- 1123/02/02(木) 21:04:14
※注意※
・REDオマージュのSSです(FILM BLUE)
・サンジが東の海で逃げ出すことなく14年間監禁されたままという設定
・ウタポジションがサンジ
・海の戦士ソラが実在していた設定
・安価とダイスあり
・書き溜めてないので更新速度にばらつきがあります
最初のスレ
【RED】ここだけ牢屋に監禁され続けたサンジの世界|あにまん掲示板REDのウタポジションのサンジはジェルマの別の城の地下牢にずっと監禁されておりウタ同様世間知らずだが、料理の練習だけはしてきており海賊ではなく争い自体を嫌ってる、鉄仮面はしたまま悪魔の実は食べてないが…bbs.animanch.com前スレ
【SS】ここだけ牢屋に監禁され続けたサンジの世界 part3|あにまん掲示板※注意※・REDオマージュのSSです(FILM BLUE)・サンジが東の海で逃げ出すことなく14年間監禁されたままという設定・ウタポジションがサンジです・海の戦士ソラが実在していた設定・安価とダイスあ…bbs.animanch.com発想はこのスレの132から
ここだけゾロとウタが逆の世界|あにまん掲示板ルフィの幼馴染で赤髪海賊団の息子(見習い)で昔最強を誓い合ったけどとある事件で離れ離れになってしまい成長した後のFILM SWORDで世界滅亡の危機を引き起こしてしまう覚悟ガンギマリ剣士ゾロと世界一の…bbs.animanch.com - 2123/02/02(木) 21:04:37
このスレのサンジの設定
・身長165cm
・髪型はソラさんと同じ
・父親と兄弟への反発と母と同じ名前をした海の戦士ソラに憧れているため争いごとが嫌い
ロボット(ニスロク)
・全身真っ黒
・頭の形は鉄仮面
・ルナーリア族みたいに背中に翼と炎がある
・黒い歯車が浮いてる - 3123/02/02(木) 21:05:16
- 4123/02/02(木) 21:06:22
- 5二次元好きの匿名さん23/02/02(木) 21:15:12
新スレ立て乙です!
- 6123/02/02(木) 21:16:52
「サンジ!!」
レイジュが未だ空に立ちすくむサンジの元へと駆け寄ろうとした。
しかし、依然として燃え盛る炎がサンジを守る翼のように覆い隠し、近づくことができない。
伸ばした手に触れた炎の熱さにレイジュは思わず手を引いた。
すると、レイジュの背後からこちらへと向かう気配がした。
地面を強く蹴り上げて飛び上がった男。
蹴りの勢いだけでレイジュの後ろを通り過ぎた人影にジンベエが目を見開く。
「お前さんは……!!」
「なにやってやがる!このクソガキが!!」
燃え盛る炎も意に介さず、強靭な脚がサンジを蹴り飛ばした。
「ーーえ!?サ、サンジ!!」
広場へと落ちていくサンジに皆が目を丸くする。
慌ててレイジュが向きを変え、空を蹴ると地面にぶつかる直前でサンジを受け止めた。
「うおおおわわ!?だ、大丈夫か、サンジ!!!」
「サンジ君!!!ちょ、アンタサンジ君に何やってんのよ!?」
広場へと降り立った男をキッと睨みつけナミが天候棒を向ける。
「……ふん。ちょっと灸を据えてやっただけだ」
ポケットに手を突っ込んだまま男は何でもなさそうに言い放った。 - 7123/02/02(木) 21:33:13
「おお!赫足のゼフ!お前さんも来ておったのか!!」
赫足という言葉に首を捻ったウソップがやがてポンと手を叩く。
「赫足……あー!!あの海を回っては至る所で料理を振る舞ってたっていう海賊か!!」
厨房ではパティ達がゼフが出て行った扉を眺めていた。
「我らが料理長はちょっとは素直になったかなァ?」
ニヤニヤと笑ったカルネにマロージュが力強い笑みを浮かべて頷いた。
「大丈夫ですよ。ここでサンジくんのことを任せられるのはゼフさんしかいません」
マロージュの言葉に煙草をふかしながらイライザも真っ赤な口紅を塗った唇を吊り上げた。
「意外と赫足も細かいことを気にしてたんだねェ。血だのなんだっのてまどろっこしい」
「………血のつながりは決して消えないし、それもまたつながりの形だけど、そうじゃないものもあるよね。わたしもそういうことたくさん経験してきたの。……ここでも」
マリイが長いまつ毛を震わせて夢を見ているように微笑んだ。
「おう!2日もろくに過ごしてねェが、おれたちはもう仲間だぜ!!最高のなァ!!」
歯を見せてニカリと笑ったパティが長くて太い腕でカルネ達を抱き寄せた。
「あとはサンジのやつと料理長が揃えば完璧だ!!大宴会コックさん達で写真でも撮ろうぜェ!!」
「……フッ、いいな」
ジャンがそう言うとカルネ達もそれに賛同した。
窓から見えた光景は決して良いものではなかった。けれど、サンジには彼のことを想う人達がたくさんいる。
それを知ることができてパティ達は安堵した。
サンジもきっと理解しているはずだ。彼はどうやら育ちのせいで人に臆病なところがあるけれど、人の感情を細やかに察することができる。
あとはそれを受け入れ、前に進むだけだ。
もしまたアイツらがその前に立ちはだかるのならば、パティ達は何度でも打ち砕く心構えがある。
しかし_____
ーー今は彼らに任せよう
窓から見えた麦わら帽子と飛び出していった金髪の料理人を思い浮かべ、パティ達は窓に背を向けた。 - 8123/02/02(木) 21:42:35
「ゲホッゲホッ……!!……ゼ、ゼフさん?」
痛みに思考がハッキリとしたのか、チリチリと脚だけを僅かに燃やしたサンジがゼフを見上げる。
それを見てゼフはふん、と再び鼻を鳴らした。
「……てめェはコイツの何だ?」
探るようなゾロの言葉にゼフは少し考え込むと、仏頂面のままサンジをじっと見つめた。
「___おれはチビナスの師匠ってやつだろうな。期間限定のだが。……ったく、大事な手を喧嘩なんぞに使いやがって」
さんざ使われたサンジの手は強靭な外骨格と異常なまでの回復力によってきれいなままだった。
しかし、じんと痺れたような痛みはある。
「あ………」
サンジは自らの手をぼうと見つめた。
その手をゼフは大きな温かい手で握り込んだ。
「大事なことを教えてやる。いいか、お前の手は喧嘩をするためにあるんじゃねェ。料理を作るためにあるんだ。分かったな?」
ゼフの青い瞳がサンジを射抜く。
「それと……女に危害を加えるんじゃねェ!男は女を蹴っちゃならねェんだよ。こんなのはな、恐竜の時代から決まってることだ」
サンジとゼフがじっと互いを見つめ合う。
ゼフの瞳と混ざるようにサンジの瞳に青が移る。
「もし、てめェがこの2つを破ったらおれはてめェの師匠として……てめェの親として落とし前をつけなきゃならねェ」
その言葉にサンジは目を見開いた。
「お、親?」
「おれの技の全てをてめェに教えるんだ。おれの知りうる全てをな。だから、お前はもうおれの息子みてェなもんだ」
「おれ、おれなんかが、ゼフさんの息子でいいの?」
「お前がおれのことをどう思ってるのかは知らねェが、おれはてめぇが思ってるような良い人間じゃねェ。……それに、これはおれが言ったんじゃねェぞ。あいつらが言い出したんだ」
ゼフがボリボリと照れを隠すように頰かく。
あいつら……ゼフの指す人達が誰であるのかはサンジにもよく分かった。
ーーパティたちだ。
優しい笑顔が目に浮かぶ。
目の奥がつんとして、目の前の光景がぐにゃりと歪んだ。 - 9二次元好きの匿名さん23/02/02(木) 21:44:26
うおおおお!!!!スレ立てお疲れ様です!!!
チビナスの「親」はアンタしかいないよ…ありがとう…!!!!!! - 10二次元好きの匿名さん23/02/02(木) 21:55:56
うわァァァァゼフさん…‼︎
サンジくんの「親」を名乗ってくれてありがとうございます……
恐竜時代からの教えも料理人として手を使わない覚悟も、いまこの瞬間サンジくんに刻み込まれたんだろうな… - 11123/02/02(木) 22:00:04
ゼフは目元を緩め片頬を吊り上げると、ガシガシとサンジの頭を撫でた。
その動作に、サンジの瞳に膜を張っていた水が大きな雫となって溢れる。
一度決壊した涙は止まることを知らずボロボロと溢れ続けた。
サンジの海のような青い瞳がキラキラと宝石のように輝く。
ゼフはその瞳を眩しそうに目を細めて見つめた。
今まで見てきた宝石よりもよっぽど綺麗だった。
「アーウ!!なんて良い話なんだよォ!!スーパーに良かったなァ!サンジ!!」
フランキーがサングラスを取り、涙をゴシゴシと拭う。
「サ"ン"シ"ィ"よ"か"っ"た"〜〜!!!!」
元の姿へと戻ったチョッパーも丸い瞳から涙を流す。
ナミたちも未だ髪の色は戻らないものの、どうやら落ち着いたらしいサンジの様子に安堵し、自然と頬を緩めた。
「サンジ……」
レイジュが探るような瞳でサンジな顔を覗き込む。
「ごめんレイジュ。いっぱい迷惑をかけて……」
「……謝らないで。あなたのせいじゃないでしょう。……とにかく、良かったわ。でも、まだ完全に薬が切れてるわけじゃないし、処置は必要よ」
だから早く中へ、そう言おうとしたレイジュの声を遮って冷たい温度を纏わない声が広場に響いた。
「私の元から離れてくれるか。それはちょうどいい」
「父上……!」
その声にイチジ達が弾かれるように顔を城へと向けた。
冷たい水がレイジュの背中を伝う。
散らばる瓦礫を踏みつけて、兵士を引き連れたジャッジが広場へと現れた。 - 12123/02/02(木) 22:00:46
今日はここまでにします!
保守のご協力よろしくお願いします - 13二次元好きの匿名さん23/02/02(木) 22:17:51
せっかくサンジくんがゼフさんの言葉と親としての覚悟のおかげで正気に戻ったのにここでまたジャッジか…‼︎
この男、宴を台無しすることだったり厨房襲撃と言い尽くサンジくんを傷つけることしかしてないからせっかく落ち着いて、悲しいだけじゃない涙を流せたサンジくんをまた傷つけて悲しい涙に溺れさせそうで不安だ… - 14二次元好きの匿名さん23/02/02(木) 22:45:36
ジャッジが来たのが吉と出るのか凶と出るのか………
- 15二次元好きの匿名さん23/02/02(木) 23:05:14
ジャッジ来やがったか…今までろくなことしてないから不安だ…お願いだからサンジくんにこれ以上余計なことするなよ…
- 16二次元好きの匿名さん23/02/03(金) 07:50:34
サンジも心配だけどレイジュもずっと辛そうで心配
幸せになってくれ… - 17二次元好きの匿名さん23/02/03(金) 13:13:51
保守
- 18二次元好きの匿名さん23/02/03(金) 20:35:30
ほ
いい話だァ - 19123/02/03(金) 21:22:48
保守と感想ありがとうございます!!
- 20123/02/03(金) 21:48:13
突然の乱入者に皆の視線がジャッジへと向く。
ジャッジは地面に座り込むサンジを見下ろすとゆっくりと言葉を紡いだ。
「私も人の子なんだな。実の息子であるお前を"本当に"殺すことはどうしてもできなかった。
だが、私の望みは北の海への復讐、ジェルマの再興なんだ。そのためには強い力が必要だ。分かるだろう?だからお前に薬を使った。少しでもお前が私の望む力を得ることができるのではないかと希望があったからだ。
だが、それも叶わぬ望みだったらしい。
ーーならば、私にはもうお前を引き止める理由はない。サンジ、お前が私の前から消えてくれるのであれば、私はそれを止めはしない。
お前が私の息子であるということは汚点でしかないが、既にこの事実は広まっただろう。
ならばせめて……」
ジャッジは一度言葉を切ると、サンジの瞳をじっと見つめ
る。
涙の跡を頬に残し、サンジは父親の顔をぼうっと見上げた。
「……私達一族とお前は縁を切ったことにしてくれ。サンジ、もうお前は私の息子ではないことにしてくれないか」 - 21123/02/03(金) 22:05:48
ーー何を言っているんだ……?
イチジ達兄弟、そして兵士達を除いてその場にいた者達は皆ジャッジの言葉に困惑した。
あまりの内容に、場が静まり返る。悲鳴をあげていた者達も、罵声を浴びせていた者達も何も言葉を発することが出来なかった。
「……うっ…ううううう!!!」
ジャッジの輪郭が歪む。
先ほどでの涙とは違う、心の奥底から絞り出すような涙が溢れ出た。
サンジの慟哭に理解したくないと拒んでいた脳が動き始める。
そして、混乱した脳でその言葉の意味をようやく飲み込んだ。
「……ふざけんじゃねェ!!!!なんで!!なんでお前の頼みをサンジが聞いてやる必要があるんだ!!!」
ウソップがパチンコをギリギリと引き絞ってジャッジへと叫んだ。
「…………まだ、おれに蹴られてェのか」
ゼフは静かにそう言い放った。
しかし、その額には太く青筋が浮かんでいた。
怒りに顔を歪めたゼフは今にもジャッジに飛びかからんまでの様子だ。
ルフィやゾロ達は一言も発さずただジャッジを睨みつけていたが、その瞳には激しい怒りと嫌悪の色が宿っている。
言葉にできない怒りが胸の中を蛇のように渦巻いていた。
「……ッ!!」
レイジュは父親のあまりに惨い言葉に溢れそうになる涙を必死に飲み込んだ。
ゼフ達を冷たい視線で見据えたジャッジは、立ち尽くす民衆へと目を向けた。
そこに、長年恨み続けた者達の姿を捉える。
300年前にジェルマを壊滅させた国の者達を。
「……。あそこに我らが討つべき王族どもがいる。やれ」
その命に兵士達が武器を手にして駆け出した。
王族の一人である壮年の男の前に、ブルーホールでサンジがいちごみるく味のポップコーンを渡した少女の姿があった。 - 22123/02/03(金) 22:17:06
少女の瞳に、こちらへと剣を振り上げる、表情の見えない兵士の姿がゆっくりとスローモーションのように映った。
ーー近づいてくる!!
後ろの男の人も、周りの人達も恐怖に引き攣った声は上げるものの、身動きが取れないぐらいギュウギュウに並んでいることもあってろくに逃げることができない。
列を守っていた人達が武器を手にして立ち向かおうとするのが見えた。
列の前から白い服を着た人達がこちらへと駆け寄ってくる。
しかし、少女達のいる場所へは間に合わない。
襲いかかる痛みを想像して少女は目を瞑った。
ーー私達は仕事を休めないからあなただけでも行っておいで
そう優しく送り出してくれたおかあさんとおとうさんの笑顔が瞼の裏に浮かんだ。
「ーー悪魔風脚____」
赤い炎が光り輝く。
温かい、しかし苛烈な色をした炎が。
「ーーー"粗砕"!!!!」
炎に照らされて宙に翻る柔らかい金糸がキラリと光った。
「ーーー神は食物を作り、悪魔が調味料を作る………少し辛みが効きすぎたかな」
強烈な蹴りが兵士を地へと沈めた。
軽い音と共にサンジが地面に降り立つ。
俯きがちに呟いたサンジの声は、僅かに震えていた。
しかし、全てを包み込むような青い瞳は確かに強い意志と光を宿して強く輝いた。 - 23123/02/03(金) 22:18:02
短いですが今日はここまでにします
また保守のご協力よろしくお願いします…! - 24二次元好きの匿名さん23/02/03(金) 22:39:11
サンジくんゼフの言ってた通り血のつながりに固執するのをやめて呪いを断ち切ったのか……!?
- 25二次元好きの匿名さん23/02/03(金) 22:44:00
あぁ…ジャッジの発言への嫌悪感が凄い…いや原作の「最後の頼み」も最悪だけどこれも最悪…言葉も出ない…
しかもレイジュさんまでさりげなく傷つけてる…許せない…
って思ってたらウソップ〜〜〜‼︎
なんかウソップが1番最初に怒ってくれたのめちゃくちゃ嬉しい…ありがとうウソップ、サンジくんの為に怒ってくれてありがとう
ゼフさんも早速ブチギレてくれてありがとう
ルフィやゾロも、一味のみんなも口を開いてないけどブチ切れなんだろうな…
人の痛みに寄り添って怒ることのできる皆好きだ
そしてラストのサンジくん…‼︎悪魔風脚で女の子を救うサンジくん…‼︎かっこいい!
サンジくんは守る為の戦いがとても似合う…好き…
今日の更新分も最高でした…‼︎
いつも素敵な文章をありがとうございます - 26123/02/03(金) 22:44:07
本編は次回更新からニスロクくんが大暴れする予定です
ようやくREDのvsトットムジカ戦ぐらいまで来ました……!!
そして筆が遅くて申し訳ないのですが休憩を兼ねて明日は幕間を挟みます……!安価のご協力もよろしくお願いします - 27二次元好きの匿名さん23/02/03(金) 22:48:57
スレ主さんお疲れ様です!
ルフィの場を読んで怒りを抑えてる感じがいいですね
WCIでもサンジの精神面をルフィは大切にしてましたもんね………
スレ主さんめちゃくちゃ筆早いですよ……‼︎素敵なお話をありがとうございます‼︎
明日の幕間も楽しみです! - 28二次元好きの匿名さん23/02/03(金) 22:59:16
スレ主様お疲れ様です‼︎
いつも素敵な文章をありがとうございます
明日の安価も楽しみです!
どうかお身体に気をつけてスレ主様のやりやすいペースで更新を続けて頂けましたら幸いです‼︎ - 29二次元好きの匿名さん23/02/03(金) 23:15:25
ジャッジお前ェェェ!!発言の後イチジたち他兄弟も困惑するくらいクソなこと言いやがってェェェ!!てめぇこれ以上喋るなクソ野郎ォォォ!!
といった感じで荒れてたらウソップが真っ先にキレてくれてすこしスッキリしましたウソップありがとう
悪魔風脚で女の子助けるサンジくんかっこいいな… - 30二次元好きの匿名さん23/02/04(土) 07:56:29
このレスは削除されています
- 31二次元好きの匿名さん23/02/04(土) 07:57:04
幕間もいつも面白いから楽しみ!
- 32二次元好きの匿名さん23/02/04(土) 08:43:45
自分の「息子」が早速元親から暴言吐かれたらそりゃゼフさんブチ切れ案件ですわ
てかゼフの後にこんなこと言える人がよく親今まで名乗れたな… - 33123/02/04(土) 09:56:38
- 34二次元好きの匿名さん23/02/04(土) 12:50:32
サンジが一味にドックでサニー号を見せてもらう
- 35二次元好きの匿名さん23/02/04(土) 13:28:19
料理人さんたちがサンジくんが楽しそうに一味と話してるのを目撃する
- 36二次元好きの匿名さん23/02/04(土) 13:48:51
ジャンさんとサンジくんの会話が見たいです…!
- 37二次元好きの匿名さん23/02/04(土) 13:53:29
サンジくんの料理作りを見学しに厨房へ行く一味+ロー
- 38二次元好きの匿名さん23/02/04(土) 15:09:31
ロビンちゃんと昔の話
- 39二次元好きの匿名さん23/02/04(土) 17:06:31
食べづらいからって理由でパフェが苦手なジンベエに、食べやすいパフェを作ろうと頑張るサンジくん
- 40二次元好きの匿名さん23/02/04(土) 17:17:02
もう終盤かな…
続きがきになる~~! - 41123/02/04(土) 17:46:37
ありがとうございました!!
幕間⑥⑦
1.一味にサニー号を見せてもらうサンジ
2.一味と楽しそうに話しているサンジを料理人たちが目撃する
3.ジャンとサンジ
4.サンジの料理を見学しに行く一味とロー
5.ロビンちゃんと昔の話
6.食べづらくてパフェが苦手なジンベエに食べやすいパフェを作るサンジ
dice2d6=4 1 (5)
- 42二次元好きの匿名さん23/02/04(土) 18:56:54
サニー号とサンジくんが対面する話楽しみ
- 43123/02/04(土) 20:40:57
幕間⑥-1
「なあサンジ、明日の朝サンジが料理作ってるところ見に行ってもいいか?」
サンジを見上げてチョッパーがこてんと大きな頭を傾けた。
「もちろんいいよ。見てもあんまり面白くないかもしれないけど」
「おれも行ってサンジのメシ食うぞ!!」
両手を突き上げてルフィが元気よく叫ぶ。
「サンジ君は提供する料理を作ってるんだからアンタが食べちゃダメでしょうが!」
「じゃあルフィ達に味見してもらおうかな。ちょっとだけだけど」
そう言ってサンジが顔の前でつまむジェスチャーをした。
「よっしゃーー!!!」
サンジの言葉に瞳をキラキラと輝かせたルフィは勢いのままサンジにぐるぐると巻きついた。
「もう、あんまりルフィ甘やかしたらダメよサンジ君。すーぐ調子乗るんだから」
腰に手を当てて子どもを叱るようにそう言ったナミにサンジは困ったように頰を掻いた。
「えへへ、ごめんナミさん。でも、ルフィがおれの料理を本当に美味しそうに食べてくれるから嬉しくて、つい」
幸せそうにはにかんだサンジの顔を見て、ルフィもニシシと歯を見せて笑った。 - 44123/02/04(土) 21:13:49
幕間⑥-2
いい匂いが漂ってくる厨房の扉をチョッパーはうきうきしながらコンコンと2回ノックした。
「入っていいぞー」
中からサンジの声が聞こえた。
チョッパーを飛び越えて真っ先に飛び込んで行ったルフィを先頭に、チョッパー達もぞろぞろと厨房にお邪魔した。
中は想像していたよりも何倍も広くて綺麗だった。
中にいる料理人達の腕は皆目にも留まらぬ速さで動いていた。
その中でもサンジの動きは比べものにならないくらいの速さで、手元は一寸の狂いもなく料理を仕上げている。
「それは、ピラフかしら?」
ロビンが声をかけるとサンジは大きなフライパンを振るいながらそうだよ、と頷いた。
「これは海鮮ピラフ。おれ色んな料理作るのが好きなんだけど、特に海の幸を使った料理を作るのが好きなんだ。ピラフもどんな味付けにしようか迷ったんだけど……」
「海鮮に惹かれたわけだな」
フランキーの言葉にサンジはそうなんだよと少し恥ずかしそうに笑った。
「サンジー!味見してもいいか?」
「もちろん、はいどうぞ」
大きめのスプーンにピラフを盛ると、サンジはルフィの口へとスプーンを差し出す。
それをパクリとルフィが大きな口で食べる。
「うめェ!!!!」
「ははっ!それはよかった!!」
ニッコリと笑ったサンジはピラフを次々にお皿に盛り付けると配膳用のワゴンに乗せる。
そして、次はまな板へと向かい、そこに置いていた魚に包丁を向けた。
「おい、その魚もう骨と皮しか残ってねェぞ」
ゾロが不思議そうな顔でそう指摘すると、後ろから声がかかった。
「サンジ様は少しの食材も無駄になさらないんですよ。僕はここで雇っていただけるまで魚の骨もそこについてる身も全部捨てちゃってたんですけど、サンジ様はそれも全て美味しい料理に変えてしまわれるんです」
そう言って優しく微笑んだ青年はマロージュと名乗った。昨日サンジを呼び戻しに来た青年だ。
「ヨホホホ!それは素晴らしい!!サンジさんに調理された食材達は幸せ者ですね」
「そうじゃのう。サンジは本当に料理人の鑑じゃな」
ブルックとジンベエに褒められて、サンジは魚を叩きながら恥ずかしそうに頰を染めた。 - 45123/02/04(土) 21:29:40
幕間⑥-3
ペースト状になった魚のすり身に味付けをしてそこに余った葉物を混ぜる。サンジはぽんぽんと手早く団子を作るとスープの入った鍋に団子を放り込んだ。
「これはコンソメスープなんだ。具は少ないけどこの魚の団子にはこのぐらいシンプルな方がよく合うんだよ」
小皿に団子とスープを注ぐと、サンジはルフィたちに手渡した。
「ん!おいしい!こんなにシンプルに見えるのに味に深みがあって、それに全く魚臭くないわ」
やっぱりサンジ君、うちの船に欲しいわね……とナミが小さく呟く。
「……酒にも合いそうだな」
昨日ホールに置かれていた酒達を思い浮かべ、ゾロはどれに合うかと考えを巡らせた。
「サンジくん、ちょっといい?」
ほわんとした声に振り向くと、反対側の厨房に少女だった。
「どうしたの?マリイちゃん」
「まだ上に乗せないといけないのに、どうしても傾いてしまうの。ケーキ大きいし重いから」
マリイがそう言うと、サンジは冷蔵庫からパックを取り出した。
「じゃあこれを使ってクリームを作ろう。これで作ったクリームは細かくて接着力がある。今作っているクリームとも馴染むし、それにもしクリームが余ってもフォンダンショコラに添えるから大丈夫だよ」
「そっか、すごい。ありがとうサンジくん」
「うわあ!美味しそうなケーキ!!」
とてとてとケーキに近づいたチョッパーに、サンジがクリームを泡立てていた手を止めてちゃんとクリームを差し出す。
「……!!!美味しいぞ!このクリームすっげェもちもちしてる!!」
「不思議だよな。それ、おれも初めて作ったときびっくりしたんだよ」
そう言いながらサンジは少し場所を移動して、シートの上に並べられているクッキーの前に立つ。
可愛らしいくまの形をしたクッキーにつぶらな瞳とかわいい口を描いていく。
「……!!」
なんだか見覚えのあるその顔にローが思わず声にならない声を上げる。
それを見てサンジはローにクッキーを差し出した。
「………。これは………」
かわいらしさに食べていいのか迷う心を断ち切り、ローはクッキーを口に運ぶ。
「……うまい」
ホールに行ったらこのかわいらしいクマのクッキーを取りに行こうとローは心に誓った。 - 46123/02/04(土) 21:39:01
幕間⑥-4完
「サンジはすごいなァ!本当になんでも作れるなんてよ!」
ウソップの言葉にフランキーもうんうんと頷いた。
「手際もいいしな!!それにコーラまで作れるときた!いやあこんなすげェ奴がいるとはなァ」
「褒めすぎだって、おれなんてまだまだだぞ」
照れながら困ったように眉を八の字に下げたサンジに勝気な声が飛んだ。
「何言ってんだ、アンタみたいな奴がたくさんいてたまるかっての!サンジ、アンタはあたしが知ってる中で最も料理が上手い!!自信持ちな!」
タバコを咥えた女性、イライザはそう言うとニッコリと笑った。
「そうだな。俺が知ってる料理人にもお前より料理が上手い奴も情熱を持ってる奴もいない。………お前と料理できて良かったよ」
ワゴンに乗せるために片手に鍋を持ち、こちらへと近づてきた青年、ジャンは空いてる手でサンジの肩を優しく叩いた。
「………サンジ、同じコックさんからこんなにも褒められるだなんて、本当にあなたは最高の料理人なのね」
ふふと口元に手を当ててロビンが笑った。
ルフィ達にも料理人たちと微笑ましく見守られ、サンジは湯気が出そうなほど顔を赤くした。 - 47二次元好きの匿名さん23/02/04(土) 21:53:06
サンジくん褒めまくり空間好き……本編も光が差し込んできたから心穏やかに読める……かわいい………
- 48二次元好きの匿名さん23/02/04(土) 21:57:36
これもしかしてピラフは原作サンジくんがギンさんに振る舞ったやつだったりスープはアニオリナバロンの海軍基地のやつだったりケーキのクリームはシムシムホイップイメージだったりします…⁇
料理の描写は凄いしサンジくんが楽しそうだし褒められて照れてるのとてもかわいい…
料理人さんたちもそれぞれサンジくんを認めて頼って尊敬して信頼してる感じがとても良い - 49123/02/04(土) 22:15:29
幕間⑦-1
「サンジ、おれたちのスーパーな船!!サニー号を見てみないか?」
腰に手を当て仁王立ちしたフランキーが、サングラスの奥の瞳を輝かせた。
「え、いいのか!?見たい!」
フランキーの言葉にサンジも同じように瞳を輝かせた。
「あ、でもおれそろそろ厨房に戻らないといけないんだよ……」
「なら、船の中は今度案内するわよ。だから、今日はサニーの外観だけでも見てみない?」
しょぼんと肩を下げたサンジにナミが明るく声をかける。
「そうね、それなら時間も大丈夫なんじゃないかしら?」
紅茶のカップを置き、ロビンも優しく微笑む。
「サンジ、おれ達のサニーはすげェぞ!さっきフランキーも言ってたけどよ、サニーは空飛ぶからな!!」
「コーラでだよね?そんなとんでもない船があるだなんて世の中広いなあ」
「巨大電伝虫の上にある城もなかなかとんでもないけどな!」
目を閉じて真剣そうに唸ったサンジにウソップが手を胸の前でチョップしてツッコミを入れた。 - 50123/02/04(土) 23:01:43
幕間⑦-2
『サニー号はこちら』と書かれた小さな旗をフリフリと振るフランキーを先頭に、サンジ達はサニー号が停泊しているドックへと向かった。
電伝虫の上、建物の内部にあるドックは暗い。人の気配を感知し、明るくなったドック内にライオンの形をした船首が現れる。
サニーは目がチョッパーのようにくりくりとしている。
「芝生がある!サニー号ってすごい大きくて広いんだな」
「フランキーとウソップが色々な道具や部屋を作ってくれるから、船の中もとっても素敵なのよ」
「へぇ〜!!今日中が見れないのが残念だよ」
「船内を案内するときはおれに任せろ!サニーのすごいところを余すことなく語るぜ!」
ぐっと親指を突き立てフランキーが歯を見せて笑った。
「サニーに乗る前はおれたちメリーっていう船に乗ってたんだぜ。ゴート船なんだが、メリーは強くて最高の船だったんだ!!明日メリーの勇姿もおれに話させてくれ!」
ウソップが懐かしむような瞳でそう語った。
「ありがとう、楽しみにしてるよ!そうだ、サニー号には冷蔵庫はあるのか?」
「あるわよ、鍵付きのがね。うちには盗み食いをするやつが多いから食糧管理はもう大変で大変で」
ナミがちょいちょいとルフィとウソップ、そしてチョッパーを指さした。
「鍵付きかー!すごいなあ、いや大変だからすごいって言っていいのか分からないけど……」
硬直するルフィ達を見てサンジが苦笑いを浮かべた。
「お前が持ってるやつは違うのか?」
ゾロの言葉にサンジは小さく頷く。
「うん。たまにおれの冷蔵庫の中のもの全部ぐちゃぐちゃにされる時があって……。まあ鍵があっても多分壊されるけど、鍵があったらちょっとは違うかもなあ」
「そんな、酷いことをする人がいるんですか……」
「……多分それもおれが悪いんだけどね」
ブルックが心配そうにサンジを見つめる。
「……よくわかんねェけど、おれはサンジは悪くねェと思うぞ」
ルフィは口元に笑みを浮かべ、じっと黒い瞳でサンジを見つめた。
「……うん。……ありがとう、ルフィ」
ぐるりとサニー号の周りをまわっているとやがて厨房に戻る時間になった。
「楽しかったよ、ありがとうみんな!船内を見るのが楽しみだな」
厨房へと戻る前にサンジはワクワクとした顔でそう言うと、ルフィ達に手を振り厨房へと歩いて行った。 - 51123/02/04(土) 23:02:53
今回の幕間はここで終わりです
明日からはまた本編を書いていきたいと思います
保守よろしくお願いします! - 52二次元好きの匿名さん23/02/04(土) 23:13:59
今回の幕間も最高でした‼︎
料理に携わるサンジくんもサニーを見て目を輝かせるサンジくんも最高だ
そして次回は本編‼︎
とうとうニスロクくん大暴れらしいしなんだかんだでゼフさんの足は怪我してないし未だ一味はサンジくんの年齢もこれまで行われて来た虐待の酷さも、何より10年以上牢屋にいたことも実は知らないからまだまだ不穏要素はあるけど前回サンジくんが暴走状態でなく自分の意思で悪魔風脚を使ってたからきっとサンジくんは明るい未来に向かって不安や不穏な空気を蹴り開けるはず…‼︎ - 53二次元好きの匿名さん23/02/05(日) 07:05:03
そういえばこのサンジくんは海に出たことこそないけど海上国家という家の性質上文字通りずっと海の上で生活してるんだな
原作サンジくんですらちょこちょこ島に上陸したりカマバッカの陸地で2年生活してるのに
フィルムブルーのサンジくん全く陸地を踏んだことがない男…なんか良いな
そりゃ海の底で眠るニスロクくんも海で生活するサンジくんに興味を持ちますわ… - 54二次元好きの匿名さん23/02/05(日) 07:05:27
亀っていうけど普通に筆早くない?すごい
毎日更新ありがとうございます - 55二次元好きの匿名さん23/02/05(日) 09:01:56
旗振ってるフランキーかわいい…!!
- 56二次元好きの匿名さん23/02/05(日) 11:56:43
このシリーズ本編も幕間も凄いおもしろい
読み応えある - 57二次元好きの匿名さん23/02/05(日) 13:47:54
旗持ってるフランキーのシーンで何故か某もしもなツアーズを思い出したので旗の色は自分の脳内では赤でした
幕間も面白かったです本編の続きも楽しみにしてます! - 58二次元好きの匿名さん23/02/05(日) 16:16:11
ほ
か゛わ゛い゛いな゛あ゛゛ - 59123/02/05(日) 20:48:22
感想と保守ありがとうございます!!
今回から原作程度ですが痛い描写が入ります - 60123/02/05(日) 21:16:24
素早く地を蹴るとサンジは次々に兵士達を蹴り飛ばした。
チリチリと炎が小さくなり、やがて消える。
「サンジ…!!!貴様、我々ジェルマの邪魔をするつもりか」
ジャッジが憎しげにサンジをギロリと睨みつけた。
サンジはジャッジを真っ直ぐに見据えたまま広場の中心へと足を向ける。
ジャッジは眉間に皺を寄せ拳を握り締め、槍を構えた。
槍をビリビリと電磁波が包み込む。
サンジはそれを見てもなお足を止めることはなかった。
その時、レイジュは城の奥からこちらへと走ってくる人影を捉えた。
ーーあれは……。
「急いでここから離れて!!!!」
端正な顔に焦りを浮かべてロビンが叫んだ。
ルフィ達は冷静沈着なロビンの普段とは違うその様子に、すぐさまブルーホールで何かが起きたことを察する。
「おい、ロビン一体何が_________」
表情を固くしたフランキーが言い終わる前に、目の前を何かがとてつもない速さで通り過ぎていった。
風圧で服が飜る。
ごうと風を切る音が過ぎ去り、続けて轟音と共に城壁が崩れ去った。
何が起きたのかを皆が理解する前に、信じられないものを見たような悲痛な声が聞こえた。
「ッ…!!な、なんで……?
ーーゼフさん!!!!」 - 61123/02/05(日) 21:41:32
ーー父親。
血縁関係上は父親である人から見捨てられた。
いや、とっくの昔に見捨てられていたのだ。葬式まであげておれは生きながらに殺されていたんだから。
レイジュに自分の葬式の話を聞いた時は夢を見ているのだと思った。
だって、おれは死んでなんかいないのに。
それでも"世界"の中でおれは死んだことになっていて、じゃあ今ここにいるおれは何なんだろう。
生きても死んでもない存在。そんな曖昧なものになるのなら、いっそ父親の望む通り透明になって消えてしまいたかった。
褒められたいとも思っていたし、会いたくないとも思っていた。あの地下牢で酷く恨んだ日もあった。けれど、それでも父親だと思っていた。
そんな人からはっきりとおれは縁を切られた。
予想はできたことだったけれど、どうしようもなく悲しくて涙が溢れる。
でも、これでおれはゼフさんの子供だとなんの後ろめたさもなく言える。
それは何よりも嬉しいことだった。
2日も一緒に過ごしてないような人間を息子だと言ってくれるゼフさんがとても、眩しかった。
だから、ゼフさんのためにも地下牢にいるあいつのためにもケリをつけようと思ったのだ。
ジャッジにもイチジ達にもそれが世界から悪とされることでも、成し遂げたいことが貫きたい意志があるのだろう。それに、おれ一人で300年前から続くこの国を絡めとる鎖を解くことなどできない。
国を変えようなど思っていない。
せめて、復讐のために関係のない人まで巻き込むような計画だけでも止めようと思った。
ーー父だった人に別れを告げる事で。 - 62123/02/05(日) 22:21:42
ロビンちゃんの叫ぶ声が聞こえた。
ほぼ同時にジャッジの背後を右から左へと何が通り過ぎていくのが見えた。
風を切る音がする。
サンジに大きな影が覆い被さった。
その影に引きつけられるように首をあげて空を見上げる。
巨大な物体が回転しながらサンジ目掛けて降ってくるのが見えた。
状況が理解できず、思わず体が硬直する。
どんどんと形が大きくなる。
あっと思ったその時、強い衝撃が脇腹を襲った。
今まで見たことないような顔で、ゼフさんがおれを蹴り飛ばした。
おれを助けるために伸ばした脚が無惨にも千切れる。
サンジの目の前で赤が花びらのように宙を舞う。
世界が音をなくし、動きを止めたように思えた。
自分の鼓動だけがやけに大きく聞こえて、赤が重力に従ってゆっくりと地面に落ちていく様子が目に焼き付く。
呆然とするサンジの背後で地面に突き刺さり回転を止めたのは巨大な歯車だった。
そしてゼフさんの大事な左脚は膝の下からぼとりと地に落ちた。
喉から声にならない引き攣った音が漏れる。
あ、と漸く出た声と共にゆるゆると腕を持ち上げて、ゼフへとサンジは手を伸ばす。
痛みに顔を歪め、額に大粒の汗をかいたゼフが揺れる瞳でサンジを捉えた。
「……おい、自分のせいだとか馬鹿なことを考えるんじゃねェぞ。グッ……!!いいか、これはッ、おれが選んだことだ。おれの選択を、てめェが背負うな、後悔するなッ……!!否定するな!!わかったか、チビナス……!!」
その言葉にゼフの脚を見つめていたサンジ弾かれるように顔を上げる。
ゼフの瞳には強い光が宿っている。
ゼフの覚悟と腹に括り付けられた信念を理解してしまったら、サンジには立ち止まることなどできなかった。 - 63二次元好きの匿名さん23/02/05(日) 22:37:06
あ゛あ゛...
- 64二次元好きの匿名さん23/02/05(日) 22:39:28
うわぁぁぁぁゼフさん…‼︎‼︎‼︎
- 65二次元好きの匿名さん23/02/05(日) 22:44:46
あぁ...
- 66123/02/05(日) 22:53:57
「チョッパー!!!」
状況を瞬時に理解したルフィが叫ぶ。
チョッパーはゼフが腰に巻いていた布を取ると、すぐに傷口を止血する。
「ロビン、何があったの!?」
ナミの問いかけにロビンは静かに口を開いた。
「ーーニスロク、そう呼ばれていたものが動き始めたの。海底に沈んでいた巨大な"兵器"が」
ロビンは表情を固くしたまま海底で見たもののこと、そして古代文字で書かれていた内容を語った。
「じゃあ、この歯車もそのニスロクの仕業だってのか?」
「えぇ、ニスロク本体が海に消えた途端その歯車達が動き始めたの。そして、今ここにある」
「……父上、我々の戦力は既にかなりの数を消耗している。それに加えてこの予想だにしなかった事態、残念だが作戦を実行できるような状況じゃないだろう」
ジャッジの側に歩み寄り、イチジは冷静にそう告げた。
ジャッジは悔しそうに唇を噛みしめると、絞り出すようにジェルマの者達へと指示を出した。
「作戦は、中止する」
その言葉によって裏門で戦っていた兵士達の動きも止まる。
今がチャンスだと、人々は互いに助け合いながら脱出するための船へと乗り込んでいく。
「お兄ちゃん!!!助けてくれてありがとう!!お兄ちゃんは最高に優しくて強くてかっこいい、世界一の料理人しんだよ!!」
少女が叫ぶ声が聞こえた。
その声に他の人達からもサンジに石を投げたことへの謝罪や料理を提供してくれたこと、助けてくれたことへの感謝の声が続く。
サンジはそれを再び滲み始めた視界で見送った。 - 67123/02/05(日) 22:57:51
「……おれのせいだ」
「どういうことだよ、サンジ」
「頭の中で声がしたんだ。名を呼べと。そうすればおれの願いが叶ってニスロクは力を得ると言ってた。それで、おれは名を呼んだ。……おれがニスロクを目覚めさせたんだ」
サンジが悔しそうに呟く。それを聞いてゼフは叱りつけようと口を開いた。
「……おい、チビナス______」
「だからッ!!!!おれがニスロクを止める。今ならおれはソラの力も使える気がするんだ」
ソラの力、その言葉にレイジュは目を見開いた。
「でも、おれはまだ弱い。こんな大きな歯車を操れる、どんなやつかも分からないニスロクと一人で戦えるような人間じゃない。……だから、ルフィ達に助けて欲しいんだ。おれと一緒に戦って欲しい」
そう言ってサンジはルフィ達に向かって頭を下げた。
「そんなの当たり前だろ、サンジ!!」
ルフィが歯を見せて笑う。
「そうよ、頭なんか下げないでよサンジ君。私達サンジ君に美味しいご飯食べさせてもらって、本当に感謝してるの」
「ニスロクは願いを叶える、と言っていたそうだけど今のところ何もサンジの願いは叶えられてるように思えないわ。詐欺ね、私そういう人とても嫌いなの」
ロビンの素直な言葉に苦笑いが溢れる。
「……ソラの力ってのには正直惹かれる。それに、おれは麦わら屋に後れをとるのだけはごめんだ」
「おうおう!おれ達がいれば、百人力だぜサンジ!!」
「いや、二千人力だな」
サンジはルフィ達の顔を見渡すと目元をゴシゴシと拭った。
「……ありがとう。本当にッ、ありがとう…!!」
海が割れるような音が響き、巨大な影がルフィ達を覆い潰す。
ルフィは麦わら帽子を手で押さえると、影へと向き直った。
「……いくぞ、おまえら!!!!」
「「「おう!!!!」」」 - 68123/02/05(日) 22:58:16
今日はここまで
保守のご協力よろしくお願いします! - 69二次元好きの匿名さん23/02/05(日) 23:08:29
ゼフの脚はやっぱり……
でも原作でサンジに夢を話して希望を持たせたのと同じようにメンタルボロボロにしてしまったけどメンタルケアもバッチリなゼフさすが
ニスロク確かに約束守ってないな‼︎みんなとにかくがんばれ……‼︎終盤になって石碑の謎もニスロクの力も明らかになりそうで楽しみです - 70二次元好きの匿名さん23/02/05(日) 23:22:10
ニスロクとうとう来たか…‼︎
サンジくんと一味+ローさんの戦闘は楽しみだけどまだまだニスロクについては分からないこともしも多いからな…
みんな頑張ってくれ! - 71二次元好きの匿名さん23/02/05(日) 23:35:03
原作サンジほど騎士道精神が染み付いてなくて子どもらしさが残ってるお陰でサンジくんが素直に女性陣を含めて仲間を頼れるのが良かった
ニスロク歯車飛ばしてくるとか怖すぎるんだけど何に動かされてるんだろう…トットムジカのことを考えると色々と想像が膨らむ - 72二次元好きの匿名さん23/02/05(日) 23:44:31
なんかもう全部好きです……
今回の話好きポイントが多すぎて語りきれない - 73二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 07:36:23
サンジくんがみんなに頼り始めたところで希望が見え始めたけどジャッジはこのまま謝罪もなく退場なんだろうか…それとも全部終わったらサンジくんから決別をきりだすのだろうか
もしこれニスロクくん喋れたらサンジが今まで家族から暴力受けてたこととか鉄仮面つけられて監禁されてたこととか叶わない夢を抱えて14年間しんだように牢屋で暮らしてたこととか一味たちの前でぶちまけ展開くるんじゃない⁇
もしかしてその時に皆んなはサンジくんが21歳だと知ったりして…
レイジュさんと一味がちょっと曇りそう…
ちょいちょい不安はあるけど、でも皆んなと共に戦うサンジくんならどんな困難も超えてくれると信じてます…‼︎ - 74二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 13:35:42
ソラの力に心惹かれるローさんがほんとずっと歪みなくヲタクしてて好き
最後のルフィの台詞、REDの「野郎ども、気合い入れろ!」を彷彿とさせて良いな… - 75123/02/06(月) 21:29:33
感想ありがとうございます!
少しですが続きを書いていきたいと思います - 76123/02/06(月) 21:50:33
対峙した巨大な影は異様な見た目をしていた。
ロビンの説明通りではあるのだが、背中には黒い翼が生え、その間から炎が轟々と燃え盛っている。
ゾロはその姿にワノ国で戦った男のことを思い出した。
青いマントのような部分は炎だろうか、メラメラと燃え盛っているように見える。
そして、先程攻撃を仕掛けてきた歯車がニスロク本体を守るようにぐるぐると動き回っている。
頭につけられた仮面の下から見える瞳は暗く沈んでいる。
その見た目にレイジュは狼狽した。
ほんの少し前までのサンジの姿とよく似ていたのだ。
「撤退するぞ」
背後でジャッジがイチジ達に命令するのが聞こえた。
その声にレイジュは表情を崩さず瞳だけを父親に向ける。
「……レイジュ、お前はこの城を片付けてから帰還しろ。やり方はお前に任せる」
その言葉にレイジュは僅かに目を見開いた。
予想外の命令だった。
しかし、この戦いで海軍や海賊と衝突し、ジェルマは相当の数の兵士を失っている。
それに、これだけの騒ぎを起こせば流石に世界政府からお咎め無しとはいかないだろう。
表情からは読み取れないが父も参っているのかもしれない。自分が蒔いた種なのだけれど。
「わかったわ。私に任せて、お父様」
レイジュの前でサンジがこちらを振り向く。
立ち込める雲で顔が翳り、表情があまりわからない。
ニスロクの赤い炎によって逆光になっているから尚更だ。
サンジはジャッジを真っ直ぐに見つめると、静かに口を開いた。
「……おれは言われた通り、もうあんたを父親だとは思わないぞ、ヴィンスモーク・ジャッジ。でも、あんたは21年間確かにおれの父親だったんだ。……それもおれは忘れない。
…………さようなら」 - 77123/02/06(月) 22:17:46
ぶわりと風が強く吹いて雲が一瞬途切れる。
僅かな光に照らされたサンジの顔はとても穏やかだった。
その表情にジャッジは面食らった。
ギリと槍を強く握り締めると、黙って踵を返す。
それに続いてイチジ達も背を向けた。
「おれ達が助けてやったんだ、死ぬんじゃねェぞ出来損ない!」
ニジはニヤリと食えない笑みを浮かべ、ひらりと手を振った。
「そうだな。正直サンジがどうなろうと知ったことじゃないが、おれ達が費やした労力分は生きてもらわねェと働き損ってやつだ」
なぁ、とヨンジがイチジに同意を求める。
「あぁ。残念なことにお前から報酬は貰えそうにないからな。なら、その巨大な奴をどうにかして、おれ達が撤退する時間ぐらい稼いでみせろ」
そう言い残すとイチジ達はシューズで飛び上がり、待機している城へと空を飛んでいった。
「……………」
その後ろ姿をサンジは複雑な表情で見送った。
パンと頰を叩いて気持ちを切り替える。
「レイジュはそこで見てて。もう迷惑はかけたくないんだ」
「あのね、私はあんたに心配されるほど弱くないわよ。……でも、そうね。私はあなたのお父さんを守るわ」
レイジュはチョッパーに応急処置を施され、壁に背を預けているゼフを見遣った。
サンジも同じように視線をゼフへと逸らし、強く頷いた。
「うん。あの人を頼んだよ、レイジュ」
「任せて」
パチリとウインクをすると、レイジュはゼフの元へと駆けていった。
「くるぞ!!!」
ウソップが声を上げる。
ニスロクは大きな腕を天へと伸ばし、そしてルフィ達へと向ける。
ニスロクの掌で巻き起こった炎の渦がルフィ達へと降りかかった。 - 78123/02/06(月) 22:53:52
抜刀したゾロがフランキーの肩を借りると、炎の塊を真っ二つに斬り捨てた。
ジンベエも水を操ると、炎に的確にぶつけていく。
それを見てフランキーがニスロク本体にビームを放つ。しかし、それは歯車によって防がれた。
そして、ギュインという嫌な音共に歯車がこちらへと襲いかかってきた。
ルフィが歯車の横腹に拳を叩き込んで吹っ飛ばすが、回転する勢いに押され拳が赤く腫れる。
「ッ!!」
「ルフィ!!」
「大丈夫だ!心配すんなチョッパー!!」
ローがROOMを展開するが、技を仕掛ける前に歯車は方向を変え、ナミへと迫った。
「ちょ、なんでこっちにくるのよ!!ーーゼウス!!」
雷霆を叩き込むことでどうにか歯車を沈めるが、歯車を壊したところでニスロクにはダメージが入らないらしい。
先程と変わらない様子でこちらを見下ろしている。
「くそう、あの歯車が厄介だなァ」
「どうにかして本体を狙うしか手はなさそうじゃのう」
ロビンが無数の手を咲かせ、ニスロクの手を雁字搦めにするがびくともしない。
「斬りゃいいんだろ」
ゾロが再び飛び上がり、ニスロクの伸ばした手を駆け上がる。
そしてその胸元へと斬撃を放つ。
「ーーッ!?」
硬い。
どうやら本当にこいつはあの男によく似た作りをしているらしい。ただの兵器の硬さじゃない。
「ゾロの攻撃でもびくともしねェのかよ!!」
「……あいつの炎が途切れれば、勝機がある」
手拭いをまきながら、そう答えたらゾロにいや、とサンジが答えた。
「多分、あの炎は消えない」 - 79123/02/06(月) 22:59:58
「サンジ、どうしてそう思うのかしら」
ロビンの問いかけにサンジはこれ"かせつ"って言うやつかもしれないんだけど、と前置きをする。
「あいつは自分の意思で燃え続けてる気がするんだ。そういう作りなんじゃなくて、自分の心で燃えてる」
「心?兵器に心があるっていうのか」
ローの言葉にサンジが頷く。
「あいつはおれに声をかけてきた。あれはあいつ自身の言葉だと思う。きっと、あいつには心がある。
……昔、付喪神という考え方があるって本で読んだことがある。長く使われた物には魂が宿るっていう考え方。……ごめん、おれの感覚でしかないんだけど」
「いや、おそらくテメェの言ってることは正しい。全く帰る気配がねェ。あいつと違ってこのデカいのは炎を消す必要がないんだろう」
キングという男と戦い何者であるのかを知っているのはゾロだけだ。そのゾロが言うのなら間違いないのだろう。
「………なら、おれ達どうしたらいいんだ?」
チョッパーの声に皆が押し黙る。
負けるとは微塵も思っていないが、このままだと勝機が見えない。
あの硬さを打ち破ることができる方法。
歯車が浮いている仕組みも、そもそもニスロクが何を原動力として動いているのかも分からない。
物が動くにはサニー号のコーラのように燃料が必要なはずなのだ。
「ーー石碑。あの石碑の黒く塗られた部分に書かれていることが分かれば、弱点も分かるかもしれないわ」
ロビンの言葉にルフィが口元に笑みを浮かべた。 - 80123/02/06(月) 23:00:47
今日はここまでです
また保守のご協力よろしくお願いします - 81二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 23:36:32
ジャッジとの決別とても良い…
もしかしたら金髪に穏やかな表情でジャッジはソラさんを思い出したのかもしれないし、それを明言しないのがまた堪らん…
そしてニスロク戦めちゃくちゃ好きです
サンジくんの仮説に基づいてこれからニスロクの心と対峙していくのかな…
これからの展開が楽しみ - 82二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 08:19:51
ゾロの脳裏にルナーリア過ぎるの良いな
- 83123/02/07(火) 16:32:10
今日は書く時間が取れそうもないので引き続き保守のご協力よろしくお願いします…!
ちなみにBLUEの時間軸はワノ国後ですが話の都合上ハートの海賊団と同盟を組んだままです - 84二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 19:58:16
お疲れ様です…‼︎
保守の件了解です
ワノ国後だから対ルナーリア戦が過ぎるゾロさんとてもいいです - 85二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 20:13:19
ワノ国後設定ということはもしかして……ルフィが…!?
めっちゃ楽しみ - 86二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 22:45:53
ニスロクくんはソラの時代から使われたロボットだし、話しかけてくる意思がある付喪神説はあるな…
でもあんまり良い霊じゃなさそうというか猿の手みたいな願い主の意図しない形で願いを叶える歪んだ悪魔感がある - 87二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 03:10:38
このサンジくん本で得た情報しか知らなさそうでかわいいな………
新聞とか読んでるんだろうか? - 88二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 07:32:26
一気に読んでしまった…続きも楽しみの保守
- 89二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 16:15:31
石碑の黒塗り部分やニスロクくんの大暴れ具合が今後どんな感じで展開していくのか楽しみ
- 90123/02/08(水) 21:04:53
- 91123/02/08(水) 21:21:56
「わしが行こう。映像電伝虫で石碑を映せばいいのかのう?」
「ええ。頼んだわ親分さん」
ロビンが映像電伝虫とロビン側からの連絡用に小型電伝虫を手渡す。
そしてロビンは人魚族の少年から聞いた場所をジンベエに伝える。
「ヨホホホ!ジンベエさん、敵さんは私達が引きつけますよ。ですから、石碑よろしくお願いしますね」
そう言ったブルックにジンベエはにかりと笑った。
「本当に頼もしい仲間達じゃなあ!!頼んだぞ!」
映像電伝虫と小型電伝虫を懐に仕舞い込んだジンベエが、城を動かす巨大電伝虫の頭部へと走った。
それを見てルフィ達も動き始める。
植物系はメラメラと燃え上がる炎に燃やされるだろうと判断し、ウソップは火薬星をニスロクの右肩に撃ち込む。
浮遊していた歯車の1つがウソップの攻撃を受けようと動いたのを見逃さず、続け様にフランキーがビームをニスロクの左肩と腹部に撃ち込んだ。
爆発音がして、煙が立ち上る。
しかし、ニスロクに攻撃が通っているような感覚はない。
黒い煙の中から赤い炎とニスロクの青い瞳だけが光って見えた。
「………当てたはいいが、やっぱり効いてねェよな〜!!」
「アーウ!!なんて硬さだ!!どんな技術が使われてやがるのか気になるぜ、ったく!」 - 92123/02/08(水) 21:51:34
「いいぞ、ウソップ!!フランキー!!」
煙の中から姿を現したルフィとローが左から、ゾロとブルックが右側からそれぞれ打撃と斬撃を飛ばして攻撃する。
飛んでくる歯車はゼウスを従えたナミや全身を咲かせたロビン、そして暴走形態に変化したチョッパーが服を切り裂かれながらも城へとぶつかる前に停止させた。
ニスロクは青い瞳を僅かに動かすと、頭上に燃え盛る炎を集中させると左右のルフィ達へと向けた。
その隙にジンベエが電伝虫に頭を下げさせ海に飛び込もうとした。
後ろから声がかかる。
「ジンベエ、おれも行くよ」
振り向くとマントを脱ぎ捨てたサンジが立っていた。
「サンジ、泳げるのか」
「今なら。それに……おれが行かないとダメな気がするんだ」
「……うむ。サンジ、その感覚はきっと正しいじゃろう。行こう!!」
海へと飛び込んだサンジを見てレイジュが思わず腰上げる。
「え!?あの子、泳げないのに……!!」
「……あいつだっていつまでもガキじゃねェだろうよ。それに、なんか力があるんだろう、今のあいつには」
ゼフの言葉にレイジュは小さく声を漏らした。
「そうね。ふふ、本当に……サンジのお父さんみたいね。私より、サンジのこと分かってるんじゃないかしら」
「馬鹿言え、あいつのことをずっと守ってきたのはお前だろうが」
そう言うとゼフは一つ苦しそうな息を吐く。
レイジュはゼフの足をできるだけ血が溢れないように固定する。
「………私はサンジのことを守れてたのかしら」
「守れてなきゃ、あいつはあんな馬鹿正直に優しい奴にゃ育ってねェだろう。丁寧に守りすぎなくれェだ」
レイジュは小さく震える手をぎゅうと握りしめた。 - 93123/02/08(水) 22:34:12
空が曇り、陽の光が差し込まない海中を進む。
海は青、と言うよりも黒色に沈んでいたがサンジにはどこか懐かしいような気がした。
小さい頃は幾度も溺れてトラウマになっていたけれど、檻の中で海に憧れているうちにその恐怖心も無くなっていたのかもしれない。
ジンベエがロビンから聞いたニスロクが眠っていた場所はすぐに分かった。
大きな穴が空いていたのだ。
ジンベエは石碑の正面に回り、映像電伝虫を向ける。やはり、石碑の下部は黒く塗りつぶされている。
ジンベエが手で撫でても落ちることはなかった。
「やはりなんと書いてあるのか読めんのう」
「えぇ……でも、確かに文字は書いてあるの。きっと、そこに重要なことが書かれているはずなのだけれど……」
ジンベエが懐に忍ばせた小型電伝虫からはロビンの声と共に轟音や鉄を切るような音が聞こえてくる。
「サンジ、苦しくはないか」
「うん。大丈夫、不思議と喋れるし息もできるんだよ」
「……それが、ソラの力なのかしら」
「分からないけど、そんな気がする。海にいるとすごく落ち着くんだ」
「そのまま海にいたらダメよ。ゾロみたいに迷子にならないようにちゃんと帰ってきてね」
明るい声音でそう言ったロビンに、サンジはもちろんちゃんと迷子にならずに帰るよ!おれは大人だからね!と笑いを含んだ声で返した。
ふわり。
ふとサンジの目に石碑が白く光ったように見えた。
「え…?」
「どうしたんじゃ、サンジ」
小さく溢れた声に振り返ったジンベエにサンジは石碑を指差した。
「今、この石碑光らなかったか…?」
「いや、わしにはそうは見えんかったが…。ロビン、どうじゃ」
「私にも光ったようには見えなかったわ。でも、サンジあなたはニスロクと"つながり"ができてる。何かあるのかもしれない」
ロビンの言葉にサンジはごくりと唾を飲み込むと、石碑へと手を伸ばした。 - 94123/02/08(水) 22:46:20
サンジは石碑の黒い部分をなぞるようにゆっくりと触れた。
「……!?なんと……」
すると、まるで黒くなっていたのが嘘のようにサンジの手が触れた場所から黒が剥がれ、古代文字が現れていく。
「これ……!!」
「サンジ、そのまま続けて」
「うん、分かった」
海底にしゃがみ、サンジは大きな石碑の1番下まで手を滑らせた。
再びジンベエが石碑を映す。
「読めるか?」
「えぇ。…………」
ロビンは映し出された石碑の文字に目を走らせた。
我は海に愛されし者
我は光に嫌われし者
我は造られし者
望まれて生まれ 望まれなくなった者
我を動かすのは海なり
我を止めるのはそらの光なり
「そら……」
ロビンは厚い雲に覆われ、青を隠した空を見上げた。 - 95123/02/08(水) 22:46:58
今回はここまでです
保守よろしくお願いします - 96二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 22:49:32
そらの光…
太陽、ニカ様…⁇
ひぇぇぇ更新お疲れ様です!
気になるところで終わって続きが楽しみです…‼︎ - 97二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 04:13:29
そらの光…太陽神ニカと海の戦士ソラでどっちとも取れる…それとも、どちらでもある?
「望まれて生まれ 望まれなくなった者」に
感情がなくなるよう改造を施されたけど、ソラさんの抵抗でジャッジ目線[1人だけ感情のある失敗作]になってしまったサンジくんもかかってるような…
続きが気になる!!! - 98二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 08:11:16
海が落ち着くサンジくん…桜に攫われるじゃないけど海に溶けちゃわないように、ロビンちゃんが「帰ってきてね」って言ってあげるの良いな…
ニスロクくん、ある程度ダメージが溜まると
「たすけて」「くらいよ」「こわいよ」「おとうさん」「よわくうまれてごめんなさい」
とか言い出しそうだな…
言葉の意味がわかってるわけではないけどずっと海にいたならサンジくんの声が聞こえてる筈だし
レイジュさんのメンタルが削られそう - 99123/02/09(木) 17:36:26
あとはニスロクを倒すだけなのですが忙しくてなかなか書く時間が取れないため、しばらくは隔日更新になるかと思います
保守よろしくお願いします! - 100二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 18:38:19
どんなラストになるのか楽しみすぎる
- 101二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 19:30:06
このサンジくん一味に入ることになったら誰かのボンクに潜り込んできそうでかわいい…エッグヘッドに行く前にルフィ達とたくさん楽しいことしてほしいな……
- 102二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 20:36:07
隔日了解です
スレ主様お忙しい中ありがとうございます - 103二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 20:51:55
- 104二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 23:20:39
- 105二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 00:20:52
サンジの年齢や育ちに関しては、家族から虐待されてるとか195センチのゴリラのヨンジが「弟」とかの節々で歪さがわかりつつも詳しく説明はされてなかったと思うけど、これは言われないと21歳だとなかなか分からんなあ
- 106二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 01:37:33
今後仲間になって21歳って判明した時の他一味の反応が楽しみなんだ
特に同い年って分かったゾロはどんな反応するかな - 107二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 08:07:31
保守
- 108二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 15:18:57
このサンジくん体重決まってたりするのかな?
ゾロが軽いって感じら描写があったけど本当に軽そう強風が吹いたら飛んでいきそう - 109123/02/10(金) 20:57:55
- 110123/02/10(金) 21:20:20
「そらの光ということは太陽の光ということか?」
「恐らくは。そして、ニスロクを動かしている力は海水」
ロビンの言葉にウソップが嘘だろ!?と叫ぶ声が聞こえた。
「海水なんて無限にあるぞ!どうやって断てばいいんだよ」
「それに、今空は曇ってる。晴れるとは思えないわ」
空を見上げてナミがそう言った。天候を読むのに長けている彼女の言葉に偽りはない。
「ナミがそう思うならよっぽどのことがねェ限り太陽は拝めそうにねェな…」
フランキーが悔しさを滲ませる。
「……ありがとうサンジ、親分さん。まだニスロクの注意は引きつけられてるわ。今のうちに戻ってきて」
「ああ分かった」
行こう、そうジンベエに促されてサンジはこくりと頷いた。
少し海面へと進んだところで、小さなウミガメが近寄ってきた。
苦しそうにしている。
ー息継ぎができていないのかな
子供のウミガメは大人と違い頻繁に息継ぎをする必要がある。
よく見るとウミガメはヒレを怪我しているようだった。薄らと赤い色が海水に混じっては消えていく。
ウミガメを海面まで引き上げようとサンジはウミガメに触れた。
すると、ふわりとウミガメの周りだけまるで何かに覆われたかのように海水が消えた。
ウミガメは酸素を取り込むとサンジに手を伸ばして触れてくる。
裂傷の走るヒレに触れると何もなかったかのように綺麗なヒレに戻った。
ウミガメは嬉しそうにくるくるとその場を回った。
サンジにすりすりと頭を寄せる。
まるで、ありがとうと言っているようだった。
そして、ウミガメは元気に泳ぎ去っていった。
「ーーこれって……」
サンジはほのかに熱を帯びる手をじっと見つめた。 - 111123/02/10(金) 22:09:02
「やろうと思えばおれ達を殺すつもりで戦えるはずだってのに、やけにおとなしいな」
手拭いを頭に巻いたゾロが怪訝そうな顔でニスロクを睨んだ。
「確かに…おれ達手加減されてるのか……?」
ぐらりと揺れて地面に倒れ伏した歯車を見つめてチョッパーが呟いた。
「……こいつ、倒して欲しいのかもしれねェ」
「それはどういう意味だ」
ルフィの言葉に愛刀で炎を切り裂いたローが問いかける。
「いやあ、おれもサンジと一緒でよくわかんねェけど、なんかそんなこと言ってるような気がするんだよな」
「……いや、海に愛された海の戦士ソラの力をあいつが得ているのならば、どうやらソラと関係あるらしいこいつと通じ合うものがあってもおかしくない。それに麦わら屋、お前の勘はそれなりに信用できる。それなりに」
「なんで2回言ったんだよトラ男!失敬だな!」
ブーブーと文句を言うルフィをうるせえとローは一蹴した。
ザブンと音がして海からジンベエが戻っきた。
ジンベエの後からタンタンと軽く空を蹴るようにしてサンジも戻ってくる。
「濡れちゃたけれどニスロクが燃えてるからちょうど良いわね」
そう言ったロビンに確かにのう!と言ってジンベエが豪快に笑った。
サンジもハハと笑いを溢す。
サンジはニスロクに視線を移すと、一つだけ見える青い瞳をじっと見つめた。
牢に入れられていた出来損ないにそっくりな見た目をしたその姿はなんだか寂しそうに思えた。
ぶわりとニスロクの羽が膨らみ、炎が放たれる。城を飛び越え避難船がいる方へと飛んで行った炎をルフィとジンベエが消し去る。
2人が広場へと降り立つのを見てサンジが口を開いた。
「ルフィ、みんな、ニスロクを倒す方法が分かったかもしれないんだ」
そう切り出したサンジに止まない攻撃をいなしながら皆が耳を傾ける。
「ヨホホホ!!それはサンジさんお手柄ですね!」
「よし!!サンジ、お前がおれ達に指示を出してくれ。お前に任せる!!」
ニカリと笑ったルフィに続いてゾロ達もサンジへと視線を送る。それにサンジは力強く頷いた。 - 112123/02/10(金) 22:32:31
「ニスロクは海水を原動力にして動いてる。だからそれを断つことが最優先だと思うんだ」
「でも、海の水を無くすなんてできるの?」
ナミの言葉にサンジはうんと頷いた。
「おれがニスロクに触れる。そうすればニスロクの周囲の海水だけ消し去ることができるはずなんだ。ローの能力と似てるのかな?」
ローがROOMと言っていた技を頭に思い浮かべたサンジはそれに、と付け加えた。
「さっき、おれはウミガメに触れたんだ。息ができなくて辛そうだったから酸素をあげないといけないと思ったんだ、そうしたらウミガメの周りだけ海が消えた」
「確かに、その力を使えばニスロクの周りの海水を断ち切ることができるのう」
サンジを振り返ったローが眉間に皺を寄せる。
「それはソラの力か?しかし、ソラはそんなことは出来なかったはずだが…」
「今のおれが使えるのは海の戦士ソラの力じゃないのかもしれない。ソラの願い……おれの願った力が使えてるんだ」
夢みたいな話だけどと言い淀んだサンジにロビンがいいえ、と優しく話しかけた。
「人は願うことで力を増すことができる。それは一種の思い込みかもしれないけれど願うことは、信じることは何よりも強い力を与えることだと思うわ」
そうしてロビンはにこりと微笑んだ。
「おれがニスロクに触れるためにさっきみたいに攻撃をどうにか防いで欲しい。海水を断ったらあいつは弱体化するはずだ。そうすればあとは太陽の光だけ、これは運に賭けるしかないかもしれない。けど、感じるんだ太陽の力を」
力強い声で言い切ったサンジにウソップがグッと拳を握り締めた。
「よっしゃあ!!おれ達に任せろサンジ!!」
「失敗を恐れんなよサンジ!!何度だっておれ達が援護するぜ!!」
サンジの近くにいたフランキーが優しく背中を叩く。
サンジは後ろを振り向き、レイジュとゼフを見つめる。
2人はサンジの視線に応えるように頷いた。
「おれの全てを賭けるよ。おれはソラの息子なんだ、お母さんの誇れる息子でありたい。……ここでお前を止める、お前は"ここ"で眠るべきだ」
再び羽を広げ、幾つもの炎の塊を生み出したニスロクに再び11人が相対した。 - 113123/02/10(金) 22:33:31
今回はここまで
また明後日更新する予定なのでそれまで保守よろしくお願いします - 114二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 22:39:32
今のサンジくんの手は料理を作るだけじゃなくて願いを叶える魔法の手になってるんだね…
ニスロク戦、ほんと総力戦で毎回めちゃくちゃワクワクが止まらなくて最高 - 115二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 23:59:37
ルフィのは勘なのか万物の声を聞く力なのか……
- 116二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 09:32:58
一気に読んじゃった!一味の方がサンジより頼りがいがある分、優しいフォローをして彼の気持ちを引き出してる描写が上手いな…続き気になる…!
- 117二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 09:41:49
太陽の力……!?
面白すぎるのに終わりが近いのが悲しい……まだまだ見たいし語り合いたいこのサンジ概念 - 118二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 11:58:37
ニスロクの防御力や無限のエネルギーの源それを打破する方法までちゃんと物語の初めから一貫して青で繋がってる
書き溜めてないのにこんなにまとまったss書けるのすごい
原作のサンジというキャラの根幹とBLUEのサンジくんが乖離してなくて、地下牢に閉じ込められていたらのサンジとして違和感なく成立してるからスラスラと読める
それに何よりもBLUEのサンジくんがかわいくてかわいくて………撫でくりまわしたいかわいさ - 119二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 19:26:09
お母さんの誇れる息子でありたいサンジくん素敵だ…
- 120二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 20:19:15
強さと優しさに憧れるが故に本の中のソラみたいな誰でも助けられるヒーローになりたいと思っていたサンジがお母さんみたいな優しい人の子でありたいと思うようになったの成長したな…というか外の世界を知って現実的になったというか……
自分が見たssの中で精神が成長していくタイプ初めてかもしれない…… - 121二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 22:39:50
サンジくんが精神的に成長していくにつれてPart1からリアタイ勢としては母親みたいな気持ちになる…このまま強く優しく成長してくれ…
このサンジくんは食戟のサンジみたいに調理前や戦闘前にネクタイを締める代わりに元々コックコートにあったリボン的なのをしっかり締めたりゼフさんにもらったリボンで髪を結ぶ癖が後々つきそう - 122二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 09:24:57
保守
- 123二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 16:29:55
原作のオマージュもREDのオマージュもたくさんあるから元のシーンを探すのも楽しい
スレ主のワンピ愛がひしひしと伝わる良ss - 124123/02/12(日) 21:08:18
感想保守ありがとうございます!!
- 125123/02/12(日) 21:16:01
無数の赤い光が雨のように降ってくる。
ジンベエが操る海水が炎にぶつかる。
一度は消えたかのように思われた炎が蒸発した煙の向こうから再び現れる。
「やはり炎は底無しのようじゃな!!」
再びジンベエが技を放とうとするが炎の勢いは技を出すスピードを超えていた。
赤い炎が広場を照らし、緑の芝生がオレンジに染まる。
キラリと刃が煌めいて、冷たい風が周囲を包み込んだ。
「この辺で一つ、冷たい氷でもいかがでしょうか」
ブルックが素早く剣を振い、炎を次々に凍らせていく。
ごとんと音がして氷の塊が落下した。
「当たれッ!!!」
落ちてきた氷の塊をすかさずウソップがパチンコで撃ち返す。
氷の塊を撃ちつけられ、じゅわりと音がして炎が消えた。
「ヨホホホ!!流石ですウソップさん!!」
真っ黒な眼窩を下げて笑ったブルックにウソップはぐっと親指を突き出した。
大きな青い瞳がぱちりと一つ瞬きをした。
ニスロクは自らを守るように歯車を身体の前で固定する。
「身の危険を感じたか。ーROOM」
ローが手を構えると歯車はニスロクの前から消え去り、代わりに瓦礫がぼとりと海に落下した。
ニスロクは巨大な両腕を持ち上げると、何かを差し出すように手を伸ばす。
バサリと大きく翼をはためかせる。激しい熱風が広場を駆け抜けた。
ニスロクは両手に轟々と燃え盛る炎を灯らせる。そして、炎を纏わせた拳を広場へと叩きつけようとした。
「デカいの!!おれが相手だ!!!」
炎を纏う拳に自らの拳を打ちつけてルフィがそう叫んだ。
ぶつかり合った拳は強大な力を互いにぶつけ合う。
せめぎ合った拳は互いの力に押し出されるようにして一度離れた。 - 126123/02/12(日) 22:30:54
ニスロクの片方の腕にはニスロクと同じぐらい巨大な腕が絡みついていた。
ロビンが咲かせた腕だ。
「ークラッチ!!」
普段のように関節技を仕掛けるわけにはいかないが、渾身の力を込めてロビンはニスロクの腕の動きを封じ込めた。
その腕を駆け上がりゾロがニスロクの頭部を斬りつける。
ニスロクは一際巨大な歯車をゾロへ向け、さらに小さな歯車を広場へと向けた。
しかし、巨大な歯車はナミの繰り出した雷霆とフランキーが放った強烈なビームによって海へと叩き落とされ、小さな歯車は巨大な姿へと変化したチョッパーが受け止めた。
空を駆け上がったサンジはニスロクの胸に手を触れた。
海に変化は起きない。
「ーーッ!!……それなら!!悪魔風脚"羊肉ショット"!!!」
ニスロクの身体が僅かに揺れた。
海が音を立て、ニスロクを中心に割れていく。
しかし________。
「ーー!!足りない…!?」
一度割れ始めた海は再び元の姿へと戻っていった。
思わず目を見開いたサンジの瞳とニスロクの瞳が交差する。
「サンジ危ねェ!!」
凹凸が刃物のように鋭利な歯車がサンジに襲いかかる。
しかし、腕を伸ばしたルフィが間一髪のところでサンジを自らの胸へと引き寄せた。
「ルフィ!ありがとう」
「おう!!」
バサリと一つ大きく羽をはためかせると、ニスロクはぴたりとその動きを止めた。 - 127123/02/12(日) 22:41:32
サンジを抱えてルフィは広場へと下りた。
不気味に動きを止めたニスロクから警戒を解くことなく、ルフィ達は寄り集まる。
「確かにサンジ君はニスロクに2度触れた、それに2回目サンジ君が蹴りを入れた時はダメージも入っていたように見えたわ。でも……」
「1度目は全くソラの力が発動していなかった。が、2度目に黒足屋はただ触れるだけじゃなく、攻撃をすることでニスロクに触れた。そうすると、ソラの力は少しだが発動しニスロクに攻撃も通った」
「……ただニスロクに触れるだけじゃなくて、攻撃をする必要があるってことだな」
チョッパーの言葉にローが頷く。
「ということは、まだサンジの蹴りが決定打に欠けるってことか」
「でも、おれそんなすぐに……」
炎を纏う脚を見つめ、サンジは唇を噛んだ。
「……お前、覇気を使えるだろう」
「はき?」
ゾロの言葉にサンジは首を傾げる。
「無意識だったのか?さっき、髪の毛が黒くなっていた時のサンジ、覇気を使ってたんだよ。覇気はなんて言ったら良いかなあ………力を向上させる技みたいなやつを」
ウソップの説明にサンジはなんとなく分かった気がすると、自らの胸に手を押し当てた。
「サンジ君が使ってたのは、多分見聞色の覇気と武装色の覇気だったわ」
「おれの言う通りにしろ。テメェが覇気を今よりも使いこなせれば勝機はある」
口に刀を咥えたままゾロはニヤリと口角を上げた。
「テメェはまだまだガキくせぇがセンスは良い。覇気の修行もせずにあれだけ使えるんだからな」
そう言ったゾロの言葉には偽りはなかった。
「ゾロが教えるなんて大丈夫かァ!?」
「迷子になるなよ!!」
「ならねェよ!!覇気の使い方教えるだけで迷子になるわけねェだろ!!」
茶化すように言ったウソップとフランキーにゾロがつっこむ。
「……だから、おれは子供じゃないって」
カッコよくきめていたゾロの落差に思わず吹き出しながらサンジは決まり文句のようにそう返した。 - 128123/02/12(日) 22:42:04
今日はここまで
また保守よろしくお願いします - 129二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 23:03:11
うわァァァ戦闘描写最高すぎる…‼︎
そして同い年でサンジくんに対してちょっと不器用なお兄さんムーブ気味の海賊王の片翼がサンジくんの覇気の師匠になる展開はアツい‼︎
みんなでニスロクくんを撃破してくれ… - 130二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 05:12:04
覇気かー!!!サンジ関連のありとあらゆるものが出てくるなあ
- 131二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 09:34:43
薬による無理矢理ブースト以上にサンジくんの気持ちの成長によってさらに強くなるフラグがすごい
でも薬の副作用もあるから無理だけはしすぎないでほしい… - 132二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 18:39:25
ニスロクが停止したり攻撃が弱まったりするのはサンジが血統因子を呼び覚ます薬に抵抗してたみたいにニスロクも抵抗してるんだろうか……
- 133二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 19:12:53
応援してます!!!!頑張ってください!!
- 134二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:22:31
定期的に読み返してるけどほんとこのSS好きです
- 135二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 07:54:27
一味が頼りがいあってかっこいいな……‼︎
- 136二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 08:22:23
熱い戦闘シーンの中に一味がちょっとゾロを揶揄うシーンがあるの最高に好き
シリアスとわちゃわちゃ感が絶妙 - 137123/02/14(火) 15:34:52
感想保守ありがとうございます!!
いつもより早いですが書いていきたいと思います - 138123/02/14(火) 15:39:47
「あいつを蹴り飛ばすって思いをお前のその脚に込めろ。覇気は意志の力だ。使いこなすには場数を踏む必要も鍛錬する必要もあるが、なによりも、てめェの意志の強さが重要だ。分かったか?」
「分かった。やってみるよ」
サンジは瞳を閉じるとぐっと拳を握りしめた。
体の奥からぶわりと湧き上がるものを感じる。
ーー脚に集中させるんだ。
蹴ると決めた右脚が普段とは違う、不思議な感覚に包まれた。
「………それが、武装色の覇気だ。覚えとけ」
ゾロの声に目を開ける。
そろりとズボンを捲ると、脚が鉄のように硬化していた。
「すごいぞサンジ!!覇気は使いこなすのが難しいんだ、なのにもうこんなに使いこなしてるんだなんて!!」
大きな姿のチョッパーが体を折り曲げるようすると、キラキラとした瞳でサンジを覗き込んだ。
「黒足屋は飲み込みが早くて助かる」
「ロー、その黒足屋ってサンジのことか?」
「……そいつは赫足のゼフの弟子、いや息子か。それに、黒いズボンを履いているし、ステルスブラックでもある。ぴったりだろう」
ウソップの問いかけにローはそう答えた。
「トラ男、アンタなかなかネーミングセンスあるわね」
ナミの言葉にサンジはへへと照れたように笑う。
「でも、おれもうステルスブラックにはならないけどね」
「……………」
からりと屈託のない笑顔でそう言ったサンジにローはしーんと口を閉ざした。
お、と声を上げたルフィがローの顔を覗き込む。
「めっちゃ落ち込んでんなあ!トラ男」
「うるせぇぞ麦わら屋!落ち込んでねェ!!」 - 139123/02/14(火) 16:00:37
熱風がルフィ達の間を吹き去っていく。
青い瞳をゆっくりと開いたニスロクが再び両腕を持ち上げた。
「もう一度だ!!これで決める!!!!」
ルフィの言葉に皆が力強く声を上げる。
大小様々な歯車が立て続けに飛んでくる。
同時にニスロクは両腕を天高く上げ、再び広場に拳を打ち込もうとする。
チョッパーが飛んできた大きな歯車を掴んだ。回転する歯車に手が焼き切れるように痛んだが、どうにか動きを止める。
そして、手の中の歯車を飛んでくる歯車へと強く投げた。
ガンと音がして小さな歯車は宙で回転をやめ、海や広場に落ちる。
ナミは天候棒を振るい、雷を落とすことで歯車の動きを止める。
ニスロクが翼を広げ、鋭い風と共に飛ばす炎はジンベエによって消し去られる。
落ちていく歯車の隙間からウソップがニスロクの瞳目掛けて煙星を撃ち込んだ。
周囲に煙が立ち込め、視界が悪くなる。
フランキーがブルックを空へと飛ばし、地上からはロビンがニスロクの翼に攻撃を仕掛ける。
翼は規格外に硬い身体と違い、硬度が低いようだ。
ブルックとフランキーの攻撃によって翼の一部が凍り、そして一部は焼けこげてもがれた。
翼の根本は全身を咲かせたロビンががしりと掴み、渾身の力で動きを封じ込める。
落ちていく歯車を足場にゾロとローが駆け上がっていく。
それぞれ愛刀を抜刀し、振り上げられた拳を受け止める。
燃え盛る炎に焼かれそうになるのを耐え、ギリギリと覇気を纏った刀を巨大な拳とぶつけ合った。 - 140123/02/14(火) 16:09:01
ニスロクが僅かに目を開いたように見えた。
再び大きな歯車がガラ空きになったニスロクの身体を守るように現れる。
それをルフィは渾身の力で空へと殴り飛ばした。
音を立てて歯車がニスロクの後方へと吹っ飛んでいく。
「サンジ!!!!」
ルフィの見上げた視線の先、曇天を背負ったサンジが脚に炎を纏わせた。
外骨格に武装色を重ねる。先程の感覚を思い返しながらサンジは思考を巡らせた。
この距離で加速すれば炎はより高温になるはずだ。
「ーー魔神風脚!!!」
赤い炎が白く光った。
白い炎は一際明るく発光すると青く変化する。
青く燃え盛る炎からビリビリと白い稲妻が走り、サンジを照らした。
眼下のニスロクを捉える。
こちらを見上げる大きな青い瞳の中に孤独を感じた。
海の中でひとり取り残される孤独を。
ーーヴィンスモーク・サンジはこの海で死ぬ。おまえと一緒だよ。
ニスロクの胸に狙いを定め、サンジは空を蹴る。
青い光が空を駆け、ニスロクの胸元で桁違いの温度を纏った蹴りが炸裂した。
ぐらりとニスロクの身体が傾いた。
地鳴りのような音が響き渡る。
青が割れ、ニスロクの周囲の海底が姿を現した。
途端油の切れたブリキの人形のようにニスロクの動きが鈍くなった。 - 141123/02/14(火) 16:24:15
「ゴホッ…!!」
サンジの口元から激しい咳が溢れる。
ふらりと体重を支えられなくなった身体をゾロが受け止める。
すぐにローが能力を使いサンジを広場へと飛ばした。
「ーーよく頑張ったなサンジ、あとは任せろ」
ローが能力を展開する直前、ルフィの優しい声がサンジの耳に届いた。
白い光が辺りを包み込む。
ゾロ達はその激しい光に思わず目を瞑る。
サンジは霞む視界に白い羽衣を纏った青年の姿を見た。
ニスロクへと拳を叩き込む姿を。
全身を包み込む光はとても暖かい。
まるで__________。
小さく咳き込むと、サンジは意識を手放した。 - 142123/02/14(火) 16:27:50
光が止む。
そろりとナミが瞳を開けると、すでにニスロクの姿は消え去っていた。
何事もなかったかのように海は平穏を取り戻し、空から差し込む光がキラキラと反射している。
鳥達が晴れた空に翼を広げて飛んでいく。
遠くからゼフを呼ぶ声が聞こえた。城の中から料理人達が救急箱のようなものを持って駆けてくるのが見えた。
城壁が壊れているが、城が倒壊するのはどうにか避けることができた。
広場の先に麦わら帽子を片手で押さえたルフィがいた。
「ルフィ」
ナミが呼びかけるとルフィがゆっくりと振り向く。
「腹減ったーー!!肉ーー!!!!」
そう言ってルフィはニカリと笑った。
「ふふ、たくさん動いたものね。私もお腹空いちゃったわ」
慣れ親しんだルフィの底抜けに明るい笑顔に、ロビンの声に、ナミはようやく肩の力を抜いた。
背後からガヤガヤとウソップ達の声が聞こえ始める。
チョッパーと料理人達にゼフを任せたレイジュがサンジの元へと駆けて行く。
終わったのだ。 - 143123/02/14(火) 16:29:13
キリがいいので今回はここまで
保守よろしくお願いします - 144二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 17:33:08
か、勝った………‼︎
ニスロクは城に囚われてたサンジと共に海で死んだんだな……人に望んで造られてその人によって捨てられたロボットだと思うと寂しさも感じる - 145二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 20:52:30
勝った…‼︎
サンジくんも一味のみんなもローさんもお疲れ様‼︎
上の感想で「人に望んで造られてその人によって捨てられたロボット」って文章を見てニスロクくんだけじゃなくて「ヴィンスモークサンジ」も人に望んで造られてその人によって捨てられた存在だと改めて気づいてしまった…
人に望まれて勝手に失望されて人の都合で捨てられたニスロクとヴィンスモークサンジという2つの存在がどうか穏やかにしねますように… - 146二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 23:35:18
保守
- 147二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 08:17:26
戦闘シーンは最高だし物覚えのいいサンジくんとか覇気を教えるゾロさんとか黒足屋呼びローさんとか、何より霞む視界の中に見えるギア5ルフィの描写が最高すぎる
- 148二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 17:05:24
保守ぅぅうぅぅぅぅっっぅぅ
- 149二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 20:43:15
戦闘終わったけどこの後どうなるんだろ
続き気になるけど終わりが近いのは寂しいな… - 150二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 23:29:57
青い海に沈んでいくニスロクくんとチビナスが見える…
- 151二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 08:13:51
ニスロクくんとヴィンスモークサンジ、そしてサンジくんのことを考えてたらこの曲が浮かんだ
光に手を伸ばすサンジくんと2人静かに海に沈むニスロク&ヴィンスモークサンジ…
【初音ミク】 深海少女 【オリジナル】
- 152二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 13:32:08
保守
- 153123/02/16(木) 18:47:19
- 154123/02/16(木) 18:48:31
「サンジ!!」
ゼフを料理人達に任せ、レイジュはサンジの元へと走った。
「大丈夫、眠ってるだけだよ。でも、サンジが打たれた薬は体に負荷がかかるものなんだろう?どうにか中和しないと、サンジの体が保たない」
先にサンジの側へと駆け寄っていたチョッパーの言葉にレイジュは頷く。
「私に心当たりがあるの。サンジに使われた血統因子を無理矢理覚醒させる薬の効果を薄める薬が。でも、それは普通に使うとあまりにも強すぎる劇薬。だから船医さん、あなたの手を貸して欲しい」
頭を下げたレイジュにチョッパーはもちろんと優しく声をかけた。
「言っただろレイジュ。もし何かあったら、おれ力になるって!」
ニッコリと笑ったチョッパーにレイジュは瞳を潤ませた。
「手伝うぞ、トニー屋。おい、城の中は無事なのか」
「えぇ、あなた達が守ってくれたおかげで」
「その薬を薄めてサンジに点滴で投与しよう。よし、まずはサンジをベッドに運ぶぞ!ゾロ、手伝ってくれるか」
「あぁ」
チョッパーの言葉にゾロはサンジを抱えたまま立ち上がる。
一味とローは処置のできる部屋まで案内すると言ったレイジュを先頭に歩き出した。 - 155123/02/16(木) 19:03:12
レイジュの知りうる情報を基に、チョッパーはローと話し合いながら薬を人体に激しく影響を与えない程度に薄めた。
薄めすぎても効果が得られないが、この薬は相当体に強く影響するものだ。そのため、サンジの体に起きたこと全てを消し去るほどの濃度の薬は作れそうもない。
「全て元通りってわけにはいかないけど、でもこれでひとまず大丈夫だと思う」
点滴を取り付けながらチョッパーはそう言った。
ほっと皆が息を吐いて、部屋の中の思い思いの場所に腰を落ち着ける。
サンジの意識は醒めないものの顔色も良く、呼吸も穏やかだ。
ナミはサンジの頰にかかる髪を優しく払うと、レイジュに視線を向けた。
「……ねえ、レイジュ。もし、私達が知っても良いのなら、サンジ君のことを教えてくれない?」
サンジの側の椅子に座ったレイジュは目を細めて弟の顔を眺める。
沈黙の後、意を決したように顔を上げた。
「そうね、あなた達には知っていて欲しい。サンジのことを、私達ヴィンスモーク家のことを」 - 156二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 19:09:54
うわあああああああ…続きが楽しみすぎる!!
- 157123/02/16(木) 19:12:09
「私達ヴィンスモーク家は代々ジェルマ王国を統べてきた。ジェルマ王国は300年前に66日間だけ北の海を制圧していた時期があったの。父はその頃のジェルマを取り戻すため、66日間の支配の後国土を失うまでに国を没落させた北の海の国々に復讐するために全てを賭けてきた。その父の願いを叶えるために作られたのが私達」
「作られた…?」
レイジュの言葉にブルックが首を傾げた。
「ええ。私達は確かに父と母の間に出来た子供。だけど、母の胎内に宿った後にそれぞれの能力に見合う体に改造されたの。血統因子操作によってね。私達に共通することは、高い運動技能に銃弾も効かないほど硬い外骨格を持ち父の命令に逆らえないということ。さらに弟達はそれに加えて感情も操作された。かわいそうだとか人を慈しむ心を取り除かれたの」
「そんな、ひどい……」
チョッパーが小さな蹄を握ってつぶやいた。
「でも、母はそれに抵抗した。感情を失ったら人間じゃないってね。そして血統因子操作に対抗しうる劇薬を飲んだ。でも、その願いのまま生まれてきたのはサンジだけ。母は劇薬の影響で体調を崩し、サンジが8歳になるより前に亡くなった。サンジは母が亡くなる前から出来損ないだとイチジ達に虐められてたわ。父はそれを当たり前だと思っていたし、私も止めることはできなかった………。自分自身の保身を考えたのよ、私は」
「……おれでもそうしたかもしれねェよ。誰だって嫌だぜ、痛い目に合うのは。レイジュだって子供だったんだろ?家族から暴力を受けたり除け者にされるなんて嫌だと思うのはおかしいことじゃねェよ」
ウソップがレイジュを励ますように、言葉を選びながら声をかけた。
それに弱々しく微笑むとレイジュは再び口を開いた。 - 158123/02/16(木) 19:13:07
「母が亡くなった後、父は母が命を賭してまで抵抗した証であるサンジにさらに酷く当たるようになった。そして、サンジが8歳になる頃、父はサンジを事故で亡くしたと偽って地下牢に閉じ込めたの。重い大きな鉄の仮面を頭につけて」
「……黒足屋の首元についていた傷はその鉄仮面のせいか」
ローの言葉にジンベエがハッと驚いたような顔をした。
「サンジは最近まで鉄仮面をつけられて閉じ込められておったのか」
「えぇ、サンジが外に出たのは一週間前よ。ジェルマがある国に雇われて戦争をしに行った帰り、敵に襲われたと偽って私はサンジが閉じ込められていたこの城ごと逃げ出した。……父は追って来なかったわ。なぜだかは分からなかったけど、今日分かった」
重い沈黙が流れる。
「父はサンジが死んでも構わないと思っていた。私のことはいずれ追いついてくると思ってたのよ。だから、追って来なかった。……でも、私がいなかった間に研究していたあの薬が完成したんでしょうね」
レイジュは声を震わせて目元を押さえた。
その肩にロビンがそっと手を添える。
「……ありがとう。サンジは地下牢で欲しいものはほとんど与えられていた。食事も十分だったわ、まるで飼い殺しよ。でも、地下牢の環境は悪い。日光も当たらないし空調設備もない。だから、サンジはよく体調を崩すし、まだ陽の光に長い時間当たれないの。サンジと会話をする人も見張りの兵士と私ぐらいであの子は年齢よりもはるかに幼い心を抱えたまま大人になった」
「…大人?おい、お前の弟はいくつなんだ」
怪訝そうな顔をしたゾロがレイジュにそう問いかけた。
「今21歳よ、私の3つ下」 - 159123/02/16(木) 19:14:34
「「「えーーー!?」」」
レイジュの言葉に部屋に驚きの声が響き渡る。
「ちょ、サンジ君が起きちゃうでしょうが!!」
慌ててナミやフランキーが声を上げたルフィ達の口を塞ぐ。
「むごごご……!!サ、サンジっておれやルフィより年上なのか!?てか、ゾロと同い年!?」
ウソップの言葉にレイジュがゾロの方を見る。
「あら、あなたサンジと同い年なの?」
「あ、ああ。そうだが………」
片目を丸く見開いたゾロがサンジをチラリと窺いながら曖昧な返事を返す。
「サンジさんてっきりまだ15歳ぐらいかと思っていましたが……そうですか、21歳なんですね」
「そりゃ、ガキ扱いされたら嫌だわなァ!でも、サンジの時間はおれたちよりもずっとゆっくりと進んでるんだろうな」
フランキーはサンジの子供のようなあどけない笑顔を思い出した。
「この大宴会はあなた達も知ってる通りサンジの願いの一つだった。それに、料理人になるという夢も叶えれるものだったから、私がサンジにやろうと持ちかけたのよ。……でも、私が本当に叶えてあげたいのはサンジがずっと心に抱いてる夢。どこにあるのかも分からないから叶えてあげられそうもないのだけれど」
レイジュは口元に諦めたような笑みを浮かべた。
「確かにどこにあるのか分からねェが、そいつの夢は確かに存在する」
ガチャリと開いた扉から力強い声が聞こえた。 - 160123/02/16(木) 19:15:17
書き溜めれたので早かった…!!
今回はここまで!保守よろしくお願いします - 161二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 20:54:02
レイジュさんによる語り来た…‼︎
言葉を選んで寄り添ってあげる感じのウソップいいな…
サンジくんの年齢を知った一味の反応めちゃくちゃ好きです
そしてラスト…‼︎
サンジくんの本当の夢を一味が知る瞬間が来るのめちゃくちゃ楽しみ - 162二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 04:50:28
21歳はびっくりするよね……
- 163二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 08:36:17
保守
- 164二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 18:35:30
ゼフ‥!!
- 165二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 21:05:49
淡々と語ってるけどこれレイジュさんもしんどいよな…
- 166二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 22:44:16
ついに過去話が…!
精神が幼いサンジくん辛いけどこれからたくさん幸せになって欲しい - 167二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 08:08:35
保守
- 168二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 08:45:23
保守
- 169二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 13:19:26
レイジュさん→ゼフさんの順でサンジくん語りが続くのいいな…
ゼフさんがどんな風にサンジくんの夢を語るのか楽しみ - 170123/02/18(土) 20:33:39
感想保守ありがとうございます!
- 171123/02/18(土) 20:36:31
脇に簡易的な杖を挟んだゼフがコツコツと音を立てながら部屋に入ってくる。
後ろには笑顔を浮かべたパティ達もいた。
「どこにあるか分からねェ……オールブルーってやつか?」
ゾロの言葉にゼフは意外そうな顔をした。
「テメェ知ってんのか」
「いや、コイツが枕元に置いてた本をちらっと読んだだけだ」
「……あぁ。その本はね、サンジのお気に入りなのよ。8歳の頃に兵士が差し入れてからずっと近くに置いて何度も読み返してるの」
「オールブルーは4つの海すべての魚が揃うと言われている幻の海だ。海の料理人から一度は夢に見る。だが、そいつは子供の頃の話だ。大人になりゃあそんなのは夢物語だと皆笑い話に変えちまう。なんせ見たことあるやつもその記録も存在しねェからな」
「確かに聞いたことないなァ。それに、海流の問題もあるし生息する場所の気候が違う魚達がどうやって共に暮らしてるのか……」
フランキーが腕を組み、考え込む。
「そうだ、あるかどうかも分からねェ馬鹿みたいにな夢の話だ。だがな、オールブルーは確かに存在する。おれはグランドラインを旅してそう確信した」
「あんたもオールブルーを探してたのか?」
「………部下どもにゃ言わなかったがな。おれは心のどこかで諦めてたんだよ。だが、コイツはずっとオールブルーを信じて夢見てきた。コイツならオールブルーを見つけれる。おれはそう思う」
暖かい温度を宿した瞳でサンジを見つめるゼフにルフィ達の心にもじんわりと柔らかな気持ちが浮かぶ。
「………サンジ、あんた起きてるんでしょ」
唐突に発せられたレイジュの言葉にルフィ達は驚いて視線をベッドへと移した。
「………うん。いや、なんて言い出したらいいのか分かんなくて……」
「「「サンジ!!!」」」 - 172123/02/18(土) 20:37:25
パァッと表情を明るくしたチョッパーが慌てて駆け寄る。
「体調はどうだ?痛いところや変なところはあるか?」
「まだ体が重いけど広場にいた頃みたいな変な感じはないよ。痛いところも、包帯巻いてあるところだから怪我してるからだと思う」
サンジの言葉を聞いたチョッパーはふむふむと頷くと、ローに視線を送った。ローはチョッパーの顔を見て口元を緩めると一つ頷いた。
「よかったーー!!まだ安静にしてないといけないけど、薬がちゃんと効いたんだ!」
瞳を潤ませて喜ぶチョッパーの頭をサンジは管の刺さった手をよろよろと持ち上げて撫でた。
「ありがとうチョッパー」
「………!!よかった、本当に!!」
頭を優しく撫でる手に蹄を添えてチョッパーは微笑んだ。
「……ゼフさん、オールブルーがあるかもしれないって本当なのか?」
サンジは真剣な瞳でゼフを見つめた。
「ああ。オールブルーはある、おれはそう思った。だが、おらぁもう歳だ。仲間もおっ死んじまった。だから、おれはオールブルーを探しには行けねェ。だけどな、お前は若い。お前が本当にオールブルーを見つけたいと望んでるなら海に出るべきだ」
「………海に」
ポツリとサンジが呟いたのを一暼すると、ゼフは背中を向けた。
「おれは海上にレストランを構えることにした。時間がある時に電伝虫を使ってお前に料理を教えてやる」
「レストラン……?」
「おう!!そうだぜ!!」
ぐいとパティとカルネがゼフの両脇から前に出てくる。 - 173123/02/18(土) 20:38:19
「名前はもう決めた!"バラティエ"だ!!おれとパティもオーナーゼフのもとで働くことにした」
「そうなんだ。じゃあ、マロージュ達も?」
パティ達の後ろにいる4人に目を向けると、マロージュは首を横に振った。
「いえ、僕は故郷に帰って無償で料理を提供する場所を作ろうと思ってます。荒れ果てしまっているけれど、まだ人は住んでる。どうにか昔みたいな故郷の姿を取り戻したいんです」
「わたしはお父様達を説得してパティシエになるんだ。何にも言わずに飛び出してきちゃったから多分お父様達ぷんぷんだと思うけどちゃんと向き合ってお話をするよ」
ふんわりと微笑んでマリイはそう言った。
随分と下にあるマリイの頭を見つめていたジャンはサンジに視線を戻す。
「……俺はもう少しいろんを場所に行って料理を学ぶ。サンジ、お前が海に出るならいつか会えるかもしれねェな」
「あたしも似たようなもんだな。まだまだ知らないことだらけだってサンジの技を見て痛感したからね」
快活に笑ったイライザにサンジも笑みを返す。
「チビナス、おれ達は明日ここを出る」
ゼフはそう一言言い残すと、パティ達を伴って部屋を出て行った。 - 174123/02/18(土) 20:44:56
「………海か…」
真っ白な布団に視線を落としサンジは呟いた。
手にはゼフからもらった青いリボンが握られていた。
騒動の中で紛失してしまったかもしれないと思っていたが、ポケットの中にリボンは存在していた。
「サンジ、あなたはもうヴィンスモーク家とは縁を切った。今後のあなたの人生にジェルマという存在が全く関わらないのは無理かもしれない。けれど、あなたはあなたの人生を歩むべきよ。………あの時、13年前に東の海であなたの願いを無碍にした私が言えたことじゃないけれど」
小さく震えるレイジュの声音にサンジはハッと顔をあげる。
「そんなことない。レイジュはおれのためにいろんなことしてくれたじゃないか。おれは本当に感謝してるんだ、ありがとうレイジュ」
レイジュの手を握ってサンジはできるだけ優しく声をかけた。 - 175123/02/18(土) 20:45:27
「なあサンジ、おれの船のコックになってくれねェか」
明るい声が部屋に響く。
「え?」
「朝は断られちまったけどよ、おれやっぱ諦めきれねェ!!サンジ、お前におれの船に乗って欲しい。おれはお前と冒険がしてェ!!!」
満面の笑みを浮かべてルフィは言った。
「……でも、おれが探してるのは馬鹿みたいな夢の海だよ。ありはしても見つからないかもしれない、そんな……」
「じゃあ、おれとお揃いだな!!おれの探してるひとつなぎの大秘宝も確かにあるけどちょっとやそっとじゃ見つからねェからよ。まあ、絶対に見つけるけどな!!」
「ルフィの夢はワンピースよりもその先の方がとんでもないけどなあ!今度サンジにも教えてやれよ、ルフィ」
「おう!」
ニシシと悪戯をする子供のように笑うとルフィはぽかんとしているサンジに手を差し伸べた。
「サンジ、おれの船のコックになってくれ」
目の前に差し出された手にサンジは動揺した。
あちらこちらに視線が彷徨う。
しかし、目に映るレイジュ達の視線は皆穏やかだった。
ーーオールブルーを見つけたい。
そして何よりも、ルフィ達と冒険がしたい。
優しくて強くて時には厳しいそんな最高の仲間達と広い海を渡れたらきっと楽しいだろう。
日に焼けたルフィの暖かい手にサンジの手が重ねられた。
握手をするようにぎゅっとルフィが白い手を握り込む。
「よしッ!!よろしくな、サンジ!!」
「あんた達!!私達の船にコックが来たわよーー!!」
「「「いよっしゃーー!!!」」」
チョッパー達の歓声が城の一室から響き渡る。
大はしゃぎするその姿にサンジも笑い声を漏らした。
その光景を見守っていたレイジュとローも目を細め、口元に笑みを浮かべた。 - 176123/02/18(土) 20:46:54
今回はここまで
次回かその次ぐらいで終わる予定なのであと少しお付き合いください
ということでまた保守よろしくお願いします!! - 177二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 21:21:10
とうとうサンジくんが麦わらの一味に加入した…‼︎
めちゃくちゃ嬉しいけど終わりが近いのは寂しい…
更新ありがとうございます - 178二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 07:42:53
保守
- 179二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 13:44:54
保守
- 180二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 16:08:47
知らない間にすごい更新されてた!!!
でももうすぐ終わっちゃうって考えるとやっぱり寂しいなあ…(´・ω・`) - 181二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 21:56:42
ようやくサンジくんが麦わらの一味になれたの嬉しい
- 182二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 22:58:50
保守
- 183二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 08:55:19
サンジくんが漸く自分の夢のために海に向かえるの嬉しい…
- 184二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 11:28:45
もう終わっちゃうのかあ
本当に面白かった少し早いけどありがとうスレ主 - 185二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 17:40:46
このSSのルフィの言動が解釈一致すぎてとにかく好きだしロビンが戦闘でも知力でも活躍しててファンとして嬉しい
- 186123/02/20(月) 21:03:35
感想と保守ありがとうございます!!
微妙なところでスレが変わりそうなので新スレで続きを書きます
残りは小ネタを投下したりして埋めます - 187123/02/20(月) 21:04:07
- 188二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 21:13:53
スレ主さーん
ダブって立てちゃってる方のスレ消し忘れてるよ - 189123/02/20(月) 21:17:58
わーありがとう!!
消しとく - 190123/02/20(月) 21:20:53
消えました!!!!
教えてくれてありがとう……ポロッ - 191123/02/20(月) 22:15:34
小ネタ
薬を投与されて回復したサンジは原作のワノ国終了後と同じ状態
イチジ達の能力やソラの力は使えなくなってる - 192123/02/20(月) 22:17:38
小ネタ
このサンジの身長はこの後は伸びないので165cmのまま
ナミより身長が低いのを気にしてシークレットシューズを履いてみたりするサンジがいるかもしれない - 193二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:22:28
身長気にするサンジくんかわいいな!!
- 194二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:23:10
身長を気にするサンジくんかわいい…‼︎
サニー号に乗ったらキッチンは勿論だけどアクアリウムバーはお気に入りの場所になるんだろうな - 195二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:23:25
チョッパー除いたら一番小さいもんね……
棚にあるものとか届かなくて取ってもらってたらかわいい - 196123/02/20(月) 22:31:32
小ネタ
このサンジの精神年齢はなかなか原作まで追いつかないけど割と早いタイミングでメロリンし始めます
メロリンは本能 - 197二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:33:38
メロリンは本能はアラマキ生える
まぁメロリンは止められないよな!! - 198二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:38:01
ブルーのサンジくんも原作みたいに花や貝殻プレゼントしそう
- 199二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:39:41
原作サンジくんもまぁまぁ幼い頃からメロリンしてたし本能ならしゃーないよな!
それはそれとしてサンジくんのメロリンを初めて見た一味のみんなは困惑しそう - 200二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:40:37
メロリンするサンジを見て色んな意味で安心する一味