寄ってくるペボにローは的確に指示を出した。
「海軍がうろついている。もし、海賊と海軍が衝突する事態になればおれたちハートの海賊団で民間人を保護し、安全な客船まで誘導することになる。シャチたちにも伝えて準備をしておいてくれ」
「アイアイ!了解、キャプテン!!」
元気よくポーズをとり船内へと戻っていくペボを見送り、ローは再び城内へと戻っていった。
「これでは海賊共を捕まえるのは難しいな……」
出航順を変更するという趣旨の紙を見ながら壮年の男は呟いた。顎に手を当て考え込んだ男に若い男が声をかける。
「どうします?海に出た船を追いかけますか?」
「しかし、あちらの方が数が多い上に、追えば追うほど客船に近づく恐れがある」
湯気の立ち上る肉の刺さった串を手に持った若い女が駆けてくる。
「無理をして捕まえることはない、とのことです。現場の判断に任せると」
「分かった。ならば、機を見て民間人に被害が出ないようであれば海賊を捕まえることにする。それまでは待機だ」
「分かりました。って、あれ?」
変だな、と眉根を寄せた部下に、男は他の隊員や別働隊の隊長へと連絡をしようとしていた手を止めた。
「どうした?」
「いえ……。あの、さっき先輩の隣にいた人って前からいましたっけ?」
「なんだと?」
慌てて男が振り返る。しかし、若い男の姿はどこにもなかった。 - 138二次元好きの匿名さん23/01/19(木) 23:23:30
- 139123/01/19(木) 23:58:55
- 140二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 07:32:36
めちゃくちゃかわいい
- 141123/01/20(金) 07:43:11
「さっきはありがとう、ニコ・ロビンさん」
サンジたちが囲んでいたテーブルに、レイジュがにこやかな笑みを浮かべながらやってきた。
「お役に立てて良かったわ。せっかくのサンジの夢の舞台だもの」
「なんの話?」
「日程に不備があったのよ、それを教えてくれたの」
きょとんとした顔でレイジュを見上げたサンジに、レイジュはそう答えた。
そして一味の方へと顔を向けると含みを持った顔でウインクをしてみせる。
どうやら、詳しくサンジに話をするなと言うことらしい。
ルフィやゾロが今の仕草で分かったのかは微妙だが、元々サンジに説明するような性格でもないから大丈夫だろう。
そう考えてナミは同じようにウインクをして返事をしてみせた。
「サンジ、今日も広場にわたあめあるのか?」
「もちろん!今日はフルーツの形をしたわたあめがあるぞ、一緒に食べに行こうか」
「すっげぇーー!!行く行く!!」
チョッパーを膝から下ろし、立ちあがろうとしたサンジの耳に地鳴りのような轟音が響いた。
ドォン!!
ぐらりと地面が揺れる。
思わず体勢を崩したサンジを慌ててレイジュが抱き止めた。
「砲撃だ!!!」
ウソップの叫び声と周囲のつんざくような悲鳴が、夢のようにどこか遠くで聞こえた。 - 142二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 09:20:46
あぁ………始まっちゃった………
- 143123/01/20(金) 10:02:22
「麦わら屋!!」
メインホールの入り口から鬼哭を携えたローが飛び込んできた。
「トラ男!何があったの!?」
「海軍の船が砲撃を開始した。海賊たちも応戦を始めている。迅速に対応しないとまずいぞ!おれの船員たちにはもう指示を出した、避難誘導は任せろ」
おい!そう声をかけられてレイジュはローの方を向いた。
「まだ宴は終わってねェが、客船を出す準備をしてくれ。このままだと巻き込まれるぞ!」
ローの言葉にレイジュは小さく震えるサンジを抱く腕に力を込めた。弟にもこの状況を知られてしまった。悔しくて仕方がない。だが、今は最善の選択を取るしかないのだろう。
「客船ならいつでも出航できるわ。雇った船だけど、腕は信用できる。民間人を乗せたらすぐにでも出航するように指示を出す」
レイジュが話す間も外の轟音は絶えることがない。
会場では既に揃いの白い服を着たハートの海賊団たちが避難誘導を開始していた、ジンベエが指示を出し知己らしい魚人たちもそれに加わっている。
「た、助けてくれー!!!」
ホールから出る人並みに逆らって煌びやかな服をきた壮年の男や同じように着飾った女たちが入ってきた。北の海の国の王族や貴族だ。その後ろから覆面をした兵士たちがホールへと乗り込んでくる。
「お、襲われたんだ!!あいつらに!!この城の兵士だろう、どうして私たちを襲ってくる!?」
「あなた達、私達を葬るためにここへ集めたの!?」
その声に会場に動揺が広がる。子供が泣き出す声も聞こえてきた。 - 144123/01/20(金) 10:06:22
「どういうことだァ、レイジュ!?」
「………私たちの城の兵士ではないわ。でも………。私の"国"の兵士の仕業に間違いない」
唇を噛んだレイジュにローが静かに声をかける。
「来たんだな、ジェルマが」
「え?あなたどうして、それを」
「おれは『海の戦士ソラ』の愛読者だ。ブルーホールへ行ったとき、鷲を模った像があった。そこには、66の文字が彫られていた。それに、ブルーホールに使われている技術はステルスブラックの能力だ。そして、毒を毒としないお前はポイズンピンクなんだろう」
狐につままれたような顔をしていたレイジュは、ローの言葉を聞き終えると、落ち着かせるためにサンジの柔らかい髪を撫でながらくるりと巻いた眉を下げて笑った。
「……そんなに、熱狂的なファンがいてくれただなんて。嬉しいわ」
「勘違いするな、おれはあくまで正当な読者。ソラを応援する男だ」
帽子の鍔に手をかけてローはぶっきらぼうにそう言った。
「レイジュさん!!早くサンジさんを安全な部屋へ!!」
「分かったわ、私もすぐに合流する!私は、できることがきっと少ないけれど………。できる限りの反抗はしてみせる」
レイジュはサンジの手を引いてホールから飛び出した。 - 145123/01/20(金) 11:24:26
私と変わらない大きさの弟の華奢な手を引いて廊下を進む。
城の最上階にある部屋が一番安全だろう。あの部屋の鍵は私しか持っていないのだから。
「サンジ、気をしっかり持つのよ。起きたことはあなたのせいじゃない」
「………うん」
後ろを振り返りサンジの顔を見ようとした。
しかし、俯いて手を引かれるサンジは長い前髪で顔が隠れてしまっていて表情が読み取れない。
ぐるぐると渦巻く階段を登り、部屋へと滑り込む。
鍵をしっかりとかけて、サンジをベッドへと座らせた。
床へと膝をつき、俯いたままのサンジの肩を強く掴んだ。
「絶対に大丈夫だから。私も、ルフィくんたちもきっとみんなを守るわ。約束する。だから、あなたは決して部屋から出ないで」
できる限り明るい声を出すように心がけた。
「……ねぇ、レイジュ」
「なに?」
ふと部屋の空気が変わった気がした。暖かいはずの部屋が途端に冷たく感じた。
「おれ、おとうさんに褒めらるかな」
「……どういう意味?」
サンジの顔を見ようと覗き込もうとして、レイジュは目を見開いた。 - 146123/01/20(金) 12:00:51
_____いない。
今までそこにいたはずのサンジの姿がどこにも見当たらない。
掴んでいたはずの少年のような肩も、いつの間にかレイジュの手を離れていた。
「どういうこと……?それは……サンジ!!その力は!!」
立ち上がりぐるりと部屋を見渡しても、どこに弟がいるのか分からない。
「おれだってみんなを守れる。強くなったんだ!!おれもソラの息子なんだ、みんなのヒーローになれるんだよ!」
興奮した弟の声が部屋に響く。レイジュはその声を辿ろうと必死に感覚を研ぎ澄まそうとした。
「違うのよサンジ!私達の力はヒーローなんかじゃないの!!使ってはいけない、その力をあなたが使ってはいけない!!」
「レイジュはさ!!………レイジュはおれを閉じ込めておきたいんだろう……?ずっと、ずっと!!おれがなにもできないままで良いと思ってるんだ!!!!」
初めて聞く声音でサンジが叫んだ。
こんなにまで感情を昂らせるのも、そしてレイジュにそんなこと言うのも今まで一度たりともなかった。
おかしい。何かがおかしい。あいつらとも私とも違う、漠然とレイジュはそう感じた。
「違うわ!!そんなことはない。でも、あなただって分かっているでしょう?ジェルマはヒーローじゃないのよ!」
しんと部屋が静まり返った。
「おれはジェルマじゃない。おれは、ソラになるんだ」
ガチャと鍵が開く音がした。扉がひとりでに開く。いや、そこにサンジがいるのだろう。
___行かせたらいけない!
レイジュは慌てて扉へと駆け出した。
しかし、廊下にもやはりサンジの姿はなかった。 - 147二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 12:30:33
サンジ……悲しいなぁ……
- 148二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 13:12:05
このレスは削除されています
- 149123/01/20(金) 13:12:55
成功した………!!!
人は心だってゼフも言っていたけれど、本当にその通りだ。
強くなりたいと心の底から願えば叶う。
おれは臆病だから、強くなりたいと思っているのに戦うことも嫌っていたから今まで"失敗作"だったんだ。
朝はギシギシと体が痛かったのに、今はなんだか体も軽い。
走る速さもまるで自分じゃないみたいに速くなっていた。
今なら空だって飛べそうだ。
___ルフィたちはどこだろう、ルフィたちと一緒に戦いたい。
みんなを守りたい。
「サンジ」
おれの名前を呼ぶ声がした。
どうしておれの名前を呼ぶんだろう、今おれは見えないはずなのに。
それに、この声はずっと昔に聞いた声だ。もう何十年も聞いていない。おれの______。
「お、おとうさん?」
目の前に大きな影が立っていた。
血が繋がっているはずなのにサンジよりも何倍も大きなその影に、サンジは金縛りにあったかのようにその場を動けなくなった。
小さい頃の記憶が甦る。
ハッ、ハッと息が上がって、呼吸をするのが辛くなった。褒められたいと思っていたはずのその人を前にして、サンジは恐怖しか感じていなかった。
仮面の隙間から冷たい瞳がサンジを見下ろしていた。 - 150二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 13:37:38
褒められたかったけど会いたくなかったよな
- 151二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 16:39:11
会いたくないけど褒められたい、褒められたいけど怖い、ってサンジくんの中でも自分の気持ちがぐちゃぐちゃなんだろうな……
うぅ…しんどい…おそらくこれからもっとしんどい展開が来るだろうにもうしんどい.…
しんどいけど続きが気になる… - 152二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 16:57:20
海賊・海軍・民間人・天竜人が集まる場
年齢にそぐわぬ子どものような振る舞い
薬物で感情が昂りやすくなる
REDやウタの要素をうまく落とし込んでてすげぇや - 153123/01/20(金) 17:46:23
「あ、お……お、おとうさん。お、おれ、ね、透明になれるようになったんだ…!そ、それに、足も速くなった!」
震える声で必死にサンジは言葉を紡いだ。
カタカタと足が震えて、指先は氷のように冷え切っていた。
「………そうか。偉いじゃないか、それでこそ私の息子だ」
「あ……」
ゆっくりと視線を上げると、父は口元に薄らと笑みを浮かべていた。
_____褒められた。
褒められたのに、サンジの心は全く暖かくならなかった。
おかあさんに褒められた時は、ルフィやゼフたちに褒められた時は、あんなに心がぽかぽかしたのに。
「やはり、失敗などしていなかったのだ。サンジ、お前は強くなりたいのだろう?私も、お前にそうあってほしい」
「うん、強くなりたい……。で、でも、おれ、ジェルマみたいなことはしたくない!!おれはソラになるんだ、みんなを助けられる人になりたい……!!」 - 154123/01/20(金) 18:46:47
父からの答えはなかった。怒らせてしまったのだろうか。
瞳から涙が溢れそうになって、慌ててサンジは袖で目元を拭った。
「………まだ、足りないのか。やはり、一度取り込まれた劇薬の効果はなかなか薄れるものではないな」
その声は人ではなく機械を、それも思い入れのない機械を相手にしているかのように無機質だった。
突然ぐいと背後から体を拘束される。
驚いて後ろを振り返ると、大柄な兵士が立っていた。
助けを求めようと父を見ると、父はゆっくりとサンジに近づいて来る。
その手には注射器が握られていた。
「な、なに、それ……?おとうさん?」
「今日、我らはジェルマ再興への一歩を踏み出すのだ。サンジ、お前も私の子であるならば、国のためにその身を捧げろ。北の海の国々を滅ぼせる強さを受け入れろ」
「いやだ、違う。お、おれは、強いだけの人になりたいんじゃない……!!やめて…!ごめんなさい、ごめんなさい!!おとうさん!!!!」
どれだけ必死に訴えても父は動きを止めない。昔から、サンジの願いを聞いてくれたことなど一度もなかった。
サンジの眼前に注射器が持ち上げられた。
恐怖心からヒュッと喉が鳴る。あ、と思う間もなくそれはサンジの首へと突き刺さった。
鋭い痛みと共に首に細い針が差し込まれる。
「ーーーーッ!!!!」
冷たい液体が体へと流れ込んでくる感覚を最後に、サンジの意識は闇へと溶けた。 - 155二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 18:49:38
あああ…
- 156二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 19:11:05
昔からサンジの願いを聞いてくれたことなど一度もなかった。
の文章で原作サンジくんの「助けて‼︎お父さん‼︎」が過ぎってしまった
自分を閉じ込めた人に縋るしかなかった原作のようにこのサンジくんは望まない薬を打とうとする父に許しを乞うしかないのか…… - 157二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 21:01:18
- 158123/01/20(金) 21:01:47
「誰が砲撃したんだ!!」
船に砲弾を撃ち込まれ、反撃してくる体格の良い海賊を相手にしながら壮年の海軍の男は部下に声を飛ばした。
「分かりません!!船にいるはずの者たちに連絡しても繋がらないんです、止められません!!」
「待て待て!!船はやられたが、いま海軍を相手にしちまうと、関係のない奴らまで巻き込まれちまうだろうが!!引き揚げるぞ!!おい、くそッ、聞いてるのか!!」
海賊船の甲板で身を乗り出した船長と思しき男が叫ぶ。
「ダメです船長!!あいつら、全く話を聞きません!!というか、あんな奴ら俺たちの船にいましたか?」
「……いや、いねェな。誰だ、あいつら!?」
海賊と海軍の衝突は激しさを増し、海上だけではなく遂には広場まで争いの場が広がった。
広場の客たちは逃げ惑い、料理を提供していた屋台は薙ぎ倒される。
ハートの海賊団や有志たちが城をぐるりと回る形で避難するための客船へと誘導するが、戦闘を避けながらだとなかなかスムーズに避難ができなかった。 - 159123/01/20(金) 21:16:58
城内ではルフィたちが覆面の兵士と交戦していた。
誘導しようとしていた客たちは、大量に侵入して来た兵士によって足止めを喰らっている。
「みんな!巻き込まないように気をつけて!!それに、コイツらッ……!無駄に頑丈だわ!!」
「ハッ、似たようなのがウジャウジャ湧きやがって」
ゾロの放った斬撃で兵士たちが誰もいない壁へと吹っ飛んでいく。
「特別な技を使えるわけではなさそうですが……」
ブルックはひらりひらりと兵士たちの攻撃を交わすと、即座に剣で薙ぎ倒していく。
「銃が厄介だ、これだけ数が多いと避けきれねェ可能性はあるぞ」
「トラファルガー、背後は気にするでない。わしが任されよう」
ふ、と口元を笑みの形に変えたローとジンベエがそれぞれに兵士と向かい合った。
「くそー!どんだけいるんだよ、コイツら!!」
次々と鉛星を叩き込みながらウソップが叫んだ。
「クローン兵って意外と厄介ね、フランキー。人数が多すぎるわ」
無数の手で兵士を雁字搦めにしながらロビンが、入り口だけでなく窓からも次々と現れる兵士たちを見渡す。
まだまだ途切れそうもない波に、同じく周囲を確認したウソップがうげぇとうんざりしたような声をあげた。
「ここじゃあおれのスーパーな技は使えねェ。だが、護衛ならおれに任せろ!!絶対に被害はださねェ!」
「おれもだ!!サンジのためにも絶対に凌いでやる!!」
「おう!任せたぞ、フランキー!チョッパー!サンジの料理を台無しにしやがって………!!おまえらはおれが倒す!!」
ルフィは拳に力を込め、目の前のそっくりな顔をした男たちを睨み据えた。 - 160二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 22:22:23
サンジくんが願いレイジュさんが叶えた、みんなが笑顔で料理を食べる夢の世界が淡々と同じ顔を並べた兵士たちによって崩されていく描写が目に浮かぶようで辛い……文章力が強い……
こころがしんどい… - 161二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 22:26:25
完全にジェルマ化したら黒髪サンジになるのかな…?
- 162123/01/20(金) 22:46:08
「よォ、レイジュ。1週間ぶりだなァ」
聞き慣れた声に振り向くと、3人の弟たちがそれぞれに笑みを浮かべながらレイジュの元へと向かって来ていた。
「そうね、ヨンジ以外は久しぶりかもしれないわね」
「おまえ本当に気づかなかったのか?父上がこの宴に北の海の王族どもを招待したことに。あの呑気な招待状を多めに北の海にバラ撒いてな」
「……………」
「ぐずぐずしてる暇はない。行くぞ、レイジュ。すでに父上とサンジが王族どものところへと向かっているだろう。我々もそれに続く」
「まぁ、楽勝だな。海賊と海軍どもはお互いを潰すのに必死、馬鹿みてェに前しか見えねェ奴らだ」
愉快そうに笑いながらイチジたちはレイジュを追い越していく。
「あなたたち、サンジに何をしたの」
その言葉に、靴の音を響かせてイチジはレイジュを振り返った。
「レイドスーツと似た作用がある薬を投与した。血統因子に強く作用する薬だ。あの失敗作も、血統因子の操作は成功しているはずだった。ならば、血統因子を活性化させれば、あいつもおれたちと同じように力を得ることができるのではないかと父上は考えた」
「後付けだからなァ。ま、元々出来損ないなんだ。おれらの足手まといにならない程度に働いてくれたら十分だ」
父はイチジたちと同じような、いやせめてレイジュと同じような体と心になることをサンジに望んだのだろう。
だが、それは愚かとしか言えない。
人の体を根本から操作するのには限界があるのだ、無理に捻じ曲げると必ず綻びが生まれる。
「………サンジは出来損ないなんかじゃないわ。それに、父上の目論見は失敗してる」
「何?」
レイジュの言葉の意味を探ろうとイチジはその顔を射るように見つめた。
「………早くサンジを止めないと、きっと大変なことになるわ」
切迫したレイジュの声音に3人は互いの顔を見合わせた。 - 163123/01/21(土) 00:22:46
____瞼の裏に光が差し込む。
眩しさにそろりと目を開けた。途端、ぐらりと視界が揺れる。
ーーー痛い。
ズキズキと頭が酷く痛む。
重くて冷たい鉄の仮面で押しつぶされていた時と同じ痛みがした。
「起きたか、サンジ。いいか、北の海の王族どもを一人残らずこの城から帰すな。多少の犠牲は厭わん」
壁にもたれせていたサンジから視線を外すと、ジャッジは兵を率い城の下層部へと向かおうとした。
ドガァン!!!
轟音と衝撃がジャッジを襲った。まともに受け身を取れなかった体は勢いのまま壁に打ち付けられる。
「ジャッジ様!!!」
瓦礫と煙が一面に広がった。
ゆらりと細い影が白煙の中に浮かび上がる。
「……ッ!!!貴様ァ!!!何をしたのか分かっているのか!!
サンジ!!!」
舞い散る埃の間から見えたサンジの顔は、泣き出す寸前のように苦しそうに歪んでいた。
_____ルフィたちのところへ行かないと。
おれが、みんなを守るんだ。 - 164123/01/21(土) 00:39:55
- 165二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 00:47:24
イラストかわいい!保守
- 166二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 02:26:43
挿絵はいちいち神絵だしなにより面白すぎる…。
スレ主が描く絵かわいいな。内容がどんどん鬱な方向に向かっていくからちょいちょい絵見て癒やされてる。ありがとう。 - 167二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 08:10:49
ジャッジ蹴り飛ばした!?!?
それまでのサンジくんだったら絶対にしないような、できないようなことが急激にできるようになってるんだなぁ
ジャッジはイチジたちのように感情の一部を消したり、レイジュみたいに逆らえなくするだけでも良いと思ってたのかもしれないけど完全に暴走し始めてる……
ワノ国で3回レイドスーツ着ただけでも危なかったのに、強制的に覚醒させる薬を2回も投与されたらどうなってしまうんだ - 168二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 10:29:15
うううううサンジくん……
163ラストを見る限り薬で力を強制的に引き出された結果「みんなを守りたい」って気持ちが暴走しちゃってる感じなんだろな…続きが気になる
そしてイラストも可愛いけど鬱だ…
今まで明るい感じの色調が多かっただけに暗めの色合いがくるとウッ…ってなるな…
あとなんか、海に蓋するみたいに黒い色が被さっているのもあって毒を流してるみたいに見える…
原作SBSの何かあった未来のサンジくんって海に毒を流せ的なこと言ってたよな…つら…
スレ主様素敵な文章とイラストをいつもありがとうございます‼︎ - 169二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 16:07:44
文章力が凄すぎて引き込まれる!
こんな素敵な作品を読ませ頂いていいんですか… - 170二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 17:20:27
- 171123/01/21(土) 19:49:02
- 172123/01/21(土) 20:06:02
ルフィたちがいる広場へとサンジは城内をひたすらに走った。
どうしてだか分からないが、ルフィたちはメインホールではなく広場で戦っているのだと確信できた。
広場やホールに残る多くの人たちの恐怖に歪んだ顔も、父の命令で動く兵士たちの姿も、必死に避難誘導をする人たちの姿も、ぶつかり合う海賊と海軍の姿も次々にサンジの脳内に流れ込んでくる。
頭が痛い。
ゼフたちと作った料理は床にぐちゃぐちゃになって踏み潰されていた。
ーーおかあさん、たすけて!!
ただ人を殺すために力を使おうとする父も、何の疑いもなくそれに従う兵士たちも、踏み荒らされないといけなかった料理も、戦いをやめない海賊も海軍も何もかも、サンジには理解できない。
ーー頼む、家族は殺さないでくれ!!!
こんなことをするために、おれは料理を練習したんじゃない。宴をしたいと思ったんじゃない。
ーーくそッ!!おい、目を開けろ!!死ぬな!!
でも、みんながこんな目にあっているのは結局はおれがここにみんなを招待したからだ。
だから、おれはみんなを守らないといけない。 - 173123/01/21(土) 20:30:51
おとうさんは怒っているだろうなぁ。
ーーどうかおれのせいでレイジュが怒られませんように。
サンジは祈るようにポケットの中の青いリボンを握りしめた。
ゼフの顔が頭に浮かぶ。約束していたよりも料理を教えてもらうことができなくなってしまった。
パティやカルネとももっと話がしたかった。
でも、さいごにおれはソラみたいにみんなを笑顔にするヒーローになるんだ。
きっとおかあさんも褒めてくれる。
途中、幾度も見慣れた兵士たちをゼフの動きを真似て蹴り倒す。
あんなに怖かったはずの戦いだって、もうちっとも怖くなかった。
湧き出る力を脚に纏わせると、蹴りに重みが増した。
ーー本当におれは強くなったんだ!!
硝煙の匂いが濃くなり、鳴り止まない銃声や鉄がぶつかる音が大きくなってきた。
地下の通路から脱出しようと列をなす人々を通り過ぎ、サンジは城を飛び出した。 - 174123/01/21(土) 21:16:51
「なんで海軍のやつらは急に砲撃を始めたのかしら!」
「誰かがけしかけた、という可能性はないでしょうか」
心底うんざりしたナミの声に近くで応戦していたブルックが答える。
「その可能性はある。海軍の連中は事を荒立てるような気配はなかった。が、急に大砲を撃ち込み、それに海賊船もすぐに反撃していた。まるで初めから撃ち込まれることが分かっていたかのようにだ」
「………なりすましていた奴らがいるってことかァ。そりゃ、もしかしなくてもこいつらジェルマか」
フランキーの言葉にローが頷く。
「あぁ、恐らくは。一度口火に切られればそう簡単に止めることはできない。ジェルマはこの城を滅ぼそうとしているのか、もしくはこの騒ぎに紛れて何かをしようとしているんだろう」
「さっき逃げてきた奴ら、あいつらが狙われてるんじゃねェか?この覆面野郎ども、あいつらを追いかけてただろ?」
火薬星を撃ち込みながらウソップが言った。
その言葉に被るようにしてどこからか大きな声が聞こえてきた。
「ジェルマめ、私たちを殺し北の海を自らのものにしようと企んでいるんだ!!!」
「そうだ!!あいつらは血も涙もない、戦争屋だ。おれたち全員殺される!!」 - 175123/01/21(土) 21:17:18
「え、じゃあ私たち殺されるためにここに集められたの………?」
広場に響いた言葉に動揺が波のように広がっていく。
「でも、おれたち関係ねェぞ!!北の海のことなんて知るかよ!!」
「偽装工作ってやつなんじゃないのか?よく分かんないけどさ。北の海の奴らばっかり集めたら不審がられるって思っておれらも呼ばれたんだよ」
「じゃあなにさ、あの姉弟は私たちごと殺そうとしてるってのかい!?」
「わ、わたしここで死んじゃうの?」
周囲から悲鳴や怒号が上がり始める。
一度そうだと情報が広まってしまえば、それを覆すことは難しい。
ただでさえ、目の前で人が死んでいるのだ。混乱した状況下に置かれた大衆の心理では冷静になることの方が難しいだろう。
それはナミたちもよく分かっていた。
「サンジたちはそんなことしねェよ!!!信じてくれ、ただみんなに美味しいご飯を食べて欲しかっただけなんだ!!!!」
人型になったチョッパーが必死に声を張り上げても、混乱は一向に収まる気配を見せない。
それに騒ぎを収めようにも、海賊が率先して戦い始めた以上、民間人にとっては兵士たちと等しく脅威だろう。
治安を守る海軍は、港に停泊していた海賊船の海賊たちとの交戦で手が一杯になっている。
そうしているうちにも騒ぎはどんどんと広がっていき、避難をしていた列の先頭付近からも声が上がり始めた。 - 176二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 21:51:27
周りから困惑と悲鳴の声が上がる描写、レッドの中盤のウタちゃんに対する声を思い出すな…
これは未だサンジくんに直接向けられたものではないけどこの言葉が直接投げつけられたとき優しいサンジくんの心が完全に壊れてしまわないか心配… - 177二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 22:29:03
仮想空間より実際に戦闘が目の前で行われて死人が出てるこのジェルマ城の方が死ぬかもしれないという恐怖が煽られて怖い空間かもしれない………
filmblueを読んでいたらこの2曲が合うなと思いました
『失敗作少女』は原作サンジからして似合う曲なんですが、このサンジはさらに合う
- 178二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 22:30:10
- 179123/01/21(土) 22:36:59
- 180123/01/21(土) 22:38:50
「………おい、まずいぞ」
敵を斬り倒しながら、ゾロが忌々しそうに舌打ちをする。
ぐるりと周囲を見回し、ナミも顔に焦りを滲ませた。
「どうしよう、このままじゃサンジくんたちが悪者になっちゃうわ!!」
「くそッ!!どうにか、こいつらとサンジたちが関係……はあるけど、目的は違うんだってことを伝えねェと」
でもどうしたら〜!!!と地団駄を踏んだウソップは視線を上げた先で、群衆を掻き分けてこちらへと近づいてくる男に気づいた。
魚人族の男だ。
「おい、ジンベエ!あいつ、お前のこと知ってたやつじゃねぇか?」
そう問われたジンベエは、ウソップの指さす方へと体を向けた。
「ジンベエさん!!」
「なんじゃ、何があった」
ブルーホールで避難誘導を行っていた男だ。
肩を大きく上下している彼はブルーホールから城まで急いで走って来たらしかった。
「この城の近くの海中におかしなものがあるんです」
「おかしなもの?」
「はい。何も……何でもないものなら良いんですけど、すごく大きなやつで……。上手く言えないんですけど、すごく不気味なんです」
「不気味じゃと?」
「はい。不思議な見た目をしていて………」
ロボットの見た目安価(トットムジカみたいなロボットぽくない見た目でもいいです)
安価とダイスをしたら次スレを立てます
- 181二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 22:46:41
- 182二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 22:48:03
褐色の肌、白い髪、黒い翼を持つ巨大な人間
性別は見た目では不明 - 183二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 22:49:55
- 184二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 22:51:57
- 185二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 22:54:36
・初期のサンジの服
・頭は鉄仮面と黒の天使の輪、山羊みたいなぐるぐるツノ
・黒い翼が6枚生えている
・青いシャツの部分が海水になってる - 186二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 23:00:02
- 187二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 23:03:11
- 188123/01/21(土) 23:09:43
ありがとうございました!どれもカッコよくてサンジ要素満載で素敵すぎる……
安価頂いた順に①〜⑦とします
ロボットの見た目
dice1d7=6 (6)
- 189123/01/21(土) 23:11:45
ロボットの見た目は
・海坊主みたいに真っ黒で頭の形は鉄仮面
・ルナーリアみたいに背中に翼と炎があって、黒い歯車が浮いてる
になりました。海坊主ってこんな黒いんですね……怖い… - 190123/01/21(土) 23:15:41
スレ主の画力で表現できるか分かりませんが、ロボットくんが本格的に大暴れするまでにイメージ設定描きたいと思います
次スレ立ててきます - 191123/01/21(土) 23:28:57
- 192二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 23:30:49
スレ立てと誘導ありがとうございます!!お疲れ様です!!
このサンジくんはルフィたちの年齢は知ってますか? - 193二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 23:34:56
- 194123/01/21(土) 23:37:38
- 195123/01/21(土) 23:44:39
小ネタなんですが、このサンジはどさくさに紛れて城ごとレイジュが逃走するまで幼少期と同じく兄弟に暴力を振るわれてたので、体には鉄仮面の擦れた跡以外にも怪我の痕があったりします
サンジはルフィたちと一緒にお風呂にも入りたかったけど、見せると心配させるだろうなと思って入りませんでした - 196二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 23:48:22
- 197二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 23:53:27
質問です‼︎
実はバラティエメンバー大好きなのでゼフさんパティさんカルネさんが出た時はちゃめちゃテンションが上がったのですが今後も彼らの活躍はありますか⁉︎ - 198123/01/21(土) 23:59:42
- 199二次元好きの匿名さん23/01/22(日) 00:18:39
終わり方が2種類!?
楽しみすぎる……… - 200二次元好きの匿名さん23/01/22(日) 00:20:57
part1の最新レスが30くらいの時からずっと追わせていたいております。Part2もとても面白かったです。だいぶ話が進みましたね…。このあと一体どうなるのかすごく気になるので更新楽しみにしてます。
>>198で今後バラティエの方々の出番があると聞いて嬉しくなりました。