【🎲SS・オリキャラ・閲覧注意】麦わらとハートがとある国を解明する（3）

[1 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 00:04:00]

前スレ

【🎲SS・オリキャラ・閲覧注意】麦わらとハートがとある国を解明する（2）｜あにまん掲示板

[2 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 00:06:12]

【あらすじ】
　ハートの海賊団から無事にゾロを引き取り、彼らを巻き込んで詫び宴を開いた麦わらの一味。
　しかしそこで集まった話から《ブックパラダイス》の過去の闇を知ってしまうことに。
　また、チョッパーは老人から聞いた話からローと共にとある調査に乗り出す。
　しかし、ローと共に秘密を知ったことで囚われの身になってしまった。
　同時に街で情報収集に励んでいたルフィたちだったが、不可抗力で男の夢の園《パラダイスストリート》へ――！
　待望の聖地である、その最奥でサンジが目にしたものとは…！？

次回【記憶を失ったということはもう一度楽しめるということだ……！】
お楽しみに！

[3 二次元好きの匿名さん 23/01/17(火) 00:08:02]

立て乙です！

[4 二次元好きの匿名さん 23/01/17(火) 00:12:16]

乙です！続きが楽しみです

[5 二次元好きの匿名さん 23/01/17(火) 00:19:03]

立て乙

＞「記憶を失ったということはもう一度楽しめるということだ……！」

サンジェ……

[6 二次元好きの匿名さん 23/01/17(火) 00:21:33]

続きが楽しみ支援

[7 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 00:31:31]

2日目午前

街のはずれ⇒『？？？』
【現在進行できません】
・チョッパー
・ロー

街の中
【午前の部終了】
・ルフィ
・ナミ
・ウソップ
・ロビン
・サンジ
・ブルック
・ペンギン
・シャチ
・ベポ
・数名のハートの海賊団船員

サニー号の見張り
・フランキー
・ゾロ
・ジンベエ

★次の進行場所
⇒『サニー号の見張り』

[8 二次元好きの匿名さん 23/01/17(火) 01:04:03]

続き楽しみ

[9 二次元好きの匿名さん 23/01/17(火) 01:15:42]

WAKWAK

[10 二次元好きの匿名さん 23/01/17(火) 01:26:56]

続きが気になる〜
前スレ200のツナギルフィもかわいい！

[11 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 08:14:30]

サニー号/視点チェンジ
⇒麦わらの一味（ゾロ）

　――仲間の大半が出払ったサニー号は静かなものだった。

「くぁ……」

　大きな欠伸が出る。
　ゾロは背中を壁に預け、日当たりの良い芝生の上でまどろんでいた。
　昨日の騒動のこともあり今回は留守番を言いつけられている。
　そもそも昨日もゾロとしては大人しくしているつもりだったのだ。ただ、それが不思議と叶わなかっただけで。

（まあ少し体を動かせたから良いが）

　思い出されるのは白い全身鎧を纏った警備兵だ。
　人を斬ることに躊躇いがないくせに殺気もない不思議な男だった。
　あんな奇妙な剣筋で良く戦えるものだと妙な関心をする。
　だが、そこでふいに閃くものがあった。

（……いや、違う。あいつのあれは――）

　――ガシャッ！
　唐突に真横から甲高い音が響いた。

[12 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 08:15:05]

「あ？　……フランキー、テメェ何してんだ」
「アウ、悪ィな。昼寝の邪魔しちまったか。天気が良いからなァ、たまには外でやろうかと思ってよ」

　なんてことを言いながらフランキーは工具を手にする。
　彼の巨大な手の平から生えている小さな手が、やはり小さな機械――人形を弄っていた。

「ルフィの奴がよ、あの街でロボ見たって言っててな。それで色々と構想練ってたら面白れェもん浮かんだんだ」
「……キャタピラ？」

　人形の形自体は既に見慣れていた物だ。フランキーが戦闘の最中に使用する『フランキー将軍』に似ている。
　しかし、脚はなく、その代わりにキャタピラが備え付けられていた。

「これなら壁でも天井でも歩き回れるってもんよ！」
「そうか、そりゃスゲェな」

　楽しそうで何よりだ。ルフィやチョッパーたちが戻ってきたら目を輝かせて喜ぶことだろう。

「なんじゃ、ふたり揃ってそんなところで」

　騒がしさに釣られたのだろう。舵のある船首のほうから降りてきたのはジンベエだ。
　今日はこの三人で留守番である。
　現在のサニー号は港から随分離れ、島の陰に隠すように停めてあるがいつどんな襲撃があるかわからない。
　地上でも海中でも対応ができるメンバーは船の守りとして充分すぎることだろう。

[13 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 08:16:53]

「ジンベエ、あんたも暇だろ？　おら、ミニミニフランキー将軍だ。もうすぐ完成するぜ」

「こりゃ数も多い。お前は相変わらず手先が器用じゃな」

　のどかな時間だ。今この瞬間にも眠りの浅瀬に誘われそうなほど。

　この中でよく喋るのはフランキーくらいで、ゾロもジンベエも沈黙は苦手としない。

　そのため自然と喋り手はフランキー、聞き手は残りのふたりというふうに偏った。

　カチャカチャと響く作業音も今は心地良い子守唄だ。

　もう半ば眠りに落ちていたゾロだったが、そこでフランキーが大声を出した。

「よォしッ！　完成だァッ！」

　そう言った彼が目の前に小さな――ミニミニフランキー将軍を複数体広げた。

　小さな機械とはいえ、十を超える数になればなかなか壮観だ。

　フランキーは残った材料を片付けながら言った。

1：「そういや、昨日の話を聞いてから気になってたんだがよ」

2：「早速ミニミニフランキー将軍の能力を見せてやるぜ！」

dice1d2=1 (1)

[14 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 09:09:53]

「そういや、昨日の話を聞いてから気になってたんだがよ」
「ん？　昨日の話といえば……」
「ああ――天竜人に渡されてたガキどものことだ」

　ジンベエの纏う空気が変わった。
　ゾロも視線だけを彼らに向けて話に耳を傾ける。
　偽りの病気の検査の末に売られた子供たちのことだ。
　もう届かぬ過去の話とはいえ、酷い話があるものだと呆れることもできなかった。
　フランキーも元々政府に思うところがある男だ。ずっと頭に引っかかっていたのだろう。

「どうかしたのか」
「いや……そのガキどもはどうやってマリージョアに運ばれてったんだと思ってよ」
「……？　そりゃ、船でだろ」

　何を言いたいのかわからず、ついゾロも口を挟む。
　しかしフランキーは腕を組むと眉間に皺を寄せた。

[15 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 09:10:44]

「だから、どうやって国の連中の目につかずに船に乗せたんだよ。
ガキは物じゃねェ、生きた人間だ。しかも歳が十五近くなら体がデケェ奴もいるだろ」

　フランキーはその大きな体ごと傾けて首を捻る。

「薬とかで意識奪って箱にでも詰めたのかもしれねェが、そんなん絶対じゃねェだろ。
百年近くずっと一切のトラブルなく運び出すのがバレなかった……てのはなんだかな」
「……言われてみればな。昔はどうだったかわからんが、この島の港はそれなりに開放的じゃ。
違和感に気づく者がいてもおかしくはなさそうか……」

　フランキーの言葉にジンベエも疑問を植え付けられたのか、同じように頭を傾げている。
　だからゾロは頭に思い浮かんだものをそのまま口に出した。

[16 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 09:12:47]

「目撃者は消したんじゃねェのか」
「物騒なことを言いよる。……仮にそうだとしてもその手には限界があるもんじゃ。不審に思うものをいたずらに増やしてしまう。
バレずに港の船に乗せて運び出す方法、か……」
「ならあれだ。国の連中の目につかねェ場所から船を出したんだろ」

　どうせもう考えてもわからない話なのだ。ゾロは適当なことを言って腹を掻いた。
　すると途端に辺りが静かになり、波の音しか聞こえなくなる。
　どうしたのかとふたりを見ると、何故かゾロのことを凝視していた。

「……あ？」
「お前、ゾロお前それは……」
「いや、確かにそうじゃ。わざわざ正規の港を使う必要などありゃせん」
「ああ、効率考えりゃ当たり前だ。
検査に引っかかった奴が二度と施設から出てこれねェなら――施設から直接船を出せば良い！」
「…………あ？」

　叫び出したフランキーにやはりゾロは少しだけ呆気に取られ、間の抜けた声をだけを漏らした。

[17 二次元好きの匿名さん 23/01/17(火) 09:18:06]

ミニミニ将軍使う機会が出てくるんだろうな～
それを楽しそうに作ってるフランキーを想像すると可愛い

[18 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 12:28:15]

「――で、どうするって？」

　舵を握ったジンベエを後ろから眺め、ゾロは問いかけた。
　サニー号は今、ゆっくりとその船体を島の形に沿うように動き始めている。
　先ほどの話で何か閃いたらしいふたりは真剣な顔をして、しきりに島――切り立った崖の側面を観察しているようだった。

「いいか、ゾロ。もしもその施設からガキを船に乗せたんなら存在するはずなんだよ。
いわゆる隠れ港ってやつがな」
「隠れ港？」

　ゾロの声にジンベエも振り向かずに頷いた。

「そうじゃ。子供と最低限の荷物だけで良いのであれば船の規模もそこまで必要とせん。
おそらくその専用の港も小さく、わかりづらくなっているじゃろう」
「なんなら小船で出航して途中で待ち合わせしてたでかい船に乗せ替えたって良い」

[19 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 12:30:26]

　フランキーはサングラスを押し上げ、崖を見つめた。

「引き渡しの契約が終わったのが十三年前だ。

その港はもう埋めちまっただろうが、痕跡は必ず残っているはずだぜ」

「見つけることができれば当時のこともある程度知ることができるかもしれん」

「……なるほどな」

　その隠れ港が存在していればの話になるが、ふたりはある種の確信を得ているらしい。

　港の出入り口を埋め立てたとなれば、確かに自然の岩などと多少異なる見た目になっているだろう。

　ゾロも何となくフランキーと共に絶壁の崖を眺め続けた。

　そこで横に並んでいたフランキーが腕を組んで言う。

1：「やっぱりここはミニミニフランキー将軍の出番だな！」

2：「ゾロ、色が違う壁があれば言えよ」

3：「ちまちま探すのも面倒だな。やるか」

dice1d3=1 (1)

[20 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 19:17:05]

「やっぱりここはミニミニフランキー将軍の出番だな！」

　あまりに自信満々に言われ、ゾロは少し反応に遅れた。
　その間にもフランキーは先ほど出来上がったばかりのチビフランキー、もとい『ミニミニフランキー将軍』の群れを用意し始める。

「玩具でなにするつもりだよ」
「バッカ野郎！　ただのミニチュアじゃねェんだぜ……！」

　カチカチカチッ！　とフランキーの小さな手が軽快な音を立てて、将軍たちのスイッチを入れていく。
　するとそれぞれが両腕を振り上げながら起動し始めた。キャタピラであちこち歩き始めるそれにゾロは一歩下がる。

「踏みそうだな、おい」
「ハッ、踏む程度じゃ壊れねェよ。両手は小さなドリルにも変形可能！
腹にはちょっとした収納も完備！　映像電伝虫でも仕込めばリアルタイムで状況も把握できる優れもんだ！
ある程度条件付けをすりゃフルオートでも動くしな！」
「ようわからんがすごそうじゃな」

[21 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 19:18:26]

　ジンベエのほうは楽しそうなフランキーを見て微笑ましそうにしている始末だ。

　しかし彼が凄腕の船大工――の範疇を越えているが――であることは知っている。

　ゾロもこの場はひとまず彼に任せることに異存はなかった。

「今回はひとまず崖に異常がないか調べるように設定してだな……ヨシッ！　

スーパーな活躍見せてやれッ！　ミニミニフランキー将軍！！」

　フランキーが腕を振るえば『ミニミニフランキー将軍』の群れが船の至る場所に動き出す。

　ひと通り高い場所に移動したかと思えば、各々がその腕を発射させて崖に手を食い込ませた。

　離れた手と機体を繋ぐ鎖を内部で巻き取っているのか、次々に崖の方へ飛び移っていく。

　そつやって崖をキャタピラで縦横無尽に駆け巡る『ミニミニフランキー将軍』たちをゾロはただ見上げていた。

「目当てのもんが見つかりゃ、こっちに反応が来るようになってるからな」

　フランキーは何やら別の機械を手にして、そう自慢げに言った。

★『ミニミニフランキー将軍』の個数

dice1d30=2 (2)

（最低値15体）

★『ミニミニフランキー将軍』の探索結果

※上記結果20体以上の場合、ダイス結果数値に＋20の補正

※上記結果25体以上の場合、ダイス結果数値に＋30の補正

①1〜30　　色の違う壁を見つけた

②31〜60 　①＋換気口を見つける

③61〜100 ①＋何か持ち帰ってきた

dice1d100=58 (58)

[22 二次元好きの匿名さん 23/01/17(火) 19:43:16]

ほぼ最低値！！
15体か･･･

[23 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 21:02:59]

　『ミニミニフランキー将軍』を放ってから小一時間は経っただろうか。

　突然フランキーの持つ機械がピーピーと鳴り始めた。座り込んでいたゾロは彼を見上げる。

　ゾロの視線を受け、フランキーはニヤリと笑った。

「――見つけたぜェ」

　彼はジンベエに何やら伝える。するとジンベエは再び舵を手に取って船を動かし始めた。

　巧みな操舵技術を持つ操舵士に掛かれば、サニー号のような巨体であっても繊細な動きさえ現実とする。

　着かず離れず、崖沿いに幾分か進んだ先でサニー号は止まった。

「……驚いた。マジであったのか」

　ゾロは目を瞬かせた。

　見上げた先にあったのは崖にしがみつく『ミニミニフランキー将軍』と、他の岩とは素材が異なる壁だった。

　色は似せてあるが良く見れば人工物であることはわかる。

　ただ、それもこれだけ接近してのことだ。遠目なら充分誤魔化せる程度の誤差である。

「で、どうすんだ。――斬るか？」

　腰に提げていた刀の柄に手を掛ける。

　元が港、もしくはそれに準ずる出入口であったのであれば中身が全て埋められているのは考えづらい。

　ある程度の空間は残っているはずだと思っての発言だった。

　フランキーはゾロの提案に「チッチッチッ……」と指を振る。

　そして両腕を前に突き出し、吠えた。

「ここはおれの出番だろうがよッ！　いくぜッ！　〝ラディカ……ッ」

1：「やめんかッ！！」

2：「――あ、悪ィ、もう斬っちまった」

dice1d2

[24 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 21:03:26]

>>23

ダイスミス…

dice1d2=2 (2)

[25 二次元好きの匿名さん 23/01/17(火) 22:11:43]

ゾローーー！！！

あっでもこれでローチョッパーの医者コンビ救出ルートいけるか…？

[26 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 22:13:00]

「――あ、悪ィ、もう斬っちまった」
「アウッ？」

　刀を鞘に納め直し、ゾロは謝った。
　フランキーの両手の中で収束しかけていた光は力を失う。
　それとほぼ同時に、壁として存在していた場所が細切れになった。
　音を立てて海に破片が落ちていくのをフランキーは眺め、呆れたように頭を掻く。

「たくっ……おめェはホント、人の話を聞かねェな」
「わしとしては良かったがな……」

　後ろでは片手をあげかけていたジンベエが苦笑していた。
　おそらくビームを撃ち掛けたフランキーを止めようとしたのだろう。
　人気のなさそうな島の端とはいえ、流石にビームで壁を壊せば音が凄まじいことになるはずだ。
　そういう意味では斬ってしまって良かったとゾロは頷いた。

「で、だ。……こりゃマジで当たりだな」

　崩れた壁の奥から現れたのは暗い穴だ。奥に続いている空間にゾロたちは顔を見合わせ、頷いた。
　穴の横幅はサニー号でもギリギリ通れる程度である。
　何も言わずともジンベエはサニー号を動かし、ゆっくりと穴の中に入っていく。
　陽の光を失った穴の中は酷く暗かった。
　だがすぐにフランキーの手によって照明が灯される。照らされた空間を見渡し、ゾロは息を吐いた。

「ああ、こりゃあ……港だ」

[27 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 22:14:01]

　ずっと塞がれていたせいか空気は淀んでいた。しかし天井は高く、奥も広く続いている。
　海が満ちていたのは途中までであり、石造りの長い足場が現れた。
　ゾロたちは錨を降ろし、中の様子を窺う。
　廃棄されて暫く経つのか、人の気配は欠片もなかった。

「んじゃまあ、探索行くか」
「船にはミニミニフランキー将軍を置いていくぜ。何かあれば爆発するしな」
「爆発するのかッ！？」

　ギョッとするジンベエを置いてゾロとフランキーはさっさと船を降りた。
　爆発の規模は知らないが、だいたいのことには動じない船だ。
　何よりフランキーもそこは考えて火薬の量は抑えているだろう。恐らく。

「しっかし……陰気な場所だな、オイ」
「空気の流れも止まっておる。……ふむ」

　ジンベエが近くの壁に触れた。土を掘り出したそのままではなく、灰色の石壁になっている。
　ひとまず三人固まって奥へ進んでいった。石が敷き詰められて整えられた足場には時々ゴミが落ちている。
　それは布のようなものだったり、朽ちた紙のようなものだったり、壊れた樽だったりと様々だ。
　歩き続ければ徐々に壁が狭まり、気づけば空間は通路に変わっていた。
　ゾロたちは一度足を止め、通路の奥を窺う。

「……何もおらんな」
「換気も動いてねェからここは完全に捨てられたってことで間違いねェだろ。
おおかた適当な出入口を埋め立てて放棄したってとこか」

　そう言ってからフランキーは機嫌悪そうに鼻を鳴らした。

[28 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 22:14:52]

「……だらしねェな、片付けるなら完璧にしやがれよ。仕事が杜撰だってェの」

「部屋はあるみてェだが……」

　フランキーが掲げた照明は通路の壁に等間隔の影を落とす。

　それは窪みがあるという証拠だ。おそらく、そこに扉でもあるのだろう。

「手分けして何かねェか探すか……いや、やっぱやめだ。一部屋一部屋確認してくぞ」

「ん？　別にそれぞれでいいだろうが」

「ゾロ、おれはおめェのせいで理不尽に怒られんのはもうごめんだぜ」

　ガシリと頭を掴まれる。どういう意味だと訴える声は硬い手の平に消えていく。

「だが、こうも暗いと探し物も一苦労じゃな」

「見落としはあるかもしれねェが注意深く見てくしかねェな」

「おい、フランキー、おいコラ、離せ」

「とりあえず片端から見ていくぞ」

　ゾロの訴えも無視される。フランキーは気にした様子もなく足を踏み出した。

★ゾロたちが見つけた情報

dice1d4=3 (3)

[29 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 22:34:40]

　通路から入ることができた部屋は小さな仮眠室がほとんどだった。
　見張り番や運び手の船員などが使用していたのだろう。
　埃の積もった机の上には時々古ぼけた雑誌や新聞が残ったままだ。
　元は何かが入っていたらしい、底に真っ黒になった何かがこびりついたコップを覗き込み、ゾロは顔を顰めた。

「奥は完全に埋まってんな」
「恐らくそちらが施設だったんじゃろ」
「あっちは駄目だな。分厚いのかどうかはわからねェが叩いても響きもしねェ」

　ここは完全に閉ざされた空間というわけだ。
　おかげで妙に雰囲気がある場所になっている。
　怖がりなウソップやチョッパーがいればガタガタ震えながら探索したことだろう。

「見つかったのもこれくらいか……」

　埃をどけた机の上に集めた物を並べる。
　ここから引き上げる際にある程度は処分したのだろうが、それでもいくつか気になるものは残っていた。
　フランキーがそれらを抱え直し、サニー号に向かって歩き出す。

「落ち着いた場所で読もうぜ。……ここじゃ空気が悪すぎて肺が腐っちまいそうだ」
「フランキー……」

　その背を眺め、ゾロは言った。

「テメェ、腐るような肺残ってんのか」
「ゾロ、それは野暮ってもんだぜ」

[30 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 22:35:14]

★ゾロたちが見つけた情報の中身

1：【売却リスト】

2：【双子の少女の写真と資料】

3：【仲買人の死亡記事】

4：【誰かの日誌】

dice4d4=4 4 4 4 (16)

※ダイス結果の左の数字から順番に【3つ】まで情報取得可能。

数値が被った場合、下記ダイス結果の左の数字から順番に情報取得。

（下記のダイス結果が被り、必要な情報数に満たない場合は振り直し）

dice4d4=3 3 3 3 (12)

[31 二次元好きの匿名さん 23/01/17(火) 22:36:34]

えええｗ
こんな被ることある？

[33 二次元好きの匿名さん 23/01/17(火) 22:37:24]

どっちのダイスもかぶってるの逆にすごいな

[34 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 22:37:36]

>>32

まったく冷静じゃなかったですねごめんなさい！！！！

dice4d4=4 2 2 1 (9)

[35 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 22:39:27]

★ゾロたちは　【誰かの日誌】と【仲買人の死亡記事】と【双子の少女の写真と資料】　を手に入れました。

[36 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 23:54:20]

　ゾロたちは一旦、隠れ港からサニー号を出し、再び陽の下に戻った。
　開けてしまった穴はフランキーが即興で埋め直し、元の形よりも巧妙に隠せたようだ。
　そして三人で芝生の上に座り込み、手に入れた情報を囲んだ。
　気づけば昼時も近くなっている。サンジが作り置きしていた食事を傍らに置き、改めてそれらを覗き込んだ。
　フランキーは顎に手を添え、大きく息を吐いた。

「なんつうかよォ、本当にあったんだな……」
「ああ、こうして形となって出て来てしまえば、疑いようもないわい」

　あの隠れ港こそ、この国が十三年前まで行っていた人道外れた行いの証の残滓だ。
　ゾロは頬張っていた握り飯を飲み込み、目を細めた。
　まず目についたのは同じ顔した少女の写真である。
　どちらも長い茶髪に品の良さそうなワンピースを身に着けていた。
　違うところがあるとすれば、片方は穏やかな微笑みを浮かべ、もう片方は活発そうに笑っているところだろうか。
　その少女の姿はジンベエも気になっていたのか、古ぼけた写真を手に取って不可解そうな顔をした。

「同じ子供……ではないのか。下に名前が書いてあるがそれぞれ違うわい。しかし……」
「なんでェ？　片方にはデッケェバツが描いてやがんな」

　フランキーの指摘通り、ふたりの少女――おそらく双子の――の内、明るく笑う少女の顔に大きくバツが描かれていた。
　ジンベエは写真の下に連なっていた資料を捲り、首を傾げる。

[37 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/17(火) 23:55:46]

「古くなって文字が掠れてしまっているな。
なに……『……病を発症のため、隔離。治療のための薬を……聖が譲渡提案。
契約の下、完治するまでを任期とし……聖の下に第一……を……』」

　そこまで読み上げてから目をショボショボとさせ、ジンベエは大きくため息をついた。

「駄目じゃ。保存状態が悪すぎる」
「それでもろくなこと書かれてなさそうなことはわかったな」

　厨房から持ってきていた酒に瓶から直接口をつける。
　喉を滑り落ちていくアルコールの熱さが頭を働かせてくれた。
　そして、今の断片的な情報に少しばかり疑問が生まれる。
　ゾロはバツが描かれたほうの写真を手にして思ったことをそのまま口にした。

「つまり片方が病気になったってわけか？　病気は嘘だったんだろ？」
「これも偽の報告書なんじゃねェのか？」
「誰に対してだよ。あそこにいる連中がグルだったなら隠す必要もねェじゃねェか」
「そうじゃなァ……」

　三人で首を捻るが答えは出てこない。また後で帰ってきた仲間たちに見せればわかることもあるかもしれない。
　ひとまずその写真と資料を置き、次の物を手に取った。

「これは……新聞か？」
「おお、見ろよ。ここに丸してあるだろ？　気になっちまって持ってきたんだ」

　覗き込んだ新聞記事には確かにでかでかと丸が記されていた。だが、記事の規模自体はささやかなものだ。

[38 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 00:00:23]

「なんだこりゃ。怪死事件？」

　そこに書かれていたのはとある男性がひとり亡くなったという記事だった。
　どうやら男は様々な業界の仲買人として仕事をしていたらしく、普段は忙しくしているような人物だったそうだ。
　男の死体が見つかったのはこの国の林の中。犬の散歩をしていた者が第一発見者だ。
　死体は奇妙なことに下半身と心臓部分が失われており、周囲には大量の粉が残っていたらしい。
　それだけではなく、食道や肺、胃の中にまでみっちりと粉が詰まっていたというのだから確かに怪死である。
　他殺として捜査をしているが、犯人はいまだ捕まっていない――と、そこで記事は終わっていた。
　新聞の端を見ると十三年前の日付が書かれていた。

「体が粉に、のう」

　顎を撫でたジンベエが呟く。彼の考えていることはゾロにもわかった気がした。
　だから新聞を芝生の上に降ろし、記事をトンッと指で示す。

「……下手人は能力者か」

　ジンベエは大きく頷いた。

「おそらくな。恨みを買っておったのか、それとも無差別だったのか……」
「恨みじゃねェのか。脚奪ってからじわじわ追い詰めて心臓でトドメ刺したんだろ。
……ああいや、窒息もあるかもな。粉詰まってたら呼吸どころじゃねェだろうしな」
「おっそろしい想像すんじゃねェか、おめェ……」

　若干引いたようにフランキーに言われる。ひとまず彼の硬い腹を刀の柄で軽く小突いておいた。
　しかし、これがあの隠れ港の中に残されていた理由はわからない。
　もしかしたらこの国の契約に関わっていた人物である可能性はあった。
　ならば恨みくらい、いくらでも買うだろう。

（問題は誰が殺したか、だが）

[39 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 00:11:21]

国にしたら秘密裏に行ってきた契約だ。関係者が殺されたのであれば、捜査は厳しかっただろう。
　これしか記事がないので判断は難しいが、犯人を逮捕したという続報がなかったのであれば考えられるのは二つ。
　捕まえたが表ざたにせずに処分したか、もしくは、犯人はすっかり姿を消し――今も生きているか、だ。
　考えても詮無いことではあるが、どうにもすっきりしない話だった。

「……残ったのは、これか」

　ゾロが手にしたのは古ぼけた日誌だ。
　名前もないぼろぼろのそれは、棚と棚の間に隠すようにして残されていた。
　顔を上げればジンベエもフランキーも手元を覗き込んでいる。
　呼吸ひとつ分の間を開けて、ゾロは古びた表紙を捲った。

[40 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 00:13:10]

【誰かの日誌】
―――――――――
今日は五人出荷されていった。
また次の検査の日取り決まった。
―――――――――
今日は三人出荷されていった。
その内の二人は兄弟だった。
兄が弟を励ましていた。
―――――――――
今日は六人出荷されていった。
隣の家に住む娘さんが混じっていた。
たのむからおれをそんな目で見ないでくれ。
―――――――――
マリージョアでとんでもない事件が起きた。
あの子たちはどうなったのだろうか。
無事ににげられたんだろうか。
たのむからこのくににもどってこないでくれ。
―――――――――
信じられない。
おれのせいなのか。たったひとりの、おれの、おれがこんな【判別不能】
―――――――――
今日の出荷は一人だ。
あの方はいつものように笑顔で行かれた。
おれのこともだいじな民だといった。
どうして、
―――――――――

[41 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 00:15:13]

.
.
.
今日は十人も出荷されていった。
あの事件のせいで奴隷がいなくなって掻き集めているらしい。
よく売れると仲買人が笑っていた。
今の天竜人は気が立っていて、おもちゃを壊すのが早いらしい。
少し前に買われた子たちはもう使い物にならなくなったそうだ。
【以降、めちゃくちゃに書き殴られた文字で判別不能】
―――――――――
なぜだ
どうしてこんな
あとすこしだったのに
あとすこしでかえってこれたのに
だってあの方はあの日、そんな【判別不能】

おれたちはどうすりゃ良かったんだ？
―――――――――

[42 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 00:15:44]

.
.
.
死んだ！　死んだ！！　死んだ！！！
こんな日がくるなんて、祈りが通じたのか
ああ、でも、まだあいつが、
―――――――――
すごい、ああ、しんじられない
夢みたいだ
あいつも死んだらしい　殺されたって
誰が殺してくれてたって構わない
おれたちは自由だ
新聞を読んでみんなで泣いて喜んだ

だけどもうおれの【判別不能】
―――――――――
ここも不要になった
明日、埋め立てられることになった
だからこれはここに置いていく
ああ早く明日にならないだろうか

これでやっと……やっと……

むすめのところにおれもいける
―――――――――

[43 二次元好きの匿名さん 23/01/18(水) 00:32:12]

病は確かに存在していたのかな。ただ奴隷解放事件が起きてからは病の子もいたんだろうけど何もない子もカルテをねつ造して送ってたのかも...リストがあればもう少し共通点とか見つけられたんじゃないかな
この国闇深すぎないかね

[44 二次元好きの匿名さん 23/01/18(水) 00:44:53]

国の王女まで奴隷になってんのおかしいだろ…なんで…

[45 二次元好きの匿名さん 23/01/18(水) 03:29:36]

泣いちゃった！！！

[46 二次元好きの匿名さん 23/01/18(水) 07:56:28]

ドキドキする
続きが楽しみすぎる

[47 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 08:16:55]

「――アゥアウアウアウアウゥゥゥ～～～～ッ……！！」

　ぼたぼたと大量の涙と鼻水を垂れ流す仲間――フランキーから古びた日誌を遠ざけた。
　ゾロは呆れ半分で彼を見て腕を組んだ。

「なに泣いてんだよ……」
「べ、べつに泣いてなんかねェッ！　だがなァ、おめ、おめェ……ッ！　こいつ娘が……ギャゥ～～～～ッ」

　どこからか取り出したハンカチで溢れる涙を拭い、フランキーはしゃくり上げる。

「バッキャロウ……ッ！　アゥアウッ……娘連れてこんな国さっさと出て行きゃ良かったんだよッ……！」

　すでにハンカチは使い物にはならない状態になっていた。
　二枚目のハンカチで鼻を噛み始めたフランキーを横目にゾロはジンベエに顔を向ける。

「これではっきりしたな。とにかくこの国が子供売ってたのは本当だったわけだ」

　ジンベエは難しい顔をして日誌を捲り直しながら頷く。

「日付は飛び飛びじゃが、この日誌が書かれていたのはおおよそ四年程度か。
……十五年前の事件、のう」

　彼はそう呟いてから一拍開けて、重たい息を吐いた。

「とにかく、ナミには酷かもしれんが……これに関して何があったのかおおよそわかったようなものじゃ。
おそらく日誌に書かれとる新聞の話はさきほどの記事に違いなかろう」
「ん？　……ああ、粉になって死んだ仲買人か。やっぱり関わってたんだな」
「随分と嫌われとったようじゃな。じゃが、これを見るにこやつらも犯人が誰だかわかっとらんのか」

[48 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 08:17:09]

　仲買人は国と政府を繋ぐパイプだったのだろう。それを殺した犯人は事実を知っていたことになる。
　犯人もこの日誌の主と同じく裏で働いていた者か、何処からか情報を得た被害者の家族だったのか。想像するだけならいくらでもできる。
　しかし、ゾロは酒を飲み干して頭を振った。

「とにかくルフィたちが戻ってくるのを待つか。ハッ、あいつら驚くぞ。留守番してたおれたちがこんなもん手に入れて」
「フウゥッ……だな。ひとまず船の中にしまって……アウ？」

　ふいにフランキーが首を傾げた。

「どうした？」
「いや……ミニミニフランキー将軍が一体足りねぇ」

　彼の視線に釣られ、ゾロも『ミニミニフランキー将軍』の群れに目をやった。
　十五体あったはずの小さな体は確かに一体欠けている。

「海に落ちたんじゃねェのか」
「それくらいならすぐ這い上がってくるっての！　しかし、どっかに引っかかってんのかァ？」

　フランキーが何やら機械を弄り始めていると、どこからかピーピーと音が聞こえてきた。
　彼の手の中にある機械からかと思えば、そうではない。

「おい、なんか聞こえんぞ」
「ンン？　お？　ありゃミニミニフランキー将軍の燃料切れの音だなッ！」

　フランキーが勢いよく立ち上がる。ジンベエもまた腰を上げ、彼に問い掛けた。

[49 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 08:17:22]

「動かすか？」
「悪ィな。回収はしておきてェ。やっぱ体が小せェと積める燃料が限られるな……」

　きっとその燃料もコーラなのだろう。ゾロは辺りにうろつく『ミニミニフランキー将軍』を眺めた。
　ジンベエが再びサニー号を動かし始め、けたたましく鳴る音の方向へ船を寄せる。
　少しして音の正体が引っ掛かっている崖の下に辿り着いた。
　ゾロは崖を見上げて首を捻る。一体の『ミニミニフランキー将軍』が何かにはまり、動けなくなっているのが見えた。

「溝でもあんのか？」
「いや、ありゃあ……穴か？」

　とにかく回収をするとして、フランキーは他の『ミニミニフランキー将軍』を数体、崖に投げた。
　上手に着地した小さな機体はキャタピラを駆使し、はまり込んで動けなくなっている機体に群がる。
　ややあって、スポンッと機体が抜けた後に残っていたのは四角い穴だ。
　どうやらそこへちょうどキャタピラが斜めにはまり、動けくなっていたようだった。

「ん～～？」

　フランキーがギリギリまで近づき、目を凝らした。

「……換気口、か？」
「こんなところにか？」

　ジンベエが不思議そうに問い、フランキーが頷く。

[50 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 08:18:34]

「きっと地下かどっかのだろうな。部屋でもあんじゃねェのか？」

「もしかしてさっきの元施設のじゃねェか。あれも地下だろ」

「そうかもしれねェが、場所が違いすぎやしねェか？」

　沈黙が落ちる。地下があること自体はよくあることだ。

　だが、この島の地下となるとどうにも嫌な予感がしてしまうのは、今まで知ってしまった情報のせいだろうか。

「……念のためミニフランキー将軍を突っ込んで調べとくか？」

「さっき嵌っちまってたじゃねェか」

「おめェ、あれは変な風に引っ掛かっちまっただけだ。真正面の向きなら通れるサイズだ」

　そう言いながらフランキーは回収した一体の『ミニミニフランキー将軍』へ新たにコーラを注入する。

　簡単なメンテナンスもしてから、また崖に向けてその機体を放り投げた。

「行けるとこまで行って、なんか拾ってくれば御の字だな」

「……それは盗みに入らんのか？　もし一般人の貯蔵庫か何かだったらどうする」

　ジンベエが懸念点をあげるが、フランキーは軽く笑った。

「あれの腹に入る量ならわかんねェよ。んじゃ、おれたちはルフィたちからの連絡を待とうぜ」

★『ミニミニフランキー将軍』は何かを拾ってくる？

1：なにやら無理やり詰め込まれている

2：よく見ると妙な物が入っている

3：成果なし

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[51 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 12:17:24]

★2日目午前が終了しました。
★チョッパーとローは現在行動不能になりました。また、ふたりが得た情報はまだ共有できません。
★『お姉さん』に会いましたがサンジは気付きませんでした。
★エンディング②以降のルートに入っています。
（①ノーマルエンド　②バッドエンド　③トゥルーエンド）

▼情報
【警備隊の噂】◎
【海の戦士ソラのサイン入り初版の話】◎
【白い花畑の話】◎
【『名前のない医者の古い論文』取得】◎
【祭りに来る天竜人の話】◎
【天上金と貢物の話】◎
【子供だけが罹る病の話】◎
【双子姫の話】◎
【天竜人と警備隊の関係】◎
【祭りの由来】◎

【『お姉さん』の話】◎
【未取得】※特定の選択肢によって取得可能
【城の中の話（最大値の5個）】◎
【城の中の隠し金庫の中身】◎
【警備隊副隊長の様子】◎
【警備隊隊長の様子】◎NEW！
【『お姉さん』の様子】◎NEW！

【十五歳鱗病の話】◎
【『売買契約破棄書』の話】◎
【ハートの海賊団の集めた情報】◎
【〝珀鉛病〟の話】◎

[52 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 12:17:59]

街のはずれ
【白いタンポポの正体】◎NEW！
【ピエロの様子】◎NEW！
【地下の珀鉛貯蔵庫】◎NEW！
【複数の魚人の確認】◎NEW！

街の中
【天竜人の酒の話】◎NEW！
【天竜人の酒の味】◎NEW！
【海ソラのサイン入り初版の持ち主の話】◎NEW！
【珀鉛論文と海ソラ初版の売り主の話】◎NEW！
【未取得】※『公園』で取得可能

サニー号の見張り
【隠れ港】◎NEW！
【隠れ港に残された情報（4つ中3つ取得）】◎NEW！
【能力者の存在の話】◎NEW！
【ミニミニフランキー将軍の持ち帰ったもの】◎NEW！
※持ち帰った物の内容はまだ情報開示できません。

・取得可能な情報は随時増減、もしくは取得条件が変動します。
・チョッパー＆ローは行動不能なため、自動的に他のメンバーからストーリーが再開します。
・2日目午前の『街の中』ナミ班とハート班は自動的に情報を２つずつ取得します。

[53 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 12:34:13]

★情報開示条件を満たしましたので【誰かの記憶】を再生します。
―――――――――
　私は本に囲まれて育ちました。
　大抵の欲しい物は願えば手に入りましたが、私にとって本に勝る興味はありませんでした。
　本は私に経験を与えてくれました。本を読む間だけ、私は別の誰かになることができるのです。それが楽しくて仕方ありませんでした。
　本ばかり読んで書庫に篭りがちな私を、父は良く心配していました。優しい人でした。
　父は本以外に欲しい物はないかと訊いてくれました。
　優しい父の気持ちに応えねばならないと私は考え、少し頭を悩ましてから――ひとつだけ思い当たりました。
　前から心の内に潜めていた願いです。私と同じくらい本が好きな友達が欲しい。そう、初めて伝えました。
　父は優しく微笑み、言いました。

「そうかそうか、なるほどな。では、これからお前に初めての――」
―――――――――
【再生終了しました】

[54 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 12:54:34]

2日目午後
街中『パラダイスストリート』/視点チェンジ
⇒麦わらの一味（ナミ）

「――アンタたちなにしてんのよッ！！！！」
『ごめんなさい』

　周囲にいかがわしい本が並ぶストリートの端でナミは怒りに拳を震えさせた。
　目の前には石畳の上で土下座をしているルフィとウソップとサンジがいる。
　彼らと同じ班だったベポは、合流したハートの海賊団の船員たちに優しく肩や背を叩かれていた。

「騒ぎは起こすわ、集合場所変更するっていうから来てみればこんな場所だわ……。
はあ、頭が痛くなっちゃう」
「ナミさん……ッ！？　そいつはいけねェ……！
なにか温かいものを作ろうか……！？」
「サンジ君、ありがと。……でもその原因がアンタたちなのよね！！」

　午前中の調査活動を終え、ナミたちは分かれていたメンバーと無事に合流できた。
　だが、そこでひとつ大きな問題が起きていたのだ。

[55 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 12:55:22]

　そう、ルフィのいるメンバーが警備隊に追われて街中を爆走するという珍事だ。
　どう考えてもルフィ、もしくは他の仲間が引き起こしたことだとは理解できた。そのため巻き込んでしまったベポは、そっとハートの海賊団たちに任せてある。

「やっぱり事件起きたな……」
「期待裏切らなさすぎてもはや笑える……」
「ヨホホ、ヨホホホホホッ……ちょっとお二方、ここの本すごいですよ……ッ！」
「「え、なになにどれどれ」」

　後ろで呆れた様子で見ていたシャチとペンギンがブルックに唆され、近くの本屋に誘われていく。
　場所のせいで色々と集中できないがルフィたち曰く、ここは警備隊の見回りがほとんど来ないらしい。
　今はそれを信じて、ここで穏便に話を済ませることにした。

[56 二次元好きの匿名さん 23/01/18(水) 13:23:35]

＞「では、これからお前に初めての――」

ねえ待ってくれこの視点って……！！？

だとするとサンジが出会ったお姉さんって天竜…

[57 二次元好きの匿名さん 23/01/18(水) 18:16:29]

このお姉さんって前に会った女の子が言ってた天竜人のお付きの人、、？

[58 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 21:18:28]

「……ま、子供を助けるためだったっていうなら今回は大目に見てあげるわ。
美味しいデザートも作ってくれるんでしょ？」
「それはもちろんッ！！　最高の時間をナミさんとロビンちゃんに提供するぜ……！！」

　両手を合わせて甘い決意の声をあげるサンジにナミは苦笑した。
　とにかく今は集まった情報を擦り合わせる時間だ。
　このストリートは中身が酷いものだが、扱っている本と立地の関係上、訪れている客は他よりも少ない。
　なおかつ本に集中していると何も聞こえていない有様のようだった。
　集中している理由に関しては考えないことにして、ナミたちは情報共有を始める。

「とりあえず私たちは例の検査施設の跡地を見に行ってきたけど……ダメね。
建物はもう潰されてちょっとした広場になってたの」
「ええ、施設があった説明だけが残されてる状態だったわ」

　横からロビンが言葉を付け足す。それにナミは頷いた。

[59 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 21:19:10]

「献花台もありましたので、そちらに被害者のご家族が祭りの間は花を捧げに来るご様子でした」
「他の公園とは違って流石にちょっと陰鬱としたというか……厳かな感じがしたな。おれたちだとちょっと場違いかなっていう」

　ブルックとペンギンが思い出したように言う。
　その広場では親子で本を持ってベンチで仲良く読書をしている姿もあったが、ペンギンの言う通り、少し落ち着きすぎた場所だ。
　だが、ナミはそこで聞いた話のことが少し気にかかっていた。

「……でも、変な話というか、怖い話を聞いたというか……」
「怖い話？」

　ルフィが腕を組んで首を傾げる。
　ナミはその広場にいた中年の男性から聞いた話を思い出した。

[60 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 21:19:54]

「十三年前、例の病気が終わったって言われて施設も取り潰しになった後のことね。
……施設で働いていた職員の何人かが自殺したんですって」
「じ、じさつ……！？」

　ペボが青い顔をして口を両手で押さえた。
　気持ちはわかる。ナミも話を聞いた時は背筋が寒くなったものだ。
　偶然かもしれない。それでも、十三年前に色々と集まると関連性を疑ってしまうのも仕方ない話である。

「関係者が口封じに殺されたんじゃないかしら」

　ロビンが涼しい顔をして言った。

「怖ェよ！？　そ、そんなの偶然かもしれねェだろ！？」
「……確かに。口封じなら、施設から全員逃げられないようにしてから火事とかに見せかけて処分しないとダメよね」
「恐怖をグレートアップしろとは言ってねェよ！？」

　顔を青くしてロビンの言葉に震えるウソップを横目に、ブルックが静かに言う。

[61 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 21:21:23]

「その亡くなられた方たちが、もし、例の件に深く関わっていたのであれば……罪の意識に飲み込まれたのかもしれませんね。
……もう、どうしようもない深い闇だったでしょうに」

　彼の声には僅かに憐憫が含まれていた。
　多くの子どもを天竜人に送り出す立場だ。
　奴隷にされた者がどんな運命を辿るのか知っていれば、とてもじゃないが正気でいられるはずがない。
　ナミは俯いて小さく息を吐いた。

「……それで、自殺した以外の……そこで働いてた人たちは施設がなくなった後、ほとんどが工場で働くようになったらしいわ」
「工場って、あの天竜人用の商品作ってるところ？」

　ペボが体を傾げながら訊いてきた。ナミはそれに頷きで返す。
　この国は子供たちの引き渡しの契約の終了とほぼ同時期に工場での商品生産が活発になっている。
　逆に言えば、子供の代わりに卸せる商品ができたからこそ契約が終わったのかもしれない。

[62 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 21:22:49]

（もっと早くにそうできなかったのかしら）

　いくらそう思っても過去の話だ。もうどうしようもならない。それはナミもわかっていることだった。
　ふいにペンギンが「あ」と声を上げる。

「あと、この街って海兵が常駐してないだろ？
気になってなんか理由があるのか訊いてみたんだよ」

　ペンギンの言葉に何人かが顔を向ける。その違和感はナミも持っていたものだ。
　海賊としては街で過ごしやすくて助かるが、加盟国としては異質に感じられる。
　呼べば最寄りの支部から駆けつけてくれるとしても、そのタイムラグは有事に心許ないからだ。
　彼は何処か困惑に近い様子で告げる。

「昔はどこかの支部から交代制で来てたし、なんなら海軍ももう少し近くに新しい支部を建てる話もあったみたらしいが……天竜人の鶴の一言でなくなっちまったんだと」
「天竜人の？　どういうことだ？」

[63 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 21:24:17]

　ペンギンの困惑が伝染したようにシャチが首を傾げる。

「『海軍嫌い』なんだってよ。今この国に来てる天竜人が」
「……はぁ？」

　これにはナミたち以外のメンバーが理解できないという顔をした。ナミもまた大きく頷く。
　サンジが驚いた顔でペンギンに詰め寄った。

「ちょ、ちょっと待て。んじゃなんだ？
別にこの国の王でもねェのに、たかが年に一度遊びに来てるだけの天竜人が嫌だって言ったから海軍がいねェのか？」
「そういうことだ。そりゃ、前に王下七武海が守ってるとこは海兵いねェ場所もあっただろうが……。
流石にそれは海軍としても、加盟国に対する最低限の保証もできないってんで困り果ててたらしい」
「……でも、それがまかり通ってしまった、と」

　ブルックの言葉にナミたちが黙り込む。
　そう、まかり通ってしまったからこの国には海軍がいないのだ。
　法外な天上金を支払わせておいてこの仕打ちである。割に合わないどころではない。

[64 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 21:26:06]

「海軍の介入が最低限になったのは十年くらい前だったとか。その頃に今のあの女の天竜人が定期的に来るようになったのよ」

　シャチが怪訝な顔をして後頭部を掻いた。

「海軍大将すらあれだけ簡単に呼ぶ連中がなァ……。
嫌いってことは何かあったのか？」
「流石にそこまでは。
……でも、この国が警備隊の質を高めようとした理由はなんかわかるぜ」
「ええ、海軍が近くで守ってくれないなら自分たちで自分たちの身を守るしかないもの。
入国してる天竜人に何かあったら全部、この国のせいにされるでしょうしね」

　ペンギンとロビンの話に居心地悪そうに数人が身じろいだ。
　自分たち海賊にとって敵である海軍は、民衆にとって本来は安寧を守ってくれる正義であるはずだった。
　それがない生活が、どれだけ心細いというのか。

「……と、まあ、私たちが聞けたのはこれくらいよ。そっちは何かあったの？」

[65 二次元好きの匿名さん 23/01/18(水) 21:50:52]

>>60

＞「恐怖をグレートアップしろとは言ってねェよ！？」

この台詞キレ良くて好きだわ支援

[66 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 23:12:53]

　ナミはシャチに話を振る。彼は肩をすくめて困り顔で言った。

「あるっちゃあるが、パッとしないぜ？」

　彼らは顔を見合わせてから、ひとまずといった様子でシャチが口を開いた。

「まず、先代天竜人の話だな。
これは城の裏で休んでたお婆ちゃんメイドに聞いた話なんだけどよ」
「ヨホホ……メイドさんですかァ。パンツ、見せて貰えました？」
「誰が婆ちゃんのパンツ見んだよッ！！」

　ブルックのいらぬ横槍にシャチが叫んだ。
　しかし放っておかないと話が進まないとすぐに理解したのか、彼は咳払いをひとつして続けた。

「街の連中には恐れられてた先代の天竜人だけどよ。
なんでもこの国の王とは仲が良かったそうだ。あの天竜人が王のことは『友』とか呼んでたらしいぜ」
「天竜人が友ォ……？」

　ウソップが懐疑に満ちた声を上げた。

「おれもちょっと信じられねェって。
でもだから色々と王には親切にしてくれてたって言うんだよ」

[67 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 23:13:25]

「天竜人の親切……？　想像がつかないけど何かあったの？」

　ベポが問い掛ければ他のハートの船員が答えた。

「その婆さんの話によれば滅多に手に入らない薬を王にくれてたとか。
ああ、その薬ってのはほら、あれの……」
「……まさか『十五歳鱗病』？」
「そうっ、それ！」

　ロビンの助けもあって彼はすっきりした顔で頷いた。
　シャチはその話を受けて肩を竦める。

「でも変な話だろ？　だってそんな病気はもうねェんだから。……本当に『十五歳鱗病』の薬だったんかね」
「もしそうだったとして……王はその薬を欲する理由があったということね」

　彼らの話を聞いてナミは考え込んだ。
　偽りだったかもしれない病気である。しかし、もし王の近くで発症してしまう可能性があった存在がいたとすれば――。
　昨夜、ハートの海賊団から聞いた話がぼんやりと思い出された。

「……双子姫の病気だけは本当だったって、こと？」

　ナミの呟きに一瞬だけ周りが静まり返った。
　その静寂を真っ先に破ったのはロビンだ。

「でも彼女たちは亡くなっているわ。……その薬でも治らなかったのね」
「……難病だったってのはマジなんだな」

　サンジは新しい煙草に火を付けながら瞳を伏せる。

[68 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 23:14:25]

　ナミも髪を掻き上げ、呼吸を整えた。
　この国は色々なものが複雑に絡み合っている気がして落ち着かない。
　偽りの病気と、その裏で行われていた非道な契約。そして天竜人の過剰な介入だ。
　今こうして住民が幸せそうに暮らしていることすら夢のようだった。

「で、あとは……あー、うん、怖い話？　ってわけでもねェんだけどさ……」
「なんだよ、随分歯切れ悪いな」
「なんつうか、情報としてカウントするのも憚れる話っつうかね？」

　結局シャチはペンギンに突かれるまま話し出した。

「あの城って事前に申し込めば、ちょっとだけ城内を見て回れるって話なの知ってるか？」
「あ、知ってる。街に入る時に説明されたわよね」
「おう、おれらの時はなんかもう予約埋まってるとかいってダメだったよな」

　ナミとウソップは顔を見合わせて頷いた。
　観光客向けの案内なのだろう。
　勿論、城には王族が暮らしているのでホールや客間など、差し障りのない場所のみだったはずだ。

「そうそう、それ。んで、これはたまたま城内散策した観光客に聞いたんだけどさ。
そいつ手洗い行こうとしたらうっかり城の中で迷っちまって、奥まで入っちゃったんだと」
「え、それ大丈夫なの？　下手すれば捕まっちゃわない？」
「だよな。そいつもそれ心配して、元の場所に戻るためにメイドとか捜したらしいんだが運悪く見つけられなくてな。
あ、ちなみに一階な。……んで、そこで聞いたんだと」

　シャチが声を潜めた。何となくナミとウソップは空気に飲まれるようにして黙り込む。

[69 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/18(水) 23:16:22]

「コツ、コツ、コツ……って。
誰もいねェ通路なのに誰かが歩いてる音がして、そいつは一生懸命辺りを見渡した。
だけどやっぱり人っ子一人いねェ。一体どこから音がしてんのかって耳を澄ませたらな……わかっちまったんだよ。
自分の真下――床の中からその音は聞こえてたんだって」
「「オバケェ――――ッッッ！！！！」」
「ウワァ――――ッッッ！？」

　ナミたちの悲鳴にシャチがビビッて悲鳴をあげる。
　気づけばウソップと手を握り合ってガタガタ震えていたナミは口元を引き攣らせた。

「一階なんでしょ！？　二階ならまだわかるけど……床の下に何が埋まってんのよ！？」
「ややややややめろよナミ……！　埋まってて動くといや、お前……そんなの……」
「「ゾンビッ！？」」
「仲良いなお前ら」

　ギャーンッ！　と泣くふたりをペンギンは半ば笑って軽く流す。そして頬を掻いて言った。

「普通に考えりゃ地下があって、そこからの音が響いてたんじゃねェのかな？」

　ハッ、とナミたちは息を飲む。そう言われればそうだ。
　少し考えればわかることだったと思えば、オバケだのゾンビだのと怯えていたことが恥ずかしくなる。
　うっかり二年前に遭遇したゾンビだらけの恐ろしい島を思い出してしまっていた。

「いんや？　あの城って地下ねェらしいぞ」
「「やっぱりオバケじゃんッ！？」」

　ウソップが何処からか取り出した十字架を振り上げる。
　取り乱すナミやウソップのことを置いて、周囲はあれこれと話し合いを始めた。

[70 二次元好きの匿名さん 23/01/18(水) 23:25:57]

秘密の地下通路があるんだろうな…

[71 二次元好きの匿名さん 23/01/19(木) 00:03:18]

面白いなぁ支援

[72 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 08:16:10]

「やっぱり街の連中に聞くだけじゃなんともなァ……」
「だな。って言っても城に忍び込むなんざ、流石にな」

　困り顔のハートの海賊団の船員の横でサンジがブルックを見た。

「ここに迷子捜すためだけに城に入った奴がいるんだよな」
「ヨホホ、褒められると照れます」

　ならばこの後はどうするかと方針について語ろうとしている時だった。
　ずっと黙って話を聞いていたルフィが声を上げる。

「なァ、チョッパーとトラ男は？　まだ来ねェのか？」

　それはこの場にいないふたりの名前だった。
　ナミも問われて初めて存在を思い出す。彼らは街の外れにあるという『白い花畑』を見に行ったのだ。
　採取などが終わればすぐに合流する手はずだったのだが、確かにその姿はまだない。

「あ……？　そういやそうだな。もう昼はとっくに過ぎちまったぞ」
「おふたりとも勉強熱心ですからねェ。その花畑で調べることがいっぱいできちゃったんでしょうか？」

　サンジとブルックも首を傾げた。
　確かにあのふたりのことだ。集中してしまえば時間を忘れて没頭してしまっているかもしれない。
　――だが、そこでハートの海賊団のひとりが手を上げた。

[73 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 08:16:23]

「……あのさ、実はさっきから電伝虫掛けてるんだけどキャプテンに繋がらねェんだ」
「え？」

　そう言った彼の手の平には確かに電伝虫が乗っていた。
　今は静かに目を閉じたままになっている。

「ほら、このストリートって地図にも載ってねェから言わなきゃわかんねェだろ？
だからキャプテンに居場所を知らせとかなくちゃいけないなと思って、何度か掛けてみてるんだけどさ……」

　彼は話しながら再び通話を試みた。電伝虫は口を小さく開けて『プルプルプルプル……』と鳴き続ける。
　だが、それだけだ。やがて鳴き疲れたかのように電伝虫は静かになった。

「……トラ男君て集中しちゃうと周りの音聞こえなくなるタイプ？」

　念のための確認として問い掛けた。
　ハートの海賊団の船員たちは顔を見合わせてから難しい顔をする。

「自分のペース崩されるのが好きじゃないから逆に気づきやすいっていうか、なァ？」
「おれ、キャプテンが読書中に近くでうっかり騒いでウルセェってバラされたことある」
「あー、あったあった。丁寧に分解されてたよな」
「あの時おれで人体パズルやった奴らゆるさねェ」

　というふうにハートの海賊団はいわゆる身内ネタで盛り上がって笑いだす。そしてすぐに黙り込んだ。

「なんか……あったのか？」

　シャチの声は努めて冷静だったが、それでも隠し切れない焦りが滲んでいた。
　ナミたちも徐々に不安が高まってくる。

[74 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 08:16:36]

「そうよね……？　チョッパーだって一緒にいるんだから、トラ男君の電伝虫が鳴ってることくらい気づくわよね……？」
「なんだか、ちょっと心配ですねェ」
「い、いやいやいやッ！　花を見に行っただけだぜ！？　何が起こるっていうんだよ！？」

　そう言いながらウソップの顔にも汗が滲んでいた。
　ただ電伝虫に出ないというだけでどうしてこうも不安になるというのか。
　それは今、自分たちがいる国に対して不信感を抱いているせいなのかもしれない。
　もしかしたら本当に鳴っているのに気づいていないだけで、後で悪びれずに顔を出してくる可能性だってあった。

「……ルフィ、どうする？」

　煙草の煙を吐き出しながらサンジが問い掛けた。
　ナミが振り向けば、ルフィは存外冷静な様子でそこにいる。
　彼は押さえるように麦わら帽子に触れ、言った。

「そーだな。おれはトラ男がいるからチョッパーのことは心配してねェけど……。
でもここであれこれ言っててもわかんねェんだから、見に行きゃ良いんじゃねェのか？」

　それはある意味、当たり前の話だ。
　だが、妙な焦燥感で思考が空回っていたのだろう。ハートの海賊団たちは息を飲み、互いの顔を見た。

「ッ、麦わら！　おれらこれで一旦引き上げる！　その花畑とやら確認してくるわッ！」
「お前らの船医もちゃんと捜してくるから心配すんなよ！」
「場所何処だっけ！？」
「だーッ！　お前ら落ち着けって！　おれが道聞いてるから案内する！」

[75 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 08:17:17]

　ぎゃあぎゃあと騒ぐハートの海賊団たちを見かねたのか、ウソップが彼らの後を追いかけた。
　そしてナミたちに向けて軽く手を振るだけで走り去っていく。
　残されたのはナミを含めた五人のみ。基本的に少人数で活動することが多いが、ハートの海賊団と行動していたせいか少なく感じた。

「おれらはどうするか、だが……」
「ン、チョッパーとトラ男はあいつらに任せる」
「……じゃあ私たちも一旦街から出ようかしら。もしかしたらふたりとも船のほうに戻っているかもしれないわ」
「そうですねェ」

　もしかしたら例の花畑で何か怪我をして一度船に戻ったのかもしれない。そう考えようとして、冷静な思考が否定をする。
　ふたりは医者だ。しかも専門分野は異なっても、ふたりして名医である。
　つまり、何かあったところでその場で大抵対応ができてしまうのだ。
　だからこそふたりから音沙汰がないという状況自体が異常に感じられた。

「……何もないと良いんだけど」

　そうぽつりと呟いて、悪趣味に見えるピンク色のネオンの看板を見上げた。


　――ナミの予想はある意味当たっていた。
　何もなかったのだ。
　ふたりがいるはずの白い花畑にも。
　ふたりが帰る場所としているそれぞれの海賊船にも。
　何処かに向かう道の途中にも。
　チョッパーとローは何処にもいなかった。
　ふたりが消えた。

　ただ、その事実だけがナミたちの手元に情報としてもたらされただけだった。

[76 二次元好きの匿名さん 23/01/19(木) 10:36:27]

うわ〜
はやく助けてあげてくれ

[77 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 12:42:07]

サニー号/視点チェンジ
⇒麦わらの一味（フランキー）

　サニー号の上は騒然としていた。
　集まっているのはルフィ率いる『麦わらの一味』だけではない。
　ハートの海賊団の船員たちもまた、昨夜の宴のようにこの場に集まっている。
　彼らがしきりに口にするのはハートの海賊団の船長であるローの所在のことだ。
　フランキーは腕を組んで彼らを見下ろしていた。

（まァた面倒なことになりやがってんな）

　――チョッパーとローが消えた。
　口に出すと簡単な事実は、この場で最も混乱を巻き起こすワードになっていた。
　ナミが汗を滲ませてフランキーに問う。

「ねえ、本当にふたりとも戻ってきてないの？」
「だからよ、何度も言ってるだろうが。影も見てねェって」

　チョッパーとローは街の外れにある『白い花畑』の調査に行っているはずだった。
　その後、適当に切り上げて街で探索している者たちと合流予定だったらしい。
　だが、彼らは時間が経っても街に姿を現さなかった上に、電伝虫で連絡もつかないときた。
　それに焦れたハートの海賊団とウソップで様子を見に行ったそうだ。

[78 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 12:44:41]

　結果として判明したのは行方不明である事実のみ。
　ふたりの目的地には誰もおらず、奇妙な白いタンポポだけが風にそよいでいたらしい。

「道を塞いでたガラクタは動かされた形跡があったから、あのふたりがあそこに行ったこと自体は間違いねェと思う」

　ウソップは険しい顔をして告げた。
　だからこそ傍にいるハートの海賊団たちが頭を抱えているのだ。

「もーッ！　次はどこ行っちまったんだよ！？」
「しかも麦わらのとこの船医まで連れてっちまってさァッ！！」
「おや、そちら的にこういう時は彼がやらかした可能性が高いんですか？」
「なんかわかんねェけどこの胸騒ぎはそんな気がするッ！！」

　「キャプテーンッ！！」とシャチが吠えた。長年の付き合いゆえの勘だろうか。
　フランキーは頭を掻いた。

「すれ違ったんじゃねェのか？　あいつら街にいるかもしれねェだろ」
「それも考えて街の中も他の奴らで捜しに行ってるけど……今んとこ連絡がねェ」

[79 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 12:45:56]

　ペンギンが苦々しく口元を歪めて答えた。
　現状、これ以上の身動きの取りようがない。

「空腹じゃ頭回んねェだろ。即席の握り飯だが腹に入れとけ」

　厨房からはサンジが姿を現した。
　両腕や頭へ、オニギリの乗った大皿を器用に乗せている。ハートの海賊団の船員たちは口々に礼を言いながら、素直に手を伸ばした。
　その横でゾロが言う。

「その花畑とやらは森の中進んでくんだろ？　迷子になったんじゃねェのか？」
「こんのクソマリモ、口を慎め、口をッ！！　テメェだけは絶対にそれを言う資格はねェ！！」
「チョッパーとトラ男君のふたりが一本道で迷子になるわけないでしょ！！　アンタじゃないんだからッ！！」
「お、おう」

　迷子の化身であるゾロの言葉にサンジとナミが激昂する。
　フランキーも彼にそんなことを言われたら、場合によっては不名誉すぎて手が出るかもしれない。

[80 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 12:50:00]

　フランキーは落ち着かない周囲を見てため息をついた。

「ふたりが見つからねェってことはよ。この国まだヤベェんじゃねェのか」

　それはこの騒動が始まってから考えていたことだった。
　フランキーの呟きに、近くにいた者たちが振り返る。

「……フランキー、理由を言うてみい」
「アウ、状況を整理すると『ふたりは確かに花畑には行った』『迷子には絶対にならねェ』……まあ、これはトラ男の能力のこともあるが。
んで『だけど何処にもいねェ』『連絡はつかねェが電伝虫は鳴る』」

　ジンベエに促されて、フランキーは素直に答える。
　指折り数えながら要素を上げ連ねていけば、いつしか周りの者たちは静かになっていた。

「チョッパーたちが自分の意思でどっか行ったってんなら最低でも連絡だけはつくだろ。だが、それがねェんだ」

　ならば考えられる可能性はひとつ。

「――あいつら捕まってんじゃねェのか？
この国であいつら捕えられそうな連中っていや……まあギリギリ、国の警備隊とかそのあたりだろ。
で、なんで捕まったのかといえば……」
「相手にとって都合の悪いものを見てしまったから、ね」

[81 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 12:51:18]

　ロビンがフランキーの言葉を繋げた。それに頷きで返す。
　静かになっていたはずの場が再び騒めいた。

「都合の悪いもんって……ふたりは花を見に行っただけだろ……？」
「なんだっけ、地質に異常がないか見に行ったんだっけ……？」
「お、おう。花の変色の理由がなんたらって……」

　確かにそれだけだ。それだけなのだが、もしそれこそが『都合の悪い物』だったとするならば話は変わってくる。
　進展を見守っていたウソップが眉間に皺を寄せた。
　そしていつも提げている鞄に手を突っ込み、小さな包みを取り出す。

「……ふたりを捜しに行った時におれも花を見たんだよ。
本当に根っこまで白くなってやがった」

[82 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 12:53:24]

　そう言いながらウソップが包みを広げる。

　すると少しくたびれた様子の白いタンポポが数輪、そこにあった。

　フランキーは目を丸くさせる。

「なんでい、摘んできたのか？」

「いやァ……なんか手掛かりになればと思ってよ……」

　覗き込んだそのタンポポは確かに白以外に色を持っていなかった。

　突然変異にしても奇妙な物としてフランキーの目には映る。

「白いタンポポ、ねェ」

1：横から骨の手がタンポポを摘み上げる

2：とりあえず話を続ける

dice1d2=2 (2)

[83 二次元好きの匿名さん 23/01/19(木) 13:00:43]

チョッパーっておじいさんからもらった本を置いてってるんだっけ…ロビンちゃんあたりなら珀鉛病と結びつけられないかな…あと旗揚げ組…

[84 二次元好きの匿名さん 23/01/19(木) 13:06:28]

旗揚げ組や博識なロビンちゃんなら珀鉛病のこと知ってそうだけどなあ
この状況ですぐに結び付けられるかというと

[85 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 20:24:13]

「とにかく、だ。相手が国なら一筋縄じゃいかねェぜ。
しかし、あいつらがいそうな場所っつったらなァ……」

　この国はそこそこに広い。
　たったふたりの人間――片方はヒトヒトの実を食べたトナカイだが――を隠す場所などいくらでもある。
　ここはブルックの幽体離脱が大いに役立つのではないだろうか。あれならば障害を気にすることないのだから。
　そう思って何となく視線を向けると、彼はウソップを見たまま立ち尽くしている。
　考え事でもしていそうな雰囲気にフランキーは声をかけた。

「なんかあったか？」
「え？　……いいえ、何でもありませんよ。
ヨホホ、次から次へと我々の旅には波乱が訪れますね」
「それだけスーパーな航路ってことよ。困難は打ち破ってこそだろ」

　フランキーが腕を振りながら言えば、ブルックは骨だけの顔で微笑んだように見えた。
　それを見て、フランキーは小さく鼻を鳴らす。

（なんか隠してやがるな）

　だが、言いたくないのであれば無理やり口を開かせるわけにもいかない。
　必要になれば話すだろう。ブルックとはそういう男だとフランキーも知っていた。

[86 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 20:25:31]

　しかし、どうにも時間ばかりが過ぎていく。
　やはり街に捜しに行った者たちからの報告も芳しくなかった。
　ここで逆にチョッパーとローがヒョッコリと顔を出そうものなら、全方位から叱られそうな雰囲気だ。
　もちろん、そうであればどれほど良かったか。
　島の怪しい場所を洗い出そうとナミたちが地図を広げ始めた頃、ゾロがフランキーに声をかけた。

「おい、昼頃に放り投げた奴が戻ってきてるぜ」
「アァン？」

　何の話だと顔を向けるとゾロがそれを片手でプランとぶら下げて見せてきた。
　彼の手に吊られていたのは見覚えのある機体だ。
　そう、あの換気口に送り出した『ミニミニフランキー将軍』である。
　突然現れた小さなロボに周囲の男たちが勢い良く振り向いた。

「フランキーそれなんだ！？　ロボか！？　ロボだなッ！？　ロボだッ――――！！」
「ウオォ――――ッ！！　ミニロボだッ！！　それ動くのかよ！？」

　先ほどまでの焦燥感は何処へ消え去ったのか。
　気づけば男の大半はロボに対してテンションをぶち上げていた。
　彼らの後ろでは数少ない女性陣が感情をどこかに落とした顔をしている。
　浪漫に心が燃えている男たちの目に、そんな彼女たちの反応が映ることはない。
　なにせ誰もが目をキラキラと輝かせて『ミニミニフランキー将軍に触れてはしゃいでいるのだ。仕方ないことである。

[87 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 20:26:45]

「キャタピラついてんぞ！！　しかも両腕がドリルになってる！！　カッケェ――――ッ！！」

　ハートの海賊団の船員のひとりの歓喜の声にフランキーは首を傾げた。

「ドリルだァ？　そりゃ変形機能はつけたが、今回はオートで発動はしねェようにしてたんだがよ」

　オートでドリルを使わせると何処まで掘り進めてしまうかわからないため、設定は切っておいたのだ。
　換気口の中を歩き回っている内にスイッチに触れてしまったのだろうか。
　だが、設定を弄るためには背中の蓋を開けなければならないのでそれも考えづらい。
　とにかく腕の形状を元に戻すため一度、『ミニミニフランキー将軍』を受け取った。
　そして片手で小さな機体を掴んだ時にフランキーは違和感に気づく。

「アウ？」
「どうしたんじゃ？」
「ンー？　腹の中になんかみっちり詰まってやがる」

　そこは小さな物であれば入れられるようにしておいた収納スペースだ。
　換気口から進んだ先で何か拾ってきたのだろう。中身が何であれ、ひとまず収穫はあったようだ。
　ただ、フランキーは眉間に皴を寄せて唸った。
　抜けないのだ。『ミニミニフランキー将軍』の腹に詰め込まれた物が。

[88 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 20:27:48]

「なんだァ！？　スペースの許容範囲超えてんじゃねェか！　しかも柔らかくて湿ってやがるッ……！
ミニミニフランキー将軍よォッ、おめェこれどうやって詰めたんだよ……ッ！」
「頑張ったんだろ」
「ウォォォォッ！！　流石おれの作ったミニミニフランキー将軍ッ！！
ス――――パァ――――だぜェ――――ッ！！」

　ゾロの適当な言葉にフランキーは体内のコーラを沸き立たせながら、小さな体に詰め込まれた謎の何かを思いきり引き抜いた。
　勢い良く飛び出たそれはフランキーの手を離れ、べしゃりと芝生の上に落ちる。
　誰もがそれを目で追った。どこかで見たことのあるものだったからだ。

「ア？」

　静まり返った空気の中、フランキーはそれをゆっくりと拾い上げる。
　何故か潮の香りを纏った、黒茶色のまだら模様が入った白い帽子だった。
　思いきり丸め込んだのか、形は崩れてしまっている。
　だが、それが何なのかわからないわけがない。

「……おい、フランキー。一応訊くが……」
「おう……」

　それはゾロの静かな声だった。他の誰もが動かず、言葉も発さない。
　だからこそ彼が口を開いたのだろう。頬に一筋の汗を滲ませた彼は、その問いを吐き出した。

「なんでテメェのロボから――トラ男の帽子が出てくるんだ？」

[89 二次元好きの匿名さん 23/01/19(木) 20:32:15]

うおあ！？
ミニミニフランキー将軍ナイス！

[90 二次元好きの匿名さん 23/01/19(木) 20:52:17]

ローが詰めたのか？
居場所を特定してもらえるように？
紙とかあって何か書ける状況ならそうしたろうけど出来ないから自分だってわかるように帽子を入れた？

[91 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 21:01:38]

　そう、この特徴的な帽子を見間違えるはずがない。
　今朝も彼が――ローが普段通り被って出かけて行ったのを見かけたのだ。

「なんでっておめェ……それがわかっちまったら、おれたちはこんな頭を悩ませねェよ」

　やっと弾かれたようにして、シャチとペンギンが駆け寄ってくる。
　フランキーの手から帽子を受け取り、手を震えさせた。

「キャプテンのだ……間違いねェ……ッ！」
「なんで……おい、これどこ行ってた奴なんだッ！？」
「あー……」

　なんと説明したものか。答えは崖に突如現れた換気口の中なのだが、フランキーがわかるのもそこまでだ。
　何処かの地下に繋がっているのだろうと予想はできたが、そこから行方不明のローの私物が出てくるなど思いもしない。
　ならばチョッパーとローは地下空間にいることになる。しかし、そこに至るまでの入り口を見つけなければいけないだろう。
　騒ぐシャチとペンギンの後ろから、のっそりとベポがやってくる。
　彼はその鼻をスンスンと鳴らした。

「ベポ？」

　彼の様子に気づいたペンギンが振り返る。
　ベポは眉間にギュッと皴を寄せて、シャチの肩に両手を置いてしがみついた。

「ねェ……キャプテンの帽子から海水の匂いと、あと、その……血の匂いがする」

　不安に満ちた声だった。

[92 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 21:12:23]

　ペンギンとシャチは一瞬、呆けた様子を見せた。
　だが、次の瞬間にはシャチがペンギンの手からローの帽子をはぎ取る。
　彼は焦れた様子で帽子をくるくると回し、やがて手を止めた。

「……中に布が貼り付いてる」

　無骨な指が黄色の生地の布を、帽子の中から抜き取った。
　それには赤いものが滲んでいる。ある一定の規則を持って黄色の布を侵蝕したそれは文字だ。
　シャチがその赤い文字――血文字を見て、震える声で告げた。

「『ピエ』……『ロ』…『は』『敵だ』……？」

　途切れ途切れの言葉はあまりに簡潔だった。
　シャチはその布も何度かひっくり返したが、やがて肩を落とす。書かれていた文字はそれだけだったようだ。

「これ、キャプテンの今日着てたシャツだよな……？」
「いや……それよりもなんだよ、これ……ッ」

　『ピエロは敵だ』――どんな状況下なのかわからないが、限られた時間の中で何とか残した言葉なのだろう。
　居場所を書き記す暇はなかったのか。もしくは彼らも自分たちが何処にいるのかわからないのか。
　だが、ひとつはっきりしたことはある。
　芝生を踏み締める音が聞こえた。

「――それじゃ、ピエロを捕まえれば良いんだな？」

　振り返った先に立っていたのはルフィだ。彼はすっきりした顔をしている。
　明確な目的がひとつ見えた。
　顔を青くさせていたハートの海賊団たちもその表情を改める。

[93 二次元好きの匿名さん 23/01/19(木) 21:35:08]

トラ男……大丈夫かよ……

[94 二次元好きの匿名さん 23/01/19(木) 21:49:45]

ミニミニフランキー将軍のおかげで
ロー達が情報伝えることできたのはナイスすぎる

[95 二次元好きの匿名さん 23/01/19(木) 22:03:25]

>>50

一番良いものに当たったんだなこれ…

成果なしじゃなくて良かった

[96 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 22:06:18]

「アウッ、いいな。簡単でよォ」

　フランキーも口元を緩め、腰に手を当てて笑う。
　各々の表情が変わっていくなか、ウソップが慌てたように言った。

「お、おいおいおい、ピエロってあれだろ……！？　街の入り口にいた奴！
あいつが敵ってどういう意味だよッ！？」
「国の人たちもあのピエロがどうしているのか知らないみたいだし、怪しい人物ではあるわ。
さっさと捕まえてチョッパーの居場所を吐かせましょ。吐かなくても吐かせるわ」
「何するつもりだよいややっぱ話さなくていいでェすッ！！！」

　ロビンもやる気に満ち溢れているらしい。チョッパーの安否も掛かっているのだから、手に力も入るだろう。
　彼女の能力ならピエロが視界に入りさえすれば捕まえられる。今はその彼女のやる気が心強い。

「ピエロさんですか。そういえばどなたかが、あのピエロさんは何人もいるって仰ってましたね」
「ん、ああ、そうだ。そんな話を街で聞いた……やっぱり能力者だったのか……？」

　ペンギンが唇を噛み締めるように言う。
　同時に各地に現れるピエロ。それが別人なのか、本当に同一人物なのかはわからない。
　そう、捕まえるまで何もわからないのだ。

「うしっ――待ってろよ！！　ピエロォ――――ッ！！」

　芝生を踏み締め駆け抜けていったのはルフィだ。彼は両手を思いきり伸ばし、近くの崖の上にある木の枝に絡めた。

「ちょっと、ルフィ……ッ！」

　ナミが止める間もなく、彼はゴムの縮小に任せて勢い良く船を飛び出していった。
　崖の上に着地した彼は瞬きの間に駆け出して、その姿すら見えなくなった。
　あの勢いを止められる者など、この船にいないのだ。いつだって。

[97 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 22:08:09]

「たくっ……あのバカが」

　ゾロが溜息交じりに頭を掻き、腰に提げた刀に手を掛けた。
　彼の視線はルフィが去っていた場所に向いている。その後を追うつもりであるのはすぐにわかった。

「ぐずぐずしてると陽が暮れる。そのピエロ野郎をとっとと捕まえて終わらせるぞ」
「待て、待ちなさい。ゾロ君そこに止まりなさい。そう、ゆっくり足を降ろしてッ！」
「ピピーッ！　船を降りようとするなッ！　降りるなら保護者をつけなさい保護者をッ！！」
「ウルセェッ！！　テメェらは人のことを何だと思ってんだよッ！？」

　サンジとウソップに怒涛の待てを食らうゾロが叫ぶ。
　それを見てブルックがヨホホと笑った。

「では皆さん一緒に行きましょうか。ああ、ゾロさんはちゃんと変装しないといけませんね」
「そうね。ゾロの顔を覚えている人がいるかもしれないし」
「それよりもルフィよッ！　あのバカがまた騒ぎ起こす前に追いつかないと！」

　サニー号はいつだって賑やかだ。ルフィがいなくとも、仲間が窮地に陥っていても、互いを信頼しているゆえだろうか。
　フランキーは肩を竦めて笑う。隣にいたジンベエもまた小さく笑った。

「さて、おれらもずっと留守番てェのもな？」
「ほうじゃな。船は隠しておけば良かろう」

　仲間に手を出されたというのに呑気に船に居残るという選択肢はない。
　敵がわかった時の『麦わらの一味』は強いのだ。なにせ、脇目を振らずに走り抜くことができるのだから。
　
「じゃあ――スーパーに行くぜェッ！！」

　――ピエロ狩りの始まりだ。

[98 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 23:51:45]

★『チョッパー＆ロー』ルートが解除されました。
？？？/視点チェンジ
⇒麦わらの一味（チョッパー）


　それは酷く気怠い目覚めだった。
　重い目蓋を何度か瞬かせ、霞んだ視界を徐々にはっきりさせていく。

（あれ……？　おれ……）

　視界がいつもより低い。理由を考えると、どうやら体が寝転がってしまっているのだと知る。
　息苦しさから寝返りを打とうとし、失敗した。体中がぎゅうぎゅうと何かに押し込められているような窮屈さだ。
　あまりに怠く、起き上がるのが面倒になる。そのままチョッパーは、はっきりとしない思考を動かし始めた。

（おれ、たしか……トラ男と一緒に、花を見に行って、それで……それで？）

　記憶が閃くようにして蘇る。
　白く染まったタンポポの異変の正体。地下に保存された大量の〝珀鉛〟の粉末。
　――そして、一筋のライトの下に現れた謎のピエロ。

「ウッ！？　ウワァ――ンググッ！？」

　あの時に感じた恐怖から悲鳴をあげかけた瞬間、口を思いきり塞がれる。
　まさか敵かと暴れ回ろうとしたところで頭上から「静かにしろ」と潜めた声が落ちてきた。

[99 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 23:51:56]

「…………んぐ？」

　涙と鼻水が滲んだ間抜け面を晒せば、彼――ローは眉間にしわを寄せた顔でチョッパーを見ていた。
　チョッパーの口を押さえ込んでいたのは彼の手だったらしい。
　途端にチョッパーの胸中に安堵が溢れる。
　大きな手の平を押しのけるように起き上がり、両目からぼたぼたと涙を流した。

「ト、ト、トラ男～ッ……！　無事だったんだなァッ……！」
「トニー屋、静かにしろと言ってるだろ。……見張りがいつ戻って来るかわからねェ」
「へ？」

　ジャラ、と耳障りな音がする。チョッパーが自分の体を見下ろすと海楼石の鎖が体に巻かれていた。
　どうやらこの気怠さと窮屈さは全てこれのせいらしい。おかげで両手は使い物にならなかった。
　見ればローの手首にも枷が嵌まっている。それも同じく海楼石製なのだろう。
　チョッパーたちがいるのは小さな檻の中だった。床や壁、天井は灰色の冷たい石造りになっている。
　鉄格子の向こうは薄暗い通路になっており、誰の姿もなかった。
　顔を上げると壁に小さな通気口が見えたが、チョッパーの頭も入らないサイズだ。

「……おれたち捕まったのか？」
「そのようだな」
「ど、どどどどうしよう……ッ！　おれたち、もしかしてこのまま……ッ！？」

　頭によぎる最悪の事態。ガタガタと震えるチョッパーにローは軽く首を振る。

「殺すつもりならとっくにやってる。あの部屋でそのまま溺れさせりゃ良かったんだ」
「怖ェこと言うなよォ……！」

[100 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 23:52:08]

　しかし、ローの言う通りだ。
　チョッパーとローは悪魔の実の能力者だ。
　海に嫌われている性質上、海水に沈められたら最後である。ただ、溺れるしかできない。

「じゃあなんでおれたち殺されてねェんだ……？」
「わからねェ。……本当に何を考えてやがる？」

　ローは冷たい壁に背を預け、目を細めた。
　掴まった理由は不法侵入のせいか、あの部屋にあった物を見たせいか。それともローが〝ピエロ〟に手を出したせいか。
　チョッパーはあの奇妙な部屋で見た光景を思い出し、顔を歪めた。
　
「な、なァ……どうしてあんなところに珀鉛の粉末なんかあったんだろ。
しかもすごい量だったし、どっかに運んでるみたいだったし……」
「……考えられる物はいくつかある」

　ぽつりとローが呟いた。

「珀鉛っていうのはその毒性を抜きにすりゃ、様々なもんに使える。
塗料、食器、武器、甘味料……化粧品なんかは肌の色が他のやつよりも綺麗に見えるって評判だったそうだ」
「…………は？」

　急に何の話をしだすのかと首を傾げた。
　チョッパーにとって珀鉛は紛れもない毒だ。論文にもその毒性、危険性について強く説かれていた。
　確かにそこへ珀鉛を材料とした品を使った人間への悪影響についても書かれていただろう。
　だが、それをこの場でローが口に出すと、また意味合いが変わってくる。

「それって、もしかして……ッ！」
「ああ……あれだけの量の珀鉛の粉末だ。何にだって形を変えられる」
「バッ――毒なんだぞッ……！？」

[101 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 23:52:36]

　信じられない。毒がある物で人々の生活に密着する品々を作ろうとする精神が、だ。
　もし毒性を知らないのであれば、それはそれで恐ろしい話だが、きっと違う。
　ローに追い詰められていたピエロは珀鉛の危険性について問われても、全く動じなかったのだ。それは知っていて許容しているに他ならない。
　顔を青くして戦慄くチョッパーをローは横目で眺め、そして口元を歪めて笑った。

「トニー屋、胸糞悪いことを教えてやる。珀鉛は金になる毒だったんだ。
あれを使った物はどれも上質な商品になった。珀鉛を使えば世界中の連中が憧れ、欲する物になるんだよ」

　ローは手枷の嵌められた自身の手の平を眺めながら淡々と告げる。
　耳に入ってくる情報は確かにチョッパーの腹の底をむかむかとさせた。
　焦燥感ばかりが背筋を撫で上げて、とてもじゃないが落ち着けない。

「……でも、それはッ……昔の話なんだろ……ッ！？　今は毒だってわかってるんだ！　
どんなに物が良くたってそんなの誰も欲しがらねェッ！　死んじまうんだぞッ！？」
「ああ、そうだ。じゃあトニー屋、逆に考えてみろ。
――買う奴らがそれに珀鉛を使っていると知らなければ、どうなる？」
「え――」

　虚を突かれた気持ちになった。
　珀鉛は毒だ。だからもう世界中、何処にもそれを使っている場所はないだろう。
　だが、もし、珀鉛商品の品質に勝るとも劣らない物が新たに出てきたとすればどうなるのか。
　人間の欲望というものにはチョッパーはまだ疎い。
　獣にすれば人間に近く、人間にすれば獣に近いチョッパーにとって人間の欲望はまだ未知に分野でもあった。
　それでも想像することはできる。
　自分とて便利な物などは使いたくなるものだ。
　もしそれが突然失われ、その快適さを忘れられないでいる時に代替品が現れたら――きっと使ってしまうだろう。

[102 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/19(木) 23:53:54]

　頭がぐらぐらと煮えるような感覚がする。きっとそれは海楼石による不調のせいだけではない。

「なんで……そんなこと、するんだよ」
「言っただろ。金になるって。……自分に火の粉が降りかからなきゃ人間ていうのは何処までも非道に、貪欲になれる。
かつて珀鉛に沈んだ国も……」

　そこまで言って彼は口を噤む。そしてすぐに大きく息を吐き出した。

「あのピエロがどいつの手先かは知らねェが、目下怪しいのは国そのものだな。
あれだけの規模だ。国の中で個人が隠れてひっそり活動してるなんざ想像できねェ」
「そんな……」

　もう言葉も出ない。誰もが楽しそうに、優しく笑う国民たちだった。
　きっと彼らだって何も知らないのだろう。自分たちが暮らす足元で人を死に追いやる白い脅威が満ちていることに。

「……許せねェ」

　口をひしゃげさせ、チョッパーは湧き上がる怒りに震えた。
　いくらこの世で生きるのに金が必要であろうとも、失われた人の命は金で買えないのだ。
　そんなこと、小さな子供だって知っていることだろう。

「――早くこっから出よう、トラ男！　そんな馬鹿げたこと止めなくちゃなんねェッ！！」
「そのつもりだ。……おれもずっとムカついてるんだよ」

　チョッパーは医者だ。そしてまた、ローも医者である。
　そして、海賊でもあるふたりは何にも縛られない自由な医者だった。
　だからこそ、何処の医者よりも自分の心に従って動くことができる。
　こんなことをしても利益がないとしても、そもそも利益など必要としない。
　個人として〝ムカついたから〟こそ、ふたりはまっすぐ立ち向かえるのだ。

[103 二次元好きの匿名さん 23/01/19(木) 23:56:03]

チョッパーが今ローの傍にいてくれて良かった

[104 二次元好きの匿名さん 23/01/19(木) 23:56:45]

ローが独りじゃなくて本当に良かった…

[105 二次元好きの匿名さん 23/01/20(金) 00:47:29]

チョッパーとローは一緒なんだね。それぞれ別の場所に入れられるんじゃないかと思ってたけど、でもどうやって出ればいいんだろう...

[106 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/20(金) 08:14:15]

「…………」
「…………」

　決意を新たにし、現状を整理し始めたふたりは黙り込む。
　だが、このままでは埒が明かない。チョッパーは前に進むため、口を開いた。

「トラ男」
「ああ」
「ど――どうやって出よう……」
「…………」

　チョッパーは汗と涙をじわりと滲ませて眉を下げた。
　自分は全身を海楼石の鎖でぐるぐる巻きにされ、動くこと自体も非常に疲れる。
　ローも同じく海楼石の手枷を嵌められているため、いつものようにはいかないようだった。
　彼が能力を使えたのであれば、こんなところ一瞬で脱出できたのだ。

「……考えられるチャンスがあるとすれば、見張りが来た時か。
そいつが鍵さえ持っていれば奪い取れば良い」
「奪い取るってどうやってだよォ……」
「何かで注意を奪って掠め取るくらいはできるだろ」

　失敗するのであれば他に方法を考える、と彼は涼しい顔をして言う。
　そう上手くいくのか疑問も浮かぶが、ローが言うと何となくできそうなのだから不思議だ。
　彼から滲み出る絶対的な自信がそう思い込ませるのかもしれない。

「よ、よし……ッ！　男は度胸ッ！　おれも頑張ッ――」

[107 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/20(金) 08:14:53]

　キュルキュルキュルキュル――。

「キュッ……！？」
「トニー屋ッ」

　突然、頭上から擦れるような奇妙な音が響いた。
　気を張っている時に浴びせられた音に驚き、チョッパーは叫びあげそうになる。
　しかし、その悲鳴もローがすぐさま塞いでくれたおかげで不発に終わった。
　もごもごと悲鳴を飲み込んでから、そのままローと共に頭上を見上げる。
　視線の先には通気口があった。そして、その通気口の小さな穴の向こう側に何かがいる。
　
「あ……あれは……ッ！？」

　チョッパーとローは息を飲んだ。
　そこにいたのは見覚えのある機体――フランキー将軍だった。
　ただ、普段見る物よりも非常に小さく、あちこちの構造が異なっている。
　脚などキャタピラがくっついているのだ。キュルキュルと音を立てていたのはどうやらあのキャタピラらしい。

「な、なんで……ウォ――ッ……！　フランキー将軍だッ……トラ男ッ、見ろよ……！」
「……ッ！！　……ッ！！」

　どうしてこんなところに？　とか、どうして小さいんだ？　とか、色々浮かぶがそんな物は些事だ。
　チョッパーはその小さな体に詰め込まれている格好良さやワクワク感に、心の澱みが払われていくのを感じる。
　キラキラと輝いて見える、その小さなフランキー将軍にチョッパーははしゃいだ。

「カッケェ――ッ……！　スゲェッ……こんなちっせェのに格好良すぎる……ッ！」
「……ッ！！　……ッ！！　……いや、待て。何故こんなところに……ッ！？」

　ハッ、と我に返ったようにローが零した。
　彼に言われてようやくチョッパーも興奮から徐々に引き戻される。

[108 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/20(金) 08:15:17]

「おれたちを助けに来てくれたのか……ッ！？」
「それは……考え辛い。どうやっておれたちの居場所を知るんだ。
どれだけ時間が経ったかもわからねェが、まず、おれたちが行方をくらましていることに気づいているのか？」
「そ、そっか……」

　そうなるとあの小さなフランキー将軍は偶然、ここに迷い込んだことになる。
　もしかしたら何かしら探索をしていたのかもしれない。

「な、なァ……！　どうにかしてルフィたちにおれたちのこと伝えらんねェかな……！？」
「ああ……」

　ローがゆっくりと立ち上がる。幸い、彼の体を拘束しているのは海楼石の手枷のみ。手自体はある程度、自由に動かせるのだ。
　彼は小さな通気口に引っかかるようにしてキュルキュル音を立て続けているフランキー将軍を、そっと手に取った。
　スポンッと穴から抜けたフランキー将軍は、やはり――格好良かった。
　彼がチョッパーの前に小さなフランキー将軍を置くものだから、その姿が良く見える。だが、目に滲んだ涙がその邪魔をしたが。

「やばい……おれ、感動しちまった……こんなちいせェ体で、こんな……こんな……ッ」
「…………感動するのは後にしろ。ロボ屋のことだ、こんなサイズでも何かしら仕込んでるだろ」

　そんなことを言いながらローが小さなフランキー将軍の体を弄り始めた。
　すると、蓋があったらしく、背中の部分がぱかりと開く。彼はそこを覗き込んで少し考えた後、何かをぽちりと押した。
　その瞬間、小さなフランキー将軍の両腕が音を立てて変形し――小さなドリルが姿を現した。

「ドリルッ――！？　ヤベェ――……ッ！！　変形ヤベェ――……ッ！！」
「……ッ！！　……ッ！！　……まあ、予想通りだな」

　ローの頬が少しだけピクピクと震えているみたいだったが、チョッパーはそれどころではない。
　大きなロボも男の浪漫だ。だが、この小さな体に同じくらい機能が詰め込まれているのもまた、浪漫だ。
　小さなフランキー将軍はドリルになった両腕を振り回している。
　それを確認し、ローは静かに鉄格子の向こうを窺った。どうやら見張りの影はまだない。

[109 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/20(金) 08:16:21]

「トニー屋、近くに何かいるか？」
「え？　……いや、多分いないと思うぞ。匂いもしねェし」
「そうか」

　ローは小さなフランキー将軍を持って鉄格子に近づき、一番隅の床に置いた。
　そして体の向きなどを調整させ、また背中の中のボタンを押す。
　ギュルギュルギュルギュルッ――小さなフランキー将軍はその両腕のドリルを回転させ、床を掘り始めた。

「おおっ……！？」

　実際に動くその姿にチョッパーが身を乗り出せば、ローに掴まれた。

「うん？」
「……トニー屋、お前にひとつ頼みごとがある」

　そんなことを言いながらローはチョッパーの体に巻かれた海楼石の鎖を外しにかかる。
　硬く固定されていたようだが、彼は指先が傷つくことも厭わずに力任せに緩めていった。
　幸い、チョッパーの拘束には錠は使われていない。
　きっと小さなサイズの手枷などがなかったため、応急処置のように鎖で対応していたのだろう。
　少しでも緩めばあとは何とかなる。体を捩り、その厄介な鎖の塊からチョッパーはやっと解放された。
　途端に体が軽くなり、呼吸もしやすくなる。
　チョッパーは深呼吸を繰り返してから凝り固まった体を大きく伸ばした。

「ありがとな、トラ男ッ！　……で、頼みごとってなんだ？」

　首を傾げればローは小さなフランキー将軍を見た。
　ドリルで硬い石も掘り進めている小さな体はすでに半分程度、床の中に埋まっている。

「……あそこから外に出て、鍵を見つけて来てくれ」
「エッ！！」

[110 二次元好きの匿名さん 23/01/20(金) 08:18:05]

「……ッ！！」ってのでローもミニミニフランキー将軍に興奮してるのがわかっていいな
そうだよな格好良いよな…！

[111 二次元好きの匿名さん 23/01/20(金) 08:21:56]

2人ともワンピ男の子だもんな
ロボはロマンだよな

[112 二次元好きの匿名さん 23/01/20(金) 09:45:03]

バットエンドなんだよな
この問題を解決できないからなのかな？

[113 二次元好きの匿名さん 23/01/20(金) 09:54:26]

エンド②以降に分岐するからバッドかハッピーかの2択

[114 二次元好きの匿名さん 23/01/20(金) 09:55:38]

>>112

エンディング分岐はまだだぞ

[115 二次元好きの匿名さん 23/01/20(金) 11:35:05]

>>113

>>114

ほんまやすまんな

[116 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/20(金) 12:30:28]

　チョッパーは驚いてローの顔と小さなフランキー将軍を何度も往復するように見た。
　彼の表情はただただ真剣だ。
　確かにあのドリルで開けた穴を抜けられるのはチョッパーくらいしかいない。
　長身のローがあんな小さなところから外に出られるわけがないのだ。

「……お前を危険な目に遭わせたのはおれの独断のせいだ。
その上で恥知らずの頼みだとは承知しているが……」

　彼はそう言いながらも
決してチョッパーから顔を背けることはしなかった。
　チョッパーは鉄格子の向こうを見る。ここが何処だかわからないものの、敵地であることは確実だ。
　不安と恐怖が少しだけチョッパーを苛む。
　だが、それを飲み込んで目を吊り上げて頷いた。

「――ああッ！　わかった！　すぐ探してくる！」

　ここで躊躇うなど男じゃない。
　なによりこの国に存在している珀鉛について暴き、止めることを誓ったのだ。
　すっくと立ち上がったチョッパーは小さなフランキー将軍が開けた穴の前に行く。少し狭いが何とか通り抜けられるだろう。

[117 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/20(金) 12:32:06]

　チョッパーは一度だけローに振り返ると視線を合わせ――ふたり同時に頷いた。

（助けを待ってる時間だって惜しいッ！　
なにより、おれらがヘマしたんなら自分たちで行動に責任を取るんだッ！）

　ぐちゃぐちゃと言い訳したり、文句を言ったりするなんて男らしくないと仲間だって言うだろう。
　檻の中から這い出たチョッパーは小さな足を必死に動かして走った。
　チョッパーたちが入っていた以外にも檻があったが、そこには誰も入っていない。時々立ち止まっては人がいないか確認し、進んでいく。
　自分の呼吸音さえ響きそうな静寂の中、緊張感だけが高まっていった。

（ここ何処なんだろうな……）

　地下であることは確かだろう。
　あの珀鉛の貯蔵庫のような空間が花畑の下にあったのだ。そこから続いている場所であることは想像できた。

[118 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/20(金) 12:32:54]

「あっ……！」

　チョッパーは立ち止まる。突き当たった廊下が左右に分かれているのだ。

　おそるおそる両方の廊下を覗き込むが、どちらにも人の影はない。だが、微かに話し声が聞こえてくる。

　ドクリと心臓が音を立てた。

（右は何も聞こえねェ……左は……多分なんか部屋があるな。そこに誰かいるんだ……ッ！）

　どちらに行くべきなのか迷う。

　もちろん、より安全なのは右の廊下だが、チョッパーが探しているのは鍵だ。

　普通、その鍵の在処は見張りなどが保管しているだろう。

　ならば人がいる場所にこそ鍵がある可能性が高い。

（どっちに行こう……ッ！）

1：ひとまず人目を避けて右だ！

2：男は度胸！　左だ！

dice1d2=2 (2)

[119 二次元好きの匿名さん 23/01/20(金) 20:59:42]

この選択が吉と出るか凶と出るか！
頑張れチョッパー

[120 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/20(金) 22:02:46]

>>107

医者たちも男の子なのでロボにキラキラするんだな…の図

[121 二次元好きの匿名さん 23/01/20(金) 22:05:51]

相変わらず絵が上手い凄い！！
震えて興奮してるのがわかるのいいな…

[122 二次元好きの匿名さん 23/01/20(金) 22:07:03]

スレ主は漫画も上手いなあ

[123 二次元好きの匿名さん 23/01/20(金) 22:15:31]

スレ主さん絵がすごくお上手！
文章力高くてストーリー構成も面白くて絵も上手で羨ましい

[124 二次元好きの匿名さん 23/01/21(土) 05:37:34]

スレ主絵うまいなー

[125 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 06:58:34]

やった〜！ありがとうございます！
今日はいっぱい更新できると…いいな…！

[126 二次元好きの匿名さん 23/01/21(土) 09:05:06]

皆さん仰られていますが、スレ主さんの文章や構成力に脱帽です！
頭にすっと入ってくる簡潔な文章に感嘆し、自分もその場にいるような臨場感に引き込まれ、先の読めない展開に心を躍らせ、物語が進むのを今か今かと待ちわびております！
誓って急かしたいわけではありませんので、スレ主さんのちょうどいいペースで進めてくださいね。

[127 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 11:16:50]

こちらも思った以上に読んでもらえて嬉しいです！
楽しく進めていけているのでありがとうございます。もし今日は更新できねェなって時は正直に言います！
暫くチョッパーたちのターンが続きますがよしなに～

[128 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 11:17:33]

　ここで怖気付いてどうするというのか。
　最短で鍵を手に入れなければ、いつ自分の脱走や床の穴がバレるかもわからない。

「よしッ――！」

　バチンッと自分の両頬を思い切り叩き、気合を入れ直して進む先を左へ定めた。
　左の廊下の途中には外開き式の扉がついた部屋がある。
　扉は僅かに開いており、そこから部屋の中が確認できそうだった。もちろん声はその中から漏れている。
　チョッパーはそろりそろりと頭を扉に隠しながら部屋の中を窺った。

（あッ……！）

　そこはいわゆる『看守室』のような場所だった。
　本棚や机が最低限置かれている中、壁にはいくつかの鍵が掛けられている。

（きっと檻の鍵はあそこだ……ッ）

　しかし、踏み込むことはできない。
　室内にいたのは三人の人物だ。外見的特徴から全員男だと判断する。
　手に水かきがあるふたりはおそらく魚人。肌の色がそれぞれ赤と青で分かれている。
　もうひとりは人間よりも腕の関節が多くて長い手長族。黒い髪をひとつに纏めた、それなりに若い男だ。
　種族の異なる彼らは何かしらを話し合っている。
　そのうちのひとり、赤肌の魚人が頭を掻いて言った。

「――次から次へ問題が起きやがって……なんだってんだ」
「今回に限ってな……どっかから漏れたか？」
「バカ言うなよ、おっさん。おれたちの中にそんな奴がいるわけねェじゃん」

　手長族の男が青肌の魚人を小突いた。
　青肌の魚人はすぐ噛み付くように言葉を返す。

[129 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 11:18:58]

「仲間は疑ってねェよ！　しかし『麦わらの一味』に『ハートの海賊団』だぞ……！？
しかもあの部屋に『死の外科医』が入り込みやがった……！　おかしいじゃねェかよッ！」
「それはまァ……、なァ、どうするって？　あいつら消すなら早くしたほうが良いじゃん？」

　手長族の青年の言葉にチョッパーは息を呑む。
　今、彼らは自分たちの処遇について話しているのだ。
　赤肌の魚人は腕を組むと、静かに首を振った。

「いや、『出荷日』まで拘束してその後は解放する予定だそうだ。
『死の外科医』と麦わらの一味のタヌキだぞ。どれだけの化け物がおれらに向かってくると思ってる。
こうして捕まえておくことだってまずいんだ」
「『麦わら』だけじゃなく『海賊狩り』や『海峡のジンベエ』だとか……とんでもねェ奴らばっかなのはわかってるって。
だけどな、〝あれ〟を知った奴らを外に出すなんて正気かッ！？
おれはただ殺せって言ってんじゃねェ！？」

　手長族の青年は興奮したように長い手を振った。

「――『消せば』証拠は残らねェじゃん！」

　チョッパーは眉間に皺を寄せる。
　彼の言う『殺す』と『消す』に一体何の違いがあるというのか。
　物騒な意味としてはおおよそ同じだったと記憶している。
　しかし、そのままの言葉通りに受け取ったらどうかと思い直した。

（……もしかして、本当におれたちを……おれたちの死体も何もかも文字通り『消す』方法があるのか……？）

　ぞくりと背筋に冷たいものが走る。
　だが、仮にそれを実行できたとしてもルフィたちは絶対に納得しない。
　いくら証拠がないからとシラを切ったところで、真実を吐かせるまで暴れ回るだろう。同じ立場ならチョッパーだってそうする。

[130 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 11:20:05]

　そう考えていれば、ふいに手長族の青年の小さな悲鳴が聞こえた。
　視線を再び向けると、彼は頭のてっぺんを押さえてうずくまっている。隣では青肌の魚人が拳を握っていた。

「お前は思考が突っ走りすぎなんだよッ！　ちっとは落ち着け！」
「クッソ～……ッ！　魚人の馬鹿力でバカスカ殴んなッ！！　クソオヤジッ！！」
「……たくっ、もし消すにしたってそれをやるのはお前じゃねェんだ。
勝手なことばっかり言ってるとまたあいつにどやされるぞ」
「ウ……ッ」

　魚人ふたりに詰られ、手長族の青年は背中を丸めて体を縮こまらせる。
　仲間だからか、彼らは随分と気安い雰囲気で会話をしていた。
　きっとそのせいだろう。チョッパーは何となくルフィたちを思い出した。
　ぶうたれた手長族の青年は体を伸ばすと、がりがりと頭を掻く。

「わーかーりーまーしーたーッ！
おれだってあいつにばっかり押し付けるつもりはねェよ！
あーあ、おっさんたちの顔ばっか見て過ごしてるおれの身にもなってほしいじゃん」
「テメェはホントに子憎たらしく育っちまったよな……」

　呆れを滲ませた青肌の魚人の言葉を無視し、手長族の青年は思い出したかのように言った。

「そういや『姫ちゃん』は？　いなくね？」
「ん？　ああ、街に出てったよ。またあちこちふらついてるんだろ」
「また『キッズストリート』とかそのあたりじゃねェか？
本当に姫さんはこの国が好きだよなァ。まァ……仕方ねェだろうけどよ」

　急に話に出てきた別の人物の存在に、チョッパーは耳をそばだてる。

（姫……？　お姫様でもいるのか……？）

[131 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 11:21:04]

　そういえば誰かがこの国には姫がいると言っていなかっただろうか。
　しかし、同時にチョッパーは思い出す。その姫たちは既に死んでいることに。
　きっとその『姫さん』とやらは『あだ名』みたいなものなのだろう。きっとそうに違いない。
　そうでなければ彼らがオバケの話をしていることになる。
　チョッパーはブンブンと頭を振って恐怖を払い、気を強く持つ。今はそんなことを考えている場合ではなかった。

（どうやったらこいつら部屋から出てくかなァ……！
でもトラ男のいる檻に行かれても困るし、気を引いて遠くに行かせる方法は……）

　必死に思考を巡らせていると、手長族の青年がゆらりと動いた。

「じゃあおれも見回り行ってくるかな」

　チョッパーはびくりと体を震わせた。彼が部屋から出てくる時に身を隠す場所がないか辺りを見渡す。
　だが、殺風景な廊下はチョッパーの小柄な体すら覆ってくれやしない。
　このままでは彼が外に出て来てしまう、と顔を青くして身構えた。だが、そこで魚人たちが口を開く。

「お前また姫さんに会いに行くつもりか」
「もう少しわかりやすくいかねェとあの子なんもわかっちゃいねェぞ」
「前も花束渡したのに首傾げられてたろ。恥ずかしいからって無言で渡すな馬鹿。
口に出せねェならせめてメッセージカードくらい忍ばせてだなァ……」
「ウッセェ――――ッぞ！！　何で知ってんだよ！？　何見てんだよ！？　バカッ！！　バァーカッ！！」

　顔を真っ赤にした手長族の青年が吠えた。
　びりびりと壁が震えるほどの声量にチョッパーは思わず自分の耳を両手で塞ぐ。

[132 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 11:24:09]

（本当にどうすりゃいいんだよォ～ッ……！）

　半ばパニックに陥っている時だった。
　突然『プルプルプルプル……』という聞き覚えのある鳴き声が響く。
　それは彼らの傍らにあった電伝虫の声だ。赤肌の魚人がすぐにそれを取り、小声で会話をしている。
　しかし、途中で彼は「なんだとッ！？」と大声を上げた。
　ガチャンッ――と、電伝虫を切った赤肌の魚人の顔色は悪い。

「どうした？」
「……馬鹿が『酒』一本くすねやがった。在庫が足りねェって朝から探し回っていたらしい」
「ハァッ！？　ウッソだろ……！？　警備の奴ら何してんだよ！」

　途端に他のふたりも慌て出す。チョッパーは首を傾げながら彼らの様子を窺った。
　赤肌の魚人は痛みを堪えるようにして額に手を置く。そして重い溜息を吐いた。

「……しかも何故か今、その酒を麦わらの野郎が持って街ん中駆けまわってるってよ」
「「「ハァッ！？」」」
「……ん？」
「……今なんかおれら以外の声がしなかったか？」

　青肌の魚人と手長族の青年は辺りをキョロキョロとする。
　チョッパーは思わず出た驚愕の声を飲み込むため両手で口を押さえ、扉の後ろで縮こまっていた。

（ル、ルフィ～……ッ！）

　先に街で情報収集に行っていたはずだ。きっとまた何かやらかして騒ぎになっているのだろう。
　チョッパーがそうやって扉の後ろで丸くなっていると、彼らの声が大きく近くなってくる。

[133 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 11:25:54]

「――オイッ！　念のため他の在庫も全部確認するぞッ！　現場だけに任せてられねェッ！」
「麦わらはどうすんじゃん！？」
「それは上の連中の仕事だ！　まだおれらの出番じゃねェよ！」

　バタンッ！　と音を立てて扉が閉められる。三人の足音は徐々に遠ざかっていき、やがて聞こえなくなった。

「……ハッ、ハッ、ハッ――！」

　両手を広げ、壁に背中を張り付けさせていたチョッパーは荒い息をつく。
　彼らは扉の裏にチョッパーがいるなど微塵も気づかなかったらしい。
　へなへなと力が抜けてその場に座り込む。だが、ずっとそうしてもいられない。
　いつ誰が戻ってくるのかわからないのだ。

「よ、よし……！」

　チョッパーは思いきり飛び上がると扉のドアノブにしがみついた。
　そのままドアノブを回し、近くの壁を蹴ればゆっくりと扉が開く。
　急いで出て行ったせいか彼らは鍵を掛けていかなかったようだ。こればかりは彼らを焦らせたルフィに感謝である。

「あっ、おれらの荷物……ッ！」

　部屋の隅に奪われていた持ち物が積まれていることに気づいた。
　慌てて飛びつき、中身を検めるが特に減っているものはない。サンジが作った海賊弁当もそのままだ。
　ローの荷物は鬼哭が壁に立てかけられていた。彼が持ってきていたはずの電伝虫の姿はないが、武器があるなら充分だろう。

「よかった～……！」

　これであとはローを檻から出すだけだ。チョッパーは壁に掛けられた鍵束を見上げた。
　今の体では小さすぎてすぐに手は届かない。

[134 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 11:27:40]

「誰もいねェし……よし！」

　目を閉じて自分の体を切り替えるイメージをする。少し背が高くなるだけで十分なのだ。
　小柄だった体はチョッパーの意思に応じて形を変え、膨らんでいく。
　そして数秒もしない内にチョッパーの体は俵型の胴体を持つ――『柔力強化』に変化していた。
　手足を動かし、異常がないことを確かめて笑みを浮かべる。

「これなら手も届くぞッ！」
「――ヤベッ！　鍵持ってくの忘れたッ！」
「「ん？」」

　チョッパーが鍵に手を伸ばした瞬間、手長族の青年が勢い良く部屋の中に飛び込んできた。
　ふたりは無言で見つめ合う。
　そしてきっかり十秒後、手長族の青年は目を見開いてチョッパーに人差し指を突き付けた。

「なっ、なんだテメッ――」
「――ハチョーッ！！」

　もはや条件反射だった。
　手長族の青年が叫ぶより先にチョッパーはその柔軟な体を捻り上げ、宙を舞い、上からかかと落としを食らわせる。

「ッ……！！」

　脳天からまともにその衝撃を食らい、手長族の青年は白眼を剥いた。
　そして床に膝をつき、そのまま後ろへ倒れ込んだ。重い物が横たわる音と共にチョッパーも床に降りる。
　フウ、と息を吐き――冷や汗が一気に噴き出た。

「も、戻ってきちまった……！？　えええええ、他のふたりは……ッ！？」

[135 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 14:37:34]

　慌てて廊下を窺うが、どうやら誰もいない。
　戻ってきたのはこの手長族の青年だけだったようだ。
　ひとまず胸を撫で下ろし、彼をどうしようかとウロウロする。
　しかし、焦りからか何も浮かばない。

「と、とりあえず鍵！　鍵！」

　チョッパーは今度こそ鍵を取ると、荷物一式を纏めて背負う。
　空けた片手で手長族の青年の足を掴み、一緒に走り出す。
　ガリガリゴンゴンと音が聞こえてくるが気にしている暇もない。
　このままここで寝かせて見つかってもまずいのだ。できるだけ時間を稼ぐために隠す必要がある。
　
「ごめんなトラ男～……ッ！」

　気を失った手長族の青年を引き摺りながら、急いで彼のいる檻へ走り出す。
　空の檻ばかりが並ぶ通路を走り、チョッパーはふと胸中に浮かんだ疑問に首を傾げた。

（そりゃ中に入れる奴がいなきゃ使わないけど、おれたちしかいないんだな……）

　空っぽの檻は綺麗で、荒れた様子もない。もし誰かを拘束したとしても長期間入れておかないのだろう。
　そこで先ほどこの三人が話していたことを思い出した。

（……消す）

　こんな檻を用意するくらいだ。利用することは何度かあったはずだ。
　彼らの様子から考えるに、本来ならここに連れてきた者を外に出す気はないのだろう。
　最終的に、捕らえられていたことすらわからないように――消されていたとしたら。

[136 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 14:38:05]

　自分で考えておきながらぞわぞわと肌が震えた。

「ッ――きっと能力者だ……！」

　そもそもあの貯蔵庫で見たピエロも怪しいどころじゃない。
　もし複数のピエロの目撃証言が別人でなければ、それこそ悪魔の実の能力の可能性が高いだろう。
　ここから抜け出すのも一筋縄ではいかないはずだ。
　そうだとしてもチョッパーは屈するつもりはない。
　あの珀鉛を何に使うつもりなのか、どうするつもりなのか。それを知り、人々に被害が行く前に止めなくてはいけないのだ。
　
「……あ、トラ男ッ！　ごめん、遅くなった……！」
「ットニー屋……！」

　やっと戻って来れた檻の中には変わらずローが座り込んでいる。
　小さなフランキー将軍の姿はすでになかった。そして何故かローがいつも被っている帽子がない。
　檻を出るまでは被っていたはずだと記憶している。
　その両方が何処に行ったのか気になるところではあったが、先にすることがあった。

「鍵ちゃんと手に入ったし、荷物も持ってこられたんだ！　今開けるからさ……！」
「すまん、助かった。……って、なんだそいつは」

　ローの視線の先はチョッパーの背後に注がれている。
　ずっと引きずっていた手長族の青年のことを思い出し、チョッパーは振り向きながら説明した。

「それがさ、うっかり見られちまったから気絶させ――ウワァッ！？　ボロボロになってる！？　なんで！？」

[137 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 14:39:10]

　彼の頬や額はぶつけたように傷つき、顔が大きくパンパンに膨れ上がっていた。
　チョッパーは脳天に攻撃を食らわせたが、それ以外は何もしていない。

「も、もしかして他に何かいたか……ッ！？」

　キョロキョロと辺りを警戒するチョッパーに、ローが何故か呆れた視線を投げかけた。

「……トニー屋、気にすんな。それより鍵だが」
「アッ、そうだった！　多分この中のどれかだと思うんだ……！」

　慌てて手長族の青年を放り出して、鍵束の一本一本を試していく。
　そして六本目ほどで檻の錠が音を立てて外れた。

「やった！　トラ男、早く行こう……！　
なんか今、連中は混乱してるっぽいからそれに乗じればいけるかもしんねェッ」
「待て、その前に……」

　檻から出てきたローがしゃがみ込み、床に転がる手長族の青年の様子を窺った。
　手枷のついた手で彼の腕に触れて眉間に皴を寄せる。

「……手長族だと？　なんでこんなところに……」
「そういえば魚人もふたりいたんだ。赤いのと青いのが」
「ああ、それはおれも覚えている。……あの部屋でおれたちを捕まえた奴らだ」

　ローは腕を組み、考えこむ素振りを見せる。
　そこでやっとチョッパーは彼の手の変化に気づく。

[138 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 14:40:28]

「あれッ！？　トラ男、手枷の鎖切れたのか？」
「ん、ああ……どうやら鎖だけは普通の鉄だったみたいでな。試してみたらロボ屋のロボのドリルで壊れた」

　そう言ってローは手をひらりと振った。
　手首には海楼石の枷がついたままだが、両手が自由になったのは大きい。
　すると彼は少しの間を開けてから、着ていた黄色の生地のシャツを唐突に脱ぎ始める。
　いったい何をしているのかと問うより先に、その服の裾が大きく破れているのが目についた。
　なにより、ボタンを外そうとする指先が赤く傷ついていることに息を飲む。

「怪我してんのか！？　あっ、さっきおれの鎖外した時……！？　荷物に包帯あるけどよ……！」
「これくらいどうってことねェよ。さっきロボ屋のロボに伝言を託しておいたんだ」
「伝言？」

　チョッパーのオウム返しに彼は頷く。

「おれたちもここが何処だかわからねェし、長ったらしいことは伝えられねェからな。
だが、『敵』だけ伝えれば――後はあいつらも勝手にやる」

　ローは袖から両腕を抜き去り、ニィと笑った。同時に、彼の肌の上に刻まれた大きなハートの入れ墨が姿を現す。

「手枷の鍵は流石にねェか……」
「ごめんな。もしかしたらこいつらが持ち歩いてるのかもしんねェ」

　転がる手長族の青年を見て告げる。
　この男も一度は檻の鍵を持ち出すのを忘れたと戻ってきたのだ。重要な鍵は手元に置いているのだろう。
　ローはチョッパーに脱いだばかりのシャツを差し出しながら、手長族の青年を靴先で軽く小突く。

「トニー屋、こいつをひとつ……いや、ふたつずらした檻に放り込んでくれ。
顔は見えねェように壁に向けて上から適当におれのシャツを着せておけ。
……ああ、手はあれを使って前のほうで拘束しておけば良い」

[139 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 14:42:35]

　ローは檻の床に落ちたままの海楼石の鎖を示して言う。

「そう長くは誤魔化せねェだろうが、少しでも時間を稼ぐ」
「お、おう……！」

　言われた通りふたつ隣の檻の鍵を開け、そこに手長族の青年を寝転がせた。
　きっと自分たちの入っていた檻に入れなかったのは、小さなフランキー将軍が開けた床の穴の発見を遅らせるためだろう。
　そういえば、とチョッパーは青年を見る。彼は完全に伸びている状態だが、本来気絶している時間はそう長くない。
　彼にはできるだけ長時間、静かにしてもらう必要があった。

（荷物が戻ってきて良かった）

　鞄の中にはちょっとした薬も入っている。例えば、怪我をした仲間に治療の際に使う麻酔も準備していた。
　軽く謝りながらもチョッパーはテキパキと彼の腕に効力を薄めた麻酔を打つ。
　流石にルフィやゾロに使うような超強力な麻酔は常人の体には毒だ。

「あれ……？」

　そして、ローの服を着せるために彼の服を軽く緩めている時だった。
　捲り上げた服の下から現れた肌に、大きな花の模様の焼き印が入れられているのに気づく。
　この世には己の肉体にオシャレとして様々な模様を入れる者たちがいる。きっと彼もそうなのだろう。
　ただ、もし模様を入れるにしても、ローのように入れ墨ではないことが少し不思議だった。

（……なんかこれ、ジンベエの太陽の模様に似てるな？）

　とりあえず彼が着ていた黒い上着だけを貰い、上からローのシャツを被せるように着せた。
　流石にこの長い腕へ悠長に袖を通すことはしない。それっぽく見えれば十分だろう。
　ついでに傷ついた顔に薬を塗ってあげてから立ち上がる。

[140 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 14:43:46]

　これからの行動を考え、体も元の状態に戻して置いた。普段の姿のほうが敵に見つかりにくいはずだ。
　視界が低くなったのを確認し、ローに振り返る。
　他の見張りが戻ってこないか確かめていた彼もまた、チョッパーを見た。

「よしっ！　これで準備万端だッ！」
「ああ……ッ」

　手枷が邪魔だろうが、彼は取り戻した鬼哭を担ぐように持つ。

「あ、そうだ、トラ男。上が裸じゃ寒いだろ？　これ着るか？」
「……手長族の袖は長ェな」

　しかし、何もないよりマシだと思ったのだろう。
　そのフード付きの黒い上着をローはそのまま羽織り、長い袖は適当に折り込んで整えた。
　彼は袖を弄りながらチョッパーに静かに問う。
　
「……トニー屋、おれらの今後の目的はわかるな」
「もちろんッ！　こっからの脱出と、あの珀鉛の解明だッ！！　そしてそれが済んだら――」
「「――全部ぶっ潰すッ！！」」

　『敵』に捕まってしまったのは痛恨のミスだ。だが、チョッパーもローもタダでは転ばない。
　そんなことをしようものならきっとナミに叱られるだろう。
　ここには敵が隠している真実が秘められているはずなのだ。それを暴かなくてどうするというのか。
　この場所は『病』を抱え込んだ『体内』に等しい。
　今回ばかりは『治療』をするかどうかを『患者』に決める権利はないのだ。

「行くぞッ！」
「おうッ！！」

　まずはマイナスからの一歩。ふたりをそれを確かに踏み出した。

[141 二次元好きの匿名さん 23/01/21(土) 14:45:50]

医者コンビのコンビネーションめちゃくちゃ好きだ…！
2人ともかっけえ…！！

[142 二次元好きの匿名さん 23/01/21(土) 14:59:22]

花の焼印...国の衛兵の紋章？それとも珀鉛のことも知ってる人たちだけにつけられてるもの？

[143 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 15:37:18]

★【誰かの記憶】を再生します。

―――――――――
　――私は本に囲まれて育ちました。
　そうやっていつだってひとりで本の世界に溺れていた私に、生まれて初めて『友達』ができました。
　同じ歳だというその子は、私と同じくらい本が好きな子でした。
　その子は故郷から持ってきたという本をいつも大切にしていました。
　初めての友達に私は信じられないくらい緊張していました。
　でも、その子がとても優しい性格をしていたので打ち解けるのもあっという間でした。
　その子は私が知らないこともたくさん知っていました。
　話についていけなくてもその子は馬鹿にせず、丁寧に教えてくれました。
　――動物の毛並みの柔らかさだとか。
　――空を飛ぶ鳥の色んな鳴き声だとか。
　――生物はみんな心臓を動かして生きていることだとか。
　たくさんたくさん教わりました。
　本ばかり読んでいた私は人と話すのが下手くそでした。
　それでもその子は私の言葉を急かすことなく、微笑みながら聞いてくれました。
　その笑顔は穏やかで優しくて、私まで笑顔になってしまうほど大好きでした。

　その子の優しい性格、その子の穏やかな笑顔、その子の話す本の話、その子の歪な肌の色。
　それらがその子の物だから――私はその全てが大好きでした。
　
　何も知らなかったから、大好きでした。
―――――――――
【再生終了しました】

[144 二次元好きの匿名さん 23/01/21(土) 15:40:44]

これって……
うわぁ不穏だ

[145 二次元好きの匿名さん 23/01/21(土) 15:57:58]

緊張していた様子…肌の色…
やっぱこの友達って奴隷じゃ…

[146 二次元好きの匿名さん 23/01/21(土) 16:50:59]

自然と頭の中で映像が浮び上がる文章だ…ドキドキしながら待ってる

[147 二次元好きの匿名さん 23/01/21(土) 16:54:34]

一つ前の記憶見た時から考えてたけど、誰かさんはお姫様のことで、双子姫はもともと一人だけで「自分と同じような友達」を姫様が欲したから「姫様そっくりの友達」が連れてこられたんじゃないかなと。
二人はいつも一緒にいて仲良しで見た目がそっくりだったから双子姫としてみられてた。ピエロのこともあるから双子姫の片方はクローンみたいなのでも、顔だけを整形で変えられてても可能性はありそうかも...って。
双子姫は1人が活発そうな子で、1人は穏やかそうな子だったっていうし、誰かの記憶に出てくる2人に合いそうではあるんだ。

[148 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 17:32:47]

？？？⇒『工場』/麦わらの一味（チョッパー）

　先ほどチョッパーが使わなかった右側の通路の奥。そこには上の階に繋がる階段が存在していた。
　幸いなことに階段上の扉は施錠はされておらず、映像電伝虫もいない。
　扉の向こうの様子はローが確認してくれたことも有難かった。

「――うわァ……」

　そして忍び出た先に広がっていたのは巨大な建造物の中だ。
　思い出されるのは『パンクハザード』の研究施設だろうか。無機質な壁や通路には温かみを感じない。
　しかし、隅々まで掃除が行き届いているのか、埃ひとつ見当たらなかった。その清潔さは病院も連想させる。

「ここは……」
「なァ、トラ男、なんか……パンクハザードの建物にちょっと似てないか？」

　それはローも考えていたのか、否定せずに頷いた。

「……おおかた珀鉛の加工場なんだろうが、規模がデカすぎる」

　天井は首が痛くなるほど見上げないと高くなっている。
　通路はいくつもに分かれており、近くの壁には行き先が掲示されているようだった。
　その文字をローが読み上げる。

「『工場長室』『開発室』『倉庫』……。
『地下室』……は、今おれたちが出てきた場所だな」
「『工場長室』って……やっぱり、ここ……」

　チョッパーは周りに視線を向ける。薄々感じていたことだ。
　ローもまた否定はしない。

[149 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 17:33:15]

「ニコ屋やうちの連中が言っていたな。

この国にはマリージョア……政府に卸す商品を作る『工場』があると」

「そっか、ここ、だったんだな……」

　情報の点と点しかない中で繋げるのは早計かもしれない。

　チョッパーにとって想定している最悪の事態ばかりが思考を埋め尽くす。

　ローは被っていた黒いフードを引っ張り、ため息を吐いた。

「……『敵』を逃がさねェためにも、証拠を掴まねェとな」

「……ッ！　だな！」

　ローは壁の掲示板に触れる。

「他にも部屋は色々あるみてェだが、ここからは直接繋がってねェようだ」

　何処に行くのか、といった視線をローが寄越す。チョッパーは眉間に皴を寄せて考えた。

1：やっぱり『工場長室』じゃねェかな

2：商品のことを知りたいなら『開発室』だよな

3：『倉庫』って材料が置いてあるのか？

dice1d3=2 (2)

[150 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 19:43:59]

（『倉庫』って商品の在庫とかもあったら、多分さっきの魚人たちもいるかもな……。
こういう時、重要な書類とかあるのは『工場長室』だよな？
いや、まずは物を確認してェ……なら、やっぱり……）

　ぐるぐると巡る思考に終止符を打ち、チョッパーは言った。

「……『開発室』はどうだ？　商品のこと何かわかるかもだし……！」
「そうだな。まずはそこから確かめてみるか」

　同意を得られ、チョッパーは胸を撫で下ろす。
　しかし、工場内を歩き回るということは働いている者たちとも出くわす可能性は高い。
　こういう時、ローの『シャンブルズ』が使えればどれだけ楽だったか。

（って、頼ってばっかじゃ駄目だよな！）

　彼の手枷を外すためには鍵も見つけなければいけないのだ。
　簡単には破壊することができない硬度を持つ海楼石が憎らしい。
　ひとまず『開発室』に向かおうと足を踏み出した時だった。

「ん？」

　急に首根っこを掴まれ、ヒョイッと持ち上げられる。
　ビックリしている間にローが羽織っている黒い上着の中に隠された。

「ト、トラ男……？」

　腰のあたりにしがみつき、小声で問い掛ける。

「少しでも姿を見られる可能性を減らしたほうが良い。おれはともかく、お前は目立ちすぎる」

[151 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 19:45:05]

　うッ、とチョッパーは黙り込んだ。
　確かにどの形態になったとしても全身に毛が生えた体は、この場ではあまりに場違いだろう。
　ローはむしろ堂々とした足取りで通路を進んでいく。
　まるで自分はここの従業員です、といった自信が溢れている気がした。

（なるほど、変にこそこそするより逆にこうしたほうがバレねェのか……ッ！）

　どちらにせよ自分ではなかなかできないかもしれないが感心をする。
　――だが、その行動はあっさりと引き留められた。

「あれッ、おーい！　そこの兄ちゃんッ！」
「ッ……！」
「ッ……！！」

　後ろから掛けられた声にローが立ち止まる。チョッパーもびくりと固まった。
　外が見えないチョッパーからはわからないが、声の感じからして中年くらいの男性だろう。
　ローは大きく振り向くことなく答えた。

「……なんだ」
「なんだ、って……ダメだろォ～！　今から『開発室』行くつもりなんだろ？
まったく、兄ちゃんいつも言ってるじゃねェか。面倒くさがらず防護服着てくれって！
……あれ？　兄ちゃん、なんか腕短くなったか？」

　どうやらローの着ている黒い上着のおかげで、あの手長族の青年と間違えているらしい。
　背恰好も似ていて、フードで顔を隠しているのが功を成した。
　しかし、このままずっと会話をしていれば別人とバレるだろう。
　ローは考えているのか黙り込んでいる。なにせ、彼はあの手長族の青年の性格を知らないのだ。

[152 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 19:45:44]

（ここは――おれがやるしかねェ……ッ！）

　看守室で見た手長族の青年を思い出す。
　そしてチョッパーは精一杯低い声を出して言った。

『わ、悪ィ悪ィ～ッ！　またうっかりしちゃったじゃん！
防護服ってどこにあったっけ？』
「――ッ！？」

　一瞬、ローが驚いたように震えたが、彼はそれを表には出さなかった。
　チョッパーの言葉に中年の男性は「ああ」と応える。

「ほら、ちょっと戻ったところに更衣室あるだろ。
あんた、あれ着ないとまたおやっさんに叱られるからね」
『わかったって！　ちゃんと着るってじゃん！』
「……どうしたんだい？　今日、なんか具合でも悪いのかい？　声もいつもとなんか違うような……」
『そ……ッそう、ちょっと風邪引いちまってさァ……！』

　緊張で心臓がバクバクとなる。
　ローが上着の上からさりげなく体を支えてくれていなければ、ずり落ちそうだった。

「そうかい？　体調には気を付けてくれよな。ほら、今バタバタしてるだろ？
……ととっ、おれも急いでるんだったッ！　じゃあな兄ちゃん！　早く風邪治しちまえよ～！」

　バタバタと慌ただしい足音を立てて男性は去っていった。
　少しだけ間を開けて、ぼそりとローが呟く。

[153 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 19:46:55]

「すまねェ。助かった」
「トラ男とあいつの格好が似てたから誤魔化されただけだって……」

　スポンッとローの上着から顔だけを出す。
　そのまま彼を見上げれば視線が交わる。彼は顎に指をかけて「ふむ」と唸った。

「防護服、か」
「おれは見えなかったけど、あのおっさんも着てたのか？」
「ああ。顔まで覆った暑そうな分厚い服だ。……あんまり気は乗らねェが、あれなら他の連中に紛れ込めそうだな」

　中年の男性は『更衣室』に防護服があると言っていた。ならば『開発室』に向かう前にそこに向かうべきだ。
　チョッパーは再びローの服の中に隠れた。更衣室に他の誰かがいないとも限らない。

（でもその防護服さえ着られたらもっと自由に調査ができるなッ！）

　フンス、と鼻息を荒くする。
　ローは踵を返し、元来た通路を戻っていく。
　時々防護服を着た作業員と通り過ぎているようだったが、誰もが忙しいのか通り過ぎざまに挨拶をしていく程度だ。
　工場には警備兵もいると聞いていた。だが、おそらく『酒』を盗まれた件やルフィの件などで、そういった人員が捌けているのかもしれない。
　これは内部で動くには良いタイミングだった。
　
「おれのサイズあるかな？」
「トニー屋がデカくなりゃ着れるだろうが……ツノが邪魔だろ」
「ハッ……！！」

　――なんてことを言いながら、ふたりは更衣室に向かうのだった。

[154 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 20:03:34]

「――トニー屋、大丈夫か」
「おれは大丈夫だけど、トラ男、狭くてごめんな……」

　防護服を求めて辿り着いた更衣室は無人だった。
　作業員たちも着替える時以外は使用しないようで、それが幸いしたのだろう。
　しかし、問題はチョッパーである。
　防護服が着られるローはともかく、チョッパーはどの体格であってもサイズがなかったのだ。
　結局ローが大きめの防護服を着て、そこへ一緒に入れてもらうことになった。
　だから今のチョッパーはローの上着のフードに入り込み、肩にしがみついている形である。
　ちなみに鬼哭も防護服の中で背中に背負っているので、彼にすればだいぶ肩が重いことだろう。
　さっさと更衣室から出てきた彼が歩く度、それに合わせてチョッパーも少し体が揺れた。

「気にするな。こっちのほうが会話しやすい」
「……それもそうかも？」

　確かに別々に防護服を着ていたら何かあった時に相談しづらい。周囲にも怪しまれる可能背がある。
　ひとまずそう前向きに捉えることにした。
　そんなようなことを防護服の中でこそこそ話していれば、目的地についたようだ。
　これまた見上げるほど大きな『開発室』の扉を前にし、ローが息を吐く。

「……なんでここはいちいちこんな造りしてんだ」
「なんかデッカイ物運ぶのかな？」
「だとしてもデカすぎだろ……」

　扉のスイッチは傍らにあったようだ。
　ローが躊躇うことなくそれを押せば、目の前の扉が左右に開かれていく。

（ウオォ……ッ！？）

　扉の向こうに広がるのはそれこそ研究室のような空間だった。

[155 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 20:05:19]

　ガラスケースがいくつも並び、機器に設置されたフラスコや管の中を何かの液体が行き来している様子が見えた。
　壁には細かな切れ込みが入っている。しかし、注意深く目を凝らすとその全てが引き出しのような収納であることがわかった。
　他にも資料なのか、大きな机の上には多くの紙やファイルも積まれている。
　室内では防護服を着た何人かはバタバタと慌ただしく動き回っている。
　荷台に色々と荷物を載せた作業員がローの横をすり抜けていった。

「……トラ男、どうしよう」
「……今はひとまず中に入るぞ。手が足りないと聞いて呼ばれたとでも言えば良い」

　動じることなく彼はさっさと扉を越える。すると近くにいた作業員が顔を上げた。

「おいお前、どうしたんだ？」
「ああ、忙しいからこっちに来るように言われたんだが……」
「そうかッ、助かる～ッ！　盗みが入っちまっただろ？　他になくなったもんないか確認してんだ」

　そう言った男は壁に埋め込まれた棚を開いて中を覗き込み、手元のバインダーに挟んだ紙に何か記していく。

「たくっ！　どこの馬鹿野郎だッ！　出荷日前日にいらん仕事増やしやがって！」
「おれはどこを手伝えば良い？」
「あ～、どこも手が足りてねェんだよな……。てか、お前のとこの担当は大丈夫なのか？」

　首を傾げる男にチョッパーがドキドキする。
　ローはその程度の質問は想定済みだったのか、ゆるく頷いた。

「『倉庫』のほうはなんとか片付きそうだ。こっちはどこも忙しいなら適当に手伝うが……」
「そうしてくれ！　とりあえずおれは一旦、ここまで確認するからよ！」

　男は忙しそうに何かのチェック作業に戻る。
　その背中を見つめたローが小声でチョッパーに話しかけた。

[156 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 22:34:06]

「おれは成分表とかがあれば見てみてェが」
「あっ、おれもそれで良いと思うぞ。今はスキャン使えねェもんな」

　ならば触れる場所は何らかの資料が積み重なっていそうな机だろう。
　ローも最初から目をつけていたらしい。迷いなく進む姿を他の誰も咎めることはなかった。
　通りすがりの作業員が「祭りと被らなきゃな〜！」と嘆いている。

「祭りで人がいねェのかな？」
「それもあるだろうが、さっきの奴は明日が『出荷日』だって言っていた。
本来なら商品はもう全部出来上がって、あとは出すだけの落ち着いてる時だったんだろうよ」
「おお、なるほど！」

　確かにその状況なら、多くの作業員を動員する必要もない。
　チョッパーたちにとって都合の良い時にトラブルが起きたものだ。
　いや、むしろ酒を盗んだ人物――もちろんルフィではないだろう――も人が少なくなるタイミングを狙っていたのかもしれない。

[157 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 22:35:15]

（わ……びっしり書いてあるぞ……）

　机に辿り着くと、そこは文字に溢れていた。分類ごとには分かれているのだろう。
　それでも全てを把握するのは難しそうだ。
　幸いにもチョッパーは分厚い医学書を読むことに慣れている。ローの肩越しからとはいえ、読むこと自体は苦ではない。
　どうやらそれらにはここで扱われている『商品』のことが書かれている。

（酒、化粧品……は聞いてたやつだな。
他にもお菓子とかフルーツのシロップ漬けとか、色々あるんだ）

　そういえば昨夜サンジが出してくれた、この国のフルーツは美味しかったと頬を緩めた。
　きっとシロップ漬けもとても美味しいことだろう。

（……成分表、は）

　目を凝らすと何を使われているのか材料と割合が記されている。
　チョッパーにとって商品の内容物は専門外なところはあるが、別段変わった品名の記載はない。
　ローも机の上を整理しているように見せかけながら手早く目を通しているようだった。

「なァ、トラ男。別に変なこと書いてないよな？」
「……ああ。保存料みてェな人工物は入っちゃいるが、普通のやつだ。
これは……甘味料を使わないタイプか？」
「あっ、ていうかそもそも堂々と書いてないかもしれねェ……！」

[158 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 22:36:54]

　その可能性を失念していた。
　こんなわかりやすい場所に珀鉛なんて材料を書くわけがない。そう思ってチョッパーは焦るが、ローのほうは存外冷静だ。

「そりゃそうだが……ん？　待て、この資料は今年のじゃねェ」
「へ？」
「日付が去年までだな。……去年の納品で『優良品』と認められた……？」

　ローが手にした資料の右下には赤いインクで追記が入っていた。彼の言う通り、それは納めた商品が『優良品』判定を受けたことに対するメモだ。
　その下に連なっていた資料をローが捲り上げる。
　それを見てチョッパーは息を飲んだ。

「ッ……トラ男！」
「……ああ、これは《世界政府》のマークだ……！」

　どうやら写しのようだが、この国と政府との間に行われた契約の証に他ならない。
　内容は《ブックパラダイス》が政府に納めている商品が去年付けで《優良品》判定を受け、それに伴い様々な審査や一部費用の免除を約束するものだった。

「ん？　んん？　つまり？　これは別に悪いことじゃねェ気が……」
「……いや、よく考えろ、トニー屋」

　契約書の内容はチョッパーからすれば、ただこの国の負担が減るというものに読めた。
　ただ、ローの声はひどく硬い。彼の汗の匂いがわずかに鼻を掠めた。

[159 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 22:39:39]

「去年までは行われていたはずの審査……商品検査がなくなるんだ。
納めた商品は誰のチェックも受けず、そのまま政府まで運ばれる。
――たとえ、その中身が変わっていたとしても、だ」
「……え」
「政府の奴らッ……いや、この国もか……！
時間かけてこんなクソみたいな白々しい契約しやがって……！」

　ローに告げられた内容を頭の中で噛み砕き、やっと思考が追いついた途端――血の気が引いた。

「そ、それって、中身が珀鉛製になってても誰も気づけねェってことだよな！？　なんでそんな……！」
「政府は過去にも珀鉛商品の運輸業に参入して荒稼ぎしてんだ……！
あいつらそのために――百年も珀鉛の毒性について黙ってたんだよ！」
「ッ！？」

　小さく潜めていても力強い声がチョッパーの鼓膜を震わせた。

「成分は伏せても、商品の品質だけで売り出せば買い手は……必ずいる。
だが、珀鉛商品なんざ堂々と仕入れられるわけがねェ、必ず検問所で止まるはずなんだよ。
使用禁止の成分が含まれてんだからな。……本来なら、だが」

　バクバクと心臓が嫌な音を立てている。
　極論、酒と偽って卸した箱の中に――武器が入っていたとしても誰も止められない。
　すでにこの国と政府の間の障害は取り除かれているのだ。
　長年、優良な商品を納め続けてきたという実績の下に交わした契約によって。

[161 二次元好きの匿名さん 23/01/21(土) 22:57:18]

政府と王族この野郎…！！

[162 二次元好きの匿名さん 23/01/21(土) 23:05:20]

ローの情緒がぐっちゃになるよ...もう一度クソみたいな体験するようなもんじゃん

[163 二次元好きの匿名さん 23/01/21(土) 23:06:52]

追いついた！
すごく面白い！応援してる！！

[165 二次元好きの匿名さん 23/01/21(土) 23:42:20]

ほんと細かくて申し訳ないんだけど、フレバンスが滅亡したのは16年前だと思う。念のため単行本で確認したけど、トラ男（当時10歳）がドンキホーテ海賊団の元に行ったのは、フレバンスが滅亡した後だった。
ブルックが幽体離脱で城の保管庫？　に行ったときにも誰かが言ってた気がする。

それはそうとめちゃくちゃ面白いです！　公式スピンオフと遜色ないくらいで、三回くらい読み返しました！

[166 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 23:46:31]

>>160

ヒューッ！！

すみません普通に書き間違えました！！

そうです16年前です！！恥ずかしい！！推敲しないからこうなる！！すみません！！

[167 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 23:52:28]

「な、なァ……なんでた？　なんでなんだよ……。
だって、毒を売るんだぞ……？」

　自分の声が情けなく震えているのがわかる。ローはそれを咎めることも、指摘することもせずに諭すように言った。

「……お前もあの論文を読んだなら覚えてるだろ」
「……？」

　言われて必死に記憶を掘り返した。
　あの、名が消えてしまった医者の《珀鉛病》の論文だ。
　病の原因は長年珀鉛に晒されてきた、珀鉛産出国の国民の体に溜まり切った毒が表面化した結果である。
　しかし珀鉛の商品はその国のみならず、全世界に――。

「あ、れ……？　そういえばなんであの国しか病気が出なかったんだ……？」
「……珀鉛の毒はごく微量だ。長い時間をかけて親や子に蓄積して、やっと凶悪な致死性を現す。
普段少し触れる程度の珀鉛なら、場合によっては自然と毒は排出されて子孫にも影響は出ねェだろうよ……」
「ッそ、そんなの絶対じゃねェだろ……！？　一体いつ体にどんな形で影響が出るかなんて誰にも……！」

　チョッパーの訴えに対し、返ってきたのは小さな笑い声だった。
　びくりと体が震える。ローは笑い声を潜めると、静かに言った。

「……そん時は〝感染病〟の〝珀鉛病〟の再来ってだけの話だ。
珀鉛病で国が滅んだのは十六年前……一部の人間にはまだ新しい記憶だろうよ。
すぐ周りの連中が罹りたくねェと叫んで『ホワイトモンスター』を狩り取っておしまいだ」
「ゥ、ア……」

[168 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/21(土) 23:53:35]

（恥ずかしすぎて耐えきれなかったので再投稿失礼します…ご指摘ありがとうございます…穴に入りたい…ありがとうございます…）

[169 二次元好きの匿名さん 23/01/22(日) 00:01:49]

覚え間違いは誰でもあるからどうか気にしないでほしい
コラさんが死んだ13年前とフレバンス滅亡16年前って少しややこしいなって思うし

[170 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/22(日) 00:13:00]

　最悪だ。国どころが政府までグルになってしまえばチョッパーたちが手を出せる範囲はさらに狭まる。
　もちろんそれで諦めるわけではない。
　ギリッと歯を食いしばってから、チョッパーは言う。

「トラ男……出荷日が明日ならまだ時間がある！
絶対に荷物を船に乗せちゃなんねェ！」
「ああ、それに珀鉛そのものをどうにかしなけりゃならねェ……。
何処から……いや、どういうルートで運んで来やがった……？」

　しかし、一体どう処分すれば良いというのか。
　海に沈めるのも駄目だ。海底の生き物に影響を及ぼし、結果的にそこで漁をする国民すら害してしまう。

（なにか珀鉛を無効化する方法……ッ！）

　珀鉛は掘り出したからこそ、その毒性を発揮したのではないかとあの論文には書かれていた。
　ならばまた地下深くにでも埋めてしまうしかないのだろうか。
　だが、それを実現するのすら容易ではなく、様々な問題が立ち塞がる。
　チョッパーが自分自身で成せる方法ならば何が有効打なのか――そんなことに思考を奪われている時だった。

[171 二次元好きの匿名さん 23/01/22(日) 00:15:18]

あっヤバそう…

[172 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/22(日) 00:16:01]

　――……シンッドシンッドシンッドシンッ！！
　揺れるような地響きが近づいてくる。
　思考の深みに嵌っていたチョッパーは心底驚き、ローの首にしがみついた。

「な、な、な、な、なんだッ！？　地震かッ！？」
「ッ……違う、これは――足音！？」
「えっ！？」

　ローの言葉にチョッパーが驚愕すると同時に『開発室』の巨大な扉が開かれた。

「――野郎どもォッ！！　喜べェッ！！　『酒』取り戻してきたぞーッ！！」

　部屋中に響いたのは女の大きな声だった。
　ローが振り向いたおかげでチョッパーもその姿が確認できる。
　見上げるほどの巨躯と、ウェーブがかった長い赤茶の髪。腹と胸下だけを締め付けるような服が、豊かな胸の谷間を惜しげもなく晒していた。
　そう、そこにいたのは巨人の女だった。
　上機嫌で『開発室』に入ってきた彼女は、その手には小さすぎる袋を持っている

[173 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/22(日) 00:18:47]

　そんな巨人の女に怖気付くことなく、数人の作業員たちが駆け寄って叫んだ。

「工場長ッ！　本当ですか！？」
「ああ、本当だとも！　警備隊長の野郎が取り戻してきてくれたんだよッ！」

　ほら！　と彼女はしゃがみ込むと手にしていた袋を彼らに渡す。
　ひとりがそれを慌てて受け取り、袋の中に手を突っ込むと一本のワインボトルを取り出した。
　それはラベルもまだ貼られていないような物だ。
　同時にローの肩がぴくりと動くのがわかった。

「ウオォ――――ッ！！　隊長くんありがとう――――ッ！！」
「流石！！　《ブックパラダイス》希望の星！！　ちょっとボケボケしてるけどそこも愛嬌だよな許すッ！！」
「こないだ廊下でコケてバケツの水ぶち撒けたのも許すッ！！」

　よほど嬉しかったのか、作業員たちが防護服の中で涙を流していそうなほど歓喜していた。
　そんなことよりもチョッパーは彼らの持つ物に目を奪われる。

「……トラ男、あれッ……！」
「わかってる。……『商品』だ。しかも今年のなッ……！」

　しかし、工場長が巨人族の女だったことは驚かされた。やたらと高い天井や扉は彼女のためなのだろう。
　彼女は喜ぶ作業員たちを眺め、しゃがんだままニコニコしていた。
　ふとチョッパーは気づく。少し前屈みになっているおかげで見えやすくなったのだろう。
　彼女のさらけ出されている胸元に、見覚えのある小さな模様があった。

（あれって……あの手長族の奴の体にもあった花の模様か…？）

　もしかしたら海賊団のような組織的なマークなのかもしれない。ならば彼女もまた『知る側』の可能性は高かった

[174 二次元好きの匿名さん 23/01/22(日) 00:21:42]

やっぱ隊長さんドジっ子じゃないか草

[175 二次元好きの匿名さん 23/01/22(日) 03:20:45]

フレバンスと違うのは国民全員が珀鉛の毒性を知らないんじゃなくて、一部だけだけど王族・政府以外の人がそれを理解したうえで動いてるってことなのか。

[176 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/22(日) 08:01:16]

「じゃあ、おれたちこれで――」
「うん！　念のため他のところの確認作業だけは終わらせてちょうだい！　特別手当出すからさ！」

　綺麗な笑顔で告げる巨人族の女――工場長に作業員たちが崩れ落ちる。

「チクショーッ！！　ですよね！！　今日は残業だァッ！！」
「知ってた！！　大事ですもんねェツ！！　手当ありがとうございます！！」
「すまないねェ、大いに働きたまえ！」

　ワッハッハッハッ！　と豪快に笑う姿はなるほど巨人族だと納得する。
　ワインボトルを受け取った作業員が「あ」と声を出した。

「これ『倉庫』の連中に渡さないといけないよな。おれちょっと今の作業抜けられねェや」
「おれもちょっとキリが悪いな」
「工場長、すみませんが『倉庫』持っていってもらっても良いですか？」

　作業員たちの言葉に工場長は唸る。

「ホント？　私もこれから明日の船の準備あるんだよなァ。近いからこっち持ってきちゃったけど……」
「仕方ない、少しの間ここに保管しとくか？」
「やめとけって……！　仮にそんなの漏れてみろ、天竜人に管理がなってねェって言われるぞ！」

　あーだこーだと言っている彼らを見て、ローが動き出した。
　チョッパーは物音も声も出さないようにギュッと体を縮こませて彼の動向を見守る。
　作業員と工場長の傍に立った彼は、落ち着いた動作で手を出した。

[177 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/22(日) 08:02:19]

「――おれが『倉庫』まで行こうか？」

　作業員と工場長が振り返る。
　そしてローの姿を確かめ、作業員の内のひとりが声をあげた。

「おおッ、そういやお前は『倉庫』担当だったんだもんな！　悪い、頼めるか？」
「もちろんだ。……忙しい時は助け合うべきだろう？」
「（おれ今トラ男の顔見えねェけど絶対悪い顔してる――――ッ！！）」

　チョッパーは胸中でいつかと同じ叫びをあげる。しかし、これで目的は果たせるのだ。
　作業員たちは嬉しそうにローへワインボトルを渡した。
　それを確かに受け取り、決して焦らず『開発室』を出て行こうとする。
　――だが、そう簡単にいくはずもない。

「ねェ、アンタ……名前は？」

　頭上から降ってくる声にローが足を止めた。
　チョッパーは体を強張らせる。
　防護服内に隠れているというのに視線が突き刺さるような心地がした。

「……名前、か」
「そう。私これでも従業員は全員憶えているんだ」
「……？　工場長？」

　周囲にいた作業員はきょとんとした様子で首を傾げている。
　ローは黙り込んだまま何も言わない。
　もし彼女が言っていることが本当ならば、下手な偽名は危ないだろう。
　ただ、黙っているという時点で既に――。

「ああ、もちろん――その背中のお友達の名前も、だよ」

[178 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/22(日) 08:03:22]

　彼女の言葉にチョッパーとローは知る。この場がすでに〝戦場〟であることを。

（見聞色――ッ！！）

　瞬発的にローが後ろへ大きく飛べば、先ほどまで立っていた場所に大きな手の平が叩きつけられた。
　床が揺れるほどの衝撃に誰もが体をよろめかせる。

「工場長ッ！？　どうされました！？」
「アンタら全員離れてなッ――侵入者だよッ！！」
『えッ――――――！？！？』

　体勢を整えたローが叫んだ。

「トニー屋、もういいッ！！　やるぞッ！！」
「……オウッ！！」

　チョッパーは脳内で自分の姿形のスイッチを切り替える。
　その瞬間、膨れ上がった体が防護服の許容範囲の限度を超えて弾けさせた。
　同時にチョッパーはローの背を軽く蹴るようにして離れ、床に降り立つ。

「ホァチャ～～～～ッ！！」
『なんか中から出てきたァッ――――！？！？！』

　『柔力強化』の姿で戦いの構えを見せれば、作業員たちがまたも驚愕の悲鳴をあげる。
　工場長は顔をしかめさせて舌打ちをした。

「『死の外科医』と麦わらの一味のタヌキ……ッ！？　アンタたち、どうやって檻から……！」

　だが、その目の色がすぐに変わる。
　そして彼女は顔に怒りを浮かべて吠えた。

[179 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/22(日) 08:10:24]

「テメェ……その服、あいつの……ッ！！　『仲間』に何をしたッ！！」
「安心しろ、殺しちゃいないさ。……俺は医者なんでね」
「海賊が抜かすんじゃないよッ！！」

　彼女は周囲にいた作業員たちに告げる。

「アンタたち、こいつらは海賊だよ！！　『商品』を盗んだ奴の仲間だッ！！
危ねェから全員避難しなッ！！　警備隊……いや、『守衛隊』のほうを呼びなッ！！」
「は、はい……！！」

　様子を窺っていた作業員たちが慌てて『開発室』から出て行く。
　少しもしない間に施設全体に響き渡るような警報音が流れ始めた。
　チョッパーたちはその場から動かず、目の前に立ちふさがる工場長を見上げる。
　彼女は腰に手を回すと、そこに携えていた手斧をゆっくりと引き抜いた。

「……こっちは穏便に済ませてやろうとしてたっていうのに。まったく困ったもんだよ」
「ハッ、ありがてェ話だが、お前たちと同じでこっちにもこっちの都合ってもんがあってな」

　ローは嘲るように答え――彼女を睨み上げた。

「テメェら〝珀鉛〟が何だかわかってんだろう。
いくら稼げるっていってもな……不都合が起きた政府に切り捨てられるのはこの国だぞ」
「――ッ！！」

　工場長が息を飲む。だが、彼女はすぐに口元を緩めて笑った。

「たくっ……見ただけって聞いていたんだけどねェ。
あれが〝何か〟までわかってるっていうんなら話は全く変わっちまう」

[180 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/22(日) 08:11:09]

「否定はしねェんだな」
「否定してどうする？　何故だか知らねェが、アンタらは確信してるんだろう？　ああ、だが、そうだね……」

　空気を叩き割る重い音が頭上から降ってくる。
　鈍く輝くのは手斧の刃だった。

「たった今、テメェらをぶち殺さなくちゃいけなくなったよッ――！！」

　チョッパーとローは左右に分かれるように飛んだ。
　床に叩きつけられた手斧は簡単に石材を割り、その破片を飛び散らせる。
　流石巨人族の膂力といったところか。まともに食らえば肉体がちぎれかねない。

（ローは海楼石で能力が制限されてる！　ここはおれがやるんだ！！）

　床を蹴り、チョッパーは飛び出す。そして彼女の持つ手斧の刃を横から蹴り抜いた。
　その反動で回転しながら思いきり後ろに飛んで距離を保つ。

「ハチョ――ッ！！」
「ッ、この……！」

　僅かに彼女の手元が揺らぐが、それも一瞬のこと。
　彼女は手首を切り返すようにしてチョッパーに手斧の切っ先を向けた。

「ちょこまかとッ！！」

　身を捩り、その斬撃を避ける。再び床に突き刺さる手斧の衝撃で部屋全体が揺れた。

[181 二次元好きの匿名さん 23/01/22(日) 09:28:47]

ヤバい大ピンチだ…
ローが能力封じられたままなのがやばいな

[182 二次元好きの匿名さん 23/01/22(日) 09:55:12]

この人が手錠の鍵を持っててくれたらいいけど…

[183 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/22(日) 12:53:30]

（巨人族の頑丈さだと『柔力強化』は決め手に欠ける！　だけど『怪物強化』は駄目だッ、この場ではリスクが高い……！）

　まだ逃げ場も確保していない敵地のど真ん中でローとふたりきり。
　『怪物強化』が切れた後、海楼石でいつものように動けないローに負担をかけすぎてしまう。
　ならば、とチョッパーは走る速度を上げた。
　『柔力強化』の俵形のやわらかな体が徐々に変形していく。そしていつしか硬い床を四本の脚で蹴る音が響き渡った。

（『脚力強化』――ッ！！）

　たとえどんな足場であったとしても速度を落とさずに走り抜ける。かつて一本のロープの上をずっと行き来し続けていたのだ。
　チョッパーは床を蹴り、机上を踏み荒らし――工場長の腕の上へ飛び乗った。

「なッ……！？」

　巨人族は確かに脅威だ。その膂力と頑強さは他の種族の中で遥かに優れている。
　だが、その身が何よりも巨大だからこそ小回りは効かない。彼女も自分の体に斧を振り下ろすことなどできやしないのだ。
　太い腕の上を全速力で駆け上がり、チョッパーは彼女の顎下に飛び込む。

[184 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/22(日) 12:54:00]

　速度と位置は狙い通りだ。
　そして、既にチョッパーの姿は『脚力強化』から別の形に変化していた。

「このタヌキッ――！！」
「おれは『タヌキ』なんかじゃない。
――『トニートニー・チョッパー』だッ！！」

　巨大に膨らんだツノの下から吠える。
　最後のひと蹴りでチョッパーは飛び上がった。

「《角砲11》――ッ！！」

　その瞬発的な速度は『角強化』の凶悪さを引き出す。
　下から抉るような突進は、確実に彼女の顎をツノで捉えた。柔らかな肉と硬い骨を同時に潰すような衝撃は彼女の脳天にまで響く。

「ッ――！！」

　声にならない悲鳴を上げて彼女は仰け反った。
　いくら巨人といえど人体の急所は人間と同じ。
　倒せなくとも良いのだ。
　この場を脱するチャンスさえ得られれば、チョッパーたちの負けにはならないのだから。
　足場を失った一瞬の浮遊感。即座に『脚力強化』に切り替えようとした

[185 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/22(日) 12:55:14]

「――トニー屋！！　備えろッ！！」
「え……――グ、ァッ！？」

　ローの叫びが耳に届いた瞬間、チョッパーは工場長が振った腕に殴られて吹き飛ばされた。
　目の前が白くなるような衝撃と、様々なものを巻き込んで壁に叩きつけられる感覚が立て続けに襲いかかってくる。
　
（あ、ぶなッ……！）

　飛びかけた意識を何とか繋いだ。
　殴られる時には間に合わなかったが、吹き飛んでいる最中に『毛皮強化』に切り替えることはできた。
　おかげで壁に叩きつけられた衝撃は吸収できている。それもローの言葉がなければ間に合わなかっただろう。
　見上げれば顎を押さえた工場長が睨むようにしてチョッパーに鋭い眼光を向けていた。

「チビなりに頭は回るね。でも、私はこんなもんじゃ倒れないよッ――！！」

　振りかぶられた手斧を見て、よろける体に鞭を打って走る。
　壁を削りながら降ってくる斧の刃が後方に突き刺さった。耳障りな破壊音を振り払うように、チョッパーは頭を振る。

[186 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/22(日) 12:56:32]

（ヒットアンドウェイでどうにかするしか……！
でもその間にもあいつらの仲間がここに来るッ！）

　『脚力強化』の姿でローを乗せて逃げることも考えるが、彼女がいる限りこの部屋から抜け出すことも困難だ。
　考える時間も惜しい。着実に急所を攻めていくしかない――そう考えた時、ローが動いた。

「――おい『大量殺人犯』」
「あ？　……なんだって？」

　低く詰るようなローの言葉に工場長が振り返る。
　彼は睨まれようが構うことなく、嘲るように笑った。

「それだけデケェ耳があって聞こえねェのか？
『大量殺人犯』っつったんだよ、テメェのことを。
どの口でおれらのことを海賊だと揶揄しやがった？
珀鉛をばら撒こうとしてるテメェらのほうが、よほど凶悪で底意地の悪いクソッタレ野郎じゃねェか」

　床に突き刺さった斧が抜かれる。ガラガラと崩れる、割れた壁と床の音も今のチョッパーには気にならない。

（トラ男……！？）

[187 二次元好きの匿名さん 23/01/22(日) 12:57:50]

>>182

鍵持ってたとしても握りつぶして粉々にしそうだよ...

[188 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/22(日) 12:58:18]

　工場長の意識がローに向かう。
　鬼哭を扱えるとしても、巨人族が相手ならば能力が使えないローは丸腰に等しい。
　彼ならそんなことわかっているはずだ。
　だから、チョッパーは何も言えずに見守った。

（もしかして何か考えが――……あれ？）

　よく見るとローの足元にはチョッパーの鞄が落ちていた。それだけなら気にならないが、鞄の蓋が開いている。
　不思議に思い、チョッパーはさらに目を凝らす。すると、ローはその手の中に何かを隠しているようだった。

（おれの鞄の中から何か出した……？　手のひらサイズに収まるもの……薬……？）

　ふいに閃いた。
　もしかしたら、彼がしようとしていることは――。
　チョッパーは『脚力強化』の姿のまま彼らの動きをつぶさに見つめた。
　もし、この考えが当たっているのならばチョッパーに役割がある。
　だからチャンスを――逃してはならない。

「ふぅん……私たちが大量殺人、ねェ。……ハッ、フッフッ、アッハッハッハッ――！」

　何がおかしいのか、工場長は腹を抱えるように大笑いをする。その姿は異様でもあった。
　涙すら浮かべて笑い続けていたが、それもピタリと止まる。

「よそ者が口を挟むなよ。海賊のくせに正義のヒーローごっこがしたいなら家に帰ってねんねしてな。
……まあ、テメェらは今ここで私が――殺すがなッ！！」

[189 二次元好きの匿名さん 23/01/22(日) 13:23:35]

生き残ったローからしてみれば
毒性を分かってバラまく奴は人殺し同然だよなあ

[190 二次元好きの匿名さん 23/01/22(日) 13:27:56]

帰る家は政府と珀鉛のせいで消えてるですよその人…
今の家はポーラータング号だけども

[191 二次元好きの匿名さん 23/01/22(日) 15:31:15]

うぉぉぉぉ戦闘シーンアツい‼︎
この人らからしたら自分たちが出荷したもので他人がどうなろうと関係ないのかも知れないけど毒性への理解があって、尚それをばら撒くのはローさんの言う通りひとごろしそのものの行為なんよ…
と思って読んでいたんですが隊長殿が持ち帰ってきたお酒ってルフィが持ってたアレだし、てことは毒性があるものをサンジくんは少量身体に取り入れてしまったわけですね⁇
珀鉛は中毒症状を起こすものだし成分が改悪されてなければ少量摂取なら問題ないんだろうけど推しに対する不安要素が増えちまったな…

[192 二次元好きの匿名さん 23/01/22(日) 17:19:29]

まだかしら

[193 二次元好きの匿名さん 23/01/22(日) 18:05:19]

>>192

スレ主さんの都合ってもんがあるんだから急かすのはやめようぜ…

読ませてもらってる立場なんだから

[194 二次元好きの匿名さん 23/01/22(日) 18:26:43]

この国に持ってきて加工してるのか、この国においてるのを加工してるのかは知らないけど割を食うのは数世代後の子孫で緩やかに滅んでるって理解しているのかな

[195 二次元好きの匿名さん 23/01/22(日) 19:58:16]

そろそろ次スレあった方がよさそう

バチバチに煽り散らすローさん好きですww
よくよく(でもないけど)考えると珀鉛が関係してる時点で地雷のド真ん中なんだよね…

[196 二次元好きの匿名さん 23/01/22(日) 20:09:56]

これ珀鉛のターゲットは天竜人なのでは…

[197 二次元好きの匿名さん 23/01/22(日) 20:22:09]

戦闘シーン迫力あってドキドキするなぁ

[198 スレ主◆UmOy/gVenc 23/01/22(日) 20:51:35]

ｳｫｫｫｫｫｫ気づいたらもう終わりそうでびっくりしてしまった。

読んでくださってありがとうございますー！

そして次スレでございます！！

【🎲SS・オリキャラ・閲覧注意】麦わらとハートがとある国を解明する（4）｜あにまん掲示板

[199 二次元好きの匿名さん 23/01/22(日) 20:53:23]

>>196

そうだとしても駄目だろそれは…

天竜人だろうと誰だろうと珀鉛病にさせたりなんか出来ないからローとチョッパーは戦ってるんだ

[200 二次元好きの匿名さん 23/01/22(日) 20:53:48]

>>198

立て乙です！

続きも楽しみにしてます！！