【SS・CP・閲覧注意】幼少期からウタの匂いを嗅ぐのが好きなルフィ PART6

  • 1二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 23:07:37
  • 2123/02/07(火) 23:10:06
  • 3123/02/07(火) 23:10:31
  • 4123/02/07(火) 23:11:29
  • 5123/02/07(火) 23:12:53
  • 6二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 23:13:25

    たて乙!
    どこまでも続くのさ…

  • 7二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 23:15:31

  • 8123/02/07(火) 23:19:02

    ここはウタ限定匂いフェチなルフィと「ルフィならまあいいよ」なウタが嗅ぎつ嗅がれつしたり一緒にお風呂入ったりする文をスレ主がつらつらと投げていくスレです

    前スレでルフィは船出してウタは配信活動を始めました

  • 9123/02/07(火) 23:22:40

    「……え……」

    「………………」

    「……何、これ……どういうこと……?」

    「見ての通りだ……私も目を疑った」

    「壊滅って……だ、だって私、ついこの前も電伝虫でルフィと話したばっかりだよ……??」

    「真偽は分からない。新聞に書かれていることが真実とは限らない……

    だがこうも大々的に取り上げられている以上、彼らに何かよくないことがあったということは確かだろう……」

    「そん、な…………」


    ぐらりと眩暈がしたような気がした。

    海賊なんてものをやっている以上、いつ何が起こってもおかしくないことぐらいは分かってる。


    だけど、こんなあっけない終わり方なんてない。


    いやだ。信じたくない。

  • 10二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 23:25:26

    楽譜「お?なんかいい感じの負の感情が...?」

  • 11123/02/07(火) 23:27:06

    「……そ、そうだ、電伝虫……!」


    いつでもかけられるようにと、寝る時は枕元に置いてある電伝虫。

    つい2、3日前にも長電してしまい、翌朝なかなか起きられなかったところだ。

    もしかしたら何かの間違いかもしれない。

    一縷の望みに縋るかのように、私は電伝虫のボタンを押した。


    プルプルプルプル

    プルプルプルプル


    プルプルプルプル

    プルプルプルプル


    「……出ない……」


    いつまで経っても、向こう側の受話器が持ち上がる気配はなかった。

  • 12123/02/07(火) 23:31:51

    これまでも買い出し中だったとか昼寝中だったとかで繋がらないことは時々あった。

    だけどそういう時はいつも、そう時間を空けずにルフィの方から折り返しの連絡が来る。

    『悪ィ!寝てた!』なんて開口一番謝ってくるルフィはなかなか見られるものじゃない。


    それに、誰かと戦うために上陸するとかでしばらく出られなさそうな時は、決まってルフィの方から連絡が来る。

    そういう時のルフィは態度こそいつもと変わらないけど、声が纏う雰囲気がいつもより真剣なものになる。

    そんな連絡を貰った時は私も覚悟を決めて、『気をつけて』と『頑張って』を込めて一曲歌って送り出してあげるのがお約束になっていた。


    だけど、今回は明らかにいつもと雰囲気が違う。


    いつまで待っても、折り返しの電伝虫は鳴らない。

    そんな気がした。

  • 13二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 23:36:17

    ウタにルフィの生存知らせるためにエース処刑日早く(クソ野郎)

  • 14123/02/07(火) 23:37:05

    「ウタ、気休めかもしれないが……落ち着いて聞いてくれ。

    隅から隅までこの記事を読んだんだが、『死亡した』とか『捕縛された』とかの文言はどこにもない。

    ただ、『忽然と姿を消した』と表現されている。これが何を意味しているのかは……私には分からない」


    「………………」


    いっそはっきり言ってくれてた方が諦めもついたかもしれない。諦めるなんて絶対嫌だけど。

    何かあったことは分かるけど、何があったかは分からない。

    そんな宙ぶらりんの状態が、私の神経をすり減らしていった。


    それと同時に。


    割と立ち直ったつもりでいたけど、未だに私の中のルフィが占める割合が自分で思っている以上に大きかったことに、今更ながら気付かされた。

  • 15二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 23:39:00

    モルガンズの拠点のすぐそばを飛ばされてる途中のルフィが横切って記事になるとかないですかね?

  • 16123/02/07(火) 23:40:58

    ────────────────

    ガシャーンッ

    『うわっ!』
    『な、何!?』

    「あっ、ご、ごめん!落としちゃった!」


    強張る身体を無理やり動かして配信もやってみたけど、てんでダメ。

    思うように声も出ないし、動きも自分で分かるぐらいぎこちない。そもそも全く集中できてない。

    癒しを求めて見に来てくれてる人を逆に心配させてしまう始末だった。


    『ウタちゃん、何だか顔色悪いよ……?』
    『体調が悪いなら無理しないでね?』
    『元気になってから配信してくれれば、それでいいからさ!』


    「……ごめん、みんな……」


    結局その日の配信は途中で打ち切った。

    電伝虫にさえも心配そうな目で見られているような気がした。

  • 17123/02/07(火) 23:45:29

    「………………」


    普段はいい気晴らしになるはずの散歩も、今日は全然楽しくない。

    いつもなら海沿いを歩いて、漂ってくる潮風の香りに、海の向こうにいる彼に思いを馳せる。

    だけど今日は、そんな海さえも見ているだけで憂鬱になった。


    この海さえなければ、歩いてルフィを探しに行けるのに────


    ……私はよっぽど参っているらしい。自分の妄想があまりにも馬鹿馬鹿しくなって、一つため息を漏らした後さっさとお城へ戻る事にした。


    だけど、悪い知らせは畳み掛けるように続く。

    数日後にゴードンが見せてくれた新聞には、またもよく知る名前が物騒な単語と共に一面を飾っていた。


    『海賊"白ひげ" エドワード・ニューゲート 死亡

    及び海賊"火拳"のエース 死亡』

  • 18123/02/07(火) 23:50:13

    「エース…………」

    「ルフィ君のお兄さんだったな……まさかあの海賊王の息子だったとは……」


    どうしてエースが死んでしまったのか、エースが死ななければならなかったのか……私にはよく分からなかった。

    ……でも、誰の息子とか娘とか、そんなことはどっちでも良かった。


    子供の頃の電伝虫越しの声しか知らないけど、淡いはずの記憶がしっかりと思い出される。

    口は悪いけど、弟想いの素敵なお兄ちゃんだった。砂漠の国で偶然再会したって話をするルフィがいつになく嬉しそうだったのはよく覚えてる。


    ……結局、1回も会えなかった。それが心残り。



    しかも新聞には、この地獄のような戦場にルフィも乗り込んでいたということも書いてあった。

  • 19123/02/07(火) 23:54:15

    どういう経緯かは分からないけど、理由は何となく分かる。

    少し前にルフィ達が世界政府の重要機関に乗り込んで大暴れしたという新聞記事が出回っていた。

    流石にこれはどうなんだと思って連絡してみたら、「取られた仲間を取り返しただけだ」とあっさり言ってのけた。

    いいなあ、ルフィの仲間が羨ましい。どんなに強大な敵が相手でも奪い返しにしてくれるんだから。

    だからきっとこの戦場にも、同じようにどうにかしてエースを救けに行ったんだろう。


    つまりルフィは、救けに行ったはずのエースを目の前で失ったということ。


    エースも弟想いだったけど、ルフィも負けないぐらいお兄ちゃん想いだった。

    そんなルフィが、手の届くところにいた兄を救えなくかった……その心情はちょっと想像したくない。


    それにもう一つ辛かったのが、ルフィの存在がまるでオマケみたいにちっぽけに扱われていたこと。

  • 20123/02/07(火) 23:58:44

    昔シャンクスに聞いたことがある。白ひげって人は、今のこの世界で一番強い海賊らしい。

    そんな人達と海軍全戦力の戦いなら、まだまだ駆け出しのルフィが爪弾きにされるのも仕方ないことなのかもしれない。

    だけど、当の本人がそれで納得できるかと言われれば、そんなわけがない。


    救けに行ったはずのお兄ちゃんは救えず、それどころか逆に自分の無力さをまざまざと痛感させられて……

    今のルフィがどれだけ辛い思いをしているのか、私には想像も出来ない。


    そんなルフィに、私は何か声をかけることすらできない。

    配信を見てくれてるファンのみんなには寄り添えるのに、たった1人の大事な人には寄り添うことさえもできない。


    辛くて歯痒くて、どうにかなってしまいそうだった。

  • 21123/02/08(水) 00:02:57

    配信はしばらく休んでる。

    今の心の状態で配信なんてやっても、前と同じように心配されて強制終了が関の山だ。


    ゴードンは気を遣ってか、落ち込んでいる私に必要以上に干渉してくることはしなかった。

    ゴードンにキツく当たってしまうのも嫌だったから、その気遣いには感謝しないといけない。


    ……だけど、ちょっと寂しい気持ちがあるのも、また事実。


    それから、あの新聞記事には肝心なことが書いてなかった。

    もうルフィだって3億だかの賞金首だったはず。

    考えたくないけど、もしルフィが…………なら、大なり小なり記事で触れる……筈。

    だけど、そんな文言はどこにもなかった。だからまあ、生きてることだけは確信してたけど……


    結局ルフィがどうなったのかは、分からないままだった。

  • 22二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 00:06:43

    サニー号守護してるクマさんが気を利かせて船に置いてあったであろう電伝虫をルスカイナに飛ばしてくれねえかな...

  • 23123/02/08(水) 00:09:26

    本日はここまで
    死亡説とか出てそう(すっとぼけ)

  • 24二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 01:15:34

    波乱一つ目かな…

  • 25二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 06:54:29

    3d2yの記事でなんとかなるかな

  • 26二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 07:24:04

    保守

  • 27二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 07:57:56

    3d2yで愛の告白しないかなー

  • 28二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 12:08:11

    なんとか連絡だけでもできればなあ

  • 29二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 21:29:40

    ぐぬぅ歯がゆい…

  • 30二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 21:45:15

    レイリー→シャッキー経由でルフィの伝言伝えれたりしないかなぁ

  • 31123/02/08(水) 22:28:14

    無理に難しい単語使おうとして誤用するとすごく恥ずかしいからみんな気をつけような(爪弾きの意味を調べながら)

    明日はニンダイなので今日は少しだけ

  • 32123/02/08(水) 22:29:01

    「ウタ、少しいいか……?」


    次にゴードンが新聞を持ってきたのは、それからしばらくしてのことだった。

    期間で言えば多分一ヶ月にも満たない。もしかするとほんの一週間程度だったかもしれない。

    シャンクスに置いて行かれた当初の虚無の時間を思い出すような生活をしていると、ゴードンが困惑顔でおずおずと部屋を訪ねてきた。


    「……? どうしたのゴードン?ルフィの記事でもあった?」

    「ああ、そのことなんだが……」

    「え!?ホントにあったの!?」


    半分冗談で言ったつもりだったから若干オーバーなぐらい驚いてしまった。

    慌ててベッドから跳ね起きて、差し出された新聞を半ばひったくるように受け取る。

    ゴードンがこんな顔をしている以上、手放しで喜べる記事では無いんだろうけど……


    「…………何これ?」

  • 33123/02/08(水) 22:33:28

    『らしくない』というのは、きっとこの写真に写ったルフィのようなことを言うんだろう。

    戦場のど真ん中で、麦わら帽子を胸に当て黙祷するルフィ。

    流石に生きていることを確認できた喜びの方がずっと大きかったけど……

    『自分の知っているルフィじゃない』というよく分からない困惑も、頭の隅っこにずっと残っていた。


    「私は君ほどルフィ君のことを知っているわけではないが……彼はこんな行動を取るような男だったか?」

    「いやしない、こんなことしないルフィは。

    ……でも現にやってるんだよね……誰かの入れ知恵なのかな……?


    ……ん?あれ?」


    写真をよく見ると、ルフィの右腕に見覚えのないタトゥーがあった。

    妙な存在感を放つそれは、一体何を表しているんだろうか。

  • 34123/02/08(水) 22:37:31

    「何だろこれ……」

    「3Dに×をして2Y……?ウタにも分からないのか?」

    「うん、分かんない……」


    多分これは、ルフィから今の仲間達へ向けた何らかのメッセージ。

    私へ向けたものじゃないなら、私に分からなくて当然だ。


    きっとルフィが切羽詰まってる中で必死に考えた結果の行動だ。

    そのメッセージを伝えようと思ったのが今の仲間達だったってだけ。


    その対象の中に、私がいないのも仕方ない。

    仕方ないんだ。


    「………………」






    プルプルプルプル

  • 35123/02/08(水) 22:41:46

    「…………?」


    待てど暮らせどついに鳴らなかった電伝虫が、突然鳴り始めた。

    この個体の番号はルフィとマキノさんしか知らないはず。もしルフィが仲間に教えてたりしたらその人達も知ってるかもしれないけど。

    ルフィは勿論、フーシャ村にいた個体はルフィが持って行ってしまったから多分マキノさんでもない。一体誰からだろう?

    慌てて持ち上げたせいで取り落としそうになった受話器を何とかキャッチして、恐る恐る顔へと近づける。


    「……もしもし」


    『………………』

    「…………? もしもし?」


    『……ん? あ、これもう繋がってんのか?』


    「………………え?」



    『おし、その声はウタだな!

    おれだ、ルフィだよ!』

  • 3623/02/08(水) 22:46:11

    「…………ル、フィ?」


    せっかく拾い上げた受話器をまた落としそうになる。

    受話器から聞こえてきたのは、今この場で聴けるとは思っていなかった、でも誰よりも聴きたかったはずの声だった。


    「……なん、で……?」


    『ししし!何回もウタにかけてたから、そっちの番号覚えちまってよ!ちゃんと繋がってよかった!

    今この電伝虫はちょっと借りてんだ!おれのはサニー号に置きっぱなしだからな!』


    「え、あ…………」


    何か言いたいのに、口から何も出てこない。

    代わりに両目から溢れてきたのは、止めどない涙。


    「……そっ、か……」

  • 3723/02/08(水) 22:50:40

    「……ルフィ、なんだよね?

    ……ホントに……ルフィなんだよ、ね…………?」


    『……ウタ?』


    今の自分の気持ちは、何て言い表せばいいんだろうか。


    未だに状況がいまいち飲み込めず、困惑の気持ちが少し。

    『何を呑気に笑ってるんだ、どれだけ心配したと思ってるんだ』の怒りがほんの少し。


    そして、大好きな幼馴染がその変わらない元気な声を聴かせてくれたことに対する安堵が、残りの全部。



    「……よかった…………



    ……よ゛か゛っ゛た゛よ゛ぉ゛…………!!」

  • 3823/02/08(水) 22:55:27

    『………………』

    「わだじ……ずっどるふぃのこどじんぱいで……

    ごはんもだべられなぐで……うたもちゃんどうだえなくで……!

    はいじんもずっどやずんでて、ごーどんにもみんなにもしんぱいかげで……

    それでもるふぃが、るふぃが……


    …………よがっだぁ……ほんとに、よがっだよぉ……!!

    ……う……うえぇ…………!」


    『…………心配かけちまったな。ごめんな』

    「……………………


    ……ゔゔん……ゆるじであげる……いぎででぐれだから……!」

    『……ニシシ、やっぱりウタは優しいなァ!』

  • 3923/02/08(水) 22:58:41

    本日はここまで
    誰に電伝虫借りたかは知らん

  • 40二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 23:37:30

    よかったねぇ

  • 41二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 23:42:02

    愛だなあ

  • 42二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 23:51:48

    純愛だ…

  • 43二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 01:18:13

    うわぁぁぁ!!!
    キスしろォォォ!!!!!!!

  • 44二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 07:01:39

    よかったよかった

  • 45二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 10:41:31

    よかった……本当によかった……!
    それはそれとして、ルフィが電伝虫の番号憶えてるって何気にすごい気がする

  • 46二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 19:16:40

    早めに連絡とれてよかった

  • 47123/02/09(木) 22:03:58

    本日お休み

  • 48二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 22:06:30

    >>47

    お待ちしております!

  • 49二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 06:35:25

    >>47

    待機!!

  • 50二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 12:30:16

  • 51二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 21:32:31

    ほ!

  • 52123/02/10(金) 22:53:08

    ダメだ展開糞詰まりだ
    今日ちょっと書けないかもしれない

  • 53二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 04:43:17

    待っとくで

  • 54二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 13:16:24

    >>47

    いつまでも待ちます!

  • 55二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 13:20:03

    あげとこ

  • 56二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 15:13:57

    >>52

    半年くらいなら待てる

    ぼちぼち書いてってくれ

  • 57123/02/11(土) 19:37:06

    あんまり間を空けると自分が書くことに飽きてしまうのが何よりも怖いのよね

    じゃあ本日の書き上がった分だけ

  • 58123/02/11(土) 19:37:46

    ───────────────

    『……大丈夫か?』

    「ズズッ……ズビーッ!!

    ……ゔん、もう大丈夫。ちょっと泣きすぎちゃった、ごめんね」

    『なんでウタが謝んだよ、心配かけたのはおれだろ?』

    「うん……

    ……新聞、読んだよ」


    『!』

    「……エースがどうなっちゃったとか、ルフィの仲間がどうなったとか……

    新聞に書いてあることしか分かんなかったけど……


    ……ルフィも、色々あったんだね」


    「……まァな」

  • 59123/02/11(土) 19:41:37

    「新聞読んでるだけで、ルフィが今すごく辛い思いしてるんだろうなってことは分かったよ。

    生きてるってことは確信してたけど……どんなに辛いか、私には想像もできなかったぐらい。


    ……でもそんなルフィに、私は何もしてあげられなかった」


    「……何言ってんだお前?」

    「……私ね、ルフィと連絡取れなくなって初めて気がついたんだ。

    今の私が立ち直れてるのは、全部ルフィのおかげだったんだって。

    私はこんなに救われてるのに、どうして私はルフィに何もしてあげられないんだろうって。


    ……それがすっごく辛かった」


    「………………」

    「だからせめて、謝らせてよ。ルフィに何もできなかった私に……」



    「イヤだ、聞かねェ」

  • 60123/02/11(土) 19:44:43

    「……え?」

    『……なあウタ、おれウタに謝られたくて連絡したんじゃねェよ。

    ウタが悪いことなんて何一つ無いのに、そんな辛そうな声なんて聞きたくねェ。イヤだ』

    「で、でも……」


    『……………………』


    「…………分かったよ。もう言わない」

    『……ん』


    「でも、それじゃあどうしたの?無事を教えてくれる為に連絡してくれたの?」

    『それもあるけど……ウタにはちゃんと言っとかねェとと思ってよ』

    「? 何を?」


    『おれ、ちょっと立ち止まるよ』

  • 61123/02/11(土) 19:47:21

    「……へ?」

    『……今までずっと突っ走って来たけど……あの戦場に飛び込んで、エースを助けられなくて……思い知った。

    今のおれじゃまだまだ足りねェ。海賊王になるにも、新時代を作るにも……全然足りなかった。


    だから、海賊"麦わらのルフィ"はちょっと休業だ』


    「……休、業?」


    『ああ!稽古をつけてくれるっていうすげェ強いおっさんがいるんだよ。

    そのおっさんに目一杯しごいてもらって、そっからもう一回スタートだ!』


    「………………」


    『今のおれの仲間達とはおれ達しか知らねェ約束してたからな、新聞の写真で伝わったはずだ。

    でも、ウタにはあれじゃあ伝わらねェと思ってな。だからちょっと無理言って電伝虫借りたんだ』

  • 62123/02/11(土) 19:51:09

    「…………そっか」


    ……思い知らされたのは、正直私も同じだった。

    ルフィはいつか必ず海賊王になると、心のどこかで確信していた。

    だから、此度ルフィが壁にぶち当たって挫折したことを知った時は、まるで自分のことのように辛かった。


    「……どれぐらい修行するの?」

    『2年だ。仲間にもそう伝えてある』

    「2年……」

    『ああ、その間はちょっとどっかの島に篭りきりになる。だからこれが修行前の最後の通話だ』


    「………………そっか。


    ……ルフィがそう決めたんなら、私も応援するよ。頑張ってねルフィ」

    『おう!ありがとう!』

  • 63二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 19:54:34

    REDウタはこの辺りで歌活動始めて2年で世界一の歌姫なってんだから、成り上がりスピードで言えばルフィよりずっとヤバい...

  • 64123/02/11(土) 19:54:56

    「……でも知らないよ〜?ルフィがまた戻ってきた時、私の方が先に『新時代』作っちゃってるかもね?」

    『そん時はそん時だ!おれもおれの『新時代』を作って、もう一回お前と勝負だ!』

    「あはは、私だって負けないんだから!ルフィが作る新時代、楽しみにしてるからね!



    …………それでさ、ルフィ」

    『ん?』

    「この通話を切ったら……また2年間、ルフィお預けになるんでしょ?」

    『んー、まァそうなるな』


    「……じゃあ、もうちょっと話してたいな。ルフィの時間が許す限り……」

    『おー、いいぞ!じゃあ……』


    ……私、昔より寂しがり屋になった気がする。

    何とか寂しくない方法を考えないと……

  • 65123/02/11(土) 19:58:49

    ─────────────────

    「みんな、元気?ウタだよ!

    みんな久しぶりだね〜。ちょっと色々あって、しばらく休んじゃっててごめんね」


    暫くぶりに配信をつけてみた。

    うん、いい感じ。今の私、きっとちゃんと笑えてる。


    「でももう大丈夫!今日から完全復活だよ!」

    『ウタちゃん久しぶりー!』
    『戻ってくるのを待ってたよ!』
    『またウタの歌を聴けるの楽しみにしてたんだ!』

    「ふふ、みんなが喜んでくれて嬉しいな♪それじゃ早速景気付けに一曲……」


    『……あれ?ウタちゃん……』

    「ん?どうしたの?」


    『その腕のカバー、前からつけてた?』

  • 66123/02/11(土) 20:02:36

    「お、よく気がついたね!これは充電期間中にこっそり自作した特製アームカバー!

    新生ウタちゃんはこれ付けて活動していくから、みんなよろしくね!」

    『可愛い色だね』
    『似合ってるよ!』
    『そのマークは何?』

    「ふふふ、よくぞ聞いてくれました!

    これは『新時代』のマーク!私の歌でみんなを幸せにして、『新時代』を作るのが私の夢なんだ!

    ……まあ、このマークを考えたのは私じゃなくて友達なんだけどね」


    昔ルフィが私に押し付けてきた、ひょうたんみたいな麦わら帽子のマーク。

    次にルフィと会った時、私が約束忘れてないってすぐ分かるように、よく見えるところにつけておいた。


    ……私からも、よく見えるところに。


    大丈夫。これならきっと、寂しくない。

  • 67123/02/11(土) 20:06:06

    ……東の海以外のことは配信の画面越しにしか知らなかった私だけど、外の情報は電伝虫を通して彼方此方から私の元に届いてきた。


    【白ひげ】が海軍に負けていなくなってから、海のバランスは一気に崩れて、以前にも増して海賊が好き勝手するようになったらしい。

    エレジア近海にも時々海賊がやって来るようになってきた。この島が滅んだエレジアだと分かれば、大体はそのまま引き返していくけど。


    配信を見てくれているファンのみんなも、いつからか辛そうな顔をしている人が増えてきた。

    服がボロボロだったり、ケガをしていたり、病気なのかは分からないけど痩せ細っていたり。

    毎回欠かさず見てくれていた人がある時からぱったりと姿を見せなくなった、なんてこともあった。


    そういう人たちはみんな、決まって「海賊のせいだ」と口を揃えて言う。

    街を焼いたのも海賊、宝を奪ったのも海賊、家族や友達を殺したのも……海賊。

  • 68123/02/11(土) 20:09:26

    もしかするとシャンクス達は、海賊というもののそういった面を私に見せないようにしていたのかもしれない。

    きっと私を気遣ってのこと。シャンクス達のことはずっと好きだし、何があってもそこは変わらないけど……

    もし子供の時にそういう一面を見せられていたら、【海賊】を好きでいられたかは……ちょっと分からない。


    現に今、私は【海賊】が嫌いになってきている。


    シャンクス達やルフィみたいに、所謂『いい海賊』がいることは、私は知ってる。

    でも、大多数の海賊はそうじゃない。


    ファンのみんなを苦しめるような悪い海賊は大嫌いだ。

    いつからか、私は『海賊嫌い』を公言するようになった。

  • 69二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 20:11:58

    何だか雲行きが怪しくなってきたわね…

  • 70123/02/11(土) 20:14:02

    ────────────────

    「………………」

    「……? どうしたのゴードン?」

    「いや……最近ウタが少し元気がないように見えてな……」

    「え、そう?」

    「配信もほぼ毎日続けているだろう。疲れは溜まっていないか?たまには休むことも大事だぞ」

    「うーん、確かにちょっと疲れてるかも……

    分かった。明日はちょっと休息に充てるよ」

    「ああ、それがいい。

    ……それに……」

    「?」


    「……今のお前が、海賊嫌いを名乗っているのは知っている」

    「!」

  • 71123/02/11(土) 20:17:11

    「今は酷い時代だ。ファンの話を聞いていれば、優しいお前が海賊を嫌いになるのも無理はない。

    だが、シャンクスやルフィ君達まで嫌いになってしまったのではないかと、少し心配になってな……」

    「そこは……うん、大丈夫。シャンクスのこともルフィのことも大好きだよ。

    まあ、2人とももう有名な海賊だし、流石に配信でみんなには言えないけどね」

    「そうか……」

    「…………だけどまあ、これは私のワガママなんだけど……」

    「?」

    「電伝虫なり何なりでずっと繋がっていられたルフィと引き離されちゃったのはすごく寂しいし……

    シャンクス達も……一回ぐらいは様子見に来てくれてもいいんじゃないかな……とは思ってるよ」

    「………………


    ……シャンクス達に関しては私も文句を言う権利はあると思う」

    「いやあるよありまくりだよ、やっぱりゴードンもそう思う?」

  • 72123/02/11(土) 20:20:17

    「ハハハ……まあそれは冗談としてだ。

    どうだ、久しぶりにフーシャ村へ行かないか?いい気分転換にもなるだろう」

    「あ、行きたい!連れてってゴードン!」

    「よし来た。なら今日はゆっくり休んで、明日出発するとしよう」

    「うん!ありがとう!」


    ゴードンは配信の内容には口を出してこないけど、よく相談に乗ってくれる。

    そのおかげもあってか、私は増え続けるファンの数にも臆することなく配信を続けられていた。


    だけど、時々不安になることもある。

    『海賊嫌い』を公言するようになってから、私のことを【救世主】扱いする人達が出てきた。

    余程酷い目に遭わされたであろうこの人達は、ただの歌い手でしかない私にまるで縋るようにその数を増やしていった。

    そんな彼らには、果たして歌声だけで足りるのだろうか。私は彼らを本当に幸せに出来ているんだろうか。


    そんなことを考えながらも、待ってくれている人達の為に私は今日も配信を続ける。

    私の心が、日に日に歪んでいっているとも知らずに。

  • 73123/02/11(土) 20:25:21

    私も一度、ルフィみたいに立ち止まった方がよかったのかもしれない。

    『海賊嫌い』の私と、ルフィやシャンクス達が大好きな私の板挟み。


    日に日に増えていくファンの救いを求める声が、
    大好きな人の声を聞けない寂しさが、

    その歪みを加速させていく。


    そんな状態が1年ほど続いて……


    少しずつ、自分では気づけないぐらい少しずつ。



    私の心は、歪にひび割れ始めていた。










    「……あれ、何だろ?この映像電伝虫……」

  • 74二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 20:28:26

    出たなREDでトットムジカの時間切れに並ぶウタを絶対苦しめる制作の意志が宿った存在

  • 75123/02/11(土) 20:28:27

    本日はここまで

    正直シャンクス達の思惑を知ってて嫌っていなかったとしても
    配信してる限りウタちゃんが『海賊』を嫌いになるのは避けられないと思うんですよね

  • 76二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 20:30:02

    寸止めプレイは身体に悪いと言われてるぞ貴様ァ!

    ルフィに会えない寂しさも含まれてるなら麦わらの一味復活で多少持ち直す可能性が無きにしも非ずだが...

  • 77二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 20:36:40

    もう吐きそう

    晴れるまで逃げるか

  • 78二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 20:39:24

    確かに、シャンクス含む赤髪海賊団とルフィが傍にいない状態で配信してたら、「海賊嫌い」にはなりそうだ
    それはそれとして今後が不穏すぎてハラハラするぜ

  • 79二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 22:48:31

    出ました新時代マーク

  • 80二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 00:21:18

    早く匂いフェチ展開に戻ってくれぇ

  • 81二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 03:22:11

    !!!

  • 82二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 12:08:24

    その電伝虫はヤバいよ…

  • 83二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 21:01:08

    ほぴ

  • 84123/02/12(日) 21:01:14

    おれも早いとこフェチ展開に戻したいよ

  • 85123/02/12(日) 21:01:38

    ─────────────────

    「………………

    ウタが起きてこないな……?」


    いつもと変わらないはずの朝は、もう昼に変わろうとしている。

    妙な胸騒ぎを感じた私は、ウタの部屋へと足を運んだ。


    コンコン

    「ウタ?起きているのか?」


    ノックをするも返事はない。

    代わりに聞こえたのは、扉の金具が擦れるキィという音。


    「開いている……? ウタ、入るぞ」


    カーテンを閉め切ったままの部屋は、もう昼も間近だというのに薄暗い。

    ふとベッドに目をやると、掛け布団が人間1人分程度の大きさの山に盛り上がっていた。

  • 86123/02/12(日) 21:05:34

    「ウタ……?」


    状況から考えて、あの布団の下にいるのはウタだと考えて間違いない。

    だが一体どうしたというんだ?昨晩は特に変わった様子は無かったはずだが……


    一先ず部屋の灯りを点け、ウタがいるであろうベッドに歩み寄る。

    机の上に見覚えのない映像電伝虫がいるのが目に入ったが、今はウタに話を聞くことが先決だ。


    「どうしたんだウタ、具合でも悪いのか……?」

    「…………ッ…………う、ぅ……」


    相変わらず返事はない。

    だがよく耳をすませば、啜り泣くようなか細いウタの声が聞こえる。


    その泣き声を聞き、私は意を決してその掛け布団の山を剥ぎ取った。



    そこにいたのは、目を真っ赤に泣き腫らし、何かに怯えたような目でこちらを見上げるウタの姿だった。

  • 87123/02/12(日) 21:09:39

    「……ゴードン…………?」

    「……!? どうしたんだウタ!?一体何があったんだ!?」


    「…………ゴードン……

    ……私……わたしぃ…………!」


    私を視界に捉えると、ウタはまたボロボロと涙を流し始める。

    何がどうなっているのかは分からないが、今のウタをこのままにしていてはいけないことだけは分かった。


    「お、落ち着けウタ、大丈夫、大丈夫だ……」

    「う、うえぇ……えぇぇええん……!」


    これ以上傷つけぬようそっと優しく抱きしめてるも、腕の中のウタの身体は酷く冷たく感じた。

    力無くふるふると震える姿は、昨日までの元気な姿とはあまりにもかけ離れている。

    一体彼女の身に何があったのだろうか……

  • 88123/02/12(日) 21:14:02

    ────────────────

    「大丈夫か?」

    「うん…………」


    ようやく少し落ち着いたところで、ウタが着替え終わるのを部屋の外で待ってから広間へと連れ出す。

    落ち着いたとは言っても、やはりウタは元気がなく終始俯いている。


    「何があったのか、教えてくれないか……?」

    「…………………」


    訳を聞いてもウタは黙ったまま。こちらを見ようともしない。

    だが、ここでふと先ほど目にした電伝虫のことを思い出す。


    「……机の上にあった、あの電伝虫か?」

    「!!!」

    「……その反応、やはりあれが原因……」


    「ダメ!!!!」

  • 89123/02/12(日) 21:18:35

    「!?」


    ずっと俯いていたウタが勢いよく立ち上がりながら叫んだ。

    その顔には混乱、恐怖、罪悪感、その他様々な負の感情が混ざり合った表情が貼り付いている。


    「ダメ……絶対ダメ……ゴードンがあんなの見たら……ダメだよ絶対……」

    「ウタ…………」


    見てはいけない、とうわ言のように繰り返すウタを前にして、私は恐怖にも似た感情を抱いてしまっていた。

    だが、ここで「そうか」と引き下がっていては何も解決しない。


    「……何が映っていたんだ?」

    「言えない……言えないよそんなこと……!」

  • 90123/02/12(日) 21:23:21

    ウタの姿勢は強硬なままだった。

    だが、依然として私と目を合わせようとしない。


    「ウタ……」

    「絶対だめ……見ちゃだめ………言えない……だめ……あ、やだ……やだあ……!

    あ、ああ、いや……ごめんなさい……ごめんなさいぃ……!」


    ガチガチと歯を鳴らしながら、再び目を潤ませながら、只管に何かに謝りながら、ウタは私から距離を取ろうとする。

    様子がおかしい。明らかに錯乱している。

    その様子を見て、私は何故かエレジア壊滅の真相をウタに話したあの日のことを思い出していた。

    記憶の中のまだ幼かったウタの様子と、今目の前で錯乱しているウタの様子が不自然なほどに重なって見える。

    そして、あの電伝虫の映像を私が見ること極端に恐れる態度。

    ……推測でしかないし、何故そんなものが残っているのかはわからないが……

    恐らくあの電伝虫の中に入っていた映像は…………


    「ごめんなさい……ごめんなさい……」

    「……………………」

  • 91123/02/12(日) 21:28:26

    結局その日は、ウタとそれ以上話をすることはできなかった。

    翌日になれば流石にウタもいくらかは落ち着いていたものの、私に対する態度は何処か余所余所しいものになっていた。


    それから、ウタは私を頑なに部屋に入れないようになった。

    そもそも年頃の女性の部屋に無断で入るなと言われれば当然の話ではあるが……


    結局あの電伝虫は、今もあの部屋で眠っているのだろうか。

    何となく察せてはいても、ウタが話そうとしない以上は私が真相を知る術はなかった。


    そこから数日が経ったある日。

    ウタが日課の散歩に出かけるのを見送った後、私は掃除の為に地下室へと向かった。


    その異変には、すぐに気がついた。



    「…………無い……?




    トットムジカが、無い!?」

  • 92123/02/12(日) 21:35:44

    ──────────────────

    〜 数日前 フーシャ村近海 〜


    「うーむ……この辺りも前に来た時より素人海賊が増えてきたのう。

    これも白ひげが死んだ影響か……しばらくは忙しくなりそうじゃ」

    「ガープ中将、おつる中将より入電です!」

    「ん?」


    『ガープ、アンタ一体どこほっつき歩いてんだい?少し故郷に戻るだけだと言ってたじゃないか』

    「そうカッカするなおつるちゃん!フーシャ村近海の海賊をとっ捕まえとっただけじゃ!」

    『まったく……くれぐれも勝手なマネしてサカズキの悩みのタネを増やすんじゃないよ。ただでさえ海軍は今大変な状況なんだ』

    「ぶわっはっは!海軍が海賊を捕まえて何が悪い!こういうのは出始めを叩くのが大事なんじゃ!

    ……とは言え、この辺りの海賊は粗方とっちめたな。そろそろわしも戻る、サカズキにも伝えといてくれ」

  • 93123/02/12(日) 21:41:19

    「……なあ、今日も配信無いぞ」
    「ああ、どうしちゃったんだろうな……」

    「……ん?お前さんら何を見とるんじゃ」

    「ああ、ガープ中将。そろそろ休憩時間ですし、歌姫ウタの配信を見ようとしたんですけど……」
    「ここのところずっと配信が休みなんですよ。前にも一度こんなことはあったんですけど、何があったのか分からなくて……」

    「ふーむ、歌姫ウタか……確か赤髪の娘じゃったな」

    「え? ……え゛っ!?」
    「あ、赤髪の娘!?」

    「ん?あーいや、これはまだ確かめられてない情報じゃったわ。やっぱナシで」

    「ええ……?」


    「……いや待て、そう言えばエレジアもここからそう遠くなかったはずじゃな……?


    ……よし決めた!おつるちゃん、やっぱわし寄り道してから帰る!!」

    『はあ!?寄り道ったって何処へ行くつもりだい!!』



    「ちょっとエレジア行ってくるわい!!ぶわっはっはっは!!」

  • 94123/02/12(日) 21:44:16

    本日はここまで

    英雄ガープ
    ルフィとウタを引き離した汚名返上なるか

  • 95二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 21:47:43

    えぇ!?トットムジカを一人で殴るガープ!?
    ウタワールドと同時ってギミックなきゃワンチャンいけるかもしれないけど...

  • 96二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 21:59:51

    >>95

    ガープ連れ戻しにおつるさんが現実の方にいるんじゃない?

  • 97二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 22:23:41

    まあたとえ真相知ってたとしても実際自分の歌が原因で国が滅ぶところ見ちゃったらまともじゃいられないわね
    「あの子の歌は世界を滅ぼす」とまで言われてるし

  • 98二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 00:33:41

    じいちゃん何とかしてくれ~

  • 99二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 07:14:01

    おはよう

  • 100二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 13:05:00

  • 101二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 20:56:49

  • 102123/02/13(月) 22:24:08

    明日もちょっと微妙だけどとりあえず今日はお休み

  • 103二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 22:57:38

    ガープでもさすがにトットムジカとタイマンは無理じゃろうな

  • 104二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 06:48:24

  • 105二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 11:11:07

    頼んだぞガープ何とかウタちゃんの心を晴らしてくれ

  • 106二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 19:36:35

  • 107123/02/14(火) 23:03:25

    今日は曇りを少しだけ

  • 108123/02/14(火) 23:04:27

    ────────────────

    「……………………」


    電伝虫の映像が、脳に焼き付いて離れない。

    『あの子の歌は世界を滅ぼす!』という叫び声が、耳にこびり付いて離れない。


    だけど、言いたくなるのも当然だ。

    あの映像を撮っていた人はどれほど怖かっただろう。


    私の歌が招いてしまった惨劇。それをまざまざと見せつけられて。

    犯してしまった罪の大きさを、これでもかというぐらい実感させられてしまった。


    ゴードンから聞かされて、真相は知っていた。分かっていたつもりだった。

    だけど、その光景を実際に見てしまった時……



    私の中で保たれていた何かが、あっさりと崩れ去ってしまった。

  • 109123/02/14(火) 23:07:33

    どうして私だけ前を向けようか。

    どうして私だけ幸せになれようか。


    まだ子供だったあの頃とは違う。

    自分が何をしたのかをはっきりと理解できるようになったからこそ、自分で自分が許せない。


    あんなものを見てしまった以上、今までのように配信を続けていく自信も無くなってしまった。

    あの電伝虫を野生に帰して仕舞えば、もう配信もできなくなる。そんな考えも頭をよぎった。


    ……でも、それだと私の歌を楽しみにしてくれているファンのみんなはどうなるの?

    人を不幸にするような私なんかの歌にでも、それに縋るしか無いような人たちはどうなるの?


    誰か教えてよ。

    一体私は、どうすればいいの?




    ……カサ

  • 110123/02/14(火) 23:11:13

    「ん?」


    足元で何かが擦れるような音がした。

    見下ろすと、何枚かの古ぼけた楽譜。


    「……これ、は…………」


    トットムジカ。


    見間違えるはずもない。

    エレジアを滅ぼして、私と皆んなの全てを狂わせた元凶。


    「なんでここに……?」


    実際に動いてるところは見たことないけど、あの日のパーティでも勝手に封印を解いて私の近くまで来たって言ってたし、多分今回もそうなんだろう。

    だけど、あの日は私の歌声に反応して近づいて来たって言ってた。

    でも今私は歌ってない。今どころか、ここのところ数日は鼻歌すら歌ってない。


    ならどうして?

  • 111123/02/14(火) 23:14:10

    「…………もしかして」


    トットムジカは負の感情の集合体。昔ゴードンが言ってた。

    だとすれば、歌声じゃなくて負の感情に反応して動く、なんてこともあるのかもしれない。

    歌ったら不味いこと以外何も分かってないから全部憶測だけど。


    「……今ならあんたのこと、昔より上手く歌える気がするよ」


    足元のそれを拾い上げると、少し埃っぽい匂いがした。

    譜面だけ見たらほんとにいい歌なんだけどなぁ。

    能力者が歌うだけで国を滅ぼしちゃうなんて、封印されるのも自業自得だよ。



    ……何もかもをめちゃくちゃにした張本人を前にこんな呑気なことを考えてるあたり、私はもうどこか壊れてるのかもしれないなあ。

  • 112123/02/14(火) 23:17:54

    ここだけの話、私は時々この楽譜が封印されてた地下室で1人で歌っていた。

    防音がしっかりしてたし、よく響くからホールみたいで面白いってのもあったけど、本当の理由は他にある。


    このトットムジカに、私の歌を聞かせてあげるためだった。


    負の感情の集合体とはいっても、この楽譜そのものに意志や感情があるかどうかはわからない。

    というか多分、ない。だからこれは私の自己満足。


    ゴードンも多分気づいてはいたんだろうけど、楽譜を残しておくと決めた以上特に口出しはしてこなかった。

    いつかは私の歌でトットムジカも浄化されたりしないかな、なんてことを考えながら歌ったりもしたっけ。


    だけど、私の普段の歌にはうんともすんとも言わなくて、私がこんなに落ち込んでる時にしか出てこないあたり、その試みは無駄だったってことらしい。


    あーあ、やんなっちゃう。

  • 113123/02/14(火) 23:21:16

    ……もういいや。

    なんか色々どうでもよくなってきた。

    お城に戻ろう。


    そう思いながら振り返り、何となくいつも来てしまう高台からエレジアを見下ろす。

    けど、今日見えるエレジアは何故かいつもと違う気がした。


    「……あれ?」


    首を傾げながらキョロキョロと見回してみる。

    違和感の正体は海岸の近く、港にあった。


    見慣れないけど見たことはある船が港に停まっているのが見えた。

    海軍の軍艦だ。

  • 114123/02/14(火) 23:24:14

    ────────────────

    「ウタならもうそろそろ戻ってくると思うが……」

    「なら少し待たせてもらうわい」


    お城に戻ってみると、玄関口でゴードンが誰かと話していた。

    あれも見たことある。海軍の人が着る正義のコートだったっけ。


    「……ただいま」

    「ああウタ、戻ってきたか。お前にお客さんが来ているぞ」

    「お客さん?」


    「ルフィから何度も話は聞いとったが……直接会うのは初めてじゃな」

    「え?」


    ルフィを知ってる?ということはこの人……


    「わしはガープ。海軍中将をやっとる者じゃ」

  • 115二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 23:25:41

    大丈夫?いきなりウタをジャングルに放り込んだり崖から突き落としたり風船に括り付けたりしない?
    もしやったらルフィが目を瞑ることなくガープを殴り倒しそうだな...

  • 116123/02/14(火) 23:27:08

    本日は短めのここまで

    真面目モードのガープってすごい頼りになると思うんだ

  • 117二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 06:34:42

    >>115

    ガープが海軍に勧誘してそれに承諾したらそうなりそうではある...

  • 118二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 14:52:27

    ガープはいつだって頼りにはなる
    頼りにはなるんだけど、常人とは頭のネジの締め具合とか締める場所とかが違っているのがアレなんだ

  • 119123/02/15(水) 21:52:18

    さてここが正念場だ

  • 120123/02/15(水) 21:52:57

    「……初めましてだね、ガープさん」

    「おや、ガープ殿のことを知っているのか?」

    「名前を知ってるだけ。ガープさんはルフィのおじいちゃんなんだよ」

    「何だって?ルフィ君の……?

    ……言われてみれば、雰囲気が何となく似ているような気もする……」


    「ぶわっはっは!ルフィの言っていた通りじゃ!彼奴も隅に置けんのう!」

    「……? ルフィが何を言ってたの?」

    「話通りの別嬪じゃ!これで歌もべらぼうに上手いと来れば、そりゃあ人気も出るわい!」


    ……何というか、想像以上に想像通りの人だった。

    というか今の話、もしかしてルフィから私がべっぴんだって話を聞いてたってこと?


    ……普段ならもう少し喜べたのかもしれない。

    だけど今の私は、半端に笑うことしかできなかった。


    「…………ふへ」

  • 121123/02/15(水) 21:58:34

    「……さて、本題に入るか。ウタ、お前さんに一つ尋ねたいことがある」

    「……何?」


    「お前さん、赤髪の娘じゃな?」

    「!」


    「……やはりか。おつるちゃんの推測通りだったというわけじゃな」

    「……どうして?」

    「お前さんが昔教わったという石鹸の作り方の……おー、配信と言うんか?それを偶々おつるちゃんが見とってのう。

    それが昔おつるちゃんがルフィに教えた作り方と同じだったもんで、そこから繋げていったというわけじゃ」

    「……そっか」


    まさかシャンクスの話なんて出来ないし、配信ではシャンクスの名前は出さないようにしてたけど……

    そんなちょっとの情報からでも割り出せるなんて、海軍ってすごいんだなぁ。

  • 122123/02/15(水) 22:02:04

    「まあ、だからどうするってわけでもないんじゃがの。このことを知っとるのは海軍でもわしとおつるちゃんだけじゃ」

    「………………」

    「じゃが……あー、どうするかの……

    ……少しゴードン王と話がしたい。すまんがウタ、お前さんは自分の部屋なりどこかで待っていてくれんか」

    「!」


    「私と?」

    「うむ。昔のエレジアについて少し聞きたいことがあるんじゃ」

    「……分かった。ここでは何だ、城の中へ案内しよう。

    すまないウタ、ガープ殿の言う通り部屋で少し待っていてくれ」


    「……うん、わかった」

  • 123123/02/15(水) 22:06:06

    ─────────────────

    「……ウタに聞かれると不味い話なのか?」

    「まあ、それもある。と言うより、そんな話が大半じゃ。あんたも答えたくなけりゃ答えんでええぞ」

    「……いや、分かった。私に答えられることなら答えよう」


    「んじゃあまず一つ。この国を滅ぼしたのは赤髪海賊団で間違いないんじゃな?」

    「!

    ………………ああ、そうだ」

    「ふむ……ならばもう一つ。何故赤髪が滅ぼしたという国で、赤髪の娘が生活しとるんじゃ?」

    「それは……あの子も赤髪海賊団の被害者だったからだ」

    「被害者?」


    「……あの子は確かに赤髪海賊団の娘としてこの島へやってきた。

    だが、それが赤髪海賊団の作戦だった。あの子の歌声を利用してこの国へ取り入り、国を滅ぼして財宝を奪い去って行った。

    ……用済みとなったあの子はこの島に捨て置かれ、それを哀れに思った私が引き取って育ててきた」

  • 124123/02/15(水) 22:10:47

    「ふーむ……話で聞いていた通りではあるが、何ともあの子に救いのない話じゃのう。今配信とやらで立ち直っているのが不思議なぐらいじゃ。

    ……じゃが、だとすると少し引っかかるな……」

    「?」

    「まだ幼い女の子が親と慕う者達からそんな仕打ちを受けたなら、恨んだり見限ったりで父親とも思えなくなるのが普通だと思うんじゃがの。

    じゃがさっきあの子に『お前は赤髪の娘か?』と聞いたら、ハッキリと肯定はせんかったが特に否定もせんかった。

    まだ何か、あの子の中で赤髪に対する未練が残っていたりはするのか?」

    「それは…………私には……わからない。

    ただ、この島に来る前は相応に可愛がられていたようだ。きっとその当時のことが忘れられないんだろう」


    「うーむ……親子の情はそう簡単には切れんか。あの子の気持ちはあの子にしか分からんからのう。

    次じゃ、もう一つ聞きたいことがある。


    この島に封印されているという、トットムジカとやらについてじゃ」

  • 125123/02/15(水) 22:14:39

    「……………………」

    「詳しいことはわしも知らんが……古代に封印された魔王とも呼ばれる程のどえらい兵器らしいな。

    文献には遥か昔にトットムジカが引き起こした痛ましい事件の記録も残っておる。

    楽譜の姿をしとるらしいが……そんなものが本当にこのエレジアにあるのか?」


    「……ああ、トットムジカは今もこのエレジアに残っている。

    ……だが、それを聞いてどうするつもりだ?」


    「どうすると言われると……参った、どう答えればいいか分からんわい。

    んー……まあ隠しても仕方がないか。この際じゃからハッキリ言っておく。


    海軍上層部や世界政府は、あの子のことを危険視しておる」

  • 126123/02/15(水) 22:18:47

    「……!」

    「……んーいや、あの子をというのはちと語弊があるか。

    より正確に言うなら、ウタという『ウタウタの実』の能力者がこの『エレジア』におることを懸念しておる。

    トットムジカの発動にはウタウタの能力者が必要なんじゃろ?その条件が揃っておるなら、まあ政府も気が気じゃないわな」


    「……ならば、貴方はあの子を捕えに来たのか?」

    「いやあそういうわけではないわい。何なら勝手に来たと言うか……」

    「?」


    「わし思いつきで来ただけじゃからのう。そう言えばルフィの友達がこの近くの島におったはずじゃな、折角じゃし行くかって感じで」

    「ええ……」

  • 127123/02/15(水) 22:22:41

    「じゃが、来た意味はあったわい。本当に赤髪の娘なのかを確かめる意味もあったが……

    ……ここだけの話じゃ。このままあの子が活動を続けていれば、いずれ世界政府はあの子の討伐命令を出しとったじゃろう」

    「なっ……!?」

    「トットムジカの件を抜きにしても、あの子の求心力は計り知れん。いずれは海軍や政府をも凌ぐ規模の勢力になることも充分に考えられる。

    政府が恐れておるのは、その勢力がこの時代に牙を剥く革命の勢力となることじゃ」

    「革命……」

    「革命軍が今や一大勢力となっておることから見ても、革命の芽は早めに摘んでおかねば手遅れになる。

    本当に討伐命令まで行くかは分からんが……もし政府が動けば、少なくとも今までと同じ活動は出来んようになるじゃろう。

    この世界じゃあ出過ぎた杭は潰される。この大海賊時代に生まれたことは、あの子にとって最大の不幸だったのかもしれんな」

    「………………」

  • 128123/02/15(水) 22:26:52

    「……が、それは政府が何も知らんかった場合の話じゃ。

    わしがこうして来た以上、女の子1人に全戦力を向けさせるような真似はさせんわい」

    「本当か?」

    「まあ何せあの子はルフィの友達じゃ!あんな別嬪な友達に何かがあればルフィも悲しむじゃろうて!

    少々何かがあってもわしがこっそり(無理やり)止めてやるわい!ぶわっはっはっは!」

    「は、ははは……」


    「……とはいえ、筋を通すのもそれなりの材料がなきゃ始まらん。この島とあの子に危険性が無いことをしっかりと示す必要がある。

    あの子の話は後で聞くとして……まずはそのトットムジカじゃ。ちゃんと封印されていることを確認させてくれ」


    「……それは…………」

    「?」


    「……いや、分かった。着いてきてくれ」



    「……………………」

  • 129123/02/15(水) 22:31:15

    ────────────────

    「ここは……地下室か?」

    「ああ。トットムジカは普段はここに封印されている」

    「ふむ、防音もしっかりしておるようじゃな。まあそんな危険な代物、厳重に封印するに決まっておるか」


    「……ここだ」

    「ここか……

    ……ん?何も無いぞ?」


    「………………

    ……昨日までは、確かに封印されていた」

    「何?」


    「……だが、今朝見に来たら既に封印が解かれていた。


    誰が何の目的で解いたのかは……分からない」

  • 130123/02/15(水) 22:34:29

    「何じゃと?封印が解かれていた?」

    「普段ならここに楽譜が封印されている……

    だが今は見ての通りもぬけの殻だ。楽譜がどこへ行ったかも分からない」

    「何と……

    ……封印を解いたのはあんたではないんじゃな?」


    「私ではない。私ではないが……恐らく、いや間違いなく、あの子でもない」

    「なら誰がこんな真似をするんじゃ?この島にはあんたとあの子しかおらんのじゃろう」


    「……もしかすると、楽譜が一人でに抜け出したのかもしれない。あの日と同じように……」

    「あの日?」

    「あ、いや……」





    「探してるのはこれ?」

  • 131123/02/15(水) 22:39:06

    「え?」

    「!!!」


    古ぼけた楽譜をひらひらと顔の前で振ってみせる。

    間の抜けた声を上げたガープさんとは対照的に、ゴードンは驚きながら私に詰め寄ってきた。


    「ウタ……何故お前がそれを……!?」


    ゴードンの声からは焦りとも怒りとも取れないよく分からない感情が感じ取れた。

    今のこの状況で私がこれを持っているのは、どう考えてもおかしいし不味い。


    「いや……その前にウタ、今の話を聞いていたのか……?」

    「うん、聞いてたよ」


    「……どこから聞いていた?」

    「政府や海軍が私を危険視してる……ってとこらへんから。聞いちゃったよ、私がどうなるか」


    「……!!」

  • 132123/02/15(水) 22:43:13

    ぶっちゃけ部屋に戻ったふりをして大半聞いてた。

    私だけ除け者なんてさみしいもん。


    ……まあ、そのおかげで色々とタメになる話を聞けたんだけども。


    「何という……なんということだ……」


    私のその発言を聞いたゴードンは膝から崩れ落ちた。

    私がトットムジカを持っていた理由を聞く気すら無くなってしまったらしい。


    ……でも、ガープさんはそういうわけにもいかなかったみたい。


    「……色々よく分からんが、お前さんが持っているそれが噂のトットムジカというわけじゃな?

    何故お前さんが持ってるか、わしにはさっぱり分からんが……こうなってくれば話は変わってくる。


    ……ことと次第によっちゃあ、ゲンコツ一発じゃ済まんぞ……」

  • 133123/02/15(水) 22:46:37

    声色こそ変わらないけど、ガープさんの纏う雰囲気が何となく変わった気がする。

    これが海軍の英雄、シャンクス達が束になっても敵わないかもしれないと言わしめる伝説の海兵か……


    「ま、待ってくれガープ殿!何かの間違いだ!」

    「分かっとる、何も今すぐとっ捕まえようなんてつもりはないわい。

    じゃが今のこの状況を見過ごすわけにもいかん。まずは話をさせてくれ、そこからじゃ」


    「……分かった。でもその前に1つだけ」

    「何じゃ?」

    「ちょっと私の部屋に来てくれないかな?見せたいものがあるんだ」

    「見せたいもの?」



    「……教えてあげる。本当のことを」

  • 134123/02/15(水) 22:48:39

    本日はここまで


    ふへ

  • 135二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 23:00:20

    僕はなぜかこう思うんだ
    ウタちゃんは誰かに
    裁いてほしかったんじゃないかな

  • 136二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 07:06:31

    保守!!

  • 137二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 15:41:21

    保守

  • 138二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 21:59:42

  • 139123/02/16(木) 22:11:04

    🙅‍♂️

  • 140二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 03:30:51

    保守

  • 141二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 06:53:44

    保守!!

  • 142二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 07:13:00

    3時間で保守はいらん

  • 143二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 17:16:03

    ガープは真実を知ってなんていうんだろうか……

  • 144123/02/17(金) 22:59:00

    本日短め

  • 145123/02/17(金) 22:59:18

    暗くした私の部屋で、電伝虫の上映会。

    正直ゴードンに見せるのは躊躇われたけど、今更もう隠しても仕方がない。


    だけど無理やり寝かせてでも見せない方が良かったかな、やっぱり。

    一度全部見てしまった私でさえ、耐え難い頭痛と吐き気に襲われて逃げ出したくなるって言うのに。

    映像が始まってすぐに、ゴードンは頭を抱えて何も言わなくなってしまった。


    一方のガープさんは映像から目を離すことなく、ずっと険しい顔をしながらも一部始終を目に焼き付けていた。

    そうしている間にも、電伝虫は真っ赤な空を映し続ける。


    どこまでも凄惨な映像を、

    エレジア崩壊の真実を、

    私が犯してしまった罪を、


    余すことなくガープさんに見せてあげた。

  • 146二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 00:01:22

    なんだこの地獄の上映会
    やっぱ辛いよなあ

  • 147123/02/18(土) 08:25:13

    流石に1レスで終わるつもりはなかった

  • 148二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 18:23:22

    これを見てガープはウタをどうするのか...

  • 149123/02/18(土) 22:21:03

    今日は規制されませんように

  • 150123/02/18(土) 22:21:23

    「……………………」

    「……はい。今見せたのが、このエレジアに起こった真実だよ」

    「…………」


    ガープさんは少し下を向いたまま何も言わない。何かを考え込んでいるみたいだった。

    気を抜けば過呼吸になりそうな自分を無理やり抑え込んで、出来る限り冷静に私は言葉を続けた。


    「ゴードンから何て言われたかは私は聞いてないけど……今見せた通り、エレジアを滅ぼしたのはシャンクス達じゃなかったんだ。

    むしろこのエレジアを守るために戦ってたんだ。カッコいいよね、流石シャンクスだよ」

    「………………」


    ちらりとゴードンに視線を向ける。

    こっちもこっちで項垂れたままで表情が読み取れない。

    ……少なくともいい感情なんて欠片もない事ぐらいは、顔が見えなくても分かった。


    「…………成程」

  • 151123/02/18(土) 22:27:31

    「!」

    「今や四皇の一角に数えられているとはいえ、奴らは自分から堅気に手を出すようなことは殆ど無い連中じゃ。

    そんな連中が宝欲しさに国まで滅ぼすかと以前から疑問には思っておったが……

    こんなとんでもない真実が隠れておったとはのう。どこで話がすり替わったんじゃ?」

    「……私が彼らに頼まれた。

    『この国を滅ぼしたのは赤髪海賊団だ』と、通報を受けた海軍と……

    それから、この子にも同じように伝えてくれと頼まれた」

    「? 何故そんな自分から罪を被るような真似を……


    …………ああ、そういうことか」


    ガープさんは徐に顔を上げると、私の方へすっと向き直った。

    眉間の皺はさっきよりも減ったけど、さっきまでよりも鋭い射抜くような視線が私に突き刺さる。


    「赤髪は……奴らは、お前さんが引き起こしてしまったこの事件の責任を、全て被ろうとしたんじゃな」

  • 152123/02/18(土) 22:32:46

    「………………」

    「……その通りだ」


    私が答えるより先にゴードンが答えた。


    「初めは私が責任を負おうとも考えた……だが、彼らはウタに追求が及ばぬよう、全ての責任を負うことを躊躇いなく決めた。

    そして改めて海軍に追われる身となる自分達から逃すように、ウタを私に預け、この島に残して行った」

    「…………ふーむ……

    ウタ、お前さんはそのことを知っておったのか?」

    「……私も最初はゴードンからシャンクス達がやったって聞かされてたよ。ちょっとだけ信じそうにもなった。

    ……でも途中から絶対おかしい、そんなわけないって思うようになって、居ても立っても居られなくなって、ちょっとルフィの力も借りて……

    それでゴードンに本当のことを教えてもらったんだ。だから真相は知ってたよ。

    ……まあ、この電伝虫を見つけたのはついこの間だったんだけどね……」

  • 153123/02/18(土) 22:37:55

    「……よくもまあ10年以上も前の電伝虫が残っとったわい。お陰でわしも真相を知ることはできたが……

    質問ばかりで悪いが、もう1つ教えてくれんか。


    ……あの映像の中で暴れとったのが、例のトットムジカなんじゃな?」

    「………………

    ……私も伝承でしか知らなかったが……ウタウタの実の能力者が歌うことによって顕現する、古の魔王……

    あの異様な様相と破壊規模からして、あれがトットムジカで……」

    「そこじゃ。わしが気になっとるのはそこ」

    「?」


    そこまで言って、それまでゴードンの方を向いていたガープさんの視線が再び私に向けられる。

    さっきまでの鋭さは無くなったけど、代わりに深く深く、私の心の奥底まで見透かされてるようにも感じた。



    「ウタ、お前さんは何故あの楽譜を歌ったんじゃ?」

  • 154123/02/18(土) 22:41:40

    「……え?」

    「いろいろ聞きたいが、わしとしてはそこが1番重要じゃ。

    そもそも昔から封印されとったんじゃろ?どうやってそんなもん歌ったんじゃ」

    「それは……」


    「…………全ては私の責任だ」

    「何?」

    「11年前、この島にやって来たこの子の歌声にすっかり魅了されてしまった私は、別れを惜しんでこの子のためにパーティを開いた。

    国民の皆にも聞かせようと、島中にこの子の歌声が届くようにしたんだ。皆の称賛を一身に浴びながら、ウタも気分良く歌っていたことだろう。

    ……だが、それが不味かった。今ウタが持っているその楽譜は、能力者の歌声に反応して自力で封印を解き、ウタの近くにその姿を見せた……

    歌ってはいけない楽譜が存在するなど、ウタが知る由もない。不意に現れた楽譜を手に取ったウタはそれまでと同じように歌い始めて……」


    「……事件は起こった、か」

  • 155123/02/18(土) 22:47:45

    「……管理を怠った私の責任だ。ウタには何の罪もない……」

    「ゴードン……」


    「ふむ。しかし楽譜が自力で封印を解いたと言うのか?まるで意思でもあるみたいじゃな」

    「……意思があるかは分からない。だが、自力でウタウタの能力者の近くに這い寄る力があることは間違いない。

    今ウタがその楽譜を持っているのも、恐らくはあの日と同じ様に封印から自力で抜け出した結果だろう」

    「そうなのか?」

    「……うん。さっき散歩してたら、いつの間にか足元に落ちてたんだ。

    今日は別に歌ってたわけじゃないし、なんで出て来たのかは正直分かんないんだけどね」

    「ほう……成程。

    ……うむ、もう少しだけ質問じゃ、あと少しだけ我慢しとくれ。


    そんな国を滅ぼしたようなおっかない楽譜を、今日まで処分せずに再度封印するに留めておったのは何故じゃ?」

  • 156123/02/18(土) 22:51:11

    ……ガープさんの言葉の1つ1つが私を丸裸にしていく。捕まった時の取り調べってこんな感じなのかな……

    ちょっと慣れてなさそうな辺り、多分ガープさん側も普段はこんなことしないんだと思う。

    だけど、ガープさんは何としてでも『何か』を掴もうとしている。表情からそれがわかるからこそ、私もゴードンも真剣に向き合って答えた。


    「それは……私がワガママ言ったんだ。

    正直こんな楽譜、捨てたり燃やしたりした方がロクなことにならなさそうで怖いし……


    それに何と言うか……同情しちゃったと言うか……」

    「同情?」

    「……何十年も何百年も封印されてた楽譜なんて、きっとすごく寂しかったんだろうなって……

    だからって、国を滅ぼすような楽譜を残しとくなんて絶対おかしいことは分かってるけど……


    だけど何か、ほっとけなくなっちゃって……最近は歌ってなかったけど、少し前までは3日に1回ぐらい歌を聞かせてあげたりしてたん、だけ……ど……」

  • 157123/02/18(土) 22:56:43

    「…………は」


    さっきまで張り詰めてたガープさんの表情が、何ともまあ気の抜けたそれに変わった。

    こうして見るとルフィとよく似てる。驚いた時のルフィの顔とそっくりだ。


    「……ガープさん?」

    「……あ、ああいやすまんすまん、ちょっと予想外でびっくりしただけじゃ。

    ……よし、次で最後の質問にするか。

    その楽譜を処分しない理由は分かった。海軍としては今すぐ捨てろと言いたいところじゃが……


    最後にこれだけ確認させてくれ。

    ウタ、今後お前さんはその楽譜を二度と歌わないと誓えるか?」


    「…………………



    それはちょっと……分かりません」

  • 158123/02/18(土) 23:01:40

    「……何じゃと?」

    「ウタ……?」


    ガープさんの表情と声が少しだけ厳しいものへと変わる。

    私が首を縦に振ると思っていたであろうゴードンも困惑顔。


    だけどちゃんと理由はある。以前からずっと考えていたことだ。


    「……もちろん、このまま歌うって訳じゃないよ。ちゃんと方法を考えないと」

    「方法?」


    「どうにかして、この曲を歌っても魔王が暴れずに済む方法を見つけないといけないの。

    よく歌を聞かせてあげたりしてたのもその為なんだ。私の歌でいつか改心とかしてくれないかなと思ってね……


    だってこの歌、魔王さえ出てこなければすっごくいい曲なんだもん。


    何がどうなってこんな災害になっちゃったのかは分からないけど……何か方法があるなら、それに賭けてみたいんだ」

  • 159123/02/18(土) 23:06:45

    「…………」

    「……ガープさん?」


    私の答えを聞いてから、ガープさんは下を向いてぷるぷる震えていた。

    最後の質問だって言ってたし、結論を考えてるのかな?


    ……私としては、海軍に捕まって連れて行かれることも覚悟の上だった。

    というか、個人的にはそうして欲しかった。

    国を滅ぼした罪なんて、どうやって償えばいいか私には見当もつかない。

    ちゃんとした裁きを受けて、どうにかして償う機会が欲しかった。


    けれど、ガープさんが悩んだ末に出した答え。

    それは────




    「ぶわーっはっはっはっはっは!!!!」


    ──腹の底からの爆笑だった。

  • 160123/02/18(土) 23:11:35

    本日はここまで

    明日天気になあれ

  • 161二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 23:41:41

    太陽神の祖父もまた太陽神なのじゃ

  • 162二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 08:47:00

    ワクワク

  • 163123/02/19(日) 13:13:30

    そろそろ今日の分を

  • 164123/02/19(日) 13:13:55

    「……へ?」

    「はっはっはっは!いやあ安心したわい!

    最初の話を聞いた時はそりゃあたまげた!魔王を呼び出す楽譜を歌って国を滅ぼすとは何たる悪女!」

    「……………」

    「こうなればわしの手でルフィの友達をしょっぴかねばならんかと覚悟もしたが……

    どうやらその必要はなさそうじゃ!あーよかったよかった!ぶわっはっはっは!」

    「…………?」


    豪快な笑い声に、こっちの心の曇りまで吹き飛ばされそうになる。

    いやいや待て待て、こんなんで流されちゃダメだ私。


    「で、でも、私が歌ったせいでこの国は……」

    「……確かに、このエレジアが滅亡してしまったのは事実。それは変えようのない、忘れてはいけない出来事じゃ」

    「………………」


    「じゃが、それとこれとは別の話じゃ」

  • 165123/02/19(日) 13:18:19

    「え?」

    「起きてしまった出来事の規模が規模じゃ、自分を責めてしまう気持ちも分かる。

    しかしお前さん達の話が真実だとすれば、今回の件で悪いのは全てその楽譜ということになる。

    生憎わしには、お前さん達が我が身可愛さで嘘をつく様な性分には見えんのでな。

    なのでわしはお前さん達の話を全面的に信じることにした!

    もしかするとウタ、お前はわしに捕まって裁かれることを望んどったのかもしれんが……

    結論から言うとそれは無理じゃ!諦めるんじゃな!ぶわっはっはっは!!」



    「………………」


    「……何じゃ、納得出来んか?」


    「……出来ないよ、そんなの……

    私は悪くないって、みんなが言ってくれても……


    あんな風に映像で見ちゃったら……尚更私が私を許せないんだよ……」

  • 166123/02/19(日) 13:22:40

    拳を握り締める力がぎゅうと強くなる。

    海軍にまでそんな風に言われちゃったら私はどうすればいいの?

    このやり場のない私の気持ちは、一体どうしたらいいの?


    そんな私を見て、椅子に腰掛けていたガープさんは頭をポリポリと掻きながら立ち上がった。


    「んもー強情なんだからー……

    ……仕方ないわい、こっち来い」

    「?」


    ガープさんの手招きに誘われ、部屋の端まで歩み寄る。

    一体何されるんだろう。


    「海賊でもない市民相手に私刑なんて本来あってはならんのじゃが……

    そこまで言うんなら仕方がないのう……!」

  • 167123/02/19(日) 13:27:24

    私刑、という単語に私の身体はビクッと震えた。

    伝説とまで言われる海兵がこんなちっぽけな一般歌姫に何をするつもりなんだろう……?


    「わしがどうやって海賊共をブチのめしておるか知っとるか?」

    「へ?」

    「わしの武器はこの拳一つ!愛ある拳に防ぐ術ナシじゃ!」

    「い、いやいや……拳って、そんなの私絶対死んじゃう……」

    「アホか、そのぐらいわしも分かっとるわい!

    じゃから手加減してこうするんじゃ、口閉じとかんと舌噛むぞ!!」


    「…………!?」



    ……シャンクスに置いて行かれた時か、真実を知ってしまった時が今までで一番大きな精神的な衝撃だったとすれば……


    今この瞬間私のおでこに走ったのは、今まで生きてきた中で一番大きな、ヘタをすると今後更新されることもないであろう物理的な衝撃だった。

  • 168123/02/19(日) 13:32:09

    「……ぃ っ っ……


    …………ったぁ〜〜〜〜い!!!!!」


    デコピン一つで部屋の端からベッドまで吹き飛ばされてしまった。

    チカチカする目の周りで星が回っているのが見える。

    脳が揺れて思考がまともに働かないし、おでこは痛いを通り越して熱いに近い刺激を脳に送ってくる。


    「うあああああ!!痛い!!いだいよぉー!!」

    「ぶわっはっはっは!思いっきり手加減したんじゃ、死にはせんわい!」


    この歳になって痛みで泣き叫ぶ羽目になるとは思いもしなかった。

    そんな私を見ても、ガープさんは変わらず笑うだけ。

    ゴードンはというと、のたうち回る私と笑うガープさんを見て、ただオロオロしているだけだった。

  • 169123/02/19(日) 13:37:27

    ようやく痛みが引いた(まだヒリヒリする)おでこにゴードンが持ってきてくれた氷嚢を当てる。痕とか残ったりしなきゃいいけど……


    「うう……痛かった……」

    「そりゃ痛みを与えるためにやったんじゃからのう。して、どうじゃ?」

    「?」


    「少しは気持ちは晴れたか?」

    「え……?」


    意識が鮮明になってくると、さっきまでいろんなものなごちゃ混ぜで澱んでいた私の心の曇りが、すっと晴れてしまった様な気がした。

    所謂個人的な『裁き』を受けた、っていうのもあるんだろうけど……


    ……ダメだ、やっぱり納得は出来そうにない。こんな力技で無理やり晴らされるなんて。

    色々こんがらがっていた私の感情は、ガープさんのデコピンで全部吹き飛んでしまったらしかった。


    「……でも流石にちょっと乱暴過ぎだよ……」

    「ぶわっはっはっは!!許せ!!」

  • 170123/02/19(日) 13:39:12

    お昼はここまで

  • 171二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 14:18:07

    見てるかいベル○ルト(>>135)…お前の言う通りだったよ

  • 172二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 14:31:04

    愛情1発
    チオ○タドリンク

  • 173二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 22:23:45

    ガープの人生相談教室(物理)

  • 174123/02/19(日) 22:38:19

    今日はもう少しだけ

  • 175123/02/19(日) 22:38:41

    一先ず落ち着いたところで、締め切っていた部屋のカーテンを開ける。

    気がつけばもう既に空は赤らんでいた。窓を開けると、いつもと変わらない海鳥の鳴き声が聞こえた。


    「……さて。言いたいことも言うたし、わしはそろそろ帰るが……

    ウタ、お前さんの方から何か言っときたいことはあるか?」

    「……じゃあ一つだけ。このエレジアが滅亡した本当の理由は……」


    「……うむ。秘密にしておくんじゃな」

    「………………うん」


    「お前さんが罪を被りたくないから言っとるわけではないのは分かっとる。

    お前さんに罪があったのであればまた話は変わってくるが……

    ……赤髪は憎き海賊じゃが、それ以前に人の親だったということじゃ。娘を守りたいという漢の覚悟を踏み躙るような真似はせんから安心せい。

    そもそもエレジアの罪一つ消えたところで、彼奴らの悪名はどーせ変わらんわい」


    「……ありがとう、ガープさん」

  • 176123/02/19(日) 22:45:00

    「ところでお前さん、配信とやらはどうするんじゃ?ここ暫く休んどるとうちの部下達も嘆いとったぞ」

    「それは……分かんないかな。

    今の心の状態で配信しても、多分まともに出来ないからさ。

    いつかは復帰したいとは思ってるけど……それがいつになるかは、私にも分かんないや」


    後ろめたさからベッドの上で小さくなる。

    こうも身近なファンのみんなの声を聞くと、早く復帰しないといけないという焦燥感にも似た気持ちに駆られてしまう。


    「……最近は『海賊嫌いの歌姫』でやってるから、海賊の被害に遭った人達とか、非加盟国の人とかからの推され方が凄くて……

    ……このままでいいのかなって思ったりもしてたんだ。私はこの人達を本当に幸せにできてるのかなって……


    そこに来て今回の件があって……ちょっと今、半分折れちゃってる……かも」

  • 177123/02/19(日) 22:53:58

    「ふーむ…………言うなればお前さんは、そんな民達から『救世主』扱いされとるわけじゃな」

    「救世主……」


    「……海軍とて正義を名乗ってはおるが、その実この歪な世界の理に雁字搦めにされておる。

    海賊共に虐げられる被害者達の全てを救うことはできん。海軍を恨んでおる者達もおるじゃろう。

    そんな時代に、お前さんの様な歌声ひとつで幸せにしてくれる希望の様な存在が現れれば、そりゃあ縋りたくもなるわい」

    「………………」


    「……じゃが、それはお前さんが気に病むことはないじゃろ」

    「え?」


    「幸せなんてものは、時と場合によってその姿を自在に変える。

    お前さんが『これなら皆幸せだろう』と思ってやったことでも、必ずしもいい結果に繋がるとは限らんわい」

  • 178123/02/19(日) 23:06:13

    「………………」

    「じゃがそれでもお前さんは皆を幸せにしたいと思うとるんじゃろう?そしてそれを可能とする武器も持っている。

    お前さんの歌声に惹かれた者達を幸せにする為には、お前さんはどうすればいいのか……」

    「それは……」


    「救世主とならずとも、海賊嫌いを続けずとも……答えは一つ。



    お前さんが、お前さんであり続けることじゃ」



    「私が、私であり続ける……」

    「変に考え込まんでもええじゃろう。そもそも誰かから無償で与えられた幸せなんてロクなもんじゃないわい。

    幸せというものは、日常の中から自分で探し、見つけ、手に入れる。

    お前さんの歌で幸せになれたという者達も、お前さんの歌声の中からその幸せを見出した、それだけのこと。

    お前さんの歌声に惚れた者達には、歌声を届け続けることが何よりの幸せのはずじゃ」

  • 179123/02/19(日) 23:11:12

    「……………………」


    そんなガープさんの話を聞いて、私はいつかの日の、ルフィと話した時のことを思い出していた。

    幸せの形は人それぞれ違う。それはもう分かってたはずなのに。


    今の私を見たら、きっとルフィはまたあの怖い顔を見せる。

    ……もうさせないって決めてたのに。


    「……でも、私は……


    …………私の歌で、本当にみんなは幸せになれるのかな……

    またいつか、みんなを不幸な目に遭わせたりするんじゃないかって……

    あの映像見てから、ずっと不安で……歌うの、怖くなっちゃって……」

  • 180123/02/19(日) 23:14:04

    「何を言うとるんじゃお前さんは」

    「え?」



    「そんなもん、そこにおる人間に後でゆっくり聞いてみたらええじゃろ」


    ガープさんは鼻をほじりながら私の隣を指差した。

    私の隣にいる人間、それは即ち……



    「…………え?ゴードン?」

    「………………」

  • 181二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 23:14:57

    と う と つ

  • 182123/02/19(日) 23:16:35

    ─────────────────

    「じゃーわし帰る。邪魔したな」

    「……ううん、邪魔なんかじゃなかったよ。色々とありがとう」


    「何の礼じゃ、わしァちょいと説教しただけじゃわい。

    あーそれから、その腕の麦わら帽子の絵……」


    「え?」

    「大方ルフィの落書きか何かじゃろ?それも今よりうんと小さい時の」

    「え、あ、うん……」

    「そんな絵をシンボルにしておる辺り、お前さんにとってもルフィは大切な友人なんじゃろうな

    ならば間違っても、大事な友達を悲しませる様なことをしてはいかんぞ。

    もしわしが次は任務でこの島に来なければならんような事態が起これば、今度はデコピンじゃ済まさんからのう……」

    「ヒッ……」

    「ぶわっはっはっは!まあ今のお前さんならそんな心配もないか!

    ……あ、最後に」

  • 183123/02/19(日) 23:19:22

    「?」

    「知っておるかは分からんが……ルフィのことじゃ」

    「!」

    「あの戦争の後、ルフィは何処かへ行方を眩ませた。巷じゃあ死亡説なんてのも流れておるが……

    海軍は彼奴の死亡を確認しておらん、まず間違いなく生きておる。今どこで何をしてるかまでは掴めておらんがのう……」


    「………………そっか。よかった」


    ……ホントは何してるか知ってるけど……

    こういうのは多分、言わないほうがいいよね。


    「悪いがお前さんが赤髪の娘だということだけは上層部に報告させてもらう。

    じゃが、だからと言って何かが変わる訳でもナシじゃ。お前さんはこれからも好きに歌い続けていってくれ。

    それ以外のことはわしの方から上手く言っとくわい!ルフィの友達を捕まえる様なことはしたくないからのう!

    それじゃあな!ぶわっはっはっは!」

  • 184123/02/19(日) 23:21:53

    ─────────────────

    小さくなっていく軍艦を見送っていると、ふっと力が抜けてその場にへたり込んでしまった。

    ゴードンは未だに心配そうな顔をしている。主に私のおでこに視線を向けながら。


    「嵐の様な人だったな……おでこは大丈夫か?」

    「うん、まだちょっとしみるけど大丈夫……

    …………………


    …………ねえ、ゴードン」

    「どうした?」


    こんな出来事でもなければ、きっといつまでもぶつけずにいたであろう疑問。

    いい機会だ。今ここで聞いてしまおう。


    「……ずーっと気になってたことがあるんだ。唐突だけど、聞いてもいいかな?」

    「……何だい」


    「……ゴードンはさ、どうしてこんなにもよく私の面倒を見てくれたの?」

  • 185コケ23/02/19(日) 23:22:32

    ガープ!あなたは最高です!!

  • 186123/02/19(日) 23:23:56

    「………………」

    「シャンクスとの約束があるから……とは言っても、普通ここまで出来ないよ。

    私よりも私のせいで辛いことを思い出すこととかあってもおかしくないのに、こんな大人になるまで面倒見てくれて……」

    「それは……」

    「いやもちろん感謝はしてるよ、言葉じゃ表しきれないぐらいしてる。

    ……だけど、どうにもそこが気になってさ。私何かゴードンに返せてるかなーとも思ってたり……」


    「………………」

    「答えづらいなら別に無理に答えなくてもいいよ。ゴードンが私にしてきてくれたことは変わらないんだし。

    ただほんとに気になっただけ。ゴードンが何て答えても、私が気を悪くしたりは……」

    「…………語弊を恐れずに言うのであれば……」

    「!」


    「………………他に何も残っていなかったから、かもしれないな」

  • 187123/02/19(日) 23:26:48

    「…………」

    「確かに私はあの日、一夜にして何もかもを奪われてしまった。

    国も、民も、日常も……あのままこの島で一人で過ごしていたならば、私もいずれ生きる目的を見失っていただろう。

    エレジアの民の弔いだけを続ける、生ける屍の様になっていたかもしれない」

    「………………」


    「……だが、私にもただ一つだけ残されていた。

    『お前は親に捨てられた』と嘘をついて騙すことしか出来なかった、まだ9歳だった幼い女の子だ。


    ……あの時は嘘をついてすまなかった。結果的にお前を傷つけることになってしまったことを、今でも後悔している……」

  • 188123/02/19(日) 23:28:04

    「……別に、今更だよ。私もゴードンにたくさん迷惑かけてきたし……」


    「…………恥ずかしい話だが……シャンクスとの約束は、いつしか私の中で義務……いや、使命と成り果てていた。

    何としてでも、お前を世界一の歌い手に育て上げる。その約束に囚われていた私も……まあ亡霊と変わらなかったかもしれないな」

    「…………」


    「……だが、そんな私を救ってくれたのが……


    他でもない。ウタ、お前だったんだ」

  • 189123/02/19(日) 23:31:06

    「…………私?」

    「……人を幸せにできる歌声とはよく言ったものだ。まさに天使の歌声……

    日に日に上達していくお前の歌を聴いていると、とても元気づけられた。お前のおかげで、私も少しずつだが前を向ける様になった……

    それに……少しずつでも、お前が元気と笑顔を取り戻し、歌声を皆に届け、皆に賞賛され……

    誇らしげに笑うお前を見ていると、自分のことの様に嬉しく思えた。

    それと同時に、使命に囚われていた自分が恥ずかしくなったよ。歌なんて義務感で歌うものではない。

    お前の歌声は、私を呪縛から解き放ってくれたんだ。

    そう考えれば、お前に一番救われていたのは、他でもない私だったんだろうな」


    「………………」


    「……どうした?」

    「……いや、あの……


    すっごいベタ褒めしてくるから、ちょっと恥ずかしくなってきたというか……」

    「フフ、まだまだ出てくるぞ?今やシャンクス達よりも一緒にいた期間は長いんだからな」

    「ご、ご勘弁を……!」

  • 190123/02/19(日) 23:33:47

    「……ふう、分かった。ありがとうゴードン。

    なんでゴードンがこんなに良くしてくれるのか……それが分かっただけでもよかったよ。」

    「……どういたしまして」


    「……それにしてもだよ、ゴードン」

    「?」


    「……ルフィ以外にこのマークが初見で麦わら帽子だって分かる人、いるんだね……」

    「…………まあ、血は争えないということだろうな……」


    「…………ふふ、あはは!

    あはははは!争えなさすぎでしょ!ルフィってばガープおじいちゃんそっくりじゃん!」

    「フフ、そうだな……」

  • 191123/02/19(日) 23:37:04

    「……ねえゴードン。

    私、もうちょっと休んだら、配信再開しようと思う」

    「……ああ」


    「……過去も、今も、全部受け止めて……

    潰れちゃいそうになったら、ちょっと休んで、また歩き出して……


    私の歌を待っていてくれる人達のために……


    ……私の歌で、幸せに『なってくれる』人達のために……ね!」


    「ああ……それがいい……!」


    ゴードンの目から光るものが零れ落ちた。

    かく言う私の視界も、少しずつ滲んでいく。


    この額の痛みは、きっと忘れずにいよう。

    いつか私が私として、夢を叶えるその日まで。

  • 192本日はここまで23/02/19(日) 23:41:01

  • 193二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 23:58:38

    乙! さすが太陽神の祖父!
    スレ残り少ないから注意しないとね。

  • 194二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 00:25:30

    えっ?!これより強いゲンコツをルフィは幼少期から浴びてきたんですか?!

  • 195二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 07:59:40

    ルフィ…よく生きてたな…

  • 196二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 17:54:07

    あげとこ

  • 197123/02/20(月) 22:42:00
  • 198二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:42:19

    立て乙

  • 199二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:52:06

    こっちは埋めますか。乙でした!

  • 200二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 23:06:12

    幸せになりますように…

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