タイシン「"アタシが親になりたい"って意味だから」

1二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 22:58:50

約束、したのに。
URAを一緒に進むって、決めたのに。
身に付けた隙に、アタシが見つけた好きを邪魔して欲しくなかった。

買い物の帰り道、ふと見上げるとあいつらがいた。
トレセン学園に入る前に同じクラスだったあいつら。

アタシを見つけると、嫌悪感を示した顔で囲んできた。
耳から耳へ、風のように通り過ぎる。
ほとんど聞いてはいなかった。
聞いた分だけ気分が下がる。

トレーナーだったら、胸の内を熱くさせる。
クリークさんだったら、優しい音を伝えてくれる。
チケットだったら、相手を怯えさせるために大声なんて出さない。
ハヤヒデだったら、偉くなるために自分を大きくなんて見せない。
何もかも、比べることすら億劫な言の葉は、大切な人をバカにされているかのような不協和音を生んでいた。

「その制服、似合ってな────」

一瞬、何が起きたか分からなかった。

2二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 23:00:00

見上げなくても分かる。
安心させてくれて、熱いのに温かくて、気が付けば必死にぎゅっと抱きしめていた。

トレーナー。
守るように私の姿を、自分の影に隠していた。

「────ナリタタイシンの、知り合いですか」

「は？な、なに────」

「貴方が、自分が思い描く制服を着た姿がどんなに素敵でも、ナリタタイシンの制服姿はもっと素敵です。萌えます。鼻血です。
私にとって何よりも大切な存在なんです。笑顔を奪わないでください」

「い、行こうって」

「……ありがとう」

感謝を述べると、トレーナーは困ったように優しい笑顔で微笑んだ。

「────あの、さ
聞いて欲しいことがあるんだけど」

「うん、うん」

この時の私は、ちょっと掛かり気味だったと思う。

「私さ、アンタがトレーナーでよかったと思う。だから、さ。
前に言った"アンタが親になったら"って話なんだけど、アレ、"アタシが親になりたい"って意味だから」

3二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 23:00:31

言ってしまった。
頬がマグマになっていく。
心臓がドラムになっていく。

「〜〜〜ッ！！タイシン！！
まだ学生なのに、将来をそんなに……！！
立派だ！！立派すぎるよ！！絶対タイシンが幸せを見つけられるように頑張る！！良い人を見つけるんだよ！！」

「……ん？」

「タ…ダイジンが立派で…立……
うっ…うっうぶえっ、うっグズズ、ズビッ」

「ええ…」

いつもなら蹴ってたかもしれないけど、今は。

「……バカなの？」

なんだか幸せで、笑ってしまった。