- 1二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 00:32:19
- 2二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 00:32:52
昼休憩。
いつものように作ってきた弁当をタキオンの研究室に届けに来た時のこと。
「トレーナー君!焚き火をするぞ!」
とタキオンが言い出した。
─焚き火?
「そう!炎の1/fゆらぎの話は有名だろうトレーナー君。いわゆるリラックス効果があるというやつさ。火を見るだけで疲れが取れるだなんてお手軽なものだと思わないかい?」
─タキオン疲れてるのか?
「ん?まあ、疲れてはいるね。」
─何だって?そんな、タキオンが疲れていることに気づかなかったなんて…。確かにここ最近はトレーニング続きだった。今日は休みにして……。
「いや大丈夫だトレーナー君。肉体的に疲れているわけじゃない。ふむ…。どうやら言葉が足りなかったようだ。」
─?
「いや何、実はだね。最近カフェがよく話すようになってね?」
─カフェが?いいことじゃないか。
「まあそうだねぇ。対象との良好な関係は実験に影響するからね。ただ…内容がねぇ…。」
─まさか…怖い話…か?
「いや違うんだよ。そっちなら良かったんだけどね。話題は大体彼女のトレーナーなんだが、……惚気話をだね、するようになってだね。」
─……惚気話??
「この間一緒に水族館に行っただの、どこそこのカフェに行っただの、焚き火をしただの…。しまいには、一晩中手を繋いだだの…。」
─一晩中??ちょっと待ってこれ聞いていい話?
「最初は、良い変化だと思ったんだよ。内容はどうあれあのカフェが自分から話を振ってくるようになったのだから…。しかしだね。こうも毎日毎日聞かされ続けるとどうにも…。」
─(なんてむごい…。というか担当と一晩中手を繋いだだと?なんてうらやま、じゃない、けしからんことをしてるんだ。)
「そこで、焚き火をすることにした。」
─飛躍したね。
「カフェのトレーナー君の焚き火台で。」
─大丈夫?呪われない?また資料燃えても泣かないでね?
「ふっ、問題ないとも。あれ以来データは全てクラウドにあげたからね!!」 - 3二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 00:34:02
そして放課後。
「というわけで焚き火をするぞ!そして紅茶を焚き火で淹れて飲もう!」
─タキオン。この使い込まれてそうなケトルってもしかして…。
「もちろんカフェのトレーナー君のものだが?」
─……許可とった?
「もちろんだとも!流石にパソコンを壊されては泣くどころじゃないからね。」
─よかったぁ。じゃあ焚き火楽しもうか?
「…君、私のことを何だと思っているんだい?それにしても煤のついたケトルだね。」
─かっこいい色だね。使い込まれてる感じがして。
「ええー?そうかい?私は煤くらいは掃除したらいいと思うね。実はここに私が調合した薬品があって…」
─タキオン、やめとこう?ね?一回資料燃えてるんだから。パソコンが爆破されたらどうするの?
「うーん。現象としては見てみたいものだが、当事者にはなりたくないね。」 - 4二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 00:34:54
- 5二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 00:35:41
- 6二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 00:36:31
「…着かないな。」
─…そうだね。
「やっぱり100均じゃ駄目なんじゃないかい?ちゃんとした物を買わないから。」
─いや、でも売ってるからには使えると思うんだけどなぁ。
「……タキオンさん…。このタイプの着火剤はこのままでは駄目です……。」
─うわっ!!
「おや、カフェじゃないか!確か君はトレーナーが出張中で、今日はトレーニングは休みだろう?どうしたんだい?」
「……はい。……なので、……一人で焚き火でもしながら、トレーナーさんと電話しようと思ったら、………タキオンさんに貸したと………。」
─……。(ねえタキオン。ちょっと睨まれてない?)
(私としてはちょっとした意趣返しのつもりだったんだが、思っていたより効果があったようだね。) - 7二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 00:37:32
「それで………私は来るつもりはなかったんですが、ただ…、トレーナーさんが、……初めての焚き火だと分からないことも多いだろうし、教えてあげたらどうかとおっしゃって……。」
─まさしくその通りです。是非とも、教えて頂きたく……。
「流石はカフェのトレーナー君だ。それで?このタイプの着火剤はどうすれば良いのかな?」
「………相変わらず偉そうな方ですね。……この着火剤はこのままでは火が付きづらいので、一回崩す必要があります。………こんな感じです。」
「ふむ。表面積をあげることで着火しやすくするのか。これで火力をあげ、燃え尽きる前に薪に火を移すわけだね?」
「……流石に頭だけはいいですね…。」
「なんだいその言い草はー?!他にもいいところはあるだろうトレーナー君!」
─えっ!そうだな!末脚とかな!
「そうだとも!あとは?」
─あとは?!
「なんだいトレーナー君!言えないのかい?!」
─いや言えるぞ!ただ一時間は語り続けることになる。
「ええー?大袈裟だなぁ。」
「……タキオンさん。多分この人は本当に喋り続けます。……トレーナーとはそういう人種です………。」
─(あいつ喋り続けたんだろうな。) - 8二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 00:38:21
- 9二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 00:39:33
「……火が安定してきました。…ケトルを置いてください……。」
「おお、やっとかい。時間がかかるものだね。」
─しかし、これで紅茶を淹れるのは、ちょっと難しそうだな。温度とか測れないし…。
「おいおいトレーナー君。そんな細かいこと気にしなくても構わないよ。」
─タキオンがそんなこと言うなんて…。
「今回の目的はあくまでも焚き火によるリラックス効果だ。美味しい紅茶が飲みたいなら、わざわざこんな非効率なこと提案しないさ。まあ、できれば美味しい方が良いがね。」
─お正月に餅を食べようとして、結局サプリメントを買ってたあのタキオンが……!
「…え…?そんなことしてたんですか……?」
「おいおい、この話はいいだろう。それよりケトルから音がし始めてるぞ。」
─沸騰しかけてるね。火から下ろして茶葉を淹れよう。 - 10二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 00:40:13
- 11二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 00:40:53
おっ、焚き火カフェの人じゃねーか
- 12二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 00:41:06
- 13二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 00:46:26
─それしたってどうして急に焚き火?
「いやなに。あのカフェがあんなに楽しそうに話すものだからね。私もちょっと興味が湧いただけだよ。……トレーナー君と火を見ることにね。」
─タキオン……。
「まあ、思ったより時間が取られたが、しかし、紅茶もそれなりに美味しかったし、またやってもいいかもしれない。今度は二人でね?」
─……それはいいな。
(……私がいることを忘れてらっしゃる……?) - 14二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 00:51:31
久しぶりにss書きました。
タキオンの口調って難しいですね…。
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タキオンってなんか雰囲気が猫舌っぽいよね。
良き。