【SS】勝利を見守る特急券

  • 1二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 17:15:44

    レースは好きだ。ウマ娘が血の滲む努力を行った末の結果発表の場。秒単位の判断や振舞いが命運を分ける勝負の場。走る為に生まれてきたとされるウマ娘にとっては至上の舞台である。その舞台で見られるドラマは多くの人々の心をつかんでいた。かくいうあたしもその一人。競技者としてもファンとしてもその輝きに魅せられてきた。あたしがかつてその一部だった、レースの輝きを見続けたい。卒業後の進路を考える中でその欲求が真っ先に浮かんだ。

    『さぁ、やって参りました!東京優駿日本ダービー!!解説はウイニングチケットさんでお送りします!』

    『どうぞ、よろしくお願いいたします』

    あたしはメディアに就職しレースの実況解説担当になった。輝きを見るならトレーナーが一番良いんだろうけど、あたしには合わない仕事だ。ハヤヒデ達の方が向いている。持ち前の大声と感情の発露を活用できるという意味でも、これが天職なのかもしれない。

    『今年もクラシック級を代表する優駿達が集いました!!皐月賞ウマ娘が二冠なるか!ライバル達が阻止するのか!!チケットさんはどう思われますか?』

    『そうですね――――』

    手元の資料に目を滑らせながら、これまでのレース結果を簡単に総括する。ただ、これはあくまで数字上の推測。実際に見てみないと分からないものもある。例えばパドック。例えばゲートの裏。十八人それぞれの姿。表情や立ち振る舞いにはこれまで積み上げてきたモノがにじみ出る。今までどれだけの努力を積み重ねてきたのか。このレースにどれだけの想いを向けているのか。ありありと感じられる意思がある。何より今日はダービーだ。一生に一度の大舞台。七千人を越える世代の頂点に挑むことが許された十八人の精鋭達。想いの強さもひとしおだ。元競技者だからこそ、それがダイレクトに感じられてしまう。

    『全員が後悔しない様な走りができる事を祈りたいですね。勝敗に関わらず、それはきっと大きな財産になりますから。でも、できれば皆に勝って欲しい…』

    ひりだされた言葉は酷く感傷的だったが、解説はウンウンと頷いていた。あれこれ語っていると時間は思ったより過ぎていくもの。レースの時刻がやってきた。ファンファーレがなる。レースが始まる。懐かしいゲートの開閉音を聞きながら、あたしはたった今生まれようとしているドラマに思いを馳せた。

  • 2二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 17:19:40

    ウイニングチケット
    レースの実況解説者。元ダービーウマ娘。レース後の号泣トークに定評があり、トゥインクルシリーズファンの一部にカルト的人気を誇る。爆音トークがよその局の放送に乗ることもしばしば

  • 3二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 17:20:40

    以上です。女性版青嶋驀進王みたいなイメージ

  • 4二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 18:14:19

オススメ

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