名作文学『少年の最後の日の思い出』

  • 1二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 04:38:01

    「へぇ、コムラサキか」
    僕が自慢気に差し出した標本を見ながらエーミールは感心の声を上げる。
    「模様も綺麗だし、この辺りでは珍しいから二十ペニヒぐらいの値打ちはありそうだ」
    あの完全無欠のエーミールが自分の標本を評価し、さらに値打ちがあると言った事に僕はたまらなく嬉しくなり、なんだかエーミールを打ち負かしたような気分になった。
    だが、その愉悦も長くは続かなかった。
    「でも、ほらここ。展翅の仕方が少し雑だね」
    エーミールは僕の肩を掴み、標本を覗き込んで一つ一つ指さしながら欠陥を指摘しはじめる。
    僕は、その欠点に対して特になんとも思わなかったが、自分の獲物に対する喜びをかなり傷つけられた。
    「それにここの足、2本欠けてるじゃないか。もっと丁寧に扱うべきだよ」
    エーミールはさらに体を密着させて批評を続ける
    この距離の近さは、僕が知るエーミール唯一の欠点だが、他の人に話しても誰も理解してくれなかった。
    僕はエーミールの難癖を聞き流しながら、たとえ何があろうと彼に獲物を見せないようにしようと心に誓った。

  • 2二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 04:39:07

    あれから二年が経った
    僕はもう大きな少年になっていたが、僕の獲物に対する熱意は未だ絶頂にあった
    そのころ、あのエーミールがクジャクヤママユをさなぎからかえしたといううわさが広まった
    僕が人生の中でこれほど興奮することは未来永劫訪れないだろう
    僕達の仲間でクジャクヤママユをとらえたものはまだいなかった。
    僕は、自分のもっていた古いちょうの本の挿絵でみたことがあるだけだった。
    名前を知っていながら自分の箱にまだないちょうの中で、クジャクヤママユほど僕が熱烈に欲しいものはなかった。
    エーミールがクジャクヤママユをもっていることを聞くと、それが見られるのが待ちきれなくなっ

  • 3二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 04:40:10

    食後、外出ができるようになると、すぐ僕は、中庭を超えて隣の家の四階へ上がっていった
    そこに、例の先生の息子は小さいながら自分だけの部屋をもっていた。
    それが、僕にはどのくらいうらやましいかわからない。
    途中で、僕は、誰にも合わなかった。
    上に辿り着いて、部屋の戸をノックしたが、返事はない。
    ドアのハンドルを回してみると、入り口は開いていることがわかった。
    せめて例のちょうをみたいと、僕は中へ入る。
    そしてすぐに、エーミールが収集をしまっている二つの大きな箱を手に取った。
    どちらの箱にも見つからなかったが、やがて、そのちょうはまだ展翅に載っているのかもしれないと思いついた。
    展翅を見に行こうと歩き出したその時、床に置いてあった洋服が入ったカゴを大きく蹴ってしまい、積まれていた洗濯物がこぼれてしまった。
    僕は大慌てで洋服をカゴに戻そうと咄嗟に1番目立つ色の布を手に取った。
    それは、女性用の下着だった。

  • 4二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 04:40:46

    なぜエーミールの部屋に女性用の下着が?
    確か彼に姉妹はいないはずだ。
    ならば、母親のものが紛れ込んだのか?
    いや、この下着は鮮やかなピンク色の上、ヒラヒラとしたレースで彩られている。
    どう考えてもエーミールの母親が着るようなものでは無い。
    突然の衝撃に、僕はパンツを掴んだままその場で固まってしまった。
    そのときだ。
    下の方からだれかが僕の方へ上がってくるのが聞こえた。
    その瞬間に、僕の常識が目覚めた。
    僕は突然、友達の部屋へ押し入って女物のパンツを眺めている変なやつに見えるということを悟った。
    部屋を出ると、ゆっくりと僕は歩き続けたが、大それた恥ずべきことをした、という顔から火が出そうな気持ちに震えていた。
    上がってきた女中と、びくびくしながらすれ違ってから、僕は胸をどきどきさせ、額に汗をかき、落ち着きを失いながら、家の入り口から外へ出た。
    危機は去った。僕がなにをしたかなんて誰にも分からないだろう。
    幸いクジャクヤママユには触れていない、カゴはひっくりかえしてしまったがそれも猫かなにかのせいだと思うはずだ。
    まだおさまらない心音と、それでも残る罪悪感を納めようと、僕は額の汗を拭くため上着のポケットに手を入れた。
    それをよく見ないうちに、僕はもう、どんな不幸が起こったかということを知った。
    そして、泣かんばかりだった。
    取り出されたのは、女性用の下着だった。

  • 5二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 04:41:11

    僕はあの時、気が動転したせいで、見つかりはしないか、という恐ろしい不安に襲われて、僕は、本能的に、獲物を隠していた手を上着のポケットに突っ込んだのだ。
    僕は盗みをした、という恥ずかしさとこれをどうするべきか、という不安が胸の中を埋めつくした。
    まだ間に合う、今からでもエーミールの部屋に戻ってこれを置いてこよう。
    そう決心して入り口のドアノブに手をかけた時だった。
    「やぁ、僕になにか用?」
    背後にエーミールが立っていた。
    思えばこの時、勝手に部屋に入った自分の非を詫びてでも事情を説明して下着を渡せばよかったのかもしれない。
    だが、僕はこの過ちを誰にも知られないことにこだわりすぎるあまり、咄嗟に
    「クジャクヤママユをみせてくれ」
    と言ってしまった。

  • 6二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 04:41:46

    部屋の中に入ると、女中が片付けたのか、カゴは元通りになっていた。
    「まだ展翅の途中なんだ」
    そう言うエーミールの顔はどこか高揚して、自慢をしたい時特有の誇らしさがありありと浮かんでいた。
    彼でもこんな顔をするんだな、と少し意外に感じた。
    彼は、留め針を慎重に抜いて紙切れを取りのけた。
    すると、四つの大きな不思議な斑点が、挿絵のよりはずっと美しく、ずっと素晴らしく僕を見つめた。
    僕は目的なんてすっかり忘れてその美しさを堪能し、賞賛する。
    「これをかえすのは本当に大変だったんだ…」
    エーミールもそれに応えてどうやってクジャクヤママユをかえしたのか、その努力と喜びを語った。
    そして僕達は時間を忘れて語り合った。
    思えば、僕ら以外の仲間はみんなちょうの事など忘れてしまっており、ちょうの話をできる者は永らくいなかった
    そのせいもあってか、僕は彼に対する薄暗い感情も無しに、純粋に討論を交わし合うことができた。
    「何か飲み物を持ってこようか」
    しばらくして、エーミールが立ち上がり部屋を出ていった。
    僕はその時になってようやくここに来た目的を思い出し、ポケットからパンツを取り出すと、カゴの中に入れようと動いた。
    「…なにしてるの?」
    ドアの方からかけられた声にビクッと肩を震わせる。
    そこには、エーミールが信じられない物を見るような目で立っていた。

  • 7二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 04:42:17

    僕は勝手に部屋に入ったこと、その時に偶然これを見つけてしまったこと、そしてうっかり持ち出してしまったこと、全て正直に話そうとした。
    すると、エーミールは「ふん」と僕から目をそらすと、顔を赤らめた。
    「女の子の部屋に入って物を漁るなんて…恥ずかしいと思わないのかい?」
    僕は驚き、思わず思ったことをそのまま口走ってしまった。
    その瞬間、エーミールの顔に怒りが浮かぶ。
    「…まさか…君、僕の事をずっと男だと思ってたのか…?」
    エーミールが僕へとにじりよってくる。
    思わず後ずさりをする僕を逃がさないように、彼女は僕の肩を掴みベッドに押し倒すと、そのまま腕と足を押さえつけた。
    「僕は…僕は君が好きだったからちょう集めをはじめたんだ…なのに君は僕から離れていった…」
    恐怖を感じた僕は逃げ出そうと体をよじる。
    だが、がっちりと拘束された腕と足は全く動かすことは出来なかった。
    「でも続けてれば君と結ばれるんだと思った…そう思って僕は…君が1番欲しがってたクジャクヤママユをかえしたんだ…君が家に来た時は本当に嬉しかった…なのに君は…」
    その時初めて、エーミールは僕がどうしようもないと気がついたらしい。
    ニヤリと笑うと片手でシャツのボタンをひとつひとつ外しはじめた。
    「いや…違うな…僕も悪い所があった。そうだな、僕は君にメスとしての魅力をアピールすることを怠っていたんだ。だからダメだった」
    エーミールが服を脱ぎ捨てる。
    その胸には、確かに育ちかけの膨らみがあった。
    男友達だと思っていた彼女の雌の部分に、僕の雄としての本能は敏感に反応していた。
    エーミールは大きくなった僕のものをじっとみつめ、恍惚の表情を浮かべる。
    「そうかそうか♡つまり君はそんなやつだったんだな♡胸を見せて迫ればこんなに簡単にいくようなやつだったんだ♡なんでもっと早くこうしてなかったんだろうな♡」
    エーミールはそう言うと僕のズボンを脱がし、自分も全裸になる。
    「安心してくれ♡僕はそんなことで君を軽蔑したりしないからさ…♡だから…」
    エーミールは僕の手足を自由にすると、唇にキスをした。
    そして、耳元で囁く。
    「僕の事、好きにしていいんだよ♡」
    僕はエーミールに飛びかかった。

  • 8二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 04:42:41

    「で?それでどうなったんだい?」
    客は短くなった巻きタバコを灰皿に押し付け、最後の煙を吐いた
    「語ってもいいんだが…すまない、もう帰らないと」
    客は懐から懐中時計を取り出して見ると、帰り支度をはじめる。
    わたしが不満そうな顔をすると、客は微笑を浮かべた。
    「そんなに残念そうにしないでくれよ」と、それから彼は言った。
    「次に来た時はまたじっくり後のことを聞かせてやるからさ。早く帰らないと妻と息子が拗ねるんだ」
    客は帽子を被ると一礼をして去っていった。
    外を見ると、暗闇の中ランプの明かりに照らされた彼が足早に道を歩いているのが見えた。

  • 9二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 04:49:00
  • 10二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 04:50:36

    そこで話やめたら残念そうにもしますわ

  • 11二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 05:13:08

    これが教科書にのったら小学生の性癖が危ないのでは

  • 12二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 10:01:49

    湿度が高いヤンデレはいいぞぉ…

  • 13二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 11:04:47

    最後まで読んじまったじゃねぇか!!

  • 14二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 11:06:54

    >>11

    僕っ子

    ヤンデレ

    ボーイッシュ


    3OUTですね

  • 15二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 11:08:36

    これは良いハピエン(しろめ)

  • 16二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 11:12:40

    少年は階段を登り大人へと羽化したのだ

  • 17二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 11:58:37

    やぎのスレもそうだけどここたまに文豪現れるよな

  • 18二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 12:09:37

    >>早く帰らないと妻と息子が拗ねるんだ

    なんか洒落てて好き

  • 19二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 12:46:53

    大丈夫?
    実は妻と息子じゃなくて妻と娘だったりしない?

  • 20二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 12:51:17

    懐かしいなあ国語の時間で音読させられたわ

  • 21二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 12:56:02

    >>19

    ヤンデレ遺伝子もきっちり受け継がれてそうだな。クソボケパパの子種があぶない。

  • 22二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 12:56:20

    >>20

    これを!?

  • 23二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 12:57:11

    >>16

    オスのカマキリがメスに食われる画しか思い浮かばなかったが

  • 24二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 13:05:28

    ああそうか
    この日を堺に少年ではなくなったから少年としては最後の日なのか

  • 25二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 13:09:38
  • 26二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 13:15:40

    そうかそうか♡つまり君はそんなやつだったんだな♡

    狂おしいほど好き
    今後エーミールの台詞を普通に読める気がしない

  • 27二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 13:19:42

    国語の教科書でセリフに♡がつくと言う暴挙よ

  • 28二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 13:22:01

    おい、濃厚なインピオが見られるという話はどこにいった?

  • 29二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 13:23:26

    また議論スレかと思ったらシコスレだった

  • 30二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 13:37:56

    >>28

    読みたいならテメーが書くんだよ

    男だと思ってた相手に雌を感じて「かたくなる」した少年(もうすぐ少年ではなくなる)がナニしたかって話をよ

  • 31二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 13:39:57

    うーんこれはノーベル文学賞

  • 32二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 13:41:51

    ヤンデレっぽいけど好きな子に近付くために同じ趣味を始めるあたり子供って感じがして好き。
    もっと書いて、書け

  • 33二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 16:23:01

    ポケットからパンツ出てきた所で声上げて笑ったわ

  • 34二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 16:27:44

    「僕」がエーミールに、ボーイッシュな女のコが好きな性癖に上書きされる展開はまだですか

  • 35二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 16:29:01

    またなんか作品が生まれたか

  • 36二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 16:37:47

    エーミールが主人公を襲う場面が一番ハート多くて笑った

  • 37二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 16:39:07

    いいやn

  • 38二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 17:54:30

    他の教科書作品でもやれ!!

  • 39二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 18:38:18

    >>34

    手遅れだろ…

  • 40二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 19:51:21

    これ素晴らしいな

  • 41二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 19:56:37

    >>36

    その部分にしか♡ないだろ…?と読み返して終わったところで勘違いに気づいた

  • 42二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 22:27:04

    ええやん
    行為の途中も書け
    ついでにその後結婚して子供こさえるまでも書け

  • 43二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 01:51:41

    保守

  • 44二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 07:55:31

    3匹のメス山羊のがらがらどんといいコレといい新解釈名作シリーズの旬が今年も来たな

  • 45二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 19:10:15

    本編からはかけ離れた爽やかな読後感
    いいぞもっとやれ

  • 46二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 20:16:32

    名作シリーズもっと読みたいわ

  • 47二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 23:04:23

    続きよこせ

  • 48二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 23:51:20

    そうかそうか♡つまり君はそんなやつだったんだな♡

    エーミールの決め台詞にこんな調理の仕方があったとは…
    ありがとう
    ありがとう

  • 49二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 00:25:30

    僕の母「おまえはエーミールのところに行かなければなりません。
    そして、自分でそう(結婚すると)言わなくてはなりません。それより他に、どうしようもありません。
    おまえのもっているもののうちから、どれかを埋め合わせにより抜いてもらうように、申し出るのです。
    そして、(責任を取って)許してもらうように頼まなければなりません」

  • 50二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 01:35:24

    >>49

    義両親への挨拶かな?

  • 51二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 01:44:02

    夏の葬列と混ぜて♡

  • 52二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 12:57:41

    保守

  • 53二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 21:46:21

    そうかそうか♡つまり君はそんなやつだったんだな♡

  • 54二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 21:53:58

    ありがとう…ありがとう…
    今国語と日本とスレ主に感謝している

  • 55二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 01:02:09

    タイトルも何が違うか最初気づかなかった
    読み終えたら秀逸だった

  • 56二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 02:17:11

    僕っ娘エーミールとは…
    素晴らしいものを読ませていただいた、ありがとう
    これは小学生の時に習いたかったわ…

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